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  • 特許-偏光子、および、その製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】偏光子、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220328BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20220328BHJP
【FI】
G02B5/30
B23K26/38 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019228942
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020106834
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2018241267
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】望月 政和
(72)【発明者】
【氏名】北村 ▲吉▼紹
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025798(JP,A)
【文献】特表2017-500606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0315357(US,A1)
【文献】特開2014-191051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色部と、該染色部内に形成された開口部と、該染色部と該開口部との間に形成された脱色部と、を有し、
該脱色部のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量が3.6重量%以下であり、ホウ酸含有量が8重量%以下である、
偏光子。
【請求項2】
前記脱色部の幅が0.1mm以上である、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記開口部がレーザー切断部である、請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
前記脱色部と前記偏光子の端部との最短距離が15mm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の偏光子。
【請求項5】
前記染色部における二色性物質の含有量と前記脱色部における二色性物質の含有量との差が0.5重量%以上である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光子。
【請求項6】
樹脂フィルムに偏光機能を付与することと、
該偏光機能を付与された樹脂フィルムを脱色することと、
該脱色された部分の一部に開口部を形成することと、を含み、
該脱色が、該樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより行われ、
開口部を形成する前に、該脱色された部分を塩酸、硫酸または硝酸で処理してアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減することをさらに含む、
偏光子の製造方法。
【請求項7】
前記開口部の形成がレーザーにより行われる、請求項6に記載の偏光子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、および、その製造方法に関する。より詳細には、切断加工を施した場合であっても品質に優れた偏光子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は携帯電話およびノート型パーソナルコンピューター(PC)等の様々な画像表示装置に用いられている。近年、スマートフォン、および、車載ディスプレイといった様々な用途で偏光板の需要が高まっている。これらの用途では、偏光板は搭載される部分に対応するような異形加工、および、開口部を設ける加工が施され得る。例えば、特許文献1では、カメラに対応する部分に開口部を設けた偏光板が提案されている。しかしながら、これらの加工を施す場合、加工時に偏光子にクラックが発生し、偏光子の品質が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-112238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は切断加工を施した場合であっても品質に優れた偏光子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の偏光子は、染色部と、切断加工部と、該染色部と該切断加工部との間に形成された脱色部とを有する。
1つの実施形態においては、上記切断加工部から上記染色部までの距離は0.1mm以上である。
1つの実施形態においては、上記切断加工部はレーザー切断部である。
1つの実施形態においては、上記脱色部のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量は3.6重量%以下である。
1つの実施形態においては、上記脱色部のホウ酸含有量は8重量%以下である。
1つの実施形態においては、上記脱色部と上記偏光子の端部との最短距離が15mm以下である。
1つの実施形態においては、上記染色部における二色性物質の含有量と上記脱色部における二色性物質の含有量との差は0.5重量%以上である。
本発明の別の局面においては、偏光子の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、樹脂フィルムに偏光機能を付与することと、該偏光機能を付与された樹脂フィルムを脱色することと、該脱色された部分の一部を切断加工することとを含む。
1つの実施形態においては、上記切断加工はレーザーにより行われる。
1つの実施形態においては、上記脱色は塩基性溶液を接触させることにより行われる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、切断加工を施した場合であっても、品質(例えば、耐クラック性)に優れた偏光子が提供される。本発明の偏光子は染色部と、切断加工部と、該染色部と該切断加工部との間に形成された脱色部とを有する。切断加工部と染色部との間に脱色部が形成されていることにより、異形加工および開口部の形成等の切断加工を施した場合であっても、該切断加工部から偏光子内部(より詳細には染色部)へのクラックの発生を防止し得る。さらに、発生したクラックから染色部に水分が侵入することによる偏光子の色抜けをも良好に防止し得る。
【0007】
また、本発明の偏光子の製造方法は、樹脂フィルムに偏光機能を付与することと、該偏光機能を付与された樹脂フィルムを脱色することと、該脱色された部分を切断加工することとを含む。本発明の製造方法では、偏光機能が付与された樹脂フィルムの脱色された部分の一部を切断加工する。所望の脱色部を残すよう樹脂フィルムの脱色された部分を切断加工することにより、切断加工時にかかる応力によるクラックの発生をより良好に防止し得る。さらに、クラック発生の頻度も抑えることができ、品質に優れた偏光子の生産性も向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態における偏光子の概略平面図である。
図2】本発明の1つの実施形態において切断加工工程に供される樹脂フィルムの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.偏光子
本発明の偏光子は、染色部と、切断加工部と、該染色部と該切断加工部との間に形成された脱色部とを有する。偏光子は、代表的には、樹脂フィルムを二色性物質で染色することにより、偏光機能が付与されている。すなわち、偏光子において、その機能を発揮する部分は二色性物質で染色された染色部である。偏光子は用途に応じて、異形加工および開口部の形成等の切断加工を施され得る。切断加工を施す場合、切断加工部からクラックが発生し、偏光子の品質が低下し得る。さらに、クラックから侵入した水分により、染色部が色抜けし、偏光子の有する偏光機能が損なわれ得る。本発明の偏光子では、染色部と切断加工部との間に脱色部が形成されている。これにより、偏光子の切断加工部からのクラックの発生が防止され得る。また、クラックが発生した場合であっても、染色部へのクラックの侵入を防止し、偏光機能を良好に維持することができる。
【0011】
図1は本発明の1つの実施形態における偏光子の概略平面図である。図示例の偏光子10は、染色部12の内部に切断加工部11が形成されている。図示例において、切断加工部11は開口部である。染色部12と切断加工部11との間には脱色部13が形成されている。脱色部13が形成されていることにより、切断加工部11の切断部分からのクラックの発生を防止し得る。さらに、クラックが発生した場合であっても、切断加工部11で発生したクラックが脱色部13で止まり、染色部12に到達することを防止し得る。さらに、発生したクラックから侵入した水分による染色部12の色抜けも防止し得る。なお、図示例では、切断加工部11の周縁部に沿った全体に脱色部13が形成されているが、少なくとも一部に脱色部が形成されていればよい。
【0012】
別の実施形態においては、染色部12に複数の切断加工部(例えば、2以上の開口部)が形成され得る。この実施形態のように、2以上の切断加工部を有する場合であっても、染色部と切断加工部との間に脱色部を形成することにより、各切断加工部からのクラックの発生を良好に防止し得る。また、クラックが発生した場合であっても、染色部へのクラックの侵入を防止し、偏光機能を良好に維持することができる。
【0013】
偏光子10は用いられる用途等に応じて任意の適切な形状に設計され得る。偏光子10の形状としては、例えば、矩形、円形、ひし形、異形等が挙げられる。上記の通り、本発明の偏光子は、切断加工部からのクラックの発生を良好に防止し得る。また、クラックが発生した場合であっても、染色部へのクラックの侵入を防止し、偏光機能を良好に維持することができる。そのため、偏光子10を異形の偏光子とする場合であっても、品質に優れた偏光子を提供することができる。
【0014】
切断加工部は任意の適切な切断方法により、樹脂フィルムを切断加工することにより形成される。切断方法としては、例えば、レーザー、カッター、トムソン刃およびピナクル刃等の打ち抜き刃等が挙げられる。切断加工部は好ましくはレーザー切断部である。レーザーで切断された部分であることにより、切断端部の微小なクラックが減少し、他の切断方法よりも信頼試験後における耐クラック性が向上し得る。
【0015】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、代表的には0.5μm以上80μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは18μm以下であり、特に好ましくは12μm以下であり、さらに特に好ましくは8μm未満である。厚みの下限値は好ましくは1μm以上である。厚みが薄いことにより、画像表示装置の薄型化に寄与し得る。また、厚みが薄いほど、脱色部を良好に形成することができる。具体的には、後述の塩基性溶液を接触させる際、より短時間で脱色部を形成することができる。また、塩基性溶液を接触させた部分の厚みが他の部分よりも薄くなる場合がある。厚みが薄いことにより、塩基性溶液に接触させた部分と他の部分との厚みの差を小さくすることができる。また、レーザーにより脱色する場合には、単位膜厚当たりの吸光度が高くなり、効率よく脱色することができる。
【0016】
上記の通り、偏光子は代表的には樹脂フィルムをヨウ素等の二色性物質で染色することにより得られる。樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)が用いられる。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常、85モル%以上100モル%未満であり、好ましくは95.0モル%~99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0017】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~4500、さらに好ましくは1500~4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0018】
二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはヨウ素が用いられる。後述する塩基性溶液との接触により、脱色部が良好に形成され得るからである。
【0019】
偏光子(染色部)は、好ましくは波長380nm~780nmの範囲で吸収二色性を示す。偏光子(染色部)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子(染色部)の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0020】
上記脱色部の幅(具体的には、切断加工部から染色部までの距離、図1の両矢印)は好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上であり、さらに好ましくは1.0mm以上である。脱色部の幅がこのような範囲であれば、切断加工部からのクラックの発生を良好に防止し得る。また、クラックが発生した場合であっても、クラックが染色部に到達することを防止し得る。さらに、発生したクラックから水分が侵入した場合であっても水分が、染色部に到達することを防止し得る。脱色部の幅は、染色部を確保するという観点からは、例えば、10mm以下であり、好ましくは5mm以下である。なお、脱色部の幅は少なくとも0.1mm以上の部分が含まれていればよい。
【0021】
上記脱色部と上記偏光子の端部との最短距離(例えば、図1の破線両矢印)は、好ましくは15mm以下であり、より好ましくは10mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下である。脱色部と偏光子の端部との距離が上記範囲であることにより、切断加工による応力を緩和することができ、クラックの発生が抑制され得る。脱色部と偏光子の端部との距離は、例えば、0.1mm以上である。
【0022】
脱色部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0023】
B項に記載の通り、脱色部は任意の適切な方法で形成され得る。脱色部が塩基性溶液との接触により形成される場合、脱色部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。脱色部の二色性物質の含有量がこのような範囲であれば、切断加工部からのクラックの発生をさらに良好に防止し得る。一方、脱色部の二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0024】
染色部における二色性物質の含有量と脱色部における二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。含有量の差がこのような範囲であれば、切断加工部からのクラックの発生をさらに良好に防止し得る。さらに、所望の透明性を有する脱色部を形成することができる。
【0025】
偏光子は、その製造過程(例えば、後述の架橋工程)により、ホウ酸を含み得る。脱色部のホウ酸含有量は、例えば、8重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。また、脱色部のホウ酸含有量は、例えば、0重量%以上である。脱色部のホウ酸含有量が上記の範囲であることにより、切断加工部からのクラックの発生を良好に防止し得る。
【0026】
上記脱色部は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が好ましくは3.6重量%以下であり、より好ましくは2.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。脱色部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量がこのような範囲であれば、後述する塩基性溶液との接触により形成された脱色部の形状を良好に維持することができる(すなわち、所望でない部分にまで脱色部が拡大することを防止し得る)。当該含有量は、例えば、蛍光X線分析により測定したX線強度から予め標準試料を用いて作成した検量線により求めることができる。このような含有量は、後述する塩基性溶液との接触において、接触部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより実現され得る。
【0027】
B.偏光子の製造方法
本発明の偏光子は任意の適切な方法により製造することができる。1つの実施形態においては、本発明の偏光子の製造方法は、樹脂フィルムに偏光機能を付与すること(染色部を形成すること)と、偏光機能が付与された樹脂フィルムを脱色することと、該脱色された部分の一部を切断加工することとを含む。
【0028】
B-1.偏光機能の付与
任意の適切な方法により、樹脂フィルムに偏光機能を付与することができる。代表的には、樹脂フィルムに膨潤処理、延伸処理、ヨウ素等の二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより偏光機能を付与することができる。なお、樹脂フィルムに偏光機能を付与する処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。基材と樹脂層との積層体は、例えば、上記樹脂フィルムの形成材料を含む塗布液を基材に塗布する方法、基材に樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
【0029】
上記延伸処理において、樹脂フィルムは、代表的には3倍~7倍に一軸延伸される。なお、延伸方向は、得られる偏光子の吸収軸方向に対応し得る。
【0030】
染色処理は、代表的には二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液に樹脂フィルムを浸漬させる方法、樹脂フィルムに当該染色液を塗工する方法、当該染色液を樹脂フィルムに噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に樹脂フィルムを浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。二色性物質については上記の通りである。
【0031】
二色性物質としてヨウ素を用いる場合、染色液としては、ヨウ素水溶液が好ましく用いられる。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.04重量部~5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部~15重量部である。
【0032】
B-2.脱色
次いで、偏光機能が付与された樹脂フィルムは脱色される。脱色は任意の適切な方法により行うことができる。例えば、レーザーによる脱色処理、または、塩基性化合物を含む塩基性溶液との接触による脱色処理等が挙げられる。好ましくは、塩基性溶液との接触である。塩基性溶液との接触により脱色することにより、塩基性溶液と接触させた部分のホウ酸含有量も低減させることができ、切断加工時における樹脂フィルム(脱色された部分)の強度が向上し得る。また、経時的に脱色された部分の透明性を維持することができる。
【0033】
塩基性溶液の接触方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、樹脂フィルムに対し、塩基性溶液を滴下、塗工、スプレーする方法、樹脂フィルムを塩基性溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0034】
塩基性溶液の接触に際し、所望の部位以外に塩基性溶液が接触しないように(脱色されないように)、任意の適切な保護材で偏光子(樹脂フィルム)を保護してもよい。具体的には、保護材としては、表面保護フィルムが挙げられる。表面保護フィルムは、偏光子の製造時に一時的に用いられるものである。表面保護フィルムは、任意の適切なタイミングで樹脂フィルムから取り除かれるため、代表的には、樹脂フィルムに粘着剤層を介して貼り合わされる。表面保護材の別の具体例としては、フォトレジスト等が挙げられる。
【0035】
上記塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。二色性物質を効率良くイオン化することができ、より簡便に脱色部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、イオン化した二色性物質が良好に溶媒へと移行し得ることから、水、アルコールが好ましく用いられる。
【0037】
塩基性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。濃度がこのような範囲であれば、所望の脱色部が良好に形成され得る。
【0038】
塩基性溶液の液温は、例えば、20℃~50℃である。樹脂フィルムと塩基性溶液との接触時間は、樹脂フィルムの厚みや、塩基性化合物の種類、および、塩基性溶液の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間~30分間である。
【0039】
B-3.樹脂フィルムの切断加工
次いで、樹脂フィルムの脱色処理された部分(以下、中間脱色部ともいう)の一部を切断加工する。より詳細には、切断加工は樹脂フィルムの中間脱色部を所望の脱色部が残るよう切断することにより行う。脱色部が残るよう切断加工を行うことにより、クラックが発生した場合であっても染色部にクラックが侵入し、1つの実施形態においては、脱色は塩基性溶液との接触により行われる。塩基性溶液との接触による脱色処理を施すことにより樹脂フィルム(偏光子)に含まれるホウ酸含有量が低減され得る。樹脂フィルムのホウ酸含有量が低減されることにより、切断加工に対する樹脂フィルムの応力がより抑制され得る。ホウ酸含有量が低減された部分(中間脱色部)を切断することにより、切断加工部からのクラックの発生が防止され得る。さらに、品質の優れた(例えば、クラックの発生が抑制された)偏光子の生産性も向上し得る。好ましくは、切断加工部の全体が脱色部内に収まるよう切断加工を行う。
【0040】
図2は本発明の1つの実施形態における切断加工工程に供される樹脂フィルムの概略平面図である。図示例において、樹脂フィルム20は周縁部に中間脱色部14を有する。この樹脂フィルム20は、中間脱色部14に切断加工が施される(図示例の破線部)。その結果、偏光子の外縁が切断加工部であり、染色部の周縁全体に脱色部を有する偏光子が得られ得る。
【0041】
切断方法としては、レーザー、カッター、トムソン刃およびピクナル刃等の打ち抜き刃等が挙げられる。好ましくは、レーザーにより切断加工を行う。レーザーを用いることにより、切断端部の微小なクラックが減少し、他の切断方法に比べて信頼性試験後の耐クラック性が向上し得る。
【0042】
レーザーとしては、任意の適切なレーザーを用いることができる。例えば、COレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。好ましくは、COレーザーが用いられる。レーザー光の照射条件は、例えば、用いるレーザーに応じて、任意の適切な条件に設定され得る。出力条件は、好ましくは20W~60W、さらに好ましくは35W~45Wである。
【0043】
B-4.アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の低減
上記の通り、樹脂フィルムの脱色は塩基性溶液の接触により行うことが好ましい。塩基性溶液を接触させて脱色を行う場合、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が残存し得る。また、樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、接触部周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、脱色領域を広げ得る。したがって、上記塩基性溶液との接触後、塩基性溶液を接触させた接触部において、樹脂フィルムに含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることが好ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、寸法安定性に優れた脱色部を得ることができる。
【0044】
低減方法としては、好ましくは、塩基性溶液との接触部に処理液を接触させる方法が用いられる。このような方法によれば、樹脂フィルムから処理液にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を移行させて、その含有量を低減させることができる。
【0045】
処理液の接触方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、塩基性溶液との接触部に対し、処理液を滴下、塗工、スプレーする方法、塩基性溶液との接触部を処理液に浸漬する方法が挙げられる。
【0046】
塩基性溶液の接触時に、任意の適切な保護材で樹脂フィルムを保護した場合、そのままの状態で処理液を接触させることが好ましい(特に、処理液の温度が50℃以上の場合)。このような形態によれば、塩基性溶液との接触部以外の部位において、処理液による偏光特性の低下を防止することができる。
【0047】
上記処理液は、任意の適切な溶媒を含み得る。溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を効率的に移行させる観点から、水、アルコールが好ましく用いられる。水としては、任意の適切な水を用いることができる。例えば、水道水、純水、脱イオン水等が挙げられる。
【0048】
接触時の処理液の温度は、例えば20℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。このような温度であれば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を処理液に効率的に移行させることができる。具体的には、樹脂フィルムの膨潤率を著しく向上させて、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を物理的に除去することができる。一方で、水の温度は、実質的には95℃以下である。
【0049】
接触時間は、接触方法、処理液(水)の温度、樹脂フィルムの厚み等に応じて、適宜調整され得る。例えば、温水に浸漬する場合、接触時間は、好ましくは10秒~30分、より好ましくは30秒~15分、さらに好ましくは60秒~10分である。
【0050】
1つの実施形態においては、上記処理液として酸性溶液が用いられる。酸性溶液を用いることにより、樹脂フィルムに残存するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物を中和して、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を化学的に除去することができる。
【0051】
酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素、ホウ酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
好ましくは、酸性化合物として、ホウ酸よりも酸性度の強い酸性化合物が好適に用いられる。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩(ホウ酸塩)にも作用し得るからである。具体的には、ホウ酸塩からホウ酸を遊離させて、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を化学的に除去することができる。
【0053】
上記酸性度の指標としては、例えば、酸解離定数(pKa)が挙げられ、ホウ酸のpKa(9.2)よりもpKaの小さい酸性化合物が好ましく用いられる。具体的には、pKaは、好ましくは9.2未満であり、より好ましくは5以下である。pKaは任意の適切な測定装置を用いて測定してもよく、化学便覧 基礎編 改訂5版(日本化学会編、丸善出版)等の文献に記載の値を参照してもよい。また、多段解離する酸性化合物では、各段階でpKaの値が変わり得る。このような酸性化合物を用いる場合、各段階のpKaの値のいずれかが上記の範囲内であるものが用いられる。なお、本明細書において、pKaは25℃の水溶液における値をいう。
【0054】
酸性化合物のpKaとホウ酸のpKaとの差は、例えば2.0以上であり、好ましくは2.5~15であり、より好ましくは2.5~13である。このような範囲であれば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を処理液に効率的に移行させることができ、結果として、脱色部における所望のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量を実現することができる。
【0055】
上記pKaを満足し得る酸性化合物としては、例えば、塩酸(pKa:-3.7)、硫酸(pK:1.96)、硝酸(pKa:-1.8)、フッ化水素(pKa:3.17)、ホウ酸(pKa:9.2)等の無機酸、ギ酸(pKa:3.54)、シュウ酸(pK:1.04、pK:3.82)、クエン酸(pK:3.09、pK:4.75、pK:6.41)、酢酸(pKa:4.8)、安息香酸(pKa:4.0)等の有機酸等が挙げられる。
【0056】
なお、酸性溶液(処理液)の溶媒は上述のとおりであり、処理液として酸性溶液を用いる本形態においても、上記樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の物理的な除去は起こり得る。
【0057】
上記酸性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。
【0058】
上記酸性溶液の液温は、例えば20℃~50℃である。酸性溶液への接触時間は、樹脂フィルムの厚みや、酸性化合物の種類、および、酸性溶液の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間~30分間である。
【0059】
B-5.その他の工程
本発明の偏光子の製造方法は、樹脂フィルムに偏光機能を付与すること、偏光機能が付与された樹脂フィルムを脱色すること、脱色された部分を切断加工すること、および、任意のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を低減すること以外に、任意の適切な他の処理工程をさらに含んでいてもよい。他の処理工程としては、塩基性溶液および/または酸性溶液の除去、ならびに、洗浄等が挙げられる。
【0060】
塩基性溶液および/または酸性溶液の除去方法の具体例としては、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。上記乾燥温度は、例えば、20℃~100℃である。
【0061】
洗浄処理は任意の適切な方法により行われる。洗浄処理に使用する溶液は、例えば、純水、メタノール、エタノール等のアルコール、酸性水溶液、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。洗浄処理は任意の適切な段階で行われ得る。洗浄処理は複数回行ってもよい。
【0062】
C.偏光板
本発明の偏光板は、上記偏光子を有する。本発明の偏光板は、代表的には、少なくともその片側に保護フィルムを積層させて使用される。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。
【0063】
保護フィルムの偏光子を積層させない面には、表面処理層として、ハードコート層、反射防止処理層、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理層が形成されていてもよい。
【0064】
保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm~100μmである。保護フィルムは、代表的には、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤や活性化エネルギー線硬化型接着剤で形成される。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。
【0065】
D.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記偏光板を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。具体的には、液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの片側もしくは両側に配置された上記偏光子とを含む液晶パネルを備える。有機ELデバイスは、視認側に上記偏光子が配置された有機ELパネルを備える。上記の通り、本発明の偏光子は、切断加工された部分を有する場合であっても、クラックの発生が防止され、その結果、偏光子が色抜けし、偏光特性が損なわれることを防止し得る。切断加工部が形成されていても優れた品質を有するため、異形加工および開口部の形成等のより複雑な形状に加工した場合であっても、所望の偏光特性が維持され得る。
【実施例
【0066】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z-200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して保護フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、これを60℃に維持したオーブンで5分間加熱した。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、偏光板(偏光子(透過率42.3%、厚み5μm)/保護フィルム)を得た。
【0068】
上記で得られた総厚30μmの偏光板から200mm×300mmの試験片を切り出した。切り出した偏光板の偏光子の中央部に、常温の塩基性溶液(水酸化ナトリウム水溶液、1.0mol/L(1N))を直径2.8mmの円となるよう塗布し、60秒間放置した。次いで、塗布した水酸化ナトリウム水溶液をウエスで除去した。水酸化ナトリウム水溶液を除去した後、塩基性溶液を接触させた部分に1.0mol/L(1N)の塩酸を塗布し、30秒間放置した。次いで、ウエスで塩酸を除去し、透明部(中間脱色部)が形成された偏光子を得た。透明部のナトリウム含有量は3.6重量%以下であり、ホウ酸含有量は8重量%以下であった。
【0069】
形成された中間脱色部の中央から切断後に残る脱色部の幅が1mmとなるよう、0.8mmの円をレーザー(COレーザー、照射条件:速度650mm/sec、周波数30kHz、出力40W)で切断し、幅1mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0070】
[実施例2]
切断後に残る脱色部の幅が0.5mmとなるよう切断加工した以外は実施例1と同様にして、幅0.5mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0071】
[実施例3]
切り出した試験片の長辺から1mmの部分に透明部(直径2.8mm)を形成した以外は実施例1と同様にして、幅1mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0072】
[実施例4]
直径20mmの円となるよう塩基性溶液を塗布した以外は実施例1と同様にして透明部(中間脱色部)が形成された偏光子を得た。
この偏光子の透明部の中央から切断後に残る脱色部の幅が1mmとなるよう、実施例1と同様にして18mmの円を切断し、幅1mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0073】
[実施例5]
切り出した試験片の長辺から1mmの部分に透明部を形成した以外は実施例4と同様にして、幅1mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0074】
[実施例6]
実施例1で得られた試験片の偏光子の中央部にレーザー(固体(YAG)レーザー、照射条件:速度100mm/sec、周波数3120kHz、パルスエネルギー:40μJ)を用いて、直径2.8mmの透明部を形成した。
この透明部(中間脱色部)の中央から切断後に残る脱色部の幅が1mmとなるよう、0.8mmの円をレーザー(COレーザー、照射条件:速度650mm/sec、周波数30kHz、出力40W)で切断し、幅1mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0075】
[実施例7]
切断後に残る脱色部の幅が0.5mmとなるよう切断加工した以外は実施例6と同様にして、幅0.5mmの脱色部を有する偏光子を得た。
【0076】
(比較例1)
試験片に透明部(中間脱色部)を形成しなかったこと、および、直径2.8mmの開口部をレーザーで形成したこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を得た。
【0077】
(比較例2)
試験片に透明部(中間脱色部)を形成しなかったこと、および、直径2.8mmの開口部をレーザーで形成したこと以外は実施例3と同様にして、偏光子を得た。
【0078】
(比較例3)
試験片に透明部(中間脱色部)を形成しなかったこと、および、直径20mmの開口部をレーザーで形成したこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を得た。
【0079】
実施例1~7および比較例1~3で得られた偏光子を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。

(ヒートサイクル試験(H/Sテスト)後のクラック最大長)
得られた偏光子に厚み1mmのガラスを厚み23μmの粘着剤層を介して貼り合わせ、積層体を得た。得られた積層体を-40℃の雰囲気下に30分放置した後、85℃の雰囲気下に30分放置した。この操作を1サイクルとした。20サイクル、50サイクル、100サイクル、200サイクルの段階で積層体を取り出し、クラックの有無を光学顕微鏡で観察し、クラックが発生している場合にはその最大長を測定した。200サイクル後のクラック最大長が1mm以下であれば耐クラック性に優れる。

(光抜け)
上記ヒートサイクル試験を200サイクル行った積層体の染色部の色抜けの有無を光学顕微鏡で確認した。

(クラック数)
上記ヒートサイクル試験を300サイクル行った積層体のクラックの有無を光学顕微鏡で確認した。3つの積層体について評価を行い、平均値をクラック数とした。

(染色部と脱色部とのヨウ素含有量の差)
各実施例および比較例の偏光子の脱色部および染色部のヨウ素含有量を蛍光X線分析で下記条件により測定したX線強度から、あらかじめ標準試料を用いて作成した検量線によりヨウ素含有量を求めた。得られたヨウ素含有量の値から脱色部と染色部とのヨウ素含有量の差を算出した。

二色性物質低濃度部を
・分析装置:理学電機工業製 蛍光X線分析装置(XRF) 製品名「ZSX100e」
・対陰極:ロジウム
・分光結晶:フッ化リチウム
・励起光エネルギー:40kV-90mA
・ヨウ素測定線:I-LA
・定量法:FP法
・2θ角ピーク:103.078deg(ヨウ素)
・測定時間:40秒
【0080】
【表1】
【0081】
切断加工部と染色部との間に脱色部を有する実施例1~7の偏光子では、200サイクルのヒートショックテスト後においても極小さいクラックしか確認されなかった。また、実施例1~7の偏光子では300サイクルのヒートショックテスト後の偏光子でもクラック数が少なく、耐クラック性に優れた偏光子を安定して得ることができた。脱色処理を行わずに開口部を形成した(脱色部のない)比較例1~3の偏光子では200サイクルのヒートショックテスト後には実施例よりも大きいクラックが確認された。また、発生したクラック数も多く生産性に改善の余地があった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の偏光子は、液晶表示装置、有機ELデバイス等の画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0083】
10 偏光子
11 切断加工部
12 染色部
13 脱色部
14 中間脱色部
20 樹脂フィルム
図1
図2