IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイペム エスピーアーの特許一覧

特許7046921尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法
<>
  • 特許-尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
G01N21/65
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019511438
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2017055658
(87)【国際公開番号】W WO2018051313
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】102016000093986
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516208282
【氏名又は名称】サイペム エスピーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェローネ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】カルレッシ,リノ
(72)【発明者】
【氏名】セラフェノ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィオラ,フランチェスコ
【審査官】大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02955506(EP,A1)
【文献】米国特許第03451895(US,A)
【文献】特表2016-509241(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01398617(EP,A1)
【文献】米国特許第05637809(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0377750(US,A1)
【文献】中国実用新案第203965315(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/74
G01N 1/00 - G01N 1/44
C07C 273/00 - C07C 273/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流の性質及び/又は量を分析する分析機器(22)と、尿素プラント(1)のメインパイプ(20)から前記分析機器(22)へ好ましくは連続的なガスの試料流(25)を搬送するため前記メインパイプ(20)に接続可能なコネクタ(31)を有する試料採取用の導管(24)とを包含する、尿素プラント(1)のベントガスを分析するためのシステム(2)であって、
前記分析機器がラマン分光器(22)であり、
前記システム(2)は、前記導管(24)内で循環する前記試料流(25)の温度を調節するため温度制御装置(27)により作動して前記導管(24)の少なくとも一つの熱処理部分(28)に作用する温度調節装置(26)を包含し、
前記温度調節装置(26)は、前記導管(24)の前記熱処理部分(28)の周りに配設されて冷却流体が中を循環する冷却回路(33)と、前記冷却回路(33)内で前記冷却流体を循環させるため前記温度制御装置(27)により制御される少なくとも一つの循環部材(34)とを包含し、
前記導管(24)は、前記導管(24)の前記熱処理部分(28)での前記試料流(25)の冷却の後に凝縮した前記試料流(25)の凝縮物画分を前記メインパイプ(20)へ戻すための還流装置(29)を包含し、
前記分光器(22)の構成要素を損傷しうる閾値温度より低い温度に前記温度制御装置(27)が設定され、
前記導管(24)での前記試料流(25)の循環方向について前記熱処理部分(28)および前記冷却回路(33)の下流で前記導管(24)に配置され、前記冷却回路(33)により引き起こされる冷却の後に前記試料流(25)の温度を上昇させて、前記分光器(22)へ流入する前記試料流(25)の飽和条件を回避するため前記温度制御装置(27)により作動する加熱要素(37)、例えば電気抵抗も前記温度調節装置(26)が包含する、システム。
【請求項2】
前記メインパイプ(20)に戻った凝縮可能種の量を計算するように構成される処置制御ユニット(30)を包含する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記還流装置(29)が前記導管(24)の収集部分(38)を包含し、前記収集部分(38)が、前記メインパイプ(20)の上方で前記導管(24)の前記熱処理部分(28)の下方に配置され、前記凝縮物画分が重力の作用で前記収集部分(38)を通って下の前記メインパイプ(20)へ落下するように、実質的に垂直であるか、前記コネクタ(31)ゆえに前記メインパイプ(20)の方へ傾斜している、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記分光器(22)が前記メインパイプ(20)の上方に配置され、前記導管(24)が前記メインパイプ(20)から垂直に離間する、および/または、実質的に垂直であるか前記コネクタ(31)から上向きに傾斜して延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記温度制御装置(27)は、前記導管(24)の前記熱処理部分(28)の、前記導管(24)での前記試料流(25)の循環方向においてそれぞれ上流および下流に配置される一対の温度センサ(35,36)に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
予め設定された危険閾値を上回る熱上昇のケースで前記分光器(22)への前記試料流(25)の提供を中断するため前記分光器(22)の入口(32)にまたは前記導管(24)に配置される自動緊急遮断バルブ(39)を包含する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記分光器(22)を通って搬送される前記試料流(25)を前記メインパイプ(20)へ戻すため、前記メインパイプ(20)におけるベントガス循環方向において前記コネクタ(31)の下流で前記メインパイプ(20)に接続可能である戻し導管(41)に接続される出口(40)を前記分光器(22)が有する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のベントガス分析システム(2)を包含する尿素プラント(1)。
【請求項9】
尿素プラント(1)のメインパイプ(20)から好ましくは連続的なガスの試料流(25)を取り出すステップと、
ラマン分光器(22)において実施されるラマン分光法により前記試料流(25)の質的/量的分析を実施するステップと、
を包含する、尿素プラント(1)のベントガスの分析のための方法であって、
前記ラマン分光器により分析される前記試料流(25)の温度を、前記分光器(22)の構成要素を損傷する可能性がある予め設定された閾値温度より下に維持するために、前記試料流(25)の前記温度を制御するステップと、
前記ラマン分光器分析ステップへ前記試料流(25)を搬送する試料導管(24)での前記試料流(25)の温度を検出するステップと、
検出された温度が前記予設定閾値温度より高い場合に前記試料流(25)を冷却するステップと、
前記試料流(25)を冷却する前記ステップで凝縮した前記試料流(25)の凝縮物画分を前記尿素プラント(1)の前記メインパイプ(20)へ戻すステップと、
を包含し、
前記試料流(25)を冷却する前記ステップの後に、前記ラマン分光器分析ステップへ流入する前記試料流(25)の飽和条件を回避するため前記試料流(25)をわずかに加熱するステップを包含する、方法。
【請求項10】
前記試料流(25)の前記温度を検出する前記ステップが、前記試料流(25)が冷却される前記導管(24)の熱処理部分(28)の、前記導管(24)での前記試料流(25)の循環方向において上流および下流の温度を検出するステップを包含する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記メインパイプ(20)へ戻される凝縮可能種の量を計算するステップを包含する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記導管(24)は、前記メインパイプ(20)から垂直に離間する、および/または、当該導管(24)を前記メインパイプ(20)に結合するためのコネクタ(31)から実質的に垂直もしくは上向きに傾斜して延在し、
前記メインパイプ(20)の上方に配置されて前記導管(24)を介して前記メインパイプ(20)に接続されるラマン分光器(22)において、前記試料流(25)の分析が実施される、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
予設定の危険閾値を上回る前記試料流(25)の熱上昇のケースで前記ラマン分光器分析ステップへの前記試料流(25)の提供を中断するステップを包含する、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
詳しくは、前記試料流(25)が前記メインパイプ(20)から取り出される試料採取点の、前記メインパイプ(20)でのベントガス循環方向での下流において、前記ラマン分光器分析ステップで分析された前記試料流(25)を前記メインパイプ(20)へ戻すステップを包含する、請求項から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法とともに、ベントガスの分析のためのシステムを装備する尿素プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、カルバミン酸アンモニウムを形成する二酸化炭素とアンモニアとの間の高温および高圧条件での反応と、続いて尿素と水とが得られるカルバミン酸アンモニウムの分解反応とに基づくプロセスを介して、工業規模で尿素が生成される。
【0003】
二酸化炭素とアンモニアとの反応が行われる合成反応器と、反応器で生成された水性尿素溶液が徐々に濃縮されて未変換の試薬が回収および再循環される精製回収セクションと、(例えば整粒機または造粒塔で)尿素が凝固する仕上げセクションとを概して包含するプラント(尿素プラント)で、これらのプロセスが実行される。
【0004】
しかしながら、尿素プラントは、不活性の未変換物質とともに少量の未反応アンモニアを含有する連続ベントガスを発生させるように構成されている。尿素プラントで使用されるプロセスに応じて、このベントガスは、詳しくは不動態化のために挿入される酸素も含有しうる。
【0005】
例えば、いわゆる「ズナムプロゲッティ(Snamprogetti)」として知られる技術を採用する尿素プラントは、一般的には窒素、酸素、アルゴン、メタン、アンモニア、水素、水を含有する連続ガス流を、具体的にはいわゆる中圧回収セクションから放出する。
【0006】
詳しくは安全要件を満たすため、具体的には着火限界外を維持するために、尿素プラントのベントガスが水素と酸素とを含有する時には特に、このベントガスを監視する必要が生じる。
【0007】
危険な状況が検出された場合には、例えば、爆発性混合物の形成を回避するように蒸気または別の制御流体(不活性ガス、天然ガス、その他)を追加することにより、ベントガス流に作用が加えられる。
【0008】
制御流体(蒸気その他)の注入を安全な条件で中断するように、危険な状況が過ぎ去ったかをチェックすることも必要である。
【0009】
尿素プラントから出てアンモニアを含有するベントガス流の、プラントが稼働している状態での分析のために、ガスクロマトグラフの使用が提案されている。
【0010】
ガスクロマトグラフ分析は、多数の構成要素の同時的な特定および定量化を可能にするので、プロセスの監視に使用されることが多い。個々の試料構成要素は異なる速度でカラムを通過し、検出器により次々に記録される。試料の導入と検出器による物質の記録との間に経過する時間(保持時間)は物質に特徴的であってその特定に使用される。検出器信号の大きさは、分析された流体の構成要素の体積濃度の測定値である。
【0011】
しかしながら、ガスクロマトグラフの使用は、尿素プラントベントガス分析という特定の用途では幾つかの欠点を有している。
【0012】
最初に、分析されるガス流に凝縮蒸気または別の制御流体が存在すること(着火限界外へ移動するという、蒸気または別の流体の注入の後に生じる状況)は、ガス混合物の構成要素のガスクロマトグラフ測定、特にアンモニアの量的分析を妨げる。
【0013】
さらに、ガスクロマトグラフでの蒸気(または他の流体)の凝縮‐蒸発と関連する現象は、機器の機械的完全性を損ないうる。
【0014】
加えて、ガスクロマトグラフはかさばる機器であり、また調整されなければならないこともあり、そのため、概して、分析されるガス流が循環するメインパイプに直接には載置されず、遠隔位置で適当な構造に載置されて専用のラインによりメインパイプに接続されなければならず、このラインも比較的長くなりうる。これらはすべて、設備の設置を明らかに複雑にすることは別にしても、測定精度を損ないうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の一つは、周知の技術の上述の欠点を克服することを可能にする尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法を提供することである。
【0016】
詳細には、本発明の目的の一つは、例えば、蒸気または別の制御流体のベントガスへの注入により、著しい変化の場合にも尿素プラントのすべての作動条件での迅速かつ正確で信頼できるベントガス分析を可能にする、尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法を提供することである。
【0017】
ゆえに本発明は、添付の請求項1および13のそれぞれに本質的な文言で規定されているような尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法に、そして請求項12に規定されているようなベントガスの分析のためのシステムを装備する尿素プラントに関する。
【0018】
本発明の好適な追加特徴は、従属請求項に記されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、尿素プラントのベントガスの分析のための分光分析技術、詳しくはラマン分光器が使用される。
【0020】
ラマン分光器は、分子の振動および回転エネルギーに基づく分析技術であり、試料に存在する化学種とその相対量とを一意的に特定することが可能である。
【0021】
ラマン分光器では、分析される試料は、一般的にレーザ源から発せられる単色の電磁放射に露出され、試料により散乱された放射の周波数が検出および分析される。
【0022】
試料の電子分子と相互作用することにより、電磁放射は、入射する放射の散乱を結果的に生じる分子の振動および回転エネルギーの変化を誘発する。散乱した放射を分析することにより、エネルギーレベルの異なる構成要素を特定することが可能である。
【0023】
ラマン分光分析は、特殊な機器(ラマン分光器)により実施される。
【0024】
今日まで、本質的に目的に適していないラマン分光器の構造的限界のため、爆発性混合物を発生させる危険のあるベントガスの分析については特に、この分析技術は尿素プラントでこれまで使用されていないようである。
【0025】
本発明の発明者らは、ラマン分光器に関連する以下の問題を特定した。
a)ラマン分光器を装備する光ファイバプローブは、比較的低い設計温度(明記すると約80℃)を有し、そのため機器には、プローブとの接触で機械的損傷を起こしうる高い温度試料が提供されない。分析される尿素プラントのベントガスは、非点火条件を回復するための蒸気その他の注入の後は特に、ラマン分光器のプローブの損傷閾値より決定的に高い温度を有する。
b)分析される尿素プラントのベントガスは、アンモニアを同伴する凝縮水を含有する。それゆえ分析されるガス流には凝縮性のアンモニア種が存在し、これは水に吸収されてプロセスのメインガス流において再び沈降する。結果的に、ラマン分光法により分析される試料は、分析される構成要素の一つの定量沈降に影響され、測定の精度を低下させる。
【0026】
本発明は、尿素プラントにおいて爆発性混合物形成の危険のあるベントガスを、プラント稼働状態で実質的には連続的に、または高い試料採取頻度で分析することを可能にする。
【0027】
例えば、爆発の可能性のある混合物の形成を回避するため分析対象のガス流への蒸気(または別の制御流体)の注入の後で、尿素プラントの正常稼働条件を逸脱した場合でも、全体として信頼できる結果が得られるように適切に設計および設置されるラマン分光器により、分析が実行される。
【0028】
本発明によれば、ラマン分光器の上流に配置されて温度制御システムを備える試料採取インタフェースとラマン分光器が関連している。
【0029】
本発明は、以下の主な利点の実現を可能にする。
‐分析されるガス流へ蒸気または別の制御流体を注入するケースにおいても、いかなる作動条件でも正確で信頼できる質的と量的の両方の分析結果が得られる。蒸気または別の制御流体の含量は、ガスクロマトグラフ分析で起こるようなその熱力学的挙動ではなく化学種の原子/立体的特性に基づくので、ラマン分光器により行われる測定はこれらに影響されない。
‐概して、分析はプラント稼働状態で可能であり、プラントの正常な作動条件からの逸脱、および/または、圧力、温度、そして化学種の相対含量の偏差が存在しても、機器の測定精度と機械的完全性とを保証する。
‐ガスクロマトグラフで行われる測定に関しては、反応時間が短く、測定がより正確であり、保守の費用が低下する。
‐分析されるガス流が中で循環し、簡単な分岐管により接続されるメインパイプにラマン分光器が直接に載置される。分析されるガス流を遠隔位置へ運ぶための補助的な配管は必要とされない。
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面の図を参照すると、以下の非限定的な実施形態の説明から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明によるベントガスの分析のためのシステムを装備する尿素生成プラントの概略図である。
図2】本発明による尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、尿素プラント1で生成されるベントガスの分析のためのシステム2を装備する尿素プラント1あるいは尿素の生成のためのプラントを、概略的で単純化された形で示す。
【0033】
尿素プラント1は、そこで具現される尿素生成プロセスとともに、幾つかのタイプの一つでありうる。
【0034】
本願では、周知の「ズナムプロゲッティ」技術による尿素生成プラント/プロセスを一例として参照する。本発明が他の尿素生成プラント/プロセスにも適用可能であることは言うまでもない。
【0035】
示されている非限定的な構成では、必須の構成ではないが、尿素プラント1は、アンモニアと二酸化炭素とからの尿素合成の反応が起こる尿素合成反応器4と、反応器4で生成された尿素溶液が未反応アンモニアと二酸化炭素と水との除去により徐々に濃縮されて、回収後の構成要素が再循環する回収セクション5,6,7、詳しくは高圧回収セクション5、中圧回収セクション6、そして低圧回収セクション7と、プロセス凝縮物(基本的には水)のための処理セクション9に接続される真空濃縮セクション8と、例えば整粒機または造粒塔を包含する仕上げ/凝固セクション10とを包含する。
【0036】
反応器4には、それぞれの供給ライン12,13を通してNH3およびCO2が供給される。メイン尿素ライン14は、反応器4の生成物出口を回収セクション5,6,7に、そして濃縮セクション8に接続する。
【0037】
回収回路16は、回収セクション5,6,7により回収された未反応の構成要素を反応器4へ再循環させるため、回収セクション5,6,7と濃縮セクション8とを互いに、そしてNH3供給ライン12に接続する。
【0038】
それ自体が周知である様々なセクションとその間の接続ラインの構成要素は、詳しく図示および説明されない。
【0039】
例えば、必然的ではないが、メイン尿素ライン14は、アンモニアと二酸化炭素からの尿素合成反応が起こる反応器4、未変換のNH3とCO2とカルバミン酸アンモニウムとが回収され、回収回路16を通って反応器4へ再循環される高圧回収セクション5の除去装置、カルバミン酸が分解されてNH3とCO2を生じてこれらが回収回路16を通って反応器4へ再循環される中圧回収セクション6の中圧分解装置と低圧回収セクション7の低圧分解装置、低圧回収セクション7を離れた尿素溶液が整粒または造粒のため仕上げ/凝固セクション10の整粒機または造粒塔へ送られる前に濃縮される濃縮セクション8の一つ以上の交換器/濃縮器を、(それぞれのラインセグメントにより)直列に接続する。
【0040】
尿素プラント1、詳しくは回収セクション5,6,7と濃縮セクション8では、アンモニアも含有するベントガスが生成される。システム2は尿素プラント1に接続されて、尿素プラント1で生成された少なくとも一つのベントガス流を受容し分析する。
【0041】
示されている非限定的な例では、必須構成ではないが、中圧回収セクション6から来た、詳しくは中圧分解装置を離れてメインパイプ20で搬送されるベントガスをシステム2が受容し分析する。
【0042】
とりわけ、このベントガスは水素と酸素とを含有するので爆発性混合物が形成され、そのため、爆発性混合物の形成のための潜在的に危険な条件をシステム2が検出すると、(制御室の制御部を介して操作者により手動で、あるいは制御ユニットにより自動で)操作される制御流体、例えば蒸気や別の流体を注入するための注入装置21にメインパイプ20が接続される。
【0043】
尿素プラント1で生成された他の流出物および/またはガス流(すでに指摘されているように、例として本願に示されるものと異なる構成を有していてもよい)を分析するのにシステム2が使用されうることはやはり言うまでもない。それゆえシステム2は、例として本願に説明および図示されたものと異なる位置ばかりでなく、異なるタイプの尿素プラントに載置されうる。
【0044】
図2も参照すると、システム2は、ラマン分光器22と、分析されるベントガスが循環するメインパイプ20に分光器22を接続する試料採取インタフェース23とを包含する。
【0045】
分光器22そのものは周知の機器であり、それゆえ簡易化のため、詳しく説明も図示もしない。
【0046】
基本的に、分光器22は、少なくとも一つの電磁放射源、詳しくは分析室で分析される試料に単色電磁放射を向けるレーザ源と、試料により散乱された放射を受容する少なくとも一つのプローブ、詳しくは光ファイバプローブと、試料により散乱された放射に存在する周波数を分析する分析器とを包含する。
【0047】
分光器22はメインパイプ20の上方に載置されると有利である。
【0048】
試料採取インタフェース23は、メインパイプ20を分光器22に接続してメインパイプ20から分光器22へ連続試料ガス流25を搬送する試料採取導管24と、温度制御装置27により制御され、導管24の少なくとも一つの熱処理部分28に作用して導管24内を循環している試料流25の温度を調節する温度調節装置26と、部分28での試料流25の冷却の後で凝縮した試料流25の凝縮物画分をメインパイプ20へ戻す還流装置29と、メインパイプ20に戻される凝縮可能種の量を計算するように構成される処置制御ユニット30とを包含する。
【0049】
導管24はメインパイプ20を分光器22に接続する。詳しく記すと、導管24は、メインパイプ20に嵌着したコネクタ31に、そして分光器22の入口32に、より正確には分光器22の分析室に接続される。
【0050】
導管24はメインパイプ20から垂直に離間する、および/または、実質的に垂直に、もしくはコネクタ31から上向きに傾斜して延在すると有利である。
【0051】
温度調節装置26は幾つかのタイプのうちの一つでありうる。概して、装置26は、試料流25の温度が高過ぎて分光器22、詳しくはその光ファイバプローブの構成要素を損傷させるかもしれない時に、その温度を低下させるように構成される。
【0052】
例えば、装置26は、導管24の部分28の周りに配設されて冷却流体(例えば空気または水)が中を循環する冷却回路33と、冷却回路33で冷却流体を循環させるため温度制御装置27により制御される少なくとも一つの循環部材34とを包含する。
【0053】
温度制御装置27(分光器22の処置制御ユニット30に一体化されてもよい)は、好ましくはいわゆる「デュアルループ」タイプであり、導管24での試料流25の循環方向において導管24の部分28の上流と下流にそれぞれ配置される一対の温度センサ35,36(例えば、温度センサ35,36は導管24の入口と分光器22の入口32にそれぞれ配設される)に接続され、メインパイプ20を通って尿素プラント1から出るガス流と、分光器22で分析される試料流25のそれぞれの温度を検出する。
【0054】
詳しく記すと、温度制御装置27は比例・積分・微分タイプの制御装置である。
【0055】
温度制御装置27は、分光器22の構成要素(詳しくは単数または複数の光ファイバプローブ)が損傷する閾値温度より低い温度(例えば70℃)に設定される。
【0056】
装置26は、部分28と冷却回路33の(常に試料流25の循環方向について)下流で導管24に配置され、分光器22へ流入する試料流25の飽和条件を回避するため冷却回路33により誘発される冷却の後で試料流25の温度を(数度、明記すると1~5℃)上昇させるように温度制御装置27により、および/または、処置制御ユニット30により操作される加熱要素37、例えば電気抵抗も包含すると有利である。
【0057】
装置26により誘発される冷却は、試料流25での化学種の凝縮を引き起こす。凝縮物画分は、還流装置29を通ってメインパイプ20へ戻る。例えば、還流装置29は、導管24の収集部分38を包含する。この部分38はメインパイプ20の上方で導管24の熱処理部分28の下方に載置され、重力の作用により凝縮物画分が下のメインパイプ20へ落下するように実質的に垂直であるかメインパイプ20の方へ傾斜している。
【0058】
処置制御ユニット30は、尿素プラント1で具現されるプロセスの熱力学的モデルとこのプロセスの動作パラメータとに基づき、適切な計算アルゴリズムを介してメインパイプ20へ再循環される凝縮可能種の量を計算するように構成される。
【0059】
任意であるが、システムは、分光器22の入口32または導管24に載置されて、温度制御装置27の故障/誤作動の際に分光器22への試料流25の提供を中断する自動緊急遮断バルブ39も含む。バルブ39は、(予設定された危険閾値を上回る)非制御熱上昇の後で自動的に介入して分光器22を保護する。
【0060】
分光器22、より具体的にはその分析室は、戻し導管41に接続される出口40を有する。戻し導管41はメインパイプ20に接続され、詳しく記すと、メインパイプ20内で循環するベントガスの循環方向においてコネクタ31の下流でメインパイプ20に嵌着され、分光器22を通過した試料流25をメインパイプ20へ戻す。
【0061】
使用時に、尿素プラント1で生成されたベントガスにより構成されるガス流は、メインパイプ20内で循環する。
【0062】
ガス流は、純粋に例として挙げると、窒素、酸素、アルゴン、メタン、アンモニア、水素、そして水を含有し、およそ50~170℃の温度を有する。
【0063】
ガス流の一部は導管24内を循環し、好ましくは連続的に分光器22へ送られる試料流25を構成する。
【0064】
試料流25の温度が(尿素プラント1の正常な動作条件での)予設定の温度閾値より低い場合に、温度制御装置27は温度調節装置26を作動させず、試料流25は分光器22に到達する。
【0065】
分光器22は、試料流25について質的および量的な分析を実施する。
【0066】
分析で爆発性混合物の形成の可能性のある条件を検出した場合に、システム2はアラーム信号を発し、これに基づいて、メインパイプ20内で循環するガス流へ蒸気(明記すると200~250℃の)または別の制御流体を注入するため注入装置21が(手動または自動で)操作される。
【0067】
蒸気または別の制御流体の注入は、ガス流の温度、ゆえに試料流25の温度も上昇させるとともにその組成を変化させるが、システム2は、変化後の条件でも効果的に正しく作動するように構成されている。
【0068】
事実、温度制御装置27が、温度センサ35,36を介して、閾値温度を上回る試料流25の温度を検出した場合に、温度制御装置27は温度調節装置26を作動させて試料流25を冷却し、試料流25の温度を閾値温度より下まで戻す。
【0069】
それから試料流25の飽和条件を回避するため、装置26が加熱要素37を介して介入し、前に冷却された試料流25をわずかに(数度、明記すると1~5℃)加熱する(いずれにしても、閾値温度を下回る温度を維持する)と適切である。
【0070】
試料流25の凝縮物画分は、還流装置29を通してメインパイプ20へ落下する。
【0071】
システム2は試料流25を分析する。機器の測定および応答時間に応じて、分光器22は所定の時間間隔で測定を行うか、実質的に連続的に作動する。試料流25は、導管24内を移動して分光器22に到達した後で、より具体的には(好ましくは)、メインパイプ20内で循環するベントガスの循環方向においてコネクタ31の、または試料流25がメインパイプ20から取り出されて分光器22へ送られる試料採取点の下流で、戻し導管41を通ってメインパイプ20へ戻る。
【0072】
爆発性混合物の形成の可能性のある条件が解消されたことをシステム2が検出すると、システム2は全解除信号を発し、これに基づいてメインパイプ20への制御流体(蒸気その他)の注入が(手動または自動で)中断される。
【0073】
最後に、尿素プラントのベントガスの分析のためのシステムおよび方法と、説明および図示された尿素プラントに関して、添付の請求項の範囲を逸脱することなくさらなる変更および変形が行われうることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 尿素プラント
2 システム
4 尿素合成反応器
5 高圧回収セクション
6 中圧回収セクション
7 低圧回収セクション
8 真空濃縮セクション
9 処理セクション
10 仕上げ/凝固セクション
12,13 供給ライン
14 メイン尿素ライン
16 回収回路
20 メインパイプ
21 注入装置
22 ラマン分光器
23 試料採取インタフェース
24 試料採取導管
25 連続試料ガス流
26 温度調節装置
27 温度制御装置
28 熱処理部分
29 還流装置
30 処置制御ユニット
31 コネクタ
32 入口
33 冷却回路
34 循環部材
35,36 温度センサ
37 加熱要素
38 収集部分
39 自動緊急遮断バルブ
40 出口
41 戻し導管
図1
図2