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特許7046956水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法
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  • 特許-水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/26 20060101AFI20220328BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/08 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/12 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 67/00 20060101ALI20220328BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B01D71/26
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
B01D71/52
B01D71/08
B01D71/12
B01D71/44
B01D71/40
B01D71/38
B01D69/00
B01D67/00
B01D69/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019536930
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2018087669
(87)【国際公開番号】W WO2019210535
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】201810418279.3
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518426387
【氏名又は名称】シャンハイ・エネルギー・ニュー・マテリアルズ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.155,NANLU ROAD,PUDONG NEW DISTRICT,SHANGHAI 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チェン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】シオン、レイ
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-193201(JP,A)
【文献】特開2013-091059(JP,A)
【文献】国際公開第2010/072233(WO,A1)
【文献】特表2012-508946(JP,A)
【文献】特開2015-193697(JP,A)
【文献】特開平11-302433(JP,A)
【文献】国際公開第2017/206593(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08J 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマーおよび酸化防止剤を含む水処理用ポーラスメンブレンであって、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、
ここで、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部であり、
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルピロリドンを含み、
前記水処理用ポーラスメンブレンは、5~30μmの厚さ、10~100nmのポア径、20~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有することを特徴とする、水処理用ポーラスメンブレン。
【請求項2】
前記酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水処理用ポーラスメンブレン。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法であって、少なくとも下記を含む方法。
1)高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を混合し、均質に撹拌して混合物を形成し、ここで、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記ポア形成剤の重量が100~500部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部であり、前記水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルピロリドンを含み、
2)前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、前記ポア形成剤にある温度で溶解して混合物を形成し、前記混合物を二軸スクリュー押出法によって押し出し、
3)前記混合物をキャスティングしてストリップにし、
4)前記ストリップを抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを延伸してフィルムにし、前記フィルムに二次抽出を施し、次いで洗浄し、
5)前記フィルムにヒートセットする工程および巻き取る工程を施し、前記水処理用ポーラスメンブレンを得る。
【請求項4】
前記工程1)において、前記高分子量ポリエチレン、前記水溶性ポリマー、前記ポア形成剤および前記酸化防止剤を連続式混合仕込みケトルに加え、混合し、45~55rpmの速度で均質に撹拌して、前記混合物を形成することを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項5】
前記工程2)において、前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、170℃~230℃の温度で前記ポア形成剤に溶解して、混合物を形成し、次いで前記混合物を150~250rpmの速度で連続的に押し出すことを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項6】
前記工程3)において、前記混合物をキャスティングしてストリップにする工程は、前記工程2)からの押し出し混合物をスリットダイに連続的に導入し、前記スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、70℃~90℃の温度でキャストしてストリップにすることを含むことを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項7】
前記工程4)において、前記ストリップを抽出物としてのジクロロメタンで抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを二方向延伸機によって115~125℃の温度で延伸してフィルムを形成し、前記フィルムにジクロロメタンで二次抽出を施し、脱イオン水で洗浄することを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項8】
前記工程5)において、前記フィルムを115~125℃の温度で15~20分間ヒートセットし、20~50m/分の速度で巻き取って、前記水処理用ポーラスメンブレンを得ることを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項9】
前記ポア形成剤は、天然鉱油、C6~15アルカン、C8~15脂肪族カルボン酸、C1~4アルキルC8~15脂肪族カルボキシレート、C2~6ハロゲン化アルカン、フタレート、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、ベンゾエート、エポキシ化植物油、ベンゼンスルホンアミド、ホスホトリエステル、グリコールエーテル、アセチル化モノグリセリド、クエン酸エステルおよびジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項10】
前記酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【請求項11】
前記ポア形成剤は、40℃で10~100mm/sの動粘度、および110℃以上の初期沸点を有することを特徴とする、請求項に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーポーラスメンブレン技術、特に水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロポア分布を含む特殊なフィルムとしてのポーラスメンブレンは通常、空気のろ過および精製、水の処理および精製のために、または電池のための特殊なセパレーターなどとして使用されている。ポーラスメンブレンは一般に、一軸引張、二方向引張、または相変換および他の方法によって製造され、メンブレンは通常、ポーラスメンブレンを形成するための貫通孔を有する。ポーラスメンブレンのろ過および吸着の機構は、スクリーニング理論によって説明することができる。すなわち、メンブレンのポアよりも小さい粒径を有する凝集粒子または分子はメンブレンのポアを通過するであろうし、メンブレンのポアと等しい粒径を有する凝集粒子または分子はメンブレンのポアを閉塞するであろうし、メンブレンのポアよりも大きい粒径を有する凝集粒子または分子はメンブレン本体によって保持される。さらに、荷電イオンはメンブレンの表面上およびメンブレンのポア中に吸着されて保持され、ポア径よりも小さい粒子はポアの開口部において架橋保持部を形成し、これもまた一定の保持効果を有する。したがって、ポーラスメンブレンのポア径およびポロシティは直接、ろ過および吸着の最終効果を決定する。加えて、メンブレンが薄くなればなるほど、透過性はより良好となり、ろ過および吸着の効率はより高くなる。
【0003】
水処理用ポーラスフィルムに関して、それらの表面が良好な親水性を有して、メンブレンの表面上およびポアの内側における水のぬれを向上させ、水の透過性を向上させることが特に望ましい。従来の水処理用ポーラスメンブレンに関して、それらの親水性を高めるために、通常、なんらかの親水性コーティングをメンブレンの表面に付着させている。親水性コーティングは一般に、厚さが薄く、耐久性に乏しく、プロセスが複雑で、頻繁な交換を必要とし、したがって耐久性に乏しい。加えて、親水性コーティングで被覆されたポーラスメンブレンはより厚く、ポア径分布の低い均一性、比較的大きいポア径、および乏しい親水性効果を有し、このためポーラスメンブレンの性能が低下する。
【0004】
したがって、非常に薄い厚さ、良好なポア径分布およびポア径、ならびに良好な親水性を有しながら、従来技術における水処理用ポーラスメンブレンの乏しい耐久性および複雑な製造を克服するような、水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法を提案することが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点に鑑み、当技術分野における水処理用ポーラスメンブレンの乏しい耐久性、複雑な製造プロセス、より大きいメンブレンの厚さ、大きいポア径および乏しい親水性という問題を解決するための、水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法を提供することである。
【0006】
上記および他の関連する目的を達成するために、本発明は、少なくとも、高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマーおよび酸化防止剤を含む水処理用ポーラスメンブレンを提供し、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、
ここで、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部である。
【0007】
好ましくは、水処理用ポーラスメンブレンは、5μm~30μmの厚さ、10nm~100nmのポア径、20%~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有する。
【0008】
好ましくは、水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上である。
【0009】
好ましくは、酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上である。
【0010】
本発明はまた、水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法を提供し、本発明による水処理用ポーラスメンブレンは、この方法によって製造することができ、この方法は少なくとも下記を含む:
1)高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を混合し、均質に撹拌して混合物を形成し、ここで、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記ポア形成剤の重量が100~500部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部であり、
2)前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、前記ポア形成剤にある温度で溶解して混合物を形成し、前記混合物を二軸スクリュー押出法によって押し出し、
3)前記混合物をキャスティングしてストリップにし、
4)前記ストリップを抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを延伸してフィルムにし、前記フィルムに二次抽出を施し、洗浄し、
5)前記フィルムにヒートセットおよび巻き取りを施し、前記水処理用ポーラスメンブレンを得る。
【0011】
好ましくは、前記工程1)において、前記高分子量ポリエチレン、前記水溶性ポリマー、前記ポア形成剤および前記酸化防止剤を連続式混合仕込みケトルに加え、混合し、45~55rpmの速度で均質に撹拌して、前記混合物を形成する工程1)において、高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を連続式混合仕込みケトルに添加し、混合し、45~55rpmの速度で均質に撹拌して混合物を形成する。
【0012】
好ましくは、前記工程2)において、前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、170℃~230℃の温度で前記ポア形成剤に溶解して、混合物を形成し、次いで前記混合物を150~250rpmの速度で連続的に押し出す。
【0013】
好ましくは、前記工程3)において、前記混合物をキャスティングしてストリップにする工程は、前記工程2)からの押し出し混合物をスリットダイに連続的に導入し、前記スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、70℃~90℃の温度でキャストしてストリップにすることを含む。
【0014】
好ましくは、前記工程4)において、前記ストリップを抽出物としてのジクロロメタンで抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを二方向延伸機によって115~125℃の温度で延伸してフィルムを形成し、前記フィルムにジクロロメタンで二次抽出を施し、次いで脱イオン水で洗浄する。
【0015】
好ましくは、前記工程5)において、前記フィルムを115~125℃の温度で15~20分間ヒートセットし、20~50m/分の速度で巻き取って、前記水処理用ポーラスメンブレンを得る。
【0016】
好ましくは、前記水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上である。
【0017】
好ましくは、前記ポア形成剤は、天然鉱油、C6~15アルカン、C8~15脂肪族カルボン酸、C1~4アルキルC8~15脂肪族カルボキシレート、C2~6ハロゲン化アルカン、フタレート、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、ベンゾエート、エポキシ化植物油、ベンゼンスルホンアミド、ホスホトリエステル、グリコールエーテル、アセチル化モノグリセリド、クエン酸エステルおよびジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される1以上である。
【0018】
好ましくは、前記酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上である。
【0019】
好ましくは、前記ポア形成剤は、40℃で10~100mm/sの動粘度、および110℃以上の初期沸点を有する。
【0020】
したがって、本発明は、上述した方法による水処理用ポーラスメンブレンを提供する。前記水処理用ポーラスメンブレンは、5~30μmの厚さ、10~100nmのポア径、20~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有する。
【0021】
上述したように、本発明による水処理用ポーラスメンブレンおよびそれを製造する方法は、以下の有利な効果を有する。
1.本発明は、水溶性ポリマーを添加することによってポーラスメンブレンを製造し、これはポーラスメンブレンを製造するプロセスの複雑さをかなり低減し、製造コストを低減することができる。
2.本発明による水処理用ポーラスメンブレンは、水溶性ポリマーをその中に直接混合することにより、親水性コーティングを付着させる必要がなく、それによってポーラスメンブレンの耐久性をかなり改善させ、ポーラスメンブレンの厚さを低減する。加えて、ポーラスメンブレンは、小さい表面接触角を有し、親水的性質をかなり改善させる。そして、ポーラスメンブレンは、小さいポア径および良好なポア径分布を有し、ろ過および吸着効果をかなり改善させる。最後に、ポーラスメンブレンは、電池、特にリチウムイオン電池に使用することができ、リチウムイオン電池の性能をかなり改善させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明による水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法のフロー図である。
【実施形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を具体的な例により説明するが、当業者であれば、本明細書の開示から本発明の他の利点および効果を容易に理解することができるであろう。本発明は、他の異なる具体的な実施形態によって実施または適用されるであろう。本発明の種々の詳細は、異なる観点および応用に基づいて本発明の趣旨から逸脱することなく修正および変更することができる。
【0024】
図1を参照されたい。本例において提供した図は、単に本発明の基本概念を概略的に例示しているに過ぎず、したがって図は本発明に関連する構成要素を示しているだけであり、実際の実施における構成要素の数、形状およびサイズに従って描いているのではないことに留意されたい。各構成要素の形状、数および割合を、実際の実施においてランダムに変更してもよく、構成要素の配置および形状をより複雑にしてもよい。
【0025】
本発明は、少なくとも高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマーおよび酸化防止剤を含む水処理用ポーラスメンブレンを提供し、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、ここで、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部である。
【0026】
高分子量ポリエチレンは、単一の高分子量ポリエチレンまたは2以上の高分子量ポリエチレンの混合物であってもよいことに留意すべきである。したがって、高分子量ポリエチレンの分子量は平均分子量で計算する。
【0027】
好ましくは、高分子量ポリエチレンは1.0×10~5.0×10、より好ましくは1.0×10~2.0×10の平均分子量を有する。
【0028】
好ましくは、高分子量ポリエチレンは、0.940~0.966g/cm、より好ましくは0.950~0.976g/cmの密度を有する。
【0029】
好ましくは、高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、水溶性ポリマーの重量は10~40部であり、ポア形成剤の重量は200~500部であり、酸化防止剤の重量は0.5~8部である。
【0030】
より好ましくは、高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、水溶性ポリマーの重量は20~30部であり、ポア形成剤の重量は200~400部であり、酸化防止剤の重量は1~6部である。
【0031】
本発明による水処理用ポーラスメンブレンは、5~30μmの厚さ、10~100nmのポア径、20~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有する。
【0032】
一例として、水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上を含む。
【0033】
一例として、酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上である。
【0034】
図1に示すように、本発明はまた水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法を提供し、上述した水処理用ポーラスメンブレンはこの方法によって製造することができ、この方法は少なくとも下記を含む:
S1:高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を混合し、均質に撹拌して混合物を形成し、ここで、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10~10.0×10の平均分子量および0.940~0.976g/cmの密度を有し、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記ポア形成剤の重量が100~500部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部である。
S2:前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、前記ポア形成剤にある温度で溶解して混合物を形成し、前記混合物を二軸スクリュー押出法によって押し出す。
S3:前記混合物をキャスティングしてストリップにする。
S4:前記ストリップを抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを延伸してフィルムにし、前記フィルムに二次抽出を施し、次いで洗浄する。
S5:前記フィルムにヒートセットして巻き取る工程を施し、前記水処理用ポーラスメンブレンを得る。
【0035】
一例として、工程S1において、高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を連続式混合仕込みケトルに加え、混合し、45~55rpmの速度で均質に撹拌して混合物を形成する。さらに、好ましくは、高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、水溶性ポリマーの重量は10~40部であり、ポア形成剤の重量は200~500部であり、酸化防止剤の重量は0.5~8部である。より好ましくは、高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、水溶性ポリマーの重量は20~30部であり、ポア形成剤の重量は200~400部であり、酸化防止剤の重量は1~6部である。
【0036】
一例として、工程S2において、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤および水溶性ポリマーを170℃~230℃の温度でポア形成剤に溶解して混合物を形成し、次いで混合物を150~250rpmの速度で連続的に押し出す。
【0037】
一例として、工程S3において、混合物をキャスティングしてストリップにする工程は、工程S2からの押し出し混合物をスリットダイに連続的に供給し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、70℃~90℃の温度でキャスティングしてストリップにすることを含む。
【0038】
一例として、工程S4において、ストリップを抽出物としてのジクロロメタンで抽出してその中のポア形成剤を除去し、ストリップを二方向延伸機によって115℃~125℃の温度で延伸してフィルムを形成し、フィルムにジクロロメタンで二次抽出に施し、次いで脱イオン水で洗浄する。
【0039】
一例として、工程S5において、フィルムを115℃~125℃の温度で15~20分間ヒートセットし、20~50m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを得る。
【0040】
一例として、水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上である。
【0041】
一例として、ポア形成剤は、天然鉱油、C6~15アルカン、C8~15脂肪族カルボン酸、C1~4アルキルC8~15脂肪族カルボキシレート、C2~6ハロゲン化アルカン、フタレート、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、ベンゾエート、エポキシ化植物油、ベンゼンスルホンアミド、ホスホトリエステル、グリコールエーテル、アセチル化モノグリセリド、クエン酸エステルおよびジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される1以上である。
【0042】
一例として、酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上である。
【0043】
一例として、ポア形成剤は、40℃で10~100mm/sの動粘度、および110℃以上の初期沸点を有する。
【0044】
本発明による水処理用ポーラスメンブレンは、リチウムイオン電池、特にパワーリチウムイオン電池にも使用することができる。
【0045】
本発明を具体例と組み合わせて以下にさらに例示する。これらの例は本発明を例示するためにのみ使用し、本発明の範囲を限定することを意図していないと理解すべきである。具体的な条件を示していない以下の例における実験方法は通常、従来の条件または製造業者によって推奨される条件の下で行う。別段に明記しない限り、百分率、比率、割合、または部は全て重量に基づく。本発明における重量対体積の百分率に対する重量の単位は当業者に周知であり、例えば、100ml溶液中の溶質の重量をいう。別段に定義しない限り、ここで使用する全ての専門および科学用語は、当業者に公知のものと同じ意味を有する。加えて、記載したものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の方法に利用してもよい。ここに記載した好ましい実施方法および材料は例示の目的のためだけである。
【0046】
以下の例の表中のパラメーターは以下の方法によって測定する。
1.厚さ
厚さは、Germany Marr film thickness gauge 1216を用いGB/T6672-2001に従ったプラスチックフィルムおよびシートの厚さを測定する方法によって測定する。
【0047】
2.ポロシティ
ポロシティは、PMI AAQ-3K-A-1ポロメーターによって測定する。
【0048】
3.ポア径
ポア径は、PMI AAQ-3K-A-1ポロメーターによって測定する。
【0049】
4.接触角
ここで使用する限り、「接触角」とは、フィルム層上の水または水溶液の接触角をいい、Kruss DSA25接触角計を使用して室温で脱イオン水を用いて測定する。
【0050】
例1
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド5g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0051】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0052】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表1に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0053】
【表1】
【0054】
例2
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド10g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0055】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油中に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0056】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表2に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0057】
【表2】
【0058】
例3
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド15g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0059】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0060】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表3に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0061】
【表3】
【0062】
例4
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド25g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0063】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0064】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表4に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0065】
【表4】
【0066】
例5
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド20g、ポリビニルピロリドン5g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0067】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0068】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表5に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0069】
【表5】
【0070】
比較例
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0071】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0072】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表6に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0073】
【表6】
【0074】
例6
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド30g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0075】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0076】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表7に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0077】
【表7】
【0078】
例7
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド40g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0079】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0080】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表8に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0081】
【表8】
【0082】
例8
0.957g/cmの密度および5.0×10の平均分子量を有する高分子量ポリエチレン100g、ジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)0.5g、ポリエチレンオキシド50g、ならびに鉱油250gを連続式混合仕込みケトルに加え、50rpmの速度で撹拌して原材料を均質に混合した。
【0083】
混合物を二軸押出機に連続的に加え、高分子量ポリエチレン、酸化防止剤およびポリエチレンオキシドを二軸押出機において180℃で鉱油に連続的に溶解し、二軸押出機によって連続的に200rpmの速度で押し出した。混合物をスリットダイに連続的に導入し、スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、80℃でキャスティングしてストリップにした。
【0084】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出タンクに入れて、ストリップから鉱油を除去した。抽出したストリップを120℃の二方向延伸機に連続的に供給し、延伸してフィルムにし、次いで得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄した。次いで、フィルムを120℃で15分間ヒートセットし、20m/分の速度で巻き取って、水処理用ポーラスメンブレンを直接得た。表9に示すように、その特定の性能パラメーターを試験した。
【0085】
【表9】
【0086】
上の実験結果から、例1~8で得られた水溶性ポリマーを添加したポーラスメンブレンは、比較例で得られたポーラスメンブレンよりもかなり低い接触角を有していること、および、添加する水溶性ポリマーの量を増加した場合、ある特定の重量範囲内では、ポーラスメンブレンの接触角がさらに低下すること(例1~5参照)、さらには、添加する水溶性ポリマーの量が25重量部の場合、最低の接触角が達成される(例4および5参照)ことがわかる。これらの結果は、水溶性ポリマーの添加が、ポーラスメンブレンの表面親水性をかなり向上させうることを示している。
【0087】
さらに、例6~8から、添加する水溶性ポリマーの量が30重量部を超えた場合、ポーラスメンブレンの接触角が著しく増加し始めることがわかる。これは、水溶性ポリマーをある特定の範囲を超える量で添加した場合、親水性を向上する点では効果的ではないことを示している。
【0088】
加えて、例4および5に示すように、例4は単一成分の水溶性ポリマーである一方で、例5は2の水溶性ポリマー成分の混合物であることを除いて、添加した水溶性ポリマーの重量は同じである。これらの結果は、2の異なる水溶性ポリマーの相乗的使用が、ポア径を可能な限り低減しながら、ポーラスメンブレンの表面上の低い接触角を保証できることを示しており、これは水溶性ポリマーと高分子量ポリエチレンとの間のより物理的な絡み合い点の形成に関連している。
【0089】
以上、本発明の技術内容および特徴を開示してきた。本発明による水処理用ポーラスメンブレンの構成要素は、本発明で言及した材料にも本発明で言及した調合物にも限定されることはなく、類似の特性を有する他の材料および調合物も本発明によってカバーされる。当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、さらに様々な置換および修正を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、例によって開示された内容に限定されず、本発明から逸脱せず、添付の特許請求の範囲によってカバーされる様々な置換および修正を含むものとする。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1] 少なくとも高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマーおよび酸化防止剤を含む水処理用ポーラスメンブレンであって、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10 ~10.0×10 の平均分子量および0.940~0.976g/cm の密度を有し、
ここで、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部である、水処理用ポーラスメンブレン。
[2] 前記水処理用ポーラスメンブレンは、5~30μmの厚さ、10~100nmのポア径、20~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有することを特徴とする、[1]に記載の水処理用ポーラスメンブレン。
[3] 前記水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、[1]に記載の水処理用ポーラスメンブレン。
[4] 前記酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、[1]に記載の水処理用ポーラスメンブレン。
[5] 水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法であって、少なくとも下記を含む方法。
1)高分子量ポリエチレン、水溶性ポリマー、ポア形成剤および酸化防止剤を混合し、均質に撹拌して混合物を形成し、ここで、前記高分子量ポリエチレンは1.0×10 ~10.0×10 の平均分子量および0.940~0.976g/cm の密度を有し、前記高分子量ポリエチレンの重量100部に基づいて、前記水溶性ポリマーの重量が5~50部であり、前記ポア形成剤の重量が100~500部であり、前記酸化防止剤の重量が0.1~10部であり、
2)前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、前記ポア形成剤にある温度で溶解して混合物を形成し、前記混合物を二軸スクリュー押出法によって押し出し、
3)前記混合物をキャスティングしてストリップにし、
4)前記ストリップを抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを延伸してフィルムにし、前記フィルムに二次抽出を施し、次いで洗浄し、
5)前記フィルムにヒートセットする工程および巻き取る工程を施し、前記水処理用ポーラスメンブレンを得る。
[6] 前記工程1)において、前記高分子量ポリエチレン、前記水溶性ポリマー、前記ポア形成剤および前記酸化防止剤を連続式混合仕込みケトルに加え、混合し、45~55rpmの速度で均質に撹拌して、前記混合物を形成することを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[7] 前記工程2)において、前記高分子量ポリエチレン、前記酸化防止剤および前記水溶性ポリマーを、170℃~230℃の温度で前記ポア形成剤に溶解して、混合物を形成し、次いで前記混合物を150~250rpmの速度で連続的に押し出すことを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[8] 前記工程3)において、前記混合物をキャスティングしてストリップにする工程は、前記工程2)からの押し出し混合物をスリットダイに連続的に導入し、前記スリットダイを通して冷却キャストローラーに押し出し、70℃~90℃の温度でキャストしてストリップにすることを含むことを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[9] 前記工程4)において、前記ストリップを抽出物としてのジクロロメタンで抽出してその中の前記ポア形成剤を除去し、前記ストリップを二方向延伸機によって115~125℃の温度で延伸してフィルムを形成し、前記フィルムにジクロロメタンで二次抽出を施し、脱イオン水で洗浄することを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[10] 前記工程5)において、前記フィルムを115~125℃の温度で15~20分間ヒートセットし、20~50m/分の速度で巻き取って、前記水処理用ポーラスメンブレンを得ることを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[11] 前記水溶性ポリマーは、カルボキシメチルデンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、加水分解ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリ無水マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシドからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[12] 前記ポア形成剤は、天然鉱油、C 6~15 アルカン、C 8~15 脂肪族カルボン酸、C 1~4 アルキルC 8~15 脂肪族カルボキシレート、C 2~6 ハロゲン化アルカン、フタレート、トリメリテート、アジペート、セバケート、マレエート、ベンゾエート、エポキシ化植物油、ベンゼンスルホンアミド、ホスホトリエステル、グリコールエーテル、アセチル化モノグリセリド、クエン酸エステルおよびジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[13] 前記酸化防止剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、亜リン酸エステル、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N’-ビス(β-ナフチル)p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリノニルフェニルホスファイト、およびトリフェニルホスファイトからなる群から選択される1以上であることを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[14] 前記ポア形成剤は、40℃で10~100mm /sの動粘度、および110℃以上の初期沸点を有することを特徴とする、[5]に記載の水処理用ポーラスメンブレンを製造する方法。
[15] [7]に記載の方法により製造されたことを特徴とする水処理用ポーラスメンブレン。
[16] 前記水処理用ポーラスメンブレンは、5~30μmの厚さ、10~100nmのポア径、20~60%のポロシティ、および30°~95°の表面接触角を有することを特徴とする、[15]に記載の水処理用ポーラスメンブレン。
【符号の説明】
【0090】
S1~S5 工程
図1