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▶ エデンサー グループ ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】絶縁されたマルチツール
(51)【国際特許分類】
   B25F 1/04 20060101AFI20220328BHJP
   B25B 7/22 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B25F1/04
B25B7/22
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019528442
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 AU2017051300
(87)【国際公開番号】W WO2018094471
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】2016102032
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519183911
【氏名又は名称】エデンサー グループ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EDENSOR GROUP PTY LTD
【住所又は居所原語表記】10 Greenbank Pocket, Idalia, Queensland, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイド ベン
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05497522(US,A)
【文献】特表2002-500569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/04
B25B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁されたマルチツールであって、
一対の対向する顎部と、
対象物に対する締め付けポジションに前記顎部を押し込むために枢動部に関連して前記一対の対向する顎部に動作可能に結合されている一対の対向するハンドルであって、前記対向するハンドルの少なくとも一方が工具受入れポケットを有する、前記一対の対向するハンドルと、
前記工具受入れポケットに格納される少なくとも1つの工具であって、前記少なくとも1つの工具が前記工具受入れポケットの中に格納されている格納ポジションと、前記少なくとも1つの工具が前記対向するハンドルの少なくとも一方に対して使用のための位置にある開・使用ポジションとの間で動くために、前記少なくとも1つの工具が前記工具受入れポケットに対して回転可能に取り付けられている、前記少なくとも1つの工具と、
を備えており、
前記一対の対向するハンドルが、前記一対の対向する顎部と前記少なくとも1つの工具それぞれとの両方から、電気的に絶縁されており
前記顎部及び前記ハンドルから少なくとも1つの工具それぞれが電気的に絶縁されるように、工具受入れポケットの中の少なくとも1つの工具それぞれの間と、両端の最も外側の工具とそれぞれの工具受入れポケットの内側の間とに、環状絶縁部材が設けられていることを特徴とする、
絶縁されたマルチツール。
【請求項2】
前記顎部それぞれが、1つまたは複数の把持部のみならず切断刃を含む組合せ顎部である、請求項1に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項3】
前記ハンドルそれぞれが、前記ハンドルの長手方向軸線にほぼ平行に延びている少なくとも1つの細長い工具受入れポケット、を有する、請求項1または請求項2に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項4】
前記工具が、閉ポジションから、前記工具受入れポケットの1つから離れる方向に延びる開ポジションまで回転可能であるように、前記少なくとも1つの工具が前記工具受入れポケットの1つに対してピンによって取り付けられている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項5】
枢動部で互いに枢動可能に結合されている一対の対向するボディを含み、各ボディが顎部およびハンドルを有し、少なくとも一方のボディが、ハンドル領域における一対の隔置された腕部を有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項6】
両方のボディが、前記ハンドル領域における一対の隔置された腕部を有する、請求項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項7】
各ボディが、2つの側方のボディ側部を長手方向に互いに結合することによって形成されている、請求項または請求項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項8】
前記ボディ側部を互いに圧接するために、前記ボディ側部が熱および圧力を使用して互いに結合されている、請求項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項9】
前記隔置された腕部が、互いに実質的に平行でありかつ隔置されて間に隙間または空間を画成して、前記格納ポジションにあるときに前記少なくとも1つの工具が受け入れられるポケットを形成する、請求項から請求項のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項10】
前記腕部それぞれが、開口部を有する拡大後部を有し、前記少なくとも1つの工具を前記腕部それぞれに対して取り付ける目的で前記開口部を通ってピンまたは止めねじが受け入れられている、請求項から請求項のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項11】
絶縁ハンドル部分が、前記枢動部の後ろから前記ボディの少なくとも前記ハンドル領域の上にオーバーモールドされており、前記ボディの残りの部分の上に後方に延びている、請求項から請求項10のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項12】
前記絶縁ハンドル部分が、前記隔置された腕部それぞれを、前記腕部それぞれのすべての側面において囲んでおり、前記隔置された腕部の間に、成形されたポケット溝を画成している、請求項11に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項13】
前記ハンドル部分が、前記枢動部に隣接して、前記ハンドル部分に対して実質的に放射状に延在する拡大前方保護部を有する、請求項11または請求項12に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項14】
が、細長く、前記少なくとも1つの工具より長く、使用者が前記少なくとも1つの工具を前記格納ポジションから手動で解放できるようにする目的で前記少なくとも1つの工具の前端部に前記溝の空洞部分または空隙部分を形成している、請求項12または請求項13に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項15】
前記少なくとも1つの工具を前記格納ポジションおよび/または前記開ポジションにおいて解放可能にラッチするために、ラッチ機構が設けられおり、前記少なくとも1つの工具が前記格納ポジションおよび/または前記開ポジションに動くときに少なくとも触覚フィードバックをもたらすために、前記ラッチ機構が、前記ハンドルの工具取付け部の内側部分に設けられている1つまたは複数の突起部または拡張部と、前記少なくとも1つの工具の取付け部に設けられている少なくとも1つの対応する成形された構造とを含む、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項16】
前記少なくとも1つの工具それぞれが、先端部またはビットの後ろに位置する金属シャフトと、少なくとも1つの工具それぞれのシャフトの周囲が完全にモールドされて設けられている非導電性材料のオーバーモールドされた取付け部と、を有する、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項17】
前記オーバーモールドされた取付け部に、それぞれのハンドルに対して前記工具を取り付けるための開口部が、前記先端部またはビットとは反対側に設けられている、請求項16に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項18】
前記工具の前記シャフトが、前記オーバーモールドされた取付け部を前記ハンドルに対して取り付けるために使用される前記開口部の直前で終了する、請求項17に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項19】
各ハンドルが、個別に回転するように取り付けられている一対の工具を有する、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項20】
前記少なくとも1つの工具が、前記ハンドルにおける開口部を貫きかつ前記工具それぞれにおける開口部を貫いて設けられている止めねじを使用して、それぞれのハンドルに対して取り付けられている、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【請求項21】
使用者を作業面から絶縁するために前記ハンドルおよび少なくとも1つの工具それぞれの導体部分の上がモールドされていることによって、前記顎部および少なくとも1つの工具それぞれの前記作業面から約1000Vまで前記使用者を絶縁するために、絶縁材料が使用されている、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の絶縁されたマルチツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはマルチツールに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチツールは、一般には、ペンチをベースとする手工具であり、ペンチのハンドルの一方または両方に格納された1つまたは複数の工具を有する。
【0003】
ペンチに似た別の装置(ハサミやワイヤカッターなど)を、マルチツールのベースとしてもよい。ペンチ、ハサミ、およびワイヤカッターに共通する要素は、それぞれが、一対の対向するハンドルによって操作される一対の対向する顎部を含むことである。このような顎部とハンドルの組合せのハンドルに1つまたは複数の工具が格納されているとき、その装置全体がマルチツールである。
【0004】
工具は、ハンドルに形成されているポケットに格納することができる。マルチツールのハンドルに見られる工具の例としては、ナイフブレード、缶切、ドライバ、やすり、ハサミ、鋸刃が挙げられる。これらの工具は、ポケットナイフの中に折りたたまれる、および引き出されるナイフブレードに類似して、マルチツールのハンドルの中に折りたたまれる、およびハンドルから引き出され、したがって本文書においては折りたたみ工具と称することがある。マルチツールは、折りたたまれない別の工具(マルチツールの一方または両方のハンドルの露出面に刻印された定規など)をしばしば含む。
【0005】
マルチツールは、小型でありさまざまな工具が含まれているために極めて有用であるが、マルチツールには強度および頑強性が必要であるため、すべてのマルチツールは金属から製造されている。
【0006】
なお当然ながら、本明細書において従来技術の刊行物が参照されている場合、その参照は、豪州および任意の他の国においてその刊行物がこの技術分野における共通の一般的知識の一部を形成していることを認めるものではないことを理解されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5,497,522号明細書
【文献】米国特許第5,664,274号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述した欠点の少なくとも1つを少なくとも部分的に克服しうる、または有用もしくは商業的な選択肢を消費者に提供しうる、絶縁されたマルチツールを対象としている。
【0009】
上記に鑑み、本発明は、その一形態においては、広義には、絶縁されたマルチツールであって、一対の対向する顎部と、対象物に対する締め付けポジションに顎部を押し込むために枢動部に関連して顎部に動作可能に結合されている一対の対向するハンドルであって、対向するハンドルの少なくとも一方が工具受入れポケットを有する、一対の対向するハンドルと、工具受入れポケットに格納される少なくとも1つの工具であって、少なくとも1つの工具が工具受入れポケットの中に格納されている格納ポジションと、少なくとも1つの工具が対向するハンドルの少なくとも一方に対して使用のための位置にある開・使用ポジションとの間で動くために、少なくとも1つの工具が工具受入れポケットに対して回転可能に取り付けられている、少なくとも1つの工具と、を備えており、一対の対向するハンドルが、一対の対向する顎部と少なくとも1つの工具それぞれとの両方から、電気的に絶縁されている、絶縁されたマルチツール、に属する。
【0010】
本発明のマルチツールは、一対のハンドルに結合されている一対の対向する顎部を含む。ハンドルは、従来のペンチのハンドルがペンチの顎部を動作させるのとよく似て、ハンドルの動きを使用して顎部を操作することができるように、枢動部に関連して顎部に動作可能に結合されている。
【0011】
本発明のマルチツールの顎部は、任意のタイプとすることができる。顎部は、任意のパターンまたは形状を有することができる。顎部それぞれは組合せ顎部とすることができ、したがって、顎部が一緒に動くときに顎部を使用して把持することができるように1つまたは複数の把持部と、さらに切断刃(特にワイヤ切断刃)を含むことができる。さらに、顎部は、ワイヤ被覆剥ぎ取り、スプレッダ形状(spreader configurations)、ワイヤ圧着などのほか、一対の対向する顎部を有する1つまたは複数の工具によって通常行われる他の機能を可能にする部分を含むことができる。
【0012】
対象物に対する締め付けポジションに顎部を押し込むために、顎部は枢動部に関連して一対の対向するハンドルのそれぞれのハンドルに動作可能に結合されている。
【0013】
ハンドルの少なくとも一方は、ハンドルの長手方向軸線にほぼ平行に延びている少なくとも1つの細長い工具受入れポケット、を有することが好ましい。本マルチツールのハンドルの少なくとも一方は、中に工具が格納されうる2つの反対向きのポケットを含むように形成することができる。ハンドルの長手方向軸線にほぼ垂直に、ハンドルに沿って見たとき、ハンドルの少なくとも一方を、そのボディが実質的にU字形状またはS字形状である断面を有するように形成することができる。他方のハンドルは、U字形状またはS字形状とすることができる。一方のハンドルがS字形状の断面を有する状況では、ハンドルの互いに押圧されるロックポジション(pressed-together locking position)を使用して、他方のハンドルに格納されている折りたたみ工具をロック解除する(lock open)ことができるように、その他方のハンドルが、S字形状のハンドルの方に面する少なくとも1つのポケットを含むことが好ましい。
【0014】
1つのハンドルに、互いに反対向きのポケットを形成することによって、反対側のハンドルに対するその工具受入れハンドルの向きにかかわらず、少なくとも1つの折りたたみ工具を露出させることができる。したがって、たとえペンチの顎部が対象物を締め付けている場合でも、露出している工具を開く、および閉じることができる。露出している工具は、折りたたみ工具でもよく、その一方で、反対向きのポケットの中の工具を、折りたたみ式ではない工具としてもよい。本マルチツールの互いに反対向きのポケットによって可能になるさらなる代替形態は、露出している工具を、別の折りたたみ工具が開ポジションにロックされている間に、前の段落で説明したハンドルの互いに押圧されるロックポジションによって開く、および閉じることができる。
【0015】
本マルチツールの顎部を少なくとも部分的に1つまたは複数のそれぞれのポケットの中に受け入れることができるように、本マルチツールのハンドルをそれ自身に対して回転させて折り返すことができるように、ポケットを形成することができる。
【0016】
本マルチツールは、工具受入れポケットの1つの中に閉ポジションにおいて格納可能である少なくとも1つの工具を含み、この工具は、閉ポジションから、工具受入れポケットの1つから離れる方向に延びる開ポジションまで、ある角度(好ましくは工具の閉ポジションに対して少なくとも約90度の角度)だけ工具が回転可能であるように、工具受入れポケットの1つにピンによって取り付けられている。
【0017】
工具受入れポケットの1つの中に任意の数の工具を設けることができ、任意のタイプの工具を設けることができる。通常では複数の工具が設けられ、マルチツールに設けられる工具の特定の組合せは、通常では特定の用途または使用向けに選択される。本マルチツールの基本的な意図は、作業者のための有用なさまざまな工具を取り付けながら、マルチツールのサイズを好ましくは最小にすることである。
【0018】
特定の好ましい一実施形態においては、例えば電気技師は、マイナスドライバ、プラスドライバ、およびペンチを必要としうる。本発明のマルチツールは、1つのコンパクトなマルチツールにおいてこれらの工具すべてを提供することができる。2種類以上のサイズの工具を提供してもよい。例えば、1つのマルチツールが、2つ以上の異なるサイズのマイナスドライバ、および/または、2つ以上の異なるサイズのプラスドライバ、を取り付けることができる。
【0019】
本発明のマルチツールに含めることのできる特に好ましい別の工具は、好ましくは工具受入れポケットの1つに格納されているが作業面に光を当てる目的で工具受入れポケットから引き出し可能である小型の懐中電灯である。マルチツールが、設けられている工具の1つまたは複数、および/または、マルチツールの顎部を使用して通常に使用されているとき、懐中電灯が設けられており作業面を明るくしたり光を当てることができるならば、特に好ましい。懐中電灯が設けられる場合、懐中電灯の少なくとも一部をねじる動作によってオン状態とオフ状態の間で動作可能であることが好ましい。懐中電灯は、その工具受入れポケットから引き出されたときにのみオン状態に動作可能であることが好ましい。
【0020】
格納状態と開状態との間で動かすことができるように、少なくとも1つの工具のある程度の遊びがしばしば存在する。開ポジションにあるときの少なくとも1つの工具の遊びは、工具の端部に隣接しておりかつ工具の回転中心であるピンに隣接する、折りたたみ工具に形成されている外側に延びる肩部、によってもたらされる確実なロックによって最小にされる、または排除されることが好ましい。肩部は、反対側のハンドルに形成されているフランジと相互作用することが好ましい。このフランジは、好ましくは互いに押圧されるポジションにあるときに、折りたたみ工具の肩部に対して集中する力をかけて、工具がこのロックポジションにあるときに遊びの量を制限するように作用する。
【0021】
一方のハンドルに留め具を結合することができ、留め具は、必要な場合に旋回することができ、互いに押圧されるポジションにおいて他方のハンドルと係合してこれらのハンドルを固定する。
【0022】
折りたたみ工具の少なくとも1つに支柱(post)を取り付けることができる。支柱は、折りたたみ工具をその閉ポジションから開ポジションに片手で引き出すことを容易にするために、人の手と係合するように露出していることが好ましい。これは、互いに反対向きのポケットの一方の中の露出している工具に支柱が取り付けられているときに特に有用である。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、一対の対向するハンドルは、一対の対向する顎部の両方と、少なくとも1つの工具それぞれとから、電気的に絶縁されている。この電気的絶縁は、任意のやり方で、任意の方法または装置を使用して達成することができる。例えば、この電気的絶縁は、ハンドルのいずれか一方または両方、および/または、少なくとも1つの工具それぞれ、の全体もしくは少なくとも一部を被覆する、あるいは、1つまたは複数の絶縁スリーブを設けることを含む。
【0024】
被覆またはスリーブに替えて、または加えて、少なくとも1つの工具それぞれと別の少なくとも1つの工具それぞれとの間、および/または、工具の取付け部とハンドルのポケットとの間に、1つまたは複数の絶縁部材を設けることができる。この特定の構造においては、工具それぞれの間と、最も外側の工具の間とそれぞれの工具受入れポケットの内側との間とに、電気絶縁環状部材を設けることができる。さらに、一方の顎部を他方の顎部から電気的に絶縁する目的で、顎部の間に設けられる枢動機構の一部として、絶縁部材または絶縁アセンブリを設けることができる。
【0025】
特に好ましい構造においては、ハンドル自体が、絶縁被覆によって被覆されており、顎部の間に設けられる枢動機構の一部として絶縁部材もしくは絶縁アセンブリが設けられており、かつ、同じポケット内の少なくとも1つの工具それぞれの間と、両端の最も外側の工具とそれぞれの工具受入れポケットの内側の間とに、環状絶縁部材が設けられている。
【0026】
任意の形態の絶縁部材または絶縁材料を使用してよいが、特に好ましい材料は、ナイロン被覆を有するXHHW架橋ポリエチレンまたは架橋PVCである。使用される絶縁部材または絶縁材料は、マルチツールおよび個々の工具の作業面から、約1000Vまで使用者を完全に絶縁できることが好ましい。
【0027】
好ましい実施形態においては、本発明のマルチツールは、互いに枢動可能に結合されている一対の対向するボディを含み、各ボディが顎部およびハンドルを有し、少なくとも一方のボディが、ハンドル領域における一対の隔置された腕部を有する。両方のボディが、一対の隔置された腕部およびハンドル領域を有することが好ましい。
【0028】
各ボディは、2つの側方のボディ側部(two lateral body sides)を長手方向に互いに結合することによって形成されていることが好ましい。これらボディ側部は、顎部と枢動部との間では互いに押し付けられており、枢動部の横(ただし後ろ)から後方に一対の隔置された腕部が延びていることが好ましい。ボディ側部は任意の方法で結合することができるが、好ましくは金属のボディ側部の一対を互いに効果的に圧接するために、ボディ側部が熱および圧力を使用して互いに結合されることが好ましい。ボディ側部を互いに結合することによって、顎部および枢動部と、枢動部の横(ただし後ろ)から長手方向に延びる一対の隔置された腕部とを有するボディが形成されることが好ましい。
【0029】
腕部は、一般に、互いに実質的に平行でありかつ隔置されて隙間または空間を画成しており、この隙間または空間に、少なくとも1つの工具が、格納ポジションにあるときに受け入れられる。一般に、腕部それぞれは、顎部から最も遠くに位置している拡大後部(enlarged rear portion)を有する。腕部それぞれに対して少なくとも1つの工具を取り付ける目的でピンまたは止めねじが中に受け入れられる開口部を、腕部それぞれが有することが好ましく、この開口部は、一般には拡大部分を貫いている。このピンまたは止めねじは、少なくとも1つの工具をボディに対して取り付けるのみならず、少なくとも1つの工具を格納ポジションと開ポジションの間で回転させることを可能にする。
【0030】
絶縁ハンドル部分は、一般には、ボディの少なくとも一部の上にオーバーモールドされる。一般には、オーバーモールドされた絶縁ハンドル部分は、枢動部の後ろから延び、ボディの残りの部分の上に後方に延びている。オーバーモールドされたハンドル部分は、グリップまたはその一部を形成する。重要な点として、オーバーモールドされた絶縁ハンドル部分は、隔置された腕部を、腕部それぞれのすべての側面において囲んでおり、一般には、オーバーモールドされたハンドル部分は、腕部を、枢動部の首部に隣接する位置まで、すべての側面において囲んでいる。オーバーモールドされたハンドル部分は、使用者の手をボディの顎部から絶縁する役割を果たす。
【0031】
オーバーモールドされたハンドル部分は、ハンドル部分に対して実質的に放射状に延在する拡大前方保護部および成形されたグリップを有することが好ましい。
【0032】
オーバーモールドされたハンドル部分は、一般には、少なくとも1つの工具を少なくとも部分的に中に受け入れる目的で、好ましくはボディの(オーバーモールドされた)一対の隔置された腕部の間に位置する成形された溝、を含む。好ましい形態においては、この溝は、一般には細長く、好ましくは断面が長方形である。この溝は、一般には、少なくとも1つの工具より長いことが好ましい。特に、少なくとも1つの工具を格納ポジションから手動で解放するために使用者が少なくとも1つの工具の前端部において溝の中に指を挿入できるようにする目的で、溝の顎部側端部に、溝の空洞部分または空隙部分が設けられている。
【0033】
好ましい実施形態においては、一般には、少なくとも1つの工具を格納ポジションおよび/または開ポジションにおいて解放可能にラッチするために、ラッチ機構が設けられている。一形態においては、ラッチ機構は、少なくとも1つの工具をハンドル部分に対して取り付けるために使用されるハンドル部分の工具取付け部の内側部分に設けられている1つまたは複数の突起部または拡張部もしくは突出部と、少なくとも1つの工具のオーバーモールドされた取付け部に設けられている少なくとも1つの(一般には複数の)対応する成形された突起部もしくは拡張部もしくは突出部または凹部もしくは類似する形状とを含むことができる。ラッチ機構は、一般には、少なくとも1つの工具が格納ポジションおよび/または開ポジションに動くときの触覚フィードバックおよび/または音のフィードバックをもたらす。
【0034】
本発明のマルチツールに関連して設けられる少なくとも1つの工具それぞれには、一般に、先端部またはビットの後ろに位置する金属シャフトが設けられている。オーバーモールドされた取付け部は、少なくとも1つの工具それぞれのシャフトの周囲を一般には完全にオーバーモールドして設けられることが好ましい。オーバーモールドされた取付け部は、一般には非導電性材料から製造され、したがって一般にハンドルに対して工具を絶縁する。
【0035】
オーバーモールドされた取付け部には、それぞれのハンドルに対して工具を取り付けるための開口部が設けられていることが好ましく、この開口部は、先端部またはビットとは反対側の工具取付け拡大部に設けられていることが好ましい。
【0036】
通常では、工具それぞれのシャフトは、ハンドルに対して工具取付け部を取り付けるために使用される開口部の直前で終了する。一般に、工具それぞれのシャフトは、オーバーモールドされた取付け部の中でのシャフトの回転を最小にし、好ましくは実質的に防止するために、オーバーモールドされた取付け部と係合するように成形されている。例えばシャフトは、通常では、シャフトから放射状に延びる少なくとも1つの(一般には複数の)拡大部を有する。
【0037】
ハンドルそれぞれは、一般には一対の工具を有し、これらの工具は一般に同じ種類であり、例えば一方のハンドルにおける一対のマイナスドライバと、他方のハンドルにおける一対のプラスドライバである。工具は、個別に回転するように取り付けられている。一般には、一方の工具が他方の工具に対して容易に独立して回転できるようにする目的で、工具それぞれのオーバーモールドされた取付け部の間にブッシュが設けられている。
【0038】
少なくとも1つの工具は、オーバーモールドされたハンドル部分における開口部を貫きかつ各工具のそれぞれのオーバーモールドされた取付け部における開口部を貫いて設けられている止めねじを使用して、それぞれのハンドルに対して取り付けられていることが好ましい。止めねじは、一般には、それぞれが拡大頭部を有する一対の対応する部分を有し、一方の部分が、内側にねじが切られた開口部を有し、他方の部分が、外側にねじが切られた部分を有する細長い軸を有する。これらの部分それぞれの拡大頭部は、一般には、止めねじをロックおよびロック解除するように工具を係合させることを可能にするための係合形成部(engagement formations)を有する。止めねじを設けることによって、必要な場合に使用者がねじを取り外して工具を変更することができる。これらの部分それぞれの拡大頭部は、一般には、通常では絶縁材料を使用してオーバーモールドされている。止めねじは、通常では、ボディの隔置された腕部から、オーバーモールドされた絶縁性のハンドルによって隔離されており、さらに、オーバーモールドされた取付け部によって、それぞれの工具からも隔離されている。
【0039】
オーバーモールド材料は重要であり、その第一の理由として、マルチツールのさまざまな部分を互いに絶縁する目的でオーバーモールド材料は主として非導電性であり、第二の理由として、選択される1種類または複数種類の材料は、心地よさが要求される場所では弾性である必要があるが、負荷がかかる領域(例えば工具取付け部付近)では、より硬く強度が高い必要があるためである。必要に応じて場所ごとに特定の材料特性を提供する目的で、1種類または複数種類の非導電性材料を使用することができる。一般的には、工具の使用中にトルクがかかりうる位置では、複数種類の材料を使用することができ、使用される材料の1つは、より中央に位置する、硬い、および/または、より強度の高い材料であり、外側部分または外側部分に向かって、使用時の心地よさのために、より柔らかく、より心地よい材料が設けられる。
【0040】
本発明のマルチツールは、一般には、任意の方法で設けることのできる見た目の向上した部分をさらに含む。例えば、本発明のマルチツールに、反射性、発光性、燐光発光性、化学発光性、または光輝性である1つまたは複数の部分を設けることができる。見た目を向上させるこれらのメカニズムのいくつかは、比較的低レベルではあるが長期間にわたり光を発することができるため、他のメカニズムより好ましい。被覆が電気的に絶縁性であると同時に、見た目を向上させる機能を提供する目的で、向上した見た目は、ハンドルの好ましい被覆によってもたらされることが特に好ましい。
【0041】
本明細書に説明されている特徴のいずれも、本発明の範囲内で、本明細書に説明されている別の特徴の任意の1つまたは複数と、任意の組合せにおいて組み合わせることができる。
【0042】
本明細書の中での従来技術の参照は、その従来技術が共通の一般的な知識の一部を形成していることを認める、または示唆するものではなく、かつそのように解釈すべきではない。
【0043】
以下では、本発明のさまざまな実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0044】
本発明の好ましい特徴、実施形態、および変形形態は、当業者が本発明を実行するための十分な情報を提供する以下の「発明を実施するための形態」から認識することができる。「発明を実施するための形態」は、先行する「発明の概要」の範囲をいかようにも制限するようにはみなされないものとする。「発明を実施するための形態」では、以下の複数の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の好ましい実施形態に係るマルチツールの等角図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係るマルチツールの、部分的に透明な側面図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係るマルチツールの、横からの図である。
図4図3に示したマルチツールの、上からの図である。
図5図3に示したマルチツールの、下からの図である。
図6図3に示したマルチツールの、左側からの図である。
図7図3に示したマルチツールの、右側からの図である。
図8図3に示したマルチツールの、上側の前端からの等角図である。
図9図3に示したマルチツールの、上側の後端からの等角図である。
図10図8に示したマルチツールの等角図である。
図11図9に示したマルチツールの等角図である。
図12図9に示したマルチツールを、1つの工具が使用ポジションにある状態で示している。
図13図12に示した構造の別の図である。
図14図10に示したマルチツールを、1つの工具が使用ポジションにある状態で示している。
図15図14に示した構造の別の図である。
図16】本発明の好ましい実施形態に係るマルチツールの、横からの図である。
図17図16における線A-Aに沿った断面図である。
図18図17の拡大図である。
図19図8に示したマルチツールの分解等角図である。
図20】好ましい実施形態のマルチツールの、開いた状態における横からの図である。
図21図20に示したマルチツールの等角図である。
図22図21において参照文字Cを用いて識別されている部分の詳細図である。
図23】好ましい実施形態のマルチツールの、横からの図である。
図24図23における線B-Bに沿った断面図である。
図25図24において参照文字Dを用いて識別されている部分の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、絶縁されたマルチツールが提供される。
【0047】
図1に示した絶縁されたマルチツール10は、一対のハンドル16,18に結合されている一対の対向する顎部12,14を含む。ハンドル16,18は、顎部12,14を操作するために使用される。したがってハンドル16,18は、従来のペンチのハンドルがペンチの顎部を操作するのとよく似て、ハンドルの動きを使用して顎部を操作することができるように、枢動部に関連して顎部12,14に動作可能に結合されている、または動作可能に取り付けられている。
【0048】
本マルチツールの顎部12,14は、任意のパターンまたは形状を有することができる。図示した実施形態の顎部は、それぞれ組合せ顎部であり、顎部が一緒に動くときに顎部を使用して把持することができるように平面状の把持部および弓状の把持部と、さらに切断刃11を含む。
【0049】
対象物に対する締め付けポジションに顎部12,14を押し込むため、顎部12,14は、枢動アセンブリ17に関連して一対の対向するハンドル16,18のそれぞれのハンドルに動作可能に結合されている。
【0050】
図示した実施形態においては、ハンドル16,18それぞれは、それぞれのハンドルの長手方向軸にほぼ平行に延びている細長い工具受入れポケット20を有する。このポケット20は、閉じた底面を有することができる、またはハンドルを貫く溝開口部の形をとることができ、後者の場合、反対側のハンドルに対する工具受入れハンドルの向きにかかわらず、少なくとも1つの折りたたみ工具を露出させることができる。
【0051】
図1の太い矢印によって示したように、マルチツールの顎部を少なくとも部分的に1つまたは複数のそれぞれのポケット20に受け入れることができるように、マルチツール10のハンドル16,18をそれ自身に対して回転させて折り返すことができるように、ポケット20を形成することができる。
【0052】
マルチツール10は、工具受入れポケット20の1つの中に閉ポジションにおいて格納可能な工具を含み、この工具は、閉ポジションから、工具受入れポケット20の1つから離れる方向に延びる開ポジションまで、ある角度(好ましくは工具の閉ポジションに対して少なくとも約90度の角度)だけ工具が回転可能であるように、工具受入れポケット20の1つに対してピン19によって取り付けられている。
【0053】
工具受入れポケットの1つの中に任意の数の工具を設けることができ、任意のタイプの工具を設けることができる。通常では複数の工具が設けられ、マルチツールに設けられる工具の特定の組合せは、通常では特定の用途または使用向けに選択される。本マルチツールの基本的な意図は、作業者のための有用なさまざまな工具を取り付けながら、マルチツールのサイズを好ましくは最小にすることである。
【0054】
図1に示した特に好ましい実施形態においては、例えば電気技師は、マイナスドライバ、プラスドライバ、およびペンチを必要としうる。本発明のマルチツール10は、1つのコンパクトなマルチツールにおいてこれらの工具すべてを提供する。図示したマルチツール10には、一対の異なるサイズのマイナスドライバ21と、一対の異なるサイズのプラスドライバ22が取り付けられている。一方のハンドルに対してマイナスドライバが設けられており、他方のハンドルに対してプラスドライバが設けられていることが好ましい。
【0055】
格納状態と開状態との間で動かすことができるように、少なくとも1つの工具のある程度の遊びがしばしば存在する。開ポジションにあるときの少なくとも1つの工具の遊びは、工具の端部に隣接しておりかつ工具の回転中心であるピンに隣接する、折りたたみ工具に形成されている外側に延びる肩部によってもたらされる確実なロックによって最小にされる、または排除されることが好ましい。肩部は、反対側のハンドルに形成されているフランジと相互作用することが好ましい。このフランジは、好ましくは互いに押圧されるポジションにあるときに、折りたたみ工具の肩部に対して集中する力をかけて、工具がこのロックポジションにあるときに遊びの量を制限するように作用する。
【0056】
一方のハンドルに留め具を結合することができ、留め具は、必要な場合に旋回することができ、互いに押圧されるポジションにおいて他方のハンドルと係合してこれらのハンドルを固定する。
【0057】
折りたたみ工具の少なくとも1つに支柱24を取り付けることができる。支柱は、折りたたみ工具をその閉ポジションから開ポジションに片手で引き出すことを容易にするために、人の手と係合するように露出していることが好ましい。これは、互いに反対向きのポケットの一方の中の露出している工具に支柱が取り付けられているときに特に有用である。
【0058】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、一対の対向するハンドルは、一対の対向する顎部と少なくとも1つの工具それぞれとの両方から、電気的に絶縁されている。この電気的絶縁は、任意のやり方で、任意の方法または装置を使用して達成することができる。
【0059】
特に好ましい構造においては、ハンドル16,18は、絶縁被覆によって被覆されており、顎部12,14の間に設けられる枢動アセンブリ17の一部として絶縁部材もしくは絶縁アセンブリが設けられており、同じポケット20の中の少なくとも1つの工具それぞれの間と、両端の最も外側の工具とそれぞれの工具受入れポケット20の内側の間とに、環状絶縁部材27が設けられている。
【0060】
図2に示した実施形態などの代替実施形態においては、ハンドルは、金属のハンドル中心部(handle tang)26の上の外側絶縁把持部25を含むことができる。
【0061】
各工具自体も、工具の長さの大部分の上に設けられる絶縁スリーブ28を有する。
【0062】
図3図25に示した実施形態のマルチツールは、図1および図2に示した実施形態のマルチツールに、多くの点で類似している。最も明らかな違いは、図18および図19に最も分かりやすく示してある。図3図25に示したマルチツールは、一対の対向する金属ボディ30(図19に最も分かりやすく示した(上側のハンドルはすでにオーバーモールドされたグリップを有するため一方のボディのみを示してある))を含み、これらの金属ボディ30は、枢動点において互いに枢動可能に結合されており、各ボディ30が顎部31およびハンドル部分を有し、ハンドル部分が一対の隔置された腕部32を有する。枢動点は、一方のボディにおける内側枢動部33と、他方のボディにおける受入れ側枢動部34とを含み、これら枢動部33,34それぞれは、組み立てたときに整列する開口部を有し、2つの対応するねじ部35,36の枢動ねじアセンブリを使用して互いに固定されている。
【0063】
図示した好ましい実施形態においては、各ボディ30は、2つの側方のボディ側部37を長手方向に互いに結合することによって形成されている。好ましい実施形態においては、これらボディ側部37は、顎部31と枢動部33,34との間では互いに押し付けられており、枢動部33,34の横(ただし後ろ)から後方に一対の隔置された腕部32が延びている。一対の金属のボディ側部30を互いに効果的に圧接するために、ボディ側部37は熱および圧力を使用して互いに結合されることが好ましい。
【0064】
図示したように、腕部32は、一般には互いに実質的に平行でありかつ隔置されて隙間または空間を画成しており、この隙間または空間に、少なくとも1つの工具が、図3図11に示したように格納ポジションにあるときに受け入れられる。一般に、腕部32それぞれは、顎部31から最も遠くに、開口部39を有する拡大後部38を有し、工具を腕部32それぞれに対して取り付ける目的で止めねじが開口部39の中に受け入れられている。この止めねじ(後から説明する)は、工具をボディ30に対して取り付けるのみならず、工具を格納ポジションと開ポジションの間で回転させることを可能にする。
【0065】
絶縁ハンドル部分40は、ボディの上にオーバーモールドされており、枢動部33,34の後ろから腕部32の残りの部分の上に延びている。重要な点として、オーバーモールドされた絶縁ハンドル部分は、(図18に示したように)隔置された腕部32を、腕部32それぞれのすべての側面において囲んでおり、一般に、オーバーモールドされたハンドル部分40は、腕部32をすべての側面において枢動部33,34に隣接する位置まで囲む。オーバーモールドされたハンドル部分40は、使用者の手を顎部から絶縁し、腕部を工具から絶縁する役割を果たす。
【0066】
オーバーモールドされたハンドル部分40は、前端部に、ハンドル部分40に対して実質的に放射状に延在する拡大前方保護部41を有する。
【0067】
オーバーモールドされたハンドル部分40は、工具を少なくとも部分的に中に受け入れる目的で、ボディ30の一対の隔置された腕部32の間に位置している成形された溝42を含む。好ましい形態においては、溝42は細長く、断面が長方形である。工具を格納ポジションから手動で解放できるように使用者が工具の前端部において溝42に指を挿入できるようにする目的で、溝42は工具より長く、溝42の顎部側端部に空洞部分または空隙部分を形成していることが好ましい。溝42は、後部における一対の隔置された拡大翼部43まで後方に延びており、翼部43の間に工具取付け部44が取り付けられている(後から説明する)。
【0068】
各工具を格納ポジションおよび開ポジションにおいて解放可能にラッチするために、ラッチ機構が設けられている。図示した形態においては、ラッチ機構は、ハンドル部分40の隔置された拡大翼部43の内側部分に設けられている突起部45と、オーバーモールドされた工具取付け部44に設けられている2組の対応する成形された凹部46(工具取付け部44上で180゜離れている)とを含む。ラッチ機構は、工具が格納ポジションおよび開ポジションに動くときの触覚フィードバックおよび/または音のフィードバックをもたらす。
【0069】
工具47それぞれには、先端部またはビット49の後ろに位置する金属シャフト49が設けられている。オーバーモールドされた工具取付け部44は、各工具47のシャフト49の周囲を完全にオーバーモールドして設けられている。オーバーモールドされた工具取付け部44は、非導電性材料から製造されており、ハンドル(特に止めねじおよび顎部31)に対して工具を絶縁する。
【0070】
オーバーモールドされた取付け部44それぞれには、それぞれのハンドル部分40に対して工具を取り付けるための開口部50が設けられており、開口部50は工具取付け拡大部に設けられている。
【0071】
通常では、工具それぞれのシャフト48は、ハンドルに対して工具47を取り付けるため使用される開口部50の直前で終了する。一般に、工具47それぞれのシャフト48は、オーバーモールドされた取付け部44の中でのシャフト48の回転を最小にし、好ましくは実質的に防止するために、オーバーモールドされた取付け部44と係合するように成形されている。例えば、図19に示したシャフトは、シャフト48から放射状に延びる少なくとも1つの拡大部51を有する。
【0072】
各ハンドルは、一般には一対の工具を有し、これらの工具は一般に同じ種類であり、例えば一方のハンドルにおける一対のマイナスドライバと、他方のハンドルにおける一対のプラスドライバである。工具は、個別に回転するように取り付けられている。一般には、一方の工具が他方の工具に対して容易に独立して回転できるようにする目的で、工具それぞれのオーバーモールドされた取付け部44の間にブッシュ52が設けられている。
【0073】
工具は、オーバーモールドされたハンドル部分40の翼部43それぞれにおける開口部を貫きかつ各工具47のそれぞれのオーバーモールドされた取付け部44における開口部50を貫いて設けられている止めねじを使用して、それぞれのハンドルに対して取り付けられている。図19に示したように、止めねじは、それぞれが拡大頭部を有する一対の対応する部分53,54を有し、一方の部分53が、内側にねじが切られた開口部を有し、他方の部分54が、外側にねじが切られた部分を有する細長い軸55を有する。図示したように、これらの部分53,54それぞれの拡大頭部は、止めねじをロックおよびロック解除するように工具を係合させることを可能にするための係合形成部を有する。止めねじを設けることによって、必要な場合に使用者がねじを取り外して工具を変更することができる。部分53,54それぞれの拡大頭部は、絶縁材料を使用してオーバーモールドされている(56)。図18に示したように、止めねじは、ボディの隔置された腕部から、オーバーモールドされた絶縁性のハンドルによって隔離されており、さらに、オーバーモールドされた取付け部によって、それぞれの工具からも隔離されている。
【0074】
オーバーモールド材料は重要である。その第一の理由として、マルチツールのさまざまな部分を互いに絶縁する目的でオーバーモールド材料は主として非導電性であり、第二の理由として、選択される1種類または複数種類の材料は、心地よさが要求される場所では弾性である必要があるが、負荷がかかる領域(例えば工具取付け部付近)ではより硬く強度が高い必要があるためである。必要に応じて場所ごとに特定の材料特性を提供する目的で、1種類または複数種類の非導電性材料を使用することができる。一般的には、工具の使用中にトルクがかかりうる位置では、複数種類の材料を使用することができ、使用される材料の1つは、より中央に位置する、硬い、および/または、より強度の高い材料であり、外側部分または外側部分に向かって、使用時の心地よさのために、より柔らかく、より心地よい材料が設けられる。
【0075】
任意の形態の絶縁部材または絶縁材料を使用してよいが、特に好ましい材料は、ナイロン被覆を有するXHHW架橋ポリエチレンまたは架橋PVCである。使用される絶縁部材または絶縁材料は、本マルチツールおよび個々の工具の作業面から、約1000Vまで使用者を完全に絶縁できることが好ましい。
【0076】
(もしあれば)本明細書およびクレームにおいて、語「備えている」およびその活用形(「(単数に対する)備える」、「(複数に対する)備える」を含む)は、記載された整数それぞれを含むが、1つまたは複数のさらなる整数が含まれることを除外するものではない。
【0077】
本明細書全体を通じて「一実施形態」または「実施形態」の参照は、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じてさまざまな箇所に現れる表現「一実施形態においては」または「実施形態においては」は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているとは限らない。さらには、特定の特徴、構造、または特性を、1つまたは複数の組合せにおいて任意の適切な方法で組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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