(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/44 20060101AFI20220328BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220328BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220328BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K47/32
A61K9/20
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2019560150
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2018004997
(87)【国際公開番号】W WO2018203636
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-12-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0056115
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0049305
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンヨブ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ミンヒョ
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224060(US,A1)
【文献】特開2015-187170(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2011年,Vol.419,pp.339-346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩、及びポリメタクリレート共重合体を含み、
ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩1重量部に対するポリメタクリレート共重合体の量が0.05~5重量部であ
り、
ポリメタクリレート共重合体が、ジメチルアミノエチルメタクリレートを有するカチオン性高分子である、水溶解度とバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物。
【請求項2】
ポリメタクリレート共重合体が、ポリ(ブチルメタクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-co-メチルメタクリレート)である請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリメタクリレート共重合体が、3,000~200,000g/moleの重量平均分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリメタクリレート共重合体が、顆粒又は粉末状態である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ソラフェニブの薬学的に許容される塩が、ソラフェニブトシラートである請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
固体経口製剤形態である請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
1)ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩をポリメタクリレート共重合体と混合する工程;及び
2)工程1)の混合物で経口用製剤を形成する工程;
を含み、
ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩1重量部に対するポリメタクリレート共重合体の量が0.05~5重量部であ
り、
ポリメタクリレート共重合体が、ジメチルアミノエチルメタクリレートを有するカチオン性高分子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の水溶解度とバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性薬物であるソラフェニブ(sorafenib)とポリメタクリレート共重合体(polymethacrylate copolymer)を含む、水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソラフェニブ(4-{4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル)-ウレイド]-フェノキシ}-ピリジン-2-カルボン酸メチルアミド)は、腎細胞癌、肝細胞性別癌、甲状腺癌を治療するTKI(Tyrosine Kinase Inhibitor)系列の標的抗癌剤として国内外に経口用錠剤として発売されている。
【0003】
特許文献1は、ソラフェニブのp-トルエンスルホン酸塩を組成物の少なくとも55重量%の量で含む錠剤である、癌を含む過剰増殖性障害を治療するための医薬組成物、具体的に、組成物の重量に対して、充填剤として微晶質セルロース3~20%、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム5~12%、結合剤としてヒプロメロース0.5~8%、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.2~0.8%及び界面活性剤として硫酸ラウリルナトリウム0.1~2%を含む医薬組成物を開示している。
【0004】
しかし、ソラフェニブの水への溶解度は、0.00171mg/mLと非常に低く、ヒトにおける絶対バイオアベイラビリティは不明である。しかし、経口液剤と比較した錠剤の相対的なバイオアベイラビリティは38~49%と非常に低い。
【0005】
ソラフェニブの低水溶解度とバイオアベイラビリティを改善するために、様々な研究が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体を含む水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体を含む水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩、及びポリメタクリレート共重合体を含む、水溶解度とバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物に関する。
本発明の別の側面は、
1)ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩をポリメタクリレート共重合体と混合する段階;及び、
2)工程1)の混合物で経口用製剤を形成する工程;
を含む、水溶解度とバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体を含む経口用組成物は、ソラフェニブの水溶解度とバイオアベイラビリティが改善されるため、比較的に少ない量の薬物を使用する場合でも体内で同じ効果を発揮することができる。さらに、そのような組成物は食事による影響が少ないことが知られており、吸収の個体差が少ないため吸収の副作用が比較的小さいことから、患者にとって非常に有益である可能性があり、高価な薬物の使用を低減し、経済的な利点がある。つまり、ポリメタクリレート共重合体によって、ソラフェニブの水溶解度及びバイオアベイラビリティが著しく改善されるため、薬物の投与量を減らしても、同等のバイオアベイラビリティを有する製剤を開発することできる。したがって、患者に同等の効能・効果を与えるが、副作用と製造コストを低減する製剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例2とネクサバール(登録商標)錠剤(200mgのソラフェニブと同等)の固体分散体に対して、pH1.2で実施された溶出試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語の定義
特に明記しない限り、本明細書全体で使用される一部の用語は、次のように定義される。
【0012】
本明細書全体で特に明記しない限り、「含む」又は「含有する」は、特定の制限なしに任意の構成要素(又は構成成分)を含むことを指し、他の構成要素(又は構成成分)の付加を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
「ソラフェニブ」は、ソラフェニブ遊離塩基、薬物の異性体又はそれらの混合物を含む。「ソラフェニブの薬学的に許容される塩」は、有効成分としてソラフェニブを含む全ての種類又は形態の薬学的に許容される塩を含む。いずれの場合も、様々な水和物又は多様な結晶形を形成するものである可能性がある。例えば、「ソラフェニブの薬学的に許容される塩」は、ソラフェニブトシラートであり得、ソラフェニブトシラートの無定形、結晶形1、形2、形3又はそれらの混合物であり得る。
【0014】
解決手段の発見
難水溶性薬物の水溶解度とバイオアベイラビリティを改善するために、様々なアプローチが使用されてきた。塩、結晶形及びプロドラッグの製造等の薬物自体の変形、マイクロ又はナノエマルジョン及び固体分散体の製造、薬物粒径の縮小による微粉化又はナノ化、ミセル形成などのアプローチが主に使用されてきた。しかし、難水溶性薬物はそれぞれ、溶解度、pH、pKa、融点、分子量、官能基、立体構造、結晶化度、透過度、吸収部位、分解度、有効薬物量等の薬物特性が異なるため、一つの技術が全ての薬物に共通して適用することができなく、特定薬物に適した方法を見つけるために多くの労力が必要とされる。また、薬物自体の変形に加えて、難水溶性薬物の水溶解度とバイオアベイラビリティを改善するために必要な物質又は物質の組み合わせを見つけることは非常に重要である。
【0015】
ソラフェニブの水溶解度とバイオアベイラビリティを改善するために多くの試みが行われてきたが、ポリメタクリレート共重合体を利用した試みは行われていなかった。
【0016】
本発明者らは、ソラフェニブの水溶解度に対する様々な物質の効果を評価するために多くの労力を払った後、ソラフェニブの水溶解度及びバイオアベイラビリティの改善に優れたポリメタクリレート共重合体を見出した。
【0017】
詳細な説明
本発明は、ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体を含む、水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された経口用組成物及びその製造方法を提供する。
【0018】
本発明の経口用組成物は、好ましくは固体経口製剤、特に錠剤又はカプセル剤の形態であってもよい。
【0019】
前記ソラフェニブは様々な形態、特に、数~数十マイクロメートルサイズの微粉化形態であってもよい。好ましくは、そのサイズが数マイクロメートルの微粉化形態であってもよい。より好ましくは、そのサイズが数百ナノメートルのナノ化された形態であってもよい。薬物の粒径が小さくなると、溶解速度が改善され、水溶解度及びバイオアベイラビリティが向上される。
【0020】
前記ポリメタクリレート共重合体は、好ましくはジメチルアミノエチルメタクリレートを有するカチオン性高分子、より好ましくはポリ(ブチルメタクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-co-メチルメタクリレート)であってもよい。
【0021】
前記ポリメタクリレート共重合体は、重量平均分子量が、3,000~200,000、好ましくは5,000~150,000、より好ましくは10,000~100,000、さらにより好ましくは20,000~80,000、最も好ましくは37,000~57,000g/moleであってもよい。重量平均分子量が3,000g/mole未満のとき、水溶解度改善効果が低い虞があり、重量平均分子量が200,000g/moleを超えると、崩壊が遅れる虞がある。
【0022】
前記ポリメタクリレート共重合体の状態は特に制限されないが、顆粒状又は粉末状であってもよい。
【0023】
特定の例として、前記ポリメタクリレート共重合体は、Eudragit(登録商標)E PO(エボニック社製、ドイツ)又はEudragit(登録商標)E100(エボニック社製、ドイツ)であってもよい。特定の例として、前記ポリメタクリレート共重合体の重量平均分子量は、約47,000g/moleであってもよい。Eudragit(登録商標)E高分子は通常、コーティング基剤であり、薬物を水分から保護する必要があるか、患者の服薬コンプライアンスが悪い場合には、敏感な薬物をカプセル化したり、味や臭いを遮蔽したりして、患者の薬物に対する不快感を和らげ、滑らかで光沢のある表面を提供して、薬を簡単に飲み込むことができるようにする目的として使用されている。しかし、それは、本発明において、ソラフェニブの水溶解度及びバイオアベイラビリティを改善する添加剤として使用される。
【0024】
前記ポリメタクリレート共重合体は、ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩1重量部に対して、例えば、0.05~5重量部の量、好ましくは0.1~4重量部、より好ましくは0.2~3重量部の量で、さらにより好ましくは0.25~2重量部の量であってもよい。ポリメタクリレート共重合体の量が前記下限未満のとき、ソラフェニブの水溶解度及びバイオアベイラビリティの改善がわずかであり、効果が低下する虞がある。ポリメタクリレート共重合体の量が、前記上限を超えると、製剤(例えば、錠剤)が大きくなり過ぎて、患者が服用したときに不快感を引き起こす虞がある。
【0025】
本発明は、ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体に加えて、他の付加的な構成成分を含んでもよい。他の付加的な構成成分の例には、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤とコーティング基剤が含まれる。
【0026】
前記希釈剤は、例えば、ラクトース(無水物又は水和物、例えば一水和物)、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化微晶質セルロース、スターチ、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、及びそれらの混合物からなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これらに制限されない。好ましくはラクトース、微晶質セルロース又はそれらの混合物が選ばれてもよい。最も好ましくは、スターチ、ラクトースとミセル結晶質セルロースの混合物が選ばれてもよい。希釈剤は、結合剤としても機能する。
【0027】
前記希釈剤は、全製剤(例:錠剤)の重量100重量部に対して、例えば、0.1~50重量部の量、好ましくは1~30重量部、より好ましくは2~15重量部の量であってもよい。希釈剤の量が前記下限より少ないとき、打錠性が低くなることになり、製剤の製造が困難になる虞があり、希釈剤の量が前記上限を超えると、製剤が大きくなり過ぎて、患者がそれを服用するときに不都合を引き起こす虞がある。
【0028】
前記崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム(CrosCMC-Na)、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、L-HPC(低置換ヒドロキシプロピルセルロース)、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプンのグリコール酸ナトリウム、部分的加水分解デンプン、及びそれらの混合物からなる群から選ばれた1種以上であってもよいが、これに制限されない。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム(CrosCMC-Na)、L-HPC(低置換ヒドロキシプロピルセルロース)又はそれらの混合物であってもよい。
【0029】
前記崩壊剤は、全製剤(例:錠剤)重量100重量部に対して、例えば、1~30重量部の量、好ましくは2~20重量部の量で使用してもよい。崩壊剤の量が前記下限未満のとき、崩壊速度の遅延による溶出速度遅延の問題があり、崩壊剤の量が前記上限範囲を超えると、打錠障害などの生産性の問題が生じる虞がある。
【0030】
前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、タルク、高分散(コロイド型)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これらに制限されない。好ましくは、ステアリン酸マグネシウムであってもよい。
【0031】
前記滑沢剤は、全製剤(例:錠剤)重量100重量部に対して、例えば、0.1~3重量部の量、好ましくは0.2~3重量部の量、より好ましくは0.5~2重量部の量で使用してもよい。滑沢剤の量が前記下限未満のとき打錠障害などの生産性に問題が生じる虞があり、滑沢剤の量が前記上限を超えると、溶出遅延や生産性に問題が生じる虞がある。
【0032】
前記コーティング基剤は、親水性高分子であり、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセテート(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩及びカルシウム塩)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-HPC(低置換度のHPC)、ポリビニルアルコール、アクリル酸及びその塩の重合体、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(例えば、コリドン(登録商標)VA64、BASF社製)、ポリコートIR、ゼラチン、グァーガム、部分加水分解デンプン、アルギネート、キサンタン、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これらに制限されない。好ましくはポリビニルアセテート(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリコートIRであってもよい。
【0033】
前記コーティング基剤は、コーティング前錠剤(素錠)100重量部に対して、例えば、0.2~10重量部の量、好ましくは0.5~7重量部の量、より好ましくは1~5重量部の量で使用してもよい。親水性高分子の量が前記下限未満のとき素錠の表面全体の一部がコーティング基剤で覆われないという問題が生じる虞があり、親水性高分子の量が前記上限を超えると、溶出速度が過度に遅くなるという問題が生じる虞がある。
【0034】
上記コーティング錠を製造する過程では、コーティングの効率、薬物の安定性、外観、色、保護、維持、結合、性能改善、製造工程改善など、様々な生物学的に不活性な成分を追加の目的のために使用することができる。
【0035】
一実施例によれば、前記コーティング層にさらに含まれ得る生物学的に不活性な成分は、可塑剤、滑沢剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、安定化剤、酸化防止剤、発泡剤、消泡剤及び乾燥剤(例えば、パラフィン、ワックスなど)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。例えば、前記可塑剤は、各コーティング層で使用される全体高分子の乾燥重量に対して、100重量%以下(例えば、0.1~100重量%)、具体的に50重量%以下(例えば、0.1~50重量%)、より具体的に30重量%以下(例えば、0.1~30重量%)であってもよい。
【0036】
例えば、前記可塑剤は、クエン酸トリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコールからなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0037】
前記滑沢剤は、各コーティング層で使用される全高分子の乾燥重量に対して、100重量%以下(例えば、0.1~100重量%)であってもよい。
【0038】
具体的に、前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、デンプン(小麦、米、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、タルク、高分散(コロイド型)シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、グルセリルモノステアレート、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム及びそれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0039】
前記錠剤やカプセルには、錠剤やカプセルの物理的な特性、製造性、圧縮性、外観、記号、薬物の安定性などを改善するために、様々な添加剤を混合してもよい。前記添加剤には、例えば、安定化剤、可溶化剤、甘味剤、矯味剤、顔料、湿潤剤、充填剤、安定化剤、界面活性剤、滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、吸着剤、結合剤、懸濁化剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢剤、着香剤、香味剤、顔料、コーティング剤、湿潤剤、湿潤調整剤、消泡剤、清涼化剤、咀嚼剤、静電防止剤、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘増剤、発泡剤、pH調節剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、防水剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤などが挙げられるが、これらに制限されず、任意の薬学的に許容される薬剤を使用してもよい。
【0040】
製造方法
ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体は、経口用組成物の製造において様々な方法で製剤化することができる。
【0041】
例えば、ソラフェニブ及びポリメタクリレート共重合体は、単純混合で製剤化することができる。この混合物を他の付加的な構成成分と混合して、直接打錠することによって錠剤化するか、カプセルに充填することによってカプセル化することができる。
【0042】
例えば、ソラフェニブ及び他の付加的な構成成分を様々な方法で顆粒化し、ポリメタクリレート共重合体を後混合した後、打錠して錠剤化するか、カプセルに充填してカプセル化することができる。様々な方法での顆粒化の例には、湿式顆粒、乾式顆粒などが含まれる。湿式顆粒は、高速ミキサー又は流動層造粒機を使用でき、乾式顆粒は、ローラー圧縮機及び押出機を利用することができる。
【0043】
例えば、ソラフェニブとポリメタクリレート共重合体を共に混合し、様々な方法で顆粒化し、他の付加的な構成成分を後混合して錠剤化するか、カプセルに充填してカプセル化することができる。
【0044】
例えば、ソラフェニブを顆粒化するために、ポリメタクリレート共重合体をエタノールなどの溶媒に溶解し、結合剤として用いて湿式顆粒を製造し、後混合により、他の付加的な構成成分を混合して打錠して錠剤化するか、カプセルに充填してカプセル化することができる。
【0045】
例えば、ソラフェニブとポリメタクリレート共重合体を混合し、溶融押出機を使用して適切な温度条件でペレットに溶融-圧出した後、カプセルに充填するか、他の付加的な構成成分と混合して打錠して錠剤化することができる。
【0046】
例えば、ソラフェニブとポリメタクリレート共重合体は、適切な溶媒に溶解した後、噴霧乾燥などで溶媒を除去することにより得られる固体分散体に製剤化することができる。そのような固体分散体は、他の付加的な構成成分と混合して打錠して錠剤化するか、カプセルに充填してカプセル化することができる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明することのみを意図しており、本発明の範囲はこれらによって何ら制限されない。
【0048】
<試験例1:含有量試験>
製剤に含まれる薬物の含有量を試験するために、以下の試験方法を使用してHPLCで分析した。
【0049】
1)移動相溶液の製造
(1)緩衝液準備:1000mLの水に0.77gの酢酸アンモニウムを溶解した後、アンモニア溶液を使用して溶液のpHを6.8±0.05に調整した。
(2)緩衝液(1)とアセトニトリルを40:60(v/v)で混合し、孔径0.45μmの濾紙でろ過及び脱気した溶液を移動相として用いた。
【0050】
2)希釈液の製造
緩衝液(1)とアセトニトリルを30:70(v/v)で混合し、希釈液を得た。
【0051】
3)標準液の製造
ソラフェニブトシラート標準液30mgを100mLのフラスコに正確に入れて希釈液で十分に溶解し、標線に一致させた溶液を標準液(300μg/mL)とした。標準液(300μg/mL)1mLを正確に採取し、2mLの希釈液を加えて標準液(100μg/mL)とした。標準液(300μg/mL)1mLを正確に採取し、4mLの希釈液を加えて標準液(60μg/mL)とした。標準液(100μg/mL)1mLを正確に採取し、4mLの希釈液を加えて標準液(20μg/mL)とした。前記4つの標準液を使用して検量線を作成し、検液の含有量計算のために使用した。
【0052】
4)検液の製造
内容物にソラフェニブトシラートがよく溶解及び希釈されるようにメスフラスコと希釈液を使用して適切な濃度を製造し、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過した溶液を検液とした。
【0053】
5)操作及び計算
標準液と検液を以下の条件で適切な時間間隔でカラムに注入し、ピーク面積を計算して、錠剤中のソラフェニブトシラートの含有量(%)を計算した。
【0054】
[操作条件]
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長265nm)
カラム:Eclipse XDB-C18、4.6mm×150mm、5μm又は同等のカラム
流量:1.0mL/分
注入量:20μL
カラム温度:27℃
【0055】
<実施例1:添加剤スクリーニング>
ソラフェニブの水溶解度を高めるのに役立つ添加剤を見つけるために、100mgのソラフェニブトシラート(結晶形III)をマイクロチューブに加え、10mgの添加剤を加え、1mLのpH1.2緩衝液を加えた。37℃、24時間、1,100rpmで振盪した。その後、0.45μm孔径のシリンジフィルターでろ過し、HPLCで試験例1の方式に従って含有量分析を行った結果、溶解した薬物の量を以下のように確認した。
【0056】
【0057】
<実施例2:固体分散体の製造>
2.67gのソラフェニブトシラート(結晶形III)と5.34gのEudragit(登録商標)E100を150mLのEtOH(37℃)に溶解し、ロータリーエバポレーターを使用して減圧下で蒸留した。真空ポンプを使用して溶媒を完全に除去した。壁面に形成されたソラフェニブトシラートとEudragit(登録商標)Eの固体分散体(収率:65%)を得た。
【0058】
<実施例3:固体分散体の製造>
2.67gソラフェニブトシラート(結晶形III)と5.34gのEudragit(登録商標)E100を150mLのEtOHに溶解(37℃)し、噴霧乾燥して溶媒を除去した。形成されたソラフェニブトシラートとEudragit(登録商標)Eの固体分散体(収率:73%)を得た。
【0059】
<実施例4:錠剤の製造>
274gの微粉化ソラフェニブトシラート(結晶形III、平均2μm)と137gのEudragit(登録商標)E POを混合し、続いて30gの微結晶セルロース、45gのクロスカルメロース及び4.5gのステアリン酸マグネシウムを混合した。水溶解度及びバイオアベイラビリティが改善された錠剤を得るために、長軸16.4mm、短軸6.4mmのパンチを備えた単発式打錠機を使用して錠剤を打錠した。
【0060】
<試験例2:溶出試験>
実施例2で得られた固体分散体及び対照薬物NEXABA(登録商標)錠剤について、溶解試験は、韓国薬局方一般試験法溶出試験法のパドル法を用いて、50rpm、37℃でpH1.2の緩衝液900mL中で行った(ソラフェニブ200mgに相当)。分析は、試験例1のHPLC分析法と同じであったが、標準液の濃度は304μg/mLを測定することで製造した。
その結果を
図1に示した。実施例2の固体分散体は、対照薬物と比較して溶出が著しく改善されたことが分かる。