(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルならびにそれらの製造および使用
(51)【国際特許分類】
C07C 43/285 20060101AFI20220328BHJP
C08F 212/34 20060101ALI20220328BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C07C43/285 CSP
C08F212/34
C08F222/40
(21)【出願番号】P 2019506471
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2017077544
(87)【国際公開番号】W WO2018091253
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-07
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ エヴィシュコフ
(72)【発明者】
【氏名】ティム ポールマン
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト シュテンツェンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マタイス テル ヴィール
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-092714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103756315(CN,A)
【文献】国際公開第92/021651(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/045932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/
C08F 212/
C08F 222/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、3個から6個の炭素原子を有する1-アルケニル基または2-アルケニル基を意味し、
R
2は、水素または、2個までの炭素原子を有するアルコキシ基を意味し、
R
3は、水素または、4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味し、ならびに
R
4は、水素または、4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味する]の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルであって、
ただし、(I)は、天然に存在するottomentosa(1-メトキシ-4-(1E)-1-プロペン-1-イル-2-[4-(1E)-1-プロペン-1-イルフェノキシ]-ベンゼン)ではない、
非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項2】
下記の式(Ia):
【化2】
による化合物から選択される、請求項1記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項3】
以下:
4-ビニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-ビニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-ビニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
から選択される、請求項2記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項4】
下記の式(Ib):
【化3】
による化合物から選択される、請求項1記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項5】
以下:
4-ビニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
から選択される、請求項4記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項6】
下記の式(Ic):
【化4】
による化合物から選択される、請求項1記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項7】
以下:
4-ビニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
から選択される、請求項6記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項8】
下記の式(Id):
【化5】
による化合物から選択される、請求項1記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項9】
以下:
4-ビニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
から選択される、請求項8記載の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル。
【請求項10】
(a)請求項1~9のいずれか一項記載の少なくとも1種の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルと;
(b)下記の一般式(II):
【化6】
[式中
Bは、炭素-炭素二重結合を有する二官能基であり
Aは、y官能基であり;ならびに
yは、≧2の整数である]の、少なくとも1つのポリイミドと
を含む硬化性組成物。
【請求項11】
式(II)による前記ポリイミドにおける基Bが、下記の二官能性基:
【化7】
から選択される、請求項10記載の硬化性組成物。
【請求項12】
式(II)による前記ポリイミドにおけるy官能性基Aが、下記の二官能性基:
a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレン基;
b)5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
c)4個から5個の炭素原子と、環中に少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、または硫黄原子とを有する複素環基;
d)単炭素環式基または二炭素環式基;
e)以下:単炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基、から選択される少なくとも2つの基からなる架橋された多環式基;この場合、これらの基は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基によってお互いに連結されており;好ましくは、当該二価の基は、以下:オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または下記の基:
【化8】
[式中、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
11およびR
12は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]のうちの1つ、から選択される;
f)下記の式(III):
【化9】
[式中、
R
13は、以下の基:
【化10】
のうちの1つである]によって定義される基;
から選択される、請求項10または11記載の硬化性組成物。
【請求項13】
式(II)の前記ポリイミドが、下記の式(XVIII):
【化11】
[式中、
R
13は、以下の基:
【化12】
のうちの1つである]のビスイミドである、請求項10または11記載の硬化性組成物。
【請求項14】
式(II)の前記ポリイミドが、以下:
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-メチル-5-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4-ビスマレイミドトルエン、2,6-ビスマレイミドトルエン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,4,4-トリメチル)ヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン
から選択されるビスマレイミドである、請求項10または11記載の硬化性組成物。
【請求項15】
結果として固体硬化性組成物、低温溶融硬化性組成物、または粘着性硬化性組成物を生じる、粉末補助混合プロセス、溶融補助混合プロセス、または溶媒補助混合プロセスを使用して、前記組成物の成分を混合する工程を含む、請求項10~14のいずれか一項記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項16】
前記硬化性混合物を、熱および/または圧力の適用下において依然として成形可能であるプレポリマーを得るのに十分な時間において、50℃から250℃
の範囲の温度に加熱する工程を含む方法によって、請求項10~14のいずれか一項記載の硬化性組成物から得ることができる硬化性プレポリマー。
【請求項17】
前記硬化性組成物を、ポリマーを得るのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度に加熱する工程を含む方法によって、請求項10~14のいずれか一項記載の硬化性組成物から得ることができる架橋ポリマー。
【請求項18】
請求項10~14のいずれか一項記載の硬化性組成物または請求項16記載の硬化性プレポリマーと、繊維状補強材または粒子状補強材とを組み合わせる工程ならびに該結果として得られる生成物を硬化させる工程を含む、複合材料の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法によって得ることができる複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルならびにコモノマーとしてそのような非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルを含む、ポリマレイミド樹脂系をベースとする熱硬化性樹脂組成物に関する。本発明は、そのような組成物を硬化させることによって得ることができる架橋された樹脂にも関する。本発明の化合物は、中でも特に、以下の分野:構造用接着剤、繊維プレプレグのためのマトリックス樹脂、成形用化合物、ならびに構造用複合材および/または電気複合材などの分野において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリマレイミド構築ブロックとコモノマーとをベースとする熱硬化性組成物は、繊維複合材、接着剤、成形用化合物および埋込用化合物のための確立された樹脂である。これらの樹脂は、それらの高温耐性において知られている。
【0003】
当該組成物のコモノマー部分は、いくつかの未硬化樹脂特性および硬化樹脂特性に影響を及ぼす。重要なことに、このコモノマー部分の好適な選択は、未硬化樹脂の加工特性を変更するために、特に、流動性および粘度などのレオロジー特性を調節するため、ならびに硬化反応速度特性に影響を及ぼすために、必要である。
【0004】
当該硬化されたポリマレイミド/コモノマー系における所望の特性としては、高いガラス転移温度(Tg)、250℃付近の温度での高弾性率維持、熱酸化安定性(TOS)および耐久性に関する高耐熱性、高い靭性および損傷許容性、ならびに微小亀裂に対する温度サイクル耐性が挙げられる。さらなる所望の特性としては、低湿分吸収性および低溶媒吸収性ならびに低誘電率(DC)が挙げられる。
【0005】
多くの化学的概念が、ポリマレイミド/コモノマー系を生成するために考案されてきた。繊維強化複合材、構造用接着剤、ならびに電気器具および電子機器のための樹脂としての用途に対して、ポリマレイミド/アルケニルフェノールおよびポリマレイミド/アルケニルフェノキシベースの系は、最も好結果であることが分かっている。
【0006】
アルケニルフェノールコモノマーは、米国特許第4,100,140号(1978)において開示されている。
【0007】
ポリマレイミドおよびアルケニルフェノキシ化合物をベースとする熱硬化性組成物は、例えば、米国特許第4,789,704号(1988)、同第4,826,929号(1989)、同第4,808,717号(1989)、同第4,962,161号(1990)、同第5,120,824号(1992)、同第4,873,284号(1989)、同第5,023,310号(1991)、同第5,023、310号(1991)、同第5,070,154号(1991)、および米国特許出願公開第2008/0075965(A1)号(2008)、ならびに中国特許出願公開第104628544(A)号(2015)により公知である。
【0008】
特に複合材および繊維強化複合材のためのその使用に関して、未硬化のビスマレイミド/コモノマー系の望ましい特性としては、加工温度における低い粘度、低い加工温度、加工温度での十分なポットライフ、樹脂および中間生成物、例えば、プレプレグ、接着剤、または化合物など、の状態での良好な貯蔵安定性、ならびに複合材の製造の際の速い硬化反応速度(コモノマーとポリマレイミドとの速い反応)が挙げられる。
【0009】
これまで、速硬性ビスマレイミド/コモノマー系に関する調査はほとんど行われていないが、速い硬化反応速度は短期間での硬化を可能にし、結果として有利な方式で加工を実施するのを容易にするという事実を考慮すると残念である。米国特許第4,288,583号(Zahir、Wyler、1981)では、そのような調査の1つの結果について開示されている。特に、米国特許第4,288,583号では、速硬性ポリマレイミド/コモノマー系として、ポリマレイミドおよびプロペニル置換フェノール、例えば、o,o’-ジ(1-プロペニル)ビスフェノール、の混合物について開示している。中国特許出願公開第104628544(A)号(Liuら、2015)も、速硬化性の系を対象としており、その三官能性に起因する速硬性反応速度を提供するポリマレイミド/三官能性プロペニル-末端キャップされたコモノマー系について開示している。
【0010】
しかしながら、米国特許第4,288,583号において開示されるビスマレイミド/コモノマー系から得られる硬化された生成物は、水を吸収する著しい傾向(特に、高温/高湿条件下において顕著である)を示し、これは、結果として、以下:ガラス転移温度(Tg)の低下、高温での機械的特性の弱化、繊維強化複合材において使用される場合に熱サイクルの条件下において微小亀裂を生じる傾向の増加、電気特性の低下(誘電率の増加)、など、それぞれの生成物のいくつかの不都合な特性を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4,100,140号(1978)
【文献】米国特許第4,789,704号(1988)
【文献】米国特許第4,826,929号(1989)
【文献】米国特許第4,808,717号(1989)
【文献】米国特許第4,962,161号(1990)
【文献】米国特許第5,120,824号(1992)
【文献】米国特許第4,873,284号(1989)
【文献】米国特許第5,023,310号(1991)
【文献】米国特許第5,070,154号(1991)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075965(A1)号(2008)
【文献】中国特許出願公開第104628544(A)号(2015)
【文献】米国特許第4,288,583号(Zahir、Wyler、1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮すると、本発明の目的は、ポリマレイミド/コモノマー系での使用のためのコモノマーを提供することであり、それらは、ポリマレイミド/コモノマー硬化性混合物を調製するために、容易な加工、すなわち、ポリマレイミドとの容易な混合、を可能にするため、室温において低粘度液体または蜂蜜状流体である。
【0013】
本発明のさらなる目的は、ポリマレイミド/コモノマー系での使用のためのコモノマー、ならびにコモノマーの速い硬化反応速度(コモノマーとポリマレイミドとの速い反応)および水を吸収する傾向の低いコポリマーをもたらすことによって特徴付けられる、そのようなポリマレイミド/コモノマー系を提供すること、および、(i)高温での良好な機械的特性、および/または、(ii)熱サイクルの条件下において微小亀裂に生じる低い傾向、および/または、(iii)良好な電気特性(低い誘電率)を有するコポリマーを製造することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この目的は、下記の式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、3個から6個の炭素原子を有する1-アルケニル-または2-アルケニル基を意味し、
R
2は、水素または、最大で2個までの炭素原子を有するアルコキシ基を意味し、
R
3は、水素または、最大で4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味し、ならびに
R
4は、水素または、最大で4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味する]の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルによって達成され、ただし、(I)は、天然に存在するottomentosa(1-メトキシ-4-(1E)-1-プロペン-1-イル-2-[4-(1E)-1-プロペン-1-イルフェノキシ]-ベンゼン)ではない。
【0015】
Ottomentosa(1-メトキシ-4-(1E)-1-プロペン-1-イル-2-[4-(1E)-1-プロペン-1-イルフェノキシ]-ベンゼン、CAS番号1469981-57-4)は、「ラタニア」という俗称で知られている、クラメリア・トリアンドラ(Krameria tomentosa)A.St.-Hil.の根から単離された化合物である(S.A.L.Madeiro,H.F.S.de Lucena,C.D.Siqueira,M.C.Duarte,R.Braz-Filho,J.M.Barbosa Filho,M.S.da Silva,J.F.Tavares:New Neolignans from Krameria tomentosa A.St.-Hil//J.Braz.Chem.Soc.,2012,Vol.23,No.11,2021-2026に記載される)。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、式(I)における、1-アルケニル基を有する置換基R
3およびR
4は、下記の式(Ia)によって示されるように、パラ位である。
【化2】
【0017】
式(Ia)による好ましい化合物は、
4-ビニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-ビニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-ビニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
である。
【0018】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、下記の式(Ib)によって示されるように、式(I)における、1-アルケニル基を有する置換基R
3およびR
4はパラ位であり、1-アルケニル基R
1はオルト位であり、その一方で、R
2は水素である。
【化3】
【0019】
式(Ib)による好ましい化合物は:
4-ビニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
である。
【0020】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、下記の式(Ic)によって示されるように、式(I)における、1-アルケニル基を有する置換基R
3およびR
4はパラ位であり、1-アルケニル基R
1はパラ位であり、R
2は、オルト位のメトキシである。
【化4】
【0021】
式(Ic)による好ましい化合物は:
4-ビニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
である。
【0022】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、下記の式(Id)によって示されるように、式(I)における、1-アルケニル基を有する置換基R
3およびR
4はパラ位であり、1-アルケニル基R
1はメタ位であり、R
2は、オルト位のエトキシである。
【化5】
【0023】
式(Id)による好ましい化合物は:
4-ビニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-イソプロペニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、
4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
である。
【0024】
本発明の硬化性組成物
別の態様において、本発明はさらに、
i)下記の式(I):
【化6】
[式中、
R
1は、6個までの炭素原子を有する1-アルケニル基または2-アルケニル基を意味し、
R
2は、水素または、2個までの炭素原子を有するアルコキシ基を意味し、
R
3は、水素または、4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味し、ならびに
R
4は、4個までの炭素原子を有するアルキル基を意味する]の、少なくとも1つの非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルと、
ii)下記の式(II):
【化7】
[式中、
Bは、炭素-炭素二重結合を有する二官能基であり、
Aは、y官能基であり;ならびに
yは、≧2の整数である]の、少なくとも1つのポリイミドと
を含む硬化性組成物に関する。
【0025】
本発明の好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドにおけるy官能基Aは、以下の二官能基:
a)2個から12個の炭素原子を有するアルキレン基;
b)5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基;
c)4個から5個の炭素原子と、環中に少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、または硫黄原子とを有する複素環基;
d)単炭素環式基または二炭素環式基;
e)単炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基から選択される少なくとも2つの基からなる架橋された多環式基;この場合、これらの基は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基によってお互いに連結されており;好ましくは、当該二価の基は、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または下記の基:
【化8】
[式中
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
11およびR
12は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]のうちの1つ、から選択される;
f)下記の式(III):
【化9】
[式中、R
13は、以下の基:
【化10】
のうちの1つである]によって定義される基;
から選択される。
【0026】
本発明の好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドにおけるBは、以下の二官能基から選択される。
【化11】
【0027】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(II)によるポリイミドは、以下:
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-メチル-5-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4-ビスマレイミドトルエン、2,6-ビスマレイミドトルエン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,4,4-トリメチル)ヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン
から選択される。
【0028】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(I)のR1は、2個から6個の炭素原子を有する1-アルケニル基から選択され、式(II)によるポリイミドは、以下:
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-メチル-5-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4-ビスマレイミドトルエン、2,6-ビスマレイミドトルエン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,4,4-トリメチル)ヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン
から選択される。
【0029】
本発明のさらなる好ましい硬化性組成物において、式(I)による非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルは、以下:
4-ビニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-イソプロペニル-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
4-ビニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-イソプロペニル-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-メトキシ-4’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
4-ビニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-イソプロペニル-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(プロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(ペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-メチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルプロパ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルブタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル、4-(1-エチルペンタ-1-エン-1-イル)-2’-エトキシ-5’-(プロパ-1-エン-1-イル)-ジフェニルエーテル
から選択され;
ならびに、式(II)によるポリイミドは、以下:
4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-メチル-5-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、3,3’-ビスマレイミドジフェニルスルホン、ビスマレイミドジフェニルインダン、2,4-ビスマレイミドトルエン、2,6-ビスマレイミドトルエン、1,3-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,4,4-トリメチル)ヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン
から選択される。
【0030】
別の実施形態において、本発明はさらに、上記において定義されるような硬化性組成物であって、重合反応を遅らせ、その結果として、当該組成物および中間生成物、例えば、プレプレグ、成形用化合物、および樹脂溶液など、の加工性および貯蔵安定性を変更する1種または複数種の硬化抑制剤をさらに含む、硬化性組成物に関する。好適な硬化抑制剤は、ハイドロキノン、1,4-ナフトキノン、イオノール、およびフェノチアジンであり、これらは、当該組成物の総重量に対して0.1重量%から2.0重量%の間の濃度において使用される。当該混合物の調製の前に当該抑制剤を成分の1つに溶解させることは有利である。
【0031】
別の実施形態において、本発明はさらに、硬化プロセスを促進させるために1種または複数種の硬化促進剤をさらに含む、上記において定義されるような硬化性組成物に関する。典型的には、硬化促進剤は、当該硬化性組成物の総重量に対して、0.01重量%から5重量%の量において、好ましくは0.1重量%から2重量%の量において加えられる。好適な硬化促進剤としては、イオン性触媒およびフリーラジカル重合触媒が挙げられる。フリーラジカル重合触媒の例としては、(a)有機ペルオキシド、例えば、ジ第三級ブチルペルオキシド、ジアミルペルオキシド、およびt-ブチルペルベンゾエートなど、ならびに(b)アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなど、が挙げられる。イオン性触媒の例は、アルカリ金属化合物、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアニリン、アザビシクロオクタン、複素環式アミン、例えば、キノリン、N-メチルモルホリン、メチルイミダゾール、およびフェニルイミダゾールなど、ならびにリン化合物、例えば、トリフェニルホスフィンおよび第四級ホスホニウムハライドである。当該硬化促進剤は、当該硬化性組成物の成分と混和することができ、または、粉末混合プロセスまたは溶媒混合プロセスのどちらかによって、プレポリマーの製造の際に添加してもよい。
【0032】
二次コモノマー成分を含む硬化性組成物
別の態様において、本発明はさらに、上記において定義される式(I)による少なくとも1種の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルおよび上記において定義される式(II)の少なくとも1種のポリイミドに加えて、アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジド、シアン酸エステル、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼンから選択される、1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる二次コモノマー成分であって、総組成物の1重量%から30重量%の間を占める、二次コモノマー成分、を含む硬化性組成物に関する。
【0033】
これらの二次コモノマー成分は、本発明の組成物の粘度および/または加工性を変更する、当該組成物ための希釈剤としての役割を果たし得る。当該二次コモノマー成分は、本発明の組成物において、硬化促進剤としてまたは硬化遅延剤としての役割も果たし得る。
【0034】
好ましくは、当該二次コモノマー成分は、以下:
(a)下記の式(IV)の化合物
【化12】
[式中、
R
14は、二官能性基であり、
R
15およびR
16は、2個から6個の炭素原子を有する、同一のまたは異なる独立したアルケニル基である];
(b)下記の式(V)の化合物
【化13】
[式中
R
17は、二官能性基であり、
R
18およびR
19は、2個から6個の炭素原子を有する、同一のまたは異なる独立したアルケニル基である];
(c)下記の式(VI)の化合物
【化14】
[式中、
R
20は、二官能性基であり、
R
21およびR
22は、同一であるかまたは異なり、それぞれお互いに独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(d)下記の式(VII)の化合物
【化15】
[式中、
R
23は、二官能性基であり、
R
24およびR
25は、同一または異なり、それぞれお互いに独立して、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基である];
(e)下記の式(VIII)の化合物
【化16】
[式中、
R
26は、y’官能基であり、
R
27は、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
y’は、≧2の整数である];
(f)下記の式(IX)の化合物
【化17】
[式中
R
28は、y”官能基であり、
R
29は、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
y”は、≧2の整数である]
から選択される1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる。
【0035】
好ましくは、式IVにおける残基R
14および式VにおけるR
17は、以下の基:
【化18】
から選択され、式VIにおける残基R
20および式VIIにおけるR
23は、以下の基:
【化19】
から選択され、式VIIIにおける残基R
26および式IXにおけるR
28は、以下の基:
【化20】
から選択され、式VIIIにおける残基R
27および式IXにおけるR
29は、1-プロペン-1-イル基または2-プロペン-1-イル基である。
【0036】
好ましくは、当該二次コモノマー成分は、以下から選択される1種のコモノマーまたは少なくとも2種のコモノマーの組み合わせからなる。
【0037】
2,2’-ジアリルビスフェノール-A、ビスフェノール-Aジアリルエーテル、ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン、m-アミノベンズヒドラジド、ビスフェノール-Aジシアン酸エステル、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼン。
【0038】
式(I)による化合物の合成
本発明の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルは、様々な周知の方法によって、適切な出発材料、例えば、非対称に置換されたアルケニルフェノキシ、アルキルメタノンなど、および当該適切なハロゲン化アルキルマグネシウムから(スキーム1)、または当該適切なトリフェニルアルキルホスホランから(スキーム2)調製することができる。非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの合成のための2つの方法について、以下において概説する。合成法1は、適切な非対称に置換されたアルケニルフェノキシアルキルメタノンと、適切なハロゲン化アルキル-マグネシウムとを利用するグリニャール反応、ならびにその後の脱水反応に基づいている。第二の合成法は、非対称に置換されたアルケニルフェノキシアルキルメタノンと、適切なトリフェニルアルキルホスホランとによるウィッティヒ反応に基づいている(スキーム2)。
スキーム1
【化21】
スキーム2
【化22】
【0039】
当該非対称に置換されたアルケニルフェノキシアルキルメタノン(X)は、以下に概説される求核ハロゲン置換反応(スキーム3)を介して、ハロフェニルアルキルメタノン(XI)と適切なアルケニルフェノール(XII)とから合成することができる。
スキーム3
【化23】
【0040】
アルケニル基がそのcis-立体配置およびtrans-立体配置において異なる、本発明の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルは、1,1’-(オキシジ-4,1-フェニレン)ビス-アルカノンと、適切なハロゲン化アルキルマグネシウムまたは適切なトリフェニルアルキルホスホランとから調製することができる(スキーム4に概説される)。
(スキーム4)
【化24】
【0041】
あるいは、本発明における混合cis/trans型ビス-アルケニルジフェニルエーテルは、米国特許第3,663,625号(Neville、1972)に記載される対称的なビス-(4-ビニルフェニル)エーテルおよびビス-(4-イソプロペニルフェニル)エーテルの合成と同様に、ケトンの還元と、その後の、結果として得られたジオールの脱水反応とによって、1,1’-(オキシジ-4,1-フェニレン)ビス-アルカノンから調製することができる(スキーム5に示される)。
(スキーム5)
【化25】
【0042】
本発明の硬化性組成物の製造プロセス
一態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物の製造プロセスであって、結果として固体硬化性組成物、低温溶融硬化性組成物、または粘着性硬化性組成物を生じる、粉末補助混合プロセス、溶融補助混合プロセス、溶媒補助混合プロセス、または他の混合プロセスを使用して、当該組成物の成分を混合する工程を含む、プロセスに関する。
【0043】
溶融混合プロセス
一態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物の製造プロセスであって、以下の工程:
本発明のコモノマー成分と上記において定義されるようなポリイミド成分とを含む組成物の成分を、70℃から250℃の範囲の温度において混合することにより、低融点の低粘度塊(樹脂)として硬化性組成物を得る工程
を含むプロセスに関する。
【0044】
この方法の実施において、当該混合温度は、比較的広い範囲にわたって変えることができる。一実施形態において、当該方法は、90℃から170℃、好ましくは100℃から160℃の温度において実施される。
【0045】
溶液混合プロセス
一態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物の製造プロセスであって、以下の工程:
本発明のコモノマー成分と、上記において定義されるようなポリイミド成分とを含む組成物の成分を、溶媒または希釈剤に溶解させ、当該溶媒または希釈剤を除去することにより、無溶媒で低融点融の低粘度塊(樹脂)として硬化性組成物を得る工程
を含むプロセスに関する。
【0046】
一実施形態において、本発明のコモノマー成分および上記において定義されるようなポリイミド成分は、高温において当該溶媒に溶解される。
【0047】
好適な溶媒および希釈剤は、全ての通例の不活性な有機溶媒である。そのようなものとしては、これらに限定されるわけではないが、好ましくは助溶媒としての1,3-ジオキソランとの組み合わせにおける、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど;グリコールエーテル、例えば、メチルグリコール、酢酸メチルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(メチルプロキシトール)、メチルプロキシトールアセテート、ジエチレングリコール、およびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど;トルエンおよびキシレン、
が挙げられる。
【0048】
好ましい実施形態において、当該溶媒は、1,3-ジオキソランまたは1,3-ジオキソラン含有溶媒である。
【0049】
一実施形態において、当該溶媒混合物中の1,3-ジオキソランの量は、20重量%から80重量%、例えば、30重量%から70重量%または40重量%から60重量%、の範囲である。
【0050】
当該硬化性組成物の製造プロセスの実施において、すなわち、溶融プロセスおよび溶液プロセスにおいて、当該組成物中の不飽和イミド基と反応性アルケニル基との間のモル比は、所望の硬化反応速度を達成するために、1.0から0.1、例えば、1.0から0.2、1.0から0.3、1.0から0.4、1.0から0.5、1.0から0.6、1.0から0.7、または1.0から0.8の範囲である。
【0051】
他の混合プロセス
本発明の硬化性組成物の調製は、いかなる希釈剤または溶媒も用いずに実施することができ、その場合、当該成分は、粉末、ペースト、または液体として、必要であれば高温において、十分に混合され、それにより、当該温度での処理時間に応じて、モノマーまたはプレポリマーの均一な混合物が得られる。このプロセスは、BMI/コモノマー混合物の高い反応性に起因して、合理的な量へとスケールアップすることができない。必要な溶融温度を制御および設定するため、反応ゾーンにおいて予備重合に必要な温度を提供するため、ならびに当該処理能力によって温度に対して時間を設定するために、押出プロセスを使用することができる。当該押出物は、冷却後、ホットメルト生成物または固化された溶融物であり得、それらは、樹脂粉末へと微粉砕することができる。
【0052】
貯蔵安定な混合物
当該硬化性組成物の多くの技術的用途にとって、使用前の加工性および貯蔵安定性を向上させるために反応抑制剤の添加によって重合を遅延させることは有利である。好適な反応抑制剤は、ハイドロキノン、1,4-ナフトキノン、およびフェノチアジンであり、これらは、当該組成物の総重量に対して0.1重量%から2.0重量%の間の濃度において使用される。当該組成物の調製の前に当該抑制剤を成分の1つに溶解させることは、有利である。
【0053】
二次コモノマー成分を含む組成物
多くの場合、本発明の硬化性組成物は、溶融物から加工することができる。溶融粘度を下げ、当該樹脂のポットライフを向上させるために、二次コモノマー成分を添加してもよく、当該二次コモノマー成分は、アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジド、シアン酸エステル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、ジビニルベンゼンから選択される1種または複数種のコモノマーからなり、この場合、当該二次コモノマー成分は、総組成物の1重量%から30重量%を占める。当然のことながら、アリルタイプの二次コモノマー成分、例えば、ジアリルビスフェノール-A、ビスフェノール-Aジアリルエーテル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、およびトリアリルシアヌレートなど、は、当該硬化性組成物に添加される場合、重合反応速度を遅くし、結果として、プロセスウィンドーを広げる。スチレンまたはジビニルベンゼンのような二次コモノマー成分は、10重量%から20重量%の間の濃度において非常に効果的であるが、重合反応速度を速め、より速い樹脂硬化を提供し、それらの重合温度を低下させる。したがって、二次コモノマー成分は、本発明の硬化性組成物の硬化速度を変更するための追加のツールである。そのような二次コモノマー成分が使用される場合、最初に、化合物(I)と当該二次コモノマー成分を必要な割合において混合し、次いで、第二段階において、必要であれば高温において、当該混合物のポリイミド部分をこの混合物に溶解させることが有利である。
【0054】
熱可塑性の靭性改質剤を含む組成物
本発明の硬化性組成物はさらに、当該組成物の総重量に対して、0重量%から約30重量%の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリイミド-エーテル、ポリオレフィン、ABS樹脂、ポリジエン、またはジエンコポリマー、あるいはそれらの混合物を含み得る。ポリスルホンおよびフェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂は、特に、本発明の硬化性組成物と混和可能であり、樹脂粘度を調節するため、および硬化時の流動性を制御するために使用することができる。熱可塑性ポリマーは、破壊靭性を向上させるためにも加えることができる。熱可塑性ポリマーは、微細粉末として当該硬化性組成物に加えることができ、または化合物(I)または二次コモノマー成分のどちらかに溶解させてもよい。
【0055】
本発明の硬化性組成物は、通例の技術およびプロセスによって単離することができる(例えば、実施例のセクションを参照のこと)。
【0056】
本発明の硬化性組成物のプレポリマーおよびそれらの製造プロセス
一態様において、本発明は、プレポリマーの調製のための、上記において定義されるような硬化性組成物の使用に関する。
【0057】
本発明の硬化性組成物は、部分的に架橋された生成物(すなわち、プレポリマー)の調製にとって有用であることが見出された。プレポリマーは、上記において定義されるような硬化性組成物を、熱および/または圧力の適用下において依然として成形可能であるプレポリマーを得るのに十分な時間、80℃から350℃、好ましくは100℃から250℃の温度に加熱することによって調製される。任意選択により、これは、硬化触媒または硬化安定化剤の存在下において実施される。
【0058】
硬化促進剤
本発明の硬化性組成物のいくつかの用途にとって、触媒を、典型的には、当該硬化性組成物の総重量に対して0.01重量%から5重量%の量において、好ましくは0.1重量%から2重量%の量において加えることによって硬化プロセスを促進することは有利である。好適な触媒としては、イオン性触媒およびフリーラジカル重合触媒が挙げられる。フリーラジカル重合触媒の例としては、(a)有機過酸化物、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジアミルペルオキシド、およびt-ブチルペルベンゾエートなど、ならびに(b)アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなど、が挙げられる。イオン性触媒の例は、アルカリ金属化合物、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアニリン、アザビシクロオクタンなど、複素環式アミン、例えば、キノリン、N-メチルモルホリン、メチルイミダゾール、およびフェニルイミダゾールなど、ならびにリン化合物、例えば、トリフェニルホスフィンおよびハロゲン化第四級ホスホニウムなど、である。当該触媒は、硬化性組成物の成分と混和することができ、あるいは上記において説明されるような粉末混合プロセスまたは溶媒混合プロセスのいずれかによって、プレポリマーの製造の際に加えてもよい。
【0059】
別の態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物を、熱および/または圧力の適用下において依然として成形可能であるプレポリマーを得るのに十分な時間において、50℃から250℃、好ましくは70℃から170℃の範囲の温度に加熱する工程を含むプロセスによって、当該硬化性組成物から得ることができる硬化性プレポリマーを含む。
【0060】
当該方法が、溶媒の存在下において実施される場合、原則として、高沸点の極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、およびブチロラクトンなど、を使用することができる。しかしながら、そのような溶媒の使用は、概して、残留溶媒の含有量の高いプレポリマーをもたらす。
【0061】
当該方法が溶媒の存在下において実施される場合、一実施形態において、1,3-ジオキソランを含有する低沸点の溶媒混合物が使用され得る。好ましくは、そのようなものとして、これらに限定されるわけではないが、1,3-ジオキソランと、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど、またはグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ブチレングリコールエーテル、およびそれらのアセテートなど、とによる溶媒混合物が挙げられる。
【0062】
1,3-ジオキソランと上記において特定した溶媒とを含む溶媒混合物が低沸点であることにより、そのような溶媒混合物は、無溶媒プレポリマーの調製にとって有用である。さらに、そのようにして得られたプレポリマーは、空隙不含の繊維強化複合材へと加工することができる。
【0063】
一実施形態において、当該溶媒混合物は、当該溶媒混合物の総重量に対して、50重量%まで、好ましくは40重量%までのケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど、またはグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ブチレングリコールエーテル、およびそれらのアセテートなど、を含む。
【0064】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物の溶液は、30重量%から70重量%、好ましくは40重量%から60重量%の溶媒、例えば、1,3-ジオキソランまたは1,3-ジオキソランと上記において特定される溶媒とを含む溶媒混合物、を含む。そのような濃度は、典型的には、工業的ディップコーティングプロセスにおいて使用される。
【0065】
本発明の硬化性組成物のプレポリマーは、一般的な通例のプロセス、例えば、後続の使用が無溶媒の場合、溶媒のエバポレーションによって単離することができる。
【0066】
本発明の方法によって得られるプレポリマーは、依然として、選択された有機溶媒に可溶性である。さらに、本発明のプレポリマーは、依然として、熱および/または圧力の適用下において可融かつ成形可能である。
【0067】
別の態様において、本発明は、上記において説明される方法によって得ることができる硬化性プレポリマーに関する。
【0068】
本発明の硬化性組成物による架橋ポリマーおよびそれらの製造プロセス
一態様において、本発明は、架橋ポリマーの調製のための、上記において定義される硬化性組成物の使用または上記において定義されるプレポリマーの使用に関する。
【0069】
本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーは、架橋ポリマーの調製にとって有用であることが見出された。
【0070】
一態様において、本発明は、以下の工程:
上記において定義される硬化性組成物または上記において定義される硬化性プレポリマーを、硬化を完了するのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度に加熱する工程
を含む、架橋ポリマーの調製方法に関する。
【0071】
この方法の実施において、当該反応温度は、比較的広い範囲にわたって変えることができる。一実施形態において、当該方法は、80℃から270℃、より好ましくは90℃から260℃、最も好ましくは100℃から250℃の温度において実施される。
【0072】
別の態様において、本発明はさらに、本発明による硬化性組成物を、ポリマーを得るのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度に加熱する工程を含むプロセスによって、当該硬化性組成物から得ることができる架橋ポリマーを含む。
【0073】
当該転化は、成形物、ラミネート、接着剤結合、または発泡体を得るための加圧下における形成工程と同時に行ってもよい。
【0074】
これらの用途に対して、当該硬化性組成物を添加剤、例えば、フィラー、顔料、着色剤、または難燃化剤など、と混合することは可能である。好適なフィラーは、ガラス繊維または炭素繊維、グラファイト、石英、金属粉末、および金属酸化物である。離型剤、例えば、シリコーン油、ワックス、ステアリン酸Znおよびステアリン酸Kも、加えることができる。
【0075】
別の態様において、本発明は、本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーの加工によって得ることができる成形物、ラミネート、接着剤結合、または発泡体に関する。
【0076】
本発明の複合材料およびそれらの製造プロセス
本発明の硬化性組成物および硬化性プレポリマーは、複合材料の調製にとって有用であることが見出された。
【0077】
粒子状フィラーを含む混合物
本発明の硬化性組成物は、成形物を製造するために粉末成形産業における既知の方法によって加工することができ、この場合、硬化工程は、加圧下において形成工程と同時に行われる。これらの用途の場合、当該硬化性組成物は、添加剤、例えば、フィラー、着色剤、および難燃化剤など、と混和される。理想的なフィラーは、例えば、ガラス短繊維、短炭素繊維またはアラミド繊維、粒子状フィラー、例えば、石英、シリカ、セラミック、金属粉末、および炭素粉末である。成形物品の技術的用途に応じて、2種以上の異なるフィラーを同時に使用してもよい。
【0078】
用途
本発明の硬化性組成物の好ましい使用の1つは、繊維複合材のためのバインダーとしてである。この用途の場合、当該補強材を含侵させるために、当該硬化性組成物の溶液を用いることにより、粗紡、織物、短繊維マット、またはフェルトの形態の、ガラス、炭素、またはアラミドなどの繊維に、当該硬化性組成物を含侵させる。溶媒を乾燥除去した後、プレプレグが残され、これは、第二フェーズにおいて、任意選択により加圧下において、180℃から350℃の間の温度において硬化され得る。
【0079】
溶融プレプレグ
本発明の硬化性組成物の好ましい用途は、繊維強化複合材のためのホットメルト樹脂としてである。そのような繊維強化複合材を得るために、当該硬化性組成物が、ホットメルトとして、担持体ホイル上の樹脂フィルムへと加工され、その後、繊維が、粗紡または織物の形態において、当該溶融樹脂フィルム中へと圧入され、それにより、プレプレグが形成される。このプロセスの場合、低温において低粘度を有する硬化性組成物は、繊維の粗紡または織物の適切な含侵を提供するために有利である。
【0080】
ラミネート
本発明の硬化性組成物の好適な用途の1つは、繊維ラミネートのための樹脂としてである。ガラス繊維、炭素繊維、またはアラミド繊維から、溶媒/溶液プロセスまたはホットメルトプロセスのいずれかによって製造されたプレプレグは、織物または粗紡の形態において、プレプレグラミネートを提供するために積層され、続いて、加圧下において、または真空バッグ中において、150℃から280℃、好ましくは170℃から260℃の間の温度において硬化される。
【0081】
一態様において、したがって、本発明は、以下の工程:
上記において定義される方法により得ることができる低粘度の溶融安定な樹脂の形態の硬化性組成物、または上記において定義されるプレポリマーを、繊維状補強材または粒子状補強材(フィラー)の上に適用する工程またはそれらと混合する工程と;それに続く硬化工程と
を含む、複合材料の調製方法に関する。
【0082】
一実施形態において、上記において定義される硬化性組成物またはプレポリマーは、標準的加工技術の使用、例えば、ホットメルトまたは溶媒ベースのプレプレグ化、樹脂トランスファ成形(RTM)、樹脂射出成形(RIM)、フィラメントワインディング(FW)、またはコンパウンディング技術などの使用によって、繊維状補強材または粒子状補強材(フィラー)の上に適用されるかまたはそれらと混合される。
【0083】
硬化工程は、硬化を完了するのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度、好ましくは80℃から270℃の範囲の温度、より好ましくは90℃から260℃の範囲の温度、最も好ましくは100℃から250℃の範囲の温度で実施され得る。
【0084】
別の態様において、本発明はさらに、
本発明による硬化性組成物または本発明による硬化性プレポリマーを、繊維状補強材または粒子状補強材と組み合わせる工程と、結果として得られる生成物を硬化させる工程とを含む、複合材料の製造プロセスを含む。
【0085】
一実施形態において、当該複合材料は、繊維強化複合材である。
【0086】
一実施形態において、当該複合材料は、微粒子充填複合材である。
一態様において、本発明は、以下の工程:
(a)上記において定義されるような硬化性組成物またはそのプレポリマーを調製する工程、
(b)上記において定義されるような硬化性組成物またはそのプレポリマーを繊維強化材上に適用するかまたは微粒子フィラーと混合する工程、
(c)上記において定義されるような硬化性組成物またはそのプレポリマーを、硬化を完了するのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度で硬化させる工程、ならびに
(d)同時に、複合材料を得るために圧力を加える工程
を含む、複合材料の調製方法に関する。
【0087】
プロセス工程c)は、硬化を完了するのに十分な時間において、70℃から280℃の範囲の温度、好ましくは80℃から270℃の範囲の温度、より好ましくは90℃から260℃の範囲の温度、最も好ましくは100℃から250℃の範囲の温度において実施され得る。
【0088】
プロセス工程c)の実施において、本発明の硬化性組成物またはプレポリマーの、架橋(硬化)ポリマーへの転化は、上記において定義される硬化触媒の存在下において実施してもよい。
【0089】
プロセス工程d)の実施において、加圧下での形成工程が、本発明の複合材を得るために実施される。プロセス工程c)およびd)は、同時に実施される。
【0090】
本発明の硬化性組成物の好ましい用途は、繊維強化複合材のための樹脂である。そのような繊維強化複合材を得るために、本発明の硬化性組成物は、ホットメルトとして担持体ホイル上の樹脂フィルムへと加工され、その後、粗紡または織物の形態において当該樹脂フィルム中へと圧入することによってプレポリマーを調製するために、使用される。このプロセスの場合、低温において低粘度を有する硬化性組成物は、繊維の粗紡または織物の適切な含侵を提供するために有利である。
【0091】
一態様において、本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる複合材料を含む。
【0092】
定義
添付の特許請求の範囲を含めて、本明細書において使用される場合、集合的に使用される用語は、以下の意味を有する。
【0093】
本明細書において使用される場合、用語「硬化性」は、元の化合物または混合材料を、化学反応、架橋、放射線架橋などによって、固体の、実質的に非流動性の材料へと変えることができることを意味する。
【0094】
本明細書において使用される場合、用語「混合物」は、物理的または機械的集合体、あるいは化学的に結合していない2種以上の別々の化学的に異なる化合物の組み合わせを意味する。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語「ポリイミド成分」は、1種のポリイミドまたは2種以上のポリイミドの混合物、好ましくは1種のポリイミドまたは2種から4種のポリイミドの混合物を意味する。
【0096】
本明細書において使用される場合、用語「コモノマー」は、重合または共重合を受けることができ、その結果、ポリマーの基本構造に構成単位を提供することができる化合物を意味する。
【0097】
本明細書において使用される場合、用語「コモノマー成分」は、1種のコモノマーまたは2種以上のコモノマーの混合物、好ましくは1種のコモノマーまたは2種から4種のコモノマーの混合物を意味する。
【0098】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェノール」は、少なくとも1つのアルケニル置換フェノール基を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェノール」は、2つのフェノール基が二官能基を介して架橋されるアルケニルフェノール、例えば、アルケニルビスフェノールなど、を包含する。例としては、2,2’-ジアリル-ビスフェノールAが挙げられる。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェニルエーテル」は、少なくとも1つのアルケニルオキシフェニル基、すなわち、エーテルの酸素原子が、一方でアルケニル残基に結合し、他方でフェニル残基に結合しているエーテル基、を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェニルエーテル」は、2つのフェニル基が二官能基によって架橋されているアルケニルフェニルエーテル、例えば、アルケニルビスフェノールエーテルなど、を包含する。例としては、ビスフェノールAのジアリルエーテルが挙げられる。
【0100】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニルフェノールエーテル」は、少なくとも1つのアルケニルフェノキシ基、例えば、エーテルの酸素原子が、一方でアルケニルフェニル基に結合し、他方でアルキル基またはアリール基に結合しているエーテル基、を有する有機化合物を意味する。用語「アルケニルフェノールエーテル」は、2つのアルケニルフェノキシ基が、二官能基によって、例えば、ベンゾフェノン基などの芳香族基によって、架橋されている有機化合物を包含する。例としては、ビス-(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンが挙げられる。
【0101】
本明細書において使用される場合、用語「ポリアミン」は、2つ以上の第一級アミノ基-NH2を有する有機化合物を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルインダン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、および脂肪族ジアミン、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,12-ジアミノドデカンなど、が挙げられる。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「アミノフェノール」は、アミノ置換フェノールを意味する。例としては、m-アミノフェノールおよびp-アミノフェノールが挙げられる。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸ヒドラジド」は、アミノ酸の任意のヒドラジドを意味する。例としては、m-アミノベンズヒドラジドおよびp-アミノベンズヒドラジドが挙げられる。
【0104】
本明細書において使用される場合、用語「シアン酸エステル」は、フェノール性OH基の水素原子がシアノ基で置換され、結果として-OCN基を生じている、ビスフェノールまたはポリフェノール、例えば、ノボラックなど、の誘導体を意味する。例としては、例えば、Lonza社からPrimaset BADCyとして、またはHuntsman社からAroCy B-10として市販されているビスフェノールAジシアン酸エステル、ならびに他のPrimasetまたはAroCyタイプ、例えば、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン(AroCy M-10)、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン(AroCy L-10)、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(AroCy F-10)、1,3-ビス(1-(4-シアナトフェニル)-1-メチルエチリデン)ベンゼン(AroCy XU-366)、ジ(4-シアナトフェニル)チオエーテル(AroCy RDX-80371;AroCy T-10)、ビス(4-シアナトフェニル)ジクロロメチリデンメタン(AroCy RD98-228)、ビス(4-シアナトフェニル)オクタヒドロ-4,7-メタノインデン(AroCy XU-71787.02L)、ならびにビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-シアナトフェニル)メタン、ジ(4-シアナトフェニル)エーテル、4,4-ジシアナトビフェニル、1,4-ビス(1-(4-シアナトフェニル)-1-メチルエチリデン)ベンゼン、レゾルシノールジシアネートが挙げられる。好ましい例は、ビスフェノールAジシアン酸エステルである。
【0105】
括弧と交差する任意の結合は、当該括弧内の部分を、同じ化合物における他の部分に接続する結合を示している。例えば、下記に示された基において、括弧と交差するエテニル基の右側の2つの結合は、この部分を、このエテニル基を有する化合物の他の部分に接続している。
【化26】
【0106】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子を意味する。
【0107】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルキル」は、n個からm個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。特に明記されない場合、「アルキル」は、1個から6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。本発明に文脈において、好ましいアルキル基は、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、異性体ペンチル、異性体ヘキシル、好ましくはメチルおよびエチル、最も好ましくはメチル、が挙げられる。
【0108】
本明細書において使用される場合、「アルキレン」は、二官能性アルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルキレン」は、n個からm個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。特に明記されない場合、「アルキレン」は、1個から12個の炭素原子を有するアルキレンを意味する。本発明の文脈において、好ましいアルキレン基は、1個から9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンが挙げられる。特に好ましいのは、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンである。
【0109】
本明細書において使用される場合、「アルケニレン」は、二官能性アルケニル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルケニレン」は、n個からm個の炭素原子を有するアルケニレン基を意味する。特に明記されない場合、「アルケニレン」は、2個から12個の炭素原子を有するアルケニレンを意味する。本発明の文脈において、好ましいアルケニレン基は、2個から10個の炭素原子を有するアルケニレン基、より好ましくは2個から6個の炭素原子を有するアルケニレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、エテニレン、プロペニレン、およびブテニレンが挙げられる。特に好ましいのは、エテニレンである。
【0110】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」は、酸素原子(-O-)を介して当該化合物に結合している、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルコキシ」は、n個からm個の炭素原子を有するアルコキシを意味する。特に明記されない場合、「アルコキシ」は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。本発明に文脈において、好ましいアルコキシ基は、1個から4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。
【0111】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するアルケニル」は、n個からm個の炭素原子を有するアルケニルを意味する。特に明記されない場合、「アルケニル」は、任意の所望の位置の炭素-炭素二重結合と2個から10個の炭素原子とを含む直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を意味する。本発明の文脈において、好ましいアルケニル基は、任意の所望の位置の炭素-炭素二重結合と2個から6個、より好ましくは2個から4個の炭素原子とを含む。アルケニル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、およびイソブテニルが挙げられる。好ましい例は、1-プロペニルおよび2-プロペニルである。
【0112】
本明細書において使用される場合、用語「単炭素環式基」は、「単炭素環式脂肪族基」または「単炭素環式芳香族基」を意味する。
【0113】
本明細書において使用される場合、用語「二炭素環式基」は、「二炭素環式脂肪族基」または「二炭素環式芳香族基」を意味する。
【0114】
本明細書において使用される場合、用語「単炭素環式脂肪族基」は、シクロアルキレン基を意味する。
【0115】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」は、単官能性炭素環式飽和環系を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキル」は、n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。特に明記されない場合、「シクロアルキル」は、5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、またはシクロオクタニル、好ましくはシクロペンタニル、およびシクロヘキサニルが挙げられる。
【0116】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキレン」は、二官能性炭素環式飽和環系を意味する。用語「n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキレン」は、n個からm個の炭素原子を有するシクロアルキレンを意味する。特に明記されない場合、「シクロアルキレン」は、3個から8個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を意味する。本発明の文脈において、好ましいシクロアルキレン基は、5個から7個、より好ましくは5個から6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基である。例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、またはシクロオクチレン、好ましくはシクロペンチレンおよびシクロヘキシレンが挙げられる。
【0117】
本明細書において使用される場合、「二炭素環式脂肪族基」は、二官能性二環式の縮合(condensed)、架橋、または縮合(fused)した飽和環系を意味する。特に明記されない場合、「二炭素環式脂肪族基」は、9個から20個の炭素原子を有する、二官能性二環式の縮合、架橋、または縮合した飽和環系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、デカリニル、ヒドリンダニル、およびノルボルニルが挙げられる。
【0118】
本明細書において使用される場合、用語「単炭素環式または二炭素環式芳香族基」は、好ましくは6個から12個の炭素原子を有する、二官能性単環式または二環式芳香族系、好ましくは単環式芳香族系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、トルエン、フェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレン、インデニレン、インダニレン、ペンタレニルエン、フルオレニレンなど、好ましくはトルエン、フェニレン、またはインダニレンが挙げられる。
【0119】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、好ましくは6個から12個の炭素原子を有する、単官能性単環式または二環式芳香族系、好ましくは単環式芳香族系を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、トルイル、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、フルオレニルなど、好ましくはトルイル、フェニル、またはインダニルが挙げられる。
【0120】
本明細書において使用される場合、用語「複素環基」は、「複素環式脂肪族基」または「複素環式芳香族基」を意味する。
【0121】
本明細書において使用される場合、「複素環式脂肪族基」は、炭素原子に加えて、窒素、酸素、および/または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を含む、二官能性飽和環を意味する。好ましい複素環式脂肪族基は、3個から5個の炭素原子と1個の窒素原子、酸素原子、または硫黄原子とを有する複素環式脂肪族基である。
【0122】
本明細書において使用される場合、用語「複素環式芳香族基」は、窒素、酸素、および/または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を含む5員または6員の単環式芳香族環、あるいは、一方または両方の環が窒素、酸素、または硫黄から選択される1個、2個、または3個の原子を有し得る、2つの5員環または6員環を含む二環式芳香族基を意味する。例としては、これらに限定されるわけではないが、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキシジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チエニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリルが挙げられる。
【0123】
本明細書において使用される場合、用語「架橋された多環式基」は、単炭素環式芳香族基、二炭素環式芳香族基、シクロアルキレン基から選択される少なくとも2つの基からなる基を意味し、この場合、これらの基は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基によってお互いに連結されている。
【0124】
好ましい二価の基は、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、および下記の基:
【化27】
[式中、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
11およびR
12は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]のうちの1つ、である。
【0125】
一実施形態において、用語「架橋された多環式基」は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または下記の基:
【化28】
[式中、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
11およびR
12は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]のうちの1つなど、によってお互いに連結された2つの単炭素環式脂肪族基からなる基を意味する。
【0126】
一実施形態において、用語「架橋された多環式基」は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基など、によってお互いに連結された2つのシクロヘキシレン基からなる基を意味する。
【0127】
一実施形態において、用語「架橋された多環式基」は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基、または下記の基:
【化29】
[式中、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキル基であり;ならびに
R
11およびR
12は、独立して、1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基である]のうちの1つなど、によってお互いに連結された2つの単炭素環式芳香族基からなる基を意味する。
【0128】
一実施形態において、用語「架橋された多環式基」は、直接的な炭素-炭素結合によって、または二価の基、例えば、オキシ基、チオ基、1個から3個の炭素原子を有するアルキレン基、スルホン基、メタノン基など、によってお互いに連結された2つのフェニレン基からなる基を意味する。
【0129】
本明細書において使用される場合、当該用語に加えて、「非置換」または「置換された」は、それぞれの基が、非置換であるか、またはアルキル、アルコキシ、およびハロゲンから選択される1つから4つの置換基を有することを意味する。好ましい置換基は、メチルまたはエチルである。
【0130】
本明細書において使用される場合、用語「x官能性基」、「y官能性基」、「y’官能性基」、および、「y”官能性基」は、それぞれ、x、y、y’、またはy”の数の結合を介して当該化合物の残りの部分に結合している基を意味する。好ましくは、「x官能性基」、「y官能性基」、「y’官能性基」、および、「y”官能性基」は、二官能性基であり、すなわち、x、y、y’、およびy”は、好ましくは2である。
【0131】
本明細書において使用される場合、用語「二官能性基」は、2つの結合を介して当該化合物の残りの部分に結合している基を意味する。二官能性基としては、これらに限定されるわけではないが、二官能性脂肪族基および二官能性芳香族基が挙げられる。二官能性脂肪族基としては、これらに限定されるわけではないが、下記の基が挙げられる。
【化30】
【0132】
二官能性芳香族基としては、これらに限定されるわけではないが、下記の基が挙げられる。
【化31】
【0133】
さらなる二官能性基としては、これらに限定されるわけではないが、下記の基が挙げられる。
【化32】
【0134】
本明細書において使用される場合、「ガラス転移温度」または「Tg」は、高弾性状態とガラス質(ガラス状)状態との間の、アモルファス固体、例えば、ポリマー、の可逆的転移の温度を意味し、この場合、当該ポリマーは、冷却時に脆くなり、加熱時に軟質になる。より詳細には、それは、疑似二次相転移を定義し、過冷却された溶融物は、冷却時に、ガラス状構造、および結晶材料、例えば、等方性固体材料など、と同様の特性をもたらす。
【0135】
本明細書において使用される場合、用語「非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル」は、式(I)によるジフェニルエーテル、すなわち、フェニル残基が、酸素架橋(エーテル)を介してお互いに結合し、当該2つのフェニル環のそれぞれに1つのアルケニル置換基を有し、任意選択により、さらに、当該2つのフェニル環の一方に1つのアルコキシ置換基を有する、ジフェニルエーテルを意味し、この場合、これらのジフェニルエーテルは、以下の要件(1)から(4):
(1)当該アルケニル置換基は異なっており、ならびに対応するフェニル環でのそれらの位置は、同じであるか(すなわち、オルト、オルト’-、メタ、メタ’-、またはパラ、パラ’-)、または異なっている(すなわち、オルト、メタ’-、オルト、パラ’-、メタ、オルト’-、メタ、パラ’-、パラ、オルト’-、またはパラ、メタ’-);
(2)当該アルケニル置換基は同じであり、ならびに対応するフェニル環でのそれらの位置は、異なっている(すなわち、オルト、メタ’-、オルト、パラ’-、またはメタ、パラ’-);
(3)当該アルケニル置換基は同じであり、ならびに対応するフェニル環でのそれらの位置も同じであるが(すなわち、オルト、オルト’-、メタ、メタ’-、またはパラ、パラ’-)、それらの二重結合の立体配置は異なっている(すなわち、cis-およびtrans-);
(4)当該アルケニル置換基は同じであり、対応するフェニル環でのそれらの位置は、同じであり(すなわち、オルト、オルト’-、メタ、メタ’-、またはパラ、パラ’-)、ならびにそれらの二重結合の立体配置も同じであるが(すなわち、cis-およびtrans-)、当該2つのフェニル環の一方は、アルコキシ置換基を有する
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0136】
上記の定義により、および本明細書において使用される場合、用語「対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル」は、式(I)によるジフェニルエーテル、すなわち、フェニル残基が酸素架橋(エーテル)を介してお互いに結合し、当該2つのフェニル環のそれぞれに1つのアルケニル置換基を有する、ジフェニルエーテルを意味し、この場合、当該アルケニル置換基、対応するフェニル環でのそれらの位置、および当該アルケニル置換基における二重結合の立体配置は同じであり、当該2つのフェニル環のどちらも、アルコキシ置換基を有さない。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【0138】
実施例
A.アルケニルフェノキシ置換アセトフェノン前駆体の合成
実施例1
4-[2-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンの合成
【化33】
2-アリルフェノール(134,18g)、4-フルオロアセトフェノン(138,14g)、乾燥炭酸カリウム(138g)、および250mLの乾燥N-メチルピロリドンを、スターラー、還流管、および温度計を備える1.5Lの三ツ口フラスコに装入し、窒素下において155℃で17時間加熱した。その後、当該混合物を70℃に冷却し、400mLのトルエンおよび500mLの水を加え、70℃で30分間激しく撹拌した。当該相を分離し、水相を破棄し、有機相を、それぞれ200mLの50℃の10%水酸化ナトリウム溶液で3回洗浄した。当該有機相に250mLの水を加え、希塩酸の添加によってpHを4.5に調節した。水相を分離して破棄し、有機相を、塩基性酸化アルミニウム上のフィルター支援としてのCelite(登録商標)によってろ過した。その後、溶媒をロータリーエバポレーターの使用によって蒸留除去し、最後に、残留物を、減圧下において130℃で脱ガス処理すると、茶色の溶解物として生成物が残った。収率:95.1%。純度(HPLC):95.7%(220nm)、96.7%(254nm)。
【0139】
実施例2
4-[2-メトキシ-4-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンの合成
【化34】
実施例1において説明したのと同様の方法において、出発材料としてオイゲノールを使用して、4-[2-メトキシ-4-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを合成した。収率:96.2%。純度(HPLC):88.2%(220nm)、87.9%(254nm)。
【0140】
実施例3
4-[2-エトキシ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンの合成
【化35】
実施例1において説明したのと同様の方法において、出発材料としてバニトロープを使用して、4-[2-エトキシ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを合成した。収率:94,7%。純度(HPLC):97.4%(220nm)、97.6%(254nm)。
【0141】
B.非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの合成
非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの合成の基本的手順
0.37モルの臭化アルキル-トリフェニルホスホニウムおよび310mLの乾燥テトラヒドロフランを、スターラー、還流管、および温度計を備えた三ツ口ガラス反応器に装入し、3℃に冷却した。当該撹拌した混合物に10分以内に0.37モルのカリウムtert-ブトキシドを加えた。140mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解させた0.31モルの適切なプロペニルフェノキシ-アセトフェノン(実施例1から3に従って調製した)を、温度を0℃から8℃の間に維持しながら、60分以内に加えた。その後、当該混合物を、5℃でさらに60分間撹拌し、室温で60分間撹拌した。次いで、110mLの水を加え、当該混合物を10分撹拌した。減圧下(100mbar)において、最大50℃の温度で、テトラヒドロフランを除去した。次いで、300mLの石油エーテル(80/110)を当該残留物に加え、当該混合物を50℃で10分間撹拌した。その後、200mLの水を加え、当該混合物を室温で20分間撹拌した。沈殿した酸化トリフェニルホスフィン(TPO)をろ別し、ろ液の相を分離して、有機相を、pH6に達するまで水で洗浄した。沈殿した追加のTPOをろ別し、当該溶液を無水CaCl2上において乾燥させ、Celite(登録商標)でろ過した。溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して除去し、最後に、残留物を、減圧下において、130℃で20分間脱ガス処理した。当該残留物を、220nmおよび254nmでのHPLC分析を使用することによってキャラクタライズした。
【0142】
実施例4
4-イソプロペニル-2’-(1-プロペン-1-イル)-ジフェニルエーテルの合成
【化36】
実施例1に従って合成した4-[2-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:86.4%(茶色のオイル)。純度(HPLC):99.1%(220nm)、99.4%(254nm)。当該生成物は、<0.1%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0143】
実施例5
4-イソブテニル-2’-(1-プロペニル)-ジフェニルエーテルの合成
【化37】
実施例1に従って合成した4-[2-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:97.3%(茶色のオイル)。純度(HPLC):94.7%(220nm)、98.6%(254nm)。当該生成物は、<0.1%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0144】
実施例6
4-イソヘキセニル-2’-(1-プロペニル)-ジフェニルエーテルの合成
【化38】
実施例1に従って合成した4-[2-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:76.9%(茶色のオイル)。純度(HPLC):96.9%(220nm)、97.4%(254nm)。当該生成物は、0.15%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0145】
実施例7
4-イソブテニル-2’-メトキシ-4’-(1-プロペニル)-ジフェニルエーテルの合成
【化39】
実施例2に従って合成した4-[2-メトキシ-4-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:90.6%(茶色のオイル)。純度(HPLC):86.2%(220nm)、97.2%(254nm)。当該生成物は、0.3%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0146】
実施例8
4-イソヘキセニル-2’-メトキシ-4’-(1-プロペニル)-ジフェニルエーテルの合成
【化40】
実施例2に従って合成した4-[2-メトキシ-4-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:そのままで104.5%(茶色のオイル)。純度(HPLC):85.5%(220nm)、95.0%(254nm)。当該生成物は、0.3%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0147】
実施例9
4-イソブテニル-2’-エトキシ-5’-(1-プロペニル)-ジフェニルエーテルの合成
【化41】
実施例3に従って合成した4-[2-エトキシ-5-(プロパ-1-エン-1-イル)フェノキシ]-アセトフェノンを出発材料として使用した。収率:94%(茶色のオイル)。純度(HPLC):93.0%(220nm)、98.0%(254nm)。当該生成物は、0.1%のTPOを含有し、出発材料のケトンは含有しなかった。
【0148】
実施例4から9において調製した式(I)の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの粘度を表1にまとめる。
【0149】
表1.
非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの粘度を表1にまとめる。
【表1】
【0150】
表2は、比較目的のために、対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの融点を提供する。
【0151】
表2.
対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの融点
【表2】
[1]R.G.Neville:Bis[1-alkyl (or aryl) vinyl]-p-phenylene oxide monomers // U.S.Pat.US 3663625 A,16 May 1972 (Bechtel International Corp.)
[2]J.E.Harris,A.Berger,V.M.Chopdekar,M.Matzner,J.Spanswick:Amide and/or imide containing polymers and monomers for the preparation thereof // U.S.Pat.US 4713438 A,15 Dec 1987 (Amoco Corp.,USA)
[3]J.T.Aplin,N.L.Bauld:Mechanistic distinctions between cation radical and carbocation propagated polymerization // J.Org.Chem.,1998,Vol.63,No.8,2586-2590
[4]R.H.Wiley,G.L.Mayberry:Tracer techniques for the determination of monomer reactivity ratios.IV.Copolymerization characteristics of some divinyl monomers // J.Polym.Sci.,Pt.A:Gen.Papers,1963,Vol.1,No.1,217-226
【0152】
本発明の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(表1、実施例4から9)に対する、表2に一覧される対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルの溶融挙動(比較データ、文献値)の比較は、優れた加工性を示すレオロジー特性に関して、本発明の化合物(表1を参考のこと)の優位性を明確に実証している(例えば、当該溶融物におけるビスイミドの混合性(blendability))。ここで例示されるように、本発明の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルは、室温において低粘度液体であるが、その一方で、対称なビス-アルケニルジフェニルエーテルは、結晶性固体である。
【0153】
C.ポリマレイミド(II)および式(I)の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルをベースとする本発明の硬化性混合物の調製
本発明の硬化性混合物は、以下の一般的プロセスに従って得ることができる:
【0154】
(a)溶融プロセス
式(II)の少なくとも1種のポリマレイミドと、少なくとも1種の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(I)と、必要に応じて少なくとも1種の追加のコモノマー成分とを、100~120℃の温度範囲において、均一な混合物が得られるまで、溶融混合した。その後、そのようにして得られた溶融物を、同じ温度範囲において、安定な溶融物を得るのに十分な時間、さらに加熱する。最後に、当該溶融物を、20hPa[15mmHg]の減圧下において、2~10分間脱ガス処理して、当該硬化性混合物を得る。
【0155】
(b)溶媒支援プロセス
式(II)の少なくとも1種のポリマレイミドと、少なくとも1種の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(I)と、必要に応じて少なくとも1種の追加のコモノマー成分と、有機溶媒、好ましくはトルエンまたは塩化メチレンとを、1:1の固体対溶媒の重量比において、透明な溶液が得られるまで、90~100℃に加熱する。その後、当該溶媒を、減圧下において除去し、同時に、温度を100~120℃の間に上げる。最後に、当該混合物を、20hPa[15mmHg]の減圧下において、2~10分間脱ガス処理して、当該硬化性混合物を得る。当該樹脂/溶媒比は、成分の溶解性に応じて変更してもよい。本明細書において言及されるような他の溶媒または希釈剤も使用することができる。
【0156】
(c)反応性測定
(c.1)示差走査熱量測定(DSC)
20℃から380℃の温度範囲において、規定された昇温速度(10℃/分)において得られた示差走査熱量測定(DSC)のトレースを使用して、本発明の硬化性組成物の硬化反応速度をキャラクタライズする。硬化発熱最大値TMAXは、指定された昇温速度での最大熱放出の温度を表している。TMAXが高いほど、樹脂の硬化は遅い。実施例10から18において調製した、式(II)のポリマレイミドと式(I)の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルとによる硬化組成物のTMAXのデータを表3にまとめる。
【0157】
(c.2)ホットプレートゲル化時間
樹脂反応性の標準的指標であるゲル化時間は、130℃から230℃の間の温度に維持することが可能な、電気的に加熱された、研磨面を有する金属ブロックの上に1gの樹脂を位置し、ISO規格8987およびASTMD4217標準に記載されているように、木製のロッドで溶融された試料を連続的に撹拌し調べることによって測定される。実施例10から18において調製した、式(II)のポリマレイミドと式(I)の非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテルとによる硬化組成物のゲル化の結果を表3にまとめる。
【0158】
D.硬化性ポリマレイミド/非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル混合物
実施例10から18
表3.
BMI(II)と非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(I)とによる硬化性組成物の反応性データ。全てのBMI(II)/コモノマー(I)混合物のモル比は、それぞれ、1.0:0.7mol/molであった。DCS昇温速度は10℃/分であった。
【表3】
MDAB=4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン;
C353A=ハイドロキノンで安定化された、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンと、2,4-ビスマレイミドトルエンと、1,6-ビスマレイミド-2,2,4(4,4,2)-トリメチルヘキサンとによる共晶混合物、Evonik Industriesから入手可能な市販のビスマレイミド混合物;
C50LM=イオノール46で安定化された、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンと、m-キシリレンビスマレイミドと、1,6-ビスマレイミド-2,2,4(4,4,2)-トリメチルヘキサンとによる共晶混合物、Evonic Industriesから入手可能な市販のビスマレイミド。
【0159】
比較例19から21
表4.
BMI(II)/市販のコモノマー混合物の比較反応性データ。全てのBMI(II)/コモノマー比較混合物のモル比は、それぞれ、1.0:0.7mol/molであった。DCS昇温速度は10℃/分であった。
【表4】
TM124=o,o’-ジアリルビスフェノール-A(Evonik Industriesから入手可能な市販の製品);
TM123=4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン(Evonik Industriesから入手可能な市販の製品);
MDAB=4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン;
C353A=ハイドロキノンで安定化された、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンと、2,4-ビスマレイミドトルエンと、1,6-ビスマレイミド-2,2,4(4,4,2)-トリメチルヘキサンとによる共晶混合物、Evonik Industriesから入手可能な市販のビスマレイミド混合物。
【0160】
実施例10から18(表3)のゲル化時間データと、実施例19から21(市販のコモノマーをベースとする混合物、表4)の対応するゲル化時間データとの比較は、非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(I)タイプの本発明のコモノマーを含む混合物では、著しくより速い硬化が得られたことを明確に示している。示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果は、ゲル化時間の測定から得られた結果に一致している。非対称に置換されたビス-アルケニルジフェニルエーテル(I)タイプの本発明のコモノマーを含むより速い硬化性混合物の場合、対応する配合物のDSC最大値TMAXはより低い温度であることが見出された。
【0161】
本発明について詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲内の変更は、当業者に容易に明らかとなるであろう。当業者は、先述の説明は単なる例としてであり、本発明を制限することを意図するものではないことを理解するであろう。