(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】抗OX40抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220328BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220328BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220328BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220328BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220328BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220328BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220328BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220328BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220328BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220328BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220328BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220328BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220328BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/39
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 D
C12P21/08
C07K16/46
(21)【出願番号】P 2019551983
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2018080315
(87)【国際公開番号】W WO2018177220
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】201710185400.8
(32)【優先日】2017-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518049935
【氏名又は名称】イノベント バイオロジックス (スウツォウ) カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】ツン、アンディー
(72)【発明者】
【氏名】ヘマンタ、バルアー
(72)【発明者】
【氏名】リウ、シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンジャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ビンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ウェイフェン
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538057(JP,A)
【文献】国際公開第2009/036379(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/105256(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/009568(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域HCVRおよび軽鎖可変領域LCVRを含んでなる抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記HCVRが、配列番号106、107、108、109、110または111で表されるアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるものであり、前記LCVRが、配列番号130で表されるアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるものである、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
重鎖および軽鎖を含んでなる抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖が、配列番号189、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148または149で表されるアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるものであり、前記軽鎖が、配列番号168で表されるアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるものである、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
抗体がIgG1形式の抗体またはIgG2形式の抗体またはIgG4形式の抗体である、請求項1または2に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
抗体
がヒト抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
抗原結合フラグメントがFab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体または(Fab’)2、シングルドメイン抗体、ダイアボディまたは線形抗体からなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記一本鎖抗体がscFvである、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体が二重特異性または多重特異性抗体分子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記二重特異性抗体分子が、OX40、およびPD-1、PD-L1またはPD-L2と結合する、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項12】
発現ベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項10に記載の核酸または請求項11または12に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞が原核生物または真核生物である、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
宿主細胞が、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗体もしくはその抗原結合フラグメントの生産に好適な他の細胞から選択される、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項16】
宿主細胞が、CHO細胞もしくは293細胞である、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項17】
抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを生産する方法であって、請求項13~16のいずれか一項に記載の宿主細胞を、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸の発現に好適な条件下で培養することを含んでなる、方法。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントを単離することをさらに含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
宿主細胞から抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することをさらに含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなる、免疫複合体。
【請求項21】
他の薬剤をさらに含んでなる、請求項20に記載の免疫複合体。
【請求項22】
前記薬剤が細胞傷害性薬剤である、請求項21に記載の免疫複合体。
【請求項23】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗OX40抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項20~22のいずれか一項に記載の免疫複合体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項24】
T細胞の活性化に使用するための、またはT細胞により媒介される抗腫瘍活性の誘導に使用するための、または身体の免疫応答の増強に使用するための、または対象において癌の治療に使用するための、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記癌が、肺癌、肝臓癌、胃癌、または結腸癌である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記肺癌が非小細胞肺癌である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
薬学上許容可能なアジュバントをさらに含んでなる、請求項23~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
1以上の他の治療薬をさらに含んでなる、請求項23~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記治療薬が、化学療法薬、抗血管新生薬、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記抗血管新生薬がベバシズマブである、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
T細胞の活性化に使用するための、またはT細胞により媒介される抗腫瘍活性の誘導に使用するための、または身体の免疫応答の増強に使用するための、または対象において癌の治療に使用するための薬剤の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗OX40抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項20~22のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用。
【請求項32】
前記癌が肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、または結腸癌である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記肺癌が非小細胞肺癌である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記薬剤が、前記対象に1以上の療法と組み合わせて投与するためのものである、請求項31~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記療法が、治療様式および/または他の治療薬である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記治療様式が手術および/もしくは放射線療法を含み、かつ/または他の治療薬が、化学療法薬、PD-1軸結合拮抗薬、および抗血管新生薬からなる群から選択される、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記PD-1軸結合拮抗薬が、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体から選択され、かつ/または前記抗血管新生薬がベバシズマブである、請求項36に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、OX40と特異的に結合する新規な抗体および抗体フラグメントならびに前記抗体または抗体フラグメントを含んでなる組成物に関する。加えて、本発明は、前記抗体またはその抗体フラグメントをコードする核酸およびそれを含んでなる宿主細胞、ならびに関連するその使用に関する。加えて、本発明は、治療および診断のための前記抗体および抗体フラグメントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
OX40(CD134、TNFRSF4およびACT35としても知られる)は、最初はラットCD4 T細胞上のT細胞活性化マーカーとして記載され(Paterson DJ, Jefferies WA, Green JR, Brandon MR, Corthesy P, Puklavec M, Williams AF. Antigens of activated rat T lymphocytes including a molecule of 50,000 Mr detected only on CD4 positive T blasts. Mol Immunol. 1987; 24: 1281-1290)、その後、TCR動員において上方調節されることが示された(Mallett S, Fossum S, Barclay AN. Characterization of the MRC OX40 antigen of activated CD4 positive T lymphocytes - a molecule related to nerve growth factor receptor. EMBO J. 1990; 9: 1063-1068)。OX40はCD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、NKT細胞および好中球上で同定された(D. J. Paterson, W. A. Jefferies, J. R. Green et al., “Antigens of activated Rat T lymphocytes including a molecule of 50,000 M(r) detected only on CD4 positive T blasts,” Molecular Immunology, vol. 24, no. 12, pp. 1281-1290, 1987)。OX40シグナル伝達は、T細胞に対する補助刺激シグナルを増強して細胞増殖、生存、エフェクター機能および遊走の促進をもたらし得る(Gramaglia I, Weinberg AD, Lemon M, Croft M. Ox-40 ligand: a potent costimulatory molecule for sustaining primary CD4 T cell responses. J Immunol. 1998; 161: 6510-6517;Gramaglia I, Jember A, Pippig SD, Weinberg AD, Killeen N, Croft M. The OX40 costimulatory receptor determines the development of CD4 memory by regulating primary clonal expansion. J Immunol. 2000; 165: 3043-3050)。
【0003】
OX40のリガンドであるOX40Lは、主として抗原提示細胞(APC)上で発現され、その発現はCD40および肥満細胞シグナル伝達、Toll様受容体(TLR)、ならびに炎症性サイトカインにより誘導され得る。APCに加え、平滑筋細胞および血管内皮細胞などの非造血細胞もOX40Lを発現し得る。OX40Lを過剰発現するトランスジェニックマウスでは、T細胞の活性化が増強され、免疫化するとこれらのマウスはT細胞応答の増強を生じた(Murata K, Nose M, Ndhlovu LC, Sato T, Sugamura K, Ishii N. Constitutive OX40/OX40 ligand interaction induces autoimmune-like diseases. J Immunol. 2002; 169: 4628-4636, およびSato T, Ishii N, Murata K, Kikuchi K, Nakagawa S, Ndhlovu LC, Sugamura K. Consequences of OX40-OX40 ligand interactions in langerhans cell function: enhanced contact hypersensitivity responses in OX40L-transgenic mice. Eur J Immunol. 2002; 32:3326-3335)。このデータは、OX40L発現がT細胞におけるOX40シグナル伝達の制限因子であることを示唆している。
【0004】
腫瘍担持マウスでは、リンパ腫、黒色腫、肉腫、結腸癌、乳癌および神経膠腫などの種々のマウス悪性腫瘍細胞株のマウスモデルにおいて、in vivoにおけるマウスOX40の結合(可溶型マウスOX40L-免疫グロブリン融合タンパク質またはマウスOX40L模倣剤、例えば、抗マウスCD134特異的抗体による)が抗腫瘍免疫を増強し、無腫瘍生存をもたらす(Sugamura et al. Nature Rev Imm. 2004; 4: 420-431)。
【0005】
抗原に対する哺乳動物の免疫応答は、OX40と組み合わせたOX40結合剤の使用によって増強されることが示唆されている(WO99/42585;Weinberg,2000)。この文献では一般にOX40結合剤に言及しているが、重要性はOX40Lまたはその一部の使用にあり、抗OX40抗体はOX40Lと等価な物として開示されている。実際に、Weinbergのグループがこの試験をヒト以外の霊長類研究に使用した際にも、OX40L結合部位に結合し、一般にOX40Lを模倣する抗体を再度意図的に選択した。
【0006】
Al-Shamkhani et al. (Eur J Chem. 1996; 26: 1695-1699)は、活性化されたマウスT細胞上でのOX40の差次的発現を調べるために、OX40L結合を遮断しなかったOX86と呼ばれる抗OX40抗体を使用し;Hirschhorn-Cymerman et al. (J Exp Med. 2009; 206: 1103-1116)は、マウスモデルにおいて潜在的化学免疫療法としてOX86およびシクロホスファミドを使用した。しかしながら、OX86はヒトOX40と結合しないと思われ、ヒトで有効な抗体を選択する場合には、Weinbergの研究に従って、OX40L結合部位に結合する抗体が選択されることになろう。
【0007】
重症複合免疫不全症(SCID)マウスにおいて、in vivoにおけるヒトOX40の連結(ヒトOX40上のOX40L結合ドメインと相互作用する抗ヒトOX40特異的抗体による;US2009/0214560A1)は抗腫瘍免疫を増強し、これがリンパ腫、前立腺癌、結腸癌および乳癌などの様々なヒト悪性腫瘍細胞株における腫瘍成長阻害をもたらす。
【0008】
ヒトにおいて、ヒトOX40の連結により媒介される抗腫瘍免疫応答の正確な機序は確認されていないが、OX40膜貫通シグナル伝達経路により媒介されると思われ、これはOX40Lとの相互作用により刺激される。この相互作用は、三量体OX40LおよびOX40の結合によって媒介される。現行の抗癌治療では、抗OX40抗体よりも強力な薬物として三量体を形成したOX40リガンドを使用することが奨励される(Morris et al. Mol Immunol. 2007; 44: 3112-3121)。
【0009】
加えて、単剤抗OX40治療は、免疫性の低い腫瘍には十分な抗腫瘍免疫原性を提供せず、OX40と他の戦略の組合せを開発することも望ましい。OX40シグナル伝達と腫瘍細胞で調節不全である他のシグナル伝達経路(例えば、血管新生経路、PD-1経路)の組合せを調節することは治療効力をさらに増進し得ることが判明している。
【0010】
しかしながら、種々の癌、免疫関連疾患およびT細胞機能不全疾患をより良好に治療するまたは遅延させるために、当技術分野で公知の抗OX40抗体よりもOX40とOX40Lとの結合を遮断しにくい新規な抗OX40抗体を開発する必要がなお存在する。
【0011】
発明の概要
本出願人らは驚くことに、T細胞を活性化し、T細胞により媒介される抗腫瘍活性を誘導するために、ヒトOX40に結合した抗体またはそのフラグメント(例えば、抗原結合フラグメントが使用され、ここで、前記抗体またはそのフラグメントはヒトOX40と良好に結合しつつ、ヒトOX40とOX40リガンド(OX40L)との結合を遮断しにくく、免疫応答の増強をもたらし得ることを見出した。
【0012】
好ましくは、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、T細胞を活性化することができ、例えば、T-エフェクター細胞の免疫刺激性/エフェクター機能を増強し、かつ/またはこれらの細胞を増殖させ、かつ/またはT-制御細胞の免疫抑制機能を下方調節することができる。より好ましくは、この抗体は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を惹起することができる。いくつかの実施形態では、本発明のOX40抗体は、種々の癌、免疫関連疾患およびT細胞機能不全障害を治療するまたは遅延させるために使用することができる。
【0013】
よって、本発明は、ヒトOX40またはカニクイザルOX40と結合する抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を提供し、この抗体またはそのフラグメントは、ヒトまたはカニクイザルOX40とそのリガンドOX40Lとの結合を遮断しにくい。いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはそのフラグメントはヒトOX40と結合しつつ、ヒトOX40とそのリガンド(OX40L)との結合を遮断しにくく(例えば、既知のOX40抗体またはOX40Lと比較)、免疫応答の増強をもたらし得る。
【0014】
好ましくは、ヒトまたはカニクイザルOX40とそのリガンドOX40Lの間の結合に対する本発明の抗体またはそのフラグメントの遮断は、OX40Lリガンドまたは当技術分野で公知の他の抗OX40抗体(例えば、ポガリズマブ)の遮断よりも小さい。より好ましくは、抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ヒトまたはカニクイザルOX40とのその強い結合(例えば、既知の抗OX40抗体、例えば、ポガリズマブに匹敵)を維持しつつ、ヒトまたはカニクイザルOX40とそのリガンドOX40Lの間の結合を(例えば、OX40Lの遮断よりも、またはポガリズマブの遮断よりも)遮断しにくい。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、ヒトOX40またはカニクイザルOX40と結合する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗体またはそのフラグメントは、ネズミOX40と結合しないか、またはヒトもしくはカニクイザルOX40と結合するよりもネズミOX40と結合しにくく、このネズミOX40は例えばラットOX40またはマウスOX40である。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体は、アゴニスト活性を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ヒトOX40またはカニクイザルOX40と約200nM未満、好ましくは、約100nM、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約10nM以下、より好ましくは、約9nM以下、より好ましくは、約8nM以下、より好ましくは、約7nM、6nM、5nM、4nM、3nMまたは2nM以下のKDで結合し、最も好ましくは、KDは約1nMまたは0.8nMまたは0.4nMまたは0.3nMまたは0.2nMまたは0.1nM以下である。いくつかの実施形態では、抗体結合親和性は、バイオライト干渉法(Bio-light interferometry)(例えば、Fortebioアフィニティー測定)またはMSDアッセイを用いて決定される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはそのフラグメントによるヒトOX40またはカニクイザルOX40への結合は、フローサイトメトリー(例えばFACS)アッセイを用いて決定される。いくつかの実施形態では、細胞内のヒトOX40またはカニクイザルOX40への結合は、約10nM、9nmまたは8nm以下のEC50を有する。いくつかの実施形態では、ヒトOX40またはカニクイザルOX40への結合は、約7nMまたは約6nMまたは約5nmまたは約4nmまたは約3nM以下のEC50を有する。いくつかの実施形態において、フローサイトメトリーにより行ったアッセイでは、抗体または抗体フラグメントは、OX40を発現しない対応する対照細胞と比較して、MFI>1000倍の差、好ましくは、>1100倍の差、1200倍の差、1300倍の差、1400倍の差、1500倍の差、1600倍の差、1700倍の差、1800倍の差、1900倍の差、2000倍の差、2100倍の差、2200倍の差、2300倍の差、2400倍の差または2500倍の差で細胞上に発現されたOX40と結合する。
【0019】
別の側面では、本発明は、T細胞(例えば、CD4+T細胞)を活性化することができるアゴニスト活性を有する抗OX40抗体またはそのフラグメントを提供する。よって、いくつかの実施形態では、抗OX40抗体またはそのフラグメントはT細胞を活性化することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、例えば、CD4+エフェクターT細胞増殖を増加させること、および/またはCD4+エフェクターT細胞のγ-インターフェロン産生を増加させること(例えば、本発明の抗OX40抗体もしくそのフラグメントの処置前の増殖および/もしくはサイトカイン生産と比較して、または対照抗体(例えば、IgG抗体)によって処置されたCD4+エフェクターT細胞の増殖および/もしくはサイトカイン産生と比較して)によってCD4+エフェクターT細胞機能を増強する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFNgなどのγ-インターフェロンまたはIL-2などのインターロイキンである。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、腫瘍内(浸潤性)CD4+エフェクターT細胞の数(例えばCD4+エフェクターT細胞の総数、または例えばCD45+細胞中のCD4+細胞のパーセンテージ)を、例えば、本発明の抗OX40抗体もしくはそのフラグメントによる処置前(または対照抗体(例えば、IgG抗体)による処置後)の腫瘍内(浸潤性)CD4+T細胞の数と比較して増加させる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、γ-インターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤性)CD4+エフェクターT細胞の数(例えば、γ-インターフェロンを発現するCD4+細胞の総数、または全CD4+細胞中のγ-インターフェロンを発現するCD4+細胞のパーセンテージ)を、例えば、本発明の抗OX40抗体もしくはそのフラグメントによる処置前(または対照抗体(例えば、IgG抗体)により処置後)のγ-インターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤性)CD4+エフェクターT細胞の数と比較して増加させる。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗OX40抗体のアゴニスト活性は、T細胞活性化の後に放出されるサイトカインのレベルによって評価される。よって、本発明は、IgG対照で処置したCD4+T細胞のサイトカイン産生と比較して、CD4+T細胞のサイトカイン産生を増強することができる抗OX40抗体またはそのフラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、γ-インターフェロン(例えば、IFNg)またはインターロイキン(例えば、IL-2)などの炎症性サイトカインである。
【0023】
好ましくは、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、CD4+T細胞により分泌されるIL-2のレベルを、対応する対照IgGtと比較して約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160倍までまたはそれを超えて増大させることができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、CD4+T細胞により分泌されるIL-2のレベルを、対応する対照IgG抗体と比較して約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27倍までまたはそれを超えて増大させることができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、CD4+T細胞により分泌されるIFNgレベルを、対応する対照IgG抗体と比較して1、2、3倍またはそれを超えて増大させることができる。いくつかの実施形態では、T細胞のサイトカイン分泌レベルは、ELISAにより決定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗OX40抗体のアゴニスト活性は、OX40シグナル伝達(例えば、NFκB下流シグナル伝達のモニタリング)によって評価される。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、OX40を発現する標的細胞においてOX40シグナル伝達を増強する。いくつかの実施形態では、OX40シグナル伝達は、NFkB下流シグナル伝達をモニタリングすることによって検出される。
【0025】
よって、本発明は、対照IgG抗体と比較してNFKBにより媒介される転写活性レベルを増強する抗OX40抗体またはそのフラグメントを提供する。好ましくは、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、NFκBにより媒介される転写活性のレベルを、対応する対照IgG抗体と比較して約1、2、3、4、5、6、7倍またはそれを超えて増大させることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、腫瘍内(浸潤性)CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、CD8+エフェクターT細胞の総数、または例えばCD45+細胞中のCD8+のパーセンテージ)を、例えば、本発明の抗OX40抗体もしくはそのフラグメントで処置する前(または対照抗体(例えば、IgG抗体)で処置した後)の腫瘍内(浸潤性)CD8+エフェクターT細胞の数と比較して増大させる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、γ-インターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤性)CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、総CD8+細胞中のγ-インターフェロンを発現するCD8+細胞のパーセンテージ)を、例えば、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントで処理する前(または対照抗体例えばIgG抗体による処置後)のγ-インターフェロンを発現する腫瘍内(浸潤性)CD8+Tエフェクター細胞の数と比較して増大させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、例えば、メモリーT細胞の増殖を増加させること、および/またはメモリー細胞におけるサイトカイン産生を増加させることによってメモリーT細胞機能を増強する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、γ-インターフェロン(例えば、IFNg)またはインターロイキン(例えば、IL-2)である。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を惹起することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ヒトエフェクター細胞と、例えば、ヒトエフェクター細胞で発現されるFcγR(例えば、活性化FcγR)と結合する。いくつかの実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、ADCCエフェクター機能を遂行する(遂行することができる)。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントの機能は、抗体架橋を必要とする。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントの機能は、以下のうちの1以上である:CD4+エフェクターT細胞の増殖および/またはサイトカイン産生を増加させる、CD4+メモリーT細胞の増殖および/またはサイトカイン生成を増大させる、および/またはADCCにより細胞を減らす。いくつかの実施形態では、抗体架橋は、細胞培養プレートなどの固相表面に接着する抗ヒトOX40アゴニスト抗体を提供することによって決定される。いくつかの実施形態では、抗体架橋は、抗体のIgG Fc部分に突然変異(例えば、アミノ酸突然変異)を導入し、その変異抗体の機能を試験することによって決定される。いくつかの実施形態では、抗体架橋は、FcgRIIbにより達成される。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、抗体架橋なくその機能を達成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、FcgRIIbの不在下でその機能を達成することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、より良好な抗腫瘍活性を有する。例えば、対照IgGまたは既知の抗OX40抗体と比較して、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、対象において腫瘍体積を低減することができ、好ましくは、一方で、対象の体重に影響を及ぼさない。
【0032】
本明細書に記載の対照としてのIgG抗体には、IgG1抗体、またはIgG4抗体またはIgG2抗体、例えば、表7に示されるような軽鎖および重鎖を有するIgG1、IgG2またはIgG4抗体が含まれる。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明は、上記の抗OX40抗体の特性のうち1以上を有する抗OX40抗体またはそのフラグメントを提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)を含んでなり、ここで、前記HCVRは、
(i)表Bに挙げられる抗体のいずれか1つのHCVRに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3、または
(ii)(i)の配列と比較して3つのCDR領域に全部で少なくとも1つ、かつ10もしくは5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなり、ここで、前記LCVRは、
(i)表Bに挙げられる抗体のいずれかのLCVRに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列;または
(ii)(i)の配列と比較して3つのCDR領域に全部で少なくとも1つ、かつ10もしくは5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含んでなる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域HCVRと軽鎖可変領域LCVRを含んでなり、ここで、
(a)前記HCVRは、
(i)表Bに挙げられる抗体のいずれかのHCVRに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3、または
(ii)(i)の配列と比較して前記3つのCDR領域に全部で少なくとも1、10もしくは5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含み;かつ/または
(b)前記LCVRは、
(i)表Bに挙げられる抗体のいずれかのLCVRに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列;または
(ii)(i)の配列と比較して3つのCDR領域に全部で少なくとも1つ、かつ10または5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる配列
を含む。
【0037】
好ましい実施形態では、HCVRは、配列番号106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119もしくは120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、またはそのアミノ酸配列からなる。
【0038】
好ましい実施形態では、LCVRは、配列番号130、131、132、133、134、135、136、137もしくは138からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、またはからなる。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)および/または軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなり、ここで、
(i)前記HCVRは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、ここで、HCDR1は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなり、またはHCDR1は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;HCDR2は、配列番号17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなる、またはHCDR2は、配列番号17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32および33からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;HCDR3は、配列番号34、35、36、37、38、39および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなり、またはHCDR3は、配列番号34、35、36、37、38、39および40からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;かつ/または
(ii)ここで、前記LCVRは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含んでなり、ここで、LCDR1は、配列番号41、42、43、44、45および46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなり、またはLCDR1は、配列番号41、42、43、44、45および46からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;LCDR2は、配列番号47、48、49、50、51、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなり、またはLCDR2は、配列番号47、48、49、50、51、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり;LCDR3は、配列番号53、54、55、56、57、58、59、60および61からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなり、またはLCDR3は、配列番号53、54、55、56、57、58、59、60および61からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1、2もしくは3つの変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなる。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなる抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、
(a)前記HCVRは、
(i)表Aに示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3の組合せ;または
(ii)前記3つのCDR領域に全部で少なくとも1つ、かつ10もしくは5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる(i)のHCDR組合せの変異体を含み;かつ/または
(b)前記LCVRは、
(i)表Aに示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3の組合せ;または
(ii)(i)のLCDR組合せの変異体、前記変異体は、前記3つのCDR領域に全部で少なくとも1つ、かつ10または5以下のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含んでなる、
を含む。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなる抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、前記HCVRは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含んでなり、前記LCVRは、(CDR)LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含んでなり、ここで、前記抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の組合せは、以下のように表される(表A):
【0042】
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域HCVRおよび/または軽鎖可変領域LCVRを含んでなり、ここで、
(a)重鎖可変領域HCVRは、
(i)配列番号106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119および120からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;または
(ii)配列番号106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119および120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;または
(iii)配列番号106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119および120からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1以上(好ましくは、10以下、より好ましくは、5以下)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域には存在せず;かつ/または
(b)軽鎖可変領域LCVRは、
(i)配列番号130、131、132、133、134、135、136、137および138からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;
(ii)配列番号130、131、132、133、134、135、136、137および138からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;または
(iii)配列番号130、131、132、133、134、135、136、137および138からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1以上(好ましくは、10以下、より好ましくは、5以下)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなる、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域には存在しない。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなる抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、前記抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖可変領域HCVRと軽鎖可変領域LCVRの組合せは、以下のように表される(表B):
【0045】
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖および/または軽鎖を含んでなり、ここで、
(a)重鎖は、
(i)配列番号189、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166もしくは167からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;
(ii)配列番号189、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166もしくは167からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;または
(iii)配列番号189、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166もしくは167からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1以上(好ましくは、20もしくは10以下、より好ましくは、5以下)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域には存在せず、より好ましくは、前記アミノ酸変異は重鎖可変領域には存在せず;かつ/または
(b)軽鎖は、
(i)配列番号168、169、170、171、172、173、174、175もしくは176からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;
(ii)配列番号168、169、170、171、172、173、174、175もしくは176からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、もしくはからなるか;または
(iii)配列番号168、169、170、171、172、173、174、175もしくは176からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して1以上(好ましくは、20もしくは10以下、より好ましくは、5以下)のアミノ酸変異(好ましくは、アミノ酸置換、より好ましくは、保存的置換)を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくは、前記アミノ酸変異はCDR領域には存在せず、より好ましくは、前記アミノ酸変異は軽鎖可変領域には存在しない。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖と軽鎖を含んでなり、ここで、前記抗体またはその抗原結合フラグメントに含まれる重鎖と軽鎖の組合せは、以下の通りである(表C):
【0048】
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントの重鎖は、METDTLLLWVLLLLVPGSTG(配列番号182)などのシグナルペプチド配列をさらに含んでなる。
【0050】
本発明の一つの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸の置換、挿入または欠失を含む。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、OX40と結合することができ、かつ、OX40とそのリガンドOX40Lとの結合を遮断しにくい。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、機能的Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、機能的Fc領域のエフェクター機能はADCCである。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1のFc領域またはヒトIgG2のFc領域である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、以下の特徴のうち1以上を有する:
(i)OX40(特に、ヒトOX40)に対して表5に挙げられる抗体のいずれかと同じまたは同等の結合親和性および/または特異性を示す;
(ii)OX40(特に、ヒトOX40)に対する、表5に挙げられる抗体のいずれかの結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する);
(iii)表5に示される抗体のいずれかが結合するエピトープと同じまたは重複するエピトープと結合する;
(iv)表5に示される抗体のいずれかと、OX40(特に、ヒトOX40)との結合に関して競合する;
(v)表5に挙げられる抗体のいずれかの生物学的特性のうち1以上を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体は、IgGl型の抗体またはIgG2型の抗体またはIgG4型の抗体である。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、ヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部はヒトコンセンサスフレームワーク配列である。一つの実施形態では、本発明の抗OX40抗体はまた、その抗体フラグメント、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)または(Fab’)2、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)または線形抗体からなる群から選択される抗体フラグメントも包含する。
【0054】
特定の実施形態では、抗OX40抗体分子は、二重特異性または多重特異性抗体分子の形態である。一つの実施形態では、二重特異性抗体分子は、OX40に第1の結合特異性およびPD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1および/もしくはCEACAM-5)、PD-L1またはPD-L2に第2の結合特異性を有する。一つの実施形態では、二重特異性抗体分子は、OX40およびPD-1と結合する。別の実施形態では、二重特異性抗体分子は、OX40およびPD-L1と結合する。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体分子は、OX40およびPD-L2と結合する。多重特異性抗体分子は、上記の分子に対する結合特異性の任意の組合せを持ち得る。多重特異性抗体分子は、例えば、OX40に第1の結合特異性ならびに以下の分子:PD-1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1もしくはCEACAM-5)、PD-L1またはPD-L2のうち1以上に第2および第3の結合特異性を含んでなる三重特異性抗体分子であり得る。
【0055】
一つの側面において、本発明は、上記の抗OX40抗体またはそのフラグメントのいずれかをコードする核酸を提供する。一つの実施形態では、前記核酸を含んでなるベクターが提供される。一つの実施形態では、ベクターは発現ベクターである。一つの実施形態では、前記ベクターを含んでなる宿主細胞が提供される。一つの実施形態では、宿主細胞は、真核生物である。別の実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)、または抗体もしくはその抗原結合フラグメントの生産に好適な他の細胞から選択される。別の実施形態では、宿主細胞は原核生物である。
【0056】
一つの実施形態では、本発明は、抗OX40抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を生産する方法を提供し、その方法は、宿主細胞を、前記抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)をコードする核酸の発現に好適な条件下で培養すること、および場合により、前記抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を単離することを含んでなる。一つの実施形態では、この方法は、宿主細胞から抗OX40抗体またはそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を回収することをさらに含んでなる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に提供される抗OX40抗体のいずれかと細胞傷害性薬剤などの他の薬剤とを含んでなる免疫複合体を提供する。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、癌、好ましくは、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などを治療するために使用される。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗OX40抗体またはそのフラグメント、好ましくは、その抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の免疫複合体のいずれかを含んでなる組成物を提供し、好ましくは、この組成物は医薬組成物である。一つの実施形態では、この組成物は、薬学上許容可能なアジュバントをさらに含んでなる。一つの実施形態では、組成物、例えば、医薬組成物は、本発明の抗OX40抗体もしくはそのフラグメント、またはその免疫複合体と1以上の他の治療薬(例えば、化学療法薬、抗血管新生薬、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-L2抗体)の組合せを含んでなる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、癌、好ましくは、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などの治療に使用される。
【0059】
一つの側面において、本発明は、対象T細胞を活性化する、またはT細胞により媒介される抗腫瘍活性を誘導する、または身体の免疫応答を惹起する方法に関し、その方法は、前記対象に有効量の本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメント、免疫複合体または医薬組成物のいずれかを投与することを含んでなる。本発明はまた、対象においてT細胞を活性化する、またはT細胞により媒介される抗腫瘍活性を誘導する、または身体の免疫応答を惹起するための組成物または薬剤の製造のための、本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメントのいずれかの使用に関する。
【0060】
別の側面では、本発明は、対象において癌を治療する方法であって、前記対象に有効量の本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメント、免疫複合体または医薬組成物のいずれかを投与することを含んでなる方法に関する。一つの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などである。別の側面では、本発明はまた、対象における癌の治療のための薬剤の製造のための本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメントのいずれかの使用に関する。一つの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などである。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に1以上の療法(例えば、治療様式および/または他の治療薬)を投与することをさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、治療様式には、手術および/または放射線療法が含まれる。いくつかの実施形態では、他の治療薬は、化学療法薬、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体)、または抗血管新生薬(例えば、ベバシズマブ)からなる群から選択される。
【0062】
別の側面では、本発明は、対象において癌を治療するための薬剤の製造における、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体)と組み合わせた本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメントの使用に関する。一つの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などである。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象または個体は、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。
【0064】
一つの側面において、本発明は、サンプル中のOX40を検出する方法であって、(a)本明細書に記載のサンプルを抗OX40抗体またはそのフラグメントと接触させること;および(b)抗OX40抗体またはそのフラグメントとOX40との間の複合体の形成を検出することを含んでなる方法に関する。一つの実施形態では、抗OX40抗体は、検出可能なように標識される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメントのいずれかを含んでなるキットまたは製品に関する。いくつかの実施形態では、キットまたは製品は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはそのフラグメントと場合により薬学上許容可能なアジュバント、および場合により1以上の付加的な治療薬(例えば、化学療法薬、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体)、抗血管新生薬(例えば、ベバシズマブ)とを含んでなる。いくつかの実施形態では、キットまたは製品は、癌の治療のための薬剤の投与に関する説明書をさらに含んでなる。
【0066】
本発明はまた、本明細書に記載の実施形態のいずれかの任意の組合せを包含する。本明細書に記載の実施形態のいずれか、またはそれらの任意の組合せは、本明細書に記載される本発明の抗OX40抗体またはフラグメントならびにその方法および使用のいずれかおよび総てに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、フローサイトメトリーにより測定される濃度の上昇に伴う、CHO細胞で産生された本発明の抗体による、OX40LとCHO細胞上で発現されたOX40との結合の遮断を示す。
【
図2】
図2は、PHAと、CHO細胞で産生されたIgG1およびIgG2型の本発明の抗体により活性化されたPBMCにおけるT細胞の活性化時のIL-2分泌を示す。
【
図3】
図3は、ヒトOX40およびNFkBプロモーター-lucで安定にトランスフェクトされたJurkatにおける、抗CD3および抗CD28刺激とCHO細胞で生成されたIgG1またはIgG2形式の本発明の抗体による、ルシフェラーゼリポーターの検出を示す。
【
図4】
図4は、ヒトOX40およびNFkBプロモーター-lucで安定にトランスフェクトされたJurkatにおける、抗CD3および抗CD28刺激と、CHO細胞で生成されたIgG2形式の本発明の抗体による、ルシフェラーゼリポーターの検出を示す。
【
図5】
図5は、ヒトOX40およびNFkBプロモーター-lucで安定にトランスフェクトされたJurkatにおける、抗CD3および抗CD28刺激と、CHO細胞で生成されたIgG1またはIgG2形式の本発明の抗体による、ルシフェラーゼリポーターの検出を示す。なお、JurkatはRaji細胞と混合する。
【
図6】
図6は、ヒトOX40およびNFkBプロモーター-lucで安定にトランスフェクトされたJurkatにおける、抗CD3および抗CD28刺激と、CHO細胞で生成されたIgG1形式の本発明の抗体による、ルシフェラーゼリポーターの検出を示す。なお、JurkatはRaji細胞と混合する。
【
図7】
図7は、SEE(1ng/ml)およびCHO細胞で産生されたIgG1またはIgG2形式の本発明のOX40抗体を用いたDC共培養アッセイを示す。
【
図8】
図8は、Raji細胞と混合した場合の、ヒトOX40およびNFkBプロモーター-lucで安定にトランスフェクトされたJurkat細胞における、抗CD3および抗CD28の刺激と、組換えOX40LおよびCHO細胞で生成されたIgG1またはIgG2形式の本発明の抗体または対照(IgG4 ポガリズマブ、OX40L)による、ルシフェラーゼリポーターの検出を示す。
【
図9】
図9は、ルシフェラーゼリポーターに基づく系における、HEK293細胞で生成されたIgG1形式の本発明の抗体による、ヒトOX40発現CHO細胞に対するADCC活性を示す。
【
図10】
図10は、ルシフェラーゼリポーターに基づく系における、HEK293細胞で生成されたIgG2形式の本発明の抗体による、ヒトOX40発現CHO細胞に対するADCC活性を示す。
【
図11】
図11は、Hu-PBMC LoVo腫瘍マウスモデルにおける、NOGマウスにCHO細胞で生成されたIgG1形式の本発明のOX40抗体ADI-20112-g1抗体を投与することによる、個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す(各曲線は1個体のマウスのデータを表す)。
【
図12】
図12は、Hu-PBMC LoVo腫瘍マウスモデルにおける、NOGマウスにCHO細胞で生成されたIgG2形式の本発明のOX40抗体ADI-23515-g2抗体を投与することによる、個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す(各曲線は1個体のマウスのデータを表す)。
【
図13】
図13は、NOGマウスにCHO細胞で生成されたIgG1およびIgG2形式の本発明のOX40抗体ADI-20112-g1およびADI-23515-g2を投与することによる、Hu-PBMC LoVo腫瘍マウスモデルを示す。腫瘍移植後28日目の最終の腫瘍体積測定を示す。
【
図14】
図14は、NOGマウスにCHO細胞で生成されたIgG1およびIgG2形式の本発明のOX40抗体ADI-20112-g1およびADI-23515-g2を投与することによる、Hu-PBMC LoVo腫瘍マウスモデルを示す。
【
図15】
図15は、MC38担癌OX40トランスジェニックマウスにおける、抗PD-1抗体と組み合わせた抗OX40抗体の有効性に関する試験を示す。
【0068】
詳細な説明
定義
本発明を以下で詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、溶液、および試薬は変更可能であるため、これらに限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書で使用される技術用語は特定の実施形態を記載するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解される。本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、そうではないことが定義されない限り、本発明が属する技術分野の熟練者が共通に理解しているものと同じ意味を有する。
【0069】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が使用され、単数形で使用される用語は複数形も含む場合があり、適切であればその逆もある。本明細書で使用される技術用語は特定の実施形態を記載するためのものであり、限定を意図しないと理解される。
【0070】
用語「約」は、数値に関して使用される場合、下限は特定の数値の5%未満から上限は特定の数値の5%を超える範囲の数値を包含することを意味する。
【0071】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)の間の総ての非共有結合的相互作用の総和の強度を意味する。本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、特に断りのない限り、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバーの間の1:1の相互作用を表す固有の結合親和性を意味する。分子Xの、その相手Yに対する親和性は、一般に、平衡解離定数(KD)により表される。親和性は、当技術分野で公知のものおよび本明細書に記載のものを含む、当技術分野で公知の従来法によって測定することができる。
【0072】
用語「抗OX40抗体」、「抗OX40」、「OX40抗体」または「OX40に結合する抗体」とは、本明細書で使用する場合、抗体が(ヒトまたはカニクイザル)OX40を標的とする診断薬および/または治療薬として使用することができる十分な親和性で(ヒトまたはカニクイザル)OX40タンパク質またはそのフラグメントと結合し得る抗体を意味する。一つの実施形態では、抗OX40抗体は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはバイオライト干渉法またはMSDアッセイによって測定した場合に、(ヒトまたはカニクイザル)OX40に対する抗体の結合の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%もしくは約90%またはそれを超える値よりも少ない程度で、非(ヒトまたはカニクイザル)OX40タンパク質と結合する。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、ヒトまたはカニクイザルOX40と、平衡の平衡解離定数(KD)、≦平衡解離co-7M以下、例えば、10-7M~10-10M、例えば、10-8M~10-9M)で結合する。
【0073】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」または「mAb」は、例えば、真核生物、原核生物、またはファージクローンに由来する単コピーまたはクローニング抗体を意味し、それらを生産する方法を意味するのではない。モノクローナル抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレー技術、CDRグラフティングなどの合成技術、またはこのような技術もしくは当技術分野で公知の他の技術の組合せによって生産することができる。
【0074】
「天然抗体」とは、種々の構造を有する天然の免疫グロブリン分子を意味する。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合された2本の同一の軽鎖と2本の同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端へ、各重鎖は、重鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)とその後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端へ、各軽鎖は、軽鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)とその後に定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づきカッパ(κ)およびガンマ(λ)と呼ばれる2タイプのうち一方に割り当てることができる。「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含んでなる。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgGl Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域;および天然配列ヒトIgG4 Fc領域ならびにそれらの天然変異体が含まれる。
【0075】
「抗体フラグメント」は、完全な抗体が結合する抗原と結合する完全な抗体の一部を含んでなる、完全な抗体以外の分子を意味する。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);シングルドメイン抗体;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、抗体分子と特異的に相互作用する抗原(例えば、OX40)の一部を意味する。この部分(本明細書ではエピトープ決定基と呼ばれる)は、一般に、アミノ酸側鎖または糖側鎖またはその成分などの要素を含んでなる。エピトープ決定基は、当技術分野で公知のまたは本明細書に開示される方法に従って(例えば、結晶学により、または水素-重水素交換により)定義することができる。エピトープ決定基と特異的に相互作用する抗体分子の少なくとも1つまたはいくつかの部分は一般に、CDR内に位置する。一般に、エピトープは、特定の三次元構造的特徴を有する。一般に、エピトープは、特定の電荷特徴を有する。エピトープには線形エピトープもあれれば、立体配座エピトープもある。
【0077】
参照抗体と同じ「同じまたは重複するエピトープと結合する抗体」は、競合アッセイにおいて参照抗体とその抗原の結合を50%以上遮断する抗体を意味し、および逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗体とその抗原の結合を50%以上遮断する。例示的競合アッセイが本明細書に示される。
【0078】
その抗原との結合に関して参照抗体と競合する抗体とは、競合アッセイにおいて参照抗体とその抗原の結合を50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%またはそれを超えて遮断する抗体を意味する。言い換えれば、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗体とその抗原の結合を50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%またはそれを超えて遮断する。多くのタイプの競合結合アッセイが、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイなどの別のアッセイとともに抗原結合タンパク質が競合するかどうかを決定するために使用できる(例えば、Stahli et al, 1983, Method in Enzymology 9: 242-253参照)。
【0079】
参照抗体とその抗原の結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する)抗体は、参照抗体とその抗原の50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%またはそれを超える結合を阻害する抗体を意味する。逆に、参照抗体は、抗体とその抗原の結合を50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%またはそれを超えて阻害する。抗体とその抗原の結合は、親和性(例えば、平衡解離定数)によって測定することができる。親和性を決定するための方法は当技術分野で公知である。
【0080】
参照抗体と同じまたは同等の結合親和性および/または特異性を示す抗体とは、参照抗体の結合親和性および/または特異性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%またはそれを超える割合を有する抗体を意味する。これは結合親和性および/または特異性を決定するために当技術分野で公知のいずれの方法によって決定することもできる。
【0081】
当技術分野で公知の抗体にはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要なクラスがあり、これらの抗体のいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに細分することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼称される。当業者は、実際の要件に従って本発明の適当なクラスの抗体を選択および取得することができる。
【0082】
「IgG型の抗体」とは、抗体の重鎖定常領域が属するIgG型を意味する。同じタイプの総ての抗体の重鎖定常領域は同一であり、異なるタイプの抗体間では重鎖定常領域は異なる。例えば、IgGl型の抗体は、重鎖定常領域IgドメインがIgG1であるIgドメインを意味する。
【0083】
用語「機能不全」は、免疫機能不全に関して、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を意味する。用語「機能不全の」はまた、本明細書で使用する場合、抗原認識に対する不応性または不応答性、具体的には、抗原認識を下流T細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン産生(例えば、γインターフェロン)および/または標的細胞死滅に翻訳する能力の障害も含む。
【0084】
「OX40リガンド/OX40LへのヒトOX40の結合のより低い遮断」という表現は、本明細書で使用する場合、本発明の抗体が、既知のOX40抗体(例えば、ポガリズマブ)またはOX40Lと比較して低い程度でOX40とOX40Lの結合を遮断することを意味する。いくつかの実施形態では、OX40とOX40Lの結合の程度は、既知のOX40抗体(例えば、ポガリズマブ)またはOX40Lの存在下でのOX40とOX40Lの結合の程度と比較して、本発明の抗OX40抗体の存在下で低下が小さくなる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体の存在下でのOX40とOX40Lの結合の程度の低下は、陰性対照(例えば、IgG抗体)の存在下でのOX40とOX40Lの結合の程度と比較して約50%、40%、30%、20%、10%より低いかまたはそれを超えて低い。いくつかの実施形態では、OX40とOX40Lの結合の程度は、ルシフェラーゼリポーター遺伝子により決定される。いくつかの実施形態では、OX40とOX40Lの結合の程度は、フローサイトメトリーにより決定される。
【0085】
「T細胞を活性化する」とは、生物学的機能を更新、持続または増強するようにエフェクターまたはメモリーT細胞を誘導する、しむける、または刺激することを意味する。T細胞機能を増強する例としては、介入前のレベルと比較してのCD8+エフェクターT細胞からのγ-インターフェロン(例えば、IFNg)またはインターロイキン(例えば、IL-2)の分泌の増大、CD4+メモリーおよび/またはエフェクターT細胞からのγ-インターフェロン(例えば、IFNg)またはインターロイキン(例えば、IL-2)の分泌の増大、CD4+エフェクターおよび/またはメモリーT細胞の増殖の増大、CD8+エフェクターT細胞の増殖の増大、抗原応答性(例えば、排除)の増大が含まれる。一つの実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160倍以上である。この増強を測定する方法は、当業者に既知である。
【0086】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識および排除を回避するプロセスを意味する。よって、治療概念としての腫瘍免疫は、このような回避が弱化した場合に「処置」され、腫瘍は免疫系によって認識され、攻撃される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍退縮および腫瘍排除が含まれる。
【0087】
「免疫原性」とは、免疫応答を惹起する特定の物質の能力を意味する。腫瘍は免疫原性があり、腫瘍免疫原性の増強は、免疫応答による腫瘍細胞の排除の助けとなる。
【0088】
「抗体のアゴニスト活性」は、本明細書で使用する場合、抗体が、抗体が結合する抗原の生物学的活性を活性化し得る活性である。
【0089】
「抗血管新生薬」とは、血管の発生を遮断する、またはある程度干渉する化合物を意味する。抗血管新生薬は、例えば、血管新生の促進に関与する成長因子または成長因子受容体に結合する小分子または抗体であり得る。一つの実施形態では、抗血管新生薬は、血管内皮成長因子(VEGF)に結合する抗体、例えば、ベバシズマブ(アバスチン)である。
【0090】
用語「PD-1軸結合拮抗薬」とは、PD-1シグナル伝達軸に対するシグナル伝達から生じるT細胞の機能不全を取り除くようにPD-1軸結合相手とその結合相手のうちいずれか1以上との相互作用を阻害する分子を意味し、その結果は、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を回復させるまたは増強することである。本明細書で使用する場合、PD-1軸結合拮抗薬としては、PD-1結合拮抗薬(例えば、PD-1抗体)、PD-L1結合拮抗薬(例えば、PD-L1抗体)およびPD-L2結合拮抗薬(例えば、PD-L2抗体)が含まれる。
【0091】
用語「PD-1結合拮抗薬」は、PD-1と、PD-L1、PD-L2などのその結合相手のうち1以上との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉する分子を意味する。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1とその結合相手のうち1以上との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-1結合拮抗薬は、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との結合を阻害する。例えば、PD-1結合拮抗薬としては、抗PD-1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよびPD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉するその他の分子が含まれる。一つの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、機能不全型T細胞の機能不全を小さくする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、Tリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によってまたは細胞表面タンパク質を介して媒介される負の補助刺激シグナルにより媒介されるPD-1を介したシグナル伝達を低下させる。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体である。特定の側面において、PD-1結合拮抗薬は、WO2015/095423に開示されるように、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピジリズマブ)またはAMP-224である。
【0092】
用語「PD-Ll結合拮抗薬」は、PD-Llとその結合相手のうちいずれか1以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉する分子を意味する。いくつかの実施形態では、PD-Ll結合拮抗薬は、PD-Llとその結合相手との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-Ll結合拮抗薬は、PD-LlとPD-1および/またはB7-1との結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-Ll結合拮抗薬としては、抗PD-Ll抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよびPD-Llとその結合相手のうち1以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉するその他の分子が含まれる。一つの実施形態では、PD-Ll結合拮抗薬は、機能不全型T細胞の機能不全を小さくする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、Tリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によってまたは細胞表面タンパク質を介して媒介される負の補助刺激シグナルにより媒介されるPD-1を介したシグナル伝達を低下させる。いくつかの実施形態では、PD-Ll結合拮抗薬は、抗PD-Ll抗体である。特定の側面において、抗PD-Ll抗体は、WO2015/095423に開示されるように、YW243.55.S70、MDX-1105、MPDL3280AまたはMEDI4736である。
【0093】
用語「PD-L2結合拮抗薬」は、PD-L2とその結合相手のうちいずれか1以上、例えば、PD-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉する分子を意味する。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2とその結合相手のうち1以上との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2とPD-1との結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2拮抗薬としては、抗PD-L2抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよびPD-L2とその結合相手のうちいずれか1以上、例えば、PD-1との相互作用から生じるシグナル伝達を低下させる、遮断する、阻害する、排除するまたはそれに干渉するその他の分子が含まれる。一つの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、機能不全型T細胞の機能不全を小さくする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、Tリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によってまたは細胞表面タンパク質を介して媒介される負の補助刺激シグナルにより媒介されるPD-L2を介したシグナル伝達を低下させる。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、イムノアドヘシンである。
【0094】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」は、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌免疫グロブリンが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、その後、その標的細胞を細胞毒素で死滅させることを可能とする細胞傷害の一形態を意味する。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞はFcyRIIIのみを発現し、一方、単球はFcyRI、FcyRII、およびFcyRIIIを発現する。造血細胞上でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の第464頁の表3にまとめられている。対象とする分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているものなどのin vitro ADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、PBMCおよびNK細胞が含まれる。代わりに、または加えて、対象とする分子のADCC活性を、in vivo、例えば、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているものなどの動物モデルで評価することができる。ADCC活性を評価するための例示的アッセイは、本明細書の例に示されている。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「OX40」は、特に断りのない限り、霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含むいずれの脊椎動物源に由来するいずれの天然OX40も意味する。この用語は、「全長」、非プロセシングOX40および細胞内でのプロセシングによるいずれの形態のOX40も包含する。この用語はまた、スプライス変異体または対立遺伝子変異体などのOX40の天然変異体も包含する。
【0096】
「OX40活性化」とは、OX40受容体の活性化を意味する。一般に、OX40の活性化は、シグナル伝達をもたらす。
【0097】
用語「細胞傷害性薬剤」は、本発明で使用する場合、細胞機能を阻害するもしくは妨げる、および/または細胞死または破壊を引き起こす物質を意味する。細胞傷害性薬剤の例については、WO2015/153513に開示されているものを参照。
【0098】
「化学療法薬」には、癌の治療に有用な化学化合物を含む。化学療法薬の例については、WO2015/153513に開示されているものを参照。これには、エルロチニブ(タルセバ(商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(ベルケード(商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、アルキル化剤、例えば、チオテパ;スルホン酸アルキル;アジリジンなど;および上記のいずれかの薬学上許容可能な塩、酸、または誘導体が含まれる。化学療法薬としてはまた、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、インターフェロン、ベバシズマブ(bevacuzimab)、ベキサロテンなど、およびそれらの薬学上許容可能な塩も含まれる。化学療法薬としてはまた、鎮痛、解熱および抗炎症作用を有する非ステロイド系抗炎症薬も含まれる。本発明に使用可能な種々の化学療法薬の詳細な説明および概論については、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされるPCT国際出願WO2015/153513に開示されているものを参照されたい。
【0099】
用語「サイトカイン」は、細胞間伝達物質として別の細胞に働きかけるある細胞集団によって放出されるタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(IL)例えば、IL-1、IL-lα、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-αまたはTNF-β;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)ならびにγインターフェロンを含む他のポリペプチド因子がある。本明細書で使用する場合、サイトカインという用語には、天然源または組換え細胞培養由来のタンパク質、ならびに合成により生産された小分子実体およびそれらの薬学上許容可能な誘導体および塩を含む天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0100】
用語「ダイアボディ」は、同じポリペプチド鎖に重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)が連結したもの(VH-VL)を含んでなり、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメント、および前記抗体フラグメントを意味する。これらのドメインは、同じ鎖上の2つのドメインを互いに対合させるには短いリンカーを使用することによって、他鎖上の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を形成することを余儀なくされる。ダイアボディは、二価または二重特異性であってよい。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al, Nat. Med. 9: 129-134 (2003);およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。トリアボディおよびテトラボディもまたHudson et al, Nat. Med. 9: 129-134 (2003)に記載されている。
【0101】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」としては、Clq結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節などが含まれる。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせることを必要とし、本明細書に開示されているような様々なアッセイを用いて評価することができる。
【0102】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を意味し、これは抗体同位体によって異なる。抗体エフェクターの機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;およびB細胞活性化が含まれる。
【0103】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1以上のFcRを発現し、エフェクター機能を遂行する白血球を意味する。特定の実施形態では、細胞は少なくともFcyRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が含まれる。エフェクター細胞は、天然源、例えば、血液から単離され得る。
【0104】
用語「有効量」は、患者に単回または複数回用量で投与した際に、治療を受ける患者に所望の効果をもたらす本発明の抗体またはフラグメントの量または用量を意味する。有効量は、当業者としての主治医により、哺乳動物の種;その大きさ、齢および健康状態;関与する特定の疾患;疾患の程度または重篤度;個々の患者の応答;投与される特定の抗体;投与様式;投与される処方物のバイオアベイラビリティ特性;選択される投与計画;および任意の並行療法の使用などの様々な因子を考慮することによって容易に決定することができる。
【0105】
本発明での使用に好適な「抗体およびそれらの抗原結合フラグメント」としては、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、一価、二重特異性、ヘテロコンジュゲート、多重特異性、組換え、異種、異型接合性、キメラ、ヒト化(特にCDRにグラフとされたもの)、脱免疫化、またはヒト抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーにより生成されたフラグメント、Fd、Fv、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ダイアボディまたはテトラボディ(Holliger P. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (14), 6444-6448)、ナノボディ(シングルドメイン抗体とも呼ばれる)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。
【0106】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために本明細書で使用され、Fc領域は、定常領域の少なくとも一部を含んでなる。この用語には天然Fc領域配列およびFc領域変異体が含まれる。特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボニル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は、存在してもしなくてもよい。特に断りのない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National. Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる。
【0107】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体と抗原の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを意味する。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインは一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 第6版, W.H. Freeman and Co., 91頁 (2007)参照)。シングルVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するに十分であり得る。さらに、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原と結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを用いて特定の抗原と結合する抗体を単離してもよい。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)参照。
【0108】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)(例えば、相補性決定領域)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。可変ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3およびFR4からなる。よって、HVRおよびFR配列は一般に、重鎖可変ドメイン(VH)(または軽鎖可変ドメイン(VL))内に以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で見られる。
【0109】
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」は、抗体可変ドメイン内の配列が超可変であり、構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、エピトープとの結合を主要に担う。重鎖および軽鎖のCDRは、一般に、N末端から順番に符番してCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれる。抗体重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3と呼ばれ、抗体軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3と呼ばれる。所与の軽鎖可変領域または重鎖可変領域アミノ酸配列において、各CDRの正確なアミノ酸配列境界は、例えば、抗体の三次元構造とおよびCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883, Al-Lazikani et al., "Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins", Journal of Molecular Biology, 273, 927-948 (1997))、抗体配列の変動に基づくKabat(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, US Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM(バース大学)、Contact(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)、International ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(imgt.cines.fr/ on the World Wide Web)、および多数の結晶構造を用いたアフィニティープロパゲーションクラスタリングに基づくNorth CDR定義を含むいくつかの周知の抗体CDR割り当てシステムの1つまたは組合せを用いて決定することができる。本発明の抗体のCDRの境界は、当業者により、異なる割り当てシステムまたは組合せなどの当技術分野のいずれかの側面に従って決定することができる。
【0110】
しかしながら、異なる割り当てシステムに基づいて得られた同じ抗体の可変領域のCDRの境界は異なる場合があることに留意するべきである。すなわち、異なる割り当てシステムで定義された同じ抗体可変領域のCDR配列は異なる。よって、抗体が本発明により定義される特定のCDR配列によって定義される場合、その抗体の範囲は、可変領域配列がその特定のCDR配列を含んでなるが、異なるプロトコール(例えば、異なる割り当てシステムまたは組合せ)の適用のために本発明によって定義された特定のCDR境界とは異なるCDR境界が主張される抗体も包含する。
【0111】
異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。しかしながら、CDRは抗体によって異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸だけが抗原結合に直接関わる。抗原結合の「最小結合単位」を得るために、Kabat、Chothia、AbM、Contact、およびNorth法のうち少なくとも2つを用いて最小の重複領域を決定することができる。最小結合単位は、CDRの下位部分であり得る。当業者には自明であるように、CDR配列の残りの部分の残基は、抗体の構造およびタンパク質折り畳みによって決定することができる。よって、本発明はまた、本明細書で提供されるCDRのいずれかの変異体も企図する。例えば、あるCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は不変のままであり得るが、KabatまたはChochiaにより定義された他のCDR残基は保存的アミノ酸残基によって置換されてもよい。
【0112】
用語「宿主細胞」は、外因性の核酸が導入された細胞を意味し、このような細胞の後代を含む。宿主細胞としは、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これには初代形質転換細胞および継代数によらずそれに由来する後代が含まれる。後代は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含み得る。元の形質転換細胞においてスクリーニングされたものまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異後代が本明細書に含まれる。
【0113】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生されたまたはヒト抗体レパートリーまたはその他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源から誘導された抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除外する。
【0114】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も多く存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブタイプからである。一般に、配列のサブタイプは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に開示されているようなサブタイプである。ある実施形態では、VLに関して、サブタイプは、Kabatら前掲のようなサブタイプκIである。いくつかの実施形態では、VHに関して、サブタイプは、Kabatら前掲のようなサブタイプIIIである。
【0115】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基を含んでなるキメラ抗体を意味する。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含んでなり、ここで、HVR(例えば、CDR)の総てまたは実質的に総ては非ヒト抗体に相当し、FRの総てまたは実質的に総てはヒト抗体に相当する。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部含んでなり得る。「ヒト化型」の抗体、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を意味する。
【0116】
用語「癌」および「癌性」は、一般に調節を欠いた細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理状態を意味する、または表す。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより詳しい例としては、限定されるものではないが、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric or stomach cancer)(消化管癌および消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、メイグス症候群に関連する異常な血管増殖、脳および頭頸部癌、および関連の転移が含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体による治療を受け得る癌としては、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌または結腸癌が含まれ、それらの癌の転移形態も含む。
【0117】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を意味する。一つの実施形態では、細胞増殖性障害は癌である。
【0118】
用語「腫瘍」は、悪性であれ良性であれ、総ての新生細胞成長および増殖、ならびに総ての前癌および癌性細胞および組織を意味する。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」は、本明細書に言及される場合、相互に排他的ではない。
【0119】
「免疫複合体」とは、限定されるものではないが細胞傷害性薬剤を含む1以上の他の薬剤にコンジュゲートされた抗体である。
【0120】
「個体」または「対象」としては、哺乳動物が含まれる。哺乳動物としては、限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。本発明の特定の実施形態では、個体または対象はヒトである。
【0121】
「単離された抗体」は、その天然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)により決定した場合に95%または99%純度よりも高く精製される。抗体純度の評価方法の総説としては、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)参照。
【0122】
「単離された核酸」は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を意味する。単離された核酸としては、通常に核酸分子を含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、この核酸分子は染色体外に存在するか、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0123】
「抗OX40抗体またはそのフラグメントをコードする単離された核酸」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖および軽鎖をコードする1以上の核酸分子を意味し、単一のベクターまたは別のベクターに含まれるこのような核酸分子、ならびに宿主細胞内の1以上の位置に存在するこのような核酸分子を含む。
【0124】
参照ポリペプチド配列に対しての「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列をアラインし、最大配列同一性パーセントを得るために必要に応じてギャップを導入した後、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮せずに、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一の、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアラインメントは、当技術分野において様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開コンピューターソフトウエアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを得るために必要なアルゴリズムを含め、配列のアラインのために適当なパラメーターを決定することができる。
【0125】
配列同一性のパーセンテージが本明細書に言及される場合、これらのパーセンテージは、そうではないことが示されない限り、より長い配列の全長に対して計算される。より長い配列の全長に対する計算は、核酸配列およびポリペプチド配列の両方に当てはまる。
【0126】
用語「医薬組成物」は、そこに含まれる有効成分の生物学的活性を有効とするような形態にあり、かつ、処方物が投与される対象に許容されない毒性がある付加的成分を含有しない処方物を意味する。
【0127】
用語「薬学上許容可能なアジュバント」は、治療薬と併用投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全および不完全))、賦形剤またはビヒクルを意味する。
【0128】
本明細書で使用する場合、「治療する」とは、既存の症状、病態、障害、または疾患の進行または重篤度を緩徐化する、中断する、阻止する、緩和する、停止させる、軽減する、または逆転させることを意味する。
【0129】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結された別の核酸を増殖させることができる核酸分子を意味する。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある種のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を命令することができる。このようなベクターは本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0130】
「対象/患者サンプル」とは、癌患者または癌対象から得られた細胞の集合物または流体を意味する。組織または細胞サンプルの供給源は、新鮮な、凍結および/または保存された器官または組織サンプルまたは生検もしくは穿刺物に由来するものなどの固形組織;血液または任意の血液成分;脳脊髄液、羊水、腹腔液、または間質液などの体液;対象の妊娠または発生のいずれかの時点からの細胞であり得る。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、バッファー、固定剤、栄養素、または抗生物質などの、天然の組織とは本来混合されていない特定の化合物であり得る。本明細書における腫瘍サンプルの例としては、限定されるものではないが、腫瘍生検、穿刺吸引物、気管支洗浄液、胸膜液、痰、尿、外科術検体、循環腫瘍細胞、血清、血漿、循環血漿タンパク質、腹水、腫瘍に由来するまたは腫瘍様特性を示す初代細胞培養物または細胞株、ならびに保存腫瘍サンプル、例えば、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍サンプルまたは凍結腫瘍サンプルが含まれる。
【0131】
本明細書に定義されるキットまたは製品に含まれる「説明書」は、適応症、用途、用量、投与、併用療法、禁忌および/またはこのような治療製品に関する適用の注意についての情報を含む治療製品の市販パッケージに一般に含まれる説明書を意味する。
【0132】
本発明の抗体
よって、本発明は、抗OX40抗体ならびにそのフラグメントを提供する。
【0133】
本発明の一つの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸変異としては、アミノ酸の置換、挿入または欠失が含まれる。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換である。
【0134】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸変異は、CDR外(例えば、FR内)の領域に存在する。より好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異は、重鎖可変領域外および/または軽鎖可変領域外の領域に存在する。
【0135】
いくつかの実施形態では、置換は、保存的置換である。保存的置換は、あるアミノ酸が同じクラス内の別のアミノ酸で置換される、例えば、ある酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸で置換されるか、ある塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸で置換されるか、またはある中性アミノ酸は別の中性アミノ酸で置換されることを意味する。例示的置換を以下の表Dに示す。
【0136】
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖または重鎖に翻訳後修飾を有する抗体またはそのフラグメントを包含する。
【0138】
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または低減するために変更される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または削除は、好都合には、1以上のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって達成され得る。いくつかの適用では、所望でないグリコシル化部位を除去する改変は、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増強するためにフコースモジュールを除去する有用な改変であり得る(Shield et al. (2002) JBC 277: 26733参照)。他の適用では、ガラクトシル化の改変は、補体依存性細胞傷害(CDC)を変更するために実施することができる。
【0139】
特定の実施形態では、例えば、癌または細胞増殖疾患の治療において抗体の効率を高めるために、本明細書に提供される抗体のFc領域に1以上のアミノ酸改変が導入され、それにより、Fc領域変異体を作出することができる。Fc領域変異体は、1以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含んでなるヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含んでなり得る。
【0140】
特定の実施形態では、抗体の1以上の残基がシステイン残基で置換されたシステイン操作抗体、例えば、「チオMAb」を作出することが望ましい場合がある。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当技術分野で公知であり、容易に入手できるある特定の付加的非タンパク質部分へとさらに改変することができる。抗体の誘導体化に好適な部分としては、限定されるものではないが、水可溶性ポリマーが含まれる。水可溶性ポリマーの限定されない例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびグルカンまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗OX40抗体のフラグメントを包含する。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントにより形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体に対するパパイン消化により生成される2つの同一の抗原結合フラグメントは「Fab」フラグメントと呼ばれ、それぞれ単一の抗原結合部位と残部の「Fc」フラグメントを有する。その名称は、結晶化しやすい能力を表す。F(ab’)2フラグメントはペプシン処理によって生成され、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原架橋能がある。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体は、ヒト化抗体である。その総ての内容が引用することにより本明細書の一部とされるAlmagro & Franssons(Almagro JC and Fransson J (2008) Frontiers in Bioscience 13: 1619-1633)に概説されているように、抗体をヒト化するための種々の方法は当業者に知られている。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の多様な技術を用いて調製することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol 5: 368-74 (2001)およびLonberg, Curr. Opin. Immunol 20: 450-459 (2008)に記載されている。
【0145】
本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリーを所望の1または複数の活性を有する抗体に関してスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレーライブラリーを作出し、そのようなライブラリーを所望の結合特性を有する抗体に関してスクリーニングするための多様な方法が当技術分野で公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001)に総説され、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)にさらに記載されている。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、他の薬剤、例えば、治療用成分、例えば、細胞傷害性薬剤または免疫抑制薬(「免疫複合体」)にコンジュゲートされた抗OX40モノクローナル抗体を包含する。細胞傷害性薬剤としては、細胞に有害な薬剤が含まれる。免疫複合体を形成するのに好適な細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法薬)の例は当技術分野で公知であり、例えば、WO05/103081参照。例えば、細胞傷害性薬剤としては、限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体);化学療法剤または薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたはその他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸ヒドロラーゼなどの酵素およびそれらのフラグメント;抗生剤;細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素(それらのフラグメントおよび/または変異体を含む)などの毒素;ならびに種々の周知の抗腫瘍または抗癌薬が含まれる。一つの実施形態では、細胞傷害性薬剤は、PD-1軸結合拮抗薬である。一つの実施形態では、細胞傷害性薬剤は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体などの抗体である。一つの実施形態では、細胞傷害性薬剤は、ベバシズマブなどの抗血管新生薬である。
【0147】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性または多重特異性であり得る。多重特異性モノクローナル抗体は、標的ポリペプチドの種々のエピトープに特異的であってもよいし、または2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含んでもよい。例えば、Tutt et al. (1991) J. Immunol. 147: 60-69参照。抗OX40モノクローナル抗体は、別の機能的分子、例えば、別のペプチドもしくはタンパク質に連結してもよいし、またはそれと共発現させてもよい。例えば、抗体またはそのフラグメントは、第2またはそれを超える結合特異性を有する二重特異性または多重特異性を作製するために、抗体別の抗体または抗体フラグメント(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体または前記抗体のフラグメント)などの1以上の他の分子と機能的に連結してよい(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合、またはその他による)。
【0148】
本発明の核酸抗体およびそれを含んでなる宿主細胞
一つの側面において、本発明は、上記の抗OX40抗体またはそのフラグメントのいずれかをコードする核酸を提供する。核酸は、抗体の軽鎖可変領域および/もしくは重鎖可変領域を含んでなるアミノ酸配列をコードする核酸、または抗体の軽鎖および/もしくは重鎖を含んでなるアミノ酸配列をコードする核酸を含んでなり得る。抗体の重鎖可変領域をコードする例示的核酸配列は、配列番号91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104もしくは105から選択される核酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である核酸配列を含んでなるか、または配列番号91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104もしくは105から選択される核酸配列を含んでなる。抗体の軽鎖可変領域をコードする例示的核酸配列は、配列番号121、122、123、124、125、126、127、128もしくは129から選択される核酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である核酸配列を含んでなるか、または配列番号121、122、123、124、125、126、127、128もしくは129から選択される核酸配列を含んでなる。
【0149】
一つの実施形態では、前記核酸を含んでなる1以上のベクターが提供される。一つの実施形態では、ベクターは、発現ベクター、例えば、真核生物の発現ベクターである。ベクターとしては、限定されるものではないが、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージ、または酵母人工染色体(YAC)が含まれる。好ましい実施形態では、本発明の発現ベクターは、pTT5発現ベクターである。
【0150】
一つの実施形態では、前記ベクターを含んでなる宿主細胞が提供される。抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合には、細菌で生産されてよい。細菌での抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、および同第5,840,523号参照。また、大腸菌における抗体フラグメントの発現を記載しているCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003, pp. 245-254も参照。発現後、抗体は、可溶性画分の細菌細胞ペーストから単離すればよく、さらに精製することができる。
【0151】
一つの実施形態では、宿主細胞は、真核生物である。別の実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗体もしくはその抗原結合フラグメントの生産に使用するのに好適なその他の細胞からなる群から選択される。例えば、糸状真菌または酵母などの真核生物微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である。例えば、グリコシル化経路が「ヒト化」されている真菌および酵母株は、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の生産をもたらす。Gerngross, Nat. Biotech. 22: 1409-1414 (2004)、およびLi et al, Nat. Biotech. 24: 210-215 (2006)参照。グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。脊椎動物細胞もまた宿主として使用することができる。例えば、懸濁増殖に好適となるように操作された哺乳動物細胞株も使用可能である。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えばGraham et al, J. Gen Virol. 36:59 (1977)などに記載されているような293HEKまたは293細胞)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体の生産に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説としては、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)参照。
【0152】
一つの実施形態では、抗OX40抗体を生産する方法が提供され、その方法は、上記に提供されるような抗体発現に好適な条件下で抗体をコードする核酸を含んでなる宿主細胞を培養すること、および場合により、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から抗体を回収することを含んでなる。抗OX40抗体を生産するように組み換えるために、抗体(例えば上記のような抗体)をコードする核酸を単離し、宿主細胞でのさらなるクローニングおよび/または発現のための1以上のベクターに挿入する。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離し配列決定を行うことができる。
【0153】
決定法
本明細書に提供される抗OX40抗体は、当技術分野で公知の様々なアッセイによってそれらの物理/化学的特性および/または生物学的活性に関して同定、スクリーニング、または特性決定を行うことができる。一つの側面において、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウエスタンブロットなどの公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。OX40への結合は当技術分野で公知の方法を用いて決定することができ、例示的方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、バイオライト干渉法(例えば、Fortebioアフィニティー測定)またはMSDアッセイが使用される。
【0154】
別の側面では、OX40との結合に関して本明細書で開示される抗OX40抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために競合アッセイが使用できる。特定の実施形態では、このような競合抗体は、本明細書で開示される抗OX40抗体のいずれかが結合するエピトープと同一であるまたは重複するエピトープ(例えば、線形または立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープの位置を決定するための詳細な例示的方法は、Morris (1996) "Epitope Mapping Protocols", Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に見出せる。
【0155】
本発明はまた、生物学的に活性な抗OX40抗体を同定するためのアッセイも提供する。生物学的活性としては、例えば、OX40への結合(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルOX40への結合)、OX40により媒介されるシグナル伝達の増強(例えば、NFkBにより媒介される転写の増強)、ヒトOX40を発現する細胞のADCCによる弱化、Tエフェクター細胞機能(例えば、CD4+エフェクターT細胞)の増大(例えば、エフェクターT細胞の増殖の増大および/またはエフェクターT細胞のサイトカイン産生(例えば、γインターフェロンもしくはインターロイキン)の増大による)、メモリーT細胞機能(例えば、CD4+メモリーT細胞)の増大(例えば、メモリーT細胞増殖の増大および/またはメモリーT細胞のサイトカイン産生(例えば、γインターフェロンもしくはインターロイキン)の増大による)、ヒトエフェクター細胞への結合を含み得る。vivoおよび/またはin vitroでこのような生物学的活性を有する抗体もまた提供される。
【0156】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、このような生物学的活性に関して試験される。
【0157】
T細胞の活性化は、当技術分野で公知の方法を用いてアッセイすることができる。例えば、T細胞の活性化は、γインターフェロンまたはインターロイキンなどのT細胞活性化後に放出されるサイトカインのレベルによって決定される。OX40シグナル伝達はまた、T細胞の活性化を判定するための当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる。一つの実施形態では、リポーター遺伝子(例えば、βルシフェラーゼ)に融合されたNFkBプロモーターを含んでなる、ヒトOX40およびリポーター遺伝子を発現するトランスジェニック細胞が作出される。細胞に抗OX40抗体を付加するとNFkB転写が上昇し、これはリポーター遺伝子に関するアッセイ(例えば、ルシフェラーゼリポーターアッセイ)を用いて検出される。
【0158】
上記のin vitroアッセイのいずれかで使用するための細胞としては、OX40を天然に発現するか、またはOX40を発現するように操作された細胞または細胞株が含まれる。このような細胞としては、OX40を天然に発現する活性化されたT細胞、Treg細胞、および活性化されたメモリーT細胞が含まれる。このような細胞にはまた、OX40を発現する細胞株および通常OX40を発現しないがOX40をコードする核酸でトランスフェクトされた細胞株も含まれる。
【0159】
上記のアッセイはいずれも、抗OX40抗体を本発明の免疫複合体に置き換えるか、または抗OX40抗体に本発明の免疫複合体を補うことによって行えることが認識されるであろう。
【0160】
上記のアッセイはいずれも抗OX40抗体および他の活性薬剤を用いて行えることが認識されるであろう。
【0161】
医薬組成物および医薬製剤
本発明はまた、抗OX40抗体またはその免疫複合体を含んでなる組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)および抗OX40抗体をコードするポリヌクレオチドを含んでなる組成物を含む。特定の実施形態では、組成物は、OX40と結合する1以上の抗体もしくはそのフラグメントまたはOX40と結合する1以上の抗体またはそのフラグメントをコードする1以上のポリヌクレオチドを含んでなる。これらの組成物はまた、バッファーを含め、当技術分野で公知の薬学上許容可能な担体、薬学上許容可能な賦形剤などの好適な薬学上許容可能なアジュバントを含んでよい。
【0162】
本発明において使用するのに好適な薬学上許容可能な担体は、水、および石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油などの無菌の液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈投与される場合には好ましい担体である。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も液体担体として使用可能であり、特に、注射溶液として使用される。好適な製薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。賦形剤およびその使用に関しては、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 第5版, R. C. Rowe, P. J. Seskey and S. C. Owen, Pharmaceutical Press, London, Chicagoも参照。所望により、組成物はまた、微量の湿潤剤、乳化剤、またはpHバッファーも含有してよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態であり得る。経口処方物は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的な担体を含有してよい。
【0163】
本発明の抗OX40抗体を含んでなる医薬製剤は、所望の純度を有する本発明の抗OX40抗体を1以上の任意選択の薬学上許容可能なアジュバントと混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版, Osol, A.,編 (1980))、好ましくは、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。
【0164】
例示的凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908(後者はヒスチジン-酢酸バッファーを含む)に記載されているものが含まれる。
【0165】
本発明の医薬組成物または処方物はまた、治療される特定の適応症に必要とされる1以上の有効成分、好ましくは、互いの補完的活性に悪影響を及ぼさない有効成分を含有してもよい。例えば、化学療法薬、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体)または抗血管新生薬(例えば、ベバシズマブ)などの他の抗癌有効成分をさらに提供することも望ましい。有効成分は、好適には、意図される使用に有効な量で組み合わせて存在する。
【0166】
徐放性処方物が好ましい場合がある。徐放性処方物の好適な例としては、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスはフィルムまたはマイクロカプセルなどの成形品の形態である。
【0167】
本発明の抗体を含んでなる医薬製剤の他の成分に関しては、WO2015/153513に開示されているものも参照されたい。
【0168】
抗体処置および使用
一つの側面において、本発明は、対象においてT細胞を活性化する、またはT細胞により媒介される抗腫瘍活性を誘導する、または身体の免疫応答を増強する方法であって、前記対象に有効量の抗OX40抗体もしくはそのフラグメントのいずれか、または前記抗体もしくはフラグメントを含んでなる免疫複合体もしくは医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0169】
別の側面では、本発明は、対象において腫瘍、例えば、癌を治療する方法であって、前記対象に有効量の本明細書に記載のいずれかの抗OX40抗体もしくはそのフラグメント、または免疫複合体もしくは前記抗体もしくはフラグメントを含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。一つの実施形態では、癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などである。
【0170】
別の側面では、本発明は、対象において抗体依存性細胞介在性細胞傷害を惹起する方法であって、前記対象に有効量の本明細書に記載のいずれかの抗OX40抗体もしくはそのフラグメント、または前記抗体もしくはフラグメントを含んでなる免疫複合体もしくは医薬組成物を投与することを含んでなるに関する。
【0171】
別の側面では、本発明は、対象において種々の癌、免疫関連疾患、およびT細胞機能不全疾患を治療するまたは遅延させる方法であって、前記対象に有効量の本明細書に記載のいずれかの抗OX40抗体もしくはそのフラグメント、または前記抗体もしくはフラグメントを含んでなる免疫複合体もしくは医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0172】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に1以上の療法(例えば、治療様式および/または他の治療薬)を投与することをさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、治療様式には、手術および/または放射線療法が含まれる。いくつかの実施形態では、他の治療薬は、化学療法薬、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体)、抗血管新生薬(例えば、ベバケート(bevacate))ビーズモノクローナル抗体)からなる群から選択される。
【0173】
いくつかの実施形態では、対象または個体は、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。
【0174】
他の態様において、本発明は、上述の関連の疾患または病態の治療のための薬剤の製造または調製における抗OX40抗体またはそのフラグメントの使用を提供する。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗体フラグメントは、病態および/またはその病態に関連する症状の発症を遅延させ得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本発明に好適な癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、肝臓癌、胃癌、結腸癌などからなる群から選択される。
【0177】
いくつかの実施形態では、癌の例は、限定されるものではないが、B細胞増殖性障害がさらに含まれ、これには限定されるものではないが、リンパ腫(例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))およびリンパ球性白血病がさらに含まれる。
【0178】
本発明の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の癌は、ヒトエフェクター細胞(例えば、ヒトエフェクター細胞浸潤物)を呈する。ヒトエフェクター細胞を検出するための方法は当技術分野で周知であり、例えばIHCによるものを含む。いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのヒトエフェクター細胞を呈する。いくつかの実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球のうち1以上である。
【0179】
本発明の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の癌は、FcRを発現する細胞(例えば、FcRを発現する細胞の浸潤物)を呈する。FcRを検出するための方法は当技術分野で周知であり、例えばIHCによるものを含む。いくつかの実施形態では、癌は、高レベルのFcR発現細胞を呈する。いくつかの実施形態では、FcRは、FcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、FcγRを活性化している。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、神経芽腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。
【0180】
本発明の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、アゴニスト活性を有する本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントの投与を腫瘍抗原の投与と組み合わせる。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、タンパク質を含んでなる。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、核酸を含んでなる。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞である。
【0181】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法および使用は、対象に1以上の療法(例えば、治療様式および/または他の治療薬)を投与することをさらに含んでなる。本発明の抗体は、療法において単独でまたは他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの付加的治療薬と併用投与してもよい。
【0182】
このような組合せ療法は、組合せ投与(例えば、2種類以上の治療薬が同じまたは別の処方物に含まれる)、および個別投与(この場合、本発明の抗体の投与は、1または複数の付加的治療薬の投与前、投与と同時、および/または投与後に行うことができる)を包含する。一つの実施形態では、抗OX40抗体の投与と付加的治療薬の投与は、互いに約1か月以内、または約1週間、2週間もしくは3週間以内、または約1日、2日、3日、4日、5日、もしくは6日以内に行う。本発明の抗体はまた、手術または放射線療法と組み合わせて使用することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、治療様式には、手術(例えば、腫瘍切除);放射線療法(例えば、照射領域が設計される三次元等角放射線療法を含む外部粒子線療法)、局所照射(例えば、予め選択した標的もしくは器官に向けた照射)または焦点照射)が含まれる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、化学療法または化学療法薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、放射線療法または放射線療法薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、標的療法または標的治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、免疫療法または免疫治療薬、例えば、モノクローナル抗体と組み合わせて投与することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、PARP阻害剤(例えば、オラパラニブ(Olaparanib)、ルカパリブ、ニラパリブ、セディラニブ、BMN673、ベリパリブ)と組み合わせて投与することができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、PD-1軸結合拮抗薬と組み合わせて投与することができる。PD-1軸結合拮抗薬としては、限定されるものではないが、PD-1結合拮抗薬、PD-L1結合拮抗薬およびPD-L2結合拮抗薬が含まれる。「PD-1」の別称には、CD279およびSLEB2が含まれる。「PD-L1」の別称には、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hが含まれる。「PD-L2」の別称には、B7-DC、Btdc、およびCD273が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-1、PD-L1、およびPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1およびPD-L2である。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、PD-1とそのリガンドまたは結合相手との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-1リガンドは、PD-L1および/またはPD-L2である。別の実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1とその結合相手との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-L1結合相手は、PD-1および/またはB7-1である。別の実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2とその結合相手との結合を阻害する分子である。特定の側面において、PD-L2結合相手は、PD-1である。拮抗薬は、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、オプジーボ)、Merck 3475(MK-3475、ペンブロリズマブ、キートルーダ)およびCT-011(ピジリズマブ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含んでなるイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合拮抗薬は、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-Ll抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1結合拮抗薬は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI4736およびMDX-1105からなる群から選択される。MDX-1105は、BMS-936559としても知られ、WO2007/005874に記載されている抗PD-Ll抗体である。抗体YW243.55.S70(それぞれ配列番号20および21で示される重鎖および軽鎖可変領域配列)は、WO2010/077634 Alに記載されている抗PD-Llである。MDX-1106は、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはニボルマブとしても知られ、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。Merck 3475は、MK-3475、SCH-900475またはペンブロリズマブとしても知られ、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT、hBAT-1またはピジリズマブとしても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の別称には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558またはニボルマブが含まれる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS Registry Number: 946414-94-4)である。
【0187】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、活性化補助刺激分子に対するアゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、活性化補助刺激分子としては、CD40、CD226、CD28、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含み得る。いくつかの実施形態では、活性化補助刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、阻害性補助刺激分子に対するアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、阻害性補助刺激分子としては、CTLA-4(CD152としても知られる)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを含み得る。いくつかの実施形態では、阻害性補助刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3(例えば、LAG-3-IgG融合タンパク質(IMP321))、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはCTL)養子免疫細胞移入を含んでなる処置と組み合わせて投与することができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、血管新生阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブ(アバスチン(商標)、Genentechとしても知られる)と組み合わせて投与することができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、血管新生阻害剤と組み合わせて、また、PD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合拮抗薬、抗PD-Ll抗体などのPD-L1結合拮抗薬、および抗PD-L2抗体などのPD-L2結合拮抗薬)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびPD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合拮抗薬、抗PD-Ll抗体などのPD-L1結合拮抗薬、および抗PD-L2抗体などのPD-L2結合拮抗薬)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびMDX-1106(ニボルマブ、オプジーボ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびMerck 3475(MK-3475、ペンブロリズマブ、キートルーダ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびCT-011(ピジリズマブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびYW243.55.S70と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびMPDL3280Aと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびMEDI4736と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ベバシズマブおよびMDX-1105と組み合わせて投与することができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、抗腫瘍薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、オビヌツズマブおよびPD-1軸結合拮抗薬(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合拮抗薬、抗PD-Ll抗体などのPD-L1結合拮抗薬、および抗PD-L2抗体などのPD-L2結合拮抗薬)と組み合わせて投与することができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、癌ワクチンと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、癌ワクチンは、ペプチド癌ワクチンであり、いくつかの実施形態では、個別化ペプチドワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチド癌ワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al., Cancer Sci, 104: 14-21, 2013参照)。
【0194】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、アジュバントと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、TLRアゴニスト、例えば、ポリICLC(ヒルトノール(商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODNを含んでなる処置と組み合わせて投与することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、腫瘍壊死因子(TNF)αと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-10、IL-4、IL-13、IL-17など)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、標的化CXCL10の処置と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、標的化CCL5の処置と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、LFA-1またはICAMlアゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、セレクチンアゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、B-Rafの阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、B-Rafの阻害剤(例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ)およびMEK(例えば、MEK1および/またはMEK2)の阻害剤(例えば、コビメチニブまたはトラメチニブ)と組み合わせて投与することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、c-Metの阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、エストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、放射線療法と組み合わせて投与することができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントは、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与することができる。
【0202】
本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメントと組合せが可能なさらなる療法または治療薬または医薬または有効成分は、WO2015/153513に記載されている。
【0203】
上記の組合せ療法は、組合せ投与(例えば、2種類以上の治療薬が同じまたは別の処方物に含まれる)、および個別投与(この場合、本発明の抗体の投与は、付加的治療薬および/またはアジュバントの投与前、投与と同時、および/または投与後に行うことができる)を包含する。本発明の抗体はまた、放射線療法と組み合わせて投与することもできる。
【0204】
本発明の抗体(およびいずれかの付加的治療薬)は、非経口、肺内、および鼻腔内を含む、所望により、局所処置、病巣内投与のための任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投与は、例えば、一つには投与が短期か長期的かによって、静脈内または皮下注射などの注射によるなどのいずれの好適な経路によることもできる。限定されるものではないが、本明細書では、単回または様々な時点にわたる多回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含む様々な投与計画が企図される。
【0205】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適当な用量(単独でまたは1以上の他の付加的治療薬と組み合わせて使用する場合)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重篤度および経過、抗体が予防目的で投与されるか治療目的で投与されルか、過去の療法、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに主治医の裁量によって異なる。抗体は、好適には、患者に一度でまたは一連の処置にわたって投与される。
【0206】
診断および検出のための方法および組成物
特定の実施形態では、本明細書に提供されるいずれの抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントも、生体サンプル中のOX40の存在を検出するために使用可能である。用語「検出」は、本明細書において、定量的または定性的検出を含めて使用される。特定の実施形態では、生体サンプルは、血液、血清、または生物起源の別の液体サンプルである。特定の実施形態では、生体サンプルは、細胞または組織を含んでなる。
【0207】
一つの実施形態では、抗OX40抗体は、診断法または検出法のために提供される。別の側面では、方法は、生体サンプル中のOX40の存在を検出するために提供される。特定の実施形態では、この方法は、生体サンプル中のOX40タンパク質の存在を検出することを含んでなる。特定の実施形態では、OX40は、ヒトOX40である。特定の実施形態では、この方法は、生体サンプルと本明細書に記載の抗OX40抗体を、抗OX40抗体とOX40の結合を可能とする条件下で接触させること、および抗OX40抗体とOX40の間で複合体が形成されるかどうかを検出することを含んでなる。この方法は、in vitroまたはin vivoであり得る。一つの実施形態では、抗OX40抗体は、抗OX40抗体による処置に好適な対象を選択するために使用され、例えば、この場合、OX40は、患者を選択するためのバイオマーカーである。
【0208】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、癌または腫瘍を診断するために使用することができる。
【0209】
特定の実施形態では、標識された抗OX40抗体が提供される。マーカーとしては、限定されるものではないが、直接検出されるマーカーまたは部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、電気的高密度標識、化学発光標識および放射性標識)、ならびに例えば酵素反応または分子相互作用を介して間接的に検出される部分、例えば、酵素またはリガンドが含まれる。例示的マーカーとしては、限定されるものではないが、放射性同位元素32P、14C、125I、3Hおよび131I、蛍光団、例えば、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、フルオレセイン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リアーゼ、炭水化物オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、複素環式オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ならびにHR、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどの、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定なフリーラジカルなどが含まれる。
【0210】
一つの側面において、本発明は、抗OX40抗体療法に応答する可能性のある癌患者を特定するためなどの診断法を提供する。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗OX40抗体治療に応答する可能性のある患者を特定するための方法または癌を診断するための方法が提供され、その方法は、(i)患者の癌サンプルからFcR発現細胞の存在または不在または量(例えば、所与の各サンプルサイズについての数)を決定すること;(ii)そのサンプルがFcR発現細胞を含有すれば(例えば、多数のFcR発現細胞)、患者が応答する可能性があるとして特定されるか、または前記患者をFcR(例えば、高FcR)を含んでなる癌を有すると診断することを含んでなる。FcR発現細胞を検出するための方法は当技術分野で周知であり、例えば、IHCを含む。いくつかの実施形態では、FcRは、FcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性化FcγRである。いくつかの実施形態では、癌は、本明細書に記載の癌のいずれかである。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、神経芽腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)または肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、この方法は、in vitro法である。
【0212】
いくつかの実施形態では、抗OX40抗体処置に応答する可能性のある患者を特定するための方法または癌を診断するための方法が提供され、その方法は、(i)患者の癌サンプルからヒトエフェクター細胞(例えば、浸潤性エフェクター細胞)の存在または不在または量(例えば、所与の各サンプルサイズについての数)決定すること、および(ii)そのサンプルがエフェクター細胞(例えば、多数のエフェクター細胞)を含んでなれば、その患者は応答する可能性があると特定されるか、またはヒトエフェクター細胞を含んでなる癌を有すると診断されることを含んでなる。浸潤性ヒトエフェクター細胞を検出するための方法は当技術分野で周知である、例えば、IHCを含む。いくつかの実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球のうち1以上である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、活性化FcγRを発現する。いくつかの実施形態では、この方法は、in vitro法である。いくつかの実施形態では、癌は、本明細書に記載の癌のいずれかである。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、神経芽腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)または肝細胞癌である。
【0213】
いくつかの実施形態では、癌患者に治療を推奨するための方法が提供され、その方法は、抗OX40抗体処置に応答する可能性のある患者を特定するための方法または上記のような癌を診断するための方法の工程、および(iii)そのサンプルがFcR発現細胞を有するか、またはヒトエフェクター細胞を有する場合には、抗OX40抗体(例えば、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメント)処置が奨励されることを含んでなる。
【0214】
いくつかの実施形態では、癌患者を治療するための方法が提供され、その方法は、抗OX40抗体処置に応答する可能性のある患者を特定するための方法または上記のような癌を診断するための方法の工程、および(iii)そのサンプルがFcR発現細胞を有するか、またはヒトエフェクター細胞を有する場合には、その患者が抗OX40抗体(例えば、本発明の抗OX40抗体またはそのフラグメント)で処置されることを含んでなる。
【0215】
本明細書に提供されるいずれかの発明のいくつかの実施形態では、サンプルは抗OX40抗体による処置前に得られる。いくつかの実施形態では、サンプルは、癌薬物による処置前に得られる。いくつかの実施形態では、サンプルは、癌転移後に得られる。いくつかの実施形態では、サンプルは、ホルマリンで固定され、パラフィンでコーティングされる(FFPE)。いくつかの実施形態では、サンプルは、生検(例えば、コア生検)、外科検体(例えば、外科的に切除された検体に由来)、または穿刺吸引物である。
【0216】
本発明の例示的抗OX40抗体の配列
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
本発明のこれらおよびその他の側面および実施形態は図面(以下に簡単に記載する)および発明の詳細な説明に記載され、以下の例で例示される。上述のおよび本出願を通しての特徴のいずれかまたは総て本発明の種々の実施形態において組合せが可能である。本発明を以下の例によりさらに説明するが、それらは例示であって限定ではないと理解されるべきであり、当業者は様々な改変を行うことができる。
【実施例】
【0225】
例1.抗OX40抗体および対照抗体の作製および精製
抗OX40抗体は、Adimab抗体プラットフォームにより同定された。ライブラリーおよびスクリーニング法でのそれらの使用は、例えば、Xu et al,2013;WO2009036379;WO2010105256;W02012009568に記載されている。
【0226】
以下の本発明の抗OX40抗体を酵母またはCHO-S細胞または293 HEK細胞で発現させた後に精製した:
【0227】
【0228】
以下の対照抗体を293HEK細胞で発現させた後に精製した:
【0229】
【0230】
本明細書で使用する場合、ポガリズマブは、Proposed INN: List 114(http://www.who.int/medicines/publications/druginformation/innlists/PL114.pdf参照)からの重鎖および軽鎖配列を利用する293 HEK細胞で一過性発現させたヒトIgG1 OX40抗体である。本明細書で使用する場合、Hu106-222は、米国特許第US9006399号からの重鎖および軽鎖配列を利用する293 HEK細胞で一過性発現させたヒト化IgG1 OX40抗体である。本明細書で使用する場合、11D4は、米国特許第US8236930号からの重鎖および軽鎖配列を利用する293 HEK細胞で一過性発現させたヒト化IgG1 OX40抗体である。本明細書で使用する場合、タボリキシズマブは、Proposed INN: List 115(http://www.who.int/medicines/publications/druginformation/innlists/PL115.pdf参照)からの重鎖および軽鎖配列を利用する293 HEK細胞で一過性発現させたヒト化IgG1 OX40抗体である。
【0231】
酵母材料の処理について:
酵母クローンは飽和まで増殖させた後、30℃で48時間誘導した。誘導後、酵母細胞をペレットとし、上清を精製のために採種した。プロテインAカラムを用いてIgGを精製し、酢酸、PH2.0で溶出させた。Fabフラグメントはパパイン消化により作製し、KappaSelect(GE Healtheare LifeSciences)で精製した。
【0232】
CHO-S細胞の処理について:
発現CHO-S細胞株は、Freedom(商標)CHO-S(商標)キット(Invitrogen)を用い、製造者の説明に従って作製した。mAb発現のために、重鎖および軽鎖のDNA配列を、pCHO 1.0プラスミドに、軽鎖の上流に重鎖となるように挿入した。全長ヒトOX40 CDS配列(Sino Biologicalから購入)を安定な過剰発現細胞株の作出のためのpCHO 1.0ベクターに挿入した。
【0233】
293HEK細胞の処理について:
293HEK細胞でのタンパク質の一過性発現のために、スタンドアローンベクターに抗体の重鎖および軽鎖をクローニングしたベクターpTT5を使用した。293HEK細胞へのトランスフェクションは、PEIとともに標準的な手順を用いて行い、培養7日後に上清を集め、AKTAシステム(GE)で精製した。
【0234】
例2:抗OX40抗体に関する結合動態および親和性アッセイ
ヒトOX40の動態および平衡解離定数(KD)を本発明の抗体に関して、MSDおよびバイオライト干渉(ForteBio)アッセイ法を用いて決定した。
【0235】
1.ForteBio KDアッセイ(バイオライト干渉法)
ForteBioアフィニティー測定は、一般に従前に記載されている通りに(Estep, P., et al., High throughput solution-based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. MAbs, 2013. 5(2): p. 270-8.)に行った。簡単に述べれば、ForteBioアフィニティー測定は、センサーをオフラインで、アッセイバッファー中で30分間平衡化し、次いで、ベースラインの確立のために60秒間オンラインでモニタリングし、オンラインでAHQセンサー(ForteBio)に上記のようにして得た精製抗体をロードすることによって行った。抗体をロードしたセンサーを5分間、100nMのOX40抗原に曝し、その後、それらを、解離速度の測定のために5分解離させるためにアッセイバッファーに移した。動態は1:1結合モデルを用いて分析した。
【0236】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(酵母で発現されたIgG1型の抗OX40抗体のFab形式)、ヒトOX40_Fc(抗体Fc部分に結合するヒトOX40、R&D Systemsから購入)とマイクロモル以下の範囲の一価KDで結合する。抗体がセンサーチップ上にあった場合、ADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(IgG1形式で、酵母で発現された抗OX40抗体)は、ヒトOX40_Fc(R&D Systemsから購入)と1桁のナノモル以下の範囲のアビディティーとしての(avid)KD値で結合し、cyno OX40_Fc(Acro Biosystemsから購入)と2桁の(double single digit)ナノモル以下で結合する。抗体がセンサーチップ上にあった場合、ADI-20048、ADI-20078およびADI-20096(IgG1形式で、酵母で発現された抗OX40抗体)は、マウスOX40_Fc(Acro Biosystemsから購入)と、1桁のナノモル値で結合する(表8)。
【0237】
【0238】
ADI-20112およびADI-20078の親和性成熟の後、その後代ADI-25650、ADI-25651、ADI-25652、ADI-25653、ADI-25654、ADI-23515、ADI-23518、およびADI-23519は、センサーチップ上のヒトOX40_Fcに結合している場合に、酵母で発現されたIgG1から産生されたFab形式の抗体のKD値により示される一価結合の改善;IgG1形式で、酵母で発現され、溶液中のヒトOX40_Fcと結合する抗体がセンサーチップ上にあった場合の、アビディティーとしての結合親和性の改善;およびIgG1形式で、酵母で発現され、溶液中のcyno OX40_Fcと結合する抗体がセンサーチップ上にあった場合の結合親和性の改善を示す(表9)。
【0239】
【0240】
MSD-SET動態アッセイ
平衡親和性の測定は、Estep, P., et al., MAbs, 2013. 5(2): p. 270-8を参照。溶液平衡滴定(SET)は、PBS+0.1%IgG不含BSA(PBSF)中で行い、ここで、抗原(ビオチン-OX-40モノマー(ビオチン化OX40、Acro Biosystemsから購入)が10~100pMで一定に維持され、5~100nMで始めるFabまたはmAbの連続3~5倍連続希釈液(実験条件はサンプルに依存する)とともにインキュベートされる。PBSで20nMに希釈した抗体を標準的な結合MSD-ECLプレート(マルチアレイ96ウェルプレート、カタログ番号:L15XA-3,https://www.mesoscale.com/en/products/l15xa-3/)に4℃で一晩または室温で30分間コーティングする。プレートを、700rpmで振盪しながら、BSAで30分間ブロッキングする。次に、プレートを洗浄バッファー(PBSF+0.05%Tween 20)で3回洗浄する。SETサンプルを適用し、プレート上で150秒、700rpmで振盪しながらインキュベートし、その後、洗浄する。プレートに捕捉された抗原を、PBSF中250ng/mLのスルホタグ標識ストレプトアビジンを用いて、プレート上で3分間インキュベートすることにより検出する。これらのプレートを洗浄バッファーで3回洗浄した後、MSD Sector Imager 2400装置で、界面活性剤を含む1倍リードバッファーT(カタログ番号R92TC-1 https://www.mesoscale.com/en/products/r92tc-1/)を用いて読み取る。遊離抗原のパーセンテージをPrismにて滴定抗体の関数としてプロットし、二次方程式に当てはめてKDを抽出する。処理量を高めるために、SETサンプルの調製のためを含め、MSD-SET実験にはリキッドハンドリングロボットを使用する。
【0241】
上記アッセイに記載の通りに行った実験では、IgG1形式で、酵母で発現されたFab型のADI-25650、ADI-25651、ADI-25652、ADI-25653、ADI-25654、ADI-23515およびADI-23519は、ヒトOX40に、検出可能なナノモル以下の一価KD値(表10)で結合する。
【0242】
【0243】
例3:本発明の抗OX40抗体とヒトOX40との結合
本発明の抗体とヒトOX40との結合は、フローサイトメトリーに基づくアッセイで測定することができる。
【0244】
1.CHO細胞上のヒトOX40への結合
ヒトOX40を過剰発現するCHO細胞(CHO-hOX40細胞)を、pCHO1.0ベクター(Invitrogen)をMCS中にクローニングしたヒトOX40 cDNA(Sino Biological、HG10481-G)でトランスフェクトすることによって作出した。CHO-hOX40細胞(0.2×106細胞)を100nMの試験抗体とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする。次に、細胞を少なくとも2回洗浄し、二次抗体(PE標識、SouthernBiotech、終濃度5μg/ml)とともに氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする(遮光)。細胞を少なくとも2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。フローサイトメトリーはCanto IIシステム(BD Biosciences)で行い、MFIを相応に計算する。
【0245】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、ADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(IgG1形式、酵母で発現)は、CHO細胞上で過剰発現されたOX40に、染色した野生型CHO細胞と比較して>1000倍の差のMFI値で結合する(表11)。
【0246】
【0247】
ADI-20112およびADI-20078の親和性成熟の後に上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、その後代ADI-25650、ADI-25651、ADI-25652、ADI-25653、ADI-25654、ADI-23515、ADI-23518、およびADI-23519は、ヒトOX40を過剰発現するCHO細胞に対する結合強度を保持する(表12)。
【0248】
【0249】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、293HEK細胞で発現されたIgG1形式のADI-20051、ADI-20078、ADI-20112およびADI-20118は、CHO細胞上で過剰発現されたOX40に、それぞれ2.734、2.874、2.799、および6.71nMのEC50値で結合する(表13)。
【0250】
【0251】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、IgG2形式で、293HEK細胞で発現されたADI-20051、ADI-20078、ADI-20112およびADI-20118は、CHO細胞上で過剰発現されたOX40に、それぞれ5.49、4.022、2.777、および5.838nMのEC50値で結合する(表14)。
【0252】
【0253】
2.293HEK細胞上のヒトOX40への結合
本発明の抗体とヒトOX40との結合は、フローサイトメトリーアッセイで測定することができる。ヒトOX40を過剰発現する293HEK細胞(0.2×106細胞、上記のCHO細胞に関するものと同様のように方法により調製)を、100nMの試験抗体とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする。次に、細胞を少なくとも2回洗浄し、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中、二次抗体(PE標識、SouthernBiotech、終濃度5μg/ml)とともにインキュベートする(遮光)。細胞を少なくとも2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。フローサイトメトリーはAccuri C6システム(BD Biosciences)で行い、MFIを相応に計算する。
【0254】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、ADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(IgG1形式、酵母で発現)は、陰性対照としてのIgG1対照と比較して、OX40に用量依存的に結合する(表15)。
【0255】
【0256】
3.活性化された初代CD4+T細胞上のヒトOX40への結合
本発明の抗体と初代T細胞上のヒトOX40との結合は、フローサイトメトリーアッセイで測定することができる。
【0257】
健常ドナーからの初代CD4+T細胞を抗CD3/CD28ダイナビーズ(Invitrogen)で48時間活性化し、0.2×106細胞を100nMの試験抗体とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする。次に、細胞を少なくとも2回洗浄し、二次抗体(PE標識、SouthernBiotech、終濃度5μg/ml)とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする(遮光)。細胞を少なくとも2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。フローサイトメトリーはAccuri C6システム(BD Biosciences)で行い、MFIを相応に計算する。
【0258】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、ADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(IgG1形式、酵母で発現)は、OX40に、陰性対照としてのIgG1対照と比較して高いMFIシグナルで結合する(表16)。
【0259】
【0260】
例4.CHO細胞上でのヒトOX40LとOX40の間の相互作用に対する本発明の抗体の遮断
本発明の抗体のヒトOX40とOX40Lの結合を遮断する能力は、フローサイトメトリーにより測定することができる。
【0261】
方法1:
上記の例3に記載の通りに調製した0.2×106のヒトOX40発現CHO細胞を試験抗体(100nM)とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする。次に、細胞を3回洗浄し、NHS-FIuorescein(Promega)を結合させたOX40L-hFc(AcroBiosystemsから入手)(約10μg/ml)とともに、氷上で30分間、PBS 0.1%BSA中でインキュベートする(遮光)。細胞を3回洗浄する。フローサイトメトリーはAccuri C6システム(BD Biosciences)で行い、MFIをC6ソフトウエアで計算する。
【0262】
上記のアッセイにより行った実験では、ADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118(IgG1形式、酵母で発現)は、ヒトOX40L-FITCの結合を種々のレベルで遮断し、ADI-20051のFITCシグナル遮断だけがOX40Lのそれよりやや強く、19,344に対して17,225のMFI値であった。ADI-20048、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118は、OX40Lよりも高いMFI値を示し、それぞれ34,342、33,687、32,813、28,112、31,917、22,525、24,020.5、および26,580.5である(表17)。
【0263】
【0264】
方法2:
方法1に記載の通りの染色法を用い、ネズミFcと融合したOX40L(OX40L-mFc、AcroBiosystemsから入手)と次いで抗ネズミFC-FITC二次抗体(Biolegend)も使用した。フローサイトメトリーは、Accuri C6システム(BD Biosciences)で行い、MFIをC6ソフトウエアで計算する。
【0265】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、ADI-23515-g2およびADI-20112-g1(それぞれIgG2およびIgG1アイソフォーム、CHO細胞で発現)は、CHO細胞上のOX40への、マウスFcに融合されたヒトOX40L(60μg/ml)の結合を遮断したが、ポガリズマブよりも低く、OX40Lと同等のレベルの遮断活性を示した(
図1)。なおここで、対照IgG4は、配列番号178の重鎖および配列番号179の軽鎖を含んでなる(以下の内容においてIgG4対照については同じである)。
【0266】
例5.本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性
1.プレート結合抗体T細胞活性化アッセイ
T細胞の単離は、Untouched CD4+T細胞単離キット(Invitrogen)にて製造者の説明に従って行う。1.5ml試験管ラックに合う磁石を用いて不要な磁性ビーズ(QIAGEN)を除く。
【0267】
本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性は、T細胞の活性化の後にT細胞による炎症性サイトカインの放出を測定することによって評価することができる。96ウェル平底プレート(Corning)を最適下限の抗CD3(0.25μg/ml)抗体(Biolegend)、および抗OX40(6μg/ml)試験抗体で、37摂氏度で2時間または4摂氏度で一晩コーティングした。洗浄後、100,000のCD4+初代T細胞を各ウェルの、2μg/mlの抗CD28抗体(Biolegend)溶液を含む合計200μlの培地に加えた。5日後、IL-2分泌レベルをELISA(Ready-SET-Go!;eBioscience)により試験した。
【0268】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、酵母細胞で生成されたIgG1形式のADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118は、IL-2およびIFNgの分泌をIgG4対照よりも増加させ、2名の異なる健常ドナーからのT細胞で、IL-2レベルでは最大100倍増、IFNgレベルでは約3倍の差が見られた(表18)。
【0269】
【0270】
2.可溶性抗体T細胞活性化アッセイ
アッセイ1:
本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性は、T細胞の活性化後にT細胞の炎症性サイトカインの放出を測定することによって評価することができる。100,000のCD4+T細胞をPHA(10μg/ml、Sigma)および200nMの抗OX40候補抗体によって5日間刺激する。IL-2分泌は、ELISA(Ready-SET-Go!;eBioscience)により試験する。
【0271】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、酵母細胞で生成されたIgG1形式のADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118は、IL-2分泌をIgG4対照よりも増加させ、6名の異なる健常ドナーからのIL-2レベルに最大10倍の増加が見られた(表19)。
【0272】
【0273】
アッセイ2:
本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性は、T細胞の活性化後にT細胞による炎症性サイトカインの放出を測定することによって評価することができる。100,000のCD4+T細胞を抗CD3抗体(Biolegend)(1μg/mlの濃度)、抗CD28抗体(Biolegend)(2μg/mlの濃度)および10μg/ml、20μg/mlまたは40μg/mlの抗OX40抗体で5日間刺激した。IL-2分泌は、ELISA(Ready-SET-Go!;eBioscience)により試験する。
【0274】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、HEK293細胞で発現されたIgG1形式の抗OX40抗体ADI-2005720051、ADI-20078、ADI-20112およびADI-20118は、IgG1対照と比較して、IL-2の分泌を、20ug/ml以上の濃度で増加させ(表20)また、HEK293細胞で発現されたIgG2形式の抗OX40抗体は、総ての濃度においてIL-2の分泌を増加させた(表21)。
【0275】
【0276】
【0277】
アッセイ3:
本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性は、T細胞の活性化後にT細胞による炎症性サイトカインの放出を測定することによって評価することができる。100,000のPBMCを、PHA(5μg/ml;Sigma)および5μg/ml、10μg/mlまたは20μg/mlの抗OX40抗体で5日間刺激した後、ELISA(Ready-SET-Go!;eBioscience)によりIL-2分泌を試験する。
【0278】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で発現されたADI-20078-g1(IgG1形式)、ADI-20078-g2(IgG2形式)、ADI-20112-g1(IgG1形式)、およびADI-20112-g2(IgG2形式)は、IL-2の分泌を5μg/ml、10μg/ml、および20μg/mlのIgG1対照およびIgG2対照よりも増加させ、対照抗体11D4、Hu106-222、およびポガリズマブの水準よりも高かった(
図2)。
【0279】
3.ルシフェラーゼリポーターT細胞活性化アッセイ
本発明の抗OX40抗体のアゴニスト活性は、ルシフェラーゼリポーターアッセイNFkBにより媒介される転写の活性化の増強を測定することによって評価することができる。ヒトOX40を過剰発現するJurkat細胞(US、ATCC)(Sinoから購入)およびNFkBルシフェラーゼ構築物(NFkBプロモーター-luc、Promega)を溶液中の抗OX40抗体(100nM)とともにPHA(5μg/ml;Sigma)または抗CD3(2μg/ml;Biolegend)と抗CD28(2μg/ml;Biolegend)で18時間刺激し、次いで、細胞溶解および基質の添加後に試験を行い、検出装置(Molecular Devices)で相対的ルシフェラーゼ発現誘導を示す生物発光を測定する。
【0280】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、酵母細胞で発現されたIgG1形式のADI-20048、ADI-20051、ADI-20065、ADI-20066、ADI-20078、ADI-20096、ADI-20112、ADI-20113およびADI-20118は、ルシフェラーゼ発現をIgG4対照よりも大幅に増加させ、PHA(Sigma)または抗CD3(Biolegend)の活性化を用いた場合にそれぞれ最大4倍および7倍のシグナル増加である(表22)。
【0281】
【0282】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、抗CD3および抗CD28ダイナビーズ(Invitrogen)をアクチベーターとして用いた場合、CHO細胞で一過性発現されたヒトIgG2 OX40抗体であるADI-20078-g2は、IgG対照(IgG1およびIgG2対照)、ADI-20078-g1(CHO細胞で発現されたヒトIgG1 OX40抗体)、ADI-20112-g1(CHO細胞で発現されたヒトIgG1 OX40抗体)、ADI-20112-g2(CHO細胞で発現されたヒトIgG2 OX40抗体)、ポガリズマブおよびHu106-222よりも大幅にルシフェラーゼ発現を増加させた(
図3)。
【0283】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で発現されたヒトIgG2 OX40抗体であるADI-20078-g2は、ルシフェラーゼ発現を、IgG対照(IgG1対照)、およびCHO細胞で発現された親和性成熟ヒトIgG2 OX40抗体であるADI-23515-g2よりも大幅に増加させ、ADI-20078-g2のEC50値が5.739nMであるのに対して、ADI-23515-g2は、0.3904nMというより低いEC50値を有する(
図4)。
【0284】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、共刺激シグナルを提供するためにRaji細胞(ATCC)を、また、IgG架橋のためにFcgRIIbを加えた場合、ヒトIgG1 OX40抗体であるADI-20112-g1、ヒトIgG2 OX40抗体であるADI-20112-g2、ヒトIgG1 OX40抗体であるADI-20078-g1、ヒトIgG2 OX40抗体であるADI-20078-g2(総てCHO細胞で発現)は、OX40の活性化を介してルシフェラーゼ発現を、IgG対照(IgG1対照およびIgG2対照)よりも大幅に相加させ、EC50値はそれぞれ0.06051nM、0.2463nM、0.09644nM、および1.398nMであった。ADI-20112-g1は、ポガリズマブ、Hu106-222および11D4に比べて同等またはより良いアゴニストである(
図5)。
【0285】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で生成されたヒトIgG1 OX40抗体ADI-25654-g1は、CHO細胞で生成されたヒトIgG1 OX40抗体ADI-20112-g1の親和性成熟形態であり;CHO細胞で生成されたヒトIgG1 OX40抗体ADI-23515-g1は、CHO細胞で生成されたヒトIgG1 OX40抗体ADI-20078-g1の親和性成熟形態である。ADI-25654-g1およびADI-23515-g1はより良好なアゴニスト活性を示し、ADI-20112-g1が0.2576nMのEC50を有するのに対して、EC50値はそれぞれ0.02817nM、および0.1743nMであった(
図6)。
【0286】
4.混合リンパ球反応(MLR)/DC T細胞共培養アッセイ
本発明の抗体によるOX40シグナルのアゴニスト活性は、混合リンパ球反応またはDC-T細胞共培養アッセイ中のIL-2の放出を測定することによって評価することができる。6ウェル組織培養プレートの各ウェルまたはT25組織培養フラスコに2×106のPBMCを播種する。細胞を2~3時間インキュベートし、単球を接着させる。
【0287】
未熟骨髄moDCは、PBMC由来単球(1×106細胞/ml)を、1%AB血清、10mM HEPES、50μM β-Me、IL-4(1000U/ml)およびGM-CSF(1000U/ml)、または各25~50ng/mlを含有するX-VIVO 15培地で培養することにより生成した。2日後に、IL-4およびGM-CSFを添加した新鮮培地を加える。5日目に、細胞を凍結させるか、または3×105細胞/mlの細胞密度で、2日間、rTNFa(1000U/ml)、IL-1b(5ng/ml)、IL-6(10ng/ml)および1μM PGE2を含有する刺激カクテルを添加することにより成熟を誘導する。T細胞の単離は、Untouched CD4+T細胞単離キット(Invitrogen)にて製造者の説明に従って行う。1.5ml試験化合物ラックに合う磁石を用いて不要な磁性ビーズ(QIAGEN)を除く。
【0288】
96丸底組織培養プレートで、37℃で4~5日間、100,000~200,000の単離T細胞(ドナーから)を10,000~20,000の同種異系moDC(上記の通り)を総容量200μlで混合する。T細胞の活性化を増強するためにSEE(1ng/ml)を加えた。試験抗体をMLRの開始時に加え、培養期間中インキュベートする。IL-2の検出は製造者の説明に従って行う(eBioscience)。OD測定値はMultiskan FCシステム(Thermo)で決定する。
【0289】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で発現されたIgG2形式のヒト抗体であるADI-23515-g2、およびCHO細胞で発現されたヒトIgG1抗体であるADI-20112-g1は、約13.3μg/ml、約4.4μg/mlおよび約1.48μg/mlの濃度で用いた場合、ポガリズマブ、11D4、Hu106-222、およびタボリキシズマブと同等かまたはそれより良好にIL-2を増加させた。ポガリズマブは、総ての濃度で低いアゴニスト活性を示し、40μg/mlの11D4、Hu106-222、タボリキシズマブ、ADI-23515-g1、およびADI-20112-g1は、OX40抗体の最高濃度40μg/mlでより低いアゴニスト活性を示した(
図7、IgG対照はIgG1対照である)。
【0290】
例6.ルシフェラーゼリポーターに基づく本発明の抗体によるOX40Lにより媒介されるOX40のT細胞活性化の検出
本発明の抗OX40抗体の遮断活性は、OX40Lにより媒介されるOX40のT細胞活性化の遮断における抗体の傾向を測定することによって評価することができる。T細胞の活性化特性は、NFkBにより媒介される転写活性により評価される(例5参照)。ヒトOX40およびNFkB-ルシフェラーゼ構築物(NFkBプロモーター-luc、US Promega)を過剰発現するJurkat細胞(US ATCC)を、溶液中、抗CD3(2μg/ml;Biolegend)、抗CD28(2μg/ml(Biolegend)および組換えOX40L(60 μg/ml;Acro Biosystems)と漸増濃度の抗OX40抗体(本発明のCHO細胞で発現されたIgG1形式のADI-0112-g1、本発明のCHO細胞で発現されたIgG2形式のADI-23515-G2)およびIgG4対照、ポガリズマブ、OX40L(AcroBiosystemsから入手)で18時間活性化し、次いで、細胞溶解および基質の添加の後に試験し、吸光度を測定した。
【0291】
ポガリズマブは、約0.08nMを超える濃度でOX40Lに基づく活性化を容易に遮断したが、CHO細胞で生成されたヒトIgG1 OX40抗体であるADI-20112-g1、およびCHO細胞で生成されたヒトIgG2 OX40抗体であるADI-23515-g2は、20nM以上でOX40Lに基づく活性化を遮断した(
図8)。
【0292】
例7.本発明の抗体の抗体依存性細胞介在性細胞傷害
ルシフェラーゼリポーターに基づく抗体依存性細胞介在性細胞傷害アッセイ
OX40抗体の抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)活性は、ルシフェラーゼリポーターアッセイ(Promega)を用いて測定することができる。標的細胞(ヒトOX40を発現するCHO細胞、上記の通りに調製)を、10%Ultra-Low IgG FBS(Sigma)を含有する25μlのRPMI培地(Gibco)に1.2×106細胞/mlで播種する。1μg/ml抗体の1:3連続希釈液を作製し、25μl/ウェルを加える。6×106細胞/mlのADCCエフェクター細胞(Promega)を播種し、5%CO2で37℃にて6時間インキュベートする。75μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を加え、混合物を20分間で室温とする。プレートを300g/分で2分間遠心分離する。120μlの細胞上清を注意深くオプティプレートに移す。このプレートを照度計で読み取る。曲線を当てはめ、GraphPad Prism 6.0を用いて抗体応答のEC50を決定する。
【0293】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、HEK293細胞で発現されたIgG1形式のADI-20051、ADI-20078、ADI-20112、およびADI-20118は、ルシフェラーゼ発現を増加させ、EC50値はそれぞれ0.3653、0.9109、0.7304、および0.8867nMである(
図9)。HEK293細胞で発現されたIgG2アイソタイプのADI-20051、ADI-20078、ADI-20112、およびADI-20118は、ADCC活性を惹起しなかった(
図10)。
【0294】
例8.本発明の抗体の抗腫瘍活性
本発明のOX40抗体の抗腫瘍有効性は、ヒト化マウスモデル(NOG hu-PBMC LoVo腫瘍モデル)で検討することができる。
【0295】
LoVoヒト結腸癌細胞(ATCC# CCL-229)をATCCの説明(F-12K)に従って培養した。66万個のヒトPBMCを含有する0.2mLのPBSに懸濁させた200万個のLoVo細胞を雌NOG(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.)の右側腹部に移植した。
【0296】
試験中、腫瘍重および体重を週2回測定し、マウスは、腫瘍がエンドポイントに達するか、またはマウスが>20%の体重減となった場合に安楽死させた。移植後3日目に、マウスを6~7個体ずつの群に無作為化し、平均腫瘍体積をデジタルノギスで評価し、各群について腫瘍体積をmm3で式:(幅)2×長さ/2により計算し、およそ50mm3であった。
【0297】
移植後3、7、11、および14(または15)日目に、マウスの腹膜内に(IP)、PBS、10mg/kgの関連IgGアイソタイプ対照(equitech-Bio)、または抗OX40抗体(CHO細胞で発現されたIgG1形式ヒトOX40抗体であるADI-20112-g1またはCHO細胞で発現されたIgG1形式のヒトOX40抗体ADI-23515-g2)を投与した。
【0298】
上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で発現されたIgG1形式のヒトOX40抗体であるADI-20112-g1は、IgG対照(equitech-Bio)に比べて(
図11)、また、ポガリズマブおよび11D4に比べて(
図13)、腫瘍体積の増大を低減する。上記のアッセイに記載の通りに行った実験では、CHO細胞で発現されたIgG2形式のヒトOX40抗体であるADI-23515-g2は、IgG対照(equitech-Bio)(
図12)、ポガリズマブおよび11D4(
図13)に比べて、腫瘍体積の増大を有意に低減する。ADI-20112-g1およびADI-23515-g2は、IgG対照、ポガリズマブ、および11D4に比べてマウスの体重に有意な影響を及ぼさない(
図14)。
【0299】
例9:薬物動態アッセイ
雌Balb/Cマウスへの、ADI-20078-IgG1(IgG1形式、CHO細胞で発現)、ADI-20078-IgG2(IgG2形式、CHO細胞で発現)、ADI-20112-IgG1(IgG1形式、CHO細胞で発現)、ADI-20112-IgG2(IgG2形式、CHO細胞で発現)の10mg/kg抗体のi.v.投与後に、薬物動態データを評価した。この用量を体重に基づいてマウスに注射した。
【0300】
採血は投与の開始時に始めた。i.v.投与については、投与時点は0.083時間(5分)、21日までを含んだ。各時点で3個体のマウスから採血した。およそ100ulの血液をマイクロ遠沈管に採種した。血液サンプルは氷上で、3000RPMの速度設定で少なくとも10分間置き、およそ40~50ulの血清を得た。
【0301】
マウスに投与した抗体の血清濃度は、プレートに基づくサンドイッチELISA法を用いたイムノアッセイによって決定した。簡単に述べれば、マイクロタイタープレート(Nunc、カタログ番号442404)を4℃で一晩、0.2MのCBS(PH9.4)中1ug/mLのOX40(ACRO、カタログ番号1044-5CIS1-AF)でコーティングした。洗浄後、次に、このプレートを周囲温度にて1.5時間、5%脱脂乳でブロッキングし、マウス血清サンプルを室温で1.5時間コーティングプレートに適用した。抗OX40抗体を用いて、0.315~80ng/mLの範囲のプールした正常マウス血清およびQCサンプルで標準曲線を作成した。
【0302】
結合した抗OX40抗体は、0.05%PBST(PBS中0.05%Tween)中5%BSAで1:100,000希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトFc抗体(Bethyl、カタログ番号A80-104P-84)を用いて検出した。洗浄工程の後、プレートを室温で10~15分間TMBで現像し、これを5分後に2N硫酸を添加することによって停止させた。光学密度は、Thermo ELISAプレートリーダー(Multiskan FC)を用いて450nmで測定し、620nm参照波長を差し引いた。定量は、Skanitソフトウエア3.1(Thermo)を用い、作成した標準曲線の4パラメータロジスティック(1/Y2)回帰に基づいた。
【0303】
PKパラメーター(Cmax、AUC、t1/2、Cl、およびVss)は、各群の濃度の平均を用いてノンコンパートメントモデルに基づくPKSolverソフトウエアにより分析した(表23)。
【0304】
【0305】
例10.MC38担癌OX40トランスジェニックマウスでの抗PD-1抗体と組み合わせた抗OX40抗体の医薬的有効性に関する検討
本検討では、抗PD1抗体Cと組み合わせた種々の用量の抗OX40抗体ADI-20112-IgG1(本例および
図15ではADI-20112と呼ばれる)の相乗的抗腫瘍有効性を検討するためにMC38(マウス腸管癌細胞)担癌OX40トランスジェニックマウスを使用した。抗体Cは、プログラム細胞死受容体1(PD-1)に対するモノクローナル抗体(特許出願番号:PCT/CN2017/072190)である。
【0306】
ヒトOX40トランスジェニックマウス
C57B1/6バックグラウンドを有する雌ヒトOX40トランスジェニックマウス(およそ8週齢)は、Shanghai Southern Model Biotechnology Co.,Ltdから購入した。マウスを到着後7日間飼育し、その後、試験を開始した。
【0307】
細胞
MC38ネズミ結腸癌細胞は、Heyuan Biotechnology(上海)から購入し、説明に厳格に従って、その後のin vivo試験のために通常通りに継代培養した。これらの細胞を遠心分離により集め、無菌PBSに再懸濁させ、5×10e6/mlの細胞密度に調整した。0日目に、0.2mlの細胞懸濁液をヒトOX40トランスジェニックマウスの右腹部領域に皮下接種し(1×106細胞/マウス)、MC38-hOX40担癌マウスモデルを確立した。
【0308】
投与
腫瘍細胞接種の6日後に、各マウスの腫瘍体積を測定し、87.4mm3~228.4mm3の範囲の腫瘍体積を有するマウスを選択し、各群の平均初期体積が約110mm3となるように平均腫瘍体積に従って群分けした。
【0309】
マウスを7群に分け(各群7個体)、各群に以下の用量の抗体を腹腔内注射した:
群1(対照群):h-IgG(equitech-Bio)、10mg/kg;
群2:抗OX40抗体(ADI-20112)、0.1mg/kg;
群3:抗OX40抗体(ADI-20112)、1mg/kg;
群4:抗OX40抗体(ADI-20112)、10mg/kg;
群5:PD-1抗体(抗体C)、0.5mg/kg;
群6:抗OX40抗体(ADI-20112)1mg/kg+PD-1抗体(抗体C)0.5mg/kg;
群7:抗OX40抗体(ADI-20112)10mg/kg+PD-1抗体(抗体C)0.5mg/kg。
【0310】
試薬の注射
接種後6日目に、各群のマウスに上記7群の試薬をそれぞれ2回/週の頻度で2週間、腹腔内注射によって当業者とした。
【0311】
分析:
腫瘍重および体重を試験中、6日目(投与前)から週2回測定し、4週間絶えずモニタリングした。腫瘍の最大長軸(L)と最大幅軸(W)を、ノギスを用いて測定し、腫瘍体積(V)を次の用に計算した:V=L×W2/2。各マウス群からの腫瘍サイズを時間に対してプロットした。分散分析(ANOVA)を用いて、統計的有意性を判定した。総ての分析でP値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0312】
29日目の試験の終了時にマウスを安楽死させた。単離した腫瘍組織の写真を撮影し、秤量し、各群の腫瘍重および体積(腫瘍最終体積)を測定し、相対腫瘍増殖阻害率(TGI(%))を計算した。
【0313】
結果
試験の結果は、1週間の投与後に、群1(h-IgG-10mg/kg)に比べて、群2~4(ADI-20112-0.1mg/kg、ADI-20112-1mg/kg、ADI-20112-10mg/kg)は用量依存的に、MC38-hOX40担癌マウスの腫瘍増殖を阻害し、腫瘍体積および腫瘍重が減少し、腫瘍増殖も緩徐化したことを示した。これらの試験結果はまた、本発明の抗OX40抗体ADI-20112は抗PD-1 mAb抗体Cと良好な相乗的抗腫瘍効果を示したことも示した。具体的な結果は次の通りである。
【0314】
図15に示されるように、1週間の投与後に、群1(h-IgG-10mg/kg群)に比べて、群2(ADI-20112-0.1mg/kg群)もまた遅い腫瘍増殖を示したが、群3~7(ADI-20112-1mg/kg群、ADI-20112-10mg/kg群、抗体C-0.5mg/kg群、ADI-20112-1mg/kg+抗体C-0.5mg/kg、ADI-20112-10mg/kg+抗体C-0.5mg/kg)は有意な抗腫瘍効果を示した。群1(h-IgG-10mg/kg投与群)のマウスの500mm
3までの腫瘍増殖には14日を要したが、群2(ADI-20112-0.1mg/kg投与群)は19日を要し、群3(ADI-20112-1mg/kg群)は22日を要し、群4(ADI-20112-10mg/kg群)は26日を要し、群5(抗体C-0.5mg/kg群)、群6(ADI)-20112-1mg/kg+抗体C-0.5mg/kg群)、群7(ADI-20112-10mg/kg+抗体C-0.5mg/kg群)の平均腫瘍体積は29日までで500mm
3未満であった。
【0315】
29日後に試験を終了した際に、いくつかの試験群では、マウスの腫瘍は完全に消失していた。以下の表24は、各群の腫瘍が完全に消失したマウスの数をまとめたものである。
【0316】
【0317】
上の表に示されるように、群5(抗体C-0.5mg/kg群)では、3個体のマウスの腫瘍が完全に消失し;群6(20112-1mg/kg+抗体C-0.5mg/kg群)では6個体のマウスの腫瘍が完全に消失し;群7(20112-10mg/kg+抗体C-0.5mg/kg)では7個体のマウスの腫瘍が完全に消失した。
【0318】
加えて、本発明はまた、29日目の終了時に各群のマウスで相対腫瘍増殖阻害率を計算した。相対腫瘍増殖阻害率は、次のように計算する:
相対腫瘍増殖阻害率TGI(%)=100%×(Tvolcontrol-Tvoltreated)/(Tvolcontrol-Tvolpredose)
式中、Tvolcontrol-Tvoltreated=対照群における投与後の腫瘍最終体積-薬物投与群における投与後の腫瘍最終体積;Tvolcontrol-Tvolpredose=対照群における投与後の腫瘍最終体積-対照群における投与前の腫瘍体積(6日目の投与前の腫瘍体積)。
計算結果を下表25に示す。
【0319】
【0320】
試験の結果は、群6(ADI-20112-1mg/kg+抗体C-0.5mg/kg群)および群7(ADI-20112-10mg/kg+抗体C-0.5mg/kg群)では、腫瘍増殖阻害率はそれぞれ102%および104%であったこと、および抗OX40抗体は、抗PD1抗体と組み合わせた場合に相乗的抗腫瘍効果を示すことを示した。
【配列表】