(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】合焦線形モデル補正及び多変量キャリブレーションモデルメンテナンス用線形モデル補正
(51)【国際特許分類】
G01J 3/02 20060101AFI20220328BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20220328BHJP
【FI】
G01J3/02 C
G01N21/3563
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019126220
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ラン スン
(72)【発明者】
【氏名】チャンメン ション
【審査官】大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059900(JP,A)
【文献】米国特許第05459677(US,A)
【文献】特開平09-152399(JP,A)
【文献】LIU, Yan et al.,Linear model correction: A method for transferring a near-infrared multivariate calibration model without standard samples,Spectronica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy,2016年06月28日,Vol.169,p.197-201
【文献】JEROME J. et al.,A Review of Calibration Transfer Practices and Instrument Differences in Spectroscopy,Applied Spectroscopy,2017年,Vol.72, No.3,p.340-365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
G01N 21/3563
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスが、マスタ装置に関連するマスタキャリブレーションモデルのマスタベータ係数を取得する取得ステップ
であって、該マスタベータ係数は、前記マスタキャリブレーションモデルに関連付けられる係数のセットを含む取得ステップと、
前記デバイスが、
1回目の繰返しに関連する移行ベータ係数の
第1対を決定するために、制約のセットに従って目的関数の制約最適化を実施する実施ステップと、
前記デバイスが、前記移行ベータ係数の
第1対に基づいて、
第1の特定移行ベータ係数を決定する
特定移行ベータ係数決定ステップと、
前記デバイスが、2回目の繰返しに関連する移行ベータ係数の第2対を決定するために、制約のセットに従って目的関数の制約最適化を実施する実施ステップと、
前記デバイスが、前記移行ベータ係数の第2対に基づいて、第2の特定移行ベータ係数を決定する特定移行ベータ係数決定ステップと、
前記デバイスが、前記
第1の特定移行ベータ係数
及び前記第2の特定移行ベータ係数に基づいて、最終移行ベータ係数を決定する最終移行ベータ係数決定ステップと、
を含む方法であり、
前記マスタベータ係数がターゲット装置のグリッドに存在し、
前記ターゲット装置のグリッドは、前記ターゲット装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記ターゲット装置のパラメータであり、
前記制約最適化は、前記移行ベータ係数の初期対、前記マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて実施され、
前記最終移行ベータ係数が、前記マスタキャリブレーションモデルに対応し、前記ターゲット装置が使用するための、移行キャリブレーションモデルの生成と関連する、
方法。
【請求項2】
前記移行キャリブレーションモデルが前記最終移行ベータ係数に基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デバイスが、前記最終移行ベータ係数を、前記第1の特定移行ベータ係数及び前記第2の特定移行ベータ係数及び他の少なくとも1つの
特定移行ベータ係数
に基づいて決定し、前記他の少なくとも1つの
特定移行ベータ係数がそれぞれ、前記移行ベータ係数の各初期対に基づく、前記目的関数の制約最適化の各実施に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記取得ステップが、
前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドに一致すると判定するステップ
であって、前記マスタ装置のグリッドは、前記マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記マスタ装置のパラメータであるステップと、
前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットを前記マスタベータ係数として同定するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記取得ステップが、
前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドに一致しないと判定するステップ
であって、前記マスタ装置のグリッドは、前記マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記マスタ装置のパラメータであるステップと、
前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドに一致しないとの判定に基づいて、挿入キャリブレーションデータを生み出すために、マスタキャリブレーションセットを前記ターゲット装置のグリッドに挿入するステップと、
前記挿入キャリブレーションデータに基づいて、回帰モデルを生成するステップと、
前記マスタベータ係数を前記回帰モデル
に関連する係数
のセットとして決定するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記取得ステップが、前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドと一致しないと判定するステップ
であって、前記マスタ装置のグリッドは、前記マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記マスタ装置のパラメータであるステップと、
前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドに一致しないとの判定に基づいて、前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットを前記ターゲット装置のグリッドに挿入するステップと、
前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットを前記ターゲット装置のグリッドに挿入した結果に基づいて、前記マスタベータ係数を決定するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マスタキャリブレーションモデルに関連するマスタキャリブレーションセットが利用できないとの判定に基づいて、前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットを、前記ターゲット装置のグリッドに挿入する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記制約のセットは、前記マスタベータ係数と前記移行ベータ係数の
第1対
と前記移行ベータ係数の第2対のそれぞれとに関連する相関制約を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記制約のセットは、前記マスタベータ係数と前記移行ベータ係数の
第1対
と前記移行ベータ係数の第2対のそれぞれとに関連する傾き制約を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記制約のセットは、前記スカウティングセットに関連する予測値に対するキャリブレーション範囲制約を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記移行ベータ係数の初期対をランダム生成するステップ、ランダム値に関連する一次関数を前記マスタベータ係数に適用するステップ、又はランダム値を前記マスタベータ係数に付加するステップ、の少なくとも1つに基づいて、前記移行ベータ係数の初期対を生成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
マスタキャリブレーションモデルと関連するマスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しないと、デバイスが判定するステップ
であって、前記マスタ装置のグリッドは、前記マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記マスタ装置のパラメータであり、前記ターゲット装置のグリッドは、前記ターゲット装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定める前記ターゲット装置のパラメータであるステップと、
前記デバイスが、前記マスタ装置のグリッドが前記ターゲット装置のグリッドに一致しないとの判定、及び前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットに基づいて、移行キャリブレーションモデルの生成に関連するマスタベータ係数を決定するステップ
であって、該マスタベータ係数は、前記マスタキャリブレーションモデルに関連付けられる係数のセットを含むステップと、
前記デバイスが、前記マスタベータ係数に基づいて、
1回目の繰返しに関連する移行ベータ係数の
第1対を決定するステップと、
前記デバイスが、前記移行ベータ係数の
第1対に基づいて、
第1の特定移行ベータ係数を決定するステップと、
前記デバイスが、前記マスタベータ係数に基づいて、2回目の繰返しに関連する移行ベータ係数の第2対を決定するステップと、
前記デバイスが、前記移行ベータ係数の第2対に基づいて、第2の特定移行ベータ係数を決定するステップと、
前記デバイスが、前記
第1の特定移行ベータ係数
及び前記第2の特定移行ベータ係数に基づいて、最終移行ベータ係数を決定するステップと、
を含む方法であり、
前記マスタキャリブレーションモデルに対応する前記移行キャリブレーションモデルが前記ターゲット装置のために生成され、
前記最終移行ベータ係数が前記移行キャリブレーションモデルの生成と関連する、方法。
【請求項13】
前記マスタキャリブレーションモデルに関連するマスタキャリブレーションセットが利用できないとの判定に基づいて、前記マスタキャリブレーションモデル
に関連する係数
のセットを、前記ターゲット装置のグリッドに挿入する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記移行ベータ係数の
第1対を決定するステップ
及び前記移行ベータ係数の第2対を決定するステップが、
それぞれ前記移行ベータ係数の
第1対
及び前記移行ベータ係数の第2対を決定するために、制約のセットに伴って目的関数の制約最適化を実施することを含み、
移行ベータ係数の初期対、前記マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて前記制約最適化を実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記制約のセットは、
前記マスタベータ係数及び前記移行ベータ係数の
第1対
及び前記移行ベータ係数の第2対のそれぞれに関連する相関制約と、
前記マスタベータ係数及び前記移行ベータ係数の
第1対
及び前記移行ベータ係数の第2対のそれぞれに関連する傾き制約と、
前記スカウティングセットに関連する予測値に対するキャリブレーション範囲制約と、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記移行ベータ係数の初期対をランダム生成するステップ、ランダム値に関連する一次関数を前記マスタベータ係数に適用するステップ、又はランダム値を前記マスタベータ係数に付加するステップ、の少なくとも1つに基づいて、前記移行ベータ係数の初期対を生成するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記最終移行ベータ係数を決定するステップが、前記
第1の特定移行ベータ係数
及び前記第2の特定移行ベータ係数に基づき、線形モデル補正(LMC)技術を用いて、前記最終移行ベータ係数を決定すること、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記LMC技術の使用に伴い、前記マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットに基づいて、スカウティングセットに対する基準値を予測する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
デバイスが、キャリブレーションモデルの更新に関連するスカウティングセットを取得するステップと、
前記デバイスが、前記キャリブレーションモデルに関連する
係数のセットであるベータ係数を決定するステップと、
前記デバイスが、前記ベータ係数に基づき線形モデル補正(LMC)技術を用いて、前記キャリブレーションモデルの更新に関連する更新ベータ係数を決定するステップと、
前記デバイスが、前記更新ベータ係数に基づいて、前記キャリブレーションモデルを更新するステップと、
を含む方法であり、
前記スカウティングセットが試料のセットと関連するスペクトルを含み、前記スペクトルに基づいて前記キャリブレーションモデルを更新し、
更新される前記キャリブレーションモデルは、キャリブレーション実施に伴って前記更新ベータ係数を使用する、方法。
【請求項20】
前記キャリブレーションモデルの更新が前記デバイスの動作中に実施される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分光装置が実施する分光計測を較正するためのキャリブレーションモデルを有する分光装置を構成できる。キャリブレーションモデルは典型的に、分光装置によって測定される、既知のサンプルに対応する基準値及び既知のサンプルに対応するスペクトルに基づいて生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ある可能な実施形態によれば、方法は、デバイスが、マスタ装置に関連するマスタキャリブレーションモデルのマスタベータ係数を取得する取得ステップと、デバイスが、移行ベータ係数の対を決定するために、制約のセットに従って目的関数の制約最適化を実施する実施ステップと、デバイスが、移行ベータ係数の対に基づいて、移行ベータ係数を決定する移行ベータ係数決定ステップと、デバイスが、移行ベータ係数を含む移行ベータ係数のセットに基づいて、最終移行ベータ係数を決定する最終移行ベータ係数決定ステップと、を含むことができ、マスタベータ係数がターゲット装置のグリッドに存在し、制約最適化は、移行ベータ係数の初期対、マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて実施され、最終移行ベータ係数が、マスタキャリブレーションモデルに対応し、ターゲット装置が使用するための、移行キャリブレーションモデルの生成と関連する。
【0003】
ある可能な実施形態によれば、方法は、マスタキャリブレーションモデルと関連するマスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しないと、デバイスが判定するステップと、デバイスが、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドに一致しないとの判定に基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入するステップと、デバイスが、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入した結果に基づいて、移行キャリブレーションモデルの生成に関連するマスタベータ係数を決定するステップと、を含むことができ、マスタキャリブレーションモデルに対応する移行キャリブレーションモデルがターゲット装置のために生成される。
【0004】
ある可能な実施形態によれば、方法は、デバイスが、キャリブレーションモデルの更新に関連するスカウティングセットを取得するステップと、デバイスが、キャリブレーションモデルに関連するベータ係数を決定するステップと、デバイスが、ベータ係数に基づき線形モデル補正(LMC)技術を用いて、キャリブレーションモデルの更新に関連する更新ベータ係数を決定するステップと、デバイスが、更新ベータ係数に基づいて、キャリブレーションモデルを更新するステップと、を含むことができ、スカウティングセットが試料のセットと関連するスペクトルを含み、スペクトルに基づいてキャリブレーションモデルを更新する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1Aは、本明細書で説明する例示的実施形態の概要図である。
図1Bは、本明細書で説明する例示的実施形態の概要図である。
図1Cは、本明細書で説明する例示的実施形態の概要図である。
【
図2】本明細書で説明するシステム及び/又は方法を実装できる例示的環境の図である。
【
図3】
図2の1つ以上のデバイスの例示的要素の図である。
【
図4】本明細書で説明する移行キャリブレーションモデルを生成するための移行ベータ係数の決定に関連する、合焦線形モデル補正技術の例示的プロセスのフローチャートである。
【
図5A】
図4の合焦線形モデル補正技術と関連する例示的な図である。
【
図5B】
図4の合焦線形モデル補正技術と関連する例示的な図である。
【
図5C】
図4の合焦線形モデル補正技術と関連する例示的な図である。
【
図6】本明細書で説明する合焦線形モデル補正技術又は線形モデル補正技術と使用するためのマスタベータ係数を決定するために、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入する例示的プロセスのフローチャートである。
【
図7A】キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【
図7B】キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【
図7C】キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【
図8A】キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【
図8B】キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【
図9A】複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図9B】複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図9C】複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図9D】複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図10】
図10Aは、複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
図10Bは、複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図11】
図11Aは、複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
図11Bは、複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
【
図12】本明細書で説明する、線形モデル補正技術を用いた、例示的モデル更新プロセスのフローチャートである。
【
図13】
図13Aは、線形モデル補正技術を用いたキャリブレーションモデル更新の例示的結果を示す図である。
図13Bは、線形モデル補正技術を用いたキャリブレーションモデル更新の例示的結果を示す図である。
【
図14】
図14Aは、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットを用いる基準値の予測に関連する例示的結果を示す図である。
図14Bは、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットを用いる基準値の予測に関連する例示的結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の例示的実施形態の詳細な説明は、添付図面に言及する。様々な図面において同じ参照番号は、同じ又は類似する要素を同定し得る。
【0007】
キャリブレーションモデル移行及びキャリブレーションモデル更新は、近赤外(NIR)領域での応用等の、分光応用のための多変量キャリブレーションモデルメンテナンスにおける、2つの重要な分野である。
【0008】
ある場合には、第1分光装置で(又はある環境条件下)展開される多変量キャリブレーションモデルを、第2分光装置で(又は第1分光装置による異なる環境条件下)測定されるサンプルに対する較正される特性を予測するために用いるときに、結果が容認できない。さらに、同じ分光装置に対してさえ、信号が経時的にドリフトすることがあり、このことは既存のキャリブレーションモデルの更新が必要となり得ることを意味する。キャリブレーションモデルを更新するときに、煩わしく高価な、データを再収集して既存のキャリブレーションモデルを再較正する仕事を回避するために、ドリフトの原因にかかわらず、キャリブレーションモデルをある条件から他の条件に移行するためのキャリブレーション移行技術を実装できる。
【0009】
一般的なキャリブレーションモデル移行技術の要求物は、第1装置(例えばキャリブレーションモデルが移行されるマスタ装置又はオリジナル条件下の所与の装置)及び第2装置(例えばキャリブレーションモデルを移行するターゲット装置又はターゲット条件下の所与の装置)の両方で収集する同じサンプルセットからのスペクトルを含む移行データセットを獲得することである。ある場合には、移行データセットを取得することが困難又は不可能である。例えば、傷みやすい材料に対するキャリブレーションモデルを、ある国に配置されるマスタ装置から、他の国に配置されるターゲット装置に移行する必要があるときに、移行データセットを取得することが不可能となり得る。
【0010】
線形モデル補正(LMC)技術は、ターゲット装置のみが収集するスペクトルの要求量が少ないため、この問題を解決し得る。LMC技術が使用するスペクトルのセットは、スカウティングセットと呼ばれる。しかしながら、LMC技術を動作させるために、スカウティングセット用の基準値(例えば化学実験室で測定される実測値)が要求される。ある場合には、これらの基準値の取得は、非常に時間がかかり及び/又は高価となり得る。
【0011】
本明細書で説明するある実施形態は、キャリブレーションモデル移行の実施に伴って使用できる合焦LMC(fLMC)技術を提供する。LMC技術と同様に、fLMC技術は、ターゲット装置が収集するスカウティングセットのみを要求する。しかしながら、LMC技術と異なり、fLMC技術はスカウティングセットに対する基準値を要求しない。そうであるから、fLMC技術をキャリブレーションモデルと関連付けて使用することで、(例えば、LMC技術及び上述した典型的なキャリブレーションモデル移行技術と比較して)コスト、難度を削減し、及び/又はキャリブレーションモデルの複雑さを減少する。
【0012】
さらに、スペクトル分解能が比較的高く及び/又は波長範囲が比較的広いマスタ装置から、スペクトル分解能が比較的低く及び/又は波長範囲が比較的狭いターゲット装置へのキャリブレーションモデル移行(例えば、キャリブレーションモデルをベンチトップ装置から携帯用装置へ移行するとき)にしばしば直面する。このような場合のキャリブレーションモデル移行に関して、典型的なキャリブレーション移行技術は、キャリブレーションモデル移行プロセスを始めるために、完全なマスタキャリブレーションセット(例えば試4料のセットに関連付けられる、マスタ装置が測定するスペクトルのセット)を要求する。ここで、マスタキャリブレーションセットのスペクトルを、ターゲット装置のグリッドに挿入し、その後ターゲット装置へ移行するために中間モデルを発展させる。
【0013】
しかしながら、マスタキャリブレーションセットへアクセスすることがいつも可能とは限らない。マスタキャリブレーションセットがアクセス可能であるときでも、ある場合には、マスタデータベースが巨大であることがあり、及び/又はマスタデータベースが長い歴史のメンテナンスを有することがある。そうであるから、データベースからきれいなマスタキャリブレーションセットを取得することが困難であることがあり、及び/又は時間がかかることがある。
【0014】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、fLMC技術又はLMC技術が、マスタキャリブレーションセットを必要とせずに、キャリブレーションモデル移行の実施に関連付けられるマスタキャリブレーションモデルのベータ係数を使用する手順を提供する。(マスタキャリブレーションセットではなく)ベータ係数を使用することで、キャリブレーションモデル移行のコスト、難しさ、複雑さを減少させる。
【0015】
さらに、マスタ装置に対して発展したキャリブレーションモデルを、装置対装置の変動を有することがある他の多数の装置(例えば多数の異なるターゲット装置)に配置するときに、従来のキャリブレーションモデル移行技術を使用したキャリブレーションモデル移行を実施することが(例えばターゲット装置がマスタ装置から遠い位置に存在するときに)困難となり得る。ある実施形態では、この問題を解決するために、多数のターゲット装置上でLMC技術又はfLMC技術を構成できる。マスタキャリブレーションモデルをターゲット装置に引き渡すときに、ユーザはスカウティングセット(例えば所与の応用に関連付けられる少数の試料からのスペクトル)を収集しさえすればよい。これらのスペクトルを(例えば基準値が利用できるときに)LMC技術と合わせて又は(例えば基準値が利用できるかどうかにかかわらず)fLMC技術と合わせて用いて、キャリブレーションモデルを自動的に修正できる。
【0016】
さらに、上述したように、(例えば試料及び/又は測定環境等の変化によって)キャリブレーションモデルを所与の装置上に展開した後、キャリブレーションモデルの更新が必要となり得る。キャリブレーションモデルの更新を実施するための典型的な技術は、新たな試料を既存のキャリブレーションセットに追加し、それからキャリブレーションモデルを再構成することである。しかしながら、この技術は、新たな試料又は新たな条件に対して適合するキャリブレーションモデルを作成するために、著しい数の試料を必要とし得る。さらに、この技術は全キャリブレーションデータが入手可能であることを要求する。加えて、キャリブレーションデータベースが巨大であるときに、特にスペクトル範囲が広くスペクトル分解能が高いときに、キャリブレーションの再構成は、相当量の時間及び/又は資源(例えばプロセッサ資源及び/又はバッテリ電源等)を消費し得る。したがって、装置のオンライン動作中に、キャリブレーションモデルを更新できないことがある。
【0017】
本明細書で説明されるいくつかの実装は、LMC技術を使用してキャリブレーションモデルを更新するための技術を提供する。本来、LMC技術は、キャリブレーションモデルを更新するために、比較的小さな数の試料を要求する。ある実施形態では、更新セット(すなわちキャリブレーションモデル更新の実施と関連付けられるスカウティングセット)は、より正確に将来を予測するために、将来の試料に対する異なる条件を表す試料を含み得る。さらに、LMC技術を使用するキャリブレーションモデル更新は、上述した典型的な更新技術よりも比較的高速である。例えば、LMC手順を使用するキャリブレーションモデル更新を数秒で実施でき、それによりオンライン動作中にキャリブレーションモデルを更新できる。
【0018】
さらに、ある場合には、マスタ装置及びターゲット装置の両方から移行セットが入手可能である一方、移行セットに対する基準値は利用できないことがある。このような場合において、ここで説明するように、ターゲット装置からの移行セットをスカウティングセットとして使用し、マスタキャリブレーションモデルが予測する、マスタ装置からの移行セットに対する基準値を、基準値として使用して、LMC技術を実施できる。このように、そうでなければ他の従来のキャリブレーション移行技術を実施するために使用できるスペクトルデータが入手できるときに、LMC技術を実施できる。
【0019】
図1A-1Cは、本明細書で説明する例示的実施形態の図である。
図1A-1Bは、合焦線形モデル補正(fLMC)補正技術の使用に関連付けられる例示的実施形態100の図である。当該使用は、ターゲット装置に対する構成に関し、マスタ装置に関連付けられるマスタキャリブレーションモデルに対応する、移行キャリブレーションモデルの生成に伴う。
【0020】
図1A及び1Bの例示的実施形態100のために、マスタ装置上で構成される、マスタキャリブレーションモデルがターゲット装置に移行される。言い換えれば、マスタ装置上で構成されるマスタキャリブレーションモデルに対応し、ターゲット装置が使用する移行キャリブレーションモデルを生成できる。説明される例示的実施形態100は、移行キャリブレーションモデルの生成とともに、fLMC技術を使用する。
【0021】
図1と参照符号105に表されるように、モデル化デバイス(例えば移行キャリブレーションモデル生成に関連するデバイス)は、ターゲット装置のグリッドにおいてマスタキャリブレーションモデルのマスタベータ係数を取得できる。
【0022】
マスタベータ係数は、マスタキャリブレーションモデルに関連付けられる係数のセットを含み得る。例えば、マスタベータ係数は、マスタ装置上で構成される、部分最小二乗法(PLS)回帰キャリブレーションモデルに関連付けられる回帰係数のベクトルを含み得る。
【0023】
上述したように、マスタベータ係数は、ターゲット装置のグリッドに存在する。ターゲット装置のグリッドは、ターゲット装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定めるターゲット装置のパラメータである。同様に、マスタ装置のグリッドは、マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲が定めるマスタ装置のパラメータである。ある実施形態では、マスタ装置のグリッドが、ターゲット装置のグリッドと異なることがある(例えば、マスタ装置が、ターゲット装置よりも、比較的高いスペクトル分解能及び/又は広い波長範囲を有するとき)。あるいは、マスタ装置のグリッドは、ターゲット装置のグリッドと一致できる(例えば、マスタ装置のスペクトル分解能及び波長範囲がターゲット装置のスペクトル分解能及び波長範囲と閾値内で一致するとき)。
【0024】
ある実施形態では、モデル化デバイスがマスタベータ係数を取得する方法は、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致するかどうかに基づくことができる。
【0025】
例えば、モデル化デバイスは、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致するかどうかを(例えば、マスタ装置及び/又はターゲット装置が提供する情報に基づき、記憶される情報又はモデル化装置がアクセス可能な情報に基づき)判定できる。ある実施形態では、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致するとモデル化デバイスが判定する場合、モデル化デバイスは、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を、マスタベータ係数として同定できる。言い換えれば、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致するときに、(例えば、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数がすでにターゲット装置のグリッドに存在するため)モデル化デバイスは、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を、マスタベータ係数として直接使用できる。このような場合には、マスタキャリブレーションモデルに関連するマスタキャリブレーションセットが利用可能かどうかにかかわらず、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を、マスタベータ係数として使用できる。
【0026】
ある実施形態では、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しないとモデル化デバイスが判定する場合、マスタ装置は、マスタキャリブレーションに関連付けられるマスタキャリブレーションセットに基づいてマスタベータ係数を取得できる。例えば、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しない場合、モデル化デバイスは、中間キャリブレーションデータ(すなわち、ターゲット装置のグリッドに挿入されるマスタキャリブレーションセットのスペクトル)を生み出すために、マスタキャリブレーションセットをターゲット装置のグリッドに挿入できる。ここで、モデル化デバイスは、挿入されるキャリブレーションデータに基づいて、回帰モデル(例えば部分最小二乗法モデル及び/又は主成分回帰(PCR)モデル等)を生成でき、マスタベータ係数を回帰モデルのベータ係数として決定できる。ある実施形態では、マスタキャリブレーションセットが利用可能なときに、モデル化デバイスはマスタベータ係数をこのように取得できる。例えば、モデル化デバイスは、マスタキャリブレーションセットが利用可能である(例えば、アクセス可能であり、閾サイズ又は複雑度レベルを超えない)と判定でき、上述したように進行できる。
【0027】
ある実施形態では、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しないとモデル化デバイスが判定する場合、マスタ装置は、マスタキャリブレーションセットのベータ係数に基づいてマスタベータ係数を取得でき、その例を
図1Cに示す。
【0028】
図1Cは、マスタベータ係数を取得するために、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入することに関連する例示的実施形態150の図である。参照符号155が表すように、モデル化デバイスは、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致しないと判定できる。参照符号160が表すように、この判定に基づいて、モデル化デバイスは、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入できる。参照符号165が表すように、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドへの挿入した結果をマスタベータ係数として使用できる。ある実施形態では、マスタキャリブレーションセットが利用できないときに、モデル化デバイスはマスタベータ係数をこのように取得できる。例えば、モデル化デバイスは、マスタキャリブレーションセットが利用できない(例えば、アクセス可能ではなく、閾サイズ又は複雑度レベルを超える)と判定でき、上述したように進行できる。
【0029】
ある実施形態では、(例示的実施形態100に関連して説明されるように)モデル化デバイスは、キャリブレーションモデル移行に関するfLMC技術の使用とともに、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドへ挿入することに基づいて、マスタベータ係数を決定できる。これとともに又はこれに代えて、モデル化デバイスは、LMC技術の使用とともに、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドへ挿入することに基づいて、マスタベータ係数を決定できる。言い換えれば、キャリブレーションモデル移行に関するfLMC技術又はLMC技術の実施に伴って、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドへ挿入することができる。
【0030】
例示的実施形態100に関連するfLMC技術に戻って、ある実施形態では、モデル化デバイスは、移行ベータ係数のセットに基づいて、最終的な移行ベータ係数を決定できる。最終的な移行ベータ係数は、移行キャリブレーションモデルを生成するために使用できるベータ係数である。後述するように、ある実施形態では、モデル化デバイスは、移行ベータ係数の各セットを、目的関数の制約最適化の各繰返しに基づいて決定できる。
【0031】
ある実施形態では、各繰返しに関して、モデル化デバイスは、以下の目的関数に対する制約最適化を実施できる。
【0032】
【0033】
この関数は、以下の制約を伴う。
【0034】
【0035】
ここで、Xscoutはスカウティングセット(例えばターゲット装置が測定するスカウティングセットのスペクトル)であり、btransA及びbtransBは所与の繰返しに関連する移行ベータ係数の対であり、bmasterはマスタベータ係数であり、rは制約閾値であり、minYcal及びmaxYcalはターゲット装置に関連するキャリブレーション範囲を定める。
【0036】
ある実施形態では、バリデーションセットを使用して、制約閾値r(例えば、上述した式で説明される、相関制約及び/又は傾き制約)を最適化できる。このような場合に、制約閾値rのセットを反復的に使用でき、結果として生じる移行ベータ係数の決定とともに、最適なr(例えばバリデーションセットの予測の二乗平均平方根誤差(RMSEP)に基づいて決定される)を使用できる。ある実施形態では、fLMC技術又はLMC技術とともにこの制約閾理の最適化を使用できる。
【0037】
目的関数を確立するために、再現性概念を導入する。移行ベータ係数の対btransA及びbtransBのそれぞれがスカウティングセットに適合できると仮定すると、btransA及びbtransBを使用するスカウティングセットの予測値の差が小さくなるであろう。したがって、目的関数は、btransA及びbtransBを用いて、スカウティングセットの予測値の自乗差を最小化する。この再現性概念を使用することで、スカウティングセットの基準値の必要性を取り除く。言い換えれば、この再現性概念のために、fLMC技術は(LMC技術と異なり)スカウティングセットの基準値を要求しない。
【0038】
有意義な結果を得るために、ある制約のセット下で目的関数の最小化を実施する必要がある。例えば、制約のセットは、マスタベータ係数(bmaster)に関連する相関制約と、目的関数の制約最適化の所与の繰返しに関連する移行ベータ係数の対(btransA及びbtransB)のそれぞれとを含み得る。この相関制約に従って、btransAとbmasterとの間の相関、及びbtransBとbmasterとの間の相関は、閾値(例えばそれぞれ式(1)及び(2)によって示され、ここでrは例えば0.95以上となり得る)を満たすできである。
【0039】
他の例として、制約のセットは、マスタベータ係数に関連する傾き制約と、目的関数の制約最適化の所与の繰返しに関連する移行ベータ係数の対のそれぞれとを含み得る。この傾き制約に従って、btransAとbmasterとの間の傾き、及びbtransBとbmasterとの間の傾きは、閾値(例えばそれぞれ式(3)及び(4)によって示され、ここでrは例えば0.95以上となり得る)を満たすべきである。
【0040】
他の例として、制約のセットは、スカウティングセットに関連する予測値に対するキャリブレーション範囲制約を含み得る。このキャリブレーション制約によれば、btransAを用いて予測されるスカウティングセットの値(すなわちXscoutbtransA)と、btransBを用いて予測されるスカウティングセットの値(すなわちXscoutbtransB)とは、キャリブレーション範囲(例えば式(5)及び(6)がそれぞれ示す範囲)内、又はスカウティングセットの基準値の近くの範囲内に存在するべきである。
【0041】
上述した制約最適化手順の所与の繰返しを開始するために、btransA及びbtransBの初期値(すなわちそれぞれbtransA0及びbtransB0)が必要である。ある実施形態では、モデル化デバイスは、移行ベータ係数の初期対のランダム生成に基づいて、移行ベータ係数の初期対を生成できる。これとともに、又はこれに代えて、モデル化デバイスは、ランダム値に関連付けられる、一次関数(例えばbtransA0, btransB0 = m×bmaster + n、ここでm及びnは乱数である)のマスタベータ係数への適用に基づいて、移行ベータ係数の初期対を生成できる。これとともに、又はこれに代えて、モデル化デバイスは、ランダム値のマスタベータ係数への付加(例えばbtransA0, btransB0 = bmaster + n、ここでnは乱数である)に基づいて、移行ベータ係数の初期対を生成できる。
【0042】
制約最適化の所与の繰り返しに関して、モデル化デバイスは、初期移行ベータ係数の対(例えば、繰返しiに対するbtransAi0及びbtransBi0、並びに繰返しkに対するbtransAk0及びbtransBk0)を生成でき、移行ベータ係数の対(例えば、繰返しiに対するbtransAi及びbtransBi、並びに繰返しkに対するbtransAk及びbtransBk)を決定するために目的関数の制約最適化を実施できる。その後、モデル化デバイスは、移行ベータ係数の対に基づいて移行ベータ係数を決定できる(例えば繰返しiに対するbtransi、及び繰返しkに対するbtransk)。例えば、繰返しiに関して参照符号110で表すように、モデル化デバイスは、btransAi0及びbtransBi0を生成でき、btransAi及びbtransBiを決定するために目的関数の制約最適化を実施でき、繰返しiに対する移行ベータ係数(btransi)を(例えばbtransAi及びbtransBiの平均化に基づく)移行ベータ係数の対に基づいて決定できる。他の例として、繰返しkに関して参照符号115で表すように、モデル化デバイスは、btransAk0及びbtransBk0を生成でき、btransAk及びbtransBkを決定するために目的関数の制約最適化を実施でき、繰返しkに対する移行ベータ係数(btransk)を(例えばbtransAk及びbtransBkの平均化に基づく)移行ベータ係数の対に基づいて決定できる。ここで、btransi及びbtranskは、移行ベータ係数のセットに含まれ、移行ベータ係数のセットに基づいて、モデル化デバイスは最終移行ベータ係数(btrans)を決定できる。
【0043】
ある実施形態では、モデル化デバイスは、(例えば、移行ベータ係数の初期対のランダム化性質に基づくバイアス結果を回避するため)目的関数の制約最適化の多数の(例えば5、20及び/又は100等の)繰返しを実施するように構成され得る。
【0044】
図1B及び符号120が表すように、モデル化デバイスは、移行ベータ係数のセットに基づいて、最終移行ベータ係数(b
trans)を決定できる。例えば、モデル化デバイスは、最終移行ベータ係数を、移行ベータ係数のセット(例えばb
transiからb
transk)の平均値、中央値及び/又は最頻値等として決定できる。
【0045】
符号125が表すように、モデル化デバイスは、最終移行ベータ係数に基づいて、移行キャリブレーションモデルを生成できる。例えば、モデル化デバイスは、最終移行ベータ係数に基づいて、回帰モデル(例えばPLSモデル及び/又はPCRモデル等)を生成できる。符号130が表すように、モデル化デバイスは、移行キャリブレーションモデルをターゲット装置に提供でき(例えばターゲット装置は移行キャリブレーションモデルを使用でき)る。このようにして、モデル化デバイスは、スカウティングセットの基準値を必要とせず、スカウティングセットに関連するスペクトルを用いてモデル化デバイスが移行キャリブレーションモデルを生成できるようにする、fLMC技術を使用するように構成され得る。
【0046】
上述した
図1A-1Cは、単なる例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は図面1A-1Cに関して説明した例とは相違し得る。
【0047】
図2は、本明細書で説明するシステム及び/又は方法を実装できる例示的環境200の図である。
図2に表されるように、環境200は、マスタ装置205と、ターゲット装置210と、モデル化装置215と、ネットワーク220と、を含み得る。環境200のデバイスは、有線接続、無線接続又は有線接続及び無線接続の組み合わせによって相互に接続し得る。
【0048】
マスタ装置205は、マスタキャリブレーションモデルとともに構成され、試料に対する分光計測を実施できるデバイスを含む。例えば、マスタ装置205は、分光法(例えば、近赤外(NIR)分光法、中赤外(mid-IR)分光法又はラマン分光法等の振動分光法)を実施するデスクトップ(すなわち非手持ち式)分光計デバイスを含み得る。ある実施形態では、マスタ装置205は、ターゲット装置210が取得する分光測定値よりも高い分解能で分光測定値を取得できる(すなわち、マスタ装置205を高分解能デバイスとできる一方、ターゲット装置210を低分解能デバイスとできる)。例えば、マスタ装置205は400チャンネルに対する分光測定値を取得できる一方、ターゲット装置210は125チャンネルに対する分光測定値を取得できる。ある実施形態では、マスタ装置205は、マスタ装置205が取得する分光測定値を較正するマスタキャリブレーションモデルとともに構成され得る。ある実施形態では、マスタ装置205は、環境200において、デバイス215等の他のデバイスから情報を受信でき及び/又は当該他のデバイスへ情報を送信できる。
【0049】
ターゲット装置210は、ターゲットキャリブレーションモデルに基づいて、試料に対する分光計測を実施できるデバイスを含み、ここで、本明細書で説明するように、マスタ装置205に関するマスタキャリブレーションモデルに関連する情報に基づいて、ターゲットキャリブレーションモデルを生成できる。例えば、ターゲット装置210は、分光法を実施する、携帯型分光器デバイス又は手持ち式分光器デバイスを含み得る。ある実施形態では、ターゲット装置210は、マスタ装置205が取得する分光測定値よりも低い分解能で分光測定値を取得できる。ある実施形態では、ターゲット装置210は、環境200において、モデル化デバイス215等の他のデバイスから情報を受信でき及び/又は当該他のデバイスへ情報を送信できる。
【0050】
モデル化デバイス215は、本明細書で説明するように、マスタ装置205からターゲット装置210へのマスタキャリブレーションモデルの移行(すなわち、マスタキャリブレーションモデルに対応する移行キャリブレーションモデルを生成する)及び/又は所与の装置(例えばマスタ装置205又はターゲット装置210)上で構成されるキャリブレーションモデルの更新に関連する動作を実施できるデバイスを含む。例えば、モデル化デバイス215は、サーバ、サーバのグループ、コンピュータ又はクラウドコンピューティングデバイス等を含み得る。ある実施形態では、モデル化デバイス215は、環境200において、マスタ装置205及び/又はターゲット装置210等の他のデバイスから情報を受信でき及び/又は当該他のデバイスへ情報を送信できる。ある実施形態では、モデル化デバイス215及びマスタ装置205を単一のデバイス内に実装できる。あるいは、ある実施形態では、モデル化デバイス215及びターゲット装置210を単一のデバイス内に実装できる。
【0051】
ネットワーク220は、1つ以上の有線及び/又は無線ネットワークを含む。例えば、ネットワーク220は、セルラーネットワーク(例えば新無線(NR/5G)ネットワーク、ロング・ターム・エヴォリューション(LTE)ネットワーク、3Gネットワーク、符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、等)、地上波公共移動通信ネットワーク(PLMN)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、電話ネットワーク(例えば公衆交換電話網(PSTN))、プライベートネットワーク、アドホックネットワーク、イントラネット、インターネット、光ファイバベースのネットワーク若しくはクラウドコンピューティングネットワーク等、及び/又はこれらの若しくは他の種類のネットワークの組み合わせを含み得る。
【0052】
図2に表されるデバイス及びネットワークの数及び配置を例示として提供する。実際に、付加的なデバイス及び/若しくはネットワークが存在でき、より少ないデバイス及び/若しくはネットワークが存在でき、異なるデバイス及び/若しくはネットワークが存在でき、又は
図2に表される配置とは異なる配置のデバイス及び/若しくはネットワークが存在できる。
【0053】
さらに、
図2に表される2つ以上のデバイスを単一のデバイス内に実装でき、又は
図2に表される単一の装置を複数の分散型デバイスとして実装できる。例えば、マスタ装置205及びモデル化デバイス215を2つの分離したデバイスとして説明するが、マスタ装置205及びモデル化デバイス215を単一のデバイス内に実装できる。他の例として、ターゲット装置210及びモデル化デバイス215を単一のデバイス内に実装できる。これとともに又はこれに代えて、環境200におけるデバイスのセット(例えば1つ以上のデバイス)は、環境200におけるデバイスの他のセットが実施すると説明される1つ以上の機能を実施できる。
【0054】
図3は、デバイス300の例示的要素の図である。デバイス300は、マスタ装置205、ターゲット装置210及び/又はモデル化デバイス215に相当し得る。ある実施形態では、マスタ装置205、ターゲット装置210及び/又はモデル化デバイス215は、1つ以上のデバイス300及び/又はデバイス300の1つ以上の要素を含み得る。
図3に表すように、デバイス300は、バス310と、プロセッサ320と、メモリ330と、記憶要素340と、入力要素350と、出力要素360と、通信インタフェース370とを含み得る。
【0055】
バス310は、デバイス300の要素間で通信を可能とする要素を含む。プロセッサ320は、ハードウェア、ファームウェア又はハードウェア及びファームウェアの組み合わせで実装される。プロセッサ320は、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、アクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット(APU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)又は他の種類の処理要素の形態をとる。ある実施形態では、プロセッサ320は、機能を実施するようにプログラム化できる1つ以上のプロセッサを含む。メモリ330は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、並びに/又はプロセッサ320が使用するための情報及び/若しくは命令を記憶する他の種類の動的若しくは静的記憶デバイス(例えばフラッシュメモリ、磁気メモリ及び/又は光メモリ)を含む。
【0056】
記憶装置340は、デバイス300の動作及び使用に関する情報及び/又はソフトウェアを記憶する。例えば、記憶要素340は、ハードディスク(例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク及び/又は固体ディスク)、コンパクトディスク(CD)、デジタル多目的ディスク(DVD)、フロッピーディスク、カートリッジ、磁気テープ及び/又は他の種類の非一時的コンピュータ可読媒体を、対応ドライブと一緒に含み得る。
【0057】
入力要素350は、デバイス300が、例えばユーザ入力(例えば、タッチ・スクリーン・ディスプレイ、キーボード、キーパッド、マウス、ボタン、スイッチ及び/又はマイクロフォン)を経て、情報を受信可能とする要素を含む。これとともに又はこれに代えて、入力要素350は、情報を感知するセンサ(例えば全地球測位システム(GPS)要素、加速度計、ジャイロスコープ及び/又はアクチュエータ)を含み得る。出力要素360は、装置300からの出力情報を提供する要素(例えばディスプレイ、スピーカ及び/又は1つ以上の発光ダイオード(LEDs))を含む。
【0058】
通信インタフェース370は、装置300が例えば有線接続、無線接続又は有線接続及び無線接続の組み合わせにより他のデバイスと通信できるようにするトランシーバのような要素(例えばトランシーバ及び/又は分離したレシーバ及びトランスミッタ)を含む。通信インタフェース370は、デバイス300が他のデバイスからの情報を受信可能及び/又は他のデバイスへ情報を提供可能とし得る。例えば、通信インタフェース370は、イーサネット(登録商標)インタフェース、光インタフェース、同軸インタフェース、赤外線インタフェース、無線周波数(RF)インタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)インタフェース、Wi-Fi(登録商標)インタフェース又はセルラーネットワークインターフェース等を含み得る。
【0059】
デバイス300は、本明細書で説明する1つ以上のプロセスを実施し得る。デバイス300は、メモリ330及び/又は記憶要素340等の非一時的コンピュータ可読媒体が記憶するソフトウェア命令を実行するプロセッサ320に基づいて、これらのプロセスを実施し得る。本明細書において、コンピュータ可読媒体は、非一時的メモリデバイスとして定義される。メモリデバイスは、単一の物理的記憶デバイス内のメモリ空間又は複数の物理的記憶デバイスにわたるメモリ空間を含む。
【0060】
ソフトウェア命令は、他のコンピュータ可読媒体から又は他のデバイスから、通信インタフェース370を経て、メモリ330及び/又は記憶要素340に読み込まれ得る。メモリ330及び/又は記憶要素340に記憶されているソフトウェア命令は、実行されるときに、プロセッサ320に本明細書で説明する1つ以上のプロセスを実施させ得る。これとともに又はこれに代えて、ハードウェアにより実現されている回路を原位置で又はソフトウェア命令と組み合わせて使用して、本明細書で説明する1つ以上のプロセスを実施し得る。したがって、本明細書で説明する実装は、ハードウェア回路及びソフトウェアの特定の組み合わせに限定されるものではない。
【0061】
図3に表される要素の数及び配置を例示として提供する。実際に、デバイス300は、付加的な要素、より少ない要素、異なる要素又は
図3に表される配置とは異なる配置の要素を含み得る。これとともに又はこれに代えて、デバイス300における要素のセット(例えば1つ以上の要素)は、デバイス300における他の要素のセットが実施すると説明される1つ以上の機能を実施できる。
【0062】
図4は、本明細書で説明する移行キャリブレーションモデルを生成するための移行ベータ係数の決定に関連する、合焦線形モデル補正(fLMC)技術の例示的プロセス400のフローチャートである。ある実施形態では、
図4の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215によって実施され得る。ある実施形態では、
図4の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215から分離した又はモデル化デバイス215を含む、他のデバイス又はデバイスのグループ(例えばマスタ装置205及び/又はターゲット装置210)によって実施され得る。
【0063】
図4に表すように、プロセス400は、マスタ装置に関連するマスタキャリブレーションモデルのマスタベータ係数を取得するステップを含むことができ、ここでマスタベータ係数はターゲット装置のグリッドに存在する(ブロック410)。例えば、モデル化デバイス215は、マスタ装置205に関連するマスタキャリブレーションモデルのマスタベータ係数を取得でき、ここで上述したようにマスタベータ係数はターゲット装置210のグリッドに存在する。
【0064】
図4に更に表されるように、プロセス400は、移行ベータ係数の対を決定するために制約のセットに伴って目的関数の制約最適化を実施するステップを含むことができ、ここで制約最適化は移行ベータ係数の初期対、マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて実施される(ブロック420)。例えば、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数の対を決定するために制約のセットに伴う目的関数の制約最適化を実施でき、ここで上述したように制約最適化は移行ベータ係数の初期対、マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて実施される。
【0065】
図4に更に表されるように、プロセス400は、移行ベータ係数の対に基づいて移行ベータ係数を決定するステップ(ブロック430)を含み得る。例えば上述したように、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数の対に基づいて移行ベータ係数を決定することができる。
【0066】
図4に更に表されるように、プロセス400は、移行ベータ係数を含む移行ベータ係数のセットに基づいて最終移行ベータ係数を決定するステップを含むことができ、ここで最終移行ベータ係数はターゲット装置が使用するための移行キャリブレーションモデルの生成に関連し、移行キャリブレーションモデルはマスタキャリブレーションモデルに対応する(ブロック440)。例えば、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数を含む移行ベータ係数のセットに基づいて最終移行ベータ係数を決定することができ、ここで最終移行ベータ係数はターゲット装置210が使用するための移行キャリブレーションモデルの生成に関連し、移行キャリブレーションモデルはマスタキャリブレーションモデルに対応する。
【0067】
プロセス400は、後述し及び/又は本明細書の別の場所で説明される1つ以上の他のプロセスに関連する、任意の単一の実装又は実装の任意の組み合わせ等の、付加的な実装を含むことができる。
【0068】
ある実施形態では、モデル化デバイス215及び/又はターゲット装置210は、最終移行ベータ係数に基づいて、移行キャリブレーションモデルを生成できる。
【0069】
ある実施形態では、移行ベータ係数のセットは、他の少なくとも1つの移行ベータ係数を含む。当該移行ベータ係数はそれぞれ、移行ベータ係数の各初期対に基づく目的関数の制約最適化の各実施に基づいて決定される。
【0070】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、マスタベータ係数を取得するときに、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致しているかどうか判定でき、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をマスタベータ係数として同定できる。
【0071】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、マスタベータ係数を取得するときに、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致しないかどうかを判定でき、挿入キャリブレーションデータを生成するために、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致しないとの判定に基づいて、マスタキャリブレーションセットをターゲット装置210のグリッドに挿入でき、挿入キャリブレーションデータに基づいて回帰モデルを生み出すことができ、マスタベータ係数を回帰モデルのベータ係数として決定できる。
【0072】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、マスタベータ係数を取得するときに、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致しないかどうかを判定でき、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致しないとの判定に基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置210のグリッドに挿入でき、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置210のグリッドに挿入した結果に基づいてマスタベータ係数を決定できる。ある実施形態では、マスタキャリブレーションモデルに関連するマスタキャリブレーションセットが利用できないという判定に基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置210のグリッドに挿入する。
【0073】
ある実施形態では、制約のセットは、スカウティングセットに関連する予測値に対するキャリブレーション範囲制約に加えて、マスタベータ係数及び移行ベータ係数の対のそれぞれに関連する相関制約を含み、並びに/又はマスタベータ係数及び移行ベータ係数の対のそれぞれに関連する傾き制約を含む。
【0074】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数の初期対のランダム生成に基づいて、ランダム値に関連する一次関数をマスタベータ係数に適用し、及び/又はランダム値をマスタベータ係数に加えて、移行ベータ係数の初期対を生成できる。
【0075】
図4はプロセス400の例示的ブロックを表すが、ある実施形態では、プロセス400は付加的なブロック、より少ない数のブロック、異なるブロック又は
図4に描写されるブロックとは異なる配置のブロックを含むことができる。これとともに又はこれに代えて、プロセス400の2つ以上のブロックを並列に実施できる。
【0076】
fLMC技術の有効性を示すために、サトウキビのブリックスに関するPLS回帰モデルを、ベンチトップ・フォス(FOSS)・NIRマスタ装置から携帯型MicroNIRターゲット装置に移行した。
図5A-5Cは、fLMC技術を用いる例示的キャリブレーションモデル移行の結果に関連する図である。
【0077】
全体として、1712のフォス・スペクトルを使用して、マスタキャリブレーションモデルを構築した。これらのスペクトルはまず、MicroNIRグリッドに挿入された。これらの挿入されたキャリブレーションデータを用いて中間マスタキャリブレーションモデルを構築し、結果として生じるベータ係数をbmasterとして使用した。MicroNIR装置が収集する126のスペクトルが存在し、当該126のスペクトルから15のスペクトルをスカウティングセットとして無作為に選択してfLMCを実施した。残りの111のスペクトルを外部バリデーションセットとして使用して、移行キャリブレーションモデルを検証した。移行キャリブレーションモデルの予測性能を、マスタキャリブレーションモデルの予測性能と、同じ111の試料からのフォス・バリデーションセットを用いて比較した。
【0078】
図5Aに表されるように、キャリブレーションモデルの移行がない場合、中間マスタキャリブレーションモデルを使用してMicroNIRバリデーションセットを予測するときに、予測の二乗平均平方根誤差(RMSEP)は高かった。しかしながら、fLMC技術を用いてキャリブレーションモデル移行を実施したときに、
図5Bに表すようにRMSEPは著しく減少した。また、フォス・バリデーションセットに関するオリジナル・フォス・モデルを使用して、RMSEPを計算し、移行キャリブレーションモデルの性能を評価するベンチマークとして使用した。
図5Cにおいて、移行キャリブレーションモデルによるバリデーションセットに対する、予測されるブリックス値と実験室ブリックス値との間の残差は、オリジナル・フォス・マスタキャリブレーションモデルの約±2RMSEP内に留まることがわかった。このことは、約95%の信頼度で、移行MicroNIRキャリブレーションが、フォス・キャリブレーションのオリジナル範囲内に存在することを示す。これらの結果は、fLMC技術を用いて生み出される移行キャリブレーションの性能が、オリジナル・フォス・マスタキャリブレーションモデルに近いこと(例えば、比較的広い波長範囲を有し、比較的高いスペクトル分解能を有すること)を示す。
【0079】
さらに、比較のため、キャリブレーションモデル移行に関する2つの典型的な技術である、平均差補正(MDC)技術及び区分的直接標準化(PDS、piecewise direct standardization)技術を用いて、同じフォス・マスタキャリブレーションモデルをMicroNIRに移行した。これら2つの技術を適用するために、マスタ装置及びターゲット装置の両方からの、15のスペクトルからなる移行セットを使用した。これらのスペクトルは、fLMC技術を使用したときにスカウティングセットで用いた試料と同じ試料からのスペクトルであった。MDC及びPDSそれぞれによる移行キャリブレーションモデルを使用した、同バリデーションセットに対するRMSEPは、1.80及び0.72であった。このように、この場合では、fLMC技術は、MDC技術よりも良好に振る舞い、PDS技術よりも振る舞いが劣っていた。しかしながら、PDS技術とは異なり、fLMC技術はマスタ装置上で移行セットを必要としないことにより、fLMC技術は類似する性能を達成しながら比較的低コスト及び/又は単純となる。
【0080】
上述した
図5A-5Cは、単なる例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は
図5A-5Cに関して説明した例とは相違し得る。
【0081】
図6は、fLMC技術又はLMC技術を使用するためのマスタベータ係数を決定するために、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入する例示的プロセス600のフローチャートである。ある実施形態では、
図6の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215によって実施され得る。ある実施形態では、
図6の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215から分離した又はモデル化デバイス215を含む、他のデバイス又はデバイスのグループ(例えばマスタ装置205及び/又はターゲット装置210)によって実施され得る。
【0082】
図6に表すように、プロセス600は、マスタキャリブレーションモデルと関連するマスタ装置のグリッドが、ターゲット装置のグリッドと一致していないと判定し、マスタキャリブレーションモデルに対応する移行キャリブレーションモデルが、ターゲット装置に対して生み出されること(ブロック610)を含み得る。例えば、モデル化デバイス215は、上述したように、マスタキャリブレーションモデルと関連するマスタ装置205のグリッドが、ターゲット装置210のグリッドと一致していないと判定することができ、マスタキャリブレーションモデルに対応する移行キャリブレーションモデルが、ターゲット装置210に対して生み出される。
【0083】
図6に更に表すように、プロセス600は、マスタ装置のグリッドがターゲット装置のグリッドと一致していないと判定することに基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入すること(ブロック620)を含み得る。例えば、モデル化デバイス215は、上述したように、マスタ装置205のグリッドがターゲット装置210のグリッドと一致していないと判定することに基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置210のグリッドに挿入し得る。
【0084】
図6に更に表すように、プロセス600は、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入した結果に基づいて、移行キャリブレーションモデルの生成に関連するマスタベータ係数を決定すること(ブロック630)を含み得る。例えば、モデル化デバイス215は、上述したように、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置210のグリッドに挿入した結果に基づいて、移行キャリブレーションモデルの生成に関連するマスタベータ係数を決定できる。
【0085】
プロセス600は、後述し及び/又は本明細書の別の場所で説明される1つ以上の他のプロセスに関連する、任意の単一の実装又は実装の任意の組み合わせ等の、付加的な実装を含むことができる。
【0086】
ある実施形態では、マスタキャリブレーションモデルに関連するマスタキャリブレーションセットが利用できないと判定することに基づいて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を、ターゲット装置210のグリッドに挿入する。
【0087】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数の対を決定するために制約のセットに伴う目的関数の制約最適化を実施でき、ここで制約最適化は移行ベータ係数の初期対、マスタベータ係数及びスカウティングセットに関連するスペクトルに基づいて実施される。ここで、モデル化デバイスは、移行ベータ係数の対に基づいて移行ベータ係数を決定でき、移行ベータ係数を含む移行ベータ係数のセットに基づいて最終移行ベータ係数を決定できる。言い換えれば、ある実施形態では、モデル化デバイス215は、fLMC技術を用いて最終移行ベータ係数を決定できる。ある実施形態では、制約のセットは、マスタベータ係数及び移行ベータ係数の対のそれぞれに関連する相関制約と、マスタベータ係数及び移行ベータ係数の対のそれぞれに関連する傾き制約と、スカウティングセットに関連する予測値に対するキャリブレーション範囲制約と、を含む。ある実施形態では、モデル化デバイス215は、移行ベータ係数の初期対のランダム生成に基づいて、ランダム値に関連する一次関数をマスタベータ係数に適用し、又はランダム値をマスタベータ係数に加えて、移行ベータ係数の初期対を生成できる。
【0088】
ある実施形態では、モデル化デバイス215は、マスタベータ係数に基づき線形モデル補正(LMC)技術を使用して、移行キャリブレーションモデルの生成に関連する移行ベータ係数を決定できる。言い換えれば、ある実施形態では、モデル化デバイス215は、LMC技術を用いて最終移行ベータ係数を決定できる。ある実施形態では、LMC技術の使用に関連するスカウティングセットに対する基準値を、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットに基づいて予測する。
【0089】
図6はプロセス600の例示的ブロックを表すが、ある実施形態では、プロセス600は付加的なブロック、より少ない数のブロック、異なるブロック又は
図6に描写されるブロックとは異なる配置のブロックを含むことができる。これとともに又はこれに代えて、プロセス600の2つ以上のブロックを並列に実施できる。
【0090】
ある実施形態では、上述したように、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を、ターゲット装置210のグリッドに挿入でき、マスタベータ係数として使用できる。例えば、ある実施形態では、この技術を、LMC技術又はfLMC技術と共に使用できる。
図7A-7C及び8A-8Bは、キャリブレーションモデル移行の実施に関連し、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドに挿入し、LMC技術及びfLMC技術をそれぞれ使用するステップに関連する図である。
【0091】
図5A-5Cに関して上述したものと同じデータセットを用いて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をマスタベータ係数としてターゲット装置のグリッドに挿入した結果を使用してLMC技術を実施した。その結果を
図7A-7Cに示す。ここでは、利用できるマスタキャリブレーションセットが存在しないため、中間マスタキャリブレーションモデルを構築できない。
図7Aに表すように、挿入されるベータ係数を直接使用して、ターゲット装置上でバリデーションセットを予測するときに、結果として生じるRMSEPは高かった。
図7Bに表すように、挿入されるベータ係数をマスタベータ係数として使用してLMC技術を実施するときに、RMSEPは著しく減少した。さらに、
図7Cに表すように、移行キャリブレーションモデルによるバリデーションセットに対する、予測されるブリックス値と実験室ブリックス値との間の残差は、限定的な例外を有するものの、オリジナル・フォス・マスタキャリブレーションモデルの約±2RMSEP内に留まった。
【0092】
さらに、
図5A-5Cに関して上述したものと同じデータセットを用いて、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数をターゲット装置のグリッドへの挿入した結果をマスタベータ係数として使用してfLMC技術を実施した。その結果を
図8A及び8Bに表す。LMC技術の使用と比較して性能がわずかに減少するが、(
図5Aに表すように)キャリブレーションモデル移行を実施しない場合よりもRMSEPが著しく減少した。
図8Aに表すように、RMSEPは適度に低く、(バリデーションセットの平均ブリックス値に対して正規化された)正規化RMSEPは7.7%であった。さらに、
図8Bに表すように、移行キャリブレーションモデルによるバリデーションセットに対する、予測されるブリックス値と実験室ブリックス値との間の残差の大部分は、オリジナル・フォス・マスタキャリブレーションモデルの約±2RMSEP内に留まった。とりわけ、fLMC技術は、マスタキャリブレーションセットが利用できず、グリッドがマスタ装置とターゲット装置との間で相違し、ターゲット装置が移行のためにスカウティングセットのみを収集し、スカウティングセットに対する基準値が存在しない場合に使用できる唯一の技術である。ある実施形態では、キャリブレーションセットの更新によって、移行キャリブレーションモデルの性能を更に改善できる。
【0093】
上述した
図7A-7C及び8A-8Bを単に例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は
図7A-7C及び8A-8Bに関して説明した例とは相違し得る。
【0094】
ある実施形態では、複数装置にわたってキャリブレーションモデルの標準化を達成するために、本明細書で説明する技術を使用できる。上述したように、同じ種類の装置又はデバイスに対して、一般に装置対装置の変動に直面する。したがって、1つの装置上でキャリブレーションモデルが開発されているが複数(例えば数百及び/又は数百万等)の装置上に展開する必要があるとき、装置対装置の変動が性能の不一致をもたらし得る。この課題に対して、典型的な方法を使用してキャリブレーションモデル移行を実施することは、特に装置が様々な場所に存在するときに、現実的でないことがある。この問題を解決するために、装置上でLMC技術及びfLMC技術を構成できる。ここで、マスタキャリブレーションモデルをターゲット装置に引き渡すときに、ほんのわずかの試料からのスペクトルを収集する必要がある。(例えば、スカウティングセットに対する基準値が利用できるときに)LMC技術を用いて、又は(例えば、スカウティングセットに対する基準値が利用できるかどうかにかかわらず)fLMC技術を用いて、キャリブレーションモデルを自動的に修正できる。
【0095】
図9A-9D、10A-10B及び11A-11Bは、複数装置にわたるキャリブレーションモデルの標準化の達成に関連する例示的結果を示す図である。
図9A-9D、10A-10B及び11A-11Bに関連する例では、MicroNIRデバイスからの生データを2つの異なる方法で較正して(データA及びデータB)、装置対装置の変動のシミュレーションをした。38の混合試料からの759のスペクトルを使用して、キャリブレーションモデルを構築してカフェイン含有量を予測した。他の10の混合試料からの200のスペクトルをバリデーションセットとして使用した。
図9A及び9Bに表すように、キャリブレーションモデルAを使用してバリデーションデータAを予測するとき、又はキャリブレーションモデルBを使用してバリデーションデータBを予測するとき、性能は類似していた。しかしながら、
図9Cに表すように、キャリブレーションモデルAを使用してバリデーションデータBを予測するとき、性能は悪化していた。
図9Dに表すように、バリデーションセットBに対する予測値と実験室値との間の多数の残差は、モデルAを使用してバリデーションAを予測するベンチマークの、±2RMSEPの範囲外に存在していた。
【0096】
キャリブレーションセットBから、3つの複製スペクトルを有する10の試料をスカウティングセットとして無作為に選択し、LMC技術及びfLMC技術を実施した。
図10Aに表すように、LMC技術によってRMSEPは著しく減少した。
図10Bに表すように、すべての予測残差は、モデルAを使用してバリデーションAを予測するベンチマークの、±2RMSEPの範囲内に存在した。
図11Aに表すように、fLMC技術によってRMSEPは同様に減少した。
図11Bに表すように、大多数の予測残差は、モデルAを使用してバリデーションAを予測するベンチマークの、±2RMSEPの範囲内に存在した。それゆえ、LMC技術又はfLMC技術を使用して装置対装置のモデル性能差を補正することが有効である。
【0097】
実際に、わずか8つの試料をスカウティングセットとして使用したときに、LMC技術及びfLMC技術は有効である。とりわけ、
図10A-B及び11A-Bの結果は、中間の性能の例である。スカウティング試料を無作為に選択して、ユーザ側の現実の試験シナリオをシミュレーションした。試料をスカウティングセットとして使用することで、最終性能結果に強い影響を与えた。またfLMC技術は、LMC技術ほど良好に振る舞わなかった。しかしながら、スカウティングセットに関して利用できる基準値が存在しないとき、fLMC技術はキャリブレーションモデル移行に使用できる唯一の技術である。
【0098】
上述した
図9A-D、10A-B及び11A-Bを単に例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は
図9A-D、10A-B及び11A-Bに関して説明した例とは相違し得る。
【0099】
上述したように、ある場合には、試料をLMC技術用のスカウティングセットとして更新することで、LMC技術をキャリブレーションモデルの更新に適用できる。とりわけ、これは(更新試料をキャリブレーションセットに追加してモデルを再調整する典型的なモデル更新技術が要求するように)すべてのキャリブレーションデータを要求するものではなく、かかる時間が比較的短く、キャリブレーションモデル更新を装置(例えば、マスタ装置205、ターゲット装置210)のオンライン動作中に実施できる。
【0100】
図12は、キャリブレーションモデル更新を実施するためにLMC技術を使用する例示的プロセス1200のフローチャートである。ある実施形態では、
図12の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215によって実施され得る。ある実施形態では、
図12の1つ以上のプロセスブロックは、モデル化デバイス215から分離した又はモデル化デバイス215を含む、他のデバイス又はデバイスのグループ(例えばマスタ装置205及び/又はターゲット装置210)によって実施され得る。
【0101】
図12に表すように、プロセス1200は、キャリブレーションモデル更新と関連するスカウティングセットを取得するステップを含むことができ、ここでスカウティングセットは試料のセットに関連するスペクトルを含み、当該スペクトルに基づいてキャリブレーションモデルを更新できる(ブロック1210)。例えば、モデル化デバイス215は、キャリブレーションモデル更新と関連するスカウティングセットを取得することができ、ここでスカウティングセットは試料のセットに関連するスペクトルを含み、当該スペクトルに基づいてキャリブレーションモデルを更新できる。
【0102】
図12に更に表すように、プロセス1200は、キャリブレーションモデルに関連するベータ係数を決定するステップを含み得る(ブロック1220)。例えば、モデル化デバイス215は、キャリブレーションモデルに関連するベータ係数を決定できる。
【0103】
図12に更に表すように、プロセス1200は、ベータ係数に基づきLMC技術を使用して、キャリブレーションモデル更新に関連する更新ベータ係数を決定するステップを含み得る(ブロック1230)。例えば、モデル化デバイス215は、ベータ係数に基づきLMC技術を使用して、キャリブレーションモデル更新に関連する更新ベータ係数を決定できる。
【0104】
図12に更に表すように、プロセス1200は、更新ベータ係数に基づいてキャリブレーションモデルを更新するステップを含み得る(ブロック1240)。例えば、モデル化デバイス215は、(例えば、更新キャリブレーションモデルがキャリブレーションの実施に伴って更新ベータ係数を使用するように)更新ベータ係数に基づいてキャリブレーションモデルを更新できる。
【0105】
プロセス1200は、後述し及び/又は本明細書の別の場所で説明される1つ以上の他のプロセスに関連する、任意の単一の実装又は実装の任意の組み合わせ等の、付加的な実装を含み得る。
【0106】
ある実施形態では、装置(例えば、マスタ装置205、ターゲット装置210)の動作中に、デバイスをオフラインにすることなく、キャリブレーションモデルの更新を実施する。
【0107】
図12はプロセス1200の例示的ブロックを表すが、ある実施形態では、プロセス1200は付加的なブロック、より少ない数のブロック、異なるブロック又は
図12に描写されるブロックとは異なる配置のブロックを含むことができる。これとともに又はこれに代えて、プロセス1200の2つ以上のブロックを並列に実施できる。
【0108】
図13A及び13Bは、線形モデル補正技術を用いたキャリブレーションモデル更新の例示的結果を示す図である。
【0109】
サトウキビに関するブリックスモデル(
図7Bに関連して上述した)を更新するために、付加的な30のMicroNIRスペクトルをスカウティングセットとして使用した。ここで、LMC技術を適用してキャリブレーションモデルを更新した。
図13Aは、この更新に関連し、
図7Bで使用されるバリデーションセットと同じバリデーションセットに対する予測結果を表す図である。
図13で表すように、モデル性能が改善され、RMSEPが減少し、予測残差が減少した。
【0110】
上述した
図13A及び13Bを単に例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は
図13A及び13Bに関して説明した例とは相違し得る。
【0111】
上述したように、LMC技術は、スカウティングセットに対する基準値を要求する。マスタ装置205及びターゲット装置210の両方からの移行セットが利用できるが、これら試料に対する基準値が利用できないときに、LMC技術を使用可能とするために、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットを用いて基準値を予測できる。
【0112】
図14A及び14Bは、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットを用いる基準値の予測に関連する例示的結果を示す図である。
図14Aに表すように、
図5A-5Cに関するデータセットと同じデータセットを用いて、真の基準値を使用したときに、RMSEPは0.44であった。
図14Bが表すように、マスタキャリブレーションモデル及びマスタ移行セットを用いて予測される基準値を使用したときに、RMSEPは0.80であった。上述したように、予測される基準値を使用するLMC技術の性能は、真の基準値を使用するLMC技術の性能ほど良好ではないが、MDC技術又はfLMC技術を用いる場合と比較して性能が改善し、PDS技術を用いる場合と類似していた。
【0113】
上述した
図14A及び14Bを単に例示として提供する。他の例が可能であり、他の例は
図14A及び14Bに関して説明した例とは相違し得る。
【0114】
本明細書で説明するある実装は、キャリブレーションモデル移行の実施に伴って使用できる合焦LMC(fLMC)技術を提供する。LMC技術と同様に、fLMC技術は、ターゲット装置が収集するスカウティングセットのみを要求する。しかしながら、LMC技術と異なり、fLMC技術はスカウティングセットに対する基準値を要求しない。そうであるから、キャリブレーションモデル移行に伴いfLMC技術を使用することで、(例えばLMC技術及び上述した典型的なキャリブレーションモデル移行技術と比較して)コストを削減し、及び/又はキャリブレーションモデル移行の複雑さを減少する。
【0115】
本明細書で説明されるいくつかの実装は、fLMC技術又はLMC技術が、マスタキャリブレーションセットを必要とせずに、キャリブレーションモデル移行の実施に伴い、マスタキャリブレーションモデルのベータ係数を使用する手順を提供する。
【0116】
本明細書で説明されるいくつかの実装は、LMC技術を使用してモデルを更新するための手順を提供する。
【0117】
前述の開示は、図解及び説明を提供するが、網羅することを意図するものではなく、又は実施形態を開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。上述した開示を考慮して変更及び変形が可能であり、実施形態を実施するために変更及び変形が必要となることがある。
【0118】
本明細書で使用される用語「要素」は、ハードウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアとファームウェアとの組み合わせとして広義に解釈されることを意図する。
【0119】
本明細書で説明するある実施形態は、閾値に関連する。本明細書で使用される閾値を満たすとは、値が、閾値よりも大きくなること、閾値を超えること、閾値よりも多くなること、閾値よりも高くなること、閾値以上となること、閾値未満となること、閾値よりも少なくなること、閾値よりも低くなること、閾値以下となること又は閾値に等しくなること等を指すことができる。
【0120】
本明細書で説明するシステム及び/又は方法をハードウェア、ファームウェア又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせの様々な形態で実装できることが明らかであろう。これらシステム及び/又は方法を実装するために使用される、実際上特殊化される制御ハードウェア又はソフトウェアコードは、実施形態を限定するものではない。したがって、本明細書では、特定のソフトウェアコードに言及することなく、システム及び/又は方法の動作及び振る舞いを説明した。本明細書の説明に基づいて、ソフトウェア及びハードウェアを設計して、システム及び/又は方法を実装できることが理解される。
【0121】
たとえ構成の特別な組み合わせが、特許請求の範囲に記載されており、及び/又は明細書に開示されているとしても、これらの組み合わせは、可能な実施形態の開示を限定することを意図するものではない。実際に、これら構成の多数を、具体的に特許請求の範囲に記載されておらず、及び/又は明細書に開示されていない方法で組み合わせることができる。後述する各従属項は1つのみの請求項に直接従属することがあるが、可能な実施形態の開示は、各請求項の、請求項のセットのあらゆる他の請求項との組み合わせを含む。
【0122】
本明細書で明確にそのように記載されていない限り、本明細書で使用される要素、行為及び命令は決定的又は必須ではないと解釈すべきである。また、本明細書で使用される冠詞“a”及び“an”は、1つ以上の項目を含むことを意図し、“one or more(1つ以上)”と交換可能に使用できる。さらに、本明細書で使用される用語「セット」は、1つ以上の項目(例えば、関連項目、無関連項目、関連項目及び無関連項目の組み合わせ等)を含むことを意図し、“one or more(1つ以上)”と交換可能に使用できる。1つの項目のみを意図する場合、用語“one(1つの)”または類似する用語を使用する。また、本明細書で使用される用語“has”、“have”又は“having”(有する)等は、オープンエンドの用語であることを意図する。さらに、明確に別段の定めがない限り、句「基づいて」は、「少なくとも部分的に基づく」意味であることを意図する。