(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】スクラップ浸漬装置
(51)【国際特許分類】
F27D 27/00 20100101AFI20220328BHJP
F27B 3/18 20060101ALI20220328BHJP
C22B 21/00 20060101ALN20220328BHJP
C22B 9/16 20060101ALN20220328BHJP
C22B 7/00 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
F27D27/00
F27B3/18
C22B21/00
C22B9/16
C22B7/00 F
(21)【出願番号】P 2019512005
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(86)【国際出願番号】 US2017049029
(87)【国際公開番号】W WO2018044842
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-07-31
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257689
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン リチャード エス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルド クリス ティー
(72)【発明者】
【氏名】テトコスキー ジェイソン
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-255770(JP,A)
【文献】特開昭61-029675(JP,A)
【文献】特表2015-514954(JP,A)
【文献】特開平07-301490(JP,A)
【文献】米国特許第06217823(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 27/00
F27B 3/18
C22B 21/00
C22B 9/16
C22B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属の渦を調節する方法であって、
溶融金属にアルミニウムスクラップが追加されるチャージウェルであって、前記チャージウェルは頂部開口形チャンバを有し、前記チャンバは、側壁または底壁に配置され且つポンプウェルと流体連通状態にある入口と、前記底壁に設けられていてドロスウェルと流体連通状態にある出口とを有する、前記チャージウェルと、前記出口の上方で前記溶融金属内に吊り下げることができる渦制御ダイバータ
と、を用意するステップを含み、前記渦ダイバータを前記出口の上方の所望の距離のところに位置決めするステップを含み、前記溶融金属を前記入口中に移動させて前記渦を前記
チャンバ内に形成するステップを含み、前記溶融金属は、ポンプを作動させることによって前記入口中に動かされ、前記
アルミニウムスクラップを前記ダイバータと前記
チャンバとの間の領域内に配置するステップを含
み、
前記アルミニウムスクラップを前記渦ダイバータと前記チャンバの内壁との間で溶融金属浴の表面上に付着させて、前記アルミニウムスクラップの前記チャージウェル内の溶融金属の表面上の滞留時間を長くするとともに、前記アルミニウムスクラップに含まれる湿気および加工流体を前記アルミニウムスクラップの表面から蒸発させて、ドロスフォームの生成を減少させる、方法。
【請求項2】
炉および渦生成スクラップ浸漬ウェルを含む溶融金属スクラップ浸漬システムであって、
溶融金属にアルミニウムスクラップが追加される浸漬ウェルであって、前記浸漬ウェルは頂部開口形チャンバを有し、前記チャンバは、側壁または底壁に配置され且つポンプウェルと流体連通状態にある入口と、前記底壁に設けられていてドロスウェルと流体連通状態にある出口とを有する、前記浸漬ウェルを備え、前記浸漬ウェルは、アルミニウムスクラップを浸漬させる溶融金属の流れを生じさせるために前記チャンバの形状を利用し、前記浸漬ウェルは、前記出口の上方に吊り下げられるとともに前記
浸漬ウェル内で循環する溶融金属の浴中に浸漬可能に差し向けられたダイバータを収容し、前記ダイバータの垂直位置は吊り下げ機構によって調整可能であ
り、前記アルミニウムスクラップを前記ダイバータと前記浸漬ウェルの前記チャンバの内壁との間で溶融金属浴の表面上に付着させて、前記アルミニウムスクラップの前記浸漬ウェル内の溶融金属の表面上の滞留時間を長くするとともに、前記アルミニウムスクラップに含まれる湿気および加工流体を前記アルミニウムスクラップの表面から蒸発させて、ドロスフォームの生成を減少させる、システム。
【請求項3】
前記ダイバータは、円筒形、ピラミッド形、または円板形状である、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記ダイバータは、開口頂端および開口底端のうちの一方または両方を有するドラムから成る、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記ダイバータは、前記
浸漬ウェルの出口の直径に実質的に等しくまたは該直径よりも大きい直径を有する、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
前記
浸漬ウェルとのオーバーラップ位置に設けられたフード要素と、前記フード要素内の温度を測定するとともに前記温度が約1200°Fを下回ったときにバーナを自動的に作動させる熱電対とを更に含む、請求項2記載のシステム。
【請求項7】
前記浸漬ウェルから延びるとともに前記ダイバータに係合して前記ダイバータに安定性を提供する少なくとも1つの突出部を更に含む、請求項2記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示の実施形態は、スクラップ浸漬装置に関する。本開示内容の技術は、一般に、金属片の溶融または溶解に関し、特に、軽量形金属原料を溶融する反射炉システムに関する。本明細書で用いられる「金属」という用語は、任意の金属または金属の組み合わせ、またはアルミニウム、銅、鉄、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの合金を意味している。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2016年8月29日に出願された米国特許仮出願第62/380,582号および2017年4月21日に出願された米国特許仮出願第62/488,235号の権益主張出願であり、これら米国特許仮出願の各々を参照により引用し、その開示内容を本発明の一部とする。
【背景技術】
【0003】
金属、例えばアルミニウムの製造、加工、および再生利用では、通常、高い表面積と重量の比を有する金属原料(軽量形原料とも呼ばれている)、例えばスクラップ原料の溶融が必要である。かかる材料の例としては、圧延インゴットのフライス加工で生じたスカルパーチップ(scalper chip)、旋盤または鋸引き作業から生じたダライ粉または削り屑、およびアルミニウム板、押し出し物、または鋳造形物を再生利用するために用いられるクラッシャまたはシュレッダからの生成物が挙げられる。材料を典型的には、溶解炉、例えば回転炉または反射炉の溶解チャンバ内で溶融する。
【0004】
軽量形アルミニウムスクラップは、効率的に溶融するのが本来的に困難であり、と言うのは、アルミニウムおよびその合金は、酸化しやすいからである。酸化のプロセスは、価値のある金属であるアルミニウムから表面を比較的価値の低い非金属鉱物である酸化アルミニウムに変える。保護されていないアルミニウム表面は、周囲温度状態であっても空気中で迅速に酸化する。アルミニウムが溶融するのに足るほど高い温度にさらされると、酸化プロセスは、大幅に加速される。かくして、アルミニウムがかかる温度で空気に当てられた場合、酸化は、薄い断面を備えたアルミニウム、すなわち、高い表面積と重量の比を有するアルミニウムを完全に消費する場合がある。しかしながら、この薄肉スクラップ片を溶融することは、困難であり、と言うのは、薄肉スクラップ片が溶融金属上に浮遊する(「浮遊スクラップ」)ことにより、溶融金属中への迅速な浸漬が極度に阻まれるからである。したがって、溶融は、典型的には、軽量形スクラップを溶融金属の表面下に積極的に浸漬させるステップを含む。
【0005】
金属スクラップを溶融金属中に浸漬させるために種々の装置が用いられている。典型的には、ハース(炉床)内に収容された溶融金属をポンプウェル内に収容されたポンプによって循環させる。一設計例では、溶融金属をポンプによってハースから引き出し、そしてポンプウェルからスクラップ装入ウェルに、そしてドロスウェルに循環させ、そしてハースに戻す。スクラップ金属、例えばアルミニウムがチャージウェル内の溶融金属に追加される。
図1を参照すると、アルミニウム再生利用炉10が示されている。炉10は、主要コンポーネントとしてのハース12を有し、このハースは、例えば、ガスもしくは油バーナまたは当該技術分野において知られている任意他の手段により加熱される。ハース12に隣接して且つこのハースと流体連通関係をなして(代表的には、浸漬アーチ路を介して)ポンプウェル14、チャージウェル16およびドロスウェル18で構成された一次再生利用領域が設けられている。図示していないが、ハース12の壁は、ポンプウェル14に開口し、ポンプウェルは、チャージウェル16に開口し、チャージウェルは、ドロスウェル18に開口し、ドロスウェルは、ハース12に開口し、それにより矢印で示された循環パターンの実現が可能である。ポンプウェルは、当業者に知られている任意形式の機械式溶融金属ポンプを有するのが良い。変形例として、ウェルおよびポンプに代えて例えば電磁ポンプを用いても良い。溶融金属ポンプは、溶融金属をハース12からチャージウェル16に循環させ、チャージウェルにおいて、再生利用されるべき金属のスクラップチップがメルトの表面上に堆積する。チャージウェル16からの溶融金属は、ドロスウェル18内に流れ、このドロスウェル内において、ドロスの形態をした不純物が表面からすくい取られ、その後、メルトがハース12内に流れて戻る。
【0006】
溶融金属浴の表面下へのスクラップ金属の浸漬を容易にするためにチャージウェル内には様々な装置が用いられた。3つの主要な形式のシステムが存在する。
【0007】
第1の形式は、主としてロータで構成された機械的システムを含み、かかるロータにより、頂面からの溶融金属の流れが生じる。これら装置の例が米国特許第3,873,305号明細書、同第3,997,336号明細書、同第4,128,415号明細書、同第4,930,986号明細書、および同第8,449,814号明細書に示されている。次に
図2を参照すると、従来型スクラップメルタ(scrap melter)システムおよび循環ポンプ90およびスクラップメルタ92を含む。溶融金属浴2を収容した容器21が一般に3つのコンパートメントに分割されている。第1のコンパートメント1および(ポンプウェルと呼ばれる)は、典型的には、循環ポンプ90を収容している。第2のコンパートメント3(チャージウェルと呼ばれる)は、典型的には、スクラップメルタ92を収容している。第3のコンパートメント7(ドロスウェルと呼ばれる)は、溶融プロセスからのドロスおよび酸化物を溶融金属2からすくい取ることができる。循環溶融金属2は、コンパートメント1とコンパートメント3とコンパートメント7との間を動き、そして、好ましくは、容器21全体にわたって循環する。スクラップSは、コンパートメント3中に導入され、このスクラップは、スクラップメルタ92のインペラ94によって生じる下向きのドロー(draw)によって浸漬され、インペラ94は、スクラップを溶融金属浴2中に下方に引く。
【0008】
第2の形式のシステムは、スクラップを物理的にメルト表面下に物理的に押すために機械的装置(例えば、いわゆる象の足(elephant foot)/ウェルウォーカ(well-walker))を用いている。これらシステムは、一般に、複数の垂直に動くことができる「フィート(feet)」を含み、かかるフィートは、昇降して溶融金属の表面上に載っているスクラップ金属をこの表面の下に物理的に押す。
【0009】
第3の形式のシステムは、スクラップ片をチャージウェル内に浸漬させる金属の流れを生じさせるためにロータの回転なしでチャンバの形状を利用している。特に、チャージウェル内への溶融金属の流れは、チップを頂面から浴中に引き込む渦を生じさせるように操作される。これらシステムは、例えば米国特許第3,955,970号明細書、同第3,984,234号明細書、同第4,286,985号明細書、同第6,036,745号明細書、同第6,217,823号明細書、および米国特許出願公開第2015/0102536号明細書に示されており、これら米国特許の各々を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。次に
図3を参照すると、ポンプ20がポンプウェル14内に位置決めされており、このポンプは、溶融アルミニウムをハースから引き出してこれをチャージウェル16中に押し込む。具体的に説明すると、インペラ23の回転により溶融アルミニウムが浴24からポンプ20中に引き込まれ、そしてこれが出口26を通り、通路28を上方に流れ、そして入口30を通ってチャージウェル16中に至る。溶融アルミニウムは、チャージウェル16内の傾斜路32を上方に流れ、内側コラム35の内縁34からあふれて空所36中に入り、そして出口38を通って出る。傾斜路32の前縁44は、入口30に隣接して位置決めされるのが良い。チャージウェル16内の溶融金属の流れは、渦の形状を作り、この渦の形状は、金属スクラップ片を効果的に浸漬させる。この第3のシステムは、一般に、渦生成装置と呼ばれる場合がある。
【0010】
チャージウェル内に可動部品が設けられていない状態で溶融金属をポンプからチャージウェル中に圧送する渦生成装置の欠点の1つは、ポンプがインペラを回転させる速度を調節するためには渦の速度および深さを調節するしかないということにある。渦のこの変化は、ポンプの圧送能力によって制限される場合があり、ポンプは、意図した渦速度および深さを達成するためには大型すぎるか小型すぎるかのいずれかである。加うるに、ポンプの基部内のインペラの回転速度を増大させることによって渦を調節することは、不都合であり、と言うのは、この調節には別の渦が望ましい場合にポンプを作動するのに多くのエネルギーが必要になるからである。
【0011】
別の欠点は、汚染状態の金属スクラップ片を迅速すぎるほど浸漬させる渦生成装置から生じる。特に、チャージウェル内で再生利用されている金属スクラップ片は、部品の機械加工中に用いられる加工液(例えば、切削油および/または水)の残余物を含む場合がある。加工液は、スクラップ片が迅速すぎるほどに浸漬されてドロスウェルに運ばれる場合に問題となる場合がある。さらに、望ましくない量のドロスフォームがドロスウェル内で生じる場合がある。
【0012】
理論に束縛されるものではないが、フォームは、加工流体の燃焼中の切削油および蒸発中の水から生じた浸漬ガスの結果であると考えられる。さらに、浸漬状態の加工流体は、CxHx、CO2およびH2Oを含む場合があり、これらは、アルミニウムと反応して酸化物およびドロスを生じさせる場合がある。フォームが定期的に除去されない場合、このフォームは、ドロスウェル内での熱損失に起因して凝固する場合があり、そして機械的に取り扱うのが極めて困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3,873,305号明細書
【文献】米国特許第3,997,336号明細書
【文献】米国特許第4,128,415号明細書
【文献】米国特許第4,930,986号明細書
【文献】米国特許第8,449,814号明細書
【文献】米国特許第3,955,970号明細書
【文献】米国特許第3,984,234号明細書
【文献】米国特許第4,286,985号明細書
【文献】米国特許第6,036,745号明細書
【文献】米国特許第6,217,823号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0102536号明細書
【発明の概要】
【0014】
本発明の種々の細部が基本的な理解を提供するために以下において概要説明されている。この概要説明は、本発明の多方面にわたる概観ではなく、また、本発明の或る特定の要素を識別しようとするものではなく、そしてまた、その範囲を定めようとするものでもない。これとは異なり、この発明の概要の主目的は、以下に提供される詳細な説明に先立って単純化された形態での本発明の幾つかの概念を提供することにある。
【0015】
第1の実施形態によれば、溶融金属の渦を調節する方法が提供される。この方法は、溶融金属を収容するための内面および前記内面の上方端部分のところで固体金属を受け入れる開口部を有する容器内で働く。出口通路が内面から下方に延びている。渦制御ダイバータが設けられ、この渦制御ダイバータは、出口通路の上方で溶融金属内に吊り下げられるのが良い。入口開口部が内面を貫いている。この方法は、渦ダイバータを出口通路の上方の所望の距離のところに位置決めする。溶融金属は、容器の入口開口部に入って容器内に渦を形成する。溶融金属は、ポンプを作動させることによって容器入口開口部中に移動する。固体金属がダイバータと内面との間の領域内に入れられる。
【0016】
別の実施形態によれば、炉および渦生成スクラップ浸漬ウェルを含む溶融金属スクラップ浸漬システムが提供される。渦生成スクラップ浸漬ウェルは、ウェルの上方に吊り下げられるとともにウェル内で循環する溶融金属の浴中に浸漬可能に差し向けられたダイバータを収容している。ある特定の実施形態では、ダイバータは、円筒形である。ある特定の実施形態では、ダイバータは、開口頂端および開口底部のうちの一方もしくは両方または2つの閉鎖端を有するドラムから成る。
【0017】
第3の実施形態によれば、炉およびスクラップ浸漬ウェルを含む溶融金属スクラップ浸漬システムが提供される。このシステムは、スクラップ浸漬ウェルの頂部開口に対してオーバーラップ位置に設けられたフード要素を更に含む。フードは、頂部開口を少なくとも実質的に封止する。フード要素は、スクラップ片送りシュートおよび溶融スクラップ片の表面から蒸発した蒸気を含む炭素を燃焼させて主として水を生じさせることができる点火装置を有する。
【0018】
別の実施形態によれば、上述の第1から第3の実施形態の特徴のうちの任意のものを互いに組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明は、図示するとともに説明する新規な部品、構造、配置、組み合わせおよび技術改良にある。本明細書に組み込まれたその一部をなす添付の図面は、本発明の一実施形態を示すとともに本明細書と一緒になって本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】先行技術の溶融金属再生利用炉の略図である。
【
図2】先行技術のロータ利用チャージウェルの断面図である。
【
図3】先行技術の渦生成装置チャージウェルの断面図である。
【
図4】本開示内容のチャージウェルの断面斜視図である。
【
図5】別のチャージウェルの部分想像斜視図である。
【
図6】更に別のチャージウェルの部分想像側面図である。
【
図7】
図6のチャージウェルの部分想像平面図である。
【
図8】本開示内容のVOC除去フードの斜視図である。
【
図9】別のチャージウェル形態の断面斜視図である。
【
図10】
図9のチャージウェルの部分想像斜視図である。
【
図13】
図10のチャージウェルの第1の部分想像側面図である。
【
図14】
図10のチャージウェルの第2の部分想像側面図である。
【
図15】本開示内容の実施形態で用いるのに適した傾斜路インサートの上から見た斜視図である。
【
図16】
図15の傾斜路インサートの下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の現時点において好ましい実施形態を詳細に参照し、この実施形態の一例が添付の図面に示されている。本発明を好ましい実施形態と関連して説明するが、理解されるように、本発明をその実施形態に限定するものではない。それどころか、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる本発明の精神および範囲に含まれる全ての変形例、改造例、および均等例を含むものである。
【0022】
本発明は、典型的には金属再生利用プロセス、例えば、アルミニウムの再生利用で用いられる形式のスクラップ浸漬システムに関する。金属の再生利用において、処理および加工のためにスクラップ片を溶融することが必要である。アルミニウムスクラップ片の大部分は、アルミニウムスクラップ片の形成手段である機械的付形または造形作用、例えばシェービング、穴あけおよび冷間圧延の結果として薄肉のものである。薄肉スクラップ片を溶融することは、薄肉スクラップ片が溶融金属上に浮遊すること(「浮遊スクラップ」)によって溶融金属中への迅速な浸漬が著しく阻まれるという理由で特に困難である。薄肉スクラップ片の溶融は、難題でもあり、と言うのは、多くのスクラップ片には加工流体が塗被されているからである。加工流体は、炭化水素および水を含む場合があり、これらは各々、溶融金属加工において問題である。さらに、炭化水素および水は各々、ドロスフォームの望ましくない生成の原因となる場合がある。
【0023】
本開示内容のチャージウェルは、耐熱材料で構成された壁を含む頂部開口形チャンバを有するのが良い。黒鉛およびセラミックが適当な耐熱材料の良好な例である。チャンバは、側壁または底壁に配置されかつポンプウェルと流体連通状態にある入口および底壁に設けられていてドロスウェルと流体連通状態にある出口を有する。本明細書で用いられるベース(または底)壁は、チャンバを形成する内側内面を意味している。さらに、添付の図に示されているインサート本体全体の「出口」は、出口がチャンバからの底部出口とインサート全体からの出口との間で角度をなしている結果としてインサート本体の側壁からのものである。要するに、本明細書で用いられる「底部出口」という用語は、溶融金属がチャンバを出る場所に関して用いられている。代表的には、チャンバは、チャンバベース壁の出口を構成する内側コラムを有する。一般に、チャンバの内部形態を底部または下側壁入口および底部出口として説明することができ、傾斜路が内側コラムと側壁との間に形成されている。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態に関して
図4を参照する。この実施形態では、スクラップ溶融装置100が耐火材のブロック102で構成されるのが良く、この耐火材のブロックは、既存のチャージウェルの寸法と合致する比較的厳密な公差を提供するのに適したサイズで構成されているのが良い。ブロック102は、硬化材料、例えばアルミニウム‐シリカ耐火材または当業者に知られている他の鋳造可能な耐火材で構成されるのが良い。鋳造本体の表面は、熱処理に先立って窒化硼素で処理されるのが良い。
【0025】
ブロック102は、全体として円筒形の側壁118、傾斜路121を備えた底またはベース120、ならびに出口124および出口ダクト(図示せず)に通じる中央に設けられた空所123を形成する内側柱状体122を含むチャンバ116を有する。
【0026】
円板132および吊り下げロッド134を含むダイバータまたはそらせ要素130がチャンバ116内に吊り下げられている。吊り下げロッドは、任意適当な足場材(図示せず)に固着されるのが良い。ダイバータまたはそらせ要素130は、少なくとも垂直に、オプションとして水平にその位置の調節を容易にする装置、例えばフォークリフトまたは他の巻き上げ機構体(
図7のリフト337を参照されたい)によって同様に吊り下げられるのが良い。
【0027】
ダイバータまたはそらせ要素130は、耐火材、例えば黒鉛またはセラミックで構成されるのが良い。ダイバータは、この全体的質量を増大させるとともにチャンバ内を流れている溶融材料中の電流がダイバータを物理的に動かすのを阻止するようダイバータ内に鋳造された高密度化材料(例えば、鉛)を更に含むのが良い。変形例として、ダイバータまたはそらせ要素130は、側壁118および/または内側コラム122から延びる突出部(例えば、137)によってスクラップ溶融装置100に永続的に取り付けられても良い。これら突出部は、好ましくは、チャンバ116回りにかつ空所123中への溶融金属の所望の回転流れに対して最小限の妨害しかもたらさない。
【0028】
ダイバータ130は、空所123の上方の位置でチャンバ116内に位置決めされるのが良い。ダイバータ130は、チャンバ内の溶融金属の高さの下であるが内側コラム122の頂面の上方の高さ位置のところに吊り下げられ、その結果、溶融金属の表面上に浮いているスクラップ金属片が空所123に入るのが阻止されるが、それにもかかわらず、最終的には、ドロスウェルに排出可能である。このように、ダイバータ130は、スクラップ金属片の浸漬を遅らせるよう使用できる。浸漬を遅らせることにより、溶融金属の表面上のこれに対応した滞留時間の増大が得られる。これにより、チャージウェルの上方における大気中への加工流体の蒸発の増大が可能であるとともにドロスフォーム生成が減少する。
【0029】
ダイバータは、溶融金属スクラップをダイバータとチャンバの内壁との間で溶融金属浴の表面上に付着させることができるようにすることによって機能する。チャンバ内で生じる渦の有効性は、チャンバの中心に近づくにつれて効率が増大することが判明した。この点に関し、金属スクラップチップをダイバータとチャンバの壁との間に付着させることにより、チップがスクラップ浸漬チャンバから出るのを遅くすることができ、それによりチャージウェル内の溶融金属の表面上の滞留時間が長くなるとともに湿気および加工流体をスクラップ材料の表面から蒸発させることができ、その後、スクラップ材料は、溶融金属中に浸漬される。ある特定の実施形態では、ダイバータ円板に穴または通路を設けることが望ましい場合がある。さらに、有孔ダイバータ(円板またはドラム)は、所望の溶融金属流量を加減するのを助けることができる一方で、チャージウェル内のスクラップ滞留時間を依然として増大させることができる。
【0030】
次に
図5を参照すると、ダイバータ230は、開口頂部および開口底部を備えた円筒形ドラム本体を有することができるということが実現可能である。同様に、頂面または底面のうちの一方または両方は、全体としてまたは部分的に封止されるのが良い。ダイバータは、好ましくは、内側コラム222によって形成された出口に至る開口部の直径以上の外径を有するよう構成される。しかしながら、内側コラム222よりも幾分幅が狭くてもこのようなダイバータが有益な作用効果を有することができるということが想定される。
【0031】
次に
図6および
図7を参照すると、取り付け柱状体333を有する中実ドラム形ダイバータ330が示されている。この関係で用いられる中実という用語は、中空内部を備えた閉鎖頂面および底面を意味し、変形例では、内容積部が開いていない本体を意味している。さらに、ダイバータの外面は、球形である必要はない。例えば、ピラミッド形が採用可能である。同様に、側壁は、必ずしも円筒形である必要はない。これとは異なり、逆さまの円錐形状が採用可能である。要するに、事実上任意の形状をしたダイバータは、スクラップ片がチャンバを出るペースを少なくとも最小限に妨げることができるので有利であることが想定される。
【0032】
ダイバータの一利点は、溶融金属スクラップを浸漬させる速度に対して可変効果をもたらすようダイバータを昇降させることができるということにある。さらに、ダイバータは、出口通路332の頂縁のすぐ上から配置できることが想定され、この場合、渦が著しくまたはダイバータがチャンバ内の溶融金属の表面(MMS)にほんの僅か侵入し、それにより実質的に妨げられる渦が生じることができるようにするレベルまで損なわれるべきである。当然のことながら、金属スクラップ片がチャージウェルの空所に入る速度は、著しく妨げられた状態に対して実質的に妨げられていない状態で高い。これら要素相互間におけるダイバータの調節により、渦の強度およびスクラップ片の関連の取り入れを加減することができる。同様に、ダイバータの不定直径および挿入深さをポンプ速度の可変性と関連して使用することができ、それによりスクラップ浸漬速度、チャージウェル内のスクラップ滞留時間、および全体的な炉ターンオーバー速度を調節することができる。
【0033】
また、ダイバータは、出口通路の直径よりも僅かに小さい直径からチャンバの直径よりも僅かに小さい直径までの範囲にわたる種々の直径を有することができることが想定される。ダイバータの調節可能性により、チャージウェルの表面上に付着するスクラップ片の浸漬速度を加減するという利点が得られる。このように、最適表面滞留時間を生じさせることができ、この場合、加工流体は、大部分がチャージウェル内で蒸発するが、スクラップ片は、相当な金属酸化が起こる前に浸漬される。
【0034】
次に
図8を参照すると、チャージウェル401の上に位置するVOC除去フード400が設けられている。上述したようにダイバータを利用することにより、スクラップ金属片の表面からのVOCの蒸発量を増大させることができる。フード400は、その封入およびその除去をもたらす。さらに、フード400は、このフード内に入っているVOCを燃やすようフード内に火花または火炎を生じさせるのに適したバーナ要素402を有する。フード400は、チャージウェル401内の溶融金属の表面上に導入可能にスクラップ金属片を受け入れるシュート404を更に有する。ドア406もまた、システムをモニタするために提供されるのが良い。好ましくは、フード400は、燃焼後のVOCの除去のための排出ベント408を備える。VOC除去フードは、フード内の温度を測定するとともに温度が約1200°F(648.9℃)を下回ったときにバーナを自動的に作動させる熱電対410を更に有するのが良い。
【0035】
さらに、渦生成装置型のスクラップ浸漬システムと組み合わせて示されているが、フードは、ダイバータなしの渦生成システム、ロータ利用システム、およびウェルウォーカ形システムを含む他のスクラップ浸漬システムに利用できることが予想される。例えば、フードシステムは、次の特許および出願公開、すなわち米国特許第4,592,658号明細書、同第8,246,715明細書、同第8,449,814号明細書、米国特許出願公開第2015/0069679号明細書、同第2015/0102536号明細書および同第2015/0323255号明細書に記載されているスクラップ浸漬装置を含む任意のスクラップ浸漬装置と有利に採用でき、これら米国特許および米国特許出願公開を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。この点に関し、VOC除去フードは、有利には、フードおよびスクラップ浸漬チャンバ内の雰囲気を減少酸素レベルで動作させることができ、その結果、溶融中におけるスクラップ金属片の酸化が減少する。
【0036】
次に変形実施形態を参照すると、そらせ形切頭円錐の上側区分を有するチャンバを備えたスクラップ浸漬装置が
図9~
図14に示されている。
【0037】
循環およびスクラップ溶融は、本システムの2つの重要な責務を担っている。さらに、炉は、1時間に数回(例えば、4~10回)の循環が行われるべきであり、それにより炉内における溶融金属の望ましい滞留時間を得る。循環は、溶融金属ポンプによって達成される。当業者が認識しているように、ポンプの作動速度をシステム内の溶融金属の量および所望の循環頻度に基づいて変化させるべきである。例えば、14インチ(35.6cm)径のインペラを有する典型的なポンプは、1時間当たり2,000,000ポンド(907,180kg)の溶融アルミニウムを循環させるのに約350RPMで作動する必要がある。しかしながら、炉システム内の溶融金属の量は、最終の鋳造計画およびかかる鋳造計画内の時点に基づいて様々であって良い。
【0038】
また、当業者であれば認識されるように、ポンプの作動速度は、スクラップ浸漬チャンバの特性に影響を及ぼす。さらに、ポンプが高速で作動することにより溶融金属は、スクラップ浸漬チャンバの壁沿いにかなり上昇する。高い金属レベルは、望ましくない場合があり、しかもドロス生成をもたらす乱流を生じさせる場合がある。本発明のスクラップ浸漬チャンバは、高いポンプ速度と低いポンプ速度の両方で動作するのに適したシステムを提供する。例えば、スクラップ浸漬チャンバは、約750,000ポンド(340,193kg)から約3,000,000ポンド(1,360,770kg)までの範囲にわたる溶融金属流量を処理することができる寸法および形状のものであるのが良い。
【0039】
より詳細には、
図9~
図14を参照すると、スクラップ浸漬装置は、入口506に隣接して傾斜路インサート504を受け入れる第1の外周部分502を備えたチャージウェル500を有する。調節可能な渦誘起傾斜路インサート504が
図15~
図18に示されている。
【0040】
第2のこれよりも大径のチャンバ外周部分508が第1のチャンバ外周部分502の上方に延びている。第2の部分508は、第1の部分502とのインターフェースから装置の頂面510まで外方にテーパした壁を有するのが良い。オーバーフローチャネル512が頂面510内に設けられるのが良い。図示の第2の部分を全体として、逆切頭円錐の形状として説明することができる。切頭円錐は、約15°以上の角度で外方に傾斜した壁を有するのが良い。ある特定の実施形態では、第2の部分は、第1の部分よりも少なくとも一平面で見て少なくとも約20%大きい直径を有する。
【0041】
連続テーパが示されているが、変形例では、1つまたは2つ以上の垂直部分が設けられても良いことが想定される。さらに、第2の部分は、階段状に上方に延びるのが良い。
【0042】
溶融金属は、ポンプ(例えば、
図8を参照されたい)によって促されるように入口506を通ってチャージウェル500に入る。溶融金属は、渦を生成する仕方で傾斜路504に沿って上方にかつこの回りを移動し、そしてシステム内の溶融金属の深さおよびポンプの作動速度に応じてチャンバ部分502,508のうちの一方または両方内で循環する。溶融金属は、その表面上にスクラップ片を受け入れ、これらスクラップ片は、出口516に通じる傾斜路504の通路514を通ってチャージウェル500を出る。
【0043】
理論に束縛されるものではないが、大径の第2の部分508は、渦の減少をもたらすことができ、その結果、この上に堆積するスクラップ片の望ましくは延長された滞留時間が得られる。加うるに、第2の外周部分508は、関連の溶融金属ポンプが比較的高いRPMで作動されると、溶融金属を受け入れるための大きな有効容積をもたらす。さらに、この部分508により、溶融金属は、滑らかな流れで水平に広がることができる。
【0044】
図15~
図22を参照すると、傾斜路インサートの種々の図が提供されている。
【0045】
実施例
【0046】
パイロテック・インコーポレイテッド(Pyrotek, Inc.)から入手できるJ50SD溶融金属ポンプを
図9に示されているスクラップ浸漬チャージウェルおよび
図15~
図18の傾斜路と組み合わせて用いて水モデル化試験を実施した。チャージウェルは、傾斜路に隣接して第1の外周部分を有するとともに第1の部分の上方に延びる第2の外周部分を有するよう構成されていた。第1の部分は、48インチ(121.9cm)の直径を有し、第2の部分は、直径が48インチ(121.9cm)から60インチ(152.4cm)に増大したものであった。試験を種々のポンプRPM速度で実施した。
【0047】
水浴は、ベースの頂部よりも上方に14,5インチ(36.8cm)であった。ポンプ流量および平坦な浴の上方の渦高さを記録した。比較のため、一定の48インチ(121.9cm)径のチャージウェルもまた試験した。これらの試験において、外側オリフィス直径を変化させるのが良い。14インチ(35.6cm)に関して出口オリフィス直径を代表的な実施例として選択した。
【0048】
【0049】
好ましい実施形態を参照して例示の実施形態について説明した。明らかなこととして、上述の詳細な説明を読んで理解すると、当業者には改造例および変形例が想到されよう。例示の実施形態は、かかる全ての改造例および変形例は添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められた本発明の範囲又はその均等範囲に含まれる限り、かかる全ての改造例および変形例を含むものと解されるものである。