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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】エラストマー凝集体組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
C08J3/02 D CEQ
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019530652
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081625
(87)【国際公開番号】W WO2018104362
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】16203181.9
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ユーセフ,アハメド アブエルフェトー
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー,ヴァーン
(72)【発明者】
【氏名】フェラリス,デイン
(72)【発明者】
【氏名】シュィ,ジエンホア
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084473(JP,A)
【文献】特表2003-527473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088496(US,A1)
【文献】特公昭41-000982(JP,B1)
【文献】特開昭59-129215(JP,A)
【文献】特開昭58-174401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1816586(CN,A)
【文献】水島弘之,ラテックス技術講座(3) 天然ゴムラテックス,日本ゴム協会誌,日本,日本ゴム協会,2008年04月16日,Vol. 46, No. 1,pp 30-44,https://www.jstage.jst.go.jp/browse/gomu/46/1/_contents/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
B29B 7/00-11/14
B29C 67/02-67/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B05C 5/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー凝集体組成物の製造方法であって、
(a)水中に≦150nmの平均粒径を有するエラストマー粒子を含むスラリーを提供するステップと;
(b)少なくとも500m/秒の流速、(a)からの前記スラリーを開口部(1)に強制的に通すステップと
を、この順番で含んでなり、
前記方法が、開口部(1)を備えるバルブアセンブリを使用して実行され、前記バルブアセンブリが、シート(2)、フローチャネル(3)であって、それを通って前記スラリーが前記開口部(1)に向かって特定の圧力で流れるフローチャネル(3)、および前記スラリーの流れ方向と反対方向の圧力を受けるバルブ(4)をさらに備え、前記シート(2)が、前記フローチャネル(3)を形成する中心開口を備え、前記バルブの圧力と前記スラリーの圧力は、前記スラリーが少なくとも500m/秒の流速で前記開口部(1)を通過するように調整される、方法。
【請求項2】
前記スラリーが、≧40MPaおよび≦60MPaの圧力で導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーが、該スラリーの全重量に対して≧20.0重量%のエラストマー粒子を含、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エラストマー粒子が、ポリブタジエン粒子、ポリ(スチレン-ブタジエン)粒子、ポリ(アクリロニトリルブタジエン)粒子またはポリブチルアクリレート粒子から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シートが、円形開口を備えた円形シートである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリーが、少なくとも700m/秒および最大1000m/秒の流速、前記開口部を通過する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エラストマー粒子が、前記スラリー中の固体成分の全重量の少なくとも98.0重量%を占める、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法に従って製造されるエラストマー凝集体組成物であって、該組成物中の前記エラストマー凝集体の全重量に対して、0.02重量%未満の、>3000nmの粒径を有する凝集体を含む、エラストマー凝集体組成物。
【請求項9】
前記エラストマー凝集体の全重量に対して、30重量%未満の、<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含、請求項8に記載のエラストマー凝集体組成物。
【請求項10】
前記エラストマー凝集体の全重量に対して、60重量%以下の、>200nmでかつ≦1000nmの粒径を有する凝集体を含、請求項8または9に記載のエラストマー凝集体組成物。
【請求項11】
前記エラストマー凝集体の全重量に対して、10.0重量%以下の、>1000nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含、請求項10のいずれか一項に記載のエラストマー凝集体組成物。
【請求項12】
前記エラストマー凝集体の全重量に対して1.0重量%以下の、>1500nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含、請求項11のいずれか一項に記載のエラストマー凝集体組成物。
【請求項13】
前記組成物中の前記エラストマー凝集体は、平均粒径より高い粒径においてピークを有する二峰性粒径分布を有する、請求項8~12のいずれか一項に記載のエラストマー凝集体組成物。
【請求項14】
請求項13のいずれか一項に記載のエラストマー凝集体組成物を使用して製造されるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー凝集体組成物の製造方法に関する。本発明は、エラストマー凝集体組成物にも関する。本発明は、さらに、そのようなエラストマー凝集体組成物を使用して製造された熱可塑性コポリマーに関する。本発明によるエラストマー凝集体組成物は、平均粒径より高い粒径においてピークを有する二峰性粒径分布プロフィールを示す。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性コポリマーの分野において、1つまたはそれ以上のエラストマー相および1つまたはそれ以上の熱可塑性相を含んでなる特定のコポリマーは、有意な商業的および技術的価値を有することが知られている。そのような複数相の存在によって、それぞれの相に存在する所望の特性の材料を単一ポリマー系に導入するための手段が提供される。そのようなコポリマーは、非常に望ましい特性のバランスを有し得、それらは多種多様な用途に変換するために有用となる。例えば、そのようなコポリマーは、所望の衝撃強さ、引張強さおよび曲げ弾性率を含む機械的特性;加熱撓み温度などの熱的特性;射出成形による成形性などの加工特性;ならびに表面光沢および引掻抵抗などの光学的特性などの材料特性の望ましいバランスを示し得る。
【0003】
1つまたはそれ以上のエラストマー相および1つまたはそれ以上の熱可塑性相を含んでなるそのようなコポリマーは、例えば、コア-シェルコポリマーであり得る。本発明に関して、コア-シェルコポリマーは、熱可塑性材料のマトリックス中に分散されたエラストマー粒子を含んでなるコポリマー、特に、熱可塑性材料のマトリックス中に分散されたエラストマー粒子を含んでなり、熱可塑性材料の特定の部分がエラストマー粒子の表面と化学的に結合しているコポリマーであるとして理解されてよい。
【0004】
そのようなコア-シェルコポリマーは、例えば、特定のエラストマー粒子と特定のモノマーとを反応させることによって製造されてもよく、この時、モノマーは反応して熱可塑性材料を形成し、またエラストマー粒子と反応して、エラストマー粒子と化学的に結合した熱可塑性材料のポリマー構造を形成する。これによって、熱可塑性相を形成する熱可塑性材料がエラストマー相と適合性を有することが確実となる。そのような適合性は、エラストマー相および熱可塑性相の相分離が生じない溶融プロセスを可能にするものとして理解されてよい。
【0005】
本発明に従って、エラストマー粒子を使用して製造され得るコア-シェルコポリマーの周知の種類は、ABSコポリマーとも呼ばれるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーである。そのようなABSコポリマーは、例えば、ポリブタジエン粒子がエラストマー粒子として作用し、それが、スチレンおよびアクリロニトリルを含むモノマーを含んでなる混合物と反応して、ABSコポリマーが形成され得る、乳化重合プロセスによって製造され得る。
【0006】
そのようなコア-シェルコポリマーの他の例としては、メタクリレートブタジエンスチレンコポリマー、アクリロニトリルスチレンブチルアクリレートコポリマーおよびスチレンブチルアクリレートコポリマーが含まれる。
【0007】
そのようなコア-シェルコポリマーの材料特性の所望のバランスを達成するためには、コア-シェルコポリマーの生産工程において使用されるエラストマー粒子が特定の粒径を有することが望ましい。例えば、エラストマー粒子が、≧150および≦1000nmまたは≧250および≦1000nmなどの≧150nmまたは≧250nmの平均粒径を有することが特に望ましい。エラストマー粒子が、≧200nmおよび≦500nm、または≧250および≦400nmの平均粒径を有することが、なおより特に望ましい。本発明に関して、平均粒径は、ISO 9276-2:2014に従って決定されるD50粒径であるものとして理解されてよい。しかしながら、例えば、ポリブタジエン、ポリスチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリルブタジエン)およびポリ(アクリル酸ブチル)などのエラストマーの製造方法によって、一般に、そのような望ましい平均粒径未満、例えば、150nm未満、またはさらには100nm未満である平均粒径を有するエラストマー粒子が得られる。
【0008】
したがって、ABSコポリマーなどのコア-シェルコポリマーの製造において使用するために望ましい平均粒径を有するエラストマー粒子を入手するために、そのようなエラストマー粒子の製造のための方法から得られたエラストマー粒子を、平均粒径が増加する様式で変性することが必要となる。
【0009】
そのようなエラストマー粒子の平均粒径を増加させるための、いくつかの既知の方法がある。例えば、初期エラストマー粒子を形成するために使用されたモノマーを使用して、エラストマー粒子にさらなる重合ステップを受けさせてもよい。これは、直接成長アプローチとして知られている。この方法の不利益は、本発明によるコア-シェルコポリマーの製造において使用される所望の平均粒径を有するエラストマー粒子を製造するために必要とされる重合時間が有意に長いということである。
【0010】
さらなる方法は、初期エラストマー粒子を化学物質、例えば、アクリル酸と反応させて、化学的に凝集したエラストマー粒子を製造することによるなどの化学的凝集である。しかしながら、この方法の不利益は、それがコア-シェルコポリマーの最終特性に影響し得る不純物を導入し得ることである。
【0011】
所望の平均粒径を有するエラストマー粒子を達成するための第3の方法は、初期エラストマー粒子が、粒子が融合して、エラストマー凝集体組成物を形成するような性質の圧力を受ける、圧力凝集によるものである。そのような方法は、比較的急速であることが可能であり、かつエラストマー粒子中にいずれかのさらなる不純物を導入しない。したがって、特に、ABSコポリマーなどの本発明によるコア-シェルコポリマーの製造における使用のために適切であるエラストマー粒子を提供する目的のために、エラストマー粒子の平均粒径を増加させることが望ましい方法である。
【0012】
しかしながら、圧力凝集法の不利益は、そのような圧力凝集法を使用して得られるエラストマー凝集体の平均粒径を制御することは困難であるということである。圧力、温度、スラリー組成および圧力凝集を受ける材料流中の固体材料の分率を含む様々なパラメーターがあり、これらは変動し得、かつエラストマー凝集体の平均粒径に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのような理由により、一定の平均粒径を有する生成物を提供するためにエラストマー凝集体の平均粒径を制御することが可能である、エラストマー凝集体組成物を形成するための凝集のための方法の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これは、今や、
(a)水中に≦150nmの平均粒径を有するエラストマー粒子を含んでなるスラリーを提供するステップと;
(b)少なくとも500m/秒の流速において、開口部を通して(a)からのスラリーを強制するステップと
を、この順番で含んでなる、エラストマー凝集体組成物の製造方法によって、本発明によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の特定の実施形態において使用され得るバルブアセンブリの例示的な実施形態を示す。
図2】シートの正面図を示す。
図3】実施例1および2の均質化されたスラリー中のポリブタジエン粒子の粒径分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
そのような方法によって製造されたエラストマー凝集体組成物は、特に望ましい高い平均粒径を示す。さらに、そのような組成物は、ABSコポリマーなどのエラストマー強化熱可塑性コポリマーの製造の使用のために望ましい粒径分布を示す。
【0017】
本発明の方法において使用されるエラストマー粒子は、例えば、ポリブタジエン粒子、ポリ(スチレンブタジエン)粒子、ポリ(アクリロニトリルブタジエン)粒子、またはポリブチルアクリレート粒子から選択され得る。エラストマー粒子は、好ましくは、≦125nm、またはより好ましくは≦100nmの平均粒径を有し得る。そのようなエラストマー粒子の使用は、エラストマー粒子を得るためにモノマーの長時間の重合の必要性が回避されるという点で利点を有する。
【0018】
本発明による方法において使用されるスラリーは、スラリーの全重量に対して、≧20重量%、好ましくは、≧20重量%および≦70重量%、より好ましくは、≧30重量%および≦60重量%、さらにより好ましくは、≧30重量%および≦50重量%のエラストマー粒子を含んでなり得る。
【0019】
本発明による方法において使用されるスラリーは、スラリーの全重量に対して、≧20重量%、好ましくは、≧20重量%および≦70重量%、より好ましくは、≧30重量%および≦60重量%、さらにより好ましくは、≧30重量%および≦50重量%のエラストマー粒子を含んでなり得、エラストマー粒子は、例えば、ポリブタジエン粒子、ポリ(スチレンブタジエン)粒子、またはポリブチルアクリレート粒子から選択され得る。
【0020】
好ましくは、本発明による方法において使用されるスラリーは、スラリーの全重量に対して、≧20重量%、好ましくは、≧20重量%および≦70重量%、より好ましくは、≧30重量%および≦60重量%、さらにより好ましくは、≧30重量%および≦50重量%のエラストマー粒子を含んでなり、エラストマー粒子は、ポリブタジエン粒子である。
【0021】
(a)からのスラリーは、好ましくは、少なくとも600m/秒、より好ましくは、少なくとも700m/秒、例えば、少なくとも700m/秒および最大1000m/秒の流速において、開口部を通して強制される。
【0022】
本発明によるエラストマー凝集体組成物は、エラストマー凝集体を含んでなる。この組成物は、組成物が水性エマルションなどのエラストマー凝集体を含んでなるエマルジョンの形態であることを確実にするための、分散媒、例えば、水、および添加剤などの追加成分をさらに含んでなり得る。そのような水性エマルションは、ラテックスと呼ばれてもよい。本発明の方法に従って製造されるそのようなラテックスは、例えば、乳化重合によるグラフトコポリマーなどのエラストマー強化熱可塑性コポリマーの製造におけるなどの、さらなる重合プロセスにおいて使用され得る。
【0023】
本発明に従って製造されるエラストマー凝集体組成物中に存在し得るそのような添加剤は、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、獣脂、ピロリン酸四ナトリウム、ダイマー酸のカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、またはそれらの組合せから選択され得る。
【0024】
エラストマー強化熱可塑性コポリマーの製造において、そのようなエラストマー凝集体組成物の導入は、一般に、重合反応の間に実行される。そのような重合反応によってエラストマー強化熱可塑性コポリマーを製造することが可能であるように、重合反応に導入されるエラストマー凝集体組成物の平均粒径は、好ましくは、≧150nmおよび≦1000nm、より好ましくは、≧200nmおよび≦500nm、なおより好ましくは、≧250nmおよび≦400nmである。そのような平均粒径のエラストマー凝集体組成物を使用して製造されたエラストマー強化熱可塑性コポリマーは、望ましい衝撃強さなどの望ましい特性のバランスを提供し得る。
【0025】
得られるエラストマー凝集体組成物が、非常に低分率の小さい粒径を有する凝集体を含んでなることは、本発明による方法のさらなる利点である。特に、本発明の方法によって、低分率の<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体が得られることは利点である。
【0026】
本発明の特に有利な実施形態において、エラストマー凝集体組成物は、エラストマー凝集体の全重量に対して<30重量%の、<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含んでなる。さらにより好ましくは、エラストマー凝集体組成物は、エラストマー凝集体の全重量に対して<25重量%の、<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含んでなる。
【0027】
そのような低分率の<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を有するエラストマー凝集体組成物は、そのような方法によって製造されたコポリマーが、より高分率の<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を有するエラストマー凝集体組成物を使用して製造された同様のコポリマーよりも良好な衝撃強さを示すため、凝集体上に熱可塑性ポリマー鎖がグラフト重合される乳化重合プロセスによるグラフトコポリマーの製造のために特に適切である。小さい粒子の分率が非常に高い場合、グラフトコポリマーの加工安定性に対しても有害となり得る。
【0028】
組成物が、エラストマー凝集体の全重量に対して0.02重量%未満の、>3000nmの粒径を有する凝集体を含んでなることは、そのようなグラフトコポリマーの製造におけるエラストマー凝集体組成物の使用に関して、さらに好ましい。0.02重量%より多い>3000nmの粒径を有するそのような凝集体の存在は、そのような組成物を使用して調製されたグラフトコポリマーが所望のレオロジーを示さないという点で不利益をもたらす。大きい粒子の分率が非常に高い場合、エラストマー凝集体を使用して製造されたグラフトコポリマーのメルトフローに対して有害となり得る。さらに、大きい粒子の分率が非常に高い場合、グラフトコポリマーの不透明性に対して有害となり得る。
【0029】
本発明によるエラストマー凝集体組成物が、エラストマー凝集体の全重量に対して0.02重量%未満の、>3000nmの粒径を有する凝集体を含んでなることは好ましい。
【0030】
本発明によるエラストマー凝集体組成物が、エラストマー凝集体の全重量に対して≦10.0重量%、さらにより好ましくは、≦5.0重量%の、>1000nmの粒径を有する凝集体を含んでなることも好ましい。
【0031】
本発明によるエラストマー凝集体組成物が、エラストマー凝集体の全重量に対して≦5.0重量%、さらにより好ましくは、≦1.0重量%の、>1500nmの粒径を有する凝集体を含んでなることも好ましい。
【0032】
本発明によるエラストマー凝集体組成物が、エラストマー凝集体の全重量に対して≧60.0重量%、さらにより好ましくは、≧65.0重量%または≧70.0重量%の、>200nmおよび≦1000nmの粒径を有する凝集体を含んでなることが特に好ましい。そのような組成物は、所望の材料特性を提供するため、ならびに所望の加工特性を示すために有利である、所望の狭い分子量分布を示す。
【0033】
特に好ましいエラストマーは、BRとも呼ばれるブタジエンゴム、またはSBRとも呼ばれるスチレン-ブタジエンゴムである。さらに特に好ましくは、エラストマーはブタジエンゴムである。
【0034】
本発明によると、エラストマー粒子がスラリー中の固体成分の全重量の少なくとも90.0重量%を占めることが好ましい。より好ましくは、エラストマー粒子は、スラリー中の固体成分の全重量の少なくとも95.0重量%、さらにより好ましくは、少なくとも98.0重量%を占める。エラストマー粒子がスラリー中の固体成分の唯一の供給源を形成する実施形態が、なおさらに好ましい。
【0035】
そのようなスラリー組成物は、特に、所望の高い平均粒径を有し、特に、以下の実施例2によると、図3に例示されるように、粒径の増加を考慮した場合、エラストマー凝集体の平均粒径よりも低い粒径において第1の肩部を有し、かつ平均粒径より高い粒径において最高ピークを有する粒径分布を有する、本発明の方法によるエラストマー凝集体の形成を可能にする。
【0036】
開口部を通してエラストマー粒子を含んでなるスラリーを強制することを含む本発明のステップ(b)は、バルブアセンブリを使用して実行され得る。
【0037】
本発明の特定の実施形態において使用され得るバルブアセンブリの例示的な実施形態を図1に示す。図1は、開口部(1)、シート(2)、フローチャネル(3)およびバルブ(4)を含んでなるバルブアセンブリの断面図を示す。シート(2)は、フローチャネル(3)を形成する中心開口を含んでなる。本方法の特定の実施形態において、スラリーは、フローチャネル(3)を介してバルブに導入され、そして開口部(1)に向かって流動する。スラリーは、特定の圧力において導入される。例えば、スラリーは、≧40MPa、好ましくは、≧50MPaの圧力において導入され得る。スラリーは、例えば、≦80MPa、好ましくは、≦70MPa、より好ましくは、≦60MPaの圧力において導入され得る。例えば、スラリーは、≧40および≦80MPa、好ましくは、≧40および≦70MPa、より好ましくは、≧40および≦60MPa、さらにより好ましくは、≧50および≦60MPaの圧力において導入され得る。
【0038】
スラリーは水性分散系であってもよい。スラリーが開口部(1)を通過する時の特定の所望の流速を確実にするために、バルブは、開口部(1)中のスラリーの特定の所望の流速を達成するために、特定の圧力を受けなければならない。
【0039】
本発明による方法において、開口部を通る材料フローは、一緒にチャネルを形成する平坦な第1の表面および平坦な第2の表面によって制限され得る。
【0040】
図2にシート(2)の正面図を示す。図2は、シート(2)が、フローチャネル(3)を形成する円形開口部を含んでなる円形シートであることを示す。シートが、円形開口を含んでなる円形シートであることが好ましい。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、開口部(1)を含んでなるバルブアセンブリを使用してプロセスが実行され、バルブアセンブリは、シート(2)、それを通して開口部(1)に向かって特定の圧力においてスラリーが流動するフローチャネル(3)、およびスラリーのフロー方向と反対の方向で圧力を受けるバルブ(4)をさらに含んでなり、シート(2)は、フローチャネル(3)を形成する中心開口を含んでなり、かつバルブ圧力およびスラリーの圧力は、少なくとも500m/秒、好ましくは、少なくとも600m/秒、より好ましくは、少なくとも700m/秒、例えば、少なくとも700m/秒および最大1000m/秒の流速において開口部(1)を通してスラリーが強制されるように調整される。例えば、スラリーは、少なくとも500m/秒および最大1000m/秒、好ましくは、少なくとも500m/秒および最大800m/秒において開口部(1)を通して強制され得る。
【0042】
本発明は、その実施形態の1つにおいて、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メタクリレートブタジエンスチレンコポリマー、アクリロニトリルスチレンブチルアクリレートコポリマーまたはスチレンブチルアクリレートコポリマーの製造におけるエラストマー凝集体組成物の使用にも関する。
【0043】
本発明は、さらに本発明によるエラストマー凝集体組成物を使用して製造されたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーにも関する。
【実施例
【0044】
以下の非限定的な実施例によって本発明を説明する。
【0045】
乳化重合プロセスにおいて、ポリブタジエンスラリーは、水性環境におけるフリーラジカル重合プロセスによる1,3-ブタジエンの重合によって調製された。スラリー中のポリブタジエン粒子は約80nmの平均粒径を有した。スラリーは、39.0重量%のポリブタジエン粒子および0.7重量%のオレイン酸を含んでなった。
【0046】
スラリーに、本発明の方法に従って、35℃の温度において均質化を受けさせた。スラリーの1時間あたり2375リットルのフローをホモジナイザーに供給した。実施例1において、開口部で775m/秒の速度において均質化を実行した。比較目的で含まれる実施例2において、392m/秒の速度において均質化を実行した。両実施例の圧力低下は52MPaであった。
【0047】
ホモジナイザーバルブは図1のようなバルブであった。
【0048】
均質化から得られたスラリー中のポリブタジエン粒子の粒径分布は、Beckman Coulter多波長レーザ回折粒径アナライザータイプLS12 320を使用して決定した。
【0049】
粒径決定の結果を以下の表IIに示す。図3中、x軸上の値がμmでの粒径を表し、かつy軸上の値が体積%での相当する粒径を有する全粒子体積に対する粒子の体積分率を表す。
【0050】
【表1】
【0051】
表IIで示される分率は、均質化から得られたスラリー中のポリブタジエン粒子の体積%での体積分率を表す。速度は、図1のバルブの開口部1におけるスラリーの速度である。
【0052】
表IIに示される粒径分布データは、より狭い粒径を有する均質化されたエラストマー凝集体組成物を得るための本発明による方法によって、0.2~1.0μmの範囲の粒子の分率が増加したことを示す。特に、実施例1の均質化されたエラストマー凝集体組成物は、>1.5μmの粒径を有する粒子の低分率によって示されるように、大きい粒径を有する粒子のはるかに低含有量を含んでなった。
【0053】
図3は、実施例1および2の均質化されたスラリー中のポリブタジエン粒子の粒径分布を示す。両方の均質化されたエラストマー凝集体は二峰性粒径分布を示した。しかしながら、実施例1の均質化されたエラストマー凝集体の粒径分布は、より低い粒径における二峰性分布の第1の様式に相当する肩部と、肩部より高い粒径における二峰性分布の第2の様式に相当するピークとを有する二峰性分布を示した。
【0054】
実施例2に関して、これは反対である。ピークは、肩部よりも低い粒径に存在する。このことから、比較例の実施例2において得られた均質化されたエラストマー凝集体は、凝集体を形成しなかったポリブタジエン粒子のより高い分率を含有することが結論されてもよい。さらに、図3において2μmより大きい粒子の存在によって示されるように、より大きい粒径を有する実施例2の凝集体のより高い分率が存在する。

最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
エラストマー凝集体組成物の製造方法であって、
(a)水中に≦150nmの平均粒径を有するエラストマー粒子を含んでなるスラリーを提供するステップと;
(b)少なくとも500m/秒の流速において、開口部を通して(a)からの前記スラリーを強制するステップと
を、この順番で含んでなる方法。
[実施態様2]
前記開口部を通しての材料フローが、一緒にチャネルを形成する平坦な第1の表面および平坦な第2の表面によって制限される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記スラリーが、≧40MPaおよび≦60MPaの圧力で導入される、実施態様1~2のいずれかに記載の方法。
[実施態様4]
前記スラリーが、前記スラリーの全重量に対して≧20.0重量%のエラストマー粒子を含んでなる、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
[実施態様5]
前記エラストマー粒子が、ポリブタジエン粒子、ポリ(スチレン-ブタジエン)粒子、ポリ(アクリロニトリルブタジエン)粒子またはポリブチルアクリレート粒子から選択される、実施態様1~4のいずれかに記載の方法。
[実施態様6]
前記方法が、開口部(1)を含んでなるバルブアセンブリを使用して実行され、前記バルブアセンブリが、シート(2)、フローチャネル(3)であって、それを通して前記開口部(1)に向かって特定の圧力において前記スラリーが流動するフローチャネル(3)、および前記スラリーのフロー方向と反対の方向で圧力を受けるバルブ(4)をさらに含んでなり、前記シート(2)が、前記フローチャネル(3)を形成する中心開口を含んでなり、かつ前記バルブ圧力および前記スラリーの圧力が、少なくとも500m/秒の流速において前記開口部(1)を通して前記スラリーが強制されるように調整される、実施態様1~5のいずれかに記載の方法。
[実施態様7]
前記シートが、円形開口を含んでなる円形シートである、実施態様6に記載の方法。
[実施態様8]
前記スラリーが、少なくとも700m/秒および最大1000m/秒の流速において、前記開口部を通して強制される、実施態様1~7のいずれかに記載の方法。
[実施態様9]
前記エラストマー粒子が、前記スラリー中の固体成分の全重量の少なくとも98.0重量%を占める、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
[実施態様10]
前記エラストマー凝集体組成物が、前記エラストマー組成物中の前記エラストマー凝集体の全重量に対して0.02重量%未満の、>3000nmの粒径を有する凝集体を含んでなる、実施態様1~9のいずれかに記載の方法に従って製造されるエラストマー凝集体組成物。
[実施態様11]
前記エラストマー凝集体組成物が、前記エラストマー凝集体の全重量に対して<30重量%の、<200nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含んでなる、実施態様10に記載のエラストマー凝集体組成物。
[実施態様12]
前記エラストマー凝集体組成物が、前記エラストマー凝集体の全重量に対して≧60重量%の、>200nmおよび≦1000nmの粒径を有する凝集体を含んでなる、実施態様10~11のいずれかに記載のエラストマー凝集体組成物。
[実施態様13]
前記エラストマー凝集体組成物が、前記エラストマー凝集体の全重量に対して≦10.0重量%の、>1000nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含んでなる、実施態様10~12のいずれかに記載のエラストマー凝集体組成物。
[実施態様14]
前記エラストマー凝集体組成物が、前記エラストマー凝集体の全重量に対して≦1.0重量%の、>1500nmの粒径を有するエラストマー凝集体を含んでなる、実施態様10~13のいずれかに記載のエラストマー凝集体組成物。
[実施態様15]
実施態様10~14のいずれかに記載のエラストマー凝集体組成物を使用して製造されるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー。
図1
図2
図3