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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】汚水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/06 20060101AFI20220328BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20220328BHJP
   C02F 3/20 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F3/12 A
C02F3/20 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019524638
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2017022007
(87)【国際公開番号】W WO2018229912
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 雅庸
(72)【発明者】
【氏名】奥村 修平
(72)【発明者】
【氏名】宇和 直哉
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045575(JP,A)
【文献】特開2007-050366(JP,A)
【文献】特開2001-314888(JP,A)
【文献】特開平10-249367(JP,A)
【文献】特開2009-018267(JP,A)
【文献】特開平05-015893(JP,A)
【文献】特開平11-099398(JP,A)
【文献】特開2006-122745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/06
C02F 3/12
C02F 3/20
B01D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を含む汚水を処理する汚水処理装置であって、
汚水が貯留される処理槽と、
前記処理槽内に設けられ、汚泥を付着させる複数の接触体と、
前記処理槽内の前記接触体に向かって汚水を噴出する汚水噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出される汚水によって推進力が与えられるように、前記処理槽内に空気を噴出する空気噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出された汚水の流路を規制する流路規制部とを備え、
前記汚水噴出部及び前記空気噴出部は、前記処理槽内に汚水及び空気を噴出する噴出ノズルを構成し、
前記噴出ノズルは、前記処理槽の底面側から上方に向かって、前記噴出ノズルに接続された循環配管内で混ざり合った状態の汚水及び空気を噴出するように構成され、
前記流路規制部は、上下方向に延びる筒状に形成され且つ上方に向かうほど先細となったガイド部材で構成されていることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
汚泥を含む汚水を処理する汚水処理装置であって、
汚水が貯留される処理槽と、
前記処理槽内に設けられ、汚泥を付着させる複数の接触体と、
前記処理槽内の前記接触体に向かって汚水を噴出する汚水噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出される汚水によって推進力が与えられるように、前記処理槽内に空気を噴出する空気噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出された汚水の流路を規制する流路規制部とを備え、
前記汚水噴出部及び前記空気噴出部は、前記処理槽内に汚水及び空気を噴出する噴出ノズルを構成し、
前記噴出ノズルは、前記処理槽の底面側から上方に向かって、前記噴出ノズルに接続された循環配管内で混ざり合った状態の汚水及び空気を噴出するように構成され、
前記流路規制部は、上下方向に延びる筒状に形成され且つ筒内の一部が絞られた縮流部を有するガイド部材で構成されていることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ガイド部材は、該ガイド部材の外周面と前記処理槽の内周面との間、及び該ガイド部材の下部と該処理槽の底面との間に所定の隙間を存して配設されていることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記汚水噴出部の噴出口は、前記処理槽の底面よりも上方に突出していることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記汚水噴出部の突出部分の周囲を覆うとともに、前記処理槽の底面から該汚水噴出部の噴出口に向かうほど先細となった傾斜カバーを備えたことを特徴とする汚水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、接触体(紐状濾材)の列からなる濾材膜を水処理槽内に吊り下げておき、濾材膜に汚泥を付着させることで、濾材膜に付着した微生物による汚泥処理を行うようにした水処理用混床が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、濾材膜に汚泥を付着させるのにあたって、例えば、濾材膜の下方に配置された噴出ノズルから濾材膜に向かって汚水を噴出させ、水処理槽内で汚水を下方から上方に拡散させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2891453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の構成において、複数の接触体が密集して配置されていた場合には、接触体に付着して成長した汚泥の塊によって、隣り合う接触体の間の隙間が狭くなっていき、最終的には、その隙間が閉塞されて汚水が通過できなくなることがある。そして、接触体の一部の列の隙間が閉塞されると、汚水は、未だ閉塞されていない他の接触体の列の隙間を通過することとなる。
【0006】
しかしながら、隙間が閉塞されて汚水が通過できなくなった接触体の列であっても、接触体の下部側に汚泥の塊が付着しただけで、接触体の上部側では、汚泥がそれほど付着していないことがある。そして、水処理槽全体に汚水が流通しなくなった結果、接触体の汚泥の付着分布に偏りが生じてしまい、汚泥処理を効率良く行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、付着した汚泥によって複数の接触体の間の隙間が閉塞するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、汚泥を含む汚水を処理する汚水処理装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、汚水が貯留される処理槽と、
前記処理槽内に設けられ、汚泥を付着させる複数の接触体と、
前記処理槽内の前記接触体に向かって汚水を噴出する汚水噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出される汚水によって推進力が与えられるように、前記処理槽内に空気を噴出する空気噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出された汚水の流路を規制する流路規制部とを備え、
前記汚水噴出部及び前記空気噴出部は、前記処理槽内に汚水及び空気を噴出する噴出ノズルを構成し、
前記噴出ノズルは、前記処理槽の底面側から上方に向かって、前記噴出ノズルに接続された循環配管内で混ざり合った状態の汚水及び空気を噴出するように構成され、
前記流路規制部は、上下方向に延びる筒状に形成され且つ上方に向かうほど先細となったガイド部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、処理槽内の接触体に向かって汚水を噴出する汚水噴出部と空気を噴出する空気噴出部とが設けられる。汚水噴出部から処理槽内に噴出された汚水は、接触体に向かう途中で流路規制部によってその流れが規制される。
【0011】
このような構成とすれば、汚水の流れを規制することで、汚水を加速させて空気泡に推進力を与えることができる。そして、この推進力が与えられた空気泡を接触体に付着された汚泥の塊に衝突させるようにしている。
【0012】
ここで、接触体としての糸状固定担体に付着した汚泥の塊は、糸状固定担体と絡まり合っている中心部分が固くなる一方、糸状固定担体とそれほど絡まり合っていない外側部分が剥離し易い状態となっている。そのため、汚泥の塊の外側部分のみを剥離可能な程度の推進力を空気泡に与えて、空気泡を汚泥の塊に衝突させることで、隣り合う接触体の間の隙間を閉塞している余分な汚泥の塊の外側部分を落とすことができる。
【0013】
これにより、処理槽全体に汚水を流通させ、複数の接触体の汚泥の付着分布に偏りが生じることなく、汚泥処理を効率良く行うことができる。
【0014】
また、接触体が、処理槽内に吊り下げられた糸状固定担体で構成されていた場合、空気泡に推進力を与えて空気泡の速度を速くすると、カルマン渦が生じることによって揺らぎが沢山生じて処理槽内の汚水全体が揺れ、この汚水の揺れに影響されて糸状固定担体が揺れたり、推進力を与えられた空気泡が勢いよく糸状固定担体に直接衝突することで、糸状固定担体を揺らして、汚水流路を閉塞するような汚泥の塊の外側部分にある剥離し易い汚泥が成長するのを抑えることができる。
【0015】
なお、汚水噴出部と空気噴出部とは、それぞれ別体の噴出ノズルで構成してもよいし、汚水と空気とが混ざり合った状態で噴出される1つの噴出ノズルで構成してもよい。
【0016】
また、処理槽の底面側から上方に向かって汚水を噴出させることで、接触体に向かう空気泡の推進力がより向上することとなり、接触体に付着した汚泥の塊を落とし易くなる。
【0017】
また、接触体が、処理槽内に吊り下げられた糸状固定担体で構成されており、汚水噴出部が処理槽の底面の中央位置に配置されていた場合、汚水噴出部から噴出された汚水が供給されやすい、接触体の下方中央部ばかりが汚泥の成長が速くなり、その部分に汚泥の塊ができやすくなって、特に、汚水流路が閉塞し易くなる。
【0018】
そこで、汚水噴出部の上方に流路規制部を配置し、汚水噴出部から噴出された汚水の流れを規制することで、接触体の下方中央部の汚水の流速を速くして、汚水を勢い良く接触体の下方中央部に衝突させて汚泥を剥離させ、汚泥の塊による汚水流路の閉塞を無くすことができる。
【0019】
また、上方に向かうほど先細となった筒状のガイド部材に汚水を通過させるだけで、汚水の流れを加速させることができる。また、ガイド部材が先細形状となっているので、その傾斜面に沿って汚泥が流れ落ちることとなり、ガイド部材の表面に汚泥が溜まるのを抑えることができる。
【0020】
第2の発明は、汚泥を含む汚水を処理する汚水処理装置を対象とし、
汚水が貯留される処理槽と、
前記処理槽内に設けられ、汚泥を付着させる複数の接触体と、
前記処理槽内の前記接触体に向かって汚水を噴出する汚水噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出される汚水によって推進力が与えられるように、前記処理槽内に空気を噴出する空気噴出部と、
前記汚水噴出部から噴出された汚水の流路を規制する流路規制部とを備え、
前記汚水噴出部及び前記空気噴出部は、前記処理槽内に汚水及び空気を噴出する噴出ノズルを構成し、
前記噴出ノズルは、前記処理槽の底面側から上方に向かって、前記噴出ノズルに接続された循環配管内で混ざり合った状態の汚水及び空気を噴出するように構成され、
前記流路規制部は、上下方向に延びる筒状に形成され且つ筒内の一部が絞られた縮流部を有するガイド部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明では、縮流部を有する筒状のガイド部材に汚水を通過させるだけで、汚水の流れを加速させることができる。
【0022】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ガイド部材は、該ガイド部材の外周面と前記処理槽の内周面との間、及び該ガイド部材の下部と該処理槽の底面との間に所定の隙間を存して配設されていることを特徴とするものである。
【0023】
第3の発明では、ガイド部材の外周面と処理槽の内周面との間、及びガイド部材の下部と処理槽の底面との間に、所定の隙間を設けることで、ガイド部材の内部を通過した汚水の一部が、これらの隙間を通って再びガイド部材の下側の開口から吸い込まれるように循環する。これにより、循環された汚水によって処理槽の底面に溜まった汚泥を巻き上げて、巻き上げた汚泥を接触体に向かって噴出させることができる。
【0024】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記汚水噴出部の噴出口は、前記処理槽の底面よりも上方に突出していることを特徴とするものである。
【0025】
第4の発明では、汚水噴出部の噴出口を処理槽の底面よりも上方に突出させたことで、汚水噴出部から流路規制部までの距離を短くすることができる。これにより、処理槽の底面から汚水を噴出する場合に比べて、少ない動力で高い噴出力を得ることができる。
【0026】
第5の発明は、第4の発明において、
前記汚水噴出部の突出部分の周囲を覆うとともに、前記処理槽の底面から該汚水噴出部の噴出口に向かうほど先細となった傾斜カバーを備えたことを特徴とするものである。
【0027】
第5の発明では、汚水噴出部の突出部分は、先細の傾斜カバーによって覆われている。これにより、汚水噴出部の突出部分と処理槽の底面との隅部に汚泥が溜まるのを防ぐとともに、流路規制部で加速された後で処理槽の底面側に循環されてきた汚水を、傾斜カバーの傾斜面に沿って汚水噴出部の噴出口に向かってスムーズに導くことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、空気泡に推進力を与え、この空気泡を接触体に付着した汚泥の塊に衝突させることで、隣り合う接触体の間の隙間を閉塞している余分な汚泥の塊を落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本実施形態1に係る汚水処理装置を備えた汚泥処理システムを示す概略図である。
図2図2は、汚水処理装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
図4図4は、本実施形態2に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
図5図5は、本実施形態3に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
図6図6は、本実施形態4に係る噴出ノズル周辺の構成を示す平面断面図である。
図7図7は、噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
図8図8は、本実施形態5に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
図9図9は、本実施形態6に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
《実施形態1》
図1に示すように、汚泥処理システム10は、汚水受入槽11と、一次処理槽20と、二次処理槽40と、膜処理水槽50とを備えている。
【0032】
汚水受入槽11には、外部から供給された汚泥を含む汚水が貯留されている。汚水受入槽11の底部には、空気供給部12が設けられている。空気供給部12には、エア配管13を介してエアポンプ14が接続されている。そして、エアポンプ14を駆動させるとともに、図示しない開閉弁を開くことで、汚水受入槽11内には、空気供給部12を介して空気が供給される。
【0033】
汚水受入槽11と一次処理槽20とは、第1の水配管15によって接続されている。第1の水配管15には、汚水ポンプ16が接続されている。そして、汚水ポンプ16を駆動させることで、汚水受入槽11内の汚水が、第1の水配管15を介して一次処理槽20の後述する第1のオーバーフロー受入槽24に供給される。
【0034】
一次処理槽20は、汚泥を含む汚水を処理する汚水処理装置であり、汚水が貯留される処理槽21と、処理槽21内に設けられた複数の接触体22と、処理槽21内に汚水及び空気を噴出する噴出ノズル23(汚水噴出部、空気噴出部)とを備えている。接触体22は、汚泥を捕捉可能な糸状固定担体で構成されている。
【0035】
処理槽21は、上下方向に延びる円筒状に形成されており、その上端側には、第1のオーバーフロー受入槽24と、第2のオーバーフロー受入槽27とが設けられている。
【0036】
第1のオーバーフロー受入槽24は、処理槽21の上方開口から溢れ出した汚水を受け入れるものである。また、第1のオーバーフロー受入槽24には、汚水受入槽11の第1の水配管15から供給される汚水も流入する。
【0037】
第1のオーバーフロー受入槽24の底部には、循環配管25の一端が接続されている。循環配管25の他端は、処理槽21の底部に取り付けられた噴出ノズル23に接続されている。循環配管25には、循環ポンプ26が接続されている。また、循環配管25における循環ポンプ26よりも下流側には、エア配管13を介してエアポンプ14が接続されている。
【0038】
そして、循環ポンプ26及びエアポンプ14を駆動させるとともに、図示しない開閉弁を開くことで、第1のオーバーフロー受入槽24内の汚水が、循環配管25を介して噴出ノズル23に向かうとともに、循環配管25内において、汚水と空気とが混ざり合うこととなる。これにより、噴出ノズル23から処理槽21内に、汚水と空気が混ざり合った状態で噴出される。
【0039】
第2のオーバーフロー受入槽27は、処理槽21の上方開口から溢れ出した汚水を受け入れるものである。第2のオーバーフロー受入槽27の底部には、第2の水配管28が接続されている。第2の水配管28の下流端は、二次処理槽40の上方に配置され、第2のオーバーフロー受入槽27から第2の水配管28を流通した汚水が、二次処理槽40に供給される。
【0040】
二次処理槽40は、一次処理槽20で処理した後の汚水に残存している未処理分を取り除くためのものである。二次処理槽40内には、汚泥を付着させる複数の接触体41と、接触体41よりも下方に配置された空気供給部42とが設けられている。空気供給部42には、エア配管13を介してエアポンプ14が接続されている。そして、エアポンプ14を駆動させるとともに、図示しない開閉弁を開くことで、二次処理槽40内には、空気供給部42を介して空気が供給される。
【0041】
膜処理水槽50は、二次処理槽40に隣接して設置されており、二次処理槽40の下方開口から流入した汚水を受け入れるものである。膜処理水槽50内には、汚水を濾過する複数の濾過膜51と、濾過膜51よりも下方に配置された空気供給部52とが設けられている。空気供給部52には、エア配管13を介してエアポンプ14が接続されている。そして、エアポンプ14を駆動させるとともに、図示しない開閉弁を開くことで、膜処理水槽50内には、空気供給部52を介して空気が供給される。
【0042】
濾過膜51には、処理水配管53が接続されている。処理水配管53には、処理水ポンプ54が接続されている。そして、処理水ポンプ54を駆動させることで、濾過膜51で濾過された処理水が、処理水配管53から排水される。
【0043】
膜処理水槽50の底部には、汚泥を回収する汚泥回収配管55が接続されている。汚泥回収配管55には、汚泥ポンプ56が接続されている。そして、汚泥ポンプ56を駆動させることで、膜処理水槽50の底部に沈殿した汚泥が汚泥回収配管55から回収される。
【0044】
図2に示すように、汚水処理装置としての一次処理槽20には、上述したように、処理槽21内に設けられた複数の接触体22と、処理槽21の底面側から上方に向かって汚水と空気とを噴出させる噴出ノズル23とが設けられている。噴出ノズル23の噴出口は、処理槽21の底面よりも上方に突出している。
【0045】
そして、噴出ノズル23から接触体22に向かって汚水と空気とを噴出させることで、汚水に含まれる汚泥を接触体22に付着させるようにしている。接触体22に付着した汚泥は、接触体22に付着していた菌の効果によって浄化される。
【0046】
ここで、複数の接触体22は、汚泥を捕捉可能な糸状固定担体で構成され、上下方向に垂れるように配置されている。噴出ノズル23から噴出された汚水に含まれる汚泥は、複数の接触体22の間の隙間を通過する際に、接触体22に付着するようになっている。
【0047】
ところが、汚泥が接触体22に付着して成長すると、隣り合う接触体22の間の隙間が汚泥の塊によって狭くなっていき、最終的には、その隙間が閉塞されて汚水が通過できなくなるおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、隣り合う接触体22の間の隙間を閉塞している余分な汚泥の塊を落とすために、噴出ノズル23から噴出される汚水の流れを加速させて空気泡に推進力を与え、この空気泡を接触体22に付着された汚泥の塊に衝突させるようにしている。
【0049】
具体的に、図3にも示すように、処理槽21内には、上下方向に延びる筒状に形成され、噴出ノズル23から噴出された汚水と空気とを通過させるガイド部材30(流路規制部)が配設されている。
【0050】
ガイド部材30は、略円錐状の傘状体であり、上部と下部とを開口した形状であって、上側の開口が下側の開口よりも小さくなるように、上方に向かうほど先細となる形状に形成されている。
【0051】
そして、噴出ノズル23の噴出口から噴出される汚水を、ガイド部材30の内部を通過させたときの汚水の流速Vは、ガイド部材30の上側の開口の断面積をA、噴出ノズル23から噴出される汚水の流量をQとしたときに、以下の(1)式を満たす。
【0052】
V=Q/A ・・・(1)
ここで、ガイド部材30の断面積は、上方に向かって徐々に狭まっていくのに対し、汚水の流量Qは一定である。つまり、ガイド部材30によって汚水の流路を規制して、汚水の流路を徐々に絞り込むことで、圧力が高まり、その圧力に打ち勝つだけの噴出速度を有した汚水が噴出ノズル23から噴出されて初めて、ガイド部材30の上側の開口から噴出する汚水を加速させることができる。
【0053】
また、ガイド部材30は、ガイド部材30の外周面と処理槽21の内周面との間、及びガイド部材30の下部と処理槽21の底面との間に所定の隙間D1,D2を存して配設されている。ガイド部材30の下部は、側面視で噴出ノズル23の噴出口に重なり合っており、噴出ノズル23から噴出された汚水や空気がガイド部材30の内部を確実に通過するようにしている。
【0054】
このように、上方に向かうほど先細となった筒状のガイド部材30に汚水を通過させるだけで、汚水の流れを加速させることができる。このとき、噴出ノズル23から汚水とともに噴出される空気泡は、加速された汚水の流れに乗って推進力が与えられることとなる。そして、推進力が与えられた空気泡を接触体22に直接衝突させたり、空気泡によって生じるカルマン渦の影響によって接触体22を揺らすことで、接触体22に付着している余分な汚泥の塊を落とすことができる。
【0055】
これにより、隣り合う接触体22の間の閉塞状態を解消し、処理槽21全体に汚水を流通させることで、複数の接触体22の汚泥の付着分布に偏りが生じることなく、汚泥処理を効率良く行うことができる。
【0056】
さらに、ガイド部材30の開口部の上方に接触体22が設置されており、噴出ノズル23が処理槽21の下部に設けられているから、噴出ノズル23から噴出された汚水が下方から上方に向かって噴出される一方、空気泡が浮力によって上昇するため、汚水と空気泡とが両方とも、上方に向かって進むこととなる。これにより、噴出ノズル23から噴出された汚水や空気泡を、接触体22に勢いよく衝突させることができる。
【0057】
また、ガイド部材30の外周面と処理槽21の内周面との間、及びガイド部材30の下部と処理槽21の底面との間に、所定の隙間D1,D2が設けられており、ガイド部材30の内部を通って汚水が吐出されることにより、噴出ノズル23の開口部よりも下方において、少し負圧になっている。そのため、ガイド部材30の内部を通過した汚水の一部が、これらの隙間D1,D2を通って再びガイド部材30の下側の開口から吸い込まれるように循環する。
【0058】
これにより、循環された汚水によって、処理槽21の底面に溜まった汚泥を巻き上げて、巻き上げた汚泥を接触体22に向かって噴出させて、再度、接触体22に汚泥を付着させることで、微生物による汚泥処理を行うために汚泥を再利用し、より効率的に汚水処理を行うことができる。
【0059】
また、所定の隙間D1,D2から汚水が巻き上げられることによって、ガイド部材30の内部には、噴出ノズル23から噴出された汚水と、巻き上げられた汚水の二つの汚水が合流することとなり、流量が増える。ここで、ガイド部材30の上側の開口は、下側の開口よりも小さくなっているので、汚水をさらに加速させるとともに、空気泡にも推進力をさらに与えることができる。
【0060】
《実施形態2》
図4は、本実施形態2に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0061】
図4に示すように、噴出ノズル23の噴出口は、処理槽21の底面よりも上方に突出している。噴出ノズル23の突出部分の周囲は、傾斜カバー32によって覆われている。傾斜カバー32は、処理槽21の底面から噴出ノズル23の噴出口に向かうほど先細となっている。
【0062】
これにより、噴出ノズル23の突出部分と処理槽21の底面との隅部に汚泥が溜まるのを傾斜カバー32によって防ぐとともに、ガイド部材30を通過した後で処理槽21の底面側に循環されてきた汚水を、傾斜カバー32の傾斜面に沿って噴出ノズル23の噴出口に向かってスムーズに導くことができる。
【0063】
《実施形態3》
図5は、本実施形態3に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。図5に示すように、処理槽21内には、上下方向に延びる筒状に形成され、噴出ノズル23から噴出された汚水と空気とを通過させるガイド部材35(流路規制部)が配設されている。ガイド部材35の筒内には、その一部が絞られた縮流部36が設けられている。ガイド部材35の筒内は、ガイド部材35の下部から縮流部36にかけて通路面積が徐々に狭くなる一方、縮流部36からガイド部材35の上部にかけて通路面積が徐々に広がるように形成されており、この広がり方向に沿って汚水を流通させることで、通常、汚水が行き亘り難い処理槽21の端にまで汚水を広げることができる。
【0064】
また、ガイド部材35は、ガイド部材35の外周面と処理槽21の内周面との間、及びガイド部材35の下部と処理槽21の底面との間に所定の隙間D1,D2を存して配設されている。ガイド部材35の下部は、側面視で噴出ノズル23の噴出口に重なり合っている。
【0065】
このように、縮流部36を有する筒状のガイド部材35に汚水を通過させるだけで、汚水の流れを加速させ、加速された汚水の流れに乗って空気泡に推進力を与えることができる。
【0066】
《実施形態4》
図6は、本実施形態4に係る噴出ノズル周辺の構成を示す平面断面図、図7は側面図である。図6及び図7に示すように、噴出ノズル23は、処理槽21の側壁に取り付けられており、噴出ノズル23に連通するように処理槽21の側壁に開口した開口孔23aは、処理槽21の内周面に沿って汚水が流れるような方向を向くように開口している。
【0067】
これにより、噴出ノズル23から噴出された汚水と空気は、処理槽21の側壁から処理槽21の内周面に沿うような方向に向かって噴出され、処理槽21の内周面に沿って旋回しながら上方に向かって流れることとなる。空気泡は、この旋回流に乗って上方に移動することで推進力が与えられ、接触体22に付着した汚泥の塊を落とし易くなる。
【0068】
また、処理槽21内に、旋回しながら上方に向かって流れる旋回流が発生した場合には、旋回流の中心部に、逆向きの流れ、つまり、下向きに流れる下降流が発生する。この下降流によって、処理槽21の底面に溜まった汚泥を巻き上げて、巻き上げた汚泥を接触体22に向かって噴出させることができる。
【0069】
《実施形態5》
図8は、本実施形態5に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。図8に示すように、噴出ノズル23は、処理槽21の側壁に取り付けられており、噴出ノズル23に連通するように処理槽21の側壁に開口した開口孔23aは、処理槽21の内周面に沿って汚水が流れるような方向で且つ斜め上方を向くように開口している。
【0070】
これにより、噴出ノズル23から噴出された汚水と空気は、処理槽21の側壁から処理槽21の内周面に沿って汚水が流れるような方向で且つ斜め上方に向かって噴出され、処理槽21の内周面に沿って旋回しながら流れることとなる。ここで、旋回流がより積極的に上方に向かうように、噴出ノズル23の噴出方向を設定しているので、空気泡の推進力をより向上させることができる。
【0071】
《実施形態6》
図9は、本実施形態6に係る噴出ノズル周辺の構成を示す側面断面図である。図9に示すように、処理槽21の底面には、処理槽21の底面を振動させる振動子38が取り付けられている。図9に示す例では、振動子38は、噴出ノズル23を挟んで2つ設けられている。なお、振動子38の数はこれに限定するものではない。
【0072】
振動子38は、エアハンマー等で構成され、振動子38で発生させた振動が処理槽21の中央部に向かって伝達されるように、処理槽21の底面に対して傾斜した姿勢で取り付けられている。
【0073】
ここで、処理槽21の底面を2つの振動子によって振動させると、処理槽21内の汚水には、図9に仮想線で示すような、処理槽21の中央部に斜め上方に向かう2つの波が発生することとなる。2つの振動子38によって生じた2つの波は、噴出ノズル23の上方位置で合流する。
【0074】
これにより、噴出ノズル23から噴出された空気泡は、振動子38で発生された波に乗って上方に移動することで推進力が与えられ、接触体22に付着した汚泥の塊を落とし易くなる。
【0075】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0076】
本実施形態では、汚水と空気とを循環配管25内で混ざり合わせた状態とし、1つの噴出ノズル23から汚水と空気とを噴出させるようにしたが、この形態に限定するものではない。例えば、汚水を噴出する汚水噴出部と、空気を噴出する空気噴出部とを、それぞれ別体の噴出ノズルで構成するようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、接触体22として糸状固定担体を用いた構成について説明したが、ブロック状固定担体を用いた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、付着した汚泥によって複数の接触体の間の隙間が閉塞するのを抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0079】
20 一次処理槽(汚水処理装置)
21 処理槽
22 接触体
23 噴出ノズル(汚水噴出部、空気噴出部)
30 ガイド部材(流路規制部)
32 傾斜カバー
35 ガイド部材(流路規制部)
36 縮流部
38 振動子
D1,D2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9