(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】自動車シートクッションを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/36 20060101AFI20220328BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20220328BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20220328BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20220328BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220328BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20220328BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20220328BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
B29C44/36
A47C27/14 A
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/12
B29K75:00
B29L31:58
(21)【出願番号】P 2019504958
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 FR2017052076
(87)【国際公開番号】W WO2018020149
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-21
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519027420
【氏名又は名称】テスカ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ,ローラン
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-247916(JP,A)
【文献】国際公開第2009/25305(WO,A1)
【文献】特開2001-55457(JP,A)
【文献】特開2016-52772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/36
A47C 27/14
B29C 39/10
B29C 39/24
B29C 44/00
B29C 44/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車シートクッション(1)を製造する方法であって、
-被覆材料(4)からなる単層と、可撓性フォームからなる副層(5)とを含む、第1インサート(3)を備えるカバー(2)を提供する工程、
-成形キャビティ(7)を規定する型(6)内に前記カバーを配置し、前記カバーの表面(8)を、前記キャビティの内壁(9)に張り付ける工程、
-前記副層上に熱可塑性フィルム(10)を配置する工程、
-前記キャビティ内に可撓性フォームの前駆体である混合物(11)を注入することで、パッドのブロック(12)を製造する工程、
-フォームが膨張した後で、得られた前記クッション(1)を離型する工程を含み、
前記方法が、
-前記フィルムはポリウレタンをベースとし、
-前記フィルムの融点が40~60℃で、
-NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重でロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルムのメルトフローレイトは、15g/10分超であることを特徴とすることで、
前記ブロックのフォームの形成中に放出された熱の作用によって前記フィルムが融解することで、前記ブロックのフォームが前記副層の厚み内に実質的に浸透することなく、前記副層を前記ブロックによりオーバーモールディングすることが可能になる、方法。
【請求項2】
NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重にロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルム(10)のメルトフローレイトは、50g/10分未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重にロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルム(10)のメルトフローレイトは、22g/10分~28g/10分であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルム(10)は、厚みが12~18ミクロンであり、特には、厚みが14~16ミクロンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ISO規格11357に準じて、示差走査熱分析(DSC)で測定した前記フィルム(10)の溶融ピークが47~51℃に位置することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルム(10)を製造するために使用されるポリオールは、ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルム(10)を製造するために使用されるイソシアネートは、芳香族基を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フォームの副層(5)は、密度が0.026~0.030であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、自動車シートクッションを製造するための方法と、この方法で製造したクッションと、このクッションを有する自動車シートとに関する。
【0002】
特に欧州公開特許第0463981号において、自動車シートクッションを製造する方法を実施していることが公知になっており、前記方法は、
-被覆材料からなる単層と、特にポリウレタンを含んだ可撓性フォームからなる副層とを含む第1インサートを備えるカバーを提供する工程、
-成形キャビティを規定する型内に前記カバーを配置し、前記カバーの表面を、前記キャビティの内壁に張り付ける工程、
-前記副層に熱可塑性フィルムを配置する工程、
-前記キャビティ内に可撓性フォームの前駆体である混合物を注入することで、パッドのブロックを製造する工程、
-フォームが膨張した後で、得られたクッションを離型する工程を含み、
前記フィルムは、前記ブロックのフォームの形成中に放出された熱の作用によりフィルムの融解が進行するような物理化学的性質を有するため、前記ブロックのフォームが前記副層の厚み内に浸透することを制限しながら、前記副層を前記ブロックによりオーバーモールディングすることが可能になる。
【0003】
前記方法では、クッションは、第1インサートを使用して、カバーとブロックのパッドとを堅固に接続させることで製造されるため、ブロックに取り付けられたカバーの場合に従来用いられているような繰り返し手段を使用せずに済む。
【0004】
さらに、フィルムがあることで、ブロックのフォームが副層の厚み内を部分的に浸透することにより、不透性層の形成が制限されるので、残留層の気密性に基づいたクッションの湿熱快適さが得られる。
【0005】
しかし、本出願人は先行技術で提示されたフィルムでは、湿熱快適性の問題を解決するには不完全である(残留層はクッションの最適な快適性を提供するために十分な多孔を有していない)ことを解明した。
【0006】
本発明の目的は、この技術課題を解決し、最適な湿熱快適性を有するクッションを得る方法を提示することである。
【0007】
このため、第1の態様によれば、本発明は、自動車シートクッションを製造する方法を提供し、前記方法は、
-被覆材料からなる単層と、可撓性フォームからなる副層と、を含む第1インサートを備えるカバーを提供する工程、
-成形キャビティを規定する型内に前記カバーを配置し、前記カバーの表面を、前記キャビティの内壁に張り付ける工程、
-前記副層上に熱可塑性フィルムを配置する工程、
-前記キャビティ内に可撓性フォームの前駆体である混合物を注入することで、パッドのブロックを製造する工程、
-フォームが膨張した後で、得たクッションを離型する工程を含む。
【0008】
前記方法は、さらに、
-前記フィルムはポリウレタンをベースとし、
-前記フィルムの融点が40~60℃で、
-NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重でロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルムのメルトフローレイトは、15g/10分超であることを特徴とすることで、
前記ブロックのフォームの形成中に放出された熱の作用により前記フィルムが融解するため、前記ブロックのフォームが前記副層の厚み内に実質的に浸透することなく、前記副層を前記ブロックによりオーバーモールディングすることが可能になる。
【0009】
このような方法の開発は、出願人が実施した数多くの試験から厳密に抽出された結果である。
【0010】
出願人は、必要なパラメータとして融点の他に、溶融時のフィルムの流動性も発見した。
【0011】
流動性のパラメータについて、出願人は、特に溶融時にフィルムの流動性が低いと、フィルムの不透性をなくすという方法でも、フィルムが融解しないことを発見した。
【0012】
その結果、このような条件下では、クッションに所望の湿熱快適性が得られないことがわかった。
【0013】
推奨するフィルムを使用することで、フォームの副層内にブロックのフォームが浸透しないよう完全に制御が可能である。いったんフォームを形成すると、前記フィルムは、ブロックのフォームが前記副層に浸透することを防止できる稠度となった。
【0014】
さらに、出願人は、このフィルムを使用することで、前記ブロックのフォームがフォームの副層の厚み内に浸透しないだけでなく、第1インサートとブロックとを極めて堅固に結合できることを発見した。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、前記方法で製造されたクッションと、前記クッションを有する自動車シートを提供する。
【0016】
本発明の別の特徴および利点は、添付した図面の参照と共に以下の説明から明らかになる。
【0017】
図1は、製造中(カバー内に、フォームの前駆体の混合物を注入した直後)のクッションの部分断面図である。
【0018】
図2は、一実施形態による、
図1のクッションの製造後の部分断面図である。
【0019】
これらの図面を参照して、自動車シートクッション1を製造する方法を以下に説明する。前記方法は、
-被覆材料からなる単層4と、可撓性フォームからなる副層5とを含む第1インサート3を備えるカバー2を提供する工程、
-成形キャビティ7を規定する型6内に前記カバーを配置し、前記カバーの表面8を、前記キャビティの内壁9に張り付ける工程、
-前記副層上に熱可塑性フィルム10を配置する工程、
-可撓性フォームの前駆体である混合物11を、前記キャビティ内に向けて、図示された実施形態における前記フィルム上に直接注入することで、パッドのブロック12を製造する工程、
-フォームが膨張した後に、得たクッション1を離型する工程を含む。
【0020】
前記方法は、さらに以下の、
-前記フィルムは、ポリウレタンをベースとし、
-前記フィルムの融点は、40~60℃で、
-NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重にロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルムのメルトフローレイトは、15g/10分超であることを特徴とすることで、
前記ブロックのフォームの形成中に放出された熱の作用によりフィルムが融解するため、前記ブロックのフォームが前記副層の厚み内に実質的に浸透することなく、前記副層を前記ブロックによりオーバーモールディングすることが可能になる。
【0021】
型6の加熱は任意選択的に行うことができ、例えば、フィルム10の融解を促進するように、約45~55℃の温度で加熱してもよい。
【0022】
一実施形態によれば、NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重にロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルム10のメルトフローレイトは、50g/10分未満である。
【0023】
一実施形態によれば、NFT規格51-016に準じて、強制フロー式キャピラリーレオメーターのピストンが2.160kg重量の荷重にロードされ、強制フロー式キャピラリーレオメーターにより190℃で測定した、前記フィルム10のメルトフローレイトは、22g/10分~28g/10分である。
【0024】
一実施形態によれば、フィルム10は、厚みが12~18ミクロンであり、特には、厚みが14~16ミクロンである。
【0025】
一実施形態によれば、フィルム10は、密度が1.15~1.25である。
【0026】
一実施形態によれば、ISO規格11357に準じて、示差走査熱分析(DSC)で測定したフィルム10の溶融ピークは、47~51℃に位置する。
【0027】
一実施形態によれば、フィルム10を製造するために使用するポリオールは、ポリエステルを含む。
【0028】
一実施形態によれば、フィルム10を製造するために使用するイソシアネートは、芳香族基を含む。
【0029】
一実施形態によれば、フォームの副層5は、ポリウレタンを含む。
【0030】
一実施形態によれば、フォームの副層5は、密度が0.026~0.030である。この値は、前記カバーを前記ブロックによりオーバーモールディングするのではなく、前記カバーに前記ブロックを添加するようにして、パッドのブロック12をカバー2に結合させるために使用されるフォームの通常の品質に、大抵の場合対応している。
【0031】
低コストである前記副層5を使用することで、最小限のコストでクッション1を製造することが可能になる。
【0032】
一実施形態によれば、フォームの副層5は、厚みが1.5~2mmである。
【0033】
図示された実施形態によれば、フォームの副層5は、外層上に、布の目が特に矩形状または円状となっている保護性の布13が設けられる。
【0034】
一実施形態によれば、カバー2は、第2インサート(図示しない)を含み、前記第2インサートは、パッドのブロック12でオーバーモールディングせずに、第1インサート3を特に、縫い付けることで端部同士が結合される。
【0035】
一実施形態によれば、第2インサートは、クッション1の横部分に配置され、パッドのブロック12と分離させることで、使用者が、車に乗る際、または車から出る際に前記ブロックに生じる屈曲をより低減することができる。
【0036】
一実施形態によれば、ブロック12のフォームは、第1インサート3または第2インサートのどちらに面して配置されているかにより密度が異なる。特に、クッション1の横部分において前記フォームの密度を高くすると、使用者を横方向に安定して固定することが可能になる。
【0037】
最終的に、前記方法で製造された自動車シートクッション1を以下で説明すると、前記クッションは、
-被覆材料4からなる層と、特にポリウレタンを含んだ可撓性フォームからなる副層5とを含む第1インサート3を備えるカバー2と、
-可撓性フォームからなるパッドのブロック12であって、前記副層の厚み内にフォームを実質的に存在させずに、前記インサートをオーバーモールディングするパッドのブロック12と、を備える。
【0038】
最終的に、図示されてはいないが、前記クッション1は、カバー2の周囲によって前記シートの枠と取り付けられており、このクッション1を含んでいる自動車シートが記載される。
【0039】
このような結合を実施するために、特に形材が用いられ、前記形材は、シートの枠に設けられた複数のアンカー部内に挿入され、カバー2の周囲において、例えば縫い付けにより固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】製造中(カバー内に、フォームの前駆体の混合物を注入した直後)のクッションの部分断面図である。
【
図2】一実施形態による、
図1のクッションの製造後の部分断面図である。