(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】有機機能材料の調合物
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220328BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220328BHJP
C09D 11/36 20140101ALI20220328BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220328BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220328BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H05B33/22 B
C09D11/36
H01L29/28 100A
H01L29/28 250H
H01L29/28 310J
H01L21/368 L
(21)【出願番号】P 2019522418
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017076429
(87)【国際公開番号】W WO2018077660
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-15
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベアル、ゲーレ
(72)【発明者】
【氏名】レオンハルト、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、シン-ロン
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルガー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤトシュ、アンヤ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-066388(JP,A)
【文献】特開2015-185640(JP,A)
【文献】特開2013-214397(JP,A)
【文献】特表2014-504021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
C09D 11/36
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有機機能材料と、少なくとも4種の異なる有機溶媒である第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒B、第3の有機溶媒Cおよび第4の有機溶媒Dとを含有する調合物であって、
前記第1の有機溶媒Aが、水素結合を供与できるOH基を含み、
前記第1の有機溶媒Aが、200~350℃の範囲の沸点を有し、
前記第2の有機溶媒Bが、150~350℃の範囲の沸点を有し、
前記第3の有機溶媒Cが、100~300℃の範囲の沸点を有し、
前記第4の有機溶媒Dが、200~400℃の範囲の沸点を有し、0.01~15vol%の量で存在し、15mPas以上の粘度を有し、
前記第2の有機溶媒Bおよび前記第4の有機溶媒Dにおける前記少なくとも1種の有機機能材料の溶解度が5g/l以上であり、
前記第3の有機溶媒Cの沸点が前記第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃低く、
前記第4の有機溶媒Dの沸点が前記第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃高く、
前記第4の有機溶媒Dは、一置換または多置換のナフタレン誘導体、部分的または完全に水素化された一置換または多置換のナフタレン誘導体、一置換または多置換のインダン誘導体、および完全に水素化されたアントラセン誘導体から選ばれる、
調合物。
【請求項2】
前記第1の有機溶媒Aが、一般式(I)
【化1】
(式中、
Xは、Oであり、
R
1、R
2およびR
3は、それぞれの出現において同一であるかまたは異なり、H、D、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~12個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、-O-、-S-、-NR
5-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、Fによって置きかえられていてもよい)、または4~14個の炭素原子を有し、1つ以上の非芳香族R
5ラジカルによって置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基であり、複数の置換基R
5は、同じ環上または2つの異なる環上のいずれかで、一緒になって複数の置換基R
5によって置換されていてもよい単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してもよく、あるいは、R
1、R
2およびR
3のうちの2つは、一緒になって複数の置換基R
5によって置換されていてもよい4~14個の炭素原子を有する単環もしくは多環式の、脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してもよく
;
R
5は、それぞれの場合において同一であるかまたは異なり、H、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、-O-、-S-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよい)である)
による溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
前記第1の有機溶媒Aが、一般式(II)
【化2】
(式中、
R
1、R
2およびR
3は、それぞれの出現において同一であるかまたは異なり、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~8個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、-O-、-NH-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、Fによって置きかえられていてもよい)、または4~10個の炭素原子を有し、1つ以上の非芳香族R
5ラジカルによって置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基(ここで、R
5は、請求項2に記載の通りに定義される)である)
による溶媒であることを特徴とする、請求項2に記載の調合物。
【請求項4】
前記第1の有機溶媒Aが、R
1および/またはR
2がHである式
(I)による溶媒であることを特徴とする、請求項
2に記載の調合物。
【請求項5】
前記第1の有機溶媒Aが、20mN/m以上の表面張力を有することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の調合物。
【請求項6】
前記第1の有機溶媒Aの含有量が、前記調合物中の溶媒の総量を基準として5~60vol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の調合物。
【請求項7】
前記第2の有機溶媒Bの含有量が、前記調合物中の溶媒の総量を基準として5~95vol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の調合物。
【請求項8】
前記第2の有機溶媒Bが、200~300℃の範囲の沸点を有することを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の調合物。
【請求項9】
前記第3の有機溶媒Cの含有量が、前記調合物中の溶媒の総量を基準として1~30vol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の調合物。
【請求項10】
前記調合物が、15~50mN/mの範囲の表面張力を有することを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の調合物。
【請求項11】
前記調合物が、1~50mPa・sの範囲の粘度を有することを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の調合物。
【請求項12】
前記調合物中の前記少なくとも1種の有機機能材料の含有量が、前記調合物の全重量を基準として0.001~20重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の調合物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の有機機能材料が、有機導電体、有機半導体、有機蛍光化合物、有機リン光化合物、有機光吸収化合物、有機感光性化合物、有機光増感剤、および他の有機光活性化合物、たとえば遷移金属、希土類、ランタニドおよびアクチニドの有機金属錯体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~12の何れか1項に記載の調合物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の有機機能材料が、蛍光発光体、リン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔伝導材料、正孔注入材料、nドーパント、pドーパント、ワイドバンドギャップ材料、電子阻止材料、および正孔阻止材料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の調合物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の有機機能材料が、正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送および電子注入材料からなる群から選択される有機半導体であることを特徴とする、請求項14に記載の調合物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の有機半導体が、正孔注入、正孔輸送および発光材料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の調合物。
【請求項17】
前記正孔注入および正孔輸送材料が、高分子化合物または高分子化合物と非高分子化合物のブレンドであることを特徴とする、請求項15または16に記載の調合物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の発光材料が、低分子量を有する2種以上の異なる化合物の混合物であることを特徴とする、請求項15または16に記載の調合物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の有機機能材料と前記少なくとも4種の溶媒とが混合されることを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載の調合物を調製する方法。
【請求項20】
エレクトロルミネッセントデバイスの少なくとも1つの層が、請求項1~18の何れか1項に記載の調合物を表面に堆積さ
せ、続いて乾燥させることにより
製造されることを特徴とする、エレクトロルミネッセントデバイスを
製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の有機機能材料と、少なくとも4種の異なる有機溶媒である第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒B、第3の有機溶媒Cおよび第4の有機溶媒Dとを含有する調合物であって、
- 第1の有機溶媒Aが、水素結合を受容または供与できる基を含み、
- 第2の有機溶媒Bが、150~350℃の範囲の沸点を有し、
- 第3の有機溶媒Cが、100~300℃の範囲の沸点を有し、
- 第4の有機溶媒Dが、200~400℃の範囲の沸点を有し、0.01~15vol%の量で存在し、15mPas以上の粘度を有し、
- 第2の有機溶媒Bおよび第4の有機溶媒Dにおける少なくとも1種の有機機能材料の溶解度が5g/l以上であり、
- 第3の有機溶媒Cの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃低く;
- 第4の有機溶媒Dの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃高い
ことを特徴とする調合物、およびこれらの調合物を使用することにより調製されるエレクトロルミネッセントデバイスに関する。
背景技術
有機発光デバイス(OLED)は、長い間真空蒸着プロセスによって作成されてきた。
他の技法、たとえばインクジェット印刷が、その利点、たとえばコスト削減および規模拡大の可能性のため、最近徹底的に研究されている。多層印刷における主な課題の1つは、基板上に均一なインク堆積を得るための関連するパラメータを特定することである。こうしたパラメータ、たとえば表面張力、粘度、または沸点を誘発するため、幾つかの添加剤を調合物に添加することができる。
技術的課題および発明の目的
インクジェット印刷用の有機電子デバイスにおいて、多くの溶媒が提案されている。しかし、堆積および乾燥プロセス時に役割を果たす重要なパラメータの数が、溶媒の選択を非常に困難にしている。したがって、インクジェット印刷による堆積に使用される有機半導体を含有する調合物は、依然として改善する必要がある。本発明の1つの目的は、良好な層特性と効率性能を有する有機半導体層を形成するための制御された堆積を可能にする有機半導体の調合物を提供することである。本発明のさらなる目的は、たとえばインクジェット印刷法を用いて基板上に堆積させ乾燥させた場合に優れた膜均一性を可能とし、それにより、良好な層特性および効率性能をもたらす有機半導体の調合物を提供することである。
【0002】
JP2015/191792A2において、第1および第2の溶媒に溶解させた機能層の構成材料またはその前駆体で構成される溶質が開示されており、ここで、第1の溶媒は第1の溶解度パラメータと第1の沸点を有し、第2の溶媒は第1の溶解度パラメータよりも小さい第2の溶解度パラメータと第1の沸点よりも低い第2の沸点を有し、第1の沸点は250℃以上であり第2の沸点は170℃以上であり、第2と第1の沸点の差が40℃以上であり、第2の溶解度パラメータが9.0(cal/cm3)1/2以下である。
【0003】
EP2924083A1において、溶質である第1の成分と、280~350℃の範囲の沸点を有し、第1の成分の良溶媒であり、少なくとも2つの芳香族環を含む芳香族炭化水素、芳香族グリコールエーテル、脂肪族グリコールエーテル、脂肪族アセタート、および脂肪族エステルからなる群から選択される少なくとも1種である第2の成分と、200~300℃の範囲の沸点を有し、第1の成分の良溶媒であり、芳香族炭化水素、芳香族エーテル、および脂肪族エーテルからなる群から選択される少なくとも1種である第3の成分とを含む機能層形成用のインクが開示されており、ここで、第2の成分と第3の成分とを含む混合溶媒中の第2の成分の割合が、10wt%以上である。
【0004】
US2013/256636A1において、液体コーティング法により機能層を形成するための機能層インクが開示されており、ここで、機能層材料が高分子または低分子量材料と、0.01~0.05Pa・sの範囲の粘度を有する0.1重量%以上の溶媒A、および0.01Pa・s未満の粘度と溶媒Aよりも低い沸点を有する溶媒Bを含有する混合溶媒とを含有し、混合溶媒は、0.02Pa・s未満の粘度と、200~350℃の範囲の沸点を有する。
【0005】
WO2005/083814A1において、少なくとも1種の高分子量構成物質を含有する少なくとも1種の有機半導体を少なくとも3種の異なる溶媒A、BおよびCの溶媒混合物に溶解させた溶液が開示されている。溶媒AおよびBは有機半導体の良溶媒であり、溶媒Cは、有機半導体の貧溶媒である。
【0006】
WO2005/112145A1において、少なくとも1種の高分子量成分を含む少なくとも1種の有機半導体と、有機半導体の良溶媒である少なくとも1種の有機溶媒A、および有機半導体の貧溶媒である少なくとも1種の有機溶媒Bとを含み、溶媒AおよびBの沸点(b.p.)にb.p.(A)>b.p.(B)が当てはまることを特徴とする単相液体組成物(溶液)が開示されている。
課題に対する解決法
本発明の上記の目的は、少なくとも1種の有機機能材料と、少なくとも4種の異なる有機溶媒である第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒B、第3の有機溶媒Cおよび第4の有機溶媒Dとを含む調合物であって、第1の有機溶媒Aが、水素結合を受容または供与できる基を含み、第2の有機溶媒Bが、150~350℃の範囲の沸点を有し、第3の有機溶媒Cが、100~300℃の範囲の沸点を有し、第4の有機溶媒Dが、200~400℃の範囲の沸点を有し、0.01~15vol%の量で存在し、15mPas以上の粘度を有し、第2の有機溶媒Bおよび第4の有機溶媒Dにおける少なくとも1種の有機機能材料の溶解度が5g/l以上であり、第3の有機溶媒Cの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃低く;第4の有機溶媒Dの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃高いことを特徴とする調合物を提供することによって解決される。
発明の効果
発明者らは、驚くべきことに、本発明の調合物の使用が、良好な層特性および性能を有する均一かつ明確に画定された機能材料の有機層を形成するための効果的なインクの堆積を可能にすることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、基板、ITOアノード、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、緑色発光層(G-EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)およびAlカソードを含有するデバイスの典型的な層構造を示す。
【
図2】
図2は、参考例において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、実施例1において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図4】
図4は、実施例2において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図5】
図5は、実施例3において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図6】
図6は、実施例4において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図7】
図7は、実施例5において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図8】
図8は、実施例6において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図9】
図9は、実施例7において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図10】
図10は、実施例8において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図11】
図11は、実施例9において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図12】
図12は、実施例10において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図13】
図13は、実施例11において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図14】
図14は、実施例12において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図15】
図15は、実施例13において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図16】
図16は、実施例14において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図17】
図17は、実施例15において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図18】
図18は、実施例16において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図19】
図19は、実施例17において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図20】
図20は、実施例18において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図21】
図21は、実施例19において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図22】
図22は、実施例20において調製した膜の膜プロファイルを示す。
【
図23】
図23は、参考1のデバイスのエレクトロルミネッセント(EL)画像を示す。
【
図24】
図24は、例1のデバイスのエレクトロルミネッセント(EL)画像を示す。
【
図25】
図25は、例2のデバイスのエレクトロルミネッセント(EL)画像を示す。態様の説明 本発明は、少なくとも1種の有機機能材料と、少なくとも4種の異なる有機溶媒である第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒B、第3の有機溶媒Cおよび第4の有機溶媒Dとを含有する調合物であって、第1の有機溶媒Aが、水素結合を受容または供与できる基を含み、第2の有機溶媒Bが、150~350℃の範囲の沸点を有し、第3の有機溶媒Cが、100~300℃の範囲の沸点を有し、第4の有機溶媒Dが、200~400℃の範囲の沸点を有し、0.01~15vol%の量で存在し、15mPas以上の粘度を有し、第2の有機溶媒Bおよび第4の有機溶媒Dにおける少なくとも1種の有機機能材料の溶解度が5g/l以上であり、第3の有機溶媒Cの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃低く;第4の有機溶媒Dの沸点が第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃高いことを特徴とする調合物に関する。
【0008】
水素結合供与体/受容体の明確な定義は、the CRC Handbook of solubility parameters and other cohesion
parameters、second edition、Allan F.M Barton、1991.に見出すことができる。下記の定義が言及されている:水素結合相互作用は、電子受容体がブレンステッド酸である特定のタイプのルイス酸-塩基反応である。都合のよい定義は、水素結合は共有結合した水素原子により別の原子に形成される第2の結合であるというものである。下記のスキームにおいて、原子XおよびYは、Hよりも高い電気陰性度(結合した原子の電子を引きつける相対的傾向)を有し、たとえばC、N、P、O、S、F、Cl、Br、またはIである:
【0009】
【0010】
また、Pimentel and McClellan(The hydrogen Bond、W.H.Freeman、San Francisco、1960)による水素結合の特徴に応じた液体の分類も、広く使用されてきた:
- プロトン供与体、たとえばトリクロロメタン、
- プロトン受容体、たとえばケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、第3級アミン、芳香族炭化水素、アルケン、
- プロトン供与体/受容体、たとえばアルコール、カルボン酸、水、第1級および第2級アミン。
好ましい態様
好ましい態様において、調合物は、第1の有機溶媒Aが、水素結合を供与できる少なくとも1つの基、好ましくは1つの基を含むことを特徴とする。
【0011】
より好ましい態様において、調合物は、第1の有機溶媒Aの水素結合を供与できる少なくとも1つの基、好ましくは1つの基が、OH基またはNH基であることを特徴とする。
【0012】
好ましい一態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、一般式(I)
【0013】
【0014】
(式中、
Xは、OまたはNR4であり、
R1、R2およびR3は、それぞれの出現において同一であるかまたは異なり、H、D、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~12個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-、-S-、-NR5-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、Fによって置きかえられていてもよい)、または4~14個の炭素原子を有し、1つ以上の非芳香族R5ラジカルによって置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基であり、複数の置換基R5は、同じ環上または2つの異なる環上のいずれかで、一緒になって複数の置換基R5によって置換されていてもよい単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してもよく、あるいは、R1、R2およびR3のうちの2つは、一緒になって複数の置換基R5によって置換されていてもよい4~14個の炭素原子を有する単環もしくは多環式の、脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成してもよく;
R4は、H、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基または4~14個の炭素原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基(これらは、1つ以上の非芳香族R5ラジカルによって置換されていてもよい)であり;
R5は、それぞれの場合において同一であるかまたは異なり、H、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-、-S-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよい)である)
による溶媒であることを特徴とする。
【0015】
より好ましい一態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、一般式(II)
【0016】
【0017】
(式中、R1、R2およびR3は、上記のように定義される)
による溶媒であることを特徴とする。
【0018】
別のより好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、一般式(III)
【0019】
【0020】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、上記のように定義される)
による溶媒であることを特徴とする。
【0021】
第3のおよび第4の最も好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、一般式(II)または(III)
(式中、
R1、R2およびR3は、それぞれの出現において同一であるかまたは異なり、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3~8個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-、-NH-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、Fによって置きかえられていてもよい)、または4~10個の炭素原子を有し、1つ以上の非芳香族R5ラジカルによって置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基(ここで、R5は、上記のように定義される)である)による溶媒であることを特徴とする。
【0022】
第1のより好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、XがOであり、R3が下記の式(IV)で表されるAr1-Y-である式(I)
【0023】
【0024】
(式中、
R1、R2は、それぞれの場合において同一であるかまたは異なり、Hまたは1~5個の炭素原子、好ましくは、1~3個の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
Ar1は、4~14個の炭素原子を有し、1つ以上の非芳香族R5ラジカルによって置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基(これらは、複数の置換基R5によって置換されていてもよい)であり、
R5は、それぞれの場合において同一であるかまたは異なり、H、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-、-S-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよい)であり、
Yは、n=1~10個の炭素原子である直鎖状または分枝-CnH2n-基(ここで、基Yの1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-によって置きかえられていてもよい)である)
による溶媒であることを特徴とする。
【0025】
第2のより好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、式(II)
(式中、
R1、R2は、それぞれの場合において同一であるかまたは異なり、Hまたは1~3個、好ましくは、1個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
R3は、H、D、1~12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、または3~12個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、-O-、-S-、-NR5-、-CO-O-、-C=O-、-CH=CH-または-C≡C-によって置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、Fによって置きかえられていてもよい)である)
による溶媒であることを特徴とする。
【0026】
最も好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、R4がHである式(III)による溶媒であることを特徴とする。
【0027】
最も好ましい態様において、本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aが、R1がHであり、R2がHまたはCH3のいずれかである式(II)または(IV)による溶媒であることを特徴とする。
【0028】
好ましい第1の溶媒の例と、その沸点(BP)および融点(MP)を、下記の表1に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
好ましくは、第1の有機溶媒Aは、20mN/m以上の表面張力を有する。より好ましくは、第1の有機溶媒Aの表面張力は、25~50mN/mの範囲、最も好ましくは28~45mN/mの範囲である。
【0034】
好ましくは、第1の有機溶媒Aは、150~350℃の範囲、より好ましくは175~325℃の範囲、最も好ましくは200~300℃の範囲の沸点を有する。
【0035】
第1の溶媒Aの含有量は、調合物中の溶媒の総量を基準として5~60vol%の範囲、好ましくは10~60vol%の範囲、より好ましくは15~55vol%の範囲、最も好ましくは20~50vol%の範囲である。
【0036】
本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aとは異なる少なくとも第2の有機溶媒Bを含む。
第2の有機溶媒Bは、第1の有機溶媒Aと共に利用される。
【0037】
適する第2の有機溶媒Bは、好ましくは、とりわけケトン、エーテル、エステル、アミド、たとえばジ-C1~2-アルキルホルムアミド、硫黄化合物、ニトロ化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素(たとえば、塩素化炭化水素)、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素(たとえば、ナフタレン誘導体)、およびハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素を含む有機溶媒である。
【0038】
好ましくは、第2の有機溶媒Bは、下記の群:置換および無置換の芳香族または直鎖状エーテル、たとえば3-フェノキシトルエンまたはアニソール;置換または無置換のアレーン誘導体;置換または無置換のインダン、たとえばヘキサメチルインダン;置換および無置換の芳香族または直鎖状ケトン;置換および無置換のヘテロ環式化合物、たとえばピロリジノン、ピリジン、ピラジン;その他のフッ素化または塩素化芳香族炭化水素、置換または無置換のナフタレン、たとえばアルキル置換ナフタレン、たとえば1-エチルナフタレンの1つから選ぶことができる。
【0039】
特に好ましい第2の有機溶媒Bは、たとえば1-エチル-ナフタレン、2-エチルナフタレン、2-プロピルナフタレン、2-(1-メチルエチル)-ナフタレン、1-(1-メチルエチル)-ナフタレン、2-ブチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジメチルビフェニル、1-アセチルナフタレン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2-ジメチルナフタレン、1,3-ベンゾジオキソラン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジメチルナフタレン、1,4-ベンゾジオキサン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジメチルナフタレン、1,5-ジメチルテトラリン、1-ベンゾチオフェン、チアナフタレン、1-ブロモナフタレン、1-クロロメチルナフタレン、1-メトキシナフタレン、1-メチルナフタレン、2,3-ベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、2,5-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、2-ブロモ-3-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモメチル-ナフタレン、2-ブロモナフタレン、2-エトキシナフタレン、2-イソプロピル-アニソール、2-メチルアニソール、2-メチルインドール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチル-アニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、5-メトキシインダン、5-メトキシインドール、5-tert-ブチル-m-キシレン、6-メチルキノリン、8-メチルキノリン、アセトフェノン、アニソール、ベンゾニトリル、ベンゾチアゾール、ベンジルアセテート、ブロモベンゼン、ブチルフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロナフトール、ジメトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジフェニルエーテル、プロピオフェノン、ヘキシルベンゼン、インダン、ヘキサメチルインダン、インデン、イソクロマン、クメン、m-シメン、メシチレン、プロピルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フェネトール、エトキシベンゼン、フェニルアセテート、p-シメン、プロピオフェノン、sec-ブチル-ベンゼン、t-ブチルベンゼン、ベラトロール、ピロリジノン、ジメチルアセトアミド、およびデカリンである。
【0040】
第2の有機溶媒Bは、150~350℃の範囲、好ましくは175~325℃の範囲、最も好ましくは200~300℃の範囲の沸点を有する。
【0041】
第2の有機溶媒Bの含有量は、調合物中の有機溶媒の総量を基準として5~95vol%の範囲、好ましくは10~75vol%の範囲、より好ましくは15~70vol%の範囲、最も好ましくは20~65vol%の範囲である。
【0042】
少なくとも1種の有機機能材料は、第2の有機溶媒Bにおける溶解度が5g/l以上、好ましくは10g/l以上、より好ましくは15g/l以上である。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
本発明の調合物は、第1の有機溶媒Aおよび第2の有機溶媒Bとは異なる少なくとも第3の有機溶媒Cを含む。第3の有機溶媒Cは、第1の有機溶媒Aおよび第2の有機溶媒Bと共に利用される。
【0050】
第3の有機溶媒Cは、100~300℃の範囲、好ましくは125~275℃の範囲、最も好ましくは150~250℃の範囲の沸点を有する。さらに、第3の有機溶媒Cの沸点は、第2の有機溶媒Bの沸点より少なくとも10℃低く、好ましくは少なくとも20℃低く、より好ましくは少なくとも30℃低い。
【0051】
第3の有機溶媒Cの含有量は、調合物中の有機溶媒の総量を基準として好ましくは1~30vol%の範囲、より好ましくは3~25vol%の範囲、最も好ましくは5~20vol%の範囲である。
【0052】
【0053】
本発明の調合物は、第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒Bおよび第3の有機溶媒Cとは異なる少なくとも第4の有機溶媒Dを含む。第4の有機溶媒Dは、第1の有機溶媒A、第2の有機溶媒Bおよび第3の有機溶媒Cと共に利用される。
【0054】
適する第4の有機溶媒Dは、好ましくは、とりわけ一置換または多置換のナフタレン誘導体、部分的または完全に水素化された一置換または多置換のナフタレン誘導体、一置換または多置換のインダン誘導体、および完全に水素化されたアントラセン誘導体を含む有機溶媒である。
【0055】
特に好ましい第4の有機溶媒Dは、たとえば1-シクロヘキシルナフタレン、1-フェニルナフタレン、1-シクロヘキシルデカヒドロナフタレン、および1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンである。
【0056】
第4の有機溶媒Dは、200~400℃の範囲、好ましくは225~375℃の範囲、最も好ましくは250~350℃の範囲の沸点を有する
第4の有機溶媒Dの含有量は、調合物中の有機溶媒の総量を基準として0.01~15vol%、好ましくは0.1~15vol%以下である。
【0057】
第4の有機溶媒Dの粘度は、15mPas以上、好ましくは、20mPas以上、最も好ましくは25mPas以上である。
【0058】
少なくとも1種の有機機能材料は、第4の有機溶媒Dにおける溶解度が5g/l以上である。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
調合物中の少なくとも1種の有機機能材料の含有量は、調合物の全重量を基準として、0.001~20重量%の範囲、好ましくは0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.1~5重量%の範囲、最も好ましくは0.3~5重量%の範囲である。
【0063】
さらに、本発明による調合物は、好ましくは1~50mPa・sの範囲、より好ましくは2~40mPa・sの範囲、最も好ましくは2~20mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0064】
本発明による調合物および溶媒の粘度は、Discovery AR3形式(Thermo Scientific)の1°コーンプレート回転式レオメーターを用いて測定される。この装置により、温度とせん断速度の正確な制御が可能である。粘度の測定は、25.0℃(+/-0.2℃)の温度および500s-1のせん断速度で行われる。各サンプルは3回測定され、得られた測定値を平均する。
【0065】
本発明による調合物は、好ましくは15~50mN/mの範囲、より好ましくは20~45mN/mの範囲、最も好ましくは25~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0066】
好ましくは、有機溶媒ブレンドは、15~50mN/mの範囲、より好ましくは20~45mN/mの範囲、最も好ましくは25~40mN/mの範囲の表面張力を含む。
【0067】
表面張力は、FTA(First Ten Angstrom)1000接触角測角器を用い、20℃で測定できる。方法の詳細は、Roger P.Woodward、Ph.D.「Surface Tension Measurements Using the Drop Shape Method」により発表されているように、First
Ten Angstromから入手可能である。好ましくは、ペンダントドロップ法を用いて表面張力を判定することができる。この測定技術は、バルク液体または気相中のニードルから液滴を分注する。液滴の形状は、表面張力と重力と密度差との関係に由来する。ペンダントドロップ法を用い、http://www.kruss.de/services/education-theory/glossary/drop-shape-analysisを使用して表面張力をペンダントドロップの影画像から計算する。一般に使用され市販されている高精度液滴形状分析ツール、即ちFirst Ten ÅngstromのFTA1000を使用して全ての表面張力測定を遂行した。表面張力は、ソフトウェアFTA1000によって決定される。測定は全て、20℃乃至25℃の範囲である室温で遂行した。標準的な操作手順は、新しい使い捨ての液滴分注システム(注射器およびニードル)を用いた各調合物の表面張力の決定を含む。各液滴は、後で平均化される60回の測定を伴う1分の持続時間に亘って測定される。各調合物について、3滴測定される。最終的な値が、前記測定を平均化したものである。ツールは、表面張力が周知の様々な液体に照らして定期的にクロスチェックされる。
【0068】
本発明による調合物は、電子デバイスの機能層の製造に利用することができる少なくとも1種の有機機能材料を含む。機能材料は一般に、電子デバイスのアノードとカソードの間に導入される有機材料である。
【0069】
有機機能材料という用語は、とりわけ、有機導電体、有機半導体、有機蛍光化合物、有機リン光化合物、有機光吸収化合物、有機感光性化合物、有機光増感剤、および他の有機光活性化合物を意味する。有機機能材料という用語はさらに、遷移金属、希土類、ランタニド、およびアクチニドの有機金属錯体を包含する。
【0070】
有機機能材料は、蛍光発光体、リン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔伝導材料、正孔注入材料、nドーパント、pドーパント、ワイドバンドギャップ材料、電子阻止材料、および正孔阻止材料からなる群から選択される。
【0071】
有機機能材料の好ましい態様は、WO2011/076314A1に詳細に開示されており、ここで、この文献は、参照により本願に組み込まれる。
【0072】
好ましい態様において、有機機能材料は、正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送および電子注入材料からなる群から選択される有機半導体である。
【0073】
有機機能材料は、低分子量を有する化合物、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーとすることができ、ここで、有機機能材料はさらに、混合物の形態であってもよい。したがって、本発明による調合物は、低分子量を有する2種以上の異なる化合物、低分子量を有する1種の化合物と1種のポリマー、または2種のポリマー(ブレンド)を含んでもよい。
【0074】
有機機能材料は多くの場合、フロンティア軌道の特性によって説明され、これを以下により詳細に記載する。分子軌道、特に最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)、それらのエネルギー準位、および材料の最低三重項状態T1または最低励起一重項状態S1のエネルギーを、量子化学計算に基づき評価することができる。金属を含まない有機物質についてこれらの特性を計算するには、まず、「基底状態/半経験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/スピン一重項」法を用いて構造最適化が行われる。続いて、最適化された構造に基づきエネルギー計算が行われる。「6-31G(d)」基底集合(電荷0、スピン一重項)を伴う「TD-SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法がここでは用いられる。金属含有化合物の場合、構造は「基底状態/ハートリーフォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/スピン一重項」法により最適化される。エネルギー計算は上述の有機物質の場合の方法と同様に行われるが、金属原子の場合は「LanL2DZ」基底集合が用いられ、配位子の場合は「6-31G(d)」基底集合が用いられるという違いがある。エネルギー計算により、HOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhがハートリー単位で得られる。サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正される電子ボルト単位のHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、それから下記のように決定される:
HOMO(eV)=((HEh*27.212)-0.9899)/1.1206LUMO(eV)=((LEh*27.212)-2.0041)/1.385
本願の目的のため、これらの値をそれぞれ材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位とみなすこととする。
【0075】
最低三重項状態T1は、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する三重項状態のエネルギーと定義される。
【0076】
最低励起一重項状態S1は、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーと定義される。
【0077】
ここで記載される方法は、使用されるソフトウェアパッケージから独立しており、常に同じ結果を与える。この目的のために頻繁に使用されるプログラムの例は、「Gaussian09W」(Gaussian Inc.)とQ-Chem4.1(Q-Chem、Inc.)である。
【0078】
ここで正孔注入材料とも呼ばれる正孔注入特性を有する化合物は、正孔、即ち、正電荷のアノードから有機層への移動を単純化または促進する。正孔注入材料は、アノード準位の領域以上にあるHOMO準位を有し、即ち、一般には少なくとも-5.3eVである。
【0079】
ここで正孔輸送材料とも呼ばれる正孔輸送特性を有する化合物は、一般にはアノードまたは隣接層、たとえば正孔注入層から注入される正孔、即ち、正電荷を輸送することができる。正孔輸送材料は一般に、好ましくは少なくとも-5.4eVの高HOMO準位を有する。電子デバイスの構造によっては、正孔輸送材料を正孔注入材料として利用することも可能となり得る。
【0080】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する好ましい化合物としては、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ-パラ-ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、およびフランとこれらの誘導体、ならびに高HOMO(HOMO=最高被占分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物が挙げられる。
【0081】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する化合物として、フェニレンジアミン誘導体(US3615404)、アリールアミン誘導体(US3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP-A-56-46234)、多環式芳香族化合物(EP1009041)、ポリアリールアルカン誘導体(US3615402)、フルオレノン誘導体(JP-A-54-110837)、ヒドラゾン誘導体(US3717462)、アシルヒドラゾン、スチルベン誘導体(JP-A-61-210363)、シラザン誘導体(US4950950)、ポリシラン(JP-A-2-204996)、アニリンコポリマー(JP-A-2-282263)、チオフェンオリゴマー(特開平1(1989)-211399号)、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリピロール、ポリアニリン、および他の導電性高分子、ポルフィリン化合物(JP-A-63-2956965、US4720432)、芳香族ジメチリデン型化合物、カルバゾール化合物、たとえばCDBP、CBP、mCPなど、芳香族第3級アミンおよびスチリルアミン化合物(US4127412)、たとえば、ベンジジン型のトリフェニルアミン、スチリルアミン型のトリフェニルアミン、およびジアミン型のトリフェニルアミンなどに特に言及してもよい。アリールアミンデンドリマー(特開平8(1996)-193191号)、単量体トリアリールアミン(US3180730)、1以上のビニルラジカルおよび/または活性水素を含有する少なくとも1つの官能基を含有するトリアリールアミン(US3567450およびUS3658520)、またはテトラアリールジアミン(2つの第3級アミン単位はアリール基を介して結合されている)を使用することも可能である。より多くのトリアリールアミノ基が分子中に存在していてもよい。フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ブタジエン誘導体、およびキノリン誘導体、たとえばジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリンヘキサカルボニトリルなども適切である。
【0082】
少なくとも2つの第3級アミン単位を含有する芳香族第3級アミン(US2008/0102311A1、US4720432およびUS5061569)、たとえばNPD(α-NPD=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル)(US5061569)、TPD232(=N,N’-ビス-(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル)またはMTDATA(MTDATAまたはm-MTDATA=4,4’,4’’-トリス[3-メチルフェニル)フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)(JP-A-4-308688)、TBDB(=N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニル)-ジアミノビフェニレン)、TAPC(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロ-ヘキサン)、TAPPP(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン)、BDTAPVB(=1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン)、TTB(=N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPD(=4,4’-ビス[N-3-メチルフェニル]-N-フェニルアミノ)-ビフェニル)、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’’’-ジアミノ-1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’-クアテルフェニルなどが好ましく、同様に、カルバゾール単位を含有する第3級アミン、たとえばTCTA(=4-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゼンアミン)などが好ましい。同様に、US2007/0092755A1によるヘキサアザトリフェニレン化合物、およびフタロシアニン誘導体(たとえばH2Pc、CuPc(=銅フタロシアニン)、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc-O-GaPc)が好ましい。
【0083】
下記の式(TA-1)~(TA-12)のトリアリールアミン化合物が特に好ましく、EP1162193B1、EP650955B1、Synth.Metals 1997、91(1-3)、209、DE19646119A1、WO2006/122630A1、EP1860097A1、EP1834945A1、JP08053397A、US6251531B1、US2005/0221124、JP08292586A、US7399537B2、US2006/0061265A1、EP1661888、およびWO2009/041635に開示されている。式(TA-1)~(TA-12)の前記化合物は、置換されていてもよい。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
正孔注入材料として利用できるさらなる化合物が、EP0891121A1およびEP1029909A1に記載され、注入層は一般に、US2004/0174116A1に記載されている。
【0088】
正孔注入および/または正孔輸送材料として一般的に利用されるこれらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、ポリマー中で、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを生じる。
【0089】
電子注入および/または電子輸送特性を有する化合物は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、およびフェナジンとこれらの誘導体、ならびにトリアリールボラン、および低LUMO(LUMO=最低空分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。
【0090】
電子輸送および電子注入層に特に適する化合物は、8-ヒドロキシキノリンの金属キレート(たとえばLiQ、AlQ3、GaQ3、MgQ2、ZnQ2、InQ3、ZrQ4)、BAlQ、Gaオキシノイド錯体、4-アザフェナントレン-5-オール-Be錯体(US5529853A、式ET-1参照)、ブタジエン誘導体(US4356429)、ヘテロ環式光学的光沢剤(US4539507)、ベンゾイミダゾール誘導体(US2007/0273272A1)、たとえばTPBI(US5766779、式ET-2参照)など、1,3,5-トリアジン、たとえばスピロビフルオレニルトリアジン誘導体(たとえばDE102008064200による)、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロフルオレン、デンドリマー、テトラセン(たとえばルブレン誘導体)、1,10-フェナントロリン誘導体(JP2003-115387、JP2004-311184、JP2001-267080、WO02/043449)、シラシクロペンタジエン誘導体(EP1480280、EP1478032、EP1469533)、ボラン誘導体、たとえばSiを含有するトリアリールボラン誘導体(US2007/0087219A1、式ET-3参照)など、ピリジン誘導体(JP2004-200162)、フェナントロリン、とりわけ、1,10-フェナントロリン誘導体、たとえばBCPおよびBphenなど、さらにビフェニルまたは他の芳香族基を介して結合した幾つかのフェナントロリン(US2007-0252517A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US2007-0122656A1、式ET-4およびET-5参照)である。
【0091】
【0092】
同様に適するのは、ヘテロ環式有機化合物、たとえばチオピランジオキシド、オキサゾール、トリアゾール、イミダゾールまたはオキサジアゾールなどである。Nを含有する五員環、たとえばオキサゾールなど、好ましくは1,3,4-オキサジアゾール、たとえばとりわけUS2007/0273272A1に開示されている式ET-6、ET-7、ET-8およびET-9の化合物;チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾールの使用例は、とりわけUS2008/0102311A1、およびY.A.Levin、M.S.Skorobogatova、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 1967(2)、339-341を参照されたく、好ましくは式ET-10の化合物、シラシクロペンタジエン誘導体である。好ましい化合物は、下記の式(ET-6)~(ET-10)である:
【0093】
【0094】
有機化合物、たとえばフルオレノン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラ炭酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロン、およびアントラキノンジエチレンジアミンとこれらの誘導体を利用することも同様に可能である。
【0095】
2,9,10-置換アントラセン(1-もしくは2-ナフチル、および4-もしくは3-ビフェニルを有する)、または2つのアントラセン単位を含有する分子(US2008/0193796A1、式ET-11参照)が好ましい。また、非常に有利なのは、9,10-置換アントラセン単位のベンゾイミダゾール誘導体への結合(US2006/147747AおよびEP1551206A1、式ET-12およびET-13参照)である。
【0096】
【0097】
電子注入および/または電子輸送特性を生成できる化合物は、好ましくは-2.5eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.7eV未満のLUMOを生じる。
【0098】
本発明の調合物は、発光体を含んでもよい。発光体という用語は、任意のタイプのエネルギーの移動により生じ得る励起後に、発光を伴う基底状態への放射遷移を許容する材料を意味する。一般に、2つのクラスの発光体、即ち、蛍光およびリン光発光体が公知である。蛍光発光体という用語は、励起一重項状態から基底状態へ放射遷移が生じる材料または化合物を意味する。リン光発光体という用語は、好ましくは遷移金属を含有するルミネッセンス材料または化合物を意味する。
【0099】
ドーパントが系中で上記特性を引き起こす場合、発光体は、ドーパントと呼ばれることも多い。マトリックス材料とドーパントを含む系中のドーパントは、混合物の割合が低い方の成分を意味すると解釈される。これに対応して、マトリックス材料とドーパントを含む系中のマトリックス材料は、混合物の割合が高い方の成分を意味すると解釈される。したがって、リン光発光体という用語は、たとえばリン光ドーパントを意味すると解釈することもできる。
【0100】
発光が可能な化合物は、とりわけ、蛍光発光体およびリン光発光体を含む。これらは、とりわけ、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセンおよび/またはピレン構造を含有する化合物を含む。室温であっても高効率で三重項状態から発光できる、即ち、電気蛍光ではなく、多くの場合エネルギー効率の上昇をもたらす電気リン光を呈する化合物が特に好ましい。この目的に適するのは、まず、原子番号が36より大きい重い原子を含有する化合物である。上記の条件を満たすd-またはf-遷移金属を含有する化合物が好ましい。ここで、8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する化合物が特に好ましい。ここで、適する機能性化合物は、たとえばWO02/068435A1、WO02/081488A1、EP1239526A2およびWO2004/026886A2などに記載の様々な錯体である。
【0101】
蛍光発光体として機能できる好ましい化合物を、以下の例により記載する。好ましい蛍光発光体は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、およびアリールアミンのクラスから選択される。
【0102】
モノスチリルアミンは、1つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。ジスチリルアミンは、2つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。トリスチリルアミンは、3つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。テトラスチリルアミンは、4つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましく芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の意味でのアリールアミンまたは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの置換または無置換の芳香族またはヘテロ芳香族環系を含有する化合物を意味するものと解釈される。好ましくは、これらの芳香族またはヘテロ芳香族環系のうちの少なくとも1つは、好ましくは少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環系である。これらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン、または芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1つのジアリールアミノ基が好ましくは9位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基が好ましくは2,6または9,10位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミン、およびクリセンジアミンはこれと同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は好ましくはピレンに1位または1,6位で結合している。
【0103】
さらに好ましい蛍光発光体は、とりわけWO2006/122630に記載のインデノフルオレンアミンまたはインデノフルオレンジアミン;とりわけWO2008/006449に記載のベンゾインデノフルオレンアミンまたはベンゾインデノフルオレンジアミン;およびとりわけWO2007/140847に記載のジベンゾインデノフルオレンアミンまたはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。
【0104】
蛍光発光体として利用できるスチリルアミンのクラスからの化合物の例は、置換もしくは無置換トリスチルベンアミン、またはWO2006/000388、WO2006/058737、WO2006/000389、WO2007/065549およびWO2007/115610に記載のドーパントである。ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル誘導体は、US5121029に記載されている。さらなるスチリルアミンを、US2007/0122656A1に見出すことができる。
【0105】
特に好ましいスチリルアミン化合物は、US7250532B2に記載の式EM-1の化合物、およびDE102005058557A1に記載の式EM-2の化合物である:
【0106】
【0107】
特に好ましいトリアリールアミン化合物は、CN1583691A、JP08/053397AおよびUS6251531B1、EP1957606A1、US2008/0113101A1、US2006/210830A、WO2008/006449、ならびにDE102008035413に開示されている式EM-3~EM-15の化合物とその誘導体である:
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
蛍光発光体として利用できるさらなる好ましい化合物は、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746)、フルオレン、フルオランテン、ペリフランテン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(US2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US4769292、US6020078、US2007/0252517A1)、ピラン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、ケイ皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドン、およびキナクリドン(US2007/0252517A1)の誘導体から選択される。
【0112】
アントラセン化合物のうち、9,10-置換アントラセン、たとえば9,10-ジフェニルアントラセンおよび9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンなどが特に好ましい。1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)-ベンゼンも好ましいドーパントである。
【0113】
同様に、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体、たとえばDMQA(=N,N’-ジメチルキナクリドン)など、ジシアノメチレンピラン、たとえばDCM(=4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン)など、チオピラン、ポリメチン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランテン、ならびにインデノペリレンが好ましい。
【0114】
青色蛍光発光体は、好ましくはポリ芳香族化合物、たとえば9,10-ジ(2-ナフチルアントラセン)および他のアントラセン誘導体など、テトラセン、キサンテン、ペリレンの誘導体、たとえば2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンなど、フェニレン、たとえば4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル、フルオレン、フルオランテン、アリールピレン(US2006/0222886A1)、アリーレンビニレン(US5121029、US5130603)、ビス(アジニル)イミン-ホウ素化合物(US2007/0092753A1)、ビス(アジニル)メテン化合物、およびカルボスチリル化合物などである。
【0115】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、C.H.Chenら:「Recent developments in organic electroluminescent materials」Macro-mol.Symp.125、(1997)1-48および「Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices」Mat.Sci.and Eng.R、39(2002)、143-222に記載されている。
【0116】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、WO2010/012328A1、WO2014/111269A2およびPCT/EP2017/066712に開示されている炭化水素である。
【0117】
リン光発光体として機能することができる好ましい化合物を、以下の例により記載する。
【0118】
リン光発光体の例が、WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、およびWO2005/033244によって明らかにされている。一般に、先行技術に従いリン光OLEDに使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野で当業者に公知であるようなリン光錯体は全て適切であり、当業者は、進歩性を要することなくさらなるリン光錯体を使用することができる。
【0119】
リン光金属錯体は、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはRe、より好ましくはIrを含有する。
【0120】
好ましい配位子は、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体、1-フェニルイソキノリン誘導体、3-フェニルイソキノリン誘導体、または2-フェニルキノリン誘導体である。これらの化合物は全て、青色用に、たとえばフルオロ、シアノおよび/またはトリフルオロメチル置換基により置換されていてもよい。補助配位子は、好ましくはアセチルアセトナートまたはピコリン酸である。
【0121】
特に、式EM-16の四座配位子を有するPtまたはPdの錯体が適している。
【0122】
【0123】
式EM-16の化合物は、US2007/0087219A1により詳細に記載されており、ここで、上記式中の置換基と添え字の説明のため、開示を目的としてこの明細書を参照する。さらに、拡張環系を有するPt-ポルフィリン錯体(US2009/0061681A1)およびIr錯体、たとえば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィリン-Pt(II)、テトラフェニル-Pt(II)テトラベンゾポルフィリン(US2009/0061681A1)、cis-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)ピリジナト-N,C3’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)-キノリナト-N,C5’)Pt(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’)Pt(II)(アセチルアセトナート)、またはトリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)Ir(III)(=Ir(ppy)3、緑色)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2)Ir(III)(アセチルアセトナート)(=Ir(ppy)2アセチルアセトナート、緑色、US2001/0053462A1、Baldo、Thompsonら、Nature 403、(2000)、750-753)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(ピコリナート)(FIrpic、青色)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’)Ir(III)(テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート)、トリス(2-(ビフェニル-3-イル)-4-tert-ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)2Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、(45ooppz)2Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、2-フェニルピリジン-Ir錯体の誘導体、たとえばPQIr(=イリジウム(III)ビス(2-フェニルキノリル-N,C2’)アセチルアセトナート)など、トリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2-(2’-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C3)Ir(アセチルアセトナート)([Btp2Ir(acac)]、赤色、Adachiら、Appl.Phys.Lett.78(2001)、1622-1624)である。
【0124】
同様に適するのは、三価のランタニド、たとえばTb3+およびEu3+などの錯体(J.Kidoら、Appl.Phys.Lett.65(1994)、2124、Kidoら、Chem.Lett.657、1990、US2007/0252517A1)、またはマレオニトリルジチオレートを含むPt(II)、Ir(I)、Rh(I)のリン光錯体(Johnsonら、JACS105、1983、1795)、Re(I)トリカルボニル-ジイミン錯体(とりわけWrighton、JACS96、1974、998)、シアノ配位子とビピリジルまたはフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Maら、Synth.Metals94、1998、245)である。
【0125】
三座配位子を有するさらなるリン光発光体が、US6824895およびUS10/729238に記載されている。赤色発光リン光錯体は、US6835469およびUS6830828に見出される。
【0126】
リン光ドーパントとして使用される特に好ましい化合物は、とりわけUS2001/0053462A1およびInorg.Chem.2001、40(7)、1704-1711、JACS2001、123(18)、4304-4312に記載の式EM-17の化合物とその誘導体である。
【0127】
【0128】
誘導体は、US7378162B2、US6835469B2およびJP2003/253145Aに記載されている。
【0129】
さらに、US7238437B2、US2009/008607A1およびEP1348711に記載の式EM-18~EM-21の化合物とその誘導体を、発光体として利用できる。
【0130】
【0131】
同様に、量子ドットを発光体として利用することができ、これらの材料は、WO2011/076314A1に詳細に開示されている。
【0132】
特に、発光化合物と共にホスト材料として利用される化合物は、物質の様々なクラスからの材料を含む。
【0133】
ホスト材料は一般に、利用される発光体材料よりもHOMOとLUMOの間に大きいバンドギャップを有する。加えて、好ましいホスト材料は、正孔または電子輸送材料いずれかの特性を示す。さらに、ホスト材料は、電子および正孔輸送特性の両方を有することができる。
【0134】
ホスト材料は、場合により、特にホスト材料がOLEDにおいてリン光発光体と組み合わせて利用される場合、マトリックス材料とも呼ばれる。
【0135】
特に蛍光ドーパントと共に利用される好ましいホスト材料またはコホスト材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレン、またはジナフチルアントラセン)、特に縮合芳香族基を含有するオリゴアリーレン、たとえばアントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746、WO2009/069566)、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、デカシクレン、ルブレンなど、オリゴアリーレンビニレン(たとえばEP676461によるDPVBi=4,4’-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1’-ビフェニルもしくはスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえばWO04/081017による)、特に8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえばAlQ3(=アルミニウム(III)トリス(8-ヒドロキシキノリン))もしくはビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-(フェニルフェノリノラト)アルミニウムの金属錯体であって、さらにイミダゾールキレートを含むもの(US2007/0092753A1)、およびキノリン金属錯体、アミノキノリン-金属錯体、ベンゾキノリン-金属錯体、正孔伝導化合物(たとえばWO2004/058911による)、電子伝導化合物、特にケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドなど(たとえばWO2005/084081およびWO2005/084082による)、アトロプ異性体(たとえばWO2006/048268による)、ボロン酸誘導体(たとえばWO2006/117052による)またはベンゾアントラセン(たとえばWO2008/145239による)のクラスから選択される。
【0136】
ホスト材料またはコホスト材料として機能できる特に好ましい化合物は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/もしくはピレンを含むオリゴアリーレン、またはこれらの化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の意味でのオリゴアリーレンは、少なくとも3つのアリールまたはアリーレン基が互いに結合している化合物を意味するものと理解されることが意図される。
【0137】
好ましいホスト材料は、特に式(H-1)の化合物から選択される
【0138】
【0139】
(式中、Ar4、Ar5、Ar6は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、pは、1~5の範囲の整数を表し;Ar4、Ar5およびAr6の中のπ電子の合計は、p=1ならば少なくとも30、p=2ならば少なくとも36、p=3ならば少なくとも42である)。
【0140】
式(H-1)の化合物において、Ar5基は、特に好ましくはアントラセンを表し、Ar4およびAr6基は、9および10位で結合しており、ここで、これらの基は、任意に置換されていてもよい。特に非常に好ましくは、Ar4および/またはAr6基の少なくとも一方が、1-もしくは2-ナフチル、2-、3-もしくは9-フェナントレニル、または2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾアントラセニルから選択される縮合アリール基である。アントラセン系化合物は、US2007/0092753A1およびUS2007/0252517A1に記載されており、たとえば2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1’-ビフェニル)アントラセンおよび9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、ならびに1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンである。2つのアントラセン単位を含有する化合物(US2008/0193796A1)、たとえば10,10’-ビス[1,1’,4’,1’’]テルフェニル-2-イル-9,9’-ビスアントラセニルも好ましい。
【0141】
さらなる好ましい化合物は、アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾール、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール(US2007/0092753A1)の誘導体、たとえば2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、たとえば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)-フェニル]アントラセン、およびジスチリルアリーレン誘導体(US5121029)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、ポリメチン、ケイ皮酸エステル、ならびに蛍光染料である。
【0142】
アリールアミンおよびスチリルアミンの誘導体、たとえばTNB(=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル)が特に好ましい。金属オキシノイド錯体、たとえばLiQまたはAlQ3をコホストとして使用することができる。
【0143】
オリゴアリーレンをマトリックスとして含む好ましい化合物が、US2003/0027016A1、US7326371B2、US2006/043858A、WO2007/114358、WO2008/145239、JP3148176B2、EP1009044、US2004/018383、WO2005/061656A1、EP0681019B1、WO2004/013073A1、US5077142、WO2007/065678、およびDE102009005746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-2~H-8により記載する。
【0144】
【0145】
さらに、ホストまたはマトリックスとして利用できる化合物として、リン光発光体と共に利用される材料が挙げられる。
【0146】
これらの化合物は、ポリマー中の構造要素として利用することもでき、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、カルバゾール誘導体(たとえばWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527またはWO2008/086851による)、アザカルバゾール(たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584またはJP2005/347160による)、ケトン(たとえばWO2004/093207またはDE102008033943による)、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン(たとえばWO2005/003253による)、オリゴフェニレン、芳香族アミン(たとえばUS2005/0069729による)、双極性マトリックス材料(たとえばWO2007/137725による)、シラン(たとえばWO2005/111172による)、9,9-ジアリールフルオレン誘導体(たとえばDE102008017591による)、アザボロールまたはボロン酸エステル(たとえばWO2006/117052による)、トリアジン誘導体(たとえばDE102008036982による)、インドロカルバゾール誘導体(たとえばWO2007/063754またはWO2008/056746による)、インデノカルバゾール誘導体(たとえばDE102009023155およびDE102009031021による)、ジアザホスホール誘導体(たとえばDE102009022858による)、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、第3級芳香族アミン、スチリルアミン、アミノ置換カルコン誘導体、インドール、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、カルボジイミド誘導体、トリアリールアミノフェノール配位子をさらに含有してもよい8-ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、たとえばAlQ3(US2007/0134514A1)、金属錯体/ポリシラン化合物、ならびにチオフェン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾチオフェン誘導体が挙げられる。
【0147】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、mCP(=1,3-N,N-ジ-カルバゾリルベンゼン(=9,9’-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール))(式H-9)、CDBP(=9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール)、1,3-ビス(N,N’-ジカルバゾリル)ベンゼン(=1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル、およびCMTTP(式H-10)である。特に言及される化合物は、US2007/0128467A1およびUS2005/0249976A1に開示されている(式H-11およびH-13)。
【0148】
【0149】
好ましいテトラアリール-Si化合物が、たとえばUS2004/0209115、US2004/0209116、US2007/0087219A1、およびH.Gilman、E.A.Zuech、Chemistry & Industry(London、United Kingdom)、1960、120に開示されている。
【0150】
特に好ましいテトラアリール-Si化合物を、式H-14~H-21により記載する。
【0151】
【0152】
リン光ドーパント用のマトリックスの調製に特に好ましい群4からの化合物が、とりわけDE102009022858、DE102009023155、EP652273B1、WO2007/063754およびWO2008/056746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-22~H-25により記載する。
【0153】
【0154】
本発明に従い利用でき、ホスト材料として機能できる機能性化合物に関し、少なくとも1個の窒素原子を含有する物質が特に好ましい。これらは、好ましくは芳香族アミン、トリアジン誘導体およびカルバゾール誘導体を含む。したがって、カルバゾール誘導体は、特に、驚くべき高効率を示す。トリアジン誘導体は、電子デバイスの予期しないほどの長寿命をもたらす。
【0155】
複数の異なるマトリックス材料、特に少なくとも1種の電子伝導マトリックス材料と少なくとも1種の正孔伝導マトリックス材料を混合物として利用することも好ましい場合がある。たとえばWO2010/108579に記載されているような、電荷輸送マトリックス材料と、電荷輸送には関与するとしても顕著な程度には関与しない電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用も同様に好ましい。
【0156】
一重項状態から三重項状態への移行を改善し、発光体特性を有する機能性化合物の支持に利用され、これらの化合物のリン光特性を改善する化合物を利用することがさらに可能である。この目的に適するのは特に、たとえばWO2004/070772A2およびWO2004/113468A1に記載されているような、カルバゾールおよび架橋カルバゾール二量体単位である。この目的に同じく適切なのは、たとえばWO2005/040302A1に記載されているような、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似の化合物である。
【0157】
ここでnドーパントは、還元剤、即ち、電子供与体を意味するものと解釈される。nドーパントの好ましい例は、WO2005/086251A2によるW(hpp)4および他の電子リッチ金属錯体、P=N化合物(たとえばWO2012/175535A1、WO2012/175219A1)、ナフチレンカルボジイミド(たとえばWO2012/168358A1)、フルオレン(たとえばWO2012/031735A1)、フリーラジカルおよびジラジカル(たとえばEP1837926A1、WO2007/107306A1)、ピリジン(たとえばEP2452946A1、EP2463927A1)、N-ヘテロ環式化合物(たとえばWO2009/000237A1)、ならびにアクリジンおよびフェナジン(たとえばUS2007/145355A1)である。
【0158】
さらに、調合物は、ワイドバンドギャップ材料を機能材料として含んでもよい。ワイドバンドギャップ材料は、US7,294,849の開示内容の意味の材料を意味するものと解釈される。これらの系は、エレクトロルミネッセントデバイスにおいて特に有利な性能データを呈する。
【0159】
ワイドバンドギャップ材料として利用される化合物は、2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上、特に好ましくは3.5eV以上のバンドギャップを好ましくは有することができる。バンドギャップは、とりわけ最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位によって計算できる。
【0160】
さらに、調合物は、正孔阻止材料(HBM)を機能材料として含んでもよい。正孔阻止材料は、特にこの材料が発光層または正孔伝導層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において正孔(正電荷)の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、正孔阻止材料は、隣接層の中の正孔輸送材料よりも低いHOMO準位を有する。正孔阻止層は多くの場合、OLEDにおいて発光層と電子輸送層の間に配置される。
【0161】
原則として、任意公知の正孔阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の正孔阻止材料に加え、有利な正孔阻止材料は、金属錯体(US2003/0068528)、たとえばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)などである。Fac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2)-イリジウム(III)(Ir(ppz)3)がこの目的のために同様に利用されている(US2003/0175553A1)。フェナントロリン誘導体、たとえばBCPなど、またはフタルイミド、たとえばTMPPなども同様に利用できる。
【0162】
さらに、有利な正孔阻止材料が、WO00/70655A2、WO01/41512およびWO01/93642A1に記載されている。
【0163】
さらに、調合物は、電子阻止材料(EBM)を機能材料として含んでもよい。電子阻止材料は、特にこの材料が発光層または電子伝導層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において電子の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、電子阻止材料は、隣接層の中の電子輸送材料よりも高いLUMO準位を有する。
【0164】
原則として、任意公知の電子阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の電子阻止材料に加え、有利な電子阻止材料は、遷移金属錯体、たとえばIr(ppz)3(US2003/0175553)などである。
【0165】
電子阻止材料は、好ましくはアミン、トリアリールアミン、およびその誘導体から選択することができる。
【0166】
さらに、調合物に有機機能材料として利用できる機能性化合物は、低分子量化合物である場合、好ましくは3,000g/mol以下、より好ましくは2,000g/mol以下、最も好ましくは1,000g/mol以下の分子量を有する。
【0167】
特に興味深いのは、さらに、高いガラス転移温度により特徴付けられる機能性化合物である。これに関連し、調合物に有機機能材料として利用できる特に好ましい機能性化合物は、DIN51005に従い判定されるガラス転移温度が70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは125℃以上、最も好ましくは150℃以上のものである。
【0168】
調合物は、ポリマーを有機機能材料としてさらに含んでもよい。有機機能材料として上に記載される化合物は、比較的低分子量を有することが多く、ポリマーと混合することもできる。これらの化合物を共有結合的にポリマーに組み込むことが同様に可能である。これは、特に、反応性脱離基、たとえば臭素、ヨウ素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステル、または反応性重合可能基、たとえばオレフィンもしくはオキセタンによって置換された化合物により可能である。これらは、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマー製造用のモノマーとして使用することができる。ここでのオリゴマー化または重合は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基により、または重合可能基により起きる。さらに、この種の基を介してポリマーを架橋させることが可能である。本発明による化合物とポリマーを、架橋または非架橋層として利用することができる。
【0169】
有機機能材料として利用できるポリマーは多くの場合、上記の化合物の文脈において記載した単位または構造要素、とりわけWO02/077060A1、WO2005/014689A2およびWO2011/076314A1において開示され広く記載されたものを含有する。これらは、参照することにより本願に組み込まれる。機能材料は、たとえば下記のクラスに由来するものとすることができる:
群1:正孔注入および/または正孔輸送特性を生成することができる構造要素;群2:電子注入および/または電子輸送特性を生成することができる構造要素;群3:群1および群2に関連して記載される特性を併せ持つ構造要素;
群4:発光特性、特にリン光基を有する構造要素;
群5:いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する構造要素;
群6:結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与える構造要素;群7:典型的には骨格として使用される構造要素。
【0170】
ここでの構造要素は、さらに様々な機能を有していてもよく、明確な割り当てが有利である必要はない。たとえば、群1の構造要素が同様に骨格として機能してもよい。
【0171】
群1からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーは、好ましくは上記の正孔輸送または正孔注入材料に対応する単位を含有してもよい。
【0172】
群1のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、およびフランとこれらの誘導体、ならびに高HOMOを有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。これらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを有する。
【0173】
とりわけ、下記の式HTP-1の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0174】
【0175】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Ar1は、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、単結合、または任意に置換されていてもよい単環式もしくは多環式アリール基であり;
Ar2は、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
Ar3は、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
mは、1、2または3である)。
【0176】
式HTP-1A~HTP-1Cの単位からなる群から選択されるHTP-1の反復単位が特に好ましい:
【0177】
【0178】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Raは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、置換もしくは無置換芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリルもしくはカルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはヒドロキシ基であり;
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2、3、4または5である)。
【0179】
とりわけ、下記の式HTP-2の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0180】
【0181】
(式中、符号は下記の意味を有する:
T1およびT2は、チオフェン、セレノフェン、チエノ[2,3-b]チオフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ピロールおよびアニリンから独立して選択され、ここで、これらの基は1つ以上のラジカルRbによって置換されていてもよく;
Rbは、出現する毎にハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され;
R0およびR00は、それぞれ独立してH、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
Ar7およびAr8は、互いに独立して、任意に置換されていてもよく任意に隣接するチオフェンまたはセレノフェン基の一方または両方の2,3位に結合していてもよい、単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
cおよびeは、互いに独立して0、1、2、3または4であり、ここで、1<c+e≦6であり;
dおよびfは、互いに独立して0、1、2、3または4である)。
【0182】
正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーの好ましい例が、とりわけWO2007/131582A1およびWO2008/009343A1に記載されている。
【0183】
群2からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される電子注入および/または電子輸送特性を有するポリマーは、好ましくは上記の電子注入および/または電子輸送材料に対応する単位を含有してもよい。
【0184】
電子注入および/または電子輸送特性を有する群2のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、およびフェナジンとこれらの誘導体、さらにトリアリールボラン、または低LUMO準位を有するさらなるO、SもしくはN含有ヘテロ環式化合物から誘導される。これらの群2の構造要素は、好ましくは-2.7eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.8eV未満のLUMOを有する。
【0185】
有機機能材料は、好ましくは群3からの構造要素を含有するポリマーとすることができ、ここで、正孔および電子移動性を改善する構造要素(即ち、群1および2からの構造要素)は、互いに直接結合している。これらの構造要素の一部は、発光体として機能でき、ここで、発光色は、たとえば緑色、赤色または黄色にシフトされてもよい。したがって、それらの使用は、たとえば、元来青色に発光するポリマーによる他の発光色または広帯域発光の生成にとって有利である。
【0186】
群4からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される発光特性を有するポリマーは、好ましくは上記の発光体材料に対応する単位を含有していてもよい。ここで、リン光基、特に8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する単位を含有する上記の発光金属錯体を含有するポリマーが好ましい。
【0187】
いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する群5の単位を含有する有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくはリン光化合物の支持に利用することができ、好ましくは上記の群4の構造要素を含有するポリマーである。ここでは、高分子三重項マトリックスを使用することができる。
【0188】
この目的に適するのは、特に、たとえばDE10304819A1およびDE10328627A1に記載されているような、カルバゾールおよび連結カルバゾール二量体単位である。同じくこの目的に適するのは、たとえばDE10349033A1に記載されているようなケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホンおよびシラン誘導体、ならびに類似の化合物である。さらに、好ましい構造単位は、リン光化合物と共に利用されるマトリックス材料に関連して上に記載した化合物に由来するものとすることができる。
【0189】
さらなる有機機能材料は、好ましくはポリマーの形態または発光色に影響を与える群6の単位を含有するポリマーである。上に言及されたポリマーの他に、これらは、上記の基にカウントされない少なくとも1つのさらなる芳香族または別の共役構造を有するものである。したがって、これらの基は、電荷担体移動性、非有機金属錯体、または一重項-三重項移行に対して効果がほとんどないか、全くない。
【0190】
この種の構造単位は、結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与えることができる。したがって、構造単位によっては、これらのポリマーは、発光体として使用することもできる。
【0191】
したがって、蛍光OLEDの場合、6~40個のC原子を有する芳香族構造要素、またはトラン、スチルベンもしくはビススチリルアリーレン誘導体単位が好ましく、そのそれぞれは、1つ以上のラジカルによって置換されていてもよい。ここでは、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、1,4-もしくは9,10-アントリレン、1,6-、2,7-もしくは4,9-ピレニレン、3,9-もしくは3,10-ペリレニレン、4,4’-ビフェニレン、4,4’’-テルフェニリレン、4,4’-ビ-1,1’-ナフチリレン、4,4’-トラニレン、4,4’-スチルベニレン、または4,4’’-ビススチリルアリーレン誘導体から誘導される基の使用が特に好ましい。
【0192】
有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくは群7の単位を含有し、好ましくは、多くの場合骨格として使用される6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する。
【0193】
これらは、とりわけ、たとえばUS5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されている4,5-ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10-テトラ-ヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されている9,9-スピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/104264A1に開示されている9,10-フェナントレン誘導体、たとえばWO2005/014689A2に開示されている9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体、たとえばWO2004/041901A1およびWO2004/113412A2に開示されている5,7-ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体とcis-およびtrans-インデノフルオレン誘導体、ならびにたとえばWO2006/063852A1に開示されているビナフチレン誘導体、ならびにたとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1、WO2007/043495A1、WO2005/033174A1、WO2003/099901A1およびDE102006003710に開示されているさらなる単位を含む。
【0194】
たとえばUS5,962,631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されているフルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されているスピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1に開示されているベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾフルオレン基とその誘導体から選択される群7の構造単位が特に好ましい。
【0195】
特に好ましい群7の構造要素は、一般式PB-1で表される:
【0196】
【0197】
(式中、符号と添え字は、下記の意味を有する:
A、BおよびB’はそれぞれ、また、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なっており、好ましくは-CRcRd-、-NRc-、-PRc-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CO-、-CS-、-CSe-、-P(=O)Rc-、-P(=S)Rc-および-SiRcRd-から選択される二価基であり;
RcおよびRdは、出現する毎にH、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X、-C(=O)R0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され、ここで、RcおよびRdは、任意にそれらが結合しているフルオレンラジカルと共にスピロ基を形成してもよく;
Xは、ハロゲンであり;
R0およびR00はそれぞれ独立して、H、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
gは、各場合において、独立して0または1であり、hは、各場合において、独立して0または1であり、ここで、副単位中のgとhの合計は好ましくは1であり;
mは、1以上の整数であり;
Ar1およびAr2は、互いに独立して任意に置換されていてもよく任意にインデノフルオレンの7,8位または8,9位に結合されていてもよい単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
aおよびbは、互いに独立して0または1である)。
【0198】
RcおよびRd基がこれらの基が結合しているフルオレン群と共にスピロ基を形成する場合、この基は好ましくはスピロビフルオレンを表す。
【0199】
式PB-1A~PB-1Eの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0200】
【0201】
(式中、Rcは、式PB-1について上に記載した意味を有し、rは、0、1、2、3または4であり、Reは、ラジカルRcと同じ意味を有する)。
【0202】
Reは、好ましくは-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR0R00、-C(=O)X、-C(=O)R0、-NR0R00、4~40個、好ましくは6~20個のC原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、アリールもしくはヘテロアリール基、または1~20個、好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖、分枝もしくは環状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ基であり、ここで、1個以上の水素原子は任意にFまたはClによって置換されていてもよく、R0、R00基およびXは、式PB-1について上に記載した意味を有する。
【0203】
式PB-1F~PB-1Iの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0204】
【0205】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Lは、H、ハロゲン、または1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状もしくは分枝アルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくはメチル、i-プロピル、t-ブチル、n-ペントキシまたはトリフルオロメチルを表し;
L’は、1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状または分枝アルキルまたはアルコキシ基であり、好ましくはn-オクチルまたはn-オクチルオキシを表す)。
【0206】
本発明を実施するには、上記群1~7の構造要素の2種以上を含有するポリマーが好ましい。さらに、ポリマーは、好ましくは上記の1つの群からの構造要素の2種以上を含有する、即ち、1つの群から選択される構造要素の混合物を含むことが規定されてもよい。
【0207】
特に、発光特性、好ましくは少なくとも1種のリン光基を有する少なくとも1種の構造要素(群4)の他に、少なくとも1種のさらなる上記群1~3、5または6の構造要素を追加で含有するポリマーが特に好ましく、ここで、これらは好ましくは群1~3から選択される。
【0208】
様々なクラスの基の割合は、ポリマー中に存在する場合、広い範囲内とすることができ、ここで、これらは、当業者には公知である。各場合において、上記群1~7の構造要素から選択される、ポリマー中に存在する1つのクラスの割合が、好ましくは各場合において5mol%以上、特に好ましくは各場合において10mol%以上である場合、驚くべき利点を達成することができる。
【0209】
白色発光コポリマーの調製が、とりわけDE10343606A1に詳細に記載されている。
【0210】
溶解度を向上させるため、ポリマーは、対応する基を含有してもよい。好ましくは、ポリマーが置換基を含有し、その結果反復単位1つ当たり平均で少なくとも2個の非芳香族炭素原子、特に好ましくは少なくとも4個、とりわけ好ましくは少なくとも8個の非芳香族炭素原子が存在し、ここで、平均は数平均に関することが規定されてもよい。ここで、個々の炭素原子は、たとえば、OまたはSによって置きかえられていてもよい。ただし、特定の割合の、任意に全ての反復単位が、非芳香族炭素原子を含有する置換基を含有しないことも可能である。ここでは、長鎖置換基は、有機機能材料を用いて得ることができる層に悪影響を及ぼす可能性があるため、短鎖置換基が好ましい。置換基は、好ましくは直鎖中に12個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは6個以下の炭素原子を含有する。
【0211】
発明に従い有機機能材料として利用されるポリマーは、ランダム、交互もしくはレジオ規則性コポリマー、ブロックコポリマー、またはこれらのコポリマー形態の組合せとすることができる。
【0212】
さらなる態様において、有機機能材料として利用されるポリマーは、側鎖を有する非共役ポリマーとすることができ、ここで、この態様は、ポリマーに基づくリン光OLEDの場合に特に重要である。一般に、リン光ポリマーは、ビニル化合物のフリーラジカル共重合によって得ることができ、ここで、これらのビニル化合物は、とりわけUS7250226B2に開示されているように、リン光発光体を有する少なくとも1つの単位および/または少なくとも1つの電荷輸送単位を含有する。さらなるリン光ポリマーが、とりわけJP2007/211243A2、JP2007/197574A2、US7250226B2およびJP2007/059939Aに記載されている。
【0213】
さらなる好ましい態様において、非共役のポリマーは、スペーサー単位により互いに連結された骨格単位を含有する。骨格単位に基づく非共役のポリマーに基づくこうした三重項発光体の例が、たとえばDE102009023154に開示されている。
【0214】
さらなる好ましい態様において、非共役ポリマーは、蛍光発光体として設計することができる。側鎖を有する非共役ポリマーに基づく好ましい蛍光発光体は、アントラセンもしくはベンゾアントラセン基、またはこれらの基の誘導体を側鎖に含有し、ここで、これらのポリマーは、たとえばJP2005/108556、JP2005/285661およびJP2003/338375に開示されている。
【0215】
これらのポリマーは多くの場合、電子または正孔輸送材料として利用することができ、ここで、これらのポリマーは、好ましくは非共役ポリマーとして設計される。
【0216】
さらに、調合物に有機機能材料として利用される機能性化合物は、高分子化合物の場合、好ましくは10,000g/mol以上、特に好ましくは20,000g/mol以上、とりわけ好ましくは40,000g/mol以上の分子量Mwを有する。
【0217】
ここで、ポリマーの分子量Mwは、好ましくは10,000~2,000,000g/molの範囲、特に好ましくは20,000~1,000,000g/molの範囲、非常に特に好ましくは40,000~300,000g/molの範囲である。分子量Mwは、内部ポリスチレン標準に対してGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)により決定される。
【0218】
機能性化合物の説明のための上記に引用した出版物は、開示を目的として参照することにより本願に組み込まれる。
【0219】
本発明による調合物は、電子デバイスのそれぞれの機能層の製造に必要な有機機能材料を全て含んでもよい。たとえば、正孔輸送、正孔注入、電子輸送または電子注入層が1種の機能性化合物から正確に構築される場合、調合物は、この化合物を有機機能材料として正確に含む。たとえば、発光層が発光体をマトリックスまたはホスト材料と組み合わせて含む場合、本願において他の場所でより詳細に説明したように、調合物は、有機機能材料として発光体とマトリックスまたはホスト材料の混合物を正確に含む。
【0220】
前記成分の他に、本発明による調合物は、さらなる添加剤および加工助剤を含んでもよい。これらは、とりわけ、表面活性物質(界面活性剤)、滑沢剤およびグリース、粘度を調整する添加剤、伝導性を増加させる添加剤、分散剤、疎水化剤、接着促進剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、反応性または非反応性であってもよい希釈剤、充填剤、補助剤、加工助剤、染料、顔料、安定剤、増感剤、ナノ粒子、ならびに阻害剤を含む。
【0221】
本発明はさらに、電子デバイスの機能層の製造に利用することができる少なくとも1種の有機機能材料と、少なくとも4種の異なる有機溶媒、A、B、CおよびDとが混合される、本発明による調合物を調製する方法に関する。
【0222】
本発明による調合物は、好ましい電子または光電子部品、たとえばOLEDの製造に必要とされるような層中に有機機能材料が存在する層または多層構造の製造に利用することができる。
【0223】
本発明の調合物は、好ましくは、基板または基板に施された層のうちの1つの層の上に機能層を形成するために利用することができる。基板は、バンク構造を有することも有さないこともできる。
【0224】
本発明は同様に、本発明による調合物を基板に塗布し乾燥させる、電子デバイスを製造する方法に関する。
【0225】
機能層は、たとえばフラッドコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、凸版印刷、グラビア印刷、輪転印刷、ローラーコーティング、フレキソ印刷、オフセット印刷またはノズル印刷により、好ましくはインクジェット印刷により基板または基板に施された層のうちの1つの層上に製造することができる。
【0226】
本発明による調合物を基板またはすでに施された機能層の上に塗布した後、溶媒を上記連続相から除去するため、乾燥工程を実施することができる。乾燥は、気泡形成を回避し均一なコーティングを得るため、好ましくは比較的低温度で、比較的長時間に亘り実施することができる。乾燥は、好ましくは80~300℃、より好ましくは150~250℃、最も好ましくは160~200℃の範囲の温度で実施することができる。ここで、乾燥は、好ましくは10-6mbar~2barの範囲、より好ましくは10-2mbar~1barの範囲、最も好ましくは10-1mbar~100mbarの範囲の圧力で実施することができる。乾燥プロセスの間、基板の温度は、-15℃から250℃まで変化する可能性がある。乾燥時間は、達成すべき乾燥の程度に依存し、ここで、焼結と組み合わせて少量の水を比較的高温度で任意に除去することができ、好ましくはこれを実施すべきである。
【0227】
異なるまたは同一の機能層の形成と共に、プロセスが数回繰り返されることがさらに規定されてもよい。ここで、形成される機能層の架橋をたとえばEP0637899A1に開示されているように行い、その分解を防止することができる。
【0228】
本発明はさらに、電子デバイスを製造する方法によって得ることができる電子デバイスに関する。
【0229】
本発明はさらに、上記の電子デバイスを製造する方法によって得ることができる少なくとも1種の有機機能材料を含む少なくとも1つの機能層を有する電子デバイスに関する。
【0230】
電子デバイスは、アノード、カソード、およびその間の少なくとも1つの機能層を含むデバイスを意味するものと解釈され、ここで、この機能層は、少なくとも1種の有機または有機金属化合物を含む。
【0231】
有機電子デバイスは、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、高分子エレクトロルミネッセントデバイス(PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機光起電(OPV)セル、有機光学検出器、有機光受容器、有機電場消光デバイス(O-FQD)、有機電気センサ、発光電気化学セル(LEC)または有機レーザーダイオード(O-レーザー)であり、より好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)または高分子エレクトロルミネッセントデバイス(PLED)である。
【0232】
活性成分は一般に、アノードとカソードの間に導入される有機または無機の材料であり、ここで、これらの活性成分は、電子デバイスの特性、たとえばその性能および/またはその寿命を実現、維持および/または向上させるもので、たとえば電荷注入、電荷輸送または電荷阻止材料であるが、特に発光材料とマトリックス材料である。したがって、電子デバイスの機能層の製造に利用できる有機機能材料は、好ましくは電子デバイスの活性成分を含む。
【0233】
有機エレクトロルミネッセントデバイスは、本発明の好ましい態様である。有機エレクトロルミネッセントデバイスは、カソード、アノード、および少なくとも1つの発光層を含む。
【0234】
2種以上の三重項発光体の混合物をマトリックスと共に利用することがさらに好ましい。ここで、短波長発光スペクトルを有する三重項発光体は、より長波長の発光スペクトルを有する三重項発光体のためのコマトリックスとして機能する。
【0235】
この場合、発光層中のマトリックス材料の割合は、蛍光発光層の場合、好ましくは50乃至99.9体積%、より好ましくは80乃至99.5体積%、最も好ましくは92乃至99.5体積%であり、リン光発光層の場合、85乃至97体積%である。
【0236】
これに対応して、ドーパントの割合は、蛍光発光層の場合、好ましくは0.1乃至50体積%、より好ましくは0.5乃至20体積%、最も好ましくは0.5乃至8体積%であり、リン光発光層の場合、3乃至15体積%である。
【0237】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの発光層は、複数のマトリックス材料を含む系(混合マトリックス系)および/または複数のドーパントをさらに包含してもよい。この場合も、ドーパントは一般に、系中での割合が低い方の材料であり、マトリックス材料は、系中での割合が高い方の材料である。ただし、個々の場合、系中での個々のマトリックス材料の割合は、個々のドーパントの割合より低くてもよい。
【0238】
混合マトリックス系は、好ましくは2または3種の異なるマトリックス材料、より好ましくは2種の異なるマトリックス材料を含む。ここで、好ましくは、2種の材料の一方は、正孔輸送特性を有する材料であり、他方の材料は、電子輸送特性を有する材料である。
ただし、混合マトリックス成分の所望の電子輸送および正孔輸送特性は、単一の混合マトリックス成分が主として、あるいは完全に併せ持っていてもよく、この場合、さらなる混合マトリックス成分(複数可)は、他の機能を果たす。ここで、2種の異なるマトリックス材料は、1:50~1:1、好ましくは1:20~1:1、より好ましくは1:10~1:1、最も好ましくは1:4~1:1の比で存在してもよい。混合マトリックス系は、好ましくはリン光有機エレクトロルミネッセントデバイスで利用される。混合マトリックス系に関するさらなる詳細は、たとえばWO2010/108579に見出すことができる。
【0239】
これらの層とは別に、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、さらなる層、たとえば各場合において、1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層、電子阻止層、電荷生成層(IDMC 2003、Taiwan;Session 21 OLED(5)、T.Matsumoto、T.Nakada、J.Endo、K.Mori、N.Kawamura、A.Yokoi、J.Kido、Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機もしくは無機p/n接合をさらに含んでもよい。ここで、1つ以上の正孔輸送層をたとえば金属酸化物、たとえばMoO3もしくはWO3などで、または(過)フッ素化電子不足芳香族化合物でpドープすること、および/または1つ以上の電子輸送層をnドープすることが可能である。たとえば励起子阻止機能を有する、および/またはエレクトロルミネッセントデバイスにおける電荷バランスを制御する中間層を2つの発光層の間に導入することが同様に可能である。ただし、指摘すべきことであるが、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在する必要があるとは限らない。これらの層は、上記に定義されるように、本発明による調合物の使用の際に、同様に存在してもよい。
【0240】
本発明のさらなる態様において、デバイスは、複数の層を含む。ここで、本発明による調合物は、好ましくは正孔輸送、正孔注入、電子輸送、電子注入および/または発光層の製造に利用することができる。
【0241】
したがって、本発明はさらに、正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送、電子注入、電荷阻止および/または電荷生成層のうちの少なくとも3つの層を含み、好ましい態様においては前記層の全てを含むが、少なくとも1つの層が本発明に従い利用すべき調合物により得られたものである電子デバイスに関する。層、たとえば正孔輸送および/または正孔注入層の厚さは、好ましくは1~500nmの範囲、より好ましくは2~200nmの範囲とすることができる。
【0242】
デバイスは、本発明による調合物の使用により施されたものではない、低分子量化合物またはポリマーから構築される層をさらに含んでもよい。これらは、高真空中での低分子量化合物の蒸発により製造することができる。
【0243】
本発明の好ましい態様によると、デバイスは、低分子量化合物の蒸発によって施される発光層を含む。こうした態様によると、技術水準において真空塗布発光層に使用される公知の任意のマトリックス材料および発光体を使用してもよい。こうした目的のための三重項マトリックス材料として、特に下記の材料を使用することができる:
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
これらの材料は、蒸着により施される正孔輸送層中の正孔輸送材料としても使用することができる。これらの化合物の合成は、先行技術に具体的に開示されていない場合、先行技術において一般に公知の方法に従い、当業者が行うことができる。たとえば、化合物(22)の合成は、WO2007/072952に、その出願の化合物3の合成について記載されているように行うことができる(32~33ページ参照)。
【0248】
加えて、利用すべき化合物を純粋な物質としてではなく、代わりに任意所望のタイプのさらなる高分子、オリゴマー、樹状または低分子量物質と共に混合物(ブレンド)として使用することも好ましい可能性がある。これらは、たとえば電子特性を改善してもよく、それ自体発光してもよい。
【0249】
本発明の好ましい態様において、本発明による調合物は、発光層にホスト材料またはマトリックス材料として利用される有機機能材料を含む。ここで、調合物は、ホスト材料またはマトリックス材料に加えて、上記の発光体を含んでもよい。ここで、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、1つ以上の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在する場合、好ましくは、これらは380nm乃至750nmに複数の発光極大を有して全体として白色発光を生じる、即ち、蛍光またはリン光を発することができる様々な発光化合物が発光層に使用される。3層系が非常に特に好ましく、ここで、3層は、青色、緑色、およびオレンジ色または赤色発光を呈する(基本的構造については、たとえばWO2005/011013を参照されたい)。白色発光デバイスは、たとえばLCDディスプレイの背面照明として、または一般的な照明用途に適している。
【0250】
複数のOLEDを上下に配置し、実現すべき光収率に関してさらなる効率上昇を可能にすることもできる。
【0251】
光のカップリングアウト(coupling-out)を改善するため、OLEDにおける光出力側の最終有機層を、たとえば、ナノ発泡体の形態として全反射の割合の低下をもたらすこともできる。
【0252】
1つ以上の層が昇華プロセスにより施される有機エレクトロルミネッセントデバイスがさらに好ましく、ここで、材料は、真空昇華ユニットの中で10-5mbar未満、好ましくは10-6mbar未満、より好ましくは10-7mbar未満の圧力で蒸着により施される。
【0253】
さらに、本発明による電子デバイスの1つ以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスによって、またはキャリアガス昇華を活用して施されることが規定されてもよく、ここで、材料は、10-5mbar乃至1barの圧力で施される。
【0254】
さらに、本発明による電子デバイスの1つ以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングなどにより、または任意所望の印刷プロセス、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷もしくはオフセット印刷などであるが、特に好ましくはLITI(光誘起熱イメージング、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷により製造されることが規定されてもよい。
【0255】
デバイスは通常、カソードとアノード(電極)を含む。電極(カソード、アノード)は、本発明の目的のために、高度に効率的な電子または正孔注入を確保するため、それらのバンドエネルギーが隣接する有機層のバンドエネルギーに可能な限り近くなるように選択される。
【0256】
カソードは、好ましくは金属錯体、低い仕事関数を有する金属、金属合金または様々な金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえばCa、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)などを含む多層構造を含む。多層構造の場合、比較的高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえばAgおよびAgナノワイヤ(AgNW)を前記金属に加えて使用することもでき、この場合、金属の組合せ、たとえばCa/AgまたはBa/Agなどが一般に用いられる。高誘電率を有する材料の薄い中間層を金属製カソードと有機半導体の間に導入することも好ましい可能性がある。この目的に適するのは、たとえば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物、さらに対応する酸化物(たとえばLiF、Li2O、BaF2、MgO、NaFなど)である。この層の層厚は、好ましくは0.1乃至10nm、より好ましくは0.2乃至8nm、最も好ましくは0.5乃至5nmである。
【0257】
アノードは、好ましくは高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは対真空で4.5eVを超える電位を有する。この目的に適するのは、一方で高い酸化還元電位を有する金属、たとえばAg、PtまたはAuなどである。他方、金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiOx、Al/PtOx)も好ましい可能性がある。用途によっては、電極の少なくとも一方は、有機材料の照射(O-SC)または光のカップリングアウト(OLED/PLED、O-lasers)のいずれかを促進するため、透明でなければならない。好ましい構造は、透明なアノードを使用する。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。伝導性のドープされた有機材料、特に伝導性のドープされたポリマー、たとえばポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリアニリン(PANI)など、またはこれらのポリマーの誘導体がさらに好ましい。pドープされた正孔輸送材料を正孔注入層としてアノードに適用することがさらに好ましく、ここで、適切なpドーパントは、金属酸化物、たとえばMoO3もしくはWO3、または(過)フッ素化電子不足芳香族化合物である。さらなる適切なpドーパントは、HAT-CN(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)またはNovaled製の化合物NDP9である。この種の層は、低いHOMO、即ち、高い値のHOMOを有する材料における正孔注入を単純化する。
【0258】
一般に、先行技術に従い層に使用されるような材料は全て、さらなる層に使用でき、当業者は、電子デバイスにおいて進歩性を要することなくこれらの材料のそれぞれを本発明による材料と組み合わせることができる。
【0259】
これに対応し、デバイスは、それ自体公知の方法で構築され、用途によっては、接点が設けられ、こうしたデバイスの寿命は水および/または空気の存在下では大幅に短くなるため、最終的に密閉される。
【0260】
本発明による調合物と、それから得ることができる電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセントデバイスは、下記の驚くべき利点の1つ以上によって先行技術とは区別される:
1.本発明による調合物を用いて得ることができる電子デバイスは、従来の方法を用いて得られる電子デバイスと比較して、非常に高い安定性と非常に長い寿命を呈する。
2.本発明による調合物は、従来の方法を用いて加工することができ、その結果、費用優位性を実現することができる。
3.本発明による調合物に利用される有機機能材料は、特定の制約を何ら受けることなく、本発明の方法を包括的に利用することを可能とする。
4.本発明の調合物を用いて得ることができるコーティングは、特にコーティングの均一性に関して優れた品質を呈する。
【0261】
これら上記の利点は、他の電子的特性の低下を伴わない。
【0262】
指摘すべきことであるが、本発明に記載の態様の変形は、本発明の範囲内に含まれる。
本発明において開示されるそれぞれの特徴は、明確に排除されない限り、同一、同等または類似の目的を果たす代替的特徴によって置きかえることができる。したがって、本発明において開示されるそれぞれの特徴は、特に断らない限り、包括的シリーズの一例、または同等もしくは類似の特徴と見なすべきである。
【0263】
本発明の特徴は全て、特定の特徴および/または工程が相互に排他的でない限り、任意の方法で互いに組み合わせることができる。これは、特に、本発明の好ましい特徴に当てはまる。同様に、必須ではない組合せの特徴は、個別に(かつ組み合わせることなく)使用することができる。
【0264】
さらに指摘すべきことであるが、多くの特徴、特に本発明の好ましい態様の特徴は、それ自体進歩性があり、本発明の態様の一部分に過ぎないと見なすべきではない。これらの特徴について、本発明で請求されているそれぞれの発明に加えて、あるいはその代替として、独立した保護を求めることができる。
【0265】
本発明により開示される技術的行為についての教示を抽出し、他の例と組み合わせることができる。
【0266】
以下に実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、それにより限定するものではない。
【0267】
当業者は、この記載を使用して創作技術を利用する必要なく本発明によるさらなる電子デバイスを製造することができ、したがって、請求された範囲全体を通じて本発明を実施することができる。
【0268】
[例]
A)膜形成
表5に示すように、正孔注入層(HIL)用に21種のインクを7g/Lの濃度で製造した。組成は、デバイス例に使用したインクと同一である(下記参照)。インクをインクジェット印刷し、乾燥後に膜プロファイルを測定した。溶媒3-フェノキシトルエンを参考として選び、
図2からわかるように、U字形の膜プロファイルを示している。一般に、水素結合を含有する溶媒(2-フェノキシエタノール)を1-エチルナフタレン/ペンチルベンゼンの混合物に添加することにより、膜プロファイルが大幅な向上を示し、それは、平坦な膜が実現できることを意味する。ただし、例1の膜はわずかに粗いものである(中央部の粗さは1.8nmである)。粗さを低減するため、追加の溶媒1-フェニルナフタレンを添加する(例2~8)。表5から明らかなように、粗さは1nm未満にまで改善される。平坦な膜は、1-フェニルナフタレンの割合を0~5%に調節することにより実現することができる。調合物中に過剰な1-フェニルナフタレンが存在すると、膜プロファイルはW字形となる(例8、1-フェニルナフタレン10%)。水素結合を含有する様々な溶媒(表5の例9~20参照)および1-エチルナフタレン/ペンチルベンゼン/1-フェニルナフタレンを含むさらなるインクを調製する。参考と比較して、これらの膜プロファイルは全て大幅に向上し、より高い平坦さを示している。
【0269】
2μmスタイラスを有するKLA-Tencor CorporationのプロファイルメーターAlpha-step D120を使用して膜プロファイルを測定した。下記の式により平坦性指数を計算し、平坦さを判定するために使用する。
【0270】
【0271】
(式中、Hedgeは、ピクセルエッジの高さであり、Hcenterは、ピクセルの短軸方向で測定した中央部の高さである)。
【0272】
膜は、平坦性指数が10%以下であれば、平坦であるとみなされる。
【0273】
下記の式により、ピクセルの短軸に沿ってピクセルの中央部の周囲10μmの範囲で二乗平均平方根粗さを計算する。
【0274】
【0275】
(式中、Hiは、位置iにおける高さ値であり、Hmeanは、中央部10μmにおける高さ値の平均である)。
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
B)デバイス性能
インクがデバイス性能に適切であるかさらにチェックするため、表4からのHILインクの例を幾つか選び、デバイスを作成した。デバイス構造は、
図1に示す通りである。
作成方法の説明
予め構造化されたITOとバンク材料で被覆したガラス基板をイソプロパノール中とその後の脱イオン水中での超音波処理を用いて洗浄し、次いでエアガンを用いて乾燥させ、続いてホットプレート上にて230℃で2時間アニーリングした。
【0280】
PCT/EP2015/002476に記載されているようなポリマー(たとえば、ポリマーP2)と塩(たとえば、塩D1)の組成物を用いた正孔注入層(HIL)を基板上にインクジェット印刷し、真空中で乾燥させた。HILインクは、表5に言及する溶媒混合物を用いて例毎に調製した。次いで、HILを空気中185℃で30分間アニーリングした。
【0281】
HILの上に正孔輸送層(HTL)をインクジェット印刷し、真空中で乾燥させ、窒素雰囲気中210℃で30分間アニーリングした。正孔輸送層用の材料として、3-フェノキシトルエンに7g/lの濃度で溶解させたポリマーHTM-1を使用した。ポリマーHTM-1の構造は、下記の通りである:
【0282】
【0283】
緑色発光層(G-EML)を同様にインクジェット印刷し、真空乾燥させ、窒素雰囲気中160℃で10分間アニーリングした。全ての実施例で、緑色発光層用のインクは、2種のホスト材料(即ち、HM-1とHM-2)、および3-フェノキシトルエン中12g/lの濃度に調製した1種の三重項発光体(EM-1)を含有していた。材料は、下記の比、HM-1:HM-2:EM-1=40:40:20で使用した。材料の構造は、下記の通りである:
【0284】
【0285】
インクジェット印刷プロセスは全て、黄色光の下、周囲条件下で実施した。
【0286】
次いで、デバイスを真空蒸着チャンバに移し、そこで熱蒸発を用いて、一般の正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、およびカソード(Al)の堆積を行った(
図1参照)。次いで、グローブボックス内でデバイスの特徴を明らかにした。
【0287】
正孔阻止層(HBL)において、ETM-1を正孔阻止材料として使用した。この材料は、下記の構造を有する:
【0288】
【0289】
電子輸送層(ETL)には、ETM-1とLiQの50:50混合物を使用した。LiQは、リチウム8-ヒドロキシキノリナートである。
【0290】
最後に、Al電極を蒸着する。次いでデバイスをグローブボックスにおいてカプセル化し、周囲空気中で物理的特徴の評価を遂行した。
図1は、デバイス構造を示す。
【0291】
Keithley230電圧源によって供給される定電圧によりデバイスを駆動する。
デバイスにかかる電圧およびデバイスを通る電流をKeithley199DMMマルチメーターで測定する。デバイスの明度をフォトダイオードとフォトニックフィルターの組合せであるSPL-025Y明度センサで検出する。光電流をKeithley617電位計で測定する。スペクトルの場合、明度センサを分光計入力に接続したガラス繊維に置きかえる。デバイスの寿命は、初期輝度を有する所定電流の下で測定される。次いで、輝度が較正されたフォトダイオードにより経時的に測定される。
結果および考察
参考1(3-PTから、U字型のHILプロファイル)、デバイス例1(3溶媒系、表面の粗い平坦なHIL)、およびデバイス例2(4溶媒系、表面が平滑な平坦なHIL)を含む3つのデバイスを調製した。例1のデバイスに使用した溶媒は、1-エチルナフタレン:2-フェノキシエタノール:ペンチルベンゼン(30:35:35)である。例2のデバイスに使用した溶媒は、1-エチルナフタレン:2-フェノキシエタノール:ペンチルベンゼン:1-フェニルナフタレン(40:40:17:3)である。3つのデバイスのエレクトロルミネッセント(EL)画像を
図23、24および25に示す。
図24の写真は、ある程度の表面性状(HIL層の3溶媒混合物により創出された高い表面粗さによる)を明確に示している。この問題は、
図25に示すように、少量の1-フェニルナフタレンを添加することで解決できる。表6は、1000cd/m
2での輝度効率と外部量子効率(EQE)、および3000cd/m
2でのデバイス寿命(LT80)をまとめたものである。驚くべきことに、表面粗さの有無にかかわらず、デバイスの結果に大きな違いは認められなかった。寿命は特に、参考と同じくらいに高い値を示している。これらの結果から、新規な4種の溶媒系は、デバイスに損傷を与えず、膜プロファイルを大幅に改善することがわかる。平坦な膜プロファイルを有する例では、作動電圧がより低いことがわかる。これは、電流および電圧が画素内に均一に分布していることを示し、結果としてより良好な動作状態および発光色が得られる。
【0292】