(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20220328BHJP
C08F 290/04 20060101ALI20220328BHJP
C10M 149/10 20060101ALI20220328BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20220328BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20220328BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220328BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220328BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220328BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220328BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
C10M145/14
C08F290/04
C10M149/10
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N30:00 A
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
(21)【出願番号】P 2019506987
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011496
(87)【国際公開番号】W WO2018174188
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2017057549
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】橋元 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】阪口 歩
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129732(WO,A1)
【文献】特開平06-306130(JP,A)
【文献】特開2015-007225(JP,A)
【文献】特開2014-210844(JP,A)
【文献】特開平08-169922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 145/14
C08F 290/04
C10M 149/10
C10N 20/00
C10N 20/02
C10N 30/00
C10N 30/02
C10N 40/04
C10N 40/06
C10N 40/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される数平均分子量が800~4,000である単量体(a)を必須構成単量体として含有する共重合体(A)を含む粘度指数向上
剤。
【化1】
[R
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で表される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)
m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい;R
2はブタジエンを必須構成単量体とし、R
2の重量に基づいてブタジエンの比率が50重量%以上である炭化水素重合体又はその炭化水素重合体の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数
;一般式(1)中のR
2
の一部または全量を構成するブタジエン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比率(1,2-付加体/1,4-付加体)は40/60~70/30である。]
【請求項2】
下記計算式(1)で算出される単量体(a)の繰返し単位1個当たりの共重合体セグメントの分子量が2,500~11,000である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
繰返し単位1個当たりの共重合体セグメントの分子量=M×A/a (1)
但し、Mは単量体(a)の重量平均分子量、aは共重合体(A)を構成する単量体(a)の合計重量、Aは共重合体(A)を構成する全ての単量体の合計重量を表す。
【請求項3】
共重合体(A)の構成単位として共重合体(A)の重量に基づいて単量体(a)を10~50重量%含有する請求項
1又は2に記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
共重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000である請求項
1~3のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
共重合体(A)が、さらに炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)を構成単量体とする共重合体である請求項
1~4のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
共重合体(A)が、さらに下記一般式(2)で表される単量体(c)を構成単量体とする共重合体である請求項
1~5のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【化2】
[R
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-又は-NH-で表される基;R
4Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
5は炭素数1~8のアルキル基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR
4Oは同一でも異なっていてもよく、(R
4O)
q部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
【請求項7】
共重合体(A)が、さらに炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)及び/又は下記一般式(3)で表される単量体(e)を構成単量体とする共重合体である請求項
1~6のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【化3】
[R
6は水素原子又はメチル基;-X
3-は-O-又は-NH-で表される基;R
7Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
8、R
9はそれぞれ独立に炭素数4~24の直鎖アルキル基;rは0~20の整数であり、rが2以上の場合のR
7Oは同一でも異なっていてもよく、(R
7O)
r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
【請求項8】
共重合体(A)が、構成単量体として共重合体(A)の重量に基づいて単量体(a)を10~50重量%、下記単量体(b)を1~80重量%、下記単量体(c)を0~60重量%、下記単量体(d)を0~40重量%及び下記単量体(e)を0~40重量%含有する共重合体である請求項
1~4のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
単量体(b):炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
単量体(c):下記一般式(2)で表される単量体
【化4】
[R
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-又は-NH-で表される基;R
4Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
5は炭素数1~8のアルキル基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR
4Oは同一でも異なっていてもよく、(R
4O)
q部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
単量体(d):炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
単量体(e):下記一般式(3)で表される単量体
【化5】
[R
6は水素原子又はメチル基;-X
3-は-O-又は-NH-で表される基;R
7Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
8、R
9はそれぞれ独立に炭素数4~24の直鎖アルキル基;rは0~20の整数であり、rが2以上の場合のR
7Oは同一でも異なっていてもよく、(R
7O)
r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
【請求項9】
共重合体(A)が、構成単量体として更に窒素原子含有単量体(f)、水酸基含有単量体(g)、リン原子含有単量体(h)及び芳香環含有ビニル単量体(i)からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる共重合体である請求項
1~8のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【請求項10】
さらに、下記一般式(4)で表される(共)重合体(B)を含有し、共重合体(A)と(共)重合体(B)との重量比(A)/(B)が90/10~99.8/0.2である請求項
1~9のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
【化6】
[Zは水素原子、メチル基またはY-X
4-で表される基である。Yは水素原子または(メタ)アクリロイル基である。-X
4-は炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-O(AO)
t-又は-NH-で表される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、tは1~10の整数であり、tが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)
t部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。R
10は炭素数2~18のオレフィン、炭素数4~10のアルカジエン及び炭素数8~17のスチレン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の単量体の重合体、又はその重合体が不飽和基を有するときはその不飽和基の一部又は全部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;sは0又は1の数を表す。]
【請求項11】
API分類のグループI~IVの基油、GTL基油及び合成系潤滑油基油からなる群から選ばれる1種以上の基油及び請求項
1~10のいずれかに記載の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物であって、潤滑油組成物中の共重合体(A)の含有量が0.1~20重量%である潤滑油組成物。
【請求項12】
さらに分散剤、清浄剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を合計で0.1~30重量%含んでなる請求項
11に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速機に用いられるATF、CVTF、MTF等の潤滑油は、高温になるほど粘度低下するが、実用上は低温から高温までの広範囲にわたり、粘度ができるだけ変化しないこと、つまり粘度指数が高いことが望ましい。近年、省燃費性を高める手段として、潤滑油を低粘度化して粘性抵抗を低減することが行われている。しかし、潤滑油を低粘度化すると、高温時に粘度が低くなりすぎて油漏れ、焼付きなどの種々問題が生じる恐れがある。
そこで省燃費性を改善する手段として、粘度指数向上剤を用いる方法がある。粘度指数が高いと低温での潤滑油の粘性抵抗が低くなり、省燃費性の向上につながる。そのため潤滑油に粘度指数向上剤を添加して粘度の温度依存性を改善する方法が広く行われている。そのような粘度指数向上剤としては、メタクリル酸エステル共重合体(特許文献1)、オレフィン共重合体(特許文献2)、及びマクロモノマー共重合体(特許文献3~8)等が知られている。
しかしながら、上記の潤滑油組成物は、粘度指数向上効果が未だ十分でなく、実用時に長期間の使用によるせん断安定性及び始動時の低温特性が未だ十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3999307号公報
【文献】特開2005-200454号公報
【文献】国際公開第2008/546894号
【文献】国際公開第2009/007147号
【文献】国際公開第2010/051564号
【文献】国際公開第2010/102903号
【文献】国際公開第2014/170169号
【文献】国際公開第2015/129732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粘度指数向上効果に優れ、使用時のせん断による粘度低下が少なく、かつ長期間使用時にせん断による析出物の生成のない粘度指数向上剤及び潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される数平均分子量が800~4,000である単量体(a)を必須構成単量体として含有する共重合体(A)を含む粘度指数向上剤であって、共重合体(A)の溶解性パラメーターの範囲が9.00~9.40である粘度指数向上剤;API分類のグループI~IVの基油、GTL基油及び合成系潤滑油基油からなる群から選ばれる1種以上の基油及びこの粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物であって、潤滑油組成物中の共重合体(A)の含有量が0.1~20重量%である潤滑油組成物である。
【0006】
【0007】
[R1は水素原子又はメチル基;-X1-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で表される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい;R2はブタジエンを必須構成単量体とし、R2の重量に基づいてブタジエンの比率が50重量%以上である炭化水素重合体又はその炭化水素重合体の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数を表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘度指数向上剤及び粘度指数向上剤を含んでなる潤滑油組成物は、粘度指数が高く、使用時のせん断による粘度低下が少なく、かつ長期間使用時にせん断による析出物の生成がないため長期使用時の安定性に優れる。また低温時の粘度を上昇させにくいという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘度指数向上剤は、下記一般式(1)で表される数平均分子量が800~4,000である単量体(a)を必須構成単量体として含有する共重合体(A)を含む粘度指数向上剤であって、共重合体(A)の溶解性パラメーターの範囲が9.00~9.40である粘度指数向上剤である。
【化2】
[R
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で表される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)
m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい;R
2はブタジエンを必須構成単量体とし、R
2の重量に基づいてブタジエンの比率が50重量%以上である炭化水素重合体又はその炭化水素重合体の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数を表す。]
【0010】
例えば特許文献3~8には、粘度指数向上剤にポリオレフィンをベースとする単量体を使用した共重合体を使用することが開示されている。しかし、ポリオレフィンをベースとする単量体の分子量が大きいため、ポリマー鎖が長期間せん断を受けポリマー鎖が切れたときに溶解性を維持するために必要なポリオレフィンをベースとする単量体を含まない部分が生成するため、長期間のせん断をかけられると析出物が発生してしまうという課題がある。また共重合体の溶解性パラメーター(以下SP値と略記)が9.00よりも小さい場合では、粘度指数向上性に劣り、共重合体のSP値が9.40よりも大きい場合は、基油への溶解性が悪化する。あるいは長期間のせん断によって析出物が発生してしまう。
これに対し本発明の粘度指数向上剤は良好な粘度指数向上性とせん断安定性を持ち、長期間のせん断にも耐えることができるものである。
【0011】
本発明における共重合体(A)のSP値は、好ましくは9.00~9.40(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは9.05~9.35(cal/cm3)1/2、特に好ましくは9.10~9.30(cal/cm3)1/2である。SP値が9.00よりも低い場合では粘度指数が悪化する傾向にあり、9.40より大きいと溶解性に劣り、また長期使用安定性に欠ける傾向がある。なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
【0012】
共重合体(A)を構成する単量体(a)は一般式(1)で表される。一般式(1)におけるR1は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。一般式(1)における-X1-は、-O-、-O(AO)m-又はNH-で表される基である。
AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。
炭素数2~4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基が挙げられる。
mはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、1~10の整数であり、粘度指数向上効果の観点から好ましくは1~4の整数、更に好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
-X1-のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、-O-及び-O(AO)m-で表される基であり、更に好ましくは-O-及び-O(CH2CH2O)1-で表される基である。
【0013】
pは0又は1の数である。
【0014】
一般式(1)におけるR2はブタジエンを必須構成単量体とし、R2の重量に基づいてブタジエンの比率が50重量%以上である炭化水素重合体又はその炭化水素重合体の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基である。
R2の構成要素としてはブタジエン以外に、以下の(1)~(3)を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)等が挙げられる。
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。
【0015】
単量体(a)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)および数平均分子量(以下Mnと略記する)は以下の2つの条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
測定条件1と測定条件2は測定温度と基準物質などが異なる。製造例では、測定条件1と測定条件2の測定結果を記載した。
<単量体(a)のMwおよびMnの測定条件1>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M 1本
測定温度 :35℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準1,2-ポリブタジエン
5点(分子量:1,200、2,200、3,200、5,600、12,000、20,000)[PSS社製]
<単量体(a)のMwおよびMnの測定条件2>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0016】
単量体(a)のMnは好ましくは800~4,000であり、さらに好ましくは1,000~3,500、特に好ましくは1,200~3,000である。単量体(a)のMnが800未満の場合は粘度指数向上効果が悪化する傾向があり、4,000を超えると長期間使用時のせん断安定性が悪化する場合がある。ここでいうMnとは前述したGPCの測定条件1で測定した値を指す。
【0017】
本発明の効果を得るには、下記計算式(1)で算出される単量体(a)の繰返し単位1個当たりの共重合体セグメントの分子量が2,500~11,000であることが好ましい。
繰返し単位1個当たりの共重合体セグメントの分子量=M×A/a (1)
【0018】
但し、Mは単量体(a)の重量平均分子量、aは共重合体(A)を構成する単量体(a)の合計重量、Aは共重合体(A)を構成する全ての単量体の合計重量を表す。
なお、共重合体(A)を構成する単量体(a)が2種類以上ある場合のMは、単量体(a)それぞれの重量平均分子量の重量比率による相加平均である。
また、共重合体(A)を構成する単量体(a)が2種類以上ある場合のaはすべての単量体(a)の合計重量を表す。
【0019】
この繰返し単位1個当たりの共重合体セグメントの分子量が11,000を超えると、長期間のせん断を受けた際に、ポリマー鎖が切れ、単量体(a)を含まない部分が生成しやすく、析出物が発生するおそれがある。また2,500未満であると粘度指数向上効果に劣る傾向がある。
ここでいう単量体(a)のMwは、前述のGPC測定条件1で測定される値を意味する。
【0020】
単量体(a)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入した片末端に水酸基を含有する(共)重合体(Y)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応により得ることができる。なお、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0021】
(共)重合体(Y)は、潤滑油への溶解性の観点から、特定のSP値を有するものが好ましい。SP値の範囲は、好ましくは7.0~9.0(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは7.3~8.5(cal/cm3)1/2である。
(共)重合体(Y)のSP値も前記の方法で算出することができる。(共)重合体(Y)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0022】
片末端に水酸基を含有する(共)重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y3)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた(共)重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたものなど。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の(共)重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)など。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の(共)重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたものなど。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の(共)重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)など。
これらの片末端に水酸基を含有する(共)重合体(Y)のうち好ましいのは、アルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)及び無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)であり、更に好ましいのは、アルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0023】
一般式(1)中のR2を構成する全単量体のうちブタジエンの比率は粘度指数向上効果の観点から、50重量%以上であり、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0024】
一般式(1)中のR2の一部または全量を構成するブタジエン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比率(1,2-付加体/1,4-付加体)は粘度指数向上効果および低温粘度の観点から、好ましくは5/95~95/5、更に好ましくは30/70~80/20、特に好ましくは40/60~70/30である。
【0025】
一般式(1)中のR2の一部または全量を構成するブタジエン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比率は1HNMRや13CNMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0026】
共重合体(A)を構成する単量体(a)の割合は、粘度指数向上効果とせん断安定性の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは10~50重量%であり、更に好ましくは15~40重量%、最も好ましいのは15~35重量%である。
単量体(a)の割合が10%未満の場合は、溶解性と長期使用安定性に劣る傾向にあり、単量体(a)の割合が50%を超える場合は、粘度指数向上効果に劣る傾向がある。
【0027】
本発明における共重合体(A)は、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)(以下、単量体(b)ともいう)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。
(b)のうち好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチルである。
【0028】
本発明における共重合体(A)は、下記一般式(2)で表される単量体(c)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。
【化3】
[R
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-又は-NH-で表される基;R
4Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
5は炭素数1~8のアルキル基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR
4Oは同一でも異なっていてもよく、(R
4O)
q部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
【0029】
一般式(2)におけるR3は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0030】
一般式(2)における-X2-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは-O-で表される基である。
【0031】
一般式(2)におけるR4は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
【0032】
一般式(2)におけるqは1~20の整数であり、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは1~5の整数であり、更に好ましくは1~2の整数である。
qが2以上の場合のR4Oは同一でも異なっていてもよく、(R4O)q部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0033】
一般式(2)におけるR5は、炭素数1~8のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ペンチル基及びn-オクチル基が挙げられる。
炭素数1~8のアルキル基のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数1~8のアルキル基であり、更に好ましいのは炭素数1~6のアルキル基、特に好ましいのは炭素数1~5のアルキル基、最も好ましいのは炭素数2又は4のアルキル基である。
【0034】
単量体(c)の具体例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシエチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、オクチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシブチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシブチル(メタ)アクリレート、及び炭素数1~8のアルコールにエチレンオキサイド~ブチレンオキサイドを2~20モル付加したものとの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
単量体(c)のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0035】
本発明における共重合体(A)は、さらに炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)(以下、単量体(d)ともいう)及び/又は下記一般式(3)で表される単量体(e)を構成単量体とする共重合体であることが、基油への溶解性の観点から好ましい。
【0036】
炭素数12~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)としては、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等が挙げられる。
単量体(d)のうち好ましいのは、炭素数12~28の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数12~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいのは炭素数12~20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
単量体(d)は2種類以上を合わせて用いてもよい。
【0037】
【化4】
[R
6は水素原子又はメチル基;-X
3-は-O-又は-NH-で表される基;R
7Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
8、R
9はそれぞれ独立に炭素数4~24の直鎖アルキル基;rは0~20の整数であり、rが2以上の場合のR
7Oは同一でも異なっていてもよく、(R
7O)
r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。]
【0038】
一般式(3)におけるR6は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0039】
一般式(3)における-X3-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは-O-で表される基である。
【0040】
一般式(3)におけるR7は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
【0041】
一般式(3)におけるrは0~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは0~5の整数であり、更に好ましくは0~2の整数である。
rが2以上の場合は、R7Oは同一でも異なっていてもよく、(R7O)r部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0042】
一般式(3)におけるR8、R9は、それぞれ独立に、炭素数4~24の直鎖アルキル基である。具体的には、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。
炭素数4~24の直鎖アルキル基のうち、粘度指数の観点から好ましいのは、炭素数6~24の直鎖アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数6~20の直鎖アルキル基、特に好ましいのは炭素数8~16の直鎖アルキル基である。
【0043】
単量体(e)のうち、基油への溶解性および低温粘度の観点から好ましいのは、炭素数12~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数14~32の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、特に好ましいのは炭素数16~28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
炭素数12~36の分岐アルキル基は、一般式(3)におけるR8、R9を含む部分で構成されるアルキル基である。
単量体(e)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-テトラコシルヘキサコシル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(e)は2種類以上を合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明における共重合体(A)は、単量体(a)~(e)に加え、更に窒素原子含有単量体(f)、水酸基含有単量体(g)、リン原子含有単量体(h)及び芳香環含有ビニル単量体(i)からなる群から選ばれる1種以上の単量体を構成単量体としてもよい。窒素原子含有単量体(f)としては、単量体(a)、単量体(c)及び単量体(e)を除く、以下の単量体(f1)~(f4)が挙げられる。
【0045】
アミド基含有単量体(f1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0046】
ニトロ基含有単量体(f2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0047】
1~3級アミノ基含有単量体(f3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0048】
ニトリル基含有単量体(f4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0049】
(f)のうち好ましいのは、(f1)及び(f3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0050】
水酸基含有単量体(g):
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0051】
リン原子含有単量体(h)としては、以下の単量体(h1)~(h2)が挙げられる。
【0052】
リン酸エステル基含有単量体(h1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0053】
ホスホノ基含有単量体(h2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0054】
(h)のうち好ましいのは(h1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0055】
芳香環含有ビニル単量体(i):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0056】
(i)のうち好ましいのは、スチレン及びα-メチルスチレンであり、更に好ましいのはスチレンである。
【0057】
共重合体(A)は、単量体(a)~(i)に加え、更に不飽和基を2つ以上有する単量体(j)を構成単量体とする共重合体であってもよい。
【0058】
不飽和基を2つ以上有する単量体(j)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0059】
共重合体(A)は、単量体(a)~(j)に加え、以下の単量体(k)~(n)を構成単量体としてもよい。
【0060】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(k):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有単量体(l):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0062】
ハロゲン元素含有単量体(m):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0063】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0064】
共重合体(A)のMwとMnは、GPCより後述する2つの条件で測定する。本文でいう共重合体(A)のMwとMnは測定条件1で測定したものを意味する。
共重合体(A)のMwは、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物のせん断安定性の観点から、好ましくは5,000~2,000,000であり、より好ましくは5,000~300,000であり、更に好ましくは10,000~250,000、特に好ましくは15,000~220,000、最も好ましくは30,000~200,000である。
Mwが5,000未満の場合には粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が小さい。また粘度指数向上剤の添加量が増えるため、コスト面でも不利になる恐れがある。Mwが2,000,000を超える場合にはせん断安定性が悪化する傾向がある。
【0065】
共重合体(A)のMnは好ましくは2,500以上であり、更に好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは7,500以上であり、最も好ましくは15,000以上である。また、好ましくは150,000以下であり、更に好ましくは125,000以下であり、特に好ましくは10,000以下であり、最も好ましくは75,000以下である。
Mnが2,500未満の場合には粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が小さい。また粘度指数向上剤の添加量が増えるため、コスト面でも不利になる恐れがある。Mnが100,000を超える場合にはせん断安定性が悪化する傾向がある。
【0066】
<共重合体(A)のMw、Mnの測定条件1>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
<共重合体(A)のMw、Mnの測定条件2>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリメチルメタクリレート
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)
【0067】
共重合体(A)を構成する単量体(b)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは1~80重量%であり、更に好ましくは5~70重量%、特に好ましくは10~65重量%、最も好ましいのは15~60重量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(c)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~60重量%であり、更に好ましくは1~50重量%、特に好ましくは5~40重量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(d)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~40重量%であり、更に好ましくは1~30重量%、特に好ましくは3~20重量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(e)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは0~40重量%であり、更に好ましくは1~30重量%、特に好ましくは3~20重量%である。
【0068】
また、共重合体(A)が、構成単量体として共重合体(A)の重量に基づいて単量体(a)を10~50重量%、単量体(b)を1~80重量%、単量体(c)を0~60重量%、単量体(d)を0~40重量%及び単量体(e)を0~40重量%含有することが好ましい。
【0069】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、鉱物油、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0070】
本発明の粘度指数向上剤は、共重合体(A)以外に、さらに下記一般式(4)で表される(共)重合体(B)を含有してなることが好ましい。
【化5】
[Zは水素原子、メチル基またはY-X
4-で表される基である。Yは水素原子または(メタ)アクリロイル基である。-X
4-は炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-O(AO)
t-又は-NH-で表される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、tは1~10の整数であり、tが2以上の場合のAOは同一でも異なっていてもよく、(AO)
t部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。R
10は炭素数2~18のオレフィン、炭素数4~10のアルカジエン及び炭素数8~17のスチレン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の単量体の重合体、又はその重合体が不飽和基を有するときはその不飽和基の一部又は全部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;sは0又は1の数を表す。]
【0071】
共重合体(A)と(共)重合体(B)との重量比(A)/(B)は粘度指数向上効果のおよび生産性の観点から好ましくは90/10~99.8/0.2、さらに好ましくは91/9~99.5/0.5、特に好ましくは92/8~99/1である。
【0072】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤及び基油を含有してなる。基油は、API分類のグループI~IVの基油、GTL基油及び合成系潤滑油基油(エステル系合成基油)からなる群から選ばれる1種以上の基油が挙げられる。これらのうち好ましいのはグループIIIの鉱物油およびGTL基油である。基油の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、粘度指数および低温流動性の観点から好ましくは1~15mm2/sであり、更に好ましくは2~5mm2/sである。
【0073】
基油の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数および低温流動性の観点から好ましくは90以上である。
【0074】
基油の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好となる傾向がある。
【0075】
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤中に含まれる共重合体(A)を潤滑油組成物合計の重量に基づいて0.1~20重量%含有することが好ましい。
【0076】
本発明の潤滑油組成物は、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(10)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(11)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0077】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として通常0.1~15重量%である。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として通常0.1~30重量%、好ましくは0.3~20重量%である。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等に好適に用いられる。
【0079】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<製造例1>
温度調節装置、撹拌翼を備えた耐圧反応容器に、脱気・脱水したシクロヘキサン500重量部、1,3-ブタジエン30重量部を仕込んだ後、テトラヒドロフラン2重量部、n-ブチルリチウム1.6重量部を加え、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率(転化率)がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド4.0重量部を添加して、50℃で3時間反応させた。反応を停止するために水100重量部と1N塩酸水溶液25重量部を加えて、80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、同温度10~20Torrの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、撹拌翼、水素導入管及び流出口を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン80重量部を加えて撹拌し、均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素5重量部とテトラヒドロフラン20重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管よりの30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過でパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して、同温度10~20Torrの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-2)を得た。
得られた(Y1-2)の分子量をGPCによって測定した。
測定条件1によるMw1,420、Mn1,300。測定条件2によるMw2,700、Mn2,630。
【0081】
<製造例2>
温度調節装置、撹拌翼を備えた耐圧反応容器に、脱気・脱水したシクロヘキサン500重量部、1,3-ブタジエン30重量部、スチレン3.3重量部を仕込んだ後、テトラヒドロフラン3.8重量部、n-ブチルリチウム0.75重量部を加え、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率(転化率)がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド1.9重量部を添加して、50℃で3時間反応させた。この後の操作は製造例1と同様に行い、片末端水酸基含有のブタジエン-スチレン共重合体の水素化物(Y1-3)を得た。
得られた(Y1-3)の分子量をGPCによって測定した。測定条件1によるMw3,600、Mn3,040。測定条件2によるMw5,600、Mn4,750。
【0082】
<製造例3>
温度調節装置、撹拌翼を備えた耐圧反応容器に、脱気・脱水したシクロヘキサン500重量部、1,3-ブタジエン30重量部を仕込んだ後、テトラヒドロフラン3.8重量部、n-ブチルリチウム0.41重量部を加え、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率(転化率)がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド1.0重量部を添加して、50℃で3時間反応させた。この後の操作は製造例1と同様に行い、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y’1-1)を得た。
得られた(Y’1-1)の分子量をGPCによって測定した。測定条件1によるMw5,200、Mn4,730。測定条件2によるMw7,840、Mn6,840。
【0083】
<製造例4>
温度調節装置、撹拌翼、滴下ロートおよび窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン400重量部、水素化ホウ素ナトリウム4.1重量部及び2-メチル-2-ブテン10重量部を投入し、窒素気流下、室温で10分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体[和光純薬(株)製]18.5重量部を滴下し、滴下終了から1時間撹拌した。次いで末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン10N」、日油(株)製)100重量部とテトラヒドロフラン200重量部の混合溶液を滴下し、滴下終了から25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50重量部を少しずつ加え、その後3N-NaOH水溶液50重量部、30重量%過酸化水素40重量部を投入して室温で2時間撹拌した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(20Torr以下)溶媒を2時間かけて除去し、片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロホウ素化物(Y’2-1)を得た。
得られた(Y’2-1)の分子量をGPCによって測定した。測定条件1によるMw1,670、Mn980。測定条件2によるMw2,700、Mn1,580。
【0084】
<製造例5>
温度調節装置、撹拌翼、滴下ロートおよび窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、テトラヒドロフラン400重量部、水素化ホウ素ナトリウム4.1重量部及び2-メチル-2-ブテン10重量部を投入し、窒素気流下、室温で10分間撹拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体[和光純薬(株)製]18.5重量部を滴下し、滴下終了から1時間撹拌した。次いで末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「Glissopal2300」、BASF社製)230重量部とテトラヒドロフラン250重量部の混合溶液を滴下し、滴下終了から25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50重量部を少しずつ加え、その後3N-NaOH水溶液50重量部、30重量%過酸化水素40重量部を投入して室温で2時間撹拌した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(20Torr以下)溶媒を2時間かけて除去し、片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロホウ素化物(Y’2-2)を得た。
得られた(Y’2-2)の分子量をGPCによって測定した。測定条件1によるMw4,100、Mn2,300。測定条件2によるMw5,500、Mn3,430。
【0085】
<製造例6>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン200N」、日油(株)製)500重量部及び無水マレイン酸[和光純薬(株)製]18.5重量部を投入し、撹拌下220℃に昇温後、同温度で12時間エン反応を行った。180℃に冷却した後、同温度、減圧下(12Torr以下)で未反応の無水マレイン酸を3時間かけて除去した。次いで25℃まで冷却し、2-アミノエタノール28重量部を投入して、撹拌下130℃に昇温後、同温度で4時間イミド化反応を行った。120~130℃で減圧下(12Torr以下)未反応の2-アミノエタノールを2時間かけて除去し、片末端不飽和基含有ポリブテンの無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y’3-1)を得た。
得られた(Y’3-1)の分子量をGPCによって測定した。測定条件1によるMw6,800、Mn3,030。測定条件2によるMw11,150、Mn4,740。
【0086】
上記製造例で得た重合体と、その他の片末端に水酸基を含有する重合体として(Y1-1)、(Y’1-2)を準備した。まとめると以下の通りである。
(Y1-1):水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(商品名;HLBHP1500、Cray Valley社製)、Mw=1,800、Mn=1,670、1,2-付加体/1,4-付加体のモル比率=65/35
(Y1-2):製造例1で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体、Mw=1,420、Mn=1,300、1、2―付加体/1、4-付加体のモル比率=40/60
(Y1-3):製造例2で得た片末端水酸基含有のブタジエン-スチレン共重合体の水素化物、Mw=3,600、Mn=3,040、1、2-付加体/1、4-付加体のモル比率=60/40
(Y’1-1):製造例3で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体、Mw=5,200、Mn=4,730、1,2-付加体/1,4-付加体のモル比率=60/40
(Y’1-2):水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(商品名;KrasolHLBH-5000M、Cray Valley社製)、Mw=5,370、Mn=5,190、1,2-付加体/1,4-付加体のモル比率=65/35
(Y’2-1):製造例4で得た片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロホウ素化物、Mw=1,670、Mn=980
(Y’2-2):製造例5で得た片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロホウ素化物、Mw=4,100、Mn=2,300
(Y’3-1):製造例6で得た片末端不飽和基含有ポリブテンの無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物、Mw=6,800、Mn=3,030
【0087】
上記片末端に水酸基を含有する重合体をエステル化して下記の単量体を準備した。
なお、(a’-3)としては市販品を準備した。
(a-1):(Y1-1)のメタクリル酸エステル化物、Mw=1,860、Mn=1,720
(a-2):(Y1-2)のメタクリル酸エステル化物、Mw=1,490、Mn=1,360
(a-3):(Y1-3)のメタクリル酸エステル化物、Mw=3,670、Mn=3,100
(a’-1):(Y’1-1)のメタクリル酸エステル化物、Mw=5,300、Mn=4,800
(a’-2):(Y’1-2)のメタクリル酸エステル化物、Mw=5,410、Mn=5,230
(a’-3):片末端水酸基含有の水素化ポリブタジエンのメタクリル酸エステル化物(商品名:L-1253、クラレ社製)、Mw=4,400、Mn=4,200、1,2-付加/1,4-付加モル比率=50/50
(a’-4):(Y’2-1)のメタクリル酸エステル化物、Mw=1,740、Mn=1,050
(a’-5):(Y’2-2)のメタクリル酸エステル化物、Mw=4,160、Mn=2,350
(a’-6):(Y’3-1)のメタクリル酸エステル化物、Mw=6,900、Mn=3,100
上記(a-1)~(a-3)及び(a’-1)~(a’-6)の分子量につき、表1にまとめて示した。
【0088】
【0089】
<実施例1、3~9、11~13、比較例4、6~9、11、14~17>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:2.5mm2/s、粘度指数:96)100重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表2、3記載の単量体、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン、t-ブチルベンゾイルペルオキシド0.25重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換を行った後、密閉下系内温度を100~110℃に保ちながら、3時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から3時間、110℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、共重合体(A-1)、(A-3)~(A-9)、(A-11)~(A-13)、(A’-4)、(A’-6)~(A’-9)、(A’-11)、(A’-14)~(A’-17)を含有する粘度指数向上剤(R-1)、(R-3)~(R-9)、(R-11)~(R-13)、(R’-4)、(R’-6)~(R’-9)、(R’-11)、(R’-14)~(R’-17)を得た。
得られた共重合体(A-1)、(A-3)~(A-9)、(A-11)~(A-13)、(A’-4)、(A’-6)~(A’-9)、(A’-11)、(A’-14)~(A’-17)のSP値を上記の方法で計算し、Mwを上記の方法で測定した。
【0090】
<実施例2、10、比較例1~3、5、10、12、13>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、基油A(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:2.5mm2/s、粘度指数:96)100重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表2、3記載の単量体、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、共重合体(A-2)、(A-10)、(A’-1)~(A’-3)、(A’-5)、(A’-10)、(A’-12)、(A’-13)を含有する粘度指数向上剤(R-2)、(R-10)、(R’-1)~(R’-3)、(R’-5)、(R’-10)、(R’-12)、(R’-13)を得た。
得られた共重合体(A-2)、(A-10)、(A’-1)~(A’-3)、(A’-5)、(A’-10)、(A’-12)、(A’-13)のSP値を上記の方法で計算し、Mwを上記の方法で測定した。
【0091】
<長期負荷下でのせん断安定性(長期使用安定性)の測定方法>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、SKルブリカンツ社製YUBASE-3(SP値:8.3(cal/cm3)1/2、100℃の動粘度:3.1mm2/s、粘度指数:106)を投入し、得られる潤滑油組成物の100℃動粘度が5.40±0.02(mm2/s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(R-1)~(R-13)、(R’-1)~(R’-17)を添加し、潤滑油組成物(V-1)~(V-13)、(V’-1)~(V’-17)を得た。
得られた潤滑油組成物(V-1)~(V-13)、(V’-1)~(V’-17)に対し、CEC L-45-99の方法により250時間のせん断試験を行った。せん断試験の後、それぞれの潤滑油組成物の外観を確認し、析出物の生成の有無を測定し結果を表2、3に記載した。この方法により長期負荷下でのせん断安定性(長期使用安定性)を評価した。
表2、3に記載の単量体(b)~(i)の組成は、以下に記載した通りである。
(b-1):メタクリル酸メチル
(b-2):メタクリル酸エチル
(b-3):メタクリル酸ブチル
(c-1):エトキシエチル(メタ)アクリレート
(c-2):ブトキシエチル(メタ)アクリレート
(d-1):メタクリル酸n-ドデシル
(d-2):メタクリル酸n-ヘキサデシルとメタクリル酸n-オクタデシルとの重量比7/3の混合物
(e-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(e-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシルとメタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシルとの重量比1/1混合物
(f-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(f-2):N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド
(f-3):N-ビニルピロリドン
(g-1):2-ヒドロキシエチルメタクリレート
(h-1):メタクリロイロキシエチルホスフェート
(i-1):スチレン
【0092】
【0093】
<実施例14~26、比較例18~23>
長期負荷下でのせん断安定性(長期使用安定性)が良好であった潤滑油組成物(V-1)~(V-13)と、比較の潤滑油組成物(V’-2)、(V’-3)、(V’-5)、(V’-10)、(V’-15)及び(V’-16)について、せん断安定性、40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数、低温粘度(-40℃)を以下の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0094】
【0095】
<潤滑油組成物の動粘度の測定法および粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で40℃と100℃の動粘度を測定し、ASTM D 2270の方法で計算した。
【0096】
<潤滑油組成物のせん断安定性の計算方法>
せん断安定性の計算はJASO M347-2007の方法で計算した。
【0097】
<潤滑油組成物の低温粘度(-40℃)の測定方法>
ASTM D 2983の方法により、-40℃で測定した。
【0098】
表2~4の結果から明らかなように、本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物(実施例14~26)は、せん断安定性と粘度指数のバランスに優れ、同時に低温粘度も9,000mPa・s以下と十分に低いことがわかる。たとえば、実施例14と比較例18を比べたときに、せん断安定性がほぼ同等であるのに対し、粘度指数が大きく向上している。また、実施例18と比較例18、19を比べたとき、粘度指数はほぼ同等であるが、せん断安定性が大きく改善していることがわかる。
一方、比較例1~23の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物は、せん断安定性と粘度指数のバランスが悪く、低温粘度、長期負荷下でのせん断安定性のうち、少なくとも1つが劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等として好適である。