(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】2-アルキルアルカノールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/17 20060101AFI20220328BHJP
C07C 29/80 20060101ALI20220328BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20220328BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20220328BHJP
B01J 23/72 20060101ALI20220328BHJP
B01J 23/86 20060101ALI20220328BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
C07C29/17
C07C29/80
C07C31/125
B01J23/755 Z
B01J23/72 Z
B01J23/86 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019520033
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 GB2017053087
(87)【国際公開番号】W WO2018069714
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518329767
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ デイヴィー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロード, エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マーティン
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第01003702(DE,B)
【文献】特開2005-298488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドから2-アルキルアルカノールを製造するための方法であって、
(a)反応が生じ、且つ不飽和アルデヒドが生成されるような縮合及び脱水条件下で操作される反応器にアルデヒドを供給する工程;
(b)不飽和アルデヒドを含む工程(a)の反応器から流れを回収し、不飽和アルデヒドの少なくともいくらかが2-アルキルアルカノールに変換されるような条件下で操作される第1の水素化反応器に前記流れを供給する工程;
(c)2-アルキルアルカノールと、未反応アクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの一又は複数と、重質物とを含む第1の水素化反応器から流れを回収する工程;
(d)工程(c)で回収された流れを、第1の水素化反応器から、重質物の少なくともいくらかが流れから分離される第1の蒸留ゾーンへ通す工程;
(e)2-アルキルアルカノールと、未反応アクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの一又は複数とを含む第1の蒸留ゾーンから、第1の蒸留ゾーンへ供給される流れと比較したときに減少した重質物含有量を有する流れを回収し、且つ未反応アクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの少なくとも一つが2-アルキルアルカノールへ変換されるような条件下で操作される第2の水素化反応器へ前記流れを供給する工程;及び
(f)第2の水素化反応器へ供給される流れと比較して増加した2-アルキルアルカノール含有量を含む第2の水素化反応器から流れを回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(f)で第2の水素化反応器から回収された流れが、軽質物が除去される第2の蒸留ゾーンへ通され、前記第2の蒸留ゾーンが重質物の除去を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルデヒドがn-ブチルアルデヒドであり、生成物が2-エチルヘキサノールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルデヒドがn-バレルアルデヒドであり、生成物が2-プロピルヘプタノールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
第1の水素化反応器が
、100℃か
ら200℃の温度且つ大気圧か
ら15MPaの圧力で操作される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ニッケル触媒が第1の水素化反応器中で使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の水素化反応器が、反応が液相中で行われる場合
は150℃以下の温度且
つ10か
ら30baraの圧力で操作されるか、又は反応が気相中で行われる場合
は100℃か
ら150℃の温度且つ大気圧か
ら5baraの圧力で操作される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
銅触媒が第1の水素化反応器中で使用される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
第1の水素化反応器が、反応が液相中で行われる場合
は100℃か
ら150℃の温度且
つ15か
ら30baraの圧力で操作されるか、又は反応が気相中で行われる場合
は135℃か
ら170℃の温度且つ大気圧か
ら5baraの圧力で操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第2の水素化反応器が液相中で操作される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第2の水素化反応器が
、80℃か
ら150℃の温度且
つ10baraか
ら35baraの圧力で操作される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2の蒸留ゾーンにおける底部温度
が175℃未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の蒸留ゾーンの頂部の圧力が
、0.05baraか
ら0.5baraの範囲にある、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第2の蒸留ゾーンの頂部の圧力が
、0.1baraか
ら0.8baraの範囲にある、請求項2から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-アルキルアルカノールの製造のための方法に関する。より具体的には、本発明は、二つのアルデヒド分子の縮合による2-アルキルアルカノールの製造に関する。さらにより具体的には、本発明は、n-ブチルアルデヒドからの2-エチルヘキサノールの製造又はn-バレルアルデヒドからの2-プロピルヘプタノールの製造に関する。
【0002】
2-エチルヘキサノールは、工業的に大規模に製造されている。2-エチルヘキサノールを製造するために、n-ブチルアルデヒドの二つの分子は、アルドール縮合及び脱水を受けて、エチルプロピルアクロレインとしても知られる2-エチルヘキセナールが提供される。その後、これは水素化を施されて粗2-エチルヘキサノールが提供される。一般的に、水素化反応は完了せず、粗生成物は未反応の2-エチルヘキセナールを含有するだけでなく、2-エチルヘキセノールと2-エチルヘキサナール、すなわち不飽和基及びカルボキシル基の一方のみが水素化されている化合物、の一方又は両方を含有し得る。
【0003】
所望の2-エチルヘキサノールは、ポリ塩化ビニルの製造における可塑剤として機能するフタル酸ジオクチルのようなエステルを作製するために主に使用されるため、高レベルの純度の2-エチルヘキサノールを製造する必要がある。
【0004】
純度の尺度の一つは、生成物中の色であり、あるいは生成物中に色がないことである。所望のレベルの純度の指標は、生成物が、低い内色素を有するだけでなく、硫酸で煮沸された後に、標準試験で低い色を生成しなければならないことである。そのような試験の一つはBS4583に記載される。この試験において、試料は規格(Standard)に明記される条件下、濃硫酸で処理される。試料中の任意の不純物は、反応により有色化合物を形成し、これは硫酸によって触媒化される。試料を硫酸と反応させると、色は、対応する100mlのネスラー管中の等容量の一連の白金コバルト標準の色と比較される。これらの標準は、APHA又はハーゼン標準としても知られる。APHA標準は米国ASTM規格D1209に関する。この試験の使用により、2-エチルヘキサノールがフタル酸のような酸と反応してエステルが生成されるときに生成され得るあらゆる望ましくない色が迅速に決定される。
【0005】
望ましくない結果を引き起こすものは、未反応の2-エチルヘキセナール、及び任意の部分的に水素化された2-エチルヘキセノール及び/又は2-エチルヘキサナールの存在であり、硫酸試験はそれらの存在を同定する。
【0006】
他の2-アルキルアルカノールの製造、例えば生成物が未反応のバレルアルデヒド及び部分的水素化生成物を含むn-バレルアルデヒドからの2-プロピルヘプタノールの製造についても同様の問題が指摘されている。n-バレルアルデヒド出発材料は、一般的に、約10%までの他のC5アルデヒドを含むであろう。これらが存在する場合、生成物はこれらの他のC5アルデヒドを含むであろう。
【0007】
2-アルキルアルカノール、例えば2-エチルヘキサノール又は2-プロピルヘプタノールの製造のための従来の方法は、
図1に概略的に図示されている。この方法では、出発アルデヒドはライン1で反応器2へ通され、そこではアルドール縮合反応が行われて不飽和アルデヒド、すなわちアクロレインが形成される。一般的にデカンテーションにより分離される副生成物水は、ライン3で除去される。その後、アクロレインは、ライン4で、水素がライン6で添加される水素化反応器5へ通される。水素化は、液相又は気相で行われ得る。触媒、例えば、銅、クロミウム、ニッケル、亜鉛、イリジウム又はルテニウムのような一又は複数の第VI~X族金属を含有するものが、一般的に使用されるであろう。適切な水素化触媒は、一般的に、Pricat及びHTCラインナップとしてジョンソンマッセイから入手可能なものを含むであろう。
【0008】
いくらかのアルキルアルカノールを含む水素化反応器5から回収される生成物流は、ライン7で回収される。この流れは、一般的に、少量の不飽和アルコール及び飽和アルデヒドも含むであろう。いくらかの未反応の不飽和アルデヒドも存在し得る。したがって、流れは、水素化生成ゾーン8へ通され、そこではライン9で供給される水素と接触し、不飽和アルコール及び飽和アルデヒドがさらに水素化される。触媒は、一般的に、水素化精製のためにも使用されるであろう。
【0009】
生成物流は、ライン10で水素化精製反応器8から回収され、その後、二段階蒸留プロセスを施される。第1の蒸留ゾーン11では、軽質物はライン12で除去される。減少した軽質物濃度を有する流れは、その後、ライン13で第2の蒸留ゾーン14へ通され、そこでは重質物がライン15で分離及び除去される。アルキルアルカノールの生成物流は、ライン16で回収される。
【0010】
生成物の質の改善、触媒の寿命の改善及び生成物の質の改善と触媒の寿命の改善の両方を目的として、水素化及び精製の順序の様々な修正が提案されてきた。
【0011】
DE1003702は、低圧水素化反応が行われる方法を記載している。この文献では、4から15%のアルデヒドが未変換のままである。この第1の水素化反応の生成物は、任意選択的に蒸留を施されて、2-エチルヘキサナールのような軽質化合物が除去されてもよい。少なくともいくらかの軽質化合物が除去されている第1の水素化の生成物は、その後、高圧水素化を施されて、軽質物及び重質物が除去される。生成物の酸性色は明記されていないが、カルボニル数は0.1であり、したがって、酸性色が60を超えると推測することができることが記載されている。
【0012】
別の構成がGB1252678に記載されている。この構成では、アルドール化の生成物は水素化反応へ通される前に蒸留を施されて、重質物が除去される。
【0013】
さらなる方法が、米国特許第7663006号に記載されている。ここでは、ジヒドロピランが酸性色作製副生成物であることが示唆されている。これらのジヒドロピランを蒸留により2-エチルヘキセナールから分離することは困難であることがさらに記されており、したがって、精製工程におけるそれらの存在が制限されるべきであることが提案されている。一構成では、これは重質物を除去するための水素化反応器又は異なる触媒を使用する二段階水素化反応器への供給物の蒸留により達成されることが、示唆されている。米国特許第7663006に記載される方法は、
図2に概略的に図示されている。
【0014】
この方法では、出発アルデヒドはライン21で反応器22へ通され、そこではアルドール縮合反応が行われて不飽和アルデヒド、すなわちアクロレインが形成される。副生成物水は、デカンテーションにより分離され、ライン23で除去される。アクロレインは、その後、ライン24で第1の蒸留ゾーン25へ通され、そこでは重質物がライン26で分離及び除去される。減少した重質物含有量を有する不飽和アルデヒドの流れは、ライン27で、水素がライン29で添加される水素化反応器28へ通される。水素化反応器29から回収される生成物流は、ライン30で回収される。この流れは、いくらかのアルキルアルカノールを含み、一般的に、少量の不飽和アルコール及び飽和アルデヒドも含むであろう。いくらかの未反応不飽和アルデヒドも存在し得る。この流れは、その後、水素化精製反応器31へ通され、そこではライン32で供給される水素と接触し、任意の未反応の不飽和アルデヒド及び飽和アルコール及び飽和アルデヒドがさらに水素化される。
【0015】
生成物流は、ライン33で水素化精製反応器31から回収され、その後、二段階蒸留プロセスを施される。第2の蒸留ゾーン34では、軽質物はライン35で分離及び除去される。減少した軽質物濃度を有する流れは、その後、ライン36で第3の蒸留ゾーン37へ通され、そこでは重質物がライン38で分離及び除去される。該生成物流はライン39で回収される。
【0016】
この方法は、発色化合物の除去に有用であるが、アルドール化反応器と水素化反応器との間の上流ゾーンの必要性及び水素化精製反応器の後の二つの反応ゾーンの必要性は、該方法の資本コスト及び運用コストを増大させる。
【0017】
加えて、不飽和アルデヒドを含む流れで蒸留、一般的に真空蒸留を行うことは、加熱したときに縮合反応から重質化合物を生成すると知られている酸及びアルデヒドの形成を引き起こすことがある空気漏れが生じることがあるため、不利である。
【0018】
したがって、低酸性色で且つ資本コスト及び運用コストを低減させるために最小の処理工程で、2-アルキルアルカノールが製造されることを可能にする方法を提供することが望ましい。先行技術の方法で言及される他の問題の少なくともいくつかは、少なくとも部分的に克服されるか、好ましくはなくされることもまた望ましい。
【0019】
酸性色によって測定された場合に許容できる純度を有する生成物は、簡潔化された水素化と、アルドール化反応からの生成物が事前の蒸留を施されることなく水素化へ通されて、その後、生成物が水素化精製反応を施される前に、第1の水素化反応器の生成物が蒸留を施されて、重質物が除去される精製プロセスとを使用して達成することができる。驚くべきことに、この構成では、所望の生成物が必要とされるレベルの純度で達成することができるだけでなく、水素化精製後の二段階蒸留プロセスが軽質物のみの除去が必要とされるように回避され得ることが発見された。
【発明の概要】
【0020】
したがって、本発明によれば、以下を含む、アルデヒドから2-アルキルアルカノールを製造するための方法が提供される。
(a)反応が生じ、且つ不飽和アルデヒドが生成されるような縮合及び脱水条件下で操作される反応器にアルデヒドを供給する工程;
(b)不飽和アルデヒドを含む工程(a)の反応器から流れを回収し、不飽和アルデヒドの少なくともいくらかが2-アルキルアルカノールに変換されるような条件下で操作される第1の水素化反応器に前記流れを供給する工程;
(c)2-アルキルアルカノールと、未反応のアクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの一又は複数と、重質物とを含む第1の水素化反応器から流れを回収する工程;
(d)工程(c)で回収された流れを、第1の水素化反応器から、重質物の少なくともいくらかが流れから分離される第1の蒸留ゾーンへ通す工程;
(e)2-アルキルアルカノールと、未反応のアクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの一又は複数とを含む第1の蒸留ゾーンから、第1の蒸留ゾーンへ供給される流れと比較したときに減少した重質物含有量を有する流れを回収し、且つ未反応のアクロレイン、アルキルアルケノール及びアルキルアルカナールの少なくとも一つが2-アルキルアルカノールへ変換されるような条件下で操作される第2の水素化反応器へ前記流れを供給する工程;及び
(f)第2の水素化反応器へ供給される流れと比較して増加した2-アルキルアルカノール含有量を含む第2の水素化反応器から流れを回収する工程。
【0021】
任意選択的に、工程(f)で第2の水素化反応器から回収される流れは、軽質物が除去される第2の蒸留ゾーンへ通されてもよい。
【0022】
驚くべきことに、第1の水素化反応器と第2の水素化反応器との間の重質物の除去は、第2の水素化反応器の後の重質物の除去の必要性をなくし、そのため、米国特許第7663006号の構成とは異なり、必要とされる蒸留ゾーンの数の増加はないことが、発見された。よって、本発明の方法は、第2の水素化反応器中で流れが処理された後の重質物の除去を含まない。
【0023】
「重質物」は、2-アルキルアルカノールよりも高い沸点を有する成分であり、「軽質物」は、2-アルキルアルカノールよりも低い沸点を有する成分であることが理解されよう。
【0024】
本発明の方法は、アルデヒドからの任意の2-アルキルアルカノールの調製のために使用され得る。一構成では、アルデヒドは少なくとも3個の炭素原子を有する。一構成では、アルデヒドは3から10個の炭素原子を有し得る。アルデヒドは直鎖状又は分岐状であり得る。本発明の方法は、n-ブチルアルデヒドからの2-エチルヘキサノールの製造又はn-バレルアルデヒドからの2-プロピルヘプタノールの製造における使用に特に適している。
【0025】
本発明で使用されるアルデヒドは、アルデヒドが形成される反応からの、少量の炭化水素及び/又は重質副生成物を含み得ることが理解されよう。一般的に、アルデヒドは、ヒドロホルミル化反応において形成されていることになり、そのため、重質副生成物はヒドロホルミル化において形成されるものであり得る。一般的に、これらの炭化水素及び/又は重質副生成物は、約0.5%未満の量で存在するであろう。他のアルデヒドも供給中に存在し得る。例えば、本発明の方法への供給がn-ブチルアルデヒドである場合、2-メチルプロピオンアルデヒドが存在し得る。同様に、供給がn-バレルアルデヒドである場合、2-メチルブチルアルデヒド及び3-メチルブチルアルデヒドが存在し得る。
【0026】
アルデヒドが不飽和アルデヒドに変換されるように縮合及び脱水が生じる反応器は、任意の適した構成であってよい。縮合はアルドール反応であることが理解されよう。反応は任意の方法で行われ得る。適切な方法の例は、米国特許第5434313号、同第6340778号及び同第90006495号において見られ、それらは参照により本明細書に援用される。一般に、アルデヒドは約80℃から約100℃で反応する。触媒が存在してもよい。一構成では、水酸化ナトリウムが触媒として使用されてもよい。これは、1から5wt%の水溶液中に存在し得る。
【0027】
液体反応混合物は、一般的に、反応水を含むであろう水性アルカリ溶液を含む水性相に分離される。この相は、任意の適切な手段によって除去され得る。一般的に、この相はデカンテーションによって除去される。水性相の少なくともいくらかは、反応器へ再循環されて触媒を提供し得る。水性相は、再循環される前に濃縮されてもよい。
【0028】
不飽和アルデヒドを含むであろう、反応器からの油性相は、第1の水素化反応器へ通される。この反応器において、不飽和アルデヒドの大部分は水素化される。したがって、これは一般的に「バルク水素化」として知られる。
【0029】
水素化反応器は、任意の適切な条件下で操作することができる。一般的に触媒が使用される。任意の適切な触媒が使用されてもよい。一般的には、触媒の活性成分は、第VI族から第X族からの金属に基づくであろう。適切な例には、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、コバルト、パラジウム、ルテニウム及び鉄が含まれる。触媒は担持されてもよい。任意の適切な担体を使用することができる。適切な担体には、アルミナ、シリカ又は珪藻土が含まれる。特に適切な触媒は、担持銅クロマイト触媒であり得る。触媒は、選択性を高めるためにプロモーターも含んでよい。任意の適切なプロモーターを使用することができる。バリウムは適切なプロモーターであり得る。
【0030】
水素化は、液相又は気相で行われ得る。任意の適切な構成が使用されてもよく、反応器は任意の適切な条件下で操作され得る。選択される特定の条件は選択される触媒に依拠するが、水素化は約100℃から約200℃の温度且つ大気圧から約15MPaの圧力で行われ得る。
【0031】
液相水素化が使用される場合、それは任意の適切な方法で実施され得る。一構成では、液相水素化は、触媒の充填床上のダウンフローとして行われ得る。冷却された生成物の大規模な再循環は、反応熱を除去するために供給物と混合され得る。適切な方法の一例はGB1362071に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。別の構成では、一又は複数の熱交換器が反応熱を除去するために使用され得る。
【0032】
ニッケル触媒が液相反応で使用される場合、約10から約30baraの圧力で温度は約150℃未満であり得る。銅クロマイト触媒が液相反応で使用される場合、約15から約30baraの圧力で温度は約100℃から約200℃であり得る。
【0033】
気相水素化が使用される場合、それは任意の適切な方法で実施され得る。使用され得る典型的な気相水素化は、Hydrocarbon Processing, March 1983、67~74ページに記載されているものであり、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0034】
ニッケル触媒が気相反応で使用される場合、大気圧から約5baraの圧力で温度は約100℃から約150℃であり得る。銅クロマイト触媒が気相反応で使用される場合、大気圧から約5baraの圧力で温度は約135℃から約170℃であり得る。
【0035】
このバルク水素化において、不飽和アルデヒドの大部分は水素化される。
【0036】
不飽和アルデヒドの大部分は、所望の2-アルキルアルカノールに変換されるであろう。しかしながら、部分的水素化のいくつかの生成物も形成されるであろう。よって、アルキルアルケノールとアルキルアルカナールの一方又は両方が形成され得る。重質物もまた、水素化中に生成されるであろう。
【0037】
第1の水素化反応器からの生成物は、その後、重質物の除去のために第1の蒸留ゾーンへ通される。重質物の除去を可能にすることを条件として、任意の適切な手段が使用され得る。第1の蒸留ゾーンにおける蒸留は、任意の適切な手段によって行われ得る。一構成では、それは、約20から約50の理論段階を有する還流蒸留カラムを使用して実行され得る。一構成では、カラムはふるい又はバルブトレイを含み得る。別の一構成では、構造充填物が使用され得る。蒸留は、任意の適切な条件で行うことができる。一構成では、カラム頂部圧力は、約0.05baraから約0.5baraの範囲にあるであろう。底部温度は、一般的には約175℃未満に保たれる。
【0038】
重質物が除去されると、流れは第2の水素化反応器へ通される。不飽和アルデヒドの大部分は第1の水素化反応器で水素化されているであろうことから、この第2の水素化は、一般的には、任意の部分的水素化を完了することを目的とするであろう。当然、任意の非水素化不飽和アルデヒドが第2の水素化反応器への供給物中に残存している場合は、これは水素化を受ける。第2の水素化反応器で使用される反応器、条件及び/又は触媒は、第1の水素化反応器で使用されるものと同一であっても異なっていてもよい。しかしながら、一般的には第2の水素化は液相中で行われるであろう。これは、触媒の充填床上で行われ得る。触媒床上のフローは、アップフローであってもダウンフローであってもよい。任意の適切な触媒が使用されてもよい。一構成では、触媒の活性成分はニッケルであり得る。パラジウム又はルテニウムも活性成分として使用され得る。触媒は担持されてもよい。任意の適切な担体を使用することができる。適切な担体には、アルミナ、シリカ又は珪藻土が含まれる。プロモーターが使用されてもよい。一般的には、反応熱を除去するために冷却生成物を再循環して供給物と混合することは必要ではないであろう。水素化は、任意の適切な条件で行うことができる。一構成では、第2の水素化は約80℃から約150℃の温度且つ約10から約35baraの圧力で行われ得る。
【0039】
第2の水素化反応器からの生成物流は、それに供給されるものよりも高含有量の所望の2-アルキルアルカノールを有するであろう。
【0040】
この生成物流は、その後、第2の蒸留ゾーンへ供給され、そこでは軽質物が除去される。軽質物の除去を可能にすることを条件として、任意の適切な手段が使用され得る。第2の蒸留ゾーンで行われる蒸留は、任意の適切な手段によって行われ得る。該手段は、第1の蒸留ゾーンで使用されるものと同一であっても異なっていてもよい。一構成では、それは、約20から約50の理論段階を有する還流蒸留カラムを使用して実行され得る。一構成では、カラムはふるい又はバルブトレイを含み得る。別の一構成では、構造充填物が使用され得る。蒸留は、任意の適切な条件で行うことができる。一構成では、カラム頂部圧力は、約0.05baraから約0.5baraの範囲にあるであろう。底部温度は、一般的には約175℃未満に保たれる。
【0041】
第2の蒸留ゾーンの底部で又はその近くで回収される生成物は、蒸留ゾーンへの供給物の増量した含有量の2-アルキルアルカノールを有するであろう。一構成では、流れは、98%超、99%超、又は99.5%超の2-アルキルアルカノールを有し得る。
【0042】
本発明を、実施例によって、添付図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】従来の先行技術の方法の一つの概略図である。
【
図2】米国特許第7663006号に記載される先行技術の方法の概略図である。
【0044】
図面は線図であること及び還流ドラム、ポンプ、真空ポンプ、温度センサ、圧力センサ、圧力安全バルブ、コントロールバルブ、流量制御器、レベル制御器、貯蔵タンク、保管タンク等の設備のさらなる品目が商業プラントで必要とされ得ることが当業者により理解されよう。そのような設備の補助物品の提供は、本発明の一部を形成せず、従来の化学工学の慣例に従っている。
【0045】
本発明は、n-ブチルアルデヒドからの2-エチルヘキサノールの製造を参照して記載される。しかしながら、n-バレルアルデヒドからの2-プロピルヘプタノールの製造を含む他の2-アルキルアルデヒドの製造にも等しく適用可能であることが理解されよう。
【0046】
図3に示されるように、n-ブチルアルデヒドは、ライン41で、アルドール縮合及び脱水反応が生じて不飽和アルデヒドアクロレインが形成されるように操作される反応器42に供給される。生成された水はライン43で除去される。反応器からの生成物流は、ライン44で第1の水素化反応器45に通され、そこでは、生成物流はライン46で供給される水素と反応する。この水素化反応器45では、不飽和アルデヒドの大半は所望の2-エチルヘキサノールに変換される。2-エチルヘキセノールと2-エチルヘキサナールの一方又は両方が形成されるようないくつかの部分的水素化も存在するであろう。
【0047】
その後、この流れは、ライン47で、形成されているであろう重質物を除去するよう操作される第1の蒸留ゾーンへ通される。これらの重質物はライン49で除去される。重質物が除去されている流れは、その後、ライン50で第2の水素化反応器51へ通される。この精製反応器51では、流れはライン52で添加される水素と接触する。一般に、この精製反応器51は、2-エチルヘキセノール及び2-エチルヘキサナールが所望の2-エチルヘキサノールに変換し、それにより生成物の純度を改善することを可能にするであろう。
【0048】
第2の水素化ゾーン51からの生成物流は、任意選択的にライン53で第2の蒸留ゾーン54へ通され、そこではヘプタンのような軽質物がライン55で分離及び除去される。生成物2-エチルヘキサノールは、その後、ライン56で回収される。この生成物は、20APHA未満の酸性色を有するであろう。
【0049】
本発明を、添付の実施例を参照して、さらに説明する。
【0050】
標準の調製
本発明の実施例で酸性色を決定するために使用される標準(standards)をBS4583に従って調製した。蒸留水に1.245gのクロロ白金酸カリウム、K2PtCl6及び1.000gの塩化コバルト、CoCl2.6H2Oを溶解することにより通常の500APHAのクロロ白金酸カリウム貯蔵液を調製する。100mlの塩酸を添加し、混合物を容量フラスコ中、蒸留水で1リットルに希釈した。100mlネスラー管中の白金コバルト標準は、例えば1mlの貯蔵液を100mlに希釈して、5APHAの参照色を生成するように、この500APHA貯蔵液を希釈することによって調製される。
【0051】
試料の試験
生成物が得られたら、それを硫酸で煮沸し、試料の色を標準色と比較する。8mlの濃硫酸(Aristar)を250mlの広口三角フラスコ中100mlの試料に滴下する。酸の添加中、フラスコの内容物を磁気撹拌機及びフォロアを使用して、一定して撹拌する。混合物を99から100℃に維持された沸騰した水浴中で60±1分間にわたって加熱する。フラスコを槽から取り除き、すぐに冷水に置き、内容物を迅速に室温に冷却する。
【0052】
任意の必要とされる濾過の後、100mlの試料をネスラー管へ導入する。色比較器において、管の色は事前に調製された標準の一つと一致している。その後、試料とほぼ一致する色標準の番号が報告される。試料の色が二つの標準の間にある場合は、二つのうちのより暗い色が使用される。
【実施例】
【0053】
実施例1
n-ブチルアルデヒドの苛性触媒化アルドール化により作製された98%の2-エチルヘキサノールをモレキュラーシーブを使用して1000ppm未満の水で乾燥させた。これを汲み上げ、クロム非含有銅触媒床上を1620時間、平均LHSV0.5hr-1の床、それぞれ165℃及び180℃の入口/出口温度、28baraの水素圧で通過させた。床出口から反応器入口へ冷却した生成物を再循環させることによって、床温度を制御した。出口2-エチルヘキサアルデヒド濃度は0.15wt%であった。
【0054】
生成物を蒸留して、165℃のリボイラー温度で、0.3baraで0.02wt%未満まで重質化合物を除去した。その後、これをニッケル触媒上、85℃且つLHSV3hr-1の流量で精製した。第2の水素化からの流れには0.02wt%未満の重質物が存在したため、重質物を除去するためのさらなる蒸留を要しなかった。軽質物を除去するための蒸留をせずに、生成物は酸性色について規格を満たしていた。APHA色は<5であり、硫酸色は<5であった。酢酸としての酸性度は≦0.005wt%であり、エチルヘキサナールとしてのカルボニルは≦0.01wt%であり、ヨウ素価は≦0.01g/100gであった。
【0055】
実施例2:
第1の水素化反応器を銅/クロム触媒を使用して行ったことを除き、実施例1を繰り返した。第1の水素化反応器からの生成物を蒸留して重質物を除去し、その後、第2の水素化反応器中、ニッケル触媒上85℃、LHSV3hr-1、0~5%過剰の水素を使用して28.5baraの水素圧で精製した。軽質物を除去するための蒸留をせずに、生成物は酸性色について規格を満たしていた。硫酸色は≦5であった。エチルヘキサナールとしてのカルボニルは≦0.015wt%であり、ヨウ素価は0.015g/100gであった。
【0056】
実施例3
0.1wt%のC5アルデヒド、0.4wt%の軽質物及び4.9wt%のプロピルブチルアクロレイン異性体を含む粗プロピルブチルアクロレインを混合C5アルデヒドのアルドール化によって調製し、1.7hr-1ダウンフローのLHSVで銅触媒の充填床に供給した。水素を供給して29baraの圧力を維持した。13:1のアルデヒド:供給物の割合で、反応器基部から反応器頂部の供給点へ生成物を再循環させて、反応器の入口温度及び出口温度を150℃から175℃に制御した。水素化生成物を蒸留して、0.1bara、0.5の還流/供給比、及び160℃の底部温度で重質物を除去した。カラムオーバーヘッドを、20baraでニッケル触媒上、112℃ダウンフローLHSV3.2hr-1で精製した。硫酸色は>5であり、軽質物の除去前は≦10であった。軽質物の除去後、重質不純物は0.02wt%であったため、重質物を除去するための蒸留は不要であった。
【0057】
実施例4
0.3wt%のC5アルデヒド、0.1wt%の軽質物、4.9wt%のプロピルブチルアクロレイン異性体及び1.1wt%の重質物を含む粗プロピルブチルアクロレインを混合C5アルデヒドのアルドール化によって調製し、0.5hr-1ダウンフローのLHSVでクロム非含有銅触媒の充填床に供給した。水素を供給して19baraの圧力を維持した。冷却した生成物を反応器基部から反応器頂部の供給点へ再循環させて、反応器入口温度を140℃に、反応器出口温度を165℃に制御した。生成物に水素化を施した。水素化生成物を蒸留して、0.1baraの頂部圧力、0.5の還流/供給比、及び160℃の底部温度で重質物を除去した。クロム非含有銅触媒上、1.0hr-1のLHSV、140から145℃の温度且つ19baraの水素圧力で水素化精製を実施した。酸性色は15であり、生成物中の重質物は<0.05wt%であった。
【0058】
比較例1
実施例4を繰り返した。しかしながら、重質物を除去するための蒸留は、水素化精製の前には行われず、代わりにその後に行われた。それは25から30の酸性色を有した。
【0059】
したがって、バルクと水素化精製との間の重質物の除去を行うことは、得られる生成物の質を著しく改善することが見られた。