(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20220328BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01B69/00 303F
(21)【出願番号】P 2020100575
(22)【出願日】2020-06-10
(62)【分割の表示】P 2017071653の分割
【原出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
【審査官】橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173827(JP,A)
【文献】特開2002-182746(JP,A)
【文献】特開2005-195536(JP,A)
【文献】特開2019-114138(JP,A)
【文献】特開2011-155938(JP,A)
【文献】特開2015-112056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置により取得される測位情報及び作業経路を基に
少なくとも自動
操舵を含む運転支援を実行する作業車両との通信により
、前記作業車両の駆動に関連する情報を作業履歴情報として記憶するサーバと、
前記作業車両と通信可能な端末装置と、を備え、
前記サーバは、作業領域を識別する作業領域識別情報及び作業車両を識別する作業車両識別情報と関連付けて、オペレータによる運転時の複数の作業経路に関する情報を作業履歴情報として記憶し、外部から作業領域識別情報及び作業車両識別情報を受信すると、関連する作業履歴情報を前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、前記サーバから受信した作業履歴情報の中の複数の作業経路情報をオペレータ毎に表示する表示部と、表示された前記複数の作業経路情報から一つを選択作業経路情報として選択する経路選択部と、を備え、
前記端末装置は、選択作業経路情報を前記作業車両の制御部に送信して、前記選択作業経路情報を基に前記作業車両に
運転支援を実行させることを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記作業履歴情報には、各オペレータの熟練度、前記複数の作業経路情報の各々を基に前記作業車両が作業を実行した際に要する作業時間及び燃費、並びに、作業経路情報を
運転支援に使用した使用頻度の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の運転支援システム。
【請求項3】
測位装置により取得される測位情報及び作業経路を基に
運転支援を実行する作業車両と、該作業車両と通信可能な端末装置と、を備え、
前記端末装置は、同一作業領域でオペレータが過去に作業走行した際の複数の作業経路をオペレータ毎に表示する表示部と、前記複数の作業経路から一つを選択作業経路として選択する経路選択部と、を備え、
前記作業車両の制御部にて、前記選択作業経路を基に前記作業車両に
運転支援を実行させることを特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
前記表示部に、前記複数の作業経路と共に、各オペレータの熟練度、前記複数の作業経路の各々を基に前記作業車両が作業を実行した際に要する作業時間及び燃費、並びに、作業経路を
運転支援に使用した使用頻度の少なくとも1つを表示することを特徴とする請求項3記載の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータに対して運転支援情報を提供する農作業車両の運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場での農作業を効率よく簡便に行うため、圃場内での農業機械による作業内容をデータ化し、農業機械に設置した収集装置で作業内容を収集する圃場データ収集システムが提案されている(特許文献1参照)。また、遠隔サーバに作業領域に対して登録された作業計画を利用する生産管理システムが提案されている(特許文献2参照)。更に、圃場内において作業効率の高い作業経路を設定し、設定した作業経路に沿って自動走行を実行させる運転支援ユニットを備える圃場作業機が提案されている(特許文献3参照)。熟練者の作業状態の映像をアドバイスなどと共に記録し、再生時に熟練者の操作技術を把握しやすくした映像表示システムが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-210692号公報
【文献】特開2016-076123号公報
【文献】特開2015-112071号公報
【文献】特開2013-172193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2及び4のシステムは、農作業車両の走行部や作業部を制御するための制御データを収集するものではないため、農作業車両の運転支援に利用するには十分ではない。また、特許文献3の運転支援ユニットは、圃場及び農作業機械の情報に基づいて作業経路を算出するものであるものの、実作業に基づくデータではない理想データであるため、熟練者による作業経路と大きく異なる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、熟練者に近い運転が可能となる農作業車両の運転支援システムを提供することを技術的課題としている。
【0006】
本発明は、測位装置により取得される測位情報及び作業経路を基に自動運転を実行する作業車両との通信により前記作業車両の駆動に関連する情報を作業履歴情報として記憶するサーバと、前記作業車両と通信可能な端末装置とを備えた運転支援システムであって、
前記サーバは、作業領域を識別する作業領域識別情報及び作業車両を識別する作業車両
識別情報と関連付けて、自動運転時の複数の作業経路に関する情報を作業履歴情報として
記憶し、外部から作業領域識別情報及び作業車両識別情報を受信すると、関連する作業履
歴情報を前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、前記サーバから受信した作業履歴情報を表示する表示部と、表示さ
れた作業履歴情報の中の複数の作業経路情報から一つを選択作業経路情報として選択する
経路選択部を備え、
前記端末装置は、選択作業経路情報を前記作業車両の制御部に送信して、選択走行経路
情報を基に前記作業車両に自動運転を実行させるものである。
【0007】
上記運転支援システムにおいて、前記作業履歴情報には、前記複数の作業経路情報の各々を基に前記作業車両が自動運転にて作業を実行した際に要した作業時間及び燃費、作業経路情報を自動運転に使用した使用頻度の少なくとも1つを含むものとしてもよい。
【0008】
また、本発明は、測位装置により取得される測位情報及び作業経路を基に自動運転を実
行する作業車両と、該作業車両と通信可能な端末装置とを備えた運転支援システムであっ
て、端末装置は、同一作業領域で過去に作業走行した際の複数の作業経路を表示する表示
部と、複数の作業経路から一つを選択作業経路として選択する経路選択部を備え、前記作
業車両の制御部にて、選択走行経路を基に前記作業車両に自動運転を実行させるものであ
ってもよい。
【0009】
上記運転支援システムにおいて、前記表示部には、前記複数の作業経路の表示と共に、前記複数の作業経路の各々を基に前記作業車両が作業しつつ走行した際に要した作業時間及び燃費、使用頻度の少なくとも1つを同一画面に表示するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、農作業車両との通信により農作業車両の駆動状態を作業履歴情報として記憶するサーバは、作業領域識別子及び作業者識別子と関連付けて作業履歴情報を記憶しており、農作業車両の作業領域において農作業車両と通信可能な端末装置は、サーバから作業履歴情報を受信すると、作業者識別子に基づいて作業者ごとの作業履歴を表示するので、熟練者の作業履歴に沿って作業を実施することで、熟練者に近い運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における運転支援システムの構成を示す全体図である。
【
図2】
図1の運転支援システムにおける農作業車両であるトラクタの側面図である。
【
図5】ガイド走行の開始のための認証動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】端末装置における作業領域の選択画面を示す図である。
【
図7】端末装置における作業機の選択画面を示す図である。
【
図8】端末装置におけるガイド用の作業履歴の選択画面を示す図である。
【
図9】トラクタにおける運転支援動作を示すフローチャートである。
【
図10】ガイド走行時の通信動作を示すタイミングチャートである。
【
図11】運転支援情報における各要素の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<運転支援システム> 以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず始めに、本発明に係る農作業車両の一例であるトラクタの運転を支援する運転支援システムについて、
図1~
図4を参照して以下に説明する。
【0013】
図1に示す如く、本実施形態の運転支援システムでは、トラクタ1に搭乗するオペレータにより操作される端末装置70が、圃場(作業領域)H1内のトラクタ1と無線通信を実行する。トラクタ1は、測位衛星63からの信号を受けることで、自機器の位置(緯度・経度)を認識する。トラクタ1は、電話回線網などによる通信ネットワーク網N1を通じて、管理センターC1に据え付けられているサーバ100と通信し、トラクタ1の駆動情報を、位置情報(測位情報)や時刻情報と共に、サーバ100に送信する。サーバ100は、トラクタ1の駆動情報を位置情報及び時刻情報と共に蓄積し、作業履歴情報として記憶する。
【0014】
圃場H1近傍には、基準局(可搬型基準局)60が設置されており、基準局60は、設置位置である基準点となる位置情報を備えており、測位衛星63からの信号(以下、「衛星信号」と呼ぶ)を測位アンテナ61で直接的に受信するとともに、無線通信アンテナ64でトラクタ1で受信した測位衛星63からの信号(以下、「車両信号」と呼ぶ)を間接的に受信する。
【0015】
基準局60は、基準局通信装置62で、衛星信号及び車両信号から位置補正情報をRTK測位法などにより算出し、無線通信アンテナ64を通じてトラクタ1に送信する。トラクタ1は、測位アンテナ6(
図2参照)にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
【0016】
圃場H1内において、端末装置70は、通信ネットワーク網N1に通信接続することなく、トラクタ1と無線通信を行い、トラクタ1の駆動情報を、位置情報及び時刻情報と共に受信し、作業履歴情報として記憶する。端末装置70は、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどの携帯可能な端末装置で構成されており、無線又は有線によりトラクタ1と通信接続する。なお、本実施形態では、端末装置70として、タッチパネルを備えるタブレット端末が利用されるものとする。
【0017】
オペレータの事務所O1内において、端末装置70は、ONU(Optical Network Unit)又はモデムなどを介して通信ネットワーク網N1と通信接続されたルータなどのアクセスポイント90と通信接続する。端末装置70は、事務所O1内のアクセスポイント90と通信接続することで、通信ネットワーク網N1を介してサーバ100と通信可能となる。そして、端末装置70は、サーバ100と通信可能な状態となる。既に記憶しているトラクタ1の作業履歴情報をサーバ100に送信する。
【0018】
サーバ100は、端末装置70からの作業履歴情報(以下、「追加作業履歴情報」と呼ぶ)を受信すると、既にトラクタ1から受信して記憶している作業履歴情報(以下、「基本作業履歴情報」と呼ぶ)を読み出す。そして、サーバ100は、基本作業履歴情報と追加作業履歴情報とを照合することで、基本作業履歴情報に追加作業履歴情報を追加した更新作業履歴情報を生成し、操作したオペレータの名前やトラクタ1の機種などと共に記憶する。
【0019】
<トラクタ> 次いで、トラクタ1について、
図2~
図4を参照して以下に説明する。
図2及び
図3に示すように、トラクタ1は、圃場H1を運転支援する機体2を備える。機体2には、作業機3が着脱可能に備えられる。当該作業機3は農作業に用いられる。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して機体2に装着することができる。機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。トラクタ1の機体である機体2は、その前部が左右一対の前輪7,7で支持され、その後部が左右一対の後輪8,8で支持されている。前輪7,7及び後輪8,8が走行部を構成している。
【0020】
機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
【0021】
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル12と、オペレータが座ることが可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、農業用作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
【0022】
図示は省略するが、上記の操作装置としては、例えばモニタ装置、スロットルレバー、主変速レバー、昇降レバー、PTOスイッチ、PTO変速レバー及び複数の油圧変速レバー等が挙げられる。これら操作装置は、座席13の近傍又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
【0023】
モニタ装置は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバーは、エンジン10の回転速度を設定するものである。主変速レバーは、ミッションケース22の変速比を変更操作するものである。昇降レバーは、機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するものである。PTOスイッチは、ミッションケース22の後端側から外向きに突出したPTO軸(動力取出軸)への動力伝達を継断操作するものである。すなわち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止する。PTO変速レバーは、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバーは、油圧外部取出バルブを切換操作するものである。
【0024】
図1に示すように、機体2の下部には、その骨組を構成するシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、ミッションケース22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
【0025】
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。ミッションケース22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、ミッションケース22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、ミッションケース22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
【0026】
図4に示すように、トラクタ1は、機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)を制御するための制御部として、車両バス回線18を介して相互に通信可能としたエンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17を備える。エンジン制御装置15の出力側が、エンジン5に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されている。一方、エンジン制御装置15の入力側が、エンジン5の回転速度を検出する回転速度センサ31などと電気的に接続している。
【0027】
本機制御装置16の出力側が、エンジン5からの動力を変速させる油圧式変速装置などを含む変速装置42や、リアアクスル24における左右の後輪8への動力伝達に制動をかける左右のブレーキ装置26などと電気的に接続されている。一方、本機制御装置16の入力側が、後輪8の回転速度を検出する車速センサ32、機体2の傾斜角及び傾斜角速度を検出する傾斜角センサ33などと電気的に接続されている。また、作業機制御装置17の出力側が、作業機昇降アクチュエータ44と電気的に接続されるとともに、作業機制御装置17の入力側が、作業機3の姿勢や動作状態などを検出する作業機センサ34と電気的に接続される。
【0028】
また、トラクタ1は、車両バス回線18と接続した車両搭載端末装置19を備えており、車両搭載端末装置19は、無線電話回線などを介して通信ネットワーク網N1に接続できる。すなわち、トラクタ1は車両搭載端末装置19で通信ネットワーク網N1と通信接続することにより、管理センターC1のサーバ100と通信可能となる。
【0029】
コモンレール装置41は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブがエンジン制御装置15で開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置41に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。
【0030】
変速装置42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、ミッションケース22に備えられている。変速装置42を本機制御装置16により制御して斜板の角度を適宜に調整することにより、ミッションケース22の変速比を所望の変速比にすることができる。
【0031】
昇降アクチュエータ44は、例えば作業機3を機体2に連結している三点リンク機構を動作させることにより、作業機3を退避位置(農作業を行わない位置)又は作業位置(農作業を行う位置)の何れかに上げ下げするものである。昇降アクチュエータ44を作業機制御装置17により制御して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、例えば圃場領域の所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。
【0032】
上述のような制御装置15~17を備えるトラクタ1は、キャビン11内に搭乗したオペレータの各種操作に基づき、制御装置15~17が車両バス回線18を介して相互に通信して、トラクタ1の各部(機体
2、作業機3等)を制御することで、圃場内を走行しながら農作業を実行可能に構成されている。加えて、実施形態のトラクタ1は、オペレータの運転操作を、端末装置70でオペレータにより選択された熟練者の作業履歴(運転支援情報)に基づいて運転支援することが可能となっている。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、このトラクタ1は運転支援を可能とするための運転支援制御装置51等の各種の構成が追加されている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の機体)の位置情報を取得するために必要な測位アンテナ6等の各種の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場H1上を運転支援することが可能となっている。
【0034】
次に、運転支援のためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、
図2~
図4に示すように、運転支援制御装置51、操舵制御装置52、測位測量装置53、無線通信ルータ(小電力データ通信装置)54、操舵アクチュエータ43、測位アンテナ6、及び無線通信アンテナユニット48等を備える。
【0035】
運転支援制御装置51及び操舵制御装置52は、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと相互に通信可能に構成されている。また、運転支援制御装置51は、車両バス回線18による操縦用通信系統とは別系統となる運転支援用通信系統における運転支援バス回線56を介して、測位測量装置53及び無線通信ルータ54それぞれと相互通信可能となっている。
【0036】
操舵アクチュエータ43は、例えば、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリング軸)の中途部に設けられ、ステアリングハンドル12の回動角度(操舵角)を調整するものである。運転支援情報で定められた経路をトラクタ1が走行する場合、操舵制御装置52は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を算出し、算出した回動角度でステアリングハンドル12が回動するように操舵アクチュエータ43を制御する。また、操舵制御装置52は操舵角センサ35からステアリングハンドル12の回転角度の検出信号を受けるとともに、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、本機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと通信することで、トラクタ1の車速に応じた操舵を実行できる。
【0037】
測位アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。測位アンテナ6は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位アンテナ6で受信された信号は、測位測量装置53に入力されて、測位測量装置53でトラクタ1(厳密には、測位アンテナ6)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該測位測量装置53で算出された位置情報は、運転支援制御装置51により取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
【0038】
測位測量装置53は、無線通信アンテナユニット48における第1無線通信アンテナ48aと電気的に接続しており、特定小電力無線による第1無線通信ネットワーク(例えば、920MHz帯の無線通信ネットワーク)を通じて、後述する基準局(可搬型基準局)60と通信を行う。無線通信アンテナユニット48は、キャビン11における屋根14の上面に配置されている。測位測量装置53は、第1無線通信アンテナ48aを介して、圃場近接位置に設置された基準局60から補正情報(測位補正情報)を受信することによりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
【0039】
本実施形態では、例えば、RTK測位を適用しており、移動局側となるトラクタ1に測位アンテナ6を備えるのに加えて、基準局測位アンテナ61を備えた基準局60が備えられている。基準局60は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局60の設置位置となる基準点の位置情報は予め設定されている。基準局60には、トラクタ1の測位測量装置53及び第1無線通信アンテナ48aによる通信装置との間で構築される第1無線通信ネットワークを介して通信可能な基準局通信装置62が備えられている。
【0040】
RTK測位では、基準点に設置された基準局60と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1の測位アンテナ6との両方で測位衛星63からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局60では、測位衛星63から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局通信装置62からトラクタ1の第1無線通信アンテナ48aに補正情報を送信している。トラクタ1(移動局に相当する)の測位測量装置53は、測位アンテナ6にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
【0041】
なお、本実施形態ではGNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムを利用しているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。GNSS-RTKは、位置のわかっている基準局の情報に基づいて、補正して精度を高めた測位方式で、基準局からの情報の配信方法の違いで複数の方式が存在する。本発明はGNSS-RTK方式には依存しないので、本実施例では詳細は割愛する。
【0042】
また、測位測量装置53は、衛星測位によるトラクタ1(機体2)の位置情報だけでなく、慣性測量による前後左右の傾斜角情報を計測可能になっている。測位測量装置53で計測された傾斜角情報は、運転支援制御装置51により位置情報(緯度・経度情報)と対応付けた状態で取得されて、トラクタ1の制御に利用される。なお、測位測量装置53は、圃場面に対する測位アンテナ6の高さ位置、ひいてはトラクタ1(機体2)の車高を計測することも可能である。
【0043】
無線通信アンテナユニット48は、トラクタ1のキャビン11の屋根14の上面に配置されており、周波数帯域の異なる第1及び第2無線通信ネットワークと通信接続する第1及び第2無線通信アンテナ48a,48bを備えている。第1無線通信ネットワークは、基準局60による測位補正情報を通信させるべく、例えば、データ伝送速度の速い920MHz帯の特定小電力無線などで構築される。第2無線通信ネットワークは、画像データなどのデータ容量の多いデータを高速で通信でさせるべく、例えば、2.4GHz帯の小電力データ通信システムなどで構築される。
【0044】
第1無線通信アンテナ48aは、測位測量装置53と電気的に接続しており、第2無線通信アンテナ48bは、無線通信ルータ54と電気的に接続している。第2無線通信アンテナ48bと接続された無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部のオペレータにより操作される画像表示可能な端末装置70と通信を行う。無線通信ルータ54は、端末装置70からの運転支援信号を受信し、運転支援バス回線56を介して運転支援制御装置51に送信する。
【0045】
端末装置70は、具体的には、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、端末装置70のタッチパネルに表示された情報(例えば、運転支援を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認することができる。また、オペレータは、端末装置70を操作して、トラクタ1での運転支援動作を実現させるための運転支援情報を選択して、トラクタ1の運転支援制御装置51に送信する。
【0046】
運転支援制御装置51は、端末装置70により生成された作業ルートとトラクタ1の位置情報とを比較し、トラクタ1を作業ルートに沿って所定の作業を行わせながら所定の走行速度にて走行させるために、トラクタ1の操舵角、目標のエンジン回転数や変速比等を算出して、車両バス回線18を通じて、各制御装置15~17,52と通信する。トラクタ1は、選択した運転支援情報に基づく作業ルートに沿った走行動作とともに、作業機3による最適な農作業動作を実現できるように、無線通信ルータ54から端末装置70に操作ガイド情報が送信されて、端末装置70で音声や画像表示により必要な操作をオペレータに通知する。
【0047】
本実施形態では、操作ガイドを端末装置70で通知するものとしたが、トラクタ1に具備されるモニタ装置やブザーなどで通知するものとしても構わないし、操舵制御装置52により操舵アクチュエータ43を駆動させて、ステアリングハンドル12を適切な操舵角で回転させるなどしても構わない。
【0048】
なお、トラクタ1が運転支援する圃場領域(走行領域)内の経路を、以下の説明において「作業ルート」と称する場合がある。また、圃場領域(走行領域)においてトラクタ1の作業機3による農作業の対象となる領域(作業領域)は、圃場領域の全体から枕地及び余裕代を除いた領域として定められ、オペレータ等が後述の登録点の登録作業を実行したときにこれら登録点とトラクタ1の作業幅とに基づいて設定される。
【0049】
更に、トラクタ1には、ブレーキペダルや駐車ブレーキレバーの操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後輪8,8にブレーキを掛ける左右一対のブレーキ装置26,26を設けている。すなわち、左右両方のブレーキ装置26,26は、ブレーキペダル(又は駐車ブレーキレバー)の制動方向への操作によって、左右両方の後輪8,8にブレーキを掛けるように構成されている。また、ハンドル12の回動角度が所定角度以上になれば、本機制御装置16の指令によって、旋回内側の後輪8に対するブレーキ装置26が自動的に制動動作をするように構成されている(いわゆるオートブレーキ)。
【0050】
基準局60は、補正情報を配信する基準局無線通信アンテナ64と、測位衛星63からの信号を受信する基準局測位アンテナ61と、無線通信アンテナ64及び測位アンテナ61それぞれと電気的に接続された基準局通信装置62とを備える。基準局60は、移動局となるトラクタ(作業車両)1の位置特定における基準点に設置される。基準点に設置された可搬型基準局60は、基準局測位アンテナ61で受信した測位衛星63からの信号を基準局通信装置62に送り、基準局通信装置62において、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成する。そして、基準局60は、基準局通信装置62で生成した補正情報を、第1無線通信ネットワークを介して配信する。なお、基準局60は、複数部材に分解可能に構成されており、分解した各部材は、所定のケースに収容して運搬可能な大きさに構成されるものとしてもよい。
【0051】
<運転支援システムにおける処理動作> 次に、
図4~
図12を参照しながら、圃場H1におけるトラクタ1の運転支援における処理動作について、以下に説明する。
図4~
図12に示すように、圃場H1内のトラクタ1に対してキースイッチがONとなると、各制御装置15~17,51,52、測位測量装置53、及び無線通信ルータ54が電源投入されるとともに、エンジン10が駆動してアイドリング状態となる。このとき、トラクタ1は、左右ブレーキ装置26の制動作用により停止状態となっている。一方、端末装置70の電源が投入されると、タッチパネルで構成されるディスプレイ146が表示されるとともに、装置側ソフトウェアを起動する。
【0052】
トラクタ1は、運転支援制御装置51により無線通信ルータ54の通信動作を制御することで、無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて通信可能な端末装置70の検索を開始する。すなわち、無線通信ルータ54は、トラクタ1固有のトラクタID(識別子)を送信して、第
2無線通信アンテナ48bより送信する。端末装置70は、運転支援システムで通信可能なトラクタ1のトラクタIDを予め記憶している。そして、端末装置70は、トラクタIDを含む通信確認信号を受信したとき、受信したトラクタIDが予め記憶したトラクタIDと一致する場合に、トラクタ1の無線通信ルータ54との通信を認証する。
【0053】
端末装置70は、トラクタ1との通信を認証した後、自機器固有の装置ID(識別子)を、第2無線通信ネットワークを通じて無線通信ルータ54に送信する。なお、端末装置70から装置IDが送信されるものとして説明するが、端末装置70を操作するオペレータに割り付けられたオペレータIDが、装置IDの代わりに利用されるものとしても良い。トラクタ1は、運転支援システムで通信可能な端末装置70の装置IDを、運転支援制御装置51又は無線通信ルータ54で予め記憶している。従って、トラクタ1は、第2無線通信アンテナ48bを介して無線通信ルータ54で応答信号を受信すると、受信した応答信号における装置IDと、予め記憶した装置IDとが一致する場合に、端末装置70との通信を認証する。
【0054】
上述のようにして、トラクタ1(無線通信ルータ54)と端末装置70との間で通信が確立すると、トラクタ1は、通信が確立したことをサーバ100に通知する。このとき、トラクタ1は、トラクタ1のトラクタID及び端末装置70の装置IDを、車両搭載用端末装置19より通信ネットワーク網N1を介してサーバ100に送信する。
【0055】
また、トラクタ1のキースイッチがONとされて、測位測量装置53が電源投入されると、アンテナ6,48aを通じて測位衛星63及び基準局60それぞれと通信することで、トラクタ1の位置情報(緯度・経度情報)を算出している。そして、上述のトラクタ1(無線通信ルータ54)及び端末装置70間の認証処理後に、サーバ100に対して、トラクタID及び装置IDと共に、トラクタ1の位置情報を送信する。
【0056】
サーバ100は、トラクタID及び装置IDより運転支援システムで使用可能なトラクタ1及び端末装置70であることを確認すると、トラクタ1とサーバ100との通信を可能とすべく、トラクタ1を認証する。サーバ100は、トラクタ1を認証すると、トラクタ1から受信した位置情報を中心とする地図情報を読み出して、読み出した地図情報をトラクタ1を介して端末装置70に送信する。
【0057】
なお、サーバ100は、トラクタID及び装置IDより、トラクタ1を操作するオペレータに対して割り当てられた圃場(作業領域)を確認し、作業対象となる圃場(作業領域)の情報を地図情報に付加して、端末装置70に送信する。すなわち、サーバ100は、トラクタ1より受信した位置情報により、トラクタ1の現在位置周辺の圃場HA~HH(
図6参照)を含む地図情報を読み出す。そして、サーバ100は、装置IDにより確認されるオペレータの作業対象となる圃場が、圃場HC,HD,HG,HHであることを確認して、地図情報と共に端末装置70に通知する。
【0058】
このとき、トラクタ1は、車両搭載端末装置19でサーバ100から地図情報を受信すると、受信した地図情報を運転支援制御装置51を介して無線通信ルータ54に与えて、当該地図情報を無線通信ルータ54より端末装置70に送信する。そして、
図6に示すように、地図情報を受信した端末装置70は、受信した地図情報に基づいて、作業対象となる圃場(作業領域)HC,HD,HG,HH及び対象外となる圃場HA,HB,HFを含む地図をディスプレイ146に表示する。
【0059】
オペレータは、端末装置70のディスプレイ146を構成するタッチパネルを操作するなどして、ディスプレイ146上に表示された地図上から、トラクタ1による作業対象となる圃場(作業領域)を指定する。端末装置70は、オペレータにより圃場(作業領域)が選択されると、
図7に示すように、トラクタ1による作業(耕運作業、播種作業、施肥作業、代掻き作業、畝立て作業など)の指定をオペレータに要求するための画面を、ディスプレイ146に表示する。オペレータは、
図7のように画面表示された端末装置70のタッチパネルを操作することで、トラクタ1による作業(耕運作業、播種作業、施肥作業、代掻き作業、畝立て作業など)を行うための作業機3及び作業機3の大きさを指定する。また、オペレータは、作業対象となる作物についても、端末装置70を操作して指定する。
【0060】
端末装置70は、指定された圃場H1、作業機3、及び作物を、トラクタ1を介してサーバ100に送信する。なお、本実施形態では、圃場H1及び作業機3について、
図6及び
図7に示すように、圃場HD及びロータリ耕耘機が選択されている。サーバ100は、端末装置70より、圃場HDに割り付けられている圃場ID(識別子)を受信することで、圃場IDで特定される圃場HDを確認するとともに、作業機3に割り付けられている作業機ID(識別子)を受信することで、作業機IDで特定される作業機3の機種ZZ-ZZZと大きさを確認する。また、サーバ100は、トラクタ1より既に受信しているトラクタIDより、トラクタ1の機種YY-YYYと大きさを確認する。
【0061】
サーバ100は、指定された圃場HD及び作業機3の機種ZZ-ZZZを確認するとともに、トラクタ1の機種YY-YYYであることを認識すると、作業機3の、及びトラクタ1の機種YY-YYYのトラクタ1により機種ZZ-ZZZの作業機3を用いて圃場HDへ実行した農作業の履歴(作業履歴情報)を検索する。サーバ100は、圃場HD、トラクタ1の機種YY-YYY、及び作業機3の機種ZZ-ZZZにより特定される作業履歴情報を抽出すると、オペレータ毎に仕分けする。サーバ100は、オペレータ毎に仕分けされた作業履歴情報に、各オペレータの熟練度、作業時間(平均作業時間)、燃費(平均燃料消費量)、及び作業履歴のダウンロード回数(使用頻度)を付加し、トラクタ1を介して端末装置70に送信する。作業履歴情報には、例えば、圃場HDへの進入経路や圃場HD内での作業ルートを表す時間及び位置情報、エンジンの回転数と負荷率、副変速ギヤの選択、主変速装置の進行速度、ロータリ耕耘機のPTO変速設定と深さ設定、旋回速度、作業機旋回上昇タイミング、オートブレーキ設定、バック上昇、作業機設定高さなどが含まれる。
【0062】
端末装置70は、サーバ100から作業履歴情報を受信すると、作業履歴情報に基づいて、演算によりトラクタ1が移動する圃場HDへの進入経路及び作業ルート(作業経路)を生成する。そして、
図8に示すように、端末装置70は、オペレータ毎の作業経路、熟練度、作業時間、燃費、及びダウンロード回数をディスプレイ146に表示する。これらの情報は、オペレータが作業履歴を選択する際の判断材料を豊富にできる。
【0063】
オペレータは、端末装置70のディスプレイ146を構成するタッチパネルを操作するなどして、ディスプレイ146上に表示された複数のオペレータの作業履歴のいずれかを指定する。端末装置70は、指定された作業履歴情報を運転支援情報としてトラクタ1に送信する。なお、本実施形態では、運転支援情報(作業履歴情報)について、
図8に示すように、熟練度J2の運転支援情報が選択されている。
【0064】
図9に示すように、トラクタ1の運転支援制御装置51は、端末装置70より運転支援情報を受信すると(STEP1)、当該運転支援情報を記憶装置(図示省略)に記憶する(STEP2)。運転支援制御装置51は、ロータリ耕耘機(作業機)の設定を受信した運転支援情報に基づいて実施する(STEP3)。このとき、運転支援制御装置51が、制御装置15~17と通信することで、運転支援情報に基づくトラクタ1及び作業機3に対する各種設定を実行する。すなわち、作業機3の昇降位置、作業機3の水平制御における傾斜角度,作業機3による耕運深さ、機体2の直線車速及び旋回車速、エンジン10の回転速度上限値などといったトラクタ1及び作業機3への設定パラメータを、運転支援情報に基づいて設定する。
【0065】
運転支援情報には、例えば、
図11及び
図12に示すように、端末装置70が生成した作業経路、圃場HDへの進入経路や圃場HD内での作業ルートを表す時間及び位置情報(緯度、経度)、エンジンの回転数と負荷率、副変速ギヤの選択、主変速装置の進行速度、ロータリ耕耘機のPTO変速設定と深さ設定、旋回速度、作業機旋回上昇タイミング、オートブレーキ設定、バック上昇、作業機設定高さなどが含まれる。なお、圃場HDでの作業経路は、運転支援制御装置51により生成されてもよい。
【0066】
図9及び
図10に示すように、トラクタ1の運転支援制御装置51は、運転支援を開始すると(STEP4)、トラクタ1の現在位置情報を取得し(STEP5)、操作ガイド情報を運転支援情報(
図12参照)より読み出して(STEP6)、端末装置70に送信する(STEP7)。端末装置70は、受信した操作ガイド情報に応じて、トラクタ1の操作に関する操作ガイドをディスプレイ146への表示や音声などでオペレータに通知する。
【0067】
また、トラクタ1は、機体2及び作業機3の駆動状態(エンジン回転数、機体2の車速、エンジン負荷、機体2の傾き姿勢、作業機3の傾き姿勢、作業機3の昇降位置、左右のブレーキ装置26の制動操作、ハンドル10の操舵角、PTOスイッチの切換など)を取得し、位置情報と共に、サーバ100に送信する(STEP8)なお、位置情報は、測位衛星63及び基準局60それぞれから受信した情報に基づき、測位測量装置53で算出した緯度・経度情報である。
【0068】
運転支援中のトラクタ1は、所定時間間隔で、操作ガイド情報を端末装置70に送信する一方で、機体2及び作業機3の駆動状態及び位置情報をサーバ100に送信する。サーバ100は、所定時間間隔で受信する操作情報及び位置情報を、作業中の圃場(作業領域)を示す圃場ID(作業領域識別子)、トラクタID(作業車両識別子)及び作業機ID(作業機識別子)と関連づけて記憶する。
【0069】
また、トラクタ1は、STEP6で読み出した操作ガイド情報と、STEP8で取得した機体2及び作業機3の駆動状態に差があると判断したとき(STEP9:YES)、その差を示す操作比較情報を生成する(STEP10)。そして、トラクタ1は、生成した操作比較情報を、端末装置70とサーバ100のそれぞれに送信する(STEP11)。
【0070】
端末装置70は、トラクタ1から操作比較情報を受信すると、機体2及び作業機3の駆動状態を操作ガイド情報に一致させるように修正する操作(修正操作)をオペレータに通知する。また、サーバ100は、トラクタ1から受信した操作比較情報を、圃場ID(作業領域識別子)、トラクタID(作業車両識別子)及び作業機ID(作業機識別子)と関連づけて記憶する。
【0071】
トラクタ1の運転支援制御装置51は、作業が終了するまでSTEP5~11の運転支援処理を実行する。トラクタ1の作業が終了すると(STEP13)、運転支援制御装置51は、端末装置70及びサーバ100それぞれに、作業終了を通知するとともに実測作業時間を送信する(STEP14)。端末装置70は、オペレータに実測作業時間と作業終了の旨を通知する。また、サーバ100は、実測作業時間を圃場ID(作業領域識別子)、トラクタID(作業車両識別子)及び作業機ID(作業機識別子)と関連づけて記憶する。
【0072】
サーバ100は、トラクタ1から受信した機体2及び作業機3の駆動状態及び位置情報と、操作比較情報と、実測作業時間とに基づいて、オペレータの熟練度や燃費を算出する。そして、サーバ100は、機体2及び作業機3の駆動状態及び位置情報、操作比較情報、実測作業時間、オペレータの熟練度情報、並びに燃費情報を、圃場ID(作業領域識別子)、トラクタID(作業車両識別子)及び作業機ID(作業機識別子)と関連づけて、作業履歴情報として記憶する。なお、サーバ100は、操作比較情
報の回数が少ないほど熟練度を高く算出する。また、サーバ100は、実測作業時間が、使用された作業履歴情報の作業時間に近いほど熟練度を高く算出する。
【0073】
なお、端末装置70の機能をトラクタ1に設け、ディスプレイ146に表示する情報をトラクタ1のモニタ装置に表示するなどして、上記実施形態で端末装置70が表示等する情報をトラクタ1の機能が表示等するように構成してもよい。
【0074】
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 トラクタ(作業車両)70 端末装置100 サーバ