(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】医薬的特性が改善されたプロドラッグペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/605 20060101AFI20220328BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220328BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220328BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20220328BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
C12P21/02 Z
A61K47/65
A61K38/26
A61P3/08
(21)【出願番号】P 2019572117
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2018000838
(87)【国際公開番号】W WO2019002945
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-02-19
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518370390
【氏名又は名称】ユレカ・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
【氏名又は名称原語表記】UREKA SARL
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジメール,ロベール・アシュ
(72)【発明者】
【氏名】ギシャール,ジル
(72)【発明者】
【氏名】フレモー,ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】ブナン,クレール
(72)【発明者】
【氏名】グードロー,セバスチャン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-503473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288001(US,A1)
【文献】特表2010-536341(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049174(WO,A1)
【文献】特表2014-525901(JP,A)
【文献】国際公開第2007/056362(WO,A2)
【文献】特表2006-525235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
A61K 38/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性
および溶解
度からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩であって、前記プロドラッグペプチドが、以下の構造:
Z-pep
(式中、
pepは、グルカゴンまたはそのアナログである前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質であり;
Zは、in vivoで切断されて、pepを放出され、ここにおいてZは(Glu-Pro)
xまたは(Lys-Pro)
x(式中、Xは、1~10の整数である)の構造を
含み、
Zの少なくとも第1のアミノ酸が可溶性化合物で官能化されている)
を含む、プロドラッグペプチドまたはその塩。
【請求項2】
前記Zが、構造:(Lys-Pro)
xを
含む、請求項1に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項3】
前記Zが、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される、請求項1または2に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項4】
前記ZがKPである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項5】
Zの少なくとも2個のLysが、前記可溶性化合物で官能化されている、請求項2に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項6】
前記Zが、2個のアミノ酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項7】
前記可溶性化合物が、親水性である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項8】
Zの前記第1のアミノ酸が、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado、Ado-Ado-(Lys)
m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)
m、(Lys)
m-8Ado-8Ado、(Lys)
m、または(Lys-Pro)
m(式中、mは1~10の整数である)を含む可溶性化合物で官能化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項9】
Zの少なくとも2個のLysが、Ado、Ado-Ado、Ado-Ado-(Lys)
m、8Ado、8Ado-8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)
m、(Lys)
m-8Ado-8Ado、(Lys)
m、または(Lys-Pro)
m(式中、mは1~10の整数である)を含む可溶性化合物で官能化されている、請求項1~5、7または8のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドのC末端が、アミン改変されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項11】
前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質が、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を
含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項12】
有効量の請求項1~11のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチドと、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止する薬剤を製造するための請求項1~11のいずれか1項に記載のプロドラッグペプチドまたは請求項12に記載の医薬組成物の使用であって、前記プロドラッグペプチドが、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止するのに有効である、使用。
【請求項14】
親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩を調製する方法であって、
プロドラッグ部分を、前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質に付加するステップ
を含み、
前記プロドラッグ部分が、in vivoで切断されて、前記ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出し、
前記プロドラッグ部分が(Glu-Pro)
xまたは(Lys-Pro)
xの構造を
含み、
Xは、1~10の整数であり、
前記プロドラッグ部分の第1のアミノ酸が可溶性化合物で官能化されており、
前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質がグルカゴンまたはそのアナログである、方法。
【請求項15】
前記プロドラッグ部分が、構造:(Lys-Pro)
Xを
含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロドラッグ部分が、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記プロドラッグ部分がKPである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysが、前記可溶性化合物で官能化されている、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記プロドラッグ部分が、2個のアミノ酸を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項20】
前記可溶性化合物が、水溶性である、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記プロドラッグ部分の前記第1のアミノ酸が、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado、Ado-Ado-(Lys)
m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)
m、(Lys)
m-8Ado-8Ado、(Lys)
m、または(Lys-Pro)
m(式中、mは1~10の整数である)を含む可溶性化合物で官能化されている、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysが、Ado、Ado-Ado、Ado-Ado-(Lys)
m、8Ado、8Ado-8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)
m、(Lys)
m-8Ado-8Ado、(Lys)
m、または(Lys-Pro)
m(式中、mは1~10の整数である)を含む可溶性化合物で官能化されている、請求項14~18、20または21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質が、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を
含む、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドのC末端をアミド化するステップまたはペプチドのC末端をアミンで改変するステップをさらに含む、請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ZがKPである、請求項1に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項26】
ZのLysがイプシロン-N結合を介して前記可溶性化合物で官能化されている、請求項25に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項27】
前記可溶性化合物が12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado、Ado-Ado-(Lys)
m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)
m、(Lys)
m-8Ado-8Ado、(Lys)
m、または(Lys-Pro)
m(式中、mは1~10の整数である)を含む、請求項25に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項28】
前記可溶性化合物がKPである、請求項25に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項29】
前記親ペプチドまたはペプチド模倣物質が、配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)の配列と少なくとも
90%同一であるアミノ酸配列を
含む、請求項1に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項30】
ZがKPである、請求項
29に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項31】
Zのリシンがイプシロン-N結合を介して前記可溶性化合物で官能化されている、請求項29に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項32】
前記可溶性化合物が(Lys-Pro)m(mは3である)である、請求項30に記載のプロドラッグペプチド。
【請求項33】
プロドラッグが構造:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKPKPKP
(ここにおいて、K*は構造:
【化1】
で表される)を
含む、請求項1に記載のプロドラッグペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、「PRO-DRUG PEPTIDE WITH IMPROVED PHARMACEUTICAL PROPERTIES」の表題の2017年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/526,678号の優先権を主張し、これはあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による組込み
配列番号1~31を含有する、配列表のファイル名:1513195_131WO2_Sequence_Listing_26JUN2018_ST25.txt、サイズ:12.9KBの電子バージョンが、本明細書と共に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
背景
1.技術分野
本開示は、プロドラッグペプチド、その作製、および疾患を処置するためのその使用に関する。特に、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と、in vivoで切断されて親ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出する少なくとも2つのアミノ酸を含むプロドラッグ部分とを含むプロドラッグペプチドに関する。
【背景技術】
【0004】
2.背景情報
プロドラッグは、投与後に対象によって代謝され、医薬的に活性な化合物または薬物を形成する化合物である。プロドラッグの一般的な目的は、望ましくない特性を隠すことである。例えば、特に、局部投与後の刺激または疼痛、化学的不安定性、低い標的選択性、水または脂質膜中での低い溶解度、毒性、全身循環前代謝である。したがって、プロドラッグ改変は、特に、親化合物または薬物の吸着、分布、代謝、排出、および/または望ましくない毒性を最適化するように設計される。結果として、プロドラッグは、特に、治療指数を最適化する、毒性を低下させる、吸着を改善する、全身循環前代謝を低下させる、溶解度を改善する、および化学的安定性を改善するために使用される。
【0005】
プロドラッグを、2つの一般的なカテゴリー:I型およびII型プロドラッグに分類することができる。I型プロドラッグ(例えば、抗ウイルス性ヌクレオシドアナログ)は、細胞内で生物活性化されるプロドラッグであり、IA型は、その治療作用の細胞標的で代謝され、IB型は、代謝組織(例えば、肝臓)によって変換される。II型プロドラッグ(例えば、サリシン)は、細胞外で生物活性化され、IIA型は、胃腸液中で変換され、IIB型は、細胞外液区画(例えば、循環系)中で変換され、IIC型は、治療標的/細胞の近く、またはその内部で変換される。
【0006】
グルカゴンは、低い血糖値に応答して膵臓アルファ細胞によって産生され、それによって、グリコーゲン分解(すなわち、グリコーゲン[n]の、グルコース-6-リン酸およびグリコーゲン[n-1]への分解)および糖新生(すなわち、非炭水化物炭素基質からのグルコースの合成)を刺激し、グリコーゲン生成(すなわち、糖からのグリコーゲンの合成)を阻害する29アミノ酸のペプチドホルモンである。結果として、血糖が急速に増加する。
【0007】
インスリンの低い治療指数のため、インスリン依存性糖尿病は、血糖値が50mg/dlより下に低下し得る重症の低血糖症の周知の危険因子である。低血糖症(重症インスリン誘導性低血糖症など)のための標準的な処置は、グルカゴンの急性皮下投与である。しかしながら、グルカゴンは化学的安定性が低いため、グルカゴンは、投与直前に調製される凍結乾燥粉末中で供給される。さらに、グルカゴンは生理的pHで水溶解度が低いため、投与のための溶液は、水性希塩酸を用いて調製される。また、グリコーゲンは化学的に不安定であるため、希塩酸を用いて調製されたグルカゴンは、すぐに使用しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かくして、化学的安定性、水溶解度、治療指数、および吸着が増強された、ならびに毒性および全身循環前代謝が低下した治療剤を作製する方法が必要である。例えば、治療的介入としての使用のため、例えば、低血糖症のための、親ペプチドであるグルカゴンと比較して、生理的pHで化学的安定性および水溶解度が増強されたグルカゴンのプロドラッグが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本明細書は、本明細書に記載の化学的に改変されたペプチドが、親ペプチドまたはペプチド模倣物質(すなわち、非改変ペプチド)と比較して、少なくとも1つの生物学的特性(改善がその治療効果を増強する生物学的特性など)に関する改善を有するという驚くべき、かつ予想外の発見に基づく、治療組成物ならびにそれを作製および使用する方法を提供する。本明細書に記載の改変されたペプチドまたはペプチド模倣物質は、投与後に、in vivoで切断されて、親ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出するプロドラッグ部分を含む。記載されるペプチドおよび有効量のそれを含む組成物は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質の放出(例えば、低血糖と関連する疾患または障害を処置するためのグルカゴンまたはそのアナログの放出)によって処置、防止、または改善される疾患および障害の症状を処置する、防止する、および/または改善するのに有効である。したがって、ある特定のさらなる態様では、本開示は、低血糖と関連する疾患または障害の症状の処置、防止および/または改善のための、記載されるペプチドおよびそれを含む組成物を作製および使用する方法を提供する。
【0010】
かくして、ある態様では、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩(例えば、その医薬的塩)であって、プロドラッグペプチドが、以下の構造:
Zn-pep
(式中、pepは、親ペプチドまたはペプチド模倣物質であり;Zは、プロドラッグ部分、例えば、n個のアミノ酸のアミノ酸配列であり、Zは、in vivoで切断されて、pepを放出し;nは、2以上の整数のアミノ酸である)を含む、プロドラッグペプチドまたはその塩を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、Zは、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数である)を有する。
【0012】
ある特定の実施形態では、Zの少なくとも第1のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0013】
ある特定の実施形態では、Zの少なくとも2個のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0014】
他の実施形態では、Zは、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0015】
さらなる実施形態では、可溶性化合物は、親水性であるか、または水性溶液に可溶性である。
【0016】
さらなる実施形態では、Zは、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される。
【0017】
ある特定の実施形態では、Zの第1のアミノ酸は、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0018】
一部の実施形態では、Zの少なくとも2個のLysは、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0019】
特定の実施形態では、ペプチドのc末端は、アミン改変またはアミド化されている。
【0020】
別の実施形態では、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0021】
別の態様によれば、有効量の本開示の少なくとも1つのプロドラッグと、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物が提供される。ある特定のさらなる態様では、本明細書は、有効量の本開示の少なくとも1つのプロドラッグペプチドと、有効量の少なくとも1つのさらなる生物活性剤とを含む治療組成物を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の賦形剤または担体をさらに含む。
【0022】
さらに別の態様によれば、本開示は、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止する方法を提供する。方法は、有効量の本開示のプロドラッグペプチドまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含み、プロドラッグペプチドは、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止するのに有効である。
【0023】
さらなる態様によれば、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、生物学的特性または複数の特性(例えば、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性)が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩(例えば、その医薬的塩)を調製する方法を提供する。方法は、プロドラッグ部分が、in vivoで切断されて、ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出する、2個以上のアミノ酸を含むプロドラッグ部分を、親ペプチドまたはペプチド模倣物質に付加するステップ(例えば、当業者には公知の、または当業者に公知となる任意の方法によって、プロドラッグ部分およびペプチドまたはペプチド模倣物質を連続配列として合成するステップ)を含む。
【0024】
特定の実施形態では、プロドラッグ部分は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質のアミノ末端に位置する。他の実施形態では、プロドラッグ部分は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質のカルボキシル末端に位置する。
【0025】
一部の実施形態では、プロドラッグ部分は、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数である)を有する。
【0026】
ある特定の実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも第1のLysは、可溶性化合物で官能化されている。
【0027】
さらなる実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、可溶性化合物で官能化されている。
【0028】
特定の実施形態では、プロドラッグ部分は、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、可溶性化合物で官能化されている。
【0029】
他の実施形態では、可溶性化合物は、水溶性である。
【0030】
ある実施形態では、プロドラッグ部分は、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される。
【0031】
さらに他の実施形態では、プロドラッグ部分の第1のアミノ酸は、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0032】
一部の実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0033】
さらに他の実施形態では、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0034】
他の実施形態では、方法は、ペプチドのc末端をアミド化するステップをさらに含む。
【0035】
別の実施形態では、方法は、タンパク質のc末端をアミンで改変するステップをさらに含む。
【0036】
前記の一般的な有用性の範囲は、ほんの一例として与えられ、本開示の範囲および添付の特許請求の範囲に限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の組成物、方法、およびプロセスと関連するさらなる目的および利点を、本発明の特許請求の範囲、説明、および実施例を考慮すれば理解できるであろう。例えば、本発明の様々な態様および実施形態を、多くの組合せで使用することができ、それらは全て、本明細書によって明示的に企図される。これらのさらなる利点、目的および実施形態は、本発明の範囲内に明示的に含まれる。本発明の背景に光を当てるため、および特定の場合、実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書で使用される刊行物および他の材料は、参照により組み込まれる。
【0037】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する、添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】親ペプチドおよびそれを含むいくつかの例示的なプロドラッグを含む、ペプチド1~9を例示し、整列させる図である。
【
図2】Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lysを用いたLysの例示的官能化を示す図であり、LysがN末端にある場合、当業者であれば、水素が化学構造の左側の窒素に結合することを理解できる。
【
図3】8Ado-8Adoを用いたLysの例示的官能化を示す図であり、K
*がN末端にある場合、当業者であれば、水素が化学構造の左側の窒素に結合することを理解できる。
【
図4】Ado-Adoを用いたLysの例示的官能化を示す図であり、K
*がN末端にある場合、当業者であれば、水素が化学構造の左側の窒素に結合することを理解できる。
【
図5】室温で10日間にわたるPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中でのペプチド3(1mg/mL)の安定性を示す図である。
【
図6】室温で46日間にわたる水中でのペプチド4(1mg/mL)の安定性を示す図である。
【
図7】室温で18日間にわたる生理的血清中でのペプチド4(1mg/mL)の安定性を示す図である。
【
図8】4℃で7日間にわたる生理的血清中でのペプチド5(1mg/mL)の安定性を示す図である。
【
図9】室温で18日間にわたる生理的血清中でのペプチド5(1mg/mL)の安定性を示す図である。
【
図10】投与の30min前、次いで、注射後t=10分、20分、30分、45分、60分、および120分での血糖測定値(mg/dl)を示す図である。
*p<0.05;
**p<0.01:ボンフェローニ事後検定を用いた二元配置分散分析。
【
図11A】親ペプチドおよびそれを含むいくつかの例示的なプロドラッグを含む、ペプチド10~25を例示し、整列させる図である。
【
図11B】K*がN末端にある場合、当業者であれば、水素が化学構造の左側の窒素に結合することを理解できる、
図11Aに例示された改変されたリシンの化学構造を例示する図である。
【
図12】Wistarラットに、ビヒクルならびに化合物10、13、14および19を投与する30分前、注射後t=10、20、30、45、60および120分での血糖測定値(mg/dl)を示す図である(n=6)。
*p<0.05;
**p<0.01:ボンフェローニ事後検定を用いた二元配置分散分析。
【
図13】Wistarラットに、ビヒクルならびに化合物10、19、21および25を投与する前後、注射後t=2、5、30、60および120分での血糖測定値(mg/dl)を示す図である(n=3)。
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001:ボンフェローニ事後検定を用いた二元配置分散分析。
【
図14A】ペプチド10の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイル(10~100%;H
2O 0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図14B】ペプチド10の液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)スペクトルを示す図である。
【
図15A】ペプチド11のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図15B】ペプチド11のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図16A】ペプチド12のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図16B】ペプチド12のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図17A】ペプチド13のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図17B】ペプチド13のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図18A】ペプチド14のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図18B】ペプチド14のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図19A】ペプチド15のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図19B】ペプチド15のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図20A】ペプチド16のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図20B】ペプチド16のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図21A】ペプチド17のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図21B】ペプチド17のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図22A】ペプチド18のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図22B】ペプチド18のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図23A】ペプチド19のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図23B】ペプチド19のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図24A】ペプチド20のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図24B】ペプチド20のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図25A】ペプチド21のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図25B】ペプチド21のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図26A】ペプチド22のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図26B】ペプチド22のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図27A】ペプチド23のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図27B】ペプチド23のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図28A】ペプチド24のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図28B】ペプチド24のLC-MSスペクトルを示す図である。
【
図29A】ペプチド25のHPLCプロファイル(10~100%;H
2O 0.1%TFA中のCH
3CN 0.1%TFA、10min、C18)を示す図である。
【
図29B】ペプチド25のLC-MSスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
以下は、本発明の実施において当業者を援助するために提供される本発明の詳細な説明である。当業者であれば、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態における改変および変更を加えることができる。本明細書に記載のものと類似するか、または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を以下で説明する。別段の定義のない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本開示において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の限定であることを意図されるものではない。本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、図面および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0040】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、本文が別途明確に示さない限り、下限の単位の少数第1位までの、それぞれの介在する値、およびその記述された範囲中の任意の他の記述された値または介在する値が、本開示に包含されることが理解される。小さい方の範囲に独立に含まれていてもよいこれらの小さい方の範囲の上限および下限も、本開示に包含され、記述される範囲中の任意の具体的に排除される限界の影響下にある。記述される範囲が一方または両方の限界を含む場合、これらの含まれる限界の両方のいずれかを除く範囲も、本開示に含まれる。
【0041】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の特定のない限り、以下のものに帰する意味を有してもよい。しかしながら、本開示が属する技術分野の当業者によって公知であるか、または理解される他の意味も可能であり、本開示の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0042】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「and」および「the」は、冠詞の文法的目的語に対する複数の指示対象を含む(すなわち、1または1より多いまたは少なくとも1を指す)。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0043】
用語「約」は、数値または範囲と関連して本明細書で使用される場合、実際の限界および/または理論的限界に起因して当業界で認識および許容されるある特定のレベルの変動があるという事実を反映する。例えば、ある特定のデバイスが動作する、および/または測定値が取られる様式の固有の分散のため、小さい変動が許容される。上記によれば、語句「約」は通常、標準偏差または標準誤差内の値を包含するように使用される。
【0044】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、一部の場合、接続的に存在し、他の場合、選言的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」と共に列挙される複数の要素は、同じ様式で、すなわち、そのように結合された「1または複数」の要素と解釈されるべきである。「および/または」条項によって具体的に同定される要素以外の他の要素が、具体的に同定されるこれらの要素と関連するにしろ、関連しないにしろ、必要に応じて存在してもよい。かくして、非限定例として、「Aおよび/またはB」に対する参照は、「含む(comprising)」などの制約がない言語と共に使用される場合、一実施形態では、Aのみ(必要に応じて、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(必要に応じて、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方(必要に応じて、他の要素を含む)などを指してもよい。
【0045】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上で定義された通り、「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、少なくとも1だけでなく、1より多いものも含む、要素の数または一覧、必要に応じて、追加の列挙されない項目の含有と解釈されるべきである。「ただ1つの」または「正確に1つの」または特許請求の範囲で使用される場合の、「からなる」などの、それとは対照的に明確に示される用語だけが、要素の数または一覧の正確に1つの要素の含有を指すであろう。一般的には、本明細書で使用される用語「または」は、「いずれか」、「1つの」、「ただ1つの」または「正確に1つの」などの、排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すに過ぎないと解釈されるべきである。
【0046】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などの全ての移行句は、制約がない、すなわち、限定されないが、含むを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる」および「から本質的になる」だけが、それぞれ、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedure、Section 2111.03に記載されたように、閉鎖された、または半閉鎖された移行句であるべきである。
【0047】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1または複数の要素の一覧を参照する語句「少なくとも1」は、要素の一覧内に具体的に列挙されるありとあらゆる要素のうちの少なくとも1を必ずしも含まないが、要素の一覧中の要素の任意の組合せを排除しない、要素の一覧中のいずれか1または複数の要素から選択される少なくとも1の要素を意味すると解釈されるべきである。この定義はまた、具体的に同定される要素と関連するにしろ、関連しないにしろ、語句「少なくとも1」が指す要素の一覧内で具体的に同定される要素以外の要素が必要に応じて存在してもよいことを許容する。かくして、非限定例として、「AおよびBの少なくとも1」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1」または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1」)は、一実施形態では、Bが存在しない(必要に応じて、B以外の要素を含む)、必要に応じて、1より多くを含む、少なくとも1のA;別の実施形態では、Aが存在しない(必要に応じて、A以外の要素を含む)、必要に応じて、1より多くを含む、少なくとも1のB;さらに別の実施形態では、必要に応じて、1より多くを含む、少なくとも1のAおよび必要に応じて、1より多くを含む、少なくとも1のB(必要に応じて、他の要素を含む)などを指してもよい。
【0048】
また、1より多いステップまたは行為を含む本明細書に記載のある特定の方法では、方法のステップまたは行為の順序は、本文が別途指摘しない限り、方法のステップまたは行為が記載される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0049】
用語「同時投与」および「同時投与すること」または「組合せ療法」とは、治療剤が、同時に、ある程度、好ましくは、有効量で患者中に存在する限り、同時的投与(同時に2つ以上の治療剤の投与)と、時間を変えた投与(さらなる治療剤または複数の治療剤の投与のものとは異なる時間での1つまたは複数の治療剤の投与)との両方を指す。ある特定の好ましい態様では、本明細書に記載の1つまたは複数の本発明の化合物は、少なくとも1つのさらなる生物活性剤、例えば、グリコーゲン分解を刺激する、糖新生を刺激する、および/またはグリコーゲン生成を阻害する薬剤と共に同時投与される。特に好ましい態様では、化合物の同時投与は、抗血糖降下活性を含む、相乗的活性および/または療法をもたらす。
【0050】
別途指摘しない限り、本明細書で使用される用語「化合物」、「ペプチド」および「ペプチド模倣物質」とは、本明細書に開示される任意の特定の化合物を指し、互変異性体、位置異性体、幾何異性体、適用可能な場合、光学異性体(エナンチオマー)を含む立体異性体およびその他の立体異性体(ジアステレオマー)、ならびに文脈の中で適用可能な場合、その医薬的に許容される塩および誘導体(プロドラッグ形態を含む)を含む。文脈の中でのその使用の範囲内で、化合物という用語は一般には単一の化合物を指すが、開示される化合物の立体異性体、位置異性体および/または光学異性体(ラセミ混合物を含む)ならびに特定のエナンチオマーまたはエナンチオマーとして富化された混合物などの他の化合物を含んでもよい。この用語はまた、文脈の中で、化合物の活動部位への投与および送達を容易にするように改変されたプロドラッグ形態の化合物も指す。なお、本発明の化合物を説明する際に、特に、いくつもの置換基およびそれと関連する変数が記載される。当業者であれば、本明細書に記載される分子が、以下に一般的に記載されるような安定な化合物であることを理解できる。
【0051】
用語「誘導体」は、決して限定されないが、天然の化合物から、直接的に、改変によって、または部分的置換によって形成される、化学組成物、例えば、核酸、ヌクレオチド、ポリペプチドまたはアミノ酸を意味してもよい。用語「アナログ」は、決して限定されないが、天然の化合物と類似するが、同一ではない構造を有する化学組成物、例えば、核酸、ヌクレオチド、ポリペプチドまたはアミノ酸を意味してもよい。
【0052】
用語「有効量/用量」、「医薬的有効量/用量」、「医薬的有効量/用量」または「治療有効量/用量」は、決して限定されないが、状態、障害または疾患状態の少なくとも1つの症状の出現を防止する、阻害する、それを改善する、遅延させる、または処置する(症状を、ある程度、好ましくは、全て軽減する)のに十分な活性な医薬成分の量/用量を意味してもよい。有効量は、疾患の種類、使用される組成物、投与経路、処置される哺乳動物の種類、考慮される特定の哺乳動物の身体的特徴、併用薬剤、および医学界の当業者が認識する他の因子に依存する。一般に、1日あたり0.1mg/kg体重~1000mg/kg体重の量の活性成分が、薬剤の効力に応じて投与される。そのような化合物の毒性および治療効能を、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬的手順、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療有効な用量)によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、それをLD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用することができるが、感染していない細胞に対する損傷の可能性を最小化し、それによって副作用を低減するためには、そのような化合物を罹患した組織の部位に標的化する送達系を設計する際に注意を払うべきである。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を製剤化する際に使用することができる。そのような化合物の投薬量は、毒性が小さい、または毒性がないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、用いられる剤形および使用される投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。本開示の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量を、最初に細胞培養アッセイから見積もることができる。細胞培養物中で決定されるIC50(すなわち、症状の半数最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、用量を動物モデルにおいて決定することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルを、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0053】
用語「薬理学的組成物」、「治療組成物」、「治療製剤」または「医薬的に許容される製剤」は、決して限定されないが、その望ましい活性にとって最も好適な物理的位置への投与、例えば、全身投与にとって好適な形態にある、本開示によって提供される薬剤の有効な分布を可能にする組成物または製剤を意味してもよい。
【0054】
用語「医薬的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、決して限定されないが、動物、または必要に応じて、ヒトに投与された場合に、有害な、アレルギーまたは他の望ましくない反応をもたらさない実体および組成物を意味してもよい。
【0055】
用語「医薬的に許容される担体」または「薬理学的に許容される担体」は、決して限定されないが、医薬的投与と適合する、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味してもよい。好適な担体は、参照により本明細書に組み込まれる、当該分野における標準的な参考書である、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の好ましい例としては、限定されるものではないが、水、食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば、固定油を使用することもできる。医薬的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当業界で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物中でのその使用が企図される。また、補助活性化合物を組成物中に組み込むこともできる。
【0056】
用語「全身投与」とは、例えば、腸内または非経口である投与経路を指し、薬剤の全身分布をもたらし、全身吸収または血流中での薬物の蓄積、次いで、身体中にわたる分布をもたらす。好適な形態は、部分的には、使用または進入経路、例えば、経口、経皮、または注射に依存する。そのような形態は、組成物または製剤が標的細胞(すなわち、負に荷電したポリマーが送達されるのを望まれる細胞)に到達するのを妨げるべきではない。例えば、血流中に注入される薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。他の因子は当業界で公知であり、組成物または製剤がその効果を発揮するのを妨げる毒性および形態などの考慮を含む。全身吸収をもたらす投与経路としては、限定されるものではないが、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内が挙げられる。循環中への薬物の進入経路は、分子量または分子サイズの関数であることが示されている。本発明の化合物を含むリポソームまたは他の薬物担体の使用は、薬物を、例えば、網膜内皮系(RES)の組織などの、ある特定の組織型に潜在的に局在化させることができる。薬物と、リンパ球およびマクロファージなどの細胞の表面との会合を容易にし得るリポソーム製剤も有用である。
【0057】
用語「局部投与」とは、薬剤が、病変または疾患の部位に対して、適切である、または近位である、例えば、約10cm以内である部位に送達される投与経路を指す。
【0058】
用語「保存的変異」とは、コード配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変化させる、付加する、または欠失させる核酸の置換、欠失または付加を指し、核酸変化は、化学的に類似するアミノ酸の置換をもたらす。互いに保存的置換として働き得るアミノ酸としては、以下のもの:塩基性:アルギニン(R)、リシン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q);親水性:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);疎水性:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);硫黄含有:メチオニン(M)、システイン(C)が挙げられる。さらに、保存的変化によって異なる配列は、一般的には、相同である。
【0059】
「相同性」または「同一性」とは、2つ以上の核酸分子のヌクレオチド配列または2つ以上の核酸もしくはアミノ酸配列が、部分的または完全に同一であることを意味する。ある特定の実施形態では、相同な核酸またはアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の配列類似性または同一性を有する。
【0060】
「相同体」は、天然に存在するか、または関連配列を有する1つもしくは複数の核酸(もしくはそれから得られるアミノ酸)の人工合成によって、または関連核酸を産生するための1つもしくは複数の核酸(もしくはそれから得られるアミノ酸)の改変によって創出することができる。核酸(およびかくして、得られるアミノ酸配列)は、それらが共通の祖先配列(例えば、オルトログまたはパラログ)から天然に、または人工的に誘導される場合、相同である。2つの核酸間の相同性が明示的に記載されない場合、相同性は、2つ以上の配列間の核酸比較(アミノ酸配列を含む)によって推測することができる。配列がある程度の、例えば、一次アミノ酸構造レベルで約30%を超える配列類似性を示す場合、それらは共通の祖先を有すると結論付けられる。本開示のために、核酸配列は、配列が低ストリンジェンシー条件下で組換えおよび/またはハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に類似している場合、相同である。さらに、ポリペプチドは、それらの核酸配列が低ストリンジェンシー条件下で組換えまたはハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に類似しており、必要に応じて、それらが親ペプチドと類似する活性を示し、必要に応じて、それらが親ペプチドのアミノ酸配列、例えば、配列番号1または配列番号2の少なくとも一方に含まれるエピトープに特異的な抗体によって認識され得る(すなわち、それと交差反応し得る)場合、相同と見なされる。
【0061】
用語「細胞」は、決して限定されないが、その通常の生物学的意味を意味してもよく、多細胞生物全体を指すものではない。細胞は、例えば、in vivo、in vitroもしくはex vivo、例えば、細胞培養物中にあってもよく、または例えば、鳥類、植物ならびにヒト、ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、およびネコなどの哺乳動物を含む、多細胞生物中に存在してもよい。細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞もしくは植物細胞)であってもよい。
【0062】
用語「宿主細胞」は、決して限定されないが、異種核酸を担持させるために使用することができる、または異種核酸によってコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現する細胞を意味してもよい。宿主細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内には見出されない遺伝子、遺伝子が人工的手段によって改変され、細胞中に再導入される天然形態の細胞中に見出される遺伝子、または細胞から核酸を除去することなく人工的に改変された細胞にとって内因性である核酸を含有してもよい。宿主細胞は、真核性または原核性であってもよい。細菌の培養にとって必要な一般的な増殖条件を、BERGEY’S MANUAL OF SYSTEMATIC BACTERIOLOGY、第1巻、N.R.Krieg(編)、WilliamsおよびWilkins、Baltimore/London(1984)などの教科書に見出すことができる。「宿主細胞」はまた、内因性遺伝子またはプロモーターまたはその両方が、本発明の複合体の1つまたは複数のポリペプチド成分を産生するように改変されたものであってもよい。
【0063】
用語「患者」または「対象」は、本明細書を通じて、本発明による組成物を用いた、予防的処置を含む処置が提供される、動物、好ましくは、ヒトまたは家畜を記載するために使用される。ヒト患者などの特定の動物に特異的である感染、状態または疾患状態の処置に関して、患者という用語は、イヌもしくはネコなどの家畜またはウマ、ウシ、ヒツジなどの農業用動物を含む、その特定の動物を指す。一般に、本発明では、患者という用語は、別途記述しない限り、または用語の使用の文脈から暗示されない限り、ヒト患者を指す。
【0064】
用語「治療有効量または用量」は、それを必要とする対象において治療効果を達成することができる薬物の用量を含む。例えば、薬物の治療有効量は、疾患または障害、例えば、組織傷害または筋肉関連疾患もしくは障害と関連する1つまたは複数の症状を防止する、または緩和することができる量であってもよい。当業者であれば、公知の技術を使用して、正確な量を確認することができる(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(第1~3巻、1992);Lloyd、The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003、Gennaro(編)、Lippincott,Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0065】
キットは、本開示の少なくとも1つのプロドラッグペプチドまたは本開示の医薬組成物を含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。製品を、本開示の方法を実行するための単位としてプロモーション、配布、または販売することができる。さらに、本開示のキットは、好ましくは、好適な投与方法を記載する指示書を含有してもよい。そのようなキットは、患者が呈する疾患または障害(低血糖症または低血糖と関連する疾患もしくは障害など)の症状を処置または改善するために、例えば、臨床設定において従来通り使用することができる。
【0066】
本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0067】
開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、以下の参考文献は、当業者に、本発明において使用される多くの用語の一般的定義を提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker(編)、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHale & Marham、the Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。
【0068】
本明細書は、本明細書に記載の化学的に改変されたペプチドまたはペプチド模倣物質が、1つまたは複数の生物学的特性を改善したという驚くべき、予想外の発見に基づく、治療組成物およびその使用方法を提供する。特に、本開示のプロドラッグペプチドは、親ペプチドまたはペプチド模倣物質(すなわち、非改変ペプチド)と比較して、少なくとも1つの生物学的特性(改善がその治療効果を増強する生物学的特性など)の改善を含む。本開示の改変されたペプチド(すなわち、プロドラッグペプチド)は、投与後に、in vivoで切断されて、親ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出するプロドラッグ部分を含む。
【0069】
いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、アデノシンデアミナーゼ複合体化タンパク質2またはCD26(分化クラスター26)としても知られるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)によって、プロドラッグ形態から放出されるとの仮説が立てられる。すなわち、多くの細胞型の表面上に発現され、ポリペプチドのN末端からX-プロリンジペプチドを切断するセリンエキソペプチダーゼであるDDP4は、in vivoでプロドラッグ部分を切断して、親ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出すると考えられる。しかしながら、プロドラッグ形態からの親ペプチドまたはペプチド模倣物質の放出に、他の酵素または複数の酵素が、単独で、またはDDP4と共に関与するか、またはそれを容易にする可能性もある。
【0070】
薬理学的ペプチドまたはペプチド模倣物質は、それらを、特に、自己免疫疾患のための優れた治療剤にする、いくつかの有利な特性を示す。高度に最適化することができる、および一部の場合、一部のバイオ医薬品と比較して顕著に単純であり得る、および自動化できる、それらの合成および産生に加えて、医薬組成物の活性成分として選択されるペプチドまたはペプチド模倣物質は、多くのバイオ医薬品に関して依然として合理的である、それらの安定性およびロバスト性、容易な取り扱い、患者に投与しなければならない用量が比較的低いこと、ならびにそれらのコストを特徴とする。短いペプチドは、それ自体、免疫原性ではなく、慢性自己免疫疾患を有する患者の処置にとって別のかなりの利点を有する(SchallおよびMuller、2014)。
【0071】
本明細書は、本明細書に記載の化学的に改変されたペプチドまたはペプチド模倣物質が、親ペプチドまたはペプチド模倣物質の治療効果を増強する生物学的特性が改善されたプロドラッグを創出するという驚くべき、予想外の発見に基づく、治療組成物およびその使用方法を提供する。ある態様では、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩(例えば、その医薬的塩)であって、プロドラッグペプチドが、以下の構造:
Zn-pep
(式中、pepは、親ペプチドまたはペプチド模倣物質であり;Zは、プロドラッグ部分、例えば、n個のアミノ酸のアミノ酸配列であり、Z(プロドラッグ部分)は、in vivoで切断されて、pepを放出し;nは、2以上の整数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)のアミノ酸である)を含む、プロドラッグペプチドまたはその塩を提供する。
【0072】
プロドラッグ部分(Z)は、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)である)を有してもよい。例えば、Zは、Glu-Pro、Lys-Pro、Glu-Pro-Glu-Pro(配列番号30)、Lys-Pro-Lys-Pro(配列番号11)、Glu-Pro-Glu-Pro-Glu-Pro(配列番号31)、およびLys-Pro-Lys-Pro-Lys-Pro(配列番号12)であってもよい。他の実施形態では、Zは、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、本明細書に記載の可溶性化合物で官能化されている。本明細書に記載の任意の実施形態において、プロドラッグ部分の少なくとも第1のアミノ酸(例えば、Lys)(例えば、第1のアミノ酸、第3のアミノ酸、第5のアミノ酸、第7のアミノ酸、またはその組合せ、例えば、第1と第3のアミノ酸(例えば、第1と第2のLys);第1と第5のアミノ酸(例えば、第1と第3のLys);第1、第3、および第5のアミノ酸(例えば、第1、第2、および第3のLysなど)は、可溶性化合物で官能化されていてもよい。特定の実施形態では、Zの少なくとも1個(例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも4個)のLysは、本明細書に記載の可溶性化合物で官能化されている。
【0073】
可溶性化合物は、水溶性であってもよい。例えば、プロドラッグ部分は、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m(例えば、[Lys]6;配列番号13)、または(Pro-Lys)m(例えば、[Pro-Lys]3、配列番号29)(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物で官能化されていてもよい。一部の実施形態では、Zの少なくとも2個のLys(例えば、2、3、または4個)は、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m(例えば、[Lys]6;配列番号13)、または(Pro-Lys)m(例えば、[Pro-Lys]3、配列番号29)(式中、mは0~10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)である)を含んでもよい可溶性化合物で官能化されている。
【0074】
ペプチドを、c末端でアミン改変するか、またはペプチドのc末端をアミド化することができる。
【0075】
親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、ペプチドまたはペプチド模倣物質の治療効果を増強する少なくとも1つの生物学的特性を改善することを望む任意のペプチドまたはペプチド模倣物質であってもよい。例えば、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、グルカゴンと少なくとも60%同一である(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%、または100%同一である)アミノ酸配列を有してもよい。特定の実施形態では、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも60%同一である(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%、または100%同一である)アミノ酸配列を有する。
【0076】
別の態様によれば、本開示の少なくとも1つのプロドラッグペプチドと、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物が提供される。ある特定のさらなる態様では、本明細書は、本開示の少なくとも1つのプロドラッグペプチドと、少なくとも1つのさらなる生物活性剤とを含む治療組成物を提供する。例えば、親ペプチドがグルカゴンまたはそのペプチド模倣物質である場合、さらなる生物活性剤は、グリコーゲン分解を刺激する、糖新生を刺激する、および/またはグリコーゲン生成を阻害する任意の薬剤であってもよい。ある特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の賦形剤(例えば、医薬的に許容される賦形剤)または担体(例えば、医薬的に許容される担体)をさらに含む。
【0077】
さらに別の態様によれば、本開示は、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止する方法を提供する。方法は、プロドラッグペプチドが、グリコーゲンとの少なくとも60%の同一性を有する(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%、または100%同一である)アミノ酸配列を有する親ペプチドまたはペプチド模倣物質を含む、有効量の本開示のプロドラッグペプチドまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含む。例えば、ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列との少なくとも60%の同一性を有する(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%、または100%同一である)アミノ酸配列を含んでもよく、プロドラッグは、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患の処置または防止において有効である。
【0078】
さらなる態様によれば、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、生物学的特性または複数の特性(例えば、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性)が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩(例えば、その医薬的塩)を調製する方法を提供する。方法は、プロドラッグ部分が、in vivoで切断されて、ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出する2個以上のアミノ酸を含むプロドラッグ部分を、親ペプチドまたはペプチド模倣物質に付加するステップ(例えば、プロドラッグ部分が、親ペプチドまたはペプチド模倣物質のアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する場合、固相合成または液相合成によってプロドラッグペプチドを合成するステップ)を含む。
【0079】
一部の実施形態では、プロドラッグ部分は、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)である)を有する。例えば、プロドラッグ部分は、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択されてもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも第1のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。さらなる実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。特定の実施形態では、プロドラッグ部分は、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、可溶性化合物または部分で官能化されている。可溶性化合物または部分は、親水性であるか、または水性溶液中に可溶性であってよい。
【0081】
本明細書に記載の任意の実施形態において、プロドラッグ部分の第1のアミノ酸または第1のLysは、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されていてもよい。例えば、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)である)を含む可溶性化合物で官能化されていてもよい。
【0082】
当業者であれば、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、治療活性/効果を有する任意のペプチドまたはペプチド模倣物質であってもよいことを理解できるであろう。すなわち、本開示のプロドラッグ部分(Z)を、治療的に使用される任意のペプチドまたはペプチド模倣物質のアミノ末端またはカルボキシル末端上で使用することによって、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸収、および全身循環前代謝からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド模倣物質の少なくとも1つの生物学的特性を改善することができる。
【0083】
例えば、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも85%(例えば、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%)同一であるアミノ酸配列を有してもよい。
【0084】
方法は、ペプチドのc末端をアミド化するステップまたはタンパク質のc末端をアミンで改変するステップをさらに含んでもよい。
【0085】
本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかにおいて、本開示によって提供されるペプチドは、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、硫酸塩、アミノクロロハイドレート塩(amino chlorhydate salt)、ホウ化水素塩(borhydrate salt)、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸二水素塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)またはp-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)などの、当業者には公知の塩の形態で存在してもよい。この一覧は例として提供されるものであり、本発明に対する限定を意味するものではない。例えば、当業者であれば、彼の知識に従って、適切な塩を容易に決定することができる。
【0086】
当業者が理解できる任意の方法によって、本明細書に記載のプロドラッグペプチドを合成するのに有効である化学合成を実施することができる。例えば、プロドラッグペプチドを、必要なアミノ酸または分子を付加することによってポリマー化することができる。方法は、実施例のセクションに開示される。
【0087】
医薬組成物
別の態様では、本明細書は、有効量の本明細書に記載の1つまたは複数のペプチドと、賦形剤または担体とを含む組成物を提供する。かくして、さらなる実施形態では、本明細書は、医薬的に許容される担体をさらに含む、本明細書に記載の少なくとも1つのプロドラッグペプチド、または上記の組合せ生成物を含む医薬組成物も提供する。
【0088】
本明細書に記載のプロドラッグペプチド(本明細書では「活性化合物」とも呼ばれる)を、投与にとって好適な医薬組成物中に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、ペプチドと、医薬的に許容される担体とを含む。本明細書で使用される場合、用語「医薬的に許容される担体」は、医薬的投与と適合する、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当業界で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物中でのその使用が企図される。また、補助活性化合物(例えば、さらなる生物活性剤)を組成物中に組み込むこともできる。
【0089】
本明細書は、医薬組成物を調製するための方法を提供する。そのような方法は、医薬的に許容される担体を、本明細書に記載の少なくとも1つのプロドラッグペプチドと共に製剤化するステップを含む。そのような組成物は、上記のさらなる活性薬剤をさらに含んでもよい。かくして、本発明は、医薬的に許容される担体を、本明細書に記載の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、または5つ)のプロドラッグペプチド、および1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、または5つ)のさらなる活性化合物と共に製剤化することによって、医薬組成物を調製するための方法をさらに含む。
【0090】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、経鼻(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコール;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および等張性の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含んでもよい。pHを、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射筒または複数用量バイアルに封入することができる。
【0091】
注入可能な使用にとって好適な医薬組成物としては、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散体および滅菌注射溶液または分散体の即興的調製のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与については、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF;Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体であるべきである。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および菌類などの微生物の汚染作用に対して保護しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその好適な混合物を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散体の場合、必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止を、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸などによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含有させることが好ましい。組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含有させることによって、注射可能組成物の長期的吸収をもたらすことができる。
【0092】
必要に応じて、上に列挙された成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物(例えば、プロドラッグペプチド)を組み込んだ後、滅菌濾過を行うことによって、滅菌注射溶液を調製することができる。一般に、分散体は、活性化合物を、基本分散媒体を含有する滅菌ビヒクル中に組み込んだ後、上に列挙されたものに由来する必要な他の成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と、その予め滅菌濾過された溶液に由来するさらなる所望の成分との粉末を得る、減圧乾燥および凍結乾燥である。
【0093】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらを、ゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤中に圧縮することができる。経口治療剤投与のために、活性化合物を、賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物を、液体担体中の化合物を口内に適用し、さっと動かし、はき出す、または嚥下する、洗口液としての使用のための液体担体を使用して調製することもできる。
【0094】
吸入による投与のために、化合物は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する、加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0095】
また、全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものであってもよい。経粘膜または経皮投与のために、バリアを透過させるのに好適な浸透剤が、製剤中で使用される。そのような浸透剤は、当業界で一般に公知であり、例えば、経粘膜投与のための、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与を、鼻スプレーまたは坐剤の使用によって達成することができる。経粘膜投与のために、活性化合物は、当業界で一般に公知の軟膏剤、軟膏、ゲル、またはクリーム中で製剤化される。
【0096】
化合物を、直腸送達のために坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いる)、または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0097】
一実施形態では、活性化合物は、埋込み体およびマイクロカプセル送達系を含む、制御放出製剤などの、身体からの迅速な除去に対して化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製のための方法は、当業者には明らかであろう。材料を、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(モノクローナル抗体がその中またはその上に組み込まれたリポソームを含む)を、医薬的に許容される担体として使用することもできる。これらのものを、当業者には公知の、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法に従って調製することができる。
【0098】
投与の容易性および用量の均一性のために単位剤形中で経口または非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される場合、単位剤形とは、治療しようとする対象のための単一の用量として適した物理的に個別の単位を指す;それぞれの単位は、必要とされる医薬的担体と関連する所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形のための明細は、活性化合物の独特の特徴および達成しようとする特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのそのような活性化合物を組み合わせる当業界において固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
【0099】
本明細書に提供される方法のある特定の実施形態では、方法は、約100ng~約5mgの用量の本明細書に記載の治療剤または医薬組成物を投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、例えば、ヒトにおいて、本明細書に記載の医薬組成物は、担体としてマンニトールを含有してもよく、組成物は、1回の投与で、10μg~500μg、好ましくは、200μg投与される。
【0100】
ある特定のさらなる態様では、用量レジメンを、週に1~3回、治療ウィンドウについて必要とされる限り、毎週から4週毎に、かくして、数年にわたって、再現することができる。好ましい実施形態では、用量レジメンは、4週毎に1回の処置であるが、数年間にわたって年に2回、繰り返してもよい。投与の例は、12週にわたって、4週毎に、200μgのペプチドの1回の注射(すなわち、互いに4週ずつ間隔を空けた、3回の注射)である。処置を、6ヶ月毎の投与によって延長してもよい。
【0101】
好ましい医薬的に許容される担体は、例えば、キサンタンゴム、ローカストビーンガム、ガラクトース、他の糖類、オリゴ糖および/または多糖類、デンプン、デンプン断片、デキストリン、ブリティッシュガムおよびその混合物を含んでもよい。有利には、医薬的に許容される担体は、天然起源のものである。医薬的に許容される担体は、単糖類または二糖類から選択される不活性糖類希釈剤であってもよいか、またはそれをさらに含んでもよい。有利な糖類はマンニトールである。
【0102】
有利には、本発明は、リポソーム、もしくはナノ粒子の形態にある、または溶液の形態にある、上記で定義された医薬組成物に関する。有利な溶液は、1~15%、特に、約10%のマンニトールを含む溶液である。溶液は、等浸透圧であるべきである。
【0103】
本発明はまた、同時的、個別的、または逐次的使用のための、上記で定義された組合せ生成物を含む薬物に関する。
【0104】
治療方法
さらなる態様では、本明細書は、低血糖症または低血糖と関連する疾患もしくは障害の症状を処置する、防止する、および/または改善するための方法を提供する。方法は、有効量の本開示のプロドラッグペプチドまたは本開示の医薬組成物もしくは治療組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、ここで、前記組成物は、低血糖症または低血糖と関連する疾患もしくは障害の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、および/または改善するのに有効である。ある特定の実施形態では、疾患または障害は、インスリン誘導性低血糖症である。
【0105】
本明細書はまた、薬物としてのその使用のための、特に、低血糖症または低血糖と関連する疾患もしくは障害の処置のための、本明細書に記載のペプチドまたはペプチド模倣物質と、本明細書に記載のプロドラッグ部分とを含むプロドラッグペプチドも提供する。
【0106】
当業者であれば、本開示のプロドラッグペプチドまたはペプチド模倣物質を調製するいくつかの方法が存在することを理解できるであろう。例えば、当業者であれば、標準的なFmoc/Boc保護された固相ペプチド合成を使用することができる。したがって、リシンの側鎖上のアミンが官能化される場合、当業者であれば、それが最後のアミノ酸である場合、またはAllocリシンを使用する場合(このリシンが最後のアミノ酸ではない場合)、N末端リシンのアミンのFmoc/Boc保護基および最後のアミノ酸のN末端上のBocをスイッチすることができる。次いで、配列の末端にあるAllocを、Pd(o)を用いて除去し、アミンを官能化することができる。
実施例
【実施例1】
【0107】
ペプチド合成のための一般的手順。配列番号2~5、8~10、6および7にそれぞれ対応する、ペプチド1~9の合成を、以前に報告された手順に従って、カップリング試薬としてPyBopおよびDIEAを用いるFmoc固相戦略を使用するCEM Companyからの自動化ペプチド合成装置LibertyBlue上で行った。Merrifield,R.B.、J.Am.Chem.Soc.1963、85巻、2149~2154頁;Palasek S.A.、Cox Z.J.、Collins J.M.、J.Pept.Sci.2007;13巻、143~148頁;Douat-Casassus C、Pulka K、Claudon P、Guichard G、Org.Lett.2012、14巻、3130~3133頁。
【0108】
例示的ペプチドの溶解度分析。3mg/mLのペプチドまたはペプチド模倣物質(グルカゴンまたはそのアナログ)の溶液を、0.01M HCl溶液中で調製した。次いで、0.1mLのストック溶液を、HCl(0.01M)を用いて1mLに希釈し、ナノドロップUV分光計(Thermo Fischer CompanyからのNanoDrop 1000)を用いて、UV吸光度を測定した(280nmまで)。残りのストック溶液のpHを、Na2HPO4(0.1M)を使用してpH7に調整し、溶液を4℃で一晩静置した。次いで、溶液を3回遠心分離し(5min、4000min-1)、0.1mLの上清を取り出し、HCl溶液(0.01M)を用いて1mLに希釈した。最終的なUV吸光度を測定した。
【0109】
溶解度を、以下の計算式:
(最終吸光度/初期吸光度)×3mg/mL=溶解度(mg/mL)
によって評価した。
【0110】
【0111】
例示的ペプチドの安定性分析。1mg/mLのペプチドまたはペプチド模倣物質(グルカゴンまたはそのアナログ)の溶液を、水または生理的血清中で調製し、室温または4℃で保存した。試料を、勾配として10分で、水(+0.1%TFA v/v)中の10~100%のCH3CN(+0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)v/v)を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。HPLCカラム(EC 100/4 NUCLEODUR 100-3 C18ec)を、Macherey-Nagel Companyから購入した。
【0112】
ペプチド3、4および5は、長期間にわたって室温で良好な安定性を示した。水、PBS、および生理的血清中で、
図5~7、および
図9を参照されたい。
【0113】
例示的なグルカゴンに基づくペプチドのin vivoでの分析。18匹の動物(ラット、オス、8週齢)を、実験期間を通して、換気し富化された飼育ケージ(310×125×127mm3)中で飼育した。それらを、試験中に3匹の動物群において、通常の12時間の明周期(8:00PMに光を消す)で、22±2℃および50±10%の相対湿度にて飼育した。それらを、標準的な餌および水道水に5日間順応させた。次いで、3時間の絶食の後、動物を、静脈注射(i.v.)投与によって、グルカゴンまたはアナログ3、4および5(10nM/kg)で処置した。投与前ならびに10分、20分、30分、45分、60分、および120分で、血糖を測定した。
【0114】
例示的なペプチドは、グルカゴン対照、ならびに不活性ペプチドおよびビヒクル対照と比較して、処置の経過にわたって、血糖を上昇させるより良好な能力を示した。
【実施例2】
【0115】
ペプチド合成のための詳細な手順
A1:Rinkアミド(約200mg、0.5mmol/gを充填)またはSieber樹脂(約160mg、0.62mmol/gを充填)を、ジメチルホルムアルデヒド(DMF;3mL)中で30分間膨張させた。次いで、以前に報告された手順(Merrifield,R.B.、J.Am.Chem.Soc.1963、85巻、2149~2154頁;Palasek S.A.、Cox Z.J.、Collins J.M.、J.Pept.Sci.2007;13巻、143~148頁)に従って、カップリング試薬としてPyBop(樹脂量に対して5当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;樹脂量に対して10当量)を用いるFmoc固相戦略を使用して、自動化ペプチド合成装置(CEM CompanyからのLibertyBlue)を用いてペプチド合成を行った。
【0116】
A2:Wang樹脂(約220mg、0.4mmol/gを充填)を、DMF(3mL)中で30分間膨張させた。第1のアミノ酸(5当量)を、不活性雰囲気下で無水ジクロロメタン(DCM;3mL)中に溶解した。N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC;2.5当量)を添加し、混合物を0℃で20分間撹拌した後、DCMを濃縮し、DMFを添加した。混合物を、少量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)と共に、膨張したWang樹脂上にロードした。樹脂を室温で2時間、振とう(shacked)した後、濾過し、DMF、DCMおよびMeOHで3回洗浄した。次いで、ペプチドを、A1またはA2の手順に従って合成した。
【0117】
B:Alloc脱保護:樹脂を、DCM中で30分間膨張させた後、Pd(Ph3)4(0.25当量)およびフェニルシラン(10当量)を添加した。混合物を、室温で45分間撹拌した後、樹脂を濾過し、DCMで3回洗浄した。
【0118】
切断手順:
C1:合成の完了後、樹脂を、フリットを用いて注射筒に移し、DMFで3回、CH2Cl2で3回、およびEt2Oで3回洗浄した。樹脂からの切断を、2%トリイソプロピルシラン、5%フェノールおよび5%水を含む88%TFA(3mL)を使用して実施した。2時間後、樹脂を濾過し、廃棄した。ジエチルエーテルを添加して、オリゴマーを沈降させ、固体を磨砕し、濾過した。
【0119】
C2:合成の完了後、樹脂を、フリットを用いて注射筒に移し、DMFで3回、CH2Cl2で3回、およびEt2Oで3回洗浄した。樹脂からの切断を、2.5%トリイソプロピルシランおよび2.5%水を含む88%TFA(3mL)を使用して実施した。2時間後、樹脂を濾過し、廃棄した。ジエチルエーテルを添加して、オリゴマーを沈降させ、固体を磨砕し、濾過した。
【0120】
精製のための一般的手順。全てのペプチドを、200nmでのUV検出を用いて、4mL/minの流量で、Macherey-Nagel Nucleodur C18ecカラム(10×250mm、5μm)を使用するDionex U3000SD上でのセミ分取HPLCによって精製した。移動相は、0.1%(v/v)TFA-H2O(溶媒A)および0.1%(v/v)TFA-CH3CN(溶媒B)から構成されていた。
【0121】
分析のための一般的手順。配列番号1および配列番号14~28にそれぞれ対応する、ペプチド10~25を、200nmでのUV検出を用いて、1mL/minの流量で、Macherey-Nagel Nucleodur C18ecカラム(4×100mm、3μm)を使用するDionex U3000SD上での分析的RP-HPLCによって分析した。移動相は、0.1%(v/v)TFA-H2O(溶媒A)および0.1%(v/v)TFA-CH3CN(溶媒B)から構成されていた。電子スプレーイオン化飛行時間(ESI-TOF)質量分析装置(Agilent 6230 ESI)に結合した超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC;Agilent 1290 Infinity)上で、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を実行した。
【0122】
溶解度アッセイ。化合物(例えば、グルカゴンまたはそのアナログ)の溶液を、0.01M HCl溶液中で調製した。次いで、0.1mLのストック溶液を、HCl(0.01M)を用いて1mLに希釈し、NanoDrop UV分光計(Thermo Fischer CompanyからのNanoDrop 1000)を用いて、UV吸光度を測定した(280nmまで)。残りのストック溶液のpHを、Na2HPO4(0.1M)を使用してpH7に調整し、溶液を4℃で一晩静置した。次いで、溶液を3回遠心分離し(5min、4000min-1)、0.1mLの上清を取り出し、HCl溶液(0.01M)を用いて1mLに希釈した。最終的なUV吸光度を測定した。溶解度は、以下の計算式:
(最終吸光度/初期吸光度)×100=可溶性パーセント
によってアクセス可能であった。
【0123】
グルカゴンおよび例示的ペプチドの溶解度(%)を、表2に示す。表2のデータによって見られるように、例示的なグルカゴンアナログは、グルカゴンと比較して高い溶解度を有する。
【0124】
【0125】
安定性アッセイ。1mg/mLのペプチドまたはペプチド模倣物質(グルカゴンまたはそのアナログ)の溶液を、NaCl 0.9%水性溶液中で調製し、室温、または4℃、または37℃および/または50℃で保存した。試料を、200nmでのUV検出を用いて、1mL/minの流量で、Macherey-Nagel Nucleodur C18ecカラム(4×100mm、3μm)を使用するDionex U3000SD上でのRP-HPLCによって分析した。移動相は、0.1%(v/v)TFA-H2O(溶媒A)および0.1%(v/v)TFA-CH3CN(溶媒B)から構成されていた。様々な温度でのインキュベーション後に残存する例示的なペプチドまたはグルカゴンのパーセントを、表3に示す。
【0126】
【0127】
ラット試験。ラット(Wister Rat、オス、8週齢、n=6または3)を、実験期間を通して、換気し富化された飼育ケージ(310×125×127mm
3)中で飼育した。それらを、試験中に3匹の動物群において、通常の12時間の明周期(8:00PMに光を消す)で、22±2℃および50±10%の相対湿度にて飼育した。ラットを、標準的な餌および水道水に5日間順応させた。次いで、3時間の絶食の後、動物を、静脈注射(i.v.)経路によって、グルカゴン(10)またはアナログ13、14、19、21、および25(10nM/kg)で処置した。
図12および
図13に示されるように、投与前および様々な時間の後に、血糖を測定した。
図12および
図13に示されるように、グルカゴンアナログは、ラットにおける血糖値の増加によって示される通り、グルカゴンと比較して、より高いグリコーゲン破壊をもたらした。
【0128】
ペプチドの特性評価
ペプチド10:
HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-OH
ペプチド10を、Wang樹脂(196mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A2を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物10を、セミ分取HPLCによって精製した。1.88mgが得られた(収率0.54%)。HPLC:Rt=5.03min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3482.40):697.48[M+5H]5+、871.36[M+4H]4+、1161.82[M+3H]3+。
【0129】
ペプチド11:
HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
ペプチド11を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物11を、セミ分取HPLCによって精製した。1.59mgが得られた(収率0.45%)。HPLC:Rt=5.03min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3481.75):697.35[M+5H]5+、871.44[M+4H]4+、1161.59[M+3H]3+。
【0130】
ペプチド12:
KPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
ペプチド12を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物12を、セミ分取HPLCによって精製した。9.26mgが得られた(収率2.50%)。HPLC:Rt=5.06min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3688.65):615.77[M+6H]5+、738.73[M+5H]5+、923.17[M+4H]4+、1230.57[M+3H]3+。
【0131】
ペプチド13:
KPKPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
ペプチド13を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物13を、セミ分取HPLCによって精製した。16.0mgが得られた(収率4.1%)。HPLC:Rt=5.06min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3914.15):653.36[M+6H]6+、783.83[M+5H]5+、979.53[M+4H]4+。
【0132】
ペプチド14:
KPKPKPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
ペプチド14を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物14を、セミ分取HPLCによって精製した。8.0mgが得られた(収率1.9%)。HPLC:Rt=4.91min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4138.20):592.16[M+7H]7+、690.7[M+6H]6+、828.66[M+5H]5+、1035.60[M+4H]4+。
【0133】
ペプチド15:
KPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
ペプチド15を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物15を、セミ分取HPLCによって精製した。2.86mgが得られた(収率0.77%)。HPLC:Rt=5.01min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3706.93):618.82[M+6H]6+、742.39[M+5H]5+、927.73[M+4H]4+。
【0134】
ペプチド16:
KPKPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
ペプチド16を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物16を、セミ分取HPLCによって精製した。6.48mgが得られた(収率1.6%)。HPLC:Rt=4.94min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3932.1):656.35[M+6H]6+、787.42[M+5H]5+、984.02[M+4H]4+。
【0135】
ペプチド17:
KPKPKPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
ペプチド17を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物17を、セミ分取HPLCによって精製した。7.99mgが得られた(収率1.9%)。HPLC:Rt=4.93min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4157.22):594.89[M+7H]7+、693.87[M+6H]6+、832.45[M+5H]5+、1040.31[M+4H]4+。
【0136】
ペプチド18:
EPHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
ペプチド18を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物18を、セミ分取HPLCによって精製した。8.07mgが得られた(収率2.2%)。HPLC:Rt=5.04min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3689.19):738.8[M+5H]5+、923.27[M+4H]4+、1230.73[M+3H]3+。
【0137】
ペプチド19:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
(式中、K*は、KKKKKKで改変されたリシンである)
ペプチド19を、Sieber樹脂(160mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物19を、セミ分取HPLCによって精製した。17.15mgが得られた(収率3.8%)。HPLC:Rt=4.62min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4457.46):637.78[M+7H]7+、743.91[M+6H]6+、892.49[M+5H]5+、1115.36[M+4H]4+。
【0138】
ペプチド20:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
(式中、K*は、KKKKKKで改変されたリシンである)
ペプチド20を、Rink樹脂(227mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物20を、セミ分取HPLCによって精製した。1.9mgが得られた(収率0.4%)。HPLC:Rt=4.54min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4476.18):560.54[M+8H]8+、640.46[M+7H]7+、747.03[M+6H]6+、896.22[M+5H]5+、1120.00[M+4H]4+。
【0139】
ペプチド21:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-OH
(式中、K*は、KKKKKKで改変されたリシンである)
ペプチド21を、Wang樹脂(227mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A2を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物21を、セミ分取HPLCによって精製した。28.11mgが得られた(収率6.3%)。HPLC:Rt=4.63min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4477.14):640.36[M+7H]7+、746.93[M+6H]6+、896.14[M+5H]5+、1119.93[M+4H]4+。
【0140】
ペプチド22:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
(式中、K*は、8Ado8Adoで改変されたリシンである)
ペプチド22を、Sieber樹脂(227mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物22を、セミ分取HPLCによって精製した。1.9mgが得られた(収率0.4%)。HPLC:Rt=4.96min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 3978.06):644.01[M+6H]6+、796.63[M+5H]5+、995.57[M+4H]4+、1326.79[M+3H]3+。
【0141】
ペプチド23:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT-NH2
(式中、K*は、KKKKKK8Ado8Adoで改変されたリシンである)
ペプチド23を、Sieber樹脂(227mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C1を使用して切断した。最終生成物23を、セミ分取HPLCによって精製した。11.99mgが得られた(収率2.5%)。HPLC:Rt=4.78min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4748.44):594.30[M+8H]8+、679.07[M+7H]7+、792.09[M+5H]5+、950.3[M+4H]4+。
【0142】
ペプチド24:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-NH2
(式中、K*は、KPKPKPで改変されたリシンである)
ペプチド24を、Rink樹脂(227mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A1を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物24を、セミ分取HPLCによって精製した。5.0mgが得られた(収率1.1%)。HPLC:Rt=4.91min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4382.98):627.17[M+7H]7+、731.58[M+6H]6+、877.58[M+5H]5+、1096.75[M+4H]4+。
【0143】
ペプチド25:
K*PHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT-OH
(式中、K*は、KPKPKPで改変されたリシンである)
ペプチド25を、Wang樹脂(216mg、0.1mmol)から出発する一般的手順A2を使用して合成し、手順C2を使用して切断した。最終生成物25を、セミ分取HPLCによって精製した。7.02mgが得られた(収率1.6%)。HPLC:Rt=4.86min(10~100%;H2O 0.1%TFA中のCH3CN 0.1%TFA、10min、C18);LC-MS(m/z 4383.96):627.14[M+7H]7+、731.50[M+6H]6+、877.60[M+5H]5+、1096.76[M+4H]4+。
【0144】
特定の実施形態
ある態様によれば、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩であって、以下の構造:プロドラッグペプチドが、Zn-pep(式中、pepは、親ペプチドまたはペプチド模倣物質であり;Zは、n個のアミノ酸の配列であり、Zは、in vivoで切断されて、pepを放出し;nは、2以上の整数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)である)を含むプロドラッグペプチドまたはその塩を提供する。
【0145】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zは、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)である)を有する。
【0146】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zは、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される。
【0147】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zの少なくとも第1のLysは、可溶性化合物で官能化されている。
【0148】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zの少なくとも2個のLysは、可溶性化合物で官能化されている。
【0149】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zは、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、可溶性化合物で官能化されている。
【0150】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、可溶性化合物は、水溶性である。
【0151】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zの第1のアミノ酸は、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0152】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、Zの少なくとも2個のLysは、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0153】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、ペプチドのc末端は、アミン改変またはアミド化されている。
【0154】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0155】
別の態様によれば、本開示は、有効量の本開示のプロドラッグと、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0156】
さらに別の態様によれば、本開示は、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止する方法であって、有効量の本開示のプロドラッグペプチドまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含み、プロドラッグペプチドが、低血糖症または低血糖と関連する障害もしくは疾患を処置または防止するのに有効である、方法を提供する。
【0157】
さらなる態様によれば、本開示は、親ペプチドまたはペプチド模倣物質と比較して、治療指数、安定性、溶解度、毒性、吸着、および全身循環前代謝からなる群から選択される少なくとも1つの生物学的特性が改善されたプロドラッグペプチドまたはその塩を調製する方法を提供する。方法は、in vivoで切断されて、ペプチドまたはペプチド模倣物質を放出する、2個以上のアミノ酸を含むプロドラッグ部分を、親ペプチドまたはペプチド模倣物質に付加するステップを含む。
【0158】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分は、以下の構造:(Glu-Pro)mまたは(Lys-Pro)X(式中、Xは、1以上の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれより大きい)である)を有する。
【0159】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分は、EP、KP、EPEP、KPKP、EPEPEP、およびKPKPKPからなる群から選択される。
【0160】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも第1のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0161】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0162】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分は、2個のアミノ酸を含み、第1のアミノ酸は、可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0163】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、可溶性化合物は、親水性(すなわち、水性溶液中に可溶性)である。
【0164】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分の第1のアミノ酸は、12-アミノドデカン酸(Ado)、Ado-Ado-(Lys)m、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(8Ado)、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0165】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、プロドラッグ部分の少なくとも2個のLysは、Ado、Ado-Ado-(Lys)m、8Ado、8Ado-8Ado-(Lys)m、(Lys)m、または(Pro-Lys)m(式中、mは0~10の整数である)を含む可溶性化合物または部分で官能化されている。
【0166】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、ペプチドのc末端は、アミン改変またはアミド化されている。
【0167】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、親ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)および配列番号2(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLLNT)からなる群から選択される配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0168】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号3~10および配列番号11~25から選択されるペプチドを含むか、またはそのペプチドである。
【0169】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣物質は、配列番号2~9および配列番号11~25を含むか、またはそれから選択される。
【0170】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、そのような実施形態は、ほんの一例として提供されることが理解されるであろう。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、いくつもの変更、変化および置換を想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内にあるものとして全てのそのような変更を包含することが意図される。
【0171】
本出願を通じて引用された、全ての参考文献、特許、係属中の特許出願および公開された特許の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0172】
当業者であれば、日常的な実験を超えないものを使用して、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。本明細書に記載の詳細な実施例および実施形態は、例示目的でのみ、例として与えられるものであり、本発明を限定するものと決して考えられるものではないことが理解される。それを考慮した様々な改変または変化が、当業者に対して提言され、本出願の精神および範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。例えば、成分の相対量を変化させて、望ましい効果を最適化し、さらなる成分を追加し、および/または類似する成分を、記載された1つもしくは複数の成分に置換することができる。本発明の系、方法、およびプロセスと関連するさらなる有利な特徴および機能は、添付の特許請求の範囲から明らかであろう。さらに、当業者であれば、日常的な実験を超えないものを使用して、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【配列表】