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特許7046913送達された投与量を測定するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】送達された投与量を測定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20220328BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20220328BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20220328BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20220328BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20220328BHJP
【FI】
A61M5/168 530
A61M5/172
G01F1/684 A
G01F1/696 Z
G01F1/00 Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019505419
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017043677
(87)【国際公開番号】W WO2018026573
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】15/226,638
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー サール
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー バーク
(72)【発明者】
【氏名】ピーター コステロ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス フォクト
(72)【発明者】
【氏名】フランシス エル.ロス
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/040949(WO,A1)
【文献】特開平08-062011(JP,A)
【文献】特表2010-501283(JP,A)
【文献】特開2009-115504(JP,A)
【文献】特表2012-533750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0237955(US,A1)
【文献】国際公開第2012/176194(WO,A1)
【文献】特開2002-126092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0001273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/172
G01F 1/684
G01F 1/696
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐久部分であって、
注入デバイスを受け入れるための第1の開口部と、反対側の端部における、セミディスポーザブル部分を受け入れるための第2の開口部とを有する外部ハウジングと、
耐久部分電気コネクタと、
メモリと、
バッテリと、
前記セミディスポーザブル部分から受信した信号を受信し処理することと、リモートデバイスからの通信信号を送信および受信するようにワイヤレストランシーバを駆動することとを行うためのプロセッサと
を備える耐久部分と、
セミディスポーザブル部分であって、
前記注入デバイスの隔壁を貫通するように適応されたカニューレと、前記注入デバイスの雄型ねじ特徴に係合するように適応された雌型ねじとを有する第1の端部と、
ペンニードルを受け入れるように適応された雄型ペンニードルねじと隔壁とを有する、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、
流れセンサチップがその上に取り付けられたプリント回路板と、
前記カニューレと前記隔壁と流体連通しているマニホルドであって、前記マニホルドが、前記第1の端部のカニューレから前記第2の端部の隔壁に隣接するチャンバまで延在する連続流路を備え、前記流路は微細加工された金属流路であり、前記流路が、センサを受け入れる開口部を備える、マニホルドと、
前記耐久部分電気コネクタへの電気接続のためのセミディスポーザブル部分電気コネクタと
を備えるセミディスポーザブル部分と
を備え、
前記流れセンサチップは、前記流路の開口部において受け入れられ、前記流路内に露出されるように適応された感知面を備え、前記感知面は、加熱要素と、前記加熱要素の下流に少なくとも1つの感知要素とを有し、
前記流れセンサチップは、前記加熱要素の上流に第2の感知要素をさらに備え、
前記流れセンサチップは、前記加熱要素の上流および下流に第2の距離で前記加熱要素から等距離だけ離間した感知要素の2次ペアをさらに備え、前記第2の距離は、前記加熱要素から前記少なくとも1つの感知要素および前記第2の感知要素までの前記距離とは異なり、
前記マニホルドは、第1の断面積をもつ第1の部分と第2の断面積をもつ第2の部分とを有し、前記流れセンサチップは、前記第1の部分に露出され、第2のセンサチップは、前記第2の部分に露出される、流れセンサシステム。
【請求項2】
前記セミディスポーザブル部分は変形可能ロック要素をさらに備え、前記変形可能ロック要素は、前記セミディスポーザブル部分が前記耐久部分に取り付けられることを可能にするように変形し、完全に取り付けられると前記セミディスポーザブル部分を前記耐久部分にロックする、請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項3】
前記セミディスポーザブル部分は、前記セミディスポーザブル部分を前記耐久部分と位置合わせする位置合わせ特徴をさらに備える請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項4】
前記第1の感知要素と前記第2の感知要素とが、前記加熱要素から等距離にある請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項5】
前記セミディスポーザブル部分は、前記セミディスポーザブル部分を前記耐久部分と位置合わせする位置合わせ特徴と、挿入されると前記セミディスポーザブル部分を前記耐久部分内にロックするスナップ屈曲とを備える請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項6】
前記加熱要素および前記感知要素は、前記セミディスポーサブル部分電気コネクタに電気的に接続される請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項7】
前記電気接続は、前記感知面に隣接しており接続されている導電性パッド上のワイヤ接合によって行われる請求項6に記載の流れセンサシステム。
【請求項8】
前記電気接続は、前記感知面から前記流れセンサチップの反対側の表面への電気接続を与える複数のビア内の導電材料によって行われる請求項6に記載の流れセンサシステム。
【請求項9】
前記セミディスポーザブル部分の前記電気コネクタは、前記第1の端部のカニューレが前記注入デバイスの前記隔壁を貫通するときに前記セミディスポーザブル部分が前記耐久部分に電気的に接続されるように配向される請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項10】
前記耐久部分が、リモートデバイスと通信するためのワイヤレストランシーバをさらに備える請求項1に記載の流れセンサシステム。
【請求項11】
加熱要素と、上流の感知要素と下流の感知要素とを備える感知要素の第1のペアとを備えるセンサをもつカニューレを通して送達される薬剤の投与量を測定する方法であって、感知要素の前記ペアは、前記加熱要素の上流および下流に等距離に第1のオフセット距離で離間される方法において、
前記加熱要素を用いて加熱信号を生成するステップと、
前記上流および下流の感知要素から受信した信号の差を感知することによって薬剤の流れの開始を検出するステップと、
瞬時流量を測定するために前記上流および下流の感知要素を周期的にサンプリングするステップと
薬剤の流れの終わりを決定するステップと、
複数のサンプリングされた瞬時流量に基づいて投与量体積を決定するステップと、
メモリユニット中に前記決定された投与量体積を記憶するステップと
前記センサは、前記加熱要素の上流および下流に等距離に第2のオフセット距離で離間された上流および下流の感知要素の第2のペアを備え、前記第2のオフセット距離は、前記第1のオフセット距離よりも長く、前記方法は、
前記流量が第1の範囲にあると決定される場合、感知要素の前記第1のペアを周期的にサンプリングし、前記流量が第2の範囲にあると決定される場合、感知要素の前記第2のペアをサンプリングするステップ
を備える、
方法。
【請求項12】
前記加熱信号は時間変動する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
投与量体積を決定する前記ステップは、前記薬剤の流れの持続時間にわたって前記サンプリングされた瞬時流量のすべてを実質的に積分することを備える請求項11に記載の方法。
【請求項14】
投与量体積を決定する前記ステップは、メモリのテーブル中に記憶された複数の流量テンプレートのうちの1つに、サンプリングされた流量のセットを一致させるステップを備え、各テンプレートは、異なる投与量体積に関連付けられる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプリングするステップが、前記上流および下流の感知要素の各々における前記加熱信号に基づいて相対振幅および位相を測定するステップを備える請求項11に記載の方法。
【請求項16】
瞬時流量が、振幅および位相値のテーブルルックアップに基づいて決定される請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達デバイスに関する。特に、本発明は、流れセンサを利用して注入ペンなどから送達される投与量を測定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年8月2日に出願された米国特許出願第15/226,638号明細書の優先権を主張するものである。
【0003】
投与量の測定は、任意の医薬治療の重要な構成要素であり、特に、糖尿病患者のためのインシュリン治療法のために重要である。患者の自己治療を適切に管理し、患者が処方された療法に従っていることを伝えるために、糖尿病患者は一般に、ログブックに手動でインシュリン注入を記録するように要求される。最近、送達された投与量を測定し、自動的にデータロギングする目的で数個の注入ペンおよびペン取付け機構、たとえば、どのくらいのインシュリンが送達されたのかを決定するためにインシュリンリザーバ内のプランジャの位置を概算する動力付き注入ペンおよび取付け機構が開発された。しかしながら、現在のソリューションのいずれも十分でない。インシュリン投与量の手動記録は人為的な過失および怠慢により本質的に不正確であり、プランジャの測定は、手動記録を上回る改善はあるが、個々の投与量については依然として十分に正確なものでなく、投与量が送達された時間を記録しない。
【0004】
熱飛行時間(TTOF)センサは、流体の体積流量を測定するために、知られている距離にわたって知られている横断面のチャネルを通って進行するにときに、移動する流体内に誘導される熱パルスの飛行時間を検出するために使用される。しかしながら、既存のTTOFセンサは、一般に、定常状態の流れシナリオにおいて使用され、インシュリンペンからのインシュリン注入などにおいて予想されているような流量の迅速で大きい変化を測定するために現在まで必要とされてこなかった。
【0005】
熱流れセンサのための風速、熱量、および熱飛行時間(TTOF)の3つの動作モードがある。最も単純なタイプの熱流れセンサは、いわゆる熱線式風速計である。L.V.Kingは、1914年に、無限の長さのシリンダからの熱伝達について説明したキングの法則を生じることになる熱線式風速計の最初の系統的な調査を行った。熱線式風速計は、単に定電流または定温度動作モードのいずれかを使用する流体の流れに挿入された白金ワイヤである。商用の熱分散質量流量計は、定温度熱線式風力測定に基づいて、パイプおよびダクト中のガスの工業用質量流量測定のために1960年代までには出現した。また、1960年代に、(質量流量コントローラの一部としての)毛細管式質量流量計が、半導体産業におけるガスの比較的低流量における質量流量制御を与えるために出現した。このデバイスは、熱量モードで動作する場合、毛細管の周りにそれぞれがセンサと加熱器との両方として働く2つの白金RTD(測温抵抗体)巻線を配置することによって毛細管センサチューブとバイパスとを使用する。熱量流量の感知は、電圧出力と流量との間の直線関係を有するが、低流速においてのみこれを有し、これが、毛細管ベースの質量流量コントローラのバイパス構成の理由である。3つすべての熱流量の感知モードはまた、低コストでセンサを小型化し、潜在的に大量生産するために微細加工が使用されるMEMSベースの流体流れセンサ中に適用され得る。本明細書で説明する本発明の例示的な実施形態では、薄膜構造が加熱要素およびセンサとして働く。MEMSセンサはまた、必要とされる電力入力の有意な低減を可能にする。風速流れセンサは、低流量で良好な精度を示さないので、それはMEMSベースのセンサのための好ましいモードではない。第1のMEMS熱流れセンサ(風速)が1970年代中頃に出現し、1980年代までに、学術研究の盛んな分野になり、1980年代の終わりに向けて最初の商用熱(熱量モード)MEMS気流センサが登場した。MEMS流れセンサはまた、従来の毛細管構成の代わりに質量流量コントローラのために採用されている。熱量MEMSセンサチップの設計は、通常、数10から数100ミクロンにわたる間隔で加熱要素の両側に上流および下流のセンサ要素をもつ基板上で対称的なレイアウトである。同じレイアウトがTTOFセンサのためにも使用され得るが、流れが双方向でない限り、上流のセンサを利用することは不要である。商用MEMS熱流れセンサは、概して、熱量式であるので、より高い流量を測定するために、それらは、流速を低減するためにバイパスを用いて動作するかまたは内部流管の直径を増加するように構成される必要がある。後者は、センサの精度および有効応答時間に悪影響を及ぼす。熱量MEMSセンサは、液体流の感知のための注入などの比較的低い、定常状態の流れの条件でよく動作するが、インシュリン注入の非常な過渡流れの条件の体積を正確に測定するのに必要な精度、感度、ダイナミックレンジ、および応答時間を有しない。基板として膜を利用する従来の熱量(およびTTOF)MEMSセンサは、インシュリン注入の高い圧力に耐えることができない。TTOF感知は、流動する流体の速度を直接測定し、したがって熱量(および風速)感知の質量流量ではなく流体の体積を測定する。微細加工により、それが加熱要素と感知要素との間の間隔のサブミクロンの精度を可能にするので、TTOFセンサは、より大きい精度を達成することが可能になる。体積の測定は、特定の流体のためにセンサを較正する必要がない限り、適用例によっては有利である。TTOF感知はまた、熱量感知とは異なり、インシュリン注入のはるかに高い過渡速度での流れを正確に測定することができる。しかしながら、TTOF感知は、流体中の熱拡散率により極めて低い流量で誤差を受けやすく、ゼロの流れで多くの雑音を検出する。したがって、従来のTTOF感知は、インシュリン注入の比較的短い持続時間にわたる流れ感知のために非常に重要である流れの発現を検出するために有用でない。したがって、インシュリン注入のための理想的な熱流れセンサは、流れの発現時に熱量モードで動作するように設計され、次いで、あらかじめ選択された流量でTTOFモードに即座に切り替わるMEMSベースのデバイスである。このタイプのセンサは、ハイブリッドTTOFセンサと言われることがある。本発明の例示的な実施形態は、以下でさらに詳細に説明するように、MEMS加工技術およびハイブリッドTTOFモードの動作の利点を活用するように設計され、これは、インシュリン注入中の流れの感知のための一意の要件を満たすカスタム液体体積センサを生じる。
【0006】
既存のTTOFセンサは、それらが、インシュリン注入によくある流量の全範囲を測定する能力、投与イベントの発現時に瞬時に応答する能力、および非常に変わりやすい流量を測定する能力がないので、インシュリン注入の送達された投与量を感知するのに不十分である。さらに、従来のTTOFセンサは、シリンジおよびペンニードルなどの流体注入デバイスに関連する圧力を扱うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許仮出願第62/328,967号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,670号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,649号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,682号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,702号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,680号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,646号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,655号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,654号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,714号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,666号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,660号明細書
【文献】米国特許仮出願第62/328,676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ゼロの流れ状態から最小限に検出可能な速度への遷移を検出するために迅速なセンサ応答時間をもつ流れセンサの必要がある。さらに、注入中の流体の流れの速度が注入サイクルの大部分の間に過渡的であるので、ほぼゼロの流れ状態から、注入中に予期されるあらゆる流れ速度にわたって正確に実行する流れセンサが必要である。過剰な熱はインシュリンの薬効を変性させるか、または別様に有害な影響を及ぼすことがあるので、流れるインシュリンにあまりに多くの熱を加えないTTOFセンサも必要である。本明細書全体にわたって、インシュリンの流れに言及する。ただし、当業者には、本明細書で説明する本発明の実施形態が多くの薬剤または他の流体とともに利用され得、インシュリンは例であると理解されるべきであることを諒解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当業者なら諒解するように、本発明の実施形態によって、上記で説明した欠点が克服され、他の利点が実現される。例示的な実施形態は、インシュリン薬品注入のための正確な信頼できるTTOFセンサを提供する。本明細書では、カスタマイズされた電子駆動および測定回路、投与量体積計算アルゴリズム、ならびに流路およびマニホルドの形状とともに一意の感知チップ構造について説明する。特に、本発明の実施形態は、流体の流れの開始を識別し、流量を周期的に測定するために加熱要素の上流および下流の感知要素において受信される振幅信号と位相信号との両方を利用する。その結果、インシュリンの送達の要件に適合された応答時間、ダイナミックレンジ、および精度をもつ、市販の流れセンサのための典型的な規格を上回る感知システムになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の添付の図面に示すそれの実施形態を参照してより容易に理解されよう。
【0011】
図1】本発明の例示的な実施形態による、投与量捕捉システムを示す図である。
図2図1の投与量測定システムのセミディスポーザブル部分を示す図である。
図3図1の投与量測定システムの耐久部分を示す図である。
図4A】本発明の例示的な実施形態による、携帯電話への応用の例示的なインターフェーススクリーンを示す図である。
図4B】本発明の例示的な実施形態による、携帯電話への応用の例示的なインターフェーススクリーンを示す図である。
図4C】本発明の例示的な実施形態による、携帯電話への応用の例示的なインターフェーススクリーンを示す図である。
図5】本発明の例示的な実施形態による、デバイスによって測定された典型的なインシュリン投与量プロファイルを示す図である。
図6】流体が流れていないときのセンサ中の熱場の断面を示す図である。
図7】流体が流れる状態でのセンサ中の歪んだ熱場の断面を示す図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による、投与量体積を計算するために流れの読取りを積分する台形の総和方法を示す図である。
図9A】本発明の例示的な実施形態による、センサチップの断面を示す図である。
図9B】本発明の例示的な実施形態による、センサチップの断面を示す図である。
図10】本発明の例示的な実施形態による、キャリアPCB上に取り付けられるセンサチップを示す図である。
図11A】本発明の例示的な実施形態による、センサチップのバックエッチングおよび導電ブレーク特徴を示す図である。
図11B】本発明の例示的な実施形態による、センサチップのバックエッチングおよび導電ブレーク特徴を示す図である。
図11C】本発明の例示的な実施形態による、センサチップのバックエッチングおよび導電ブレーク特徴を示す図である。
図11D】本発明の例示的な実施形態による、センサチップのバックエッチングおよび導電ブレーク特徴を示す図である。
図12】本発明の例示的な実施形態による、センサチップと流れマニホルドとの断面を示す図である。
図13】本発明の例示的な実施形態において利用される微細加工された流路を示す図である。
図14A】本発明の例示的な実施形態による、センサデバイスのための極較正プロットを示す図である。
図14B】本発明の例示的な実施形態による、センサデバイスのための極較正プロットを示すである。
図14C】本発明の例示的な実施形態による、センサデバイスのための集計テーブルを示す図である。
図15A】本発明の例示的な実施形態による、センサデバイスの回路板を示す図である。
図15B】本発明の例示的な実施形態による、センサデバイスの回路板を示す図である。
図16A】本発明の例示的な実施形態による、ビア特徴をもつセンサチップを示す図である。
図16B】本発明の例示的な実施形態による、ビア特徴をもつセンサチップを示す図である。
図16C】本発明の例示的な実施形態による、ビア特徴をもつセンサチップを示す図である。
図16D】本発明の例示的な実施形態による、ビア特徴をもつセンサチップを示す図である。
図17A】本発明の別の例示的な実施形態による、感知要素のペアを有する流れセンサを示す図である。
図17B】本発明の別の例示的な実施形態による、感知要素のペアを有する流れセンサを示す図である。
図18】本発明の別の例示的な実施形態による、タンデムセンサチップを有するデバイスを示す図である。
図19A】本発明の別の例示的な実施形態による、セグメント化されたカニューレセンサを示す図である。
図19B】本発明の別の例示的な実施形態による、セグメント化されたカニューレセンサを示す図である。
図20】本発明の例示的な実施形態による、回路板のブロック図を示す図である。
図21A】本発明の例示的な実施形態による、フレキシブルな基板およびエッチングされたセンサの設計を示す図である。
図21B】本発明の例示的な実施形態による、フレキシブルな基板およびエッチングされたセンサの設計を示す図である。
図22A】本発明の例示的な実施形態の動作を説明する状態遷移図である。
図22B】本発明の例示的な実施形態の動作を説明する状態遷移図である。
【0012】
図面全体にわたって、同様の参照番号が、同様の要素、特徴および構造を指すことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の例示的な実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。図1に、好ましくは従来のインシュリンペン102を一体化する例示的な投与量捕捉システム100を示す。この例示的な実施形態がインシュリンペンに関して示されているが、本発明の実施形態は、限定はしないが、パッチポンプ、静注ポンプ、固定投与量インジェクタ、自動インジェクタ、シリンジなどを含む任意の好適な薬剤デバイスとともに利用され得ることを諒解されたい。システム100は、流体マニホルドと熱飛行時間(TTOF)ハイブリッドセンサとを含むセミディスポーザブル流れセンサ104を備える。セミディスポーザブル流れセンサ104は、好ましくは、それが取り付けられるインシュリンペン102と同等の寿命を有する。システム100は、耐久部分106をさらに備え、これは、好ましくは、複数年の寿命を有する。耐久部分106は、流れセンサに電力供給し、センサ信号を読み取る電子回路と、投与量データを分析するためのマイクロプロセッサと、充電式バッテリと、温度ならびに動きおよび/または位置センサと、ワイヤレス通信回路とを含んでいるプラスチックエンクロージャからなる。耐久部分106はまた、好ましくは、セミディスポーザブル流れセンサを保護する、光からインシュリンを遮蔽する、意図しない針刺しから患者を保護する、ならびにキャップ146がそれぞれ耐久物から取り外されるかまたはそれの上に戻されるときに感知システムを活動化および非活動化させる電気接触クロージャのためのスイッチとして働く機能のうちの1つまたは複数を与えることができるリムーバブルキャップ146を有する。耐久部分106は、好ましくは、USBポートなどの標準的なコネクタを介して、または、好ましくは、ワイヤレス充電システムを介して充電されるように適応される。好ましくは、スマートフォン108ベースのソフトウェアアプリケーションは、投与量情報を読み取り、記憶し、提示するために耐久部分106とワイヤレスに対話する。アプリケーションはまた、グルコース計、アクティビティおよびフィットネスメータ、または糖尿病ケアネットワークなどの他の電子デバイスおよびネットワークと相互作用することができる。ソフトウェアアプリケーションは、好ましくは、耐久部分106と1度だけペアリングされる。初期ペアリングの後に、ソフトウェアは、耐久部分106を自動的に認識し、自動的に耐久部分106からスマートフォンアプリケーションにデータを確実に転送することが可能である。本発明の代替実施形態では、他のペアリング構成が、適宜に必要に応じて行われ得ることを諒解されたい。
【0014】
セミディスポーザブル流れセンサ104は、好ましくは、標準的なインシュリンペンニードル110を受け入れるためのねじ部分114を有する。ペンニードルは、好ましくは、従来通り各インシュリン投与量とともに変更される。
【0015】
セミディスポーザブル流れセンサ104について、図2に関してさらに詳細に説明する。図示のように、セミディスポーザブル流れセンサ104の遠位端は、隔壁112とユニバーサルペンニードルねじ114とを備える。MEMS流れセンサチップ116は、キャリアプリント回路板上に取り付けられ、セミディスポーザブル流れセンサアセンブリ104に固定される。電気コネクタ118は、セミディスポーザブル流れセンサ部分104と耐久部分106との間で電気接続を行うために与えられる。セミディスポーザブル流れセンサ部分104の近位端は、入口カニューレ122をもつインシュリンペン接続120を備える。セミディスポーザブル物104はまた、好ましくは、耐久部分106内でセミディスポーザブル物104を位置合わせするためにハウジング上に位置合わせ特徴124を含む。セミディスポーザブル物は好ましくは、耐久部分106内でセミディスポーザブル物104を取外し可能にロックするために軸ロック126または同様の特徴を含む。図示のように、軸ロック126は、フレキシブル部材128と耐久部分106の対応する特徴にロックされるように適応されたロック部材130とを備える。
【0016】
次に、耐久部分106について、図3および図20を参照しながらさらに詳細に説明する。図示のように、耐久部分106は、充電ポート134のための開口部を好ましくは含む外部ハウジング132を備える。充電ポート134は、好ましくは、ミニUSBなどの標準的に採用された標準に準拠するが、専有接続を含む任意の好適な接続が利用され得る。代替的に、ワイヤレス充電構成が耐久ユニットに組み込まれ得る。耐久ユニットは、インシュリンペン102への取付け機構のための開口部138を含む近位端136を有する。耐久ユニットは、セミディスポーザブル部分104を受け入れるように適応された開口部142を含む遠位端140をさらに有する。耐久部分106は、好ましくは、リムーバブルキャップ146を受け入れるように輪郭形成され、それを行うために回り止め144または同様の特徴を含む。耐久部分106は、図20に示すプリント回路板2000を含む。耐久PCB2000は、好ましくは、アナログフィルタ2004と、ロックイン/計器増幅器2006と、発振器2008とを与えるASIC2002を含む。ASIC2002は、アナログデジタル変換器(ADC)2010にデータを与える。ADC2010は、次に、Bluetooth(登録商標) ARMプロセッサ2012にデータを与える。耐久PCB2000は、マイクロUSBポートなどの通信ポート2014と、インターフェース/センサ2016と、バッテリ構成要素2018/2020をさらに含む。耐久PCB2000は、加熱器2024を与えるMEMSチップ2022およびセンサ要素2026とインターフェースする。
【0017】
次に、例示的な実施形態による投与量捕捉システムの動作について説明する。投与量捕捉システム100は、各新しいペンとのセットアップシーケンスの一部として、すなわち、典型的なユーザの場合3日から7日(名目上は5日)ごとにインシュリンペン102に取り付けられる。耐久部分106が最初にインシュリンペン102に取り付けられる。セミディスポーザブル物104が、次いで、耐久部分106の遠位開口部140に挿入される。ディスポーザブル部分104のカニューレ122がインシュリンペン102の遠位隔壁を貫通して、TTOF感知要素にわたる流路を作成する。セミディスポーザブル部分104が耐久部分106に挿入されるので、電気コネクタ118が耐久部分106内の対応する電気コネクタと嵌合されて、TTOFセンサ116への電気接続を作成する。ディスポーザブル部分104、したがって、ペンニードルカニューレが隔壁112を貫通する場合、ペンニードルは遠位のねじ端部114に螺合されて、インシュリンペンから流れセンサとペンニードルとを通る流体経路を完成する。組み合わされたインシュリンペンと投与量感知システムとは、次いで、閉じ込められた空気を取り除くために通常の方法でプライミングされる。
【0018】
本実施形態では、アセンブリシーケンスは、最初に耐久部分106、第2にセミディスポーザブル部分104であるが、当業者なら諒解するように、システムは逆転されたアセンブリ順序で設計され得る。このアセンブリシーケンスでは、耐久部分106は、遅効性のインシュリンをもつ1つのペンと速効性のインシュリンをもつ第2のペンとなど、異なるインシュリンペン上で使用され得る。セミディスポーザブル部分104は、好ましくは、各インシュリンペン上で発見されるユニバーサルISO接続に取り付けられ、耐久部分106は、次いで、セミディスポーザブル部分104と、インシュリンペンの本体とに取り付けられることになる。耐久部分106がインシュリンと接触しないので、耐久部分106は、インシュリンの無菌性に影響を及ぼすことなしにユーザの治療の必要に応じて複数のペンの間であちこちに交換することが可能である。2つ以上のインシュリンまたは薬に関与する治療では、耐久物が取り付けられた追加の薬を認識する手段が提供される。たとえば、耐久ユニットがペンに取り付けられるとき、注入ペン上のバーコードを読み取るために耐久部分とペアリングされたスマートフォン上のカメラが使用される。
【0019】
耐久部分106は、好ましくは、上記で説明したように、スマートフォンアプリケーションとペアリングされる。ペアリングプロシージャは、好ましくは、所与の携帯電話108/耐久部分106のペアごとに1度行われる。初期ペアリングの後に、携帯電話108のアプリケーションは、好ましくは、ペアになった耐久部分106を自動的に認識し、それと通信する。
【0020】
インシュリンペン上に取り付けられると、例示的なシステムは、ユーザの通常の注入シーケンスの一部として投与量イベントを自動的に認識し、捕捉する。好ましくは、通常のインシュリンペンの注入のために必要なものを越えた追加の使用ステップが、ペン上での初期セットアップの後に投与量センサに必要とされない。投与量体積および時間は、耐久部分106によって計算される。耐久部分106は、好ましくは、多くのインシュリンペンの分の投与量データを記憶することができる。耐久部分106によって記録されたデータは、好ましくは、スマートフォン108と耐久部分106とが互いのブロードキャスト範囲内にあるときはいつでもスマートフォン108アプリケーションに転送される。スマートフォン108に転送される投与量データは、好ましくは、便利な、読み取りしやすいフォーマットでユーザに提示される。投与量情報はまた、さらなる処理および分析および患者のヘルスケアネットワーク中の他のステークホルダへの転送が望まれる場合は携帯電話から他の糖尿病管理デバイスに、またはクラウドベースのデータストレージサイトに転送され得る。
【0021】
インシュリンペン102が空になると、耐久部分106は取り除かれ、次の使用のために準備される。使いきったインシュリンペン102とセミディスポーザブル部分104との組合せは、従来の糖尿病ペンと同様に破棄される。耐久部分106またはセミディスポーザブル部分104は、好ましくは、別のインシュリンペン102上でのセミディスポーザブル部分104の再利用を妨げるための特徴を有する。
【0022】
次に、我々は、例示的なスマートフォン108のアプリケーションについて説明する。スマートフォンアプリケーションは、好ましくは、理解しやすいフォーマットでユーザに投与量データを表示する。図4Aに、投与量概観ウィンドウを示し、ここで、最近の投与量測定値と時間ベースの平均値とを示し得る。図4Bは、正確さのためにユーザによってレビューされ得、ノートおよび他のコンテキストベースのデータのロケーションを提供する投与量ログを有する。図4Cに、ユーザに傾向洞察を与えることができる、選択可能な時間範囲にわたる投与量測定値のグラフを示す。
【0023】
インシュリン注入のいくつかの態様は、正確な投与量を測定することに対する有意な課題を提示する。インシュリン投与量のサイズは、低くは3.3マイクロリットルから高くは800マイクロリットルまで大幅に変化することができる。投与量の送達時間は、投与量のサイズと、使用されている針の直径および長さと、インシュリンペンの摩擦および機械効率と、ユーザまたはペンのばね負荷の作動によって加えられた作動力とに基づいて1秒未満から10秒よりも長くまで大きく変化することができる。典型的なインシュリン注入の流れプロファイル500を図5に示す。流れプロファイルは、注入の始めに流れの急激な、大きい増加502を有し、連続的に変動する流量504を有し、投与量の最後に比較的長い流れの減衰506を有する。正確な投与量を計算するために、流れセンサは、流れプロファイルのすべての部分に急速に正確に応答しなければならない。流れセンサは、流れの急激な変化に応答することが可能でなければならず、広範囲のユーザによって生成され得る流量の範囲にわたって正確でなければならない。有利には、本発明の実施形態は、時間にわたって流量測定値を積分することによって投与量を決定することが可能である。代替的に、いくつかの流量データ点または流れ曲線の全体的な形状が、たとえば、1ユニットから60ユニットまでの増分投与量などの投与量値の記憶されたテーブルに一致され得る
【0024】
国際規格は、現在、インシュリンペンの最小分解能または投与量体積の+/-5%のいずれか多い方に等しい体積精度を要求している。たとえば、1Uのダイヤル分解能をもつ典型的なU-100ペンについて、200マイクロリットルよりも少ない投与量については+/-10マイクロリットル、200マイクロリットルよりも大きい投与量については+/-5%の精度が要求される。より高いインシュリン濃度は体積に対して反比例する。たとえば、1Uの分解能をもつU200インシュリンペンは、100マイクロリットルよりも少ない投与量については+/-5マイクロリットル、100マイクロリットルよりも大きい投与量については+/-2.5%の体積精度を要求することになる。
【0025】
インシュリン注入のために、一般に、比較的高い背圧を作成し得る小径の針が使用される。したがって、本発明の実施形態による流れセンサは、最大1メガパスカルの背圧を許容することが可能でなければならない。
【0026】
流れセンサがインシュリン送達経路中にあるので、それは、インシュリンに化学的に適合する材料から製造されなければならず、いかなる形でもインシュリンと反応しても破損してもならない。
【0027】
本発明の例示的な実施形態によれば、TTOF流れ感知は、オフセットされた熱感知要素とともに中央の加熱要素を使用する。各感知要素のオフセットは、必ずしもそうではないが、好ましくは、加熱要素の両側で対称的である。知られている振幅、周波数、形状および位相の時間変動する信号が中央の加熱器に印加される。熱信号は、センサに向かう流体を通して拡散し、ここで、それは、駆動信号に対して低減された振幅とシフトされた位相との両方で検出される。振幅信号は、熱量計感知に対応し、一方、位相シフト信号は、飛行時間感知に対応する。流れがなければ、図6に示すように、加熱器の周りの熱伝導ゾーンは対称になる。耐久部分106中の電子回路は、上流および下流のセンサから平衡信号を感知する。電子回路によってフィルタ処理して除去された場合の両方のセンサが受ける共通信号および電子回路は、センサのための流れのない状態を計算する。流れがあれば、図7に示すように、熱ゾーンは、流体対流によって歪む。熱信号は、不平衡であり、下流の感知要素で受ける電子信号は、入力に対しておよび上流のセンサに対して位相(時間)および振幅がシフトされる。有利には、上流および下流のセンサトレースの両方からのセンサ信号は、注入イベント中に予想される流れ範囲全体にわたってサンプリングされる。シフトインセンサ信号は、耐久部分106の電子回路によって読み取られ、記憶された較正曲線またはテーブルを参照することによってインシュリンの瞬時流量に変換される。正確な頻繁な時間間隔で瞬時流量をサンプリングすることによって、送達された総体積が、投与量イベントごとに計算され得る。図8に、例示的な投与量イベントと、投与量の体積を計算するために流れセンサによって捕捉された関連データとを示す。
【0028】
いくつかの投与量追跡インシュリンペンが現在市場で入手可能である。これらのペンは、送達された投与量を決定するためにペン機構の動きを追跡および監視する。従来のペンは、最近の注入の意図された投与量体積を通信するために小さいディスプレイを使用する。いくつかのより新しいモデルはまた、スマートフォンへのワイヤレス通信を組み込む。ペンの機械化が、検出装置中の誤差への追加であり得る固有の誤差を有するので、ペン注入機構を追跡することは、ユーザによって受け取られる投与量を正しく監視することに失敗する可能性がある。さらに、投与量が組織に完全に送達される前に注入部位からペンを引き出すか、またはシステム構成要素の障害、たとえば、はさまれたか詰まったペンニードルを認識しないなどのユーザエラーが、意図された投与量を送達しないことにすべて寄与し得る。従来のインシュリンペンとは異なり、本発明の例示的な実施形態は、ペンから実際に送達された時間と変化するインシュリン流量プロファイルとを測定するためにTTOF感知を利用し、それにより、送達された実際の投与量についてより完全な正確な情報が可能になる。
【0029】
それらの小さいサイズと精度とのために商用用途において熱MEMS流れセンサが使用される。マイクロ電気機械システム(MEMS)技術により、正確な特徴公差を用いたマイクロメートルスケールの加熱および感知要素の加工が可能になり、その結果、流体への最小熱入力と非常に正確なセンサ特徴とをもつセンサを生じる。しかしながら、市販の熱MEMS流れセンサは、一般に、比較的狭い範囲にわたる質量流量を測定するために定常状態モードでガス用途において使用される。ただし、市場で入手可能であるセンサは、非常に過渡的なインシュリン投与量を効果的に測定するのに必要な精度、感度、ダイナミックレンジ、注入圧力に耐える能力、および応答時間を有しない。本発明の例示的な実施形態は、TTOF加工技術の利点を活用するように設計されるが、インシュリン注入の一意の要件および要求を満たすカスタム液体体積センサを生じる。
【0030】
次に、図9Aおよび図9Bを参照しながら感知チップの製造方法について説明する。感知チップの断面である図9Aに示すように、液体流れ感知チップ900は、基板902上に材料の層を連続的に堆積することによって製造される。フォトマスクは、プラズマもしくはウェットエッチング、または貴金属層のリフトオフを使用して層をパターニングするために使用される。層は、接着層904と、要素層906と、少なくとも1つのパッシベーション層908とを含む。堆積シーケンスの後に、基板902は、個々のセンサチップに切断され、これらは、次いで、プリント回路板に機械的に取り付けられ、電気接続のためにワイヤボンディングされる。図9Bに、センサ900のセンサ面910を示す。図示のように、素子層906は、加熱要素912と2つの感知要素914とを形成するためにセンサ面910上に露出される。加熱912要素および感知914要素は、好ましくは、端から端までの長さになるが、幅方向916(インシュリンの流れ方向)ではできるだけ狭くなる。図示のように、加熱要素912および感知要素914は、各要素のそれぞれの端部が好都合な電気接続のために互いに近接しているように長いU字形のトレースとして形成される。したがって、加熱912要素および感知914要素の各々は、電気接続が好都合な電気取付けのために位置した状態で比較的長く、狭くなる。図示のように、加熱要素912は、センサ面910の一方の側で電気接続918に配向されるが、感知要素914は、センサ面の反対側で電気接続920に反対方向に配向される。図10に、プリント回路板1002に取り付けられ、電気接続のためのワイヤボンドエリア1004を有する個々の感知チップ1000を示す。
【0031】
本明細書で説明するように、本発明の例示的な実施形態による熱MEMS流れセンサ構成のいくつかの態様により、インシュリン投与量の感知に必要なパフォーマンスが可能になる。
【0032】
図11A図11Dを参照すると、基板材料1100は、基板への熱損失および加熱要素2024からセンサへの相互導通を最小化するために低熱伝導率(<2.0W/m-K)を有するように選択される。基板材料1100は、一貫した平坦さと、堆積プロセスに必要な温度を許容する能力と、最大1メガパスカルの圧力を許容する能力とを有する。そのような高圧は、カニューレ断面がセミディスポーザブル物中に与えられる流路1026の断面よりも小さいペンニードルの使用によって作成される背圧によって生じる。ペンニードルのユーザは、しばしば、注入中の痛みおよび不快さを減少するために小断面のカニューレを選好する。ホウケイ酸ガラスは、基板1100のために使用され得る1つの例示的な材料であるが、他の断熱材料も使用され得る。好ましい基板1100は、0.35mmまたは0.5mmなどの単一の厚さである。代替的に、基板1100をバックエッチングすることによって形成される(2ミクロン未満などの)薄い感知膜1150が製造され得る。しかしながら、この感知膜のものは、投与中に存在する圧力に対処するために、または投与イベント中に感知膜に印加される圧力を緩和するかもしくは少なくするために構造特徴または他の調整を必要とする。薄い感知膜1150の設計は、2.0W/m-kを超えるなどの高熱伝導性をもつ材料の使用を可能にする。薄い設計は、より熱効率的であり、より高い信号対雑音比を有するが、加工するのがより複雑で、動作圧力により敏感である。図11Bに示す別の設計は、加熱器2024要素およびセンサ2026要素の両側に導電ブレークとして働くエッチングスロット1130を有する。この設計は、バックエッチングチップと同じ良い点と悪い点とを有する。加熱2024要素および感知2026要素をもつチップ上の領域の下のバックエッチングは、一般に、それが機械の完全性を低下させ、圧力に露出されたときに基板の変形につながるので回避されるべきである。この基板の変形は、加熱器2024要素からセンサ2026要素までの間隔、ならびにセンサ要素2026によって観測される流速プロファイルに影響を及ぼし、観測された圧力に基づいてセンサの精度および繰返し精度に影響を及ぼす。熱導電率の影響をさらに低減するために、バックエッチングされたエリア1140と導電ブレーク1130との2つの代替が図11A図11Dに示すように組み合わされ得、これらは、それぞれ、感知チップの上面図(図11A)、感知チップの拡大された上面図(図11B)、感知チップの断面図(図11C)、および感知チップの拡大された断面図(図11D)を示す。
【0033】
本発明の例示的な実施形態は、ガラス基板上にセンサを形成する。ガラス基板は、投与イベント中のセンサの変形を妨げるために低い熱伝導率および構造剛性を有する。ガラス基板上のセンサ表面を形成することは、好ましくは、1つのセンサ表面が流路内の薬剤に露出されるので、液体薬剤の流れの用途において好ましく、センサに加えられる圧力が問題にならない気体用途で使用される薄膜またはブリッジ構造に関して上記の制限を克服する。
【0034】
次に、ハイブリッドTTOFセンサの例示的な微細加工プロセスについて説明する。ガラスウエハ基板は、最初に、すべての表面の不純物を取り除くために清浄および調整される。これは、溶剤を用いてまたは化学エッチングを介して行われ得る。
【0035】
次いで、金属接着層、一般に、CrまたはTiが、ガラスと加熱および感知層との間の接着を促進するために基板上に堆積される。金属被覆層は、好ましくは、ガラス基板のそれよりも大きく(4.0m/(m-K)など)、金の電気トレースのそれよりも小さい(14m/(m-K)など)熱膨張率をもつ材料からなる。好ましい材料は、クロムおよびチタンを含むが、他の材料も使用され得る。加熱要素および感知要素とガラス基板との間の結合のロバスト性を改善し、使用中に堆積層のあらゆる層間剥離の可能性を最小化するために、多層構造が使用され得る。
【0036】
マイクロスケールの白金加熱および感知要素が、次いで、金属被覆層上に堆積される。不活性で防腐用であるだけでなく、それの比較的高い線形の抵抗率温度係数(TCR)により、白金が好ましくは使用されるが、ポリシリコンなどの同様の性質をもつ他の好適な材料が代わりに使用され得ることを諒解されたい。図16A図16Dに示すように、要素構造は、ペアになった感知要素1604が上流および下流の方向に加熱要素1602から等距離に正確に配置された状態の、中央加熱要素1602からなる。一実施形態では、加熱および感知要素は、チップの同じ表面上の電気パッド1606に電気的に接続され、ビアは、基板の反対側1608と反対側1608の対応する電気パッド1610とに電気接続性を与える。図16Cに、はんだパッド1610と、電気パッド1606と、ビア1608とを示すデバイスのビアエリアの断面を示す。導電性コーティング1612および非導電性フィラー1614をも示す。図16Dは、基板902と、はんだパッド1610と、ビア1608と、電気パッド1606とに加えてはんだボール1616を示す断面図である。マスキングおよび堆積プロセスにより、それらの電気抵抗が1オーム内に一致されるように加熱1602要素および感知1604要素の厚さ、幅および長さの正確な制御が可能になる。要素の低い熱質量により、それらを高頻度で加熱冷却することが可能になる。これらの性質の両方は、センサの応答および精度のために重要であり、また有利には、生成される熱量を制限し、これは、デバイス中を流れるインシュリンの完全性を保護する。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によるセンサのために、100から1500オームの間の公称抵抗が使用され得、好ましい値は、耐久部分106のための現在の電子回路設計に基づいて450から650オームの間にある。
【0038】
加熱器からセンサ要素までの間隔は、必要とされる流量と、インシュリンの熱および流体性質と、電気駆動要件とに関係する。所与の流路断面では、要素が互いに離間される距離が近くなればなるほど、信号対雑音比が強くなり、低流量測定の精度がより良好になる。所与の流量では、加熱器からセンサまでの間隔が増加するにつれて、信号対雑音比が流体の大部分へのさらなる熱拡散として低減され、感知要素にすこししか搬送されない。信号が感知要素に達するためにより長い飛行時間がかかるので、より大きい間隔は、測定可能な位相シフトの測定範囲を増加させる。25から700ミクロンの間の加熱器からセンサまでの間隔が使用され得、130から400ミクロンの範囲の間隔が好ましい。
【0039】
図17Aおよび図17Bを参照すると、本発明の別の実施形態は、センサ要素の2つのペア1701a、1701bを含むセンサチップ1700を利用し、1つのペア1701aは、加熱要素1702の上流および下流の第1の距離で加熱要素1702から等距離にあり、第2のペア1701bは、加熱要素1702の上流および下流の第2の、より長い距離で加熱要素1702から等距離にある。一連の金トレース1703は、嵌合PCBAへのワイヤボンディング接続を与えるために使用されるより大きい電気接触パッドに加熱要素1702および感知要素の微細構造1701a、1701bを接続するために堆積される。
【0040】
チップ表面は、パッシベーション層で被覆される。パッシベーション層は、熱抵抗を最小限に抑えながら、インシュリンから加熱器とセンサとを隔離し、表面を電気的に絶縁する。当該層は、非常に薄いので、二酸化ケイ素などの絶縁材料が有意な熱抵抗を加えない。パッシベーション層は、1つまたは複数の材料の複数の層からなり得る。厚い層がより高い内部応力を有することになるので、複数の薄いパッシベーション層が単一のより厚い層より好ましい。複数のより薄い層の使用は、総応力を低減し、その結果、たとえば、次の層中の圧縮応力と第1の層中の引張応力を平衡するためにより安定したパッシベーション層をもたらす。好ましくは、パッシベーション層は、二酸化ケイ素の第1の層と窒化ケイ素の第2の層とからなる。全体的なパッシベーション層をより厚くすることは、ピンホールを有する可能性を最小化する。パッシベーション層はまた、高い熱伝導性を依然として維持しながら化学的耐性および不活性のインシュリン接触表面を与える。パッシベーション層の全体的な厚さは、3000から7000オングストロームの間になる。
【0041】
境界1705は、ウエハ上の各センサを単一化するための切断プロセス中のパッシベーション表面への損傷を妨げるために各チップの外周上でエッチングされる。チップは、プリント回路板1202に接着剤で取り付けられる。回路板上のトレースにチップ上の電気トレースを接続するために、ワイヤボンドが使用される。ワイヤ接合は、エポキシ1004の保護層で封入される(図10を参照)。
【0042】
アセンブリ後に、センサチップは、それらの出力を安定化し、長期ドリフトをなくすために公称電流および熱循環を用いて最高72時間のバーンインプロセスに通される。バーンインプロセスは、好ましくは、フルセンサを釣り合わせるために流れマニホルドをも含む。
【0043】
図12に、流れマニホルド1204内に露出したセンサ表面をもつPCB1202上に取り付けられたセンサチップ1200を示す。チップは、UV硬化接着剤、グランド中の成形されたエラストマーシールまたはオーバーモールド成形されたエラストマーシールを含む任意の好適な手段によってマニホルド1204に取り付けられ、密封され得る。マニホルド1204の1つの端部は、穿刺カニューレ122を含んでおり、インシュリンペンのISO標準ハブに取り付けられる。ペン102にマニホルド1204を取り付けることは、インシュリンカートリッジ上のゴム隔壁を穿刺し、センサ1200にわたるインシュリン流路を確立する。マニホルド1204の反対側の端部は、インシュリンペンニードルのためのISO対応の接続を作成するねじとエラストマ隔壁とを含んでいる。マニホルド1204は、理想的には30マイクロリットル未満の最小残留(回収不能の)内部体積と理想的には25mm未満の最小付加長さとを有するように形成される。マニホルド1204は、層流がセンサ1200の面にわたって常に維持されるようにする断面積および滑らかな遷移で設計された流路1206を含む。センサ1200の面は、それが常にインシュリンの流れの剪断域中にあるようにチャネル壁に対して明確に配置される。センサ面の配置は、マニホルド壁に対して0mmから0.1mmの盛り上がりでなければならず、0.05mmが好ましい。マニホルド1204を通る流路1206は、好ましくは、流路1206を通るインシュリンの層流を促進するために入口カニューレ122からセンサ表面1200までペンニードル端に向かって実質的に直線で形成される。
【0044】
マニホルド1204は、好ましくは、挿入およびセットアップ中の耐久部分106に対するセミディスポーザブル部分104の適切な向きおよび配置を保証する位置合わせ特徴を有する。スナップ屈曲1208などの保持特徴は、使用中に耐久部分106およびインシュリンペン102にセミディスポーザブル部分104を固定し、ペン102が空のときにユーザがセミディスポーザブル物を開放し、取り除くことを可能にする。マニホルド1204上の電気コネクタ118は、好ましくは、入口カニューレ122と同じ方向に配向され、耐久部分106にセミディスポーザブル部分104を挿入するときに流路が確立されているのと同時に耐久部分106との電気接触を確立する。図12に示す電気コネクタ118が導電ピンを有するが、導電性パッド、可撓性ケーブル、導電性フレクシャまたはピンなどの他の特徴も使用され得る。
【0045】
確立された加熱器からセンサまでの間隔をもつ所与の感知チップでは、測定可能な流れの範囲は、流路断面を変更することによって調整され得る。所与の流量では、より大きい断面は、チップによって観測される見掛けの速度を小さくすることになり、センサ信号が飽和する前にチップがより高い流量を測定することを可能にする。より大きい断面は、低い流量での低減された精度という固有のトレードオフを有することになる。流路中に低減された内部容積をもつ等価な流れの範囲を測定するために、より小さい断面がより大きい要素間隔とペアリングされ得る。
【0046】
セミディスポーザブル物104、より詳細には、流路1206を備える要素は、好ましくは、ペンインジェクタの全寿命、すなわち、最長少なくとも28日の間インシュリンと適合し、結合しない材料で設計される。そのような材料は、特に、ABSプラスチックと304シリーズのステンレス鋼とを含む。液体シリコーンゴムがPCBとマニホルドとの間のシールのために使用される場合、およびエラストマがインシュリンからの防腐剤を吸着する傾向を有するので、ゴムシールの露出表面は最小化される。マニホルド構成要素を接合するために、医療グレードの光硬化接着剤が使用される。これらは、好ましくは、フラッシュ硬化シアノアクリレートまたは光硬化アクリルを含む。
【0047】
インシュリン流路1204は、インシュリンタンパク質分子を潜在的に損傷し得る高剪断の任意のゾーンを回避するために漸進的な流れの遷移で設計される。マニホルドのねじハブ114は、好ましくは、ISO標準のインシュリンペンニードルを受容するように設計される。
【0048】
図12に示すインシュリンの流路1204は、注入成形された熱可塑性成分である。代替的に、図13に示すように、セミディスポーザブル物104の流路1204は、上記で説明した滑らかな流れの遷移を与えるように微細加工された金属、プラスチック、セラミック、または複合管1301と置き換えられ得る。微細加工された流路により、精度に有益であるより厳しい製造公差が可能になる。金属流路1301は、インサート成形され、セミディスポーザブル物104に組み込まれる。
【0049】
別の実施形態では、ペンニードル(PN)は、2つの別個の構成要素、すなわち、PNハブまたはベースおよび針サブアセンブリとして製造される。流路は、PNハブに組み込まれることになり、PNハブは、任意のインシュリン注入ペン上に設けられた標準的なISO係合に取り付けられ、ペンの全使用寿命の間ペンに取り付けられたままになることになる。PNハブはまた、上記で説明したように、サーミスタトレースが流路内で懸架または露出されるオーバーモールド成形されたMEMSチップを含むことになる。MEMSチップの最小フォームファクタは、約1.4mm角であり、このチップと耐久要素との間の電気接続を可能にするために、すなわち、サイズが十分な電気接触パッドを与えるために、MEMSチップがミニPCBAに取り付けられる。針サブアセンブリは、(多数のBD特許出願、たとえば、リボルバに記載されているように)オーバーモールド成形されたスリーブをもつカニューレまたは鋭いものから構成される。複数の針サブアセンブリは、システムと組み合わせて使用されるペンキャップまたは別個の針交換器中に含まれ得る。当業者は、本発明の実施形態が、たとえば、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年4月28日に出願された特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13に記載されているものなど、複数の針マガジンまたはペンニードル交換器と組み合わせて使用され得ることを諒解されよう。
【0050】
別の代替形態は、非常に正確な流路を生成するためにMEMS加工プロセスを利用することである。この代替形態は、Siもしくはホウケイ酸ガラスまたは両方の組合せから構成され得る2つまたは3つのMEMS要素から構成され得る。ビアおよびバックエッチングされた表面をエッチングするときにより高い精度が達成され得るので、Siが好ましいが、ガラスは、サーミスタトレースのための基板として優れた機械的および熱的性質を与える。
【0051】
図14Aに、センサ信号の位相および振幅成分の極較正プロットを示す。振幅は、プロットの径方向寸法によって表され、位相は、角度寸法によって表される。較正のために、両方の相成分が使用される。低流量では、流れを決定するために、振幅が使用される。より高い流量では、流れを決定するために、位相シフトが使用される。
【0052】
較正のために、例示的な一実施形態では、投与量感知システムは、製造されたセミディスポーザブル部分104ごとに個々の較正を使用する。較正は、耐久部分106のファームウェア中に記憶されたルックアップテーブルを介してアクセスされるか、または代替的に、携帯電話108のアプリケーション中に、もしくは各患者に関連する安全なクラウドストレージ中に記憶され得る。別の例示的な実施形態では、センサおよびマニホルド特徴の製造のために厳しい公差が必要とされ、ユニバーサル較正は、製造されたセミディスポーザブル部分104のすべてまたは特定のロットのためにあらかじめプログラムされている。
【0053】
別の例示的な実施形態では、それぞれの製造されたセミディスポーザブル部分104が個々に較正される。較正情報は、ディスポーザブル部分104上のメモリチップ中に記憶され、耐久部分106は、セットアップ中に較正情報を自動的に読み込む。
【0054】
別の実施形態では、流量は、製造されたセミディスポーザブル部分104の特定のロットについて測定され、ロットに特有の較正情報が、ディスポーザブル部分104上のメモリチップまたはバーコードラベルに追加される。耐久部分106は、セットアップ中に較正情報を読み込む。
【0055】
本発明の別の実施形態では、流量は、セミディスポーザブル部分104の特定のロットサンプルについて測定され、較正データに関係するコードは、セミディスポーザブル部分104のパッケージング上にまたはそれの中に含まれる。ユーザは、携帯電話108のアプリケーション中にコードを入力し、アプリケーションは、次に、耐久部分106に較正データを転送する。
【0056】
本発明の別の実施形態では、ユーザは、初期セットアップ後にペンから送達された最初の投与量または最初の数回の投与量を検証する。システムは、次いで、意図された投与量に一致させるために記憶された較正データをスケーリングする。意図された投与量と測定された投与量とが許可される誤差よりも大きい不一致を有する場合、携帯電話108のアプリケーションはトラブルシューティングステップを開始する。たとえば、ユーザは、スマートフォンアプリケーション中に選択された投与量の体積を入力することができる。流れセンサによって測定された実際の体積は、次いで、意図された投与量と比較され得、流量の特定の範囲のオフセット値をもつアルゴリズムを調整するなど、修正アクションが行われ得る。
【0057】
本発明のまた別の実施形態では、事前記憶された較正曲線のセットが耐久部分106のメモリ中に記憶される。記憶された較正曲線のセットのうち最良に一致する較正曲線を選択するために、プライミング投与量が使用される。ここで
【0058】
図15Aおよび図15Bに、電子制御盤と制御回路の主要構成要素とを示す。図15Aに示すように、例示的なボードの上部は、マイクロコントローラ1508と、Bluetoothアンテナ1510と、復調器1504と、計装増幅器1502と、バッテリ充電制御/調整器チップ1506とを含む。図15Bに、ペンキャップの取外しまたは取付けを示すキャップスイッチ1522と、加速度計1514と、アナログデジタル変換器1524と、負荷スイッチ1518と、フラッシュメモリ1516と、リアルタイムクロック1520と、センサコネクタ1524とを含む例示的なボードの下部を示す。
【0059】
次に、例示的なシステムについて説明する。システムは、好ましくは、3.7ボルトのリチウムポリマー充電式バッテリを使用して電力供給される。電源は、低ドロップアウト(LDO(low dropout))線形レギュレータ1506を使用して3.3ボルトに調整される。デバイスキャップ146に結びつけられるインターロックスイッチ1522は、追加の動きセンサ1514とともに、電力を節約するために加熱器を自動的に開始し、停止するために使用される。キャップが取り外され、ユニットが移動している場合、加熱器駆動回路が通電され、システムは、投与量を記録する状態になる。システムが、30秒より長い間休止状態にあり、および/またはキャップが戻される場合、加熱器は、電力を節約するために自動的にオフにされる。次に、エネルギーを節約するためにキャップと動きセンサとを利用することを含む、本発明の実施形態を動作させる例示的な方法について図23の状態遷移図に関して説明する。状態2300において、デバイスが初期化される。初期化中に、プロセッサおよび周辺機器中の様々な特徴がセットアップされる。初期化中に、好ましくは、セットアップが完了するまで、赤色および緑色のLEDが点灯する。初期化される特徴は、たとえば、GPIOおよび関連する割込みと、タイマーと、SPIピンと、フラッシュメモリと、BLEスタックと、復調器と、外部ADCと、加速度計と、タスクスケジューラと、様々なBLEパラメータと、内部ADCと、マスタクロックと、バッテリ電圧の読取りと、リアルタイムクロックと、BLE広告と、ペンキャップの状態のアセスメントとを含む。初期化が完了すると、ペンキャップがオンである場合、制御方法は、状態2301、アイドル、キャップオンに移動する。状態2301では、バッテリ電圧が、状態2302において30秒ごとにサンプリングされ、次いで、サンプリングが完了したとき状態2301に戻る。アイドル、キャップオン状態2301の間、タイマーは、5秒ごとにBluetooth広告モード2303を開始する。Bluetooth広告モードは、4秒持続し、他のデバイスが耐久部分に接続することを可能にする。4秒後に、制御モードは状態2301に戻る。デバイスが広告モード2303中に接続する場合、制御方法は、状態2304に移動し、バッテリレベルが更新され、次いで、制御方法は、状態2305、Bluetooth接続済み、アイドル状態に移動する。接続されると、接続されたデバイスは、いくつかのプロシージャを開始し得る。接続されたデバイスは、時間更新を開始し得、状態2306中にデバイスクロックが更新される。クロックが更新された後、制御方法は、状態2305に戻る。接続されたデバイスは、較正テーブルの同期を開始することができ、制御方法は、状態2307中に較正テーブルを最初に呼び戻し、次いで、較正テーブルが呼び戻されると、データが、状態2308中に接続されたデバイスに送信される。データ転送が完了した後、制御方法は、Bluetooth接続済み、アイドル状態2305に戻る。接続されたデバイスはまた、データ同期を開始することができ、制御方法は、状態2309に移動し、イベントデータが、メモリから呼び戻される。呼び戻されたデータは、次いで、状態2308中に接続されたデバイスに送られ、データ転送が完了すると、制御方法は、状態2305に戻る。
【0060】
開始2300の後に、キャップがオフであると検出された場合、制御方法は、状態2310に移動し、アナログ回路がオンにされ、データが収集され、バッファされる。また、デバイスが、キャップオン状態2301~2308のいずれかにあり、デバイスキャップが取り外されている場合、制御方法は、動き検出器が最後の30秒中に移動を検出した場合は状態2310に移動し、または動きが最後の30秒中に検出されなかった場合はアイドル、キャップオフ状態2311に移動する。状態2310にある間に、デバイスが30秒の間静止している(移動が検出されない)場合、制御方法は、アイドル、キャップオフ状態2311に移動し、移動がその後検出された場合に状態2310に移動して戻る。イベントが状態2310中に検出された場合、制御方法は、待ちイベント終了状態2312に移動する。イベントの終了が検出されると、制御方法は、フラッシュに検出されたイベントを記憶する状態2313に移動する。データストレージが完了すると、移動が最後の30秒中に検出された場合、制御方法は、状態2310に移動し、そうでない場合、制御方法は、状態2311に移動する。キャップオフ状態2310~2313中の任意の時間に、キャップが、デバイス上に配置して戻される場合、制御方法は、アイドル、キャップオン状態2301に移動する。
【0061】
加熱器駆動信号の正確な制御が、繰返し可能な安定したセンサ動作のために必要である。本発明の例示的な実施形態によれば、加熱要素を駆動するために、一定の周波数信号が使用される。加熱器のために、20から200Hzの範囲内の方形または正弦波信号が使用され、50から100Hzの範囲内の方形波が選好される。駆動周波数は、加熱要素の熱性質によって制限される。駆動周波数は、加熱器信号の振幅および位相分解能と後続のセンサ応答とに影響を及ぼす。あまりに高い周波数で加熱器を駆動することは、熱遅れによる振幅の損失を生じる。あまりに低い周波数で加熱器を駆動することは、過渡応答時間の損失を生じる。加熱器駆動周波数は、信号雑音を低減するために予想される環境周波数とは異なっていなければならない。
【0062】
加熱器は、電流制限抵抗器を用いて定電圧で5mWから30mWまでの間の範囲で駆動される。所与のチップのための信号対雑音比を改良するために、加熱駆動電力は、電流制限抵抗器の値を変更することによって調整され得る。これは、加熱器に、流体中により多いまたはより少ない熱を出力させることになり、その後、より多いまたはより少ない熱が流れ中にセンサ要素に搬送されることになる。加熱器信号の振幅と信号対雑音比とを増加させるために、より高い加熱器電力入力と組み合わされたより低い熱駆動周波数が使用され得る。
【0063】
加熱器は、好ましくは、抵抗および得られた電流が温度とともに変化するサーミスタであり、したがって、一定の電圧駆動は、動作中に何らかの熱的に誘導される変動性を有し得る。より正確な制御のために、電流検出抵抗器上の電圧フィードバックなどのフィードバック機構とともに一定の電流を使用する代替加熱器駆動方式が使用され得る。電流と電圧との両方についてのフィードバックによって与えられた一定の電力動作を用いた加熱器の駆動は、加熱器の制御のレベルをさらに改善し得る。
【0064】
上流および下流のセンサからの信号は、電子回路によって読み取られる。信号は、加熱器ドライブ信号に対して減少した振幅およびシフトした位相をもつ時間変動する波形である。信号は、マイクロボルトスケールにあり、電気、熱および機械に誘導された雑音を受けやすい。
【0065】
センサは、2つの同期復調器とアナログフィルタチップとを使用して回路に適用されるIQ復調の原理を使用して動作する。IQ復調の理論は、1つのサーミスタ素子からある距離だけ離れて位置する別のサーミスタ素子に放出されるキャリア周波数に応答する同相のおよび異相の(直角位相の)DC信号を与える。キャリア周波数は、DC信号出力、すなわち、合成ベクトルの同相成分を与える畳み込みステージを通過した受信機からのリターン信号と比較される。キャリア周波数は、90度シフトされ、リターン信号、異相のDC信号、すなわち、合成ベクトルの直交成分と比較される。これらの2つの出力信号は、現在、回路中に1つは同相比較のために設定されたレジスタ値を有し、第2のものが90度の異相のために設定された2つの個別の復調器チップを必要とする。2つの得られた信号は、ローパスフィルタ処理され、アナログデジタル変換器チップによって測定される。これらの回路ステージはまた、単一の小さいパッケージ中にすべての必要とされる回路およびレジスタ/利得/クロック設定を含んでいる特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することによって満たされ得る。
【0066】
センサのリターン信号は、計装増幅器と、ハイパスフィルタと、復調器チップによって与えられた中点電圧を基準にされるAC利得ステージとを使用して調整される。計装増幅器は、同じ基準電圧を使用し、差動構成中の上流および下流の感知要素を測定する。高精度基準は、得られた信号のための安定したベースラインを保持する。計装増幅器の差動構成は、コモンモード雑音を取り除き、これにより、あらゆる外部雑音が上流の感知要素と下流の感知要素との両方に対するコモンモード信号とみなされるので流体の流れが発生していないときに安定したベースラインが可能になる。この構成はまた、周囲温度が変化するときに安定した出力を提供する。利得値は、出力信号の最適な動作範囲を与える外部抵抗を使用して設定される。流れが発生すると、上流のセンサは、キャリア周波数から減衰した信号を受信し、計装出力は、コモンモード雑音が取り除かれた状態で下流のセンサ上にみられる増幅された信号を示す。この信号は、キャリア周波数の時間シフトバージョンになることになる。この信号の振幅変動は、加熱器からセンサまでの距離および流体への信号の拡散、ならびに増幅器に設計された利得係数に依存することになる。利得は、好ましくは、増幅器の電圧レールにおいて飽和による出力信号のクリッピングを回避するように設定されるが、信号の分解能が正確な読取りのために十分になるように十分高く設定される。
【0067】
復調器チップからの2つの得られた信号は、図14Aに示すように、振幅および位相成分を含むベクトルに再合成され得る。図14Aに、0~1000mL/時(0~28U/秒)の様々な流量に対応する多くの点を示す。各点は、同相(x)成分と異相(y)成分とを有する。一緒に、それらは、極プロット上で振幅および位相の傾向を示す。これは、「速度ゲージ」として解釈され得、流量に対する較正は、正確な瞬時測定を可能にする。時間にわたる流体速度測定は、正確な体積用量計算を可能にする。合成ベクトルの位相(すなわち、飛行時間)成分は、熱雑音の影響をあまり受けず、100~1000mL/時の流量測定のより良い分解能を可能にする。振幅または信号電圧のしきい値は、流れの状態または流れのない状態を決定するために使用される。センサが、複数のチャネルまたはより高い位相分解能で設計される場合、様々な流量領域の間で切り替えるために振幅が使用され、ここで、位相値は高精度値を与える。たとえば、位相範囲が0~4*πラジアンである場合、0.1Vと1Vとの間の振幅測定は、50と500mL/時との間の流量を生じる。この範囲中の正確な流量は、0~2*πラジアンの位相値に相関することになる。しかしながら、振幅測定が1Vを上回る場合、500~1000mL/時の流量範囲が、極プロットの第2のチャネルまたは領域上の0~2*πラジアンの位相値に相関することになる。上記で説明した方法は、無限周期の位相サイクルと領域またはチャネルしきい値を与える無限の流れ範囲または精度を提供する。
【0068】
投与中にセンサから迅速に変化する信号を正確にキャプチャするために、60ms未満のシステム応答時間が望ましい。本発明の例示的な実施形態では、本明細書で説明するように、「応答時間」という用語は、流れイベントの開始から、センサが真値の95%の精度内で正確な流量値を測定する前の時間までの時間として定義される。この応答時間は、500msよりも長い有効応答時間を一般に有する市販の流れセンサよりも著しく速い。改善された応答時間は、予想される過渡信号への若干の不足減衰応答を達成するようにハイおよびローパス信号フィルタをチューニングすることによって達成される。不足減衰により、センサ信号は、より迅速に変化することが可能になるが、真の定常状態の流れ値に関するある程度の発振を生じる。100Hzを上回るサンプリングレートを選択することは、出力信号のあらゆるエイリアシングを最小化し、システムが流体速度に対するセンサ応答を表す同相信号と直交信号との両方の正確な移動平均を計算することを可能にする。
【0069】
サンプリングレートは、ドライバおよび復調器チップの周波数によって制限され、これにより、駆動波形の期間ごとに8つのサンプルが可能になり、55Hzの現在の駆動周波数で440Hzの最大サンプリングレートを生じる。
【0070】
電気回路は、システム中のベースライン信号雑音をなくし、これは、有利には、センサ信号の再現性と精度とを改善する。
【0071】
次に、本発明の例示的な実施形態による流れセンサとともに使用する流れ感知アルゴリズムについて説明する。アルゴリズムは、有利には、流量測定のために熱量(振幅)感知ならびに熱飛行時間(位相)感知の両方を利用する。加熱器要素から下流の感知要素への流れによって搬送される熱信号の大きさは、振幅信号として決定される。振幅信号は、アルゴリズムの熱量感知部分を表す。加熱器信号とセンサによる受信信号との間の遅延によって測定される位相シフトは、アルゴリズムの熱飛行時間部分である。振幅信号値は、流れがいつ発生しているのかを決定するために使用される。振幅信号が流れの存在を示すと、流量を決定するために、位相シフト値が使用される。
【0072】
投与量捕捉モード中に、投与量感知アルゴリズムは、センサによって出力されたアナログ信号値を連続的に監視する。このデバイスの状態では、データが、ローリングバッファ中に記憶され、デバイスは、投与開始状態についてバッファを連続的に分析している。投与量イベントは、センサ要素からの2つのアナログ信号値がベースラインに対して変化するときに検出される。信号は、互いに発散し得るか、または信号の振幅は、プリセットされたしきい値を上回り得る。停止状態は、信号が設定されたしきい値内に振幅を収束するかまたは低減するときに決定される。開始状態と停止状態との間に記録されるデータは、リアルタイムクロックデータと、温度データと、加速度計データと、センサの識別情報データと、他のデータとを含むことができる適切なメタデータとともにローリングバッファからシステムフラッシュメモリに転送される。代替的に、データは、バッファへの転送なしにリアルタイムに処理される。
【0073】
投与量データがフラッシュメモリに転送された後、流れイベントの投与量体積を決定するために、投与量感知アルゴリズムが使用される。アルゴリズムは、流量を決定するために熱量感知技法ならびに熱飛行時間感知技法の両方を利用する。熱量感知は、流路中の上流および下流に配置されたサーミスタによって観測された熱パルスの振幅を使用する。熱飛行時間は、加熱器信号と感知サーミスタによって測定された信号との間の位相シフト(時間遅延)によって測定される。信号調整回路は、同相および直交復調器の出力IおよびQを生成する(これらの出力がどのように作成されるのかのさらなる詳細についてはIQ復調器セクションを参照)。振幅および位相シフト値は、データサンプルごとに計算され、メモリ中に記録される。記憶された較正は、振幅と位相シフトとの両方のための流量を計算するためのルックアップテーブルとして使用される。振幅信号値は、流れがいつ発生しているのかを決定するために使用される。振幅値がプリセットされたしきい値を上回るとき、位相シフトについて計算された流量が、「真の」流量として選択される。振幅値がしきい値を下回るとき、振幅について計算された流量が、「真の」値で選択される。センサの熱量検出モードは、低い流量でより高い精度を有する。飛行時間検出モードは、高い流量においてより高い精度を有する。両方のモードを使用することは、いずれかの単一モードシステムに対して改善されたダイナミックレンジをもつハイブリッド感知システムを作成する。図5に、時間に対してプロットされた流量データを示す。この曲線の下のエリアが送達された投与量体積を表す。例示的なハードウェアでは、投与量体積を積分する単純なリーマン二乗方法がアルゴリズムによって採用される。流量データから投与量体積を計算する別の方法は、時間に対して積分される曲線あてはめ関数または任意の他の好適な積分方法であり得る。
【0074】
イベントファインダは、投与量イベントがいつ行われたのかを決定し、その後、投与量イベントについてのデータを記録する。イベントファインダは、流れイベントがありそうと決定し、加熱器およびマイクロプロセッサをオンにすることによってデータを受け入れるためにシステムを準備するためにキャップスイッチ1522と、加速度計と、流れセンサとを同時に監視する。
【0075】
図23に関して上記で説明したものなどの状態遷移制御方式が、組込みシステムのファームウェアに構築される。これは、ペンキャップの状態(オン/オフ)を監視し、加速度計は、動きが設定点しきい値を超えるときに中断する。感知システムは、好ましくは、ペンキャップが取り外され、動きが感知されたときに活動化する。このモードでは、加熱器は、キャリア周波数を送り、サーミスタに電力供給し、センサチップ上で熱をパルス化する。アナログデジタル変換器は、得られた信号データを収集し、それをバッファに記録する。バッファは、好ましくは、5~15秒のデータを保持する。プロセッサは、振幅値が設定されたしきい値よりも大きいかどうかを見るためにこの時間中にデータバッファを評価する。代替的に、トリガは、低流れ状態に対応する得られた信号を発散することによって設定され得る。流れの開始状態がファームウェア中で満たされると、時間が記録される。流れが停止した後に信号がベースラインに戻ると、同様の流れの終了状態が記録される。この時点で、バッファは、新しいデータを記録するのを停止し、開始時間から停止時間までのデータが、タイムスタンプ(リアルタイムUTC値)および他の適切なメタデータとともに、フラッシュメモリ中に記録される。キャップがデバイス上に配置されるとき、または30秒などの所定の時間期間の間動きが感知されない場合、加熱器はオフにされる。
【0076】
クラウド接続したデバイスへのBluetoothデータの転送は、耐久デバイスの初期ペアリングを必要とする。耐久デバイスがペアリングされると、信用できるデバイスが良好な信号強度(RSSI、100m以内)を有し、新しいデータの準備ができているとき、暗号化データ転送がユーザの関与なしに始まることになる。クラウドデバイスは、範囲内にあるときに耐久物と通信するために(バックグラウンドモードで受動的に動作する)インストールされたアプリケーションを必要とする。耐久デバイス上のBluetoothサービスは、バッテリ電力を節約するために制限された広告間隔で動作する。これにより、デバイスは、範囲内にあるときに妥当な時間期間内(<10秒)で接続することが可能になる。
【0077】
ソフトウェアアプリケーションは、好ましくは、Bluetooth Low Energy(v4)プロトコルまたは任意の他の好適なワイヤレス通信プロトコルを介して耐久部分106に接続する。アプリケーションは、更新を提供または受信するために、標準的なバッテリサービスが10進値(0~100)の形態で充電状態(SoC)の割合を受信するのと、デバイス上のリアルタイムクロックデータが、アプリケーション中に記憶された現在のUTC時間をデバイスに送信する標準クロックサービスを使用して更新されるのとの2つの標準的なBluetoothプロファイルを使用する。カスタムBluetoothサービスは、耐久部分106中のフラッシュメモリからアプリケーション中に記憶された投与量イベントデータを更新する。投与量イベントデータは、好ましくは、時間および日付と、センサIDと、エラーフラグと、他のメタデータとを詳述するヘッダを含み、さらに、デバイスからの未加工サンプル値データを含む。代替的に、耐久部分106内で処理されたデータがアプリケーションに直接与えられ得る。
【0078】
アプリケーションは、検討および共有するためにユーザについての投与量情報を記憶する。このデータは、好ましくは、プライバシーを与えるために、および他の面ではHIPAA要件に準拠するために適宜に暗号化される。アプリケーションは、好ましくは、ユーザに、血液グルコースモニタ、アクティビティトラッカ、フードジャーナルアプリケーション、電子ヘルスレコードおよび他のソースからのデータなどのそれらの健康状態のより深い分析を可能にする他の適切なデータをインポートする能力をさらに提供する。アプリケーションは、傾向を測定し、集計データから意味を与えるためにデータの概観を示すことになる。アプリケーションは、好ましくは、ユーザまたはヘルスケアパートナーによって検討され得る個別投与量のログブックの履歴をも与える。グラフ画面に、時間にわたる傾向およびデータ点を示す。図4A図4Cに、アプリケーションの例示的なスクリーンショットを示す。図4Aに、記録されていた個々の投与量のディスプレイを示し、図4Bに、投与量履歴情報のディスプレイを示し、図4Cに、記録された投与量イベントに基づく投与量グラフのディスプレイを示す。
【0079】
上記で説明したセンサ実施形態は、プリント回路板上の(より大きい)電気トレースに感知チップ上の電気トレースを接続するためにワイヤボンドプロセスを使用する。ワイヤボンディングは、MEMSスケールの回路とプリント回路板アセンブリ(PCBA)との間に電気接続を生成するための一般的な、コスト効果的なプロセスであるが、それは、接続ワイヤが熱および流れ感知特徴として感知チップの同じ側にある必要がある。この構成では、ワイヤボンディングされたセンサは、複雑である、流れマニホルドとの3次元流体シールを必要とする。代替感知チップ設計は、裏面にセンサチップ上の電気接続を送るためにエッチングおよび充填されたビアを利用する。流体シールが、次いで、加熱器およびセンサトレースを含んでいるチップの平面に行われ得、回路板への電気接続は、チップの平裏面に行われ得る。ビアベースの設計は、流体シールのロバストネスとアセンブリの速度とを改善し、全体的なコストを低減するために使用され得る。ビアベースの感知チップの1つの潜在的なレイアウトを図16Aおよび図16Bに示す。図16Aに、センサチップの流体対向面1600を示す。加熱器要素1602と2つの感知要素1604とが、センサの裏側に電気接続を与えるためにいくつかのビア1606とともに与えられる。図16Bに、デバイスの残りへのより容易な接続のための電気接続1610をもつ裏面1608を示す。
【0080】
シリコンおよびガラスビアチップ設計の変形形態が、ガラスワイヤボンドチップ設計に好ましい。ガラスおよびシリコンウェハは、チャネルが作成される前後に互いに接合される。ガラス基板中のビアチャネル1606は、ドリルまたはレーザーを使用して製作され得る。導電材料は、信号がチップを通して移動することを可能にするためにビア1606に堆積される。導電材料がビアの直径の周りに堆積される場合、ビアの残りは、好ましくは、非導電材料で充填される。これにより、上面1600上の感知要素1604に接続されるトレースをチップダイの底面1608上のはんだパッド1610に送ることが可能になる。チップの下部上のパッド1610は、ボールグリッドアレイ(BGA)設計に似ている。これにより、流れマニホルドに構築されるべき、より信頼できるセンサ構成要素を達成する標準的なピックアンドプレースアセンブリプロセスが可能になる。
【0081】
本発明の代替実施形態では、センサの測定可能な流れ範囲および精度を増加させるために、異なる数の感知要素が使用され得る。所与の加熱器からセンサまでの間隔では、センサ要素は、ある速度範囲を測定可能である。別の間隔で追加の感知要素を有することにより、異なる速度範囲を追加の要素を使用して測定することが可能になり、全体的なより広い測定可能な速度範囲またはより狭い速度範囲にわたるより高い精度が生じる。所与の流路断面中の、単一の加熱要素と、各々がペアになった上流の差動要素を有する複数の感知要素とをもつチップでは、130umなどの1つの所与の要素間隔が、20から300mL/時などの1つの流れ範囲を測定するために使用され得、一方、200umなどの異なる間隔をもつ要素のペアが、200から1600mL/時などの異なる流れ範囲を測定するために使用され得る。図17Aに、複数のセンサペアを有する例示的なセンサチップ設計を示す。図17Aに、流体に面したチップ表面1700とセンサゾーン1702とを示す。図7Bに、より詳細にセンサゾーン1702を示す。加熱器要素1704から第1のオフセット距離にある第1のセンサ要素ペア1706と第1のオフセット距離よりも長い加熱器要素1704から第2のオフセット距離にある第2のセンサ要素ペア1708とともに、単一の加熱器要素1704が提供される。
【0082】
本発明の別の例示的な実施形態では、センサのダイナミックレンジを増加させるために、複数のセンサチップがタンデムで使用される。図18に、第1のセンサ1802と第1のセンサ1802から下流の第2のセンサ1804とを有する代替流路1800を示す。流路1806は、2つのセンサチップに対応する2つの異なる断面ゾーンを備える。第1のセンサ1802は、流路1806内で比較的より大きい流れ断面1808に配置され得る。このセンサは、比較的低い流量により、より高い流量でより良い分解能を有することになる。第2のセンサ1804は、より小さい断面1810を有する流路1806のエリア中で第1のセンサ1802の下流に配置される。第2のセンサ1804は、比較的より高い流量により、より低い流量においてより良い分解能を有することになる。もちろん、必要な場合ダイナミックレンジをさらに改善するために3つ以上のセンサが使用され得ることを、当業者は容易に諒解されよう。投与量感知アルゴリズムは、測定された流れ状態および傾向に基づいて信号に電力供給して、読み取るために適切なセンサペアを決定する。
【0083】
複数の感知要素はすべて、電力供給され、使用中であり得、流量を決定するために後処理が可能になる。代替的に、必要とされる電子回路の複雑性を低減するために、マルチプレクサが使用される。この実施形態では、加熱要素は電力供給され、熱信号を放出する。感知要素ペアの各々ごとの最適な流量範囲に基づいて、計算された流量に基づいて、適切な感知要素ペアが使用され得る。たとえば、低い流れ状態中に、デバイスは、130um離間した要素を使用し、他の離間要素からの信号を測定せず、一方、高い流れ状態中に、200um離間した要素が測定されるが、他の要素は測定されない。
【0084】
注入のための適切なプロシージャは、注入ごとに新しいペンニードルを取り付けるようにユーザに要求する。このプロシージャへの適合を保証するために、本発明の例示的な実施形態は、ペンニードルの存在および取外しを検出するために、半耐久部分104または耐久部分106のいずれかにスイッチまたは近接センサなどを含む。
【0085】
本発明の実施形態による投与量センサは、有利には、注入する前にユーザがペンニードルをプライミングするか否かを検出することができる。プライミングは、針が妨げられないこと、およびユーザが意図された投与量を受け取ることを保証する。本明細書で説明する流れセンサは、有利には、0.5秒未満で行われ得る1または2ユニットの少ない過渡投与量を感知することが可能である。検出されたプライミング投与量は、送達された投与量とインシュリンペンのリザーバ中に残っているインシュリンの量とをより正確に決定するために別々に記録され得る。
【0086】
本発明の実施形態による投与量センサは、有利には、送達後に保持時間を検出し、投与量全体が送達されたというフィードバックを与えることができる。デバイスは、さらに、いつ投与量全体が送達されたのかを視覚または聴覚フィードバックを介してユーザに示すことができる。
【0087】
本発明の例示的な実施形態による投与量センサは、有利には、部分投与量送達イベントを感知することができる。耐久部分106中の加速度計1514は、注入中のインシュリンペン102の動きを追跡することができる。投与量の送達が完了する前にペン102が移動する場合、デバイスは、これを感知し、ユーザに警告およびフィードバックを与えることができる。送達された部分投与量および失われた投与量は、流れと加速度計の読取りとから構築され、ユーザにリレーされ得る。
【0088】
例示的な実施形態による投与量センサは、有利には、投与された異なる薬剤を感知することができる。アルゴリズムにおいて使用される位相シフト信号は流体媒体に反応しないが、振幅信号は、異なる流体媒体間の差を示すことができる。
【0089】
本発明の実施形態による耐久部分106は、センサ出力の補償のために有用である周辺温度センサを含んでいる。温度センサは、インシュリンが使用中に製造業者の指定した温度範囲に保たれることを保証するために周期的に監視される。温度追跡は、インシュリンの生存性を保証するのを助け、温度限界への露出によって生じるインシュリンの損傷の可能性を最小化する。さらに、ペン102の温度が低温または高温のいずれかの温度限界に接近していることをデバイスが検出する場合、それは、この潜在的な問題をユーザに通知することができ、ユーザが薬剤への損傷を妨げることが可能になる。温度限界への露出の他に、インシュリンはまた、最小限から中程度に上昇する温度への累積露出によって時間とともに損傷を与えられ得、システムは、累積温度の所定の値の適切な警告を事前に患者に与えることができる。
【0090】
本発明の実施形態は、好ましくは、加速度計1514を含む。これは、デバイスがペン102の過大な振動を検出することを可能にし、インシュリンの生存性を維持するのを助けるために保存状態が適切でない場合ユーザに警告することができる。温度センサと加速度計とは、上記で説明したように独立して使用され得、または、それらの情報は、組み合わされ、インシュリンの状態に関する問題のレベルを識別するために事前プログラムされたしきい値に対して累積値が査定され得る。システムはまた、これらの影響からの組み合わされた累積の影響を予測し、患者に適切な警報を与えるために時間にわたって温度と振動との両方を追跡することができる。
【0091】
注入は、人体上の特定のエリアまたはゾーン中での薬物動態における類似性、すなわち、患者のシステムへの薬の取り込みの速度により、これらのゾーンに送達される。本発明の例示的な実施形態によれば、電話アプリケーションは、従った場合、脂肪肥大の可能性を低減する部位循環案内に基づいて理想的な注入部位を連続的に推奨する。
【0092】
代替的に、ジャイロスコープおよび磁力計などの追加のセンサを既存の加速度計に追加した状態で、慣性測定ユニット(IMU)を作成して、デバイスは、体を追跡する能力を与えるために使用され得る。加速度計が、移動の相対的な大きさを与え、ジャイロスコープが指向性を与えた状態で、本発明の実施形態は、3次元空間におけるそれのロケーションを追跡することができる。磁力計は、検出された磁界に基づいて他のセンサに補正を与える。腰などの設定された開始点が与えられれば、この実施形態によるデバイスは、各注入のために使用された近似注入部位を検出することができる。投与量イベントの直前の動きのパターン認識は、単一部位の注入が繰り返されているのかどうか、または部位循環の準拠に従っているのかどうかを決定することができる。デバイスは、同じロケーションへの繰り返される注入を感知し、脂肪肥大が発生するのを妨げるために注入部位の循環を推奨することができる。ユーザは、注入部位にペンを移動し、投与量を送達するために同様の動きを使用することになり、体上の各特定のゾーンへの各遷移がジャイロスコープおよび加速度計によって測定される一意性を有すると仮定すると、システムは、どのゾーンにユーザが注入しているのかを認識し、部位の推奨を行い、部位ごとに使用/過使用のパターンを記録するようにプログラムされ得る
【0093】
本発明の実施形態は、注入持続時間、投与量サイズ、日中の注入時間などを含むユーザの注入傾向を学習することができる。通常の注入持続時間を追跡することによって、本発明の実施形態は、注入/流れに対する追加の抵抗を間接的に検出することができる。この追加の注入抵抗は、注入部位における脂肪肥大の結果であり得る。デバイスは、次いで、ユーザが注入部位を循環することを推奨することができる。追加の注入抵抗はまた、ユーザが意図された投与量を受け取るのを妨げることがある針またはペンインジェクタ内の流れの閉塞であり得る。投与量情報は、ユーザにリレーされ、投与量の誤差を識別するのを助けることになる無矛盾または異常としてフラグを付けられ得る。
【0094】
本発明の実施形態は、開始ペン体積から投与された注入体積を減算することによってペン中の残りのインシュリンを追跡することができる。ペンが低い体積しきい値を下回ると、デバイスは、ユーザにさらに警報を出すことができる。残りのペン体積が、ユーザが注入する典型的な投与量体積を下回る場合、スマートフォン102のアプリケーションは、それらの次の注入のために十分なインシュリン体積を保証するためにユーザが追加のペン102を搬送する推奨をユーザに通信することができる。
【0095】
本発明の実施形態は、注入投与量履歴に基づいて潜在的な欠落した投与量について患者に警報を出すことができる。時間とともに、デバイスは、特定の投与量体積のための典型的な注入持続時間を含む患者の注入傾向を学習することができる。このデータは、患者に警報、推奨、および意味を与えるために事例ベースの推論エンジンまたはより高レベルの洞察エンジンなどの様々なソフトウェアを用いて分析され得る。
【0096】
本明細書で説明する本発明の一実施形態がガラス基板上でのマイクロ加工を使用するが、当業者なら、他の実施形態がより大きいスケールの加工技法を使用し得ることを認識されよう。1つのそのような実施形態は、図19Aおよび図19Bに示すカニューレのセグメントに組み込まれる3つの導電リングからなる。図示のように、3つのリング1901、1902は、上記で説明したTTOFチップの3つの要素と同様の方法で機能する。この実施形態では、3つのリングは、カニューレに流れセンサを組み込む。カニューレ材料は、好ましくは、低い熱伝導率を有するか、または代替的に、3つのリングの両側に熱絶材料が使用される。3つのリングは、好ましくは、積層体を形成するために金属およびプラスチックのシム材料を積み重ねることによって形成される。
【0097】
ポリマーは、ガラスに対する実行可能な代替である低コストの、低熱導電率の基板である。ポリマーは、一般に、ホウケイ酸ガラス(1.2W/mK)よりも低い0.5W/mKの熱伝導率を有する。回路さらには単純なトランジスタがロールツーロール処理を使用してポリマー基板上に印刷または別の方式で堆積されるフレキシブルな電子回路の開発が進行している。しかしながら、フレキシブルなセンサは、流路中で最高1MPaの圧力を受けるとそれが変位することになり、センサのドリフトおよび誤差を生じ得るので望ましくない。これは、通常のポリマー基板よりも厚いものを使用することによって改善され得る。代替的に、ポリマーフィルムは、個々のセンサの個片化の前に剛性材料に積層され得る。
【0098】
上記で説明したように、熱飛行時間(TTOF)センサの性能を最適化するために維持する必要があるサーミスタと流路との両方の特定の特性がある。これらは、サーミスタトレースの断面積と、薬または流体に露出されるトレースの長さと、サーミスタ間の間隔に対する流路の高さと、流路の隣接面に対するサーミスタの「盛り上がり」または正の配置と、インシュリンの注入によくある速度の範囲全体にわたって層流を容易にするための遷移表面を含む流路ならびに段差およびばりの最小化の設計と、サーミスタの寸法、公差および断面図の再現性ならびに互いに対するおよび流路に対するサーミスタの配置とを含む。
【0099】
従来、これらの集合的な基準は、MEMS加工などの非常に正確な製造プロセスによってのみ満たされ得る。しかしながら、カニューレ内でサーミスタを配置するコンテキストでは、従来の加工プロセスは、MEMS加工された要素の必要をなくすために利用され得、さらに、フォームファクタへの最小限の影響で既存のデバイスへの統合を可能にすることができる感知性能の最小限の損失で設計代替を与えることができる。上記で説明した図19Aおよび図19Bに、インシュリン注入ペンからの薬物送達のために使用されることになるツーピースのペンニードル内に積層1901、1902のスタックが含まれている1つのそのような設計を示す。この実施形態では、流路は円筒であり、積層のスタックは、ポリマーなどの絶縁体と金属箔などの導体との交代層を与えるために従来のスタンピングプロセス(すなわち、打抜き)から生成され得る。ポリマー積層体の厚さは、サーミスタ間の間隔を定義することになり、金属積層体の厚さは、流体と接触しているサーミスタ回路の露出表面を与える。説明したように、これらの交代層は、個々に、または複合積層構造、すなわち、ポリマーと金属との積層体から生成され得る。トレースの断面図を低減するために、金属層は、積層されたスタックが2次スタンピング動作によって組み立てられた後に低減され得るか、または複合積層の場合、金属トレースは、半導体において使用されるリードフレームなど、電子デバイス中で電気接続を生成するために使用されるフォトエッチングと同様のプロセスで化学的にエッチングされ得る。別の代替実施形態では、導電材料は、巻回型キャパシタを生成するために使用されるプロセスなどの真空蒸着を使用するポリマー層上にコーティングされ得る。別の実施形態では、ポリマー層は、アルミニウムと交換され得、アルミニウム層の上面および底面は、絶縁性の酸化アルミニウム層を与えるために酸化され得る。
【0100】
図21Aおよび図21Bに示すように、積層スタックのスタンピングおよびアセンブリに続いて、化学エッチングプロセスが、アルミニウム2106を掘り下げるために使用され、それによって、積層されたスタックおよび流路中の隣接面に対して非アルミニウムの金属積層2104の露出表面の盛り上がりを増加させる。図21Aに、積層スタック2100とそれの中に形成される流路2102との上面図を示す。図21Bに、アルミニウム2106の露出表面がエッチングされるかまたは掘り下げられる、交代するアルミニウム2106と非アルミニウム金属積層2104とから形成される積層構造の断面を示す。図21Aに示す別の実施形態では、サーミスタは、フレキシブル基板2108上に印刷され、ペンニードルの成形ハウジングに組み立てられるときに流路の感知ゾーン中でC字型の断面図2103を作成することになる凸形状のインサートに巻かれる。凸形状のインサートは、円筒形の断面をC字型の断面に遷移するために前表面と後表面とを組み込み、次いで、円筒形の断面に戻る。この実施形態により、チャネルの高さとサーミスタ間の距離との間の関係をより緊密に一致させることが可能になる。ペンニードルの外部で電気接続を与えるために、フレキシブル基板2108上の導電トレースは、(1)内部ペンニードルハブの外径に巻かれ得るか、または(2)内部ペンニードルハブのベースまで延びるように折り重ねられ得、外部ペンニードルハブのアセンブリは、それぞれ、(1)外部ペンニードルハブの外径の周りに位置するオーバーモールド成形された導電性パッドおよび接続点、または(2)組み立てられたペンニードルのベースに位置する接続点を与える。
【0101】
別の実施形態では、各ラップがMEMS加工されたサーミスタの間隔に等しい距離で離間されるように、0.001インチ(0.0254mm)などの細いワイヤが凸面のインサートに巻かれる。ワイヤは、システムの耐久要素中に位置するPCBAへの個々の接続を可能にするためにインサートの裏面で終端される。ワイヤの使用は、ワイヤ直径の精度と、連続コーティングプロセスを使用してワイヤの外径上にPtおよびパッシベーション層をメッキまたはコーティングする能力のために有利である。ワイヤの機械的性質と加熱器およびセンサ要素の断面図を最小化する必要とのバランスをとるために、ベースワイヤは、ポリマーまたは他の熱絶縁材料であり得る。代替的に、1ミクロン範囲の直径をもつ市販の非常に細い白金ウラストンワイヤが使用され得る。
【0102】
MEMS加工としても知られるマイクロ加工プロセスは、サブミクロン精度内の断面寸法および公差にサーミスタトレースを生成する。これは、センサの設計および動作に非常に有益であり、すなわち、トレースごとの抵抗変動が極めて小さくなる。処理が、スタンピングと、化学エッチングと、ローリングおよびカレンダーミルと、積層および印刷とを含むマクロ加工は、著しくより高い次元/公差誤り(inaccuracies)を有し、たとえば、識別されるマクロ方法から生成されるトレースのためのベストケースの次元精度および公差は、断面図については+/-0.0005インチ(0.0127mm)、厚さについては+/-0.0001インチ(0.00254mm)であり得る。代替的に、ナノインプリントリソグラフィのような電子回路の印刷または方法は、大部分のマクロ加工方法よりもはるかに優れた極めて微細な分解能を達成するために使用され得る。
【0103】
センサ中の機械、たとえば、流れチャネル構成要素および電気、たとえば、サーミスタトレース構成要素のすべてにより厳しい寸法および公差を維持することにより、より高い感知精度が可能になり、各要素の加工誤差が0に近づくように低減されるので、感知精度が同じく比例して改善されることになる。最終的な目的はすべてのシステムの誤差および雑音を低減するかまたはなくすことであるが、サイズ、フォームファクタ、コストおよび他の考慮事項がマクロ加工方法によって生成されたより低い精度のセンサ要素で満たされ得る多くの適用例がある。たとえば、マクロ加工処理の極めて拡張性のある組合せは、フレキシブル基板上にサーミスタトレースを適用するためにインクジェット印刷または物理蒸着(PVD)を使用することと、カニューレの中心においてトレースを懸架するために凸面のインサートの周りにその基板を巻くこととを伴う。
【0104】
本発明の例示的な実施形態によるハイブリッドTTOF MEMSセンサは、好ましくは、ミクロンスケールの特徴を有する。一実施形態では、白金サーミスタ(加熱および感知要素)の線幅は4ミクロンである。インクジェット方法と、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびオフセット印刷のような非連続な方法との両方について、分解能は、一般に、せいぜい20~30ミクロンの範囲中にあるので、フレキシブルな(ポリマー)基板上にロールツーロール印刷プロセスを使用するこれらの特徴を複製することは困難である。しかしながら、センサの寸法をより長い加熱器およびセンサ要素の幅および長さに、ならびに要素間のより大きい間隔にスケールアップすることが可能である。より長いセンサから加熱器までの間隔、たとえば、300から400ミクロンをもつ従来の方法で微細加工されたハイブリッドTTOFセンサのプロトタイプは、標準的な5~30mWの範囲中で電力供給されたときに十分な振幅および位相信号強度を証明した。一方、カリフォルニア大学バークレー校のSubramianらによって、最近、グラビア印刷を使用した2ミクロンの分解能が証明された。これは、現在の微細加工された構造と同じ寸法が近い将来に印刷を使用して達成可能になることを示唆する。ロールツーロール処理では、位置合わせも困難であるが、このセンサ設計では、層間の位置合わせは重要でなく、数10ミクロンの位置合わせ精度で十分である。ロールツーロール印刷での別の課題は、サーミスタの材料(たとえば、白金またはポリシリコン)がインクとして構築され、硬化される必要があることであるが、そのようなインクを構築する当業者である多くのベンダーがある。
【0105】
代替手法は、ロールツーロール処理と組み合わせて微細加工技法、すなわち、リソグラフィおよび蒸着を使用することである。ナノスケールの特徴を生成する単純で有効な方法として、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)が1995年頃から開発されている。NILは、それぞれ、加熱されている間にまたは紫外線(UV)の光に露出されている間に基板と接触することによって熱可塑性樹脂またはUV硬化樹脂でコーティングされる基板上に型(または型板)上のナノスケール構造が転送されるプロセスである。ロールツーロールNILについての技術的課題が依然としてあり、それは、依然として主に開発の学問領域にある。インプリントのために十分な時間を可能にしながら高速を達成することは特に困難である。とはいえ、ロールツーロールNILは、ハイブリッドTTOFセンサを加工する可能な将来の方法である。
【0106】
ソフトリソグラフィ、特に、マイクロコンタクトプリンティング(MCP)は、ロールツーロール処理のために使用され得る別のプロセスである。それはNILの代替であり、それが樹脂に実際のインプリントを行う必要がないので速度の点で固有の利点を有する。欠点は、それが任意の印刷プロセスの場合のようにインキングを必要とすることである。香港中文大学の研究グループは、フレクシャ機構ベースのロールツーロール機械を使用して金と銀との両方の高品質のナノ分解能のパターンと一桁台のミクロンの分解能のパターンとの両方を可能にするロールツーロールのMCPプロセスを開発した。速度は、適度で0.02cm/sであった。
【0107】
本発明の別の代替実施形態は、ペンニードルにMEMS流れセンサを直接組み込むことである。これは、ペンニードルが注入後に破棄されるので、単一の使用後に流れセンサを使い捨てにし、これはまた、センサが好ましくは低コストで加工されることを意味する。規模の経済は、300mmのウエハから大量の小型センサが加工されるときにコストを低減する。上記で説明したビア設計によって可能になる小型化は、1.0~1.2mm角の範囲のダイサイズを可能にする。例示的な計算は、単一の300mmのウエハがほぼ40,000個の1.2mm角のセンサを生じることを示す。センサチップは、最先端の300mmの半導体加工プラントにおいてCMOS適合プロセスを使用して製造され得る。CMOS適合性は、加熱およびセンサ要素(サーミスタ)が白金ではなくドープポリシリコンを使用して製造されることを意味する。単一の使用用途は、白金によって与えられた耐食性を必要とせず、熱流れセンサへのポリシリコンの使用は科学文献において確立されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22A
図22B