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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】心内信号を利用した位置合わせマップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/343 20210101AFI20220328BHJP
【FI】
A61B5/343
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103662
(22)【出願日】2020-06-16
(62)【分割の表示】P 2015215480の分割
【原出願日】2015-11-02
(65)【公開番号】P2020168394
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】14/531,112
(32)【優先日】2014-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】ローネン・クルプニク
(72)【発明者】
【氏名】リロン・シュムエル・ミズラヒ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-061617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0268955(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016712(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01779787(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200467(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0066193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160569(US,A1)
【文献】特開2013-188476(JP,A)
【文献】国際公開第2010/058372(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0023130(US,A1)
【文献】特開2013-103134(JP,A)
【文献】国際公開第2010/042826(WO,A1)
【文献】特開2008-068084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0159323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理システムであって、
プロセッサと、
視覚表示画面と、
プログラム及びデータオブジェクトが格納されている前記プロセッサにアクセス可能なメモリと、
を具備し、
前記プログラムが、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、解析プログラムと、前記視覚表示画面上にグラフィカル情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を含み、前記プログラムの実行により、前記プロセッサが、以下の工程:
生体被検者の心臓の第1の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記心臓の第2の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記第1及び第2の電気解剖学的マップにおける局所活性化時間が第1の閾値を超えて相違せず、かつ、各前記電気解剖学的マップ上の点間のそれぞれの距離が第2の閾値を超えない、少なくとも3つの点を前記第1及び第2の電気解剖学的マップのそれぞれで見つけることにより、前記第1及び第2の電気解剖学的マップで共通の電気活性のある領域を識別する工程と、
共通の電気活性があると識別された前記領域に基づき、前記第1及び第2の電気解剖学的マップを位置合わせする工程と、
前記視覚表示画面を制御して、位置合わせされた前記第1及び第2の電気解剖学的マップを表示する工程と、
を実行する、データ処理システム。
【請求項2】
前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、前記共通の電気活性のある領域と相関する前記心臓の解剖学的特徴を識別し、
識別された前記解剖学的特徴に基づいて前記第1及び第2の電気解剖学的マップを位置合わせする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、前記共通の電気活性のある領域内の信号モルフォロジーの類似度を識別し、
前記信号モルフォロジーの類似度に基づいて前記第1及び第2の電気解剖学的マップを位置合わせする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、信号モルフォロジーの類似度を、波面伝播、フェーズ分析、又は電圧解析のうち1つ以上に基づいて識別する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、前記共通の電気活性のある領域と相関する前記心臓の解剖学的特徴を識別し、前記共通の電気活性のある領域内の信号モルフォロジーの類似度を識別する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、前記視覚表示画面を制御して、位置合わせされた第1及び第2の電気解剖学的マップを含む重ね合わせを表示し、前記共通の電気活性のある領域に対応する関心対象のポイントを好適な視覚的手がかり又はアイコンで表示する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像システムに関する。より詳細には、本発明は、医療画像分析における改良に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
内臓の三次元(3D)画像は、カテーテルによる多くの診断及び治療用途において有用であり、リアルタイムイメージングは外科手技中に広く用いられている。超音波イメージングは、リアルタイムイメージングの比較的便利なモードであるが、超音波画像の解像度は概して、他の画像診断法(例えば、コンピュータ断層装置(CT)及び磁気共鳴20イメージング(MRI))で得られる解像度ほど良好ではない。
【0003】
位置検知カテーテルを用いた心臓の3Dマッピング方法は、当該技術分野において周知である。例えば、その開示内容が本明細書に参照により援用されている米国特許第5,738,096号(Ben-Haimに付与)には、体内の複数のポイントに接触して解剖学的マップを生成する、位置検知プローブが記載されている。心臓表面上の電気活性を含む生理的特性もまた、カテーテルにより得ることができる。
【0004】
本明細書において参照により援用されている、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第8,320,711号(Altmannらに付与)には、空洞ベースの3D画像の描写によって解剖学的マップを作製する工程が開示されている。本方法は、3Dセグメンテーションコンタに沿って3D画像の自動セグメンテーションを行うことと、セグメンテーションコンタに基づいて3Dマップを拡張することと、を含む。
【0005】
心臓をマッピングするための体表面マッピング技術は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2008/0058657号(Schwartzら)に開示されており、この出願は本明細書において参照により援用されている。信頼のおける心内膜マップは、多電極胸部パネルを使用して、少数の心内膜ポイントと多数の外部受容ポイントとの間のマトリックス関係を構築することによって、取得される。マトリックスを倒置することによって、心内膜マップの構築を可能にする情報が得られる。
【0006】
心臓をマッピングするための体表面方法を記載した開示としては、それ以外にも、Revishviliらによる米国特許出願公開第2012/0035459号がある。一連の表面心電図上で、心拍周期の離散モーメントごとに、ECGの記録ポイントにおける心臓電場電位の値が特定され、胸表面の各ポイントにおける電場電位の値が補間法により計算される。任意の明視化方法論のデータに基づいて、胸及び肺表面と心臓心外膜表面との境界が特定される。
【0007】
電気解剖学的マップを他の治療様式により生成された解剖学的標識点に位置合わせする工程は、例えば、本明細書において参照により援用されている米国特許出願公開第2007/0049817号及び本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,517,318号(Altmannらに付与)から判る。後者の文献には、事前取得済みの標的の画像を提供する工程と、位置センサと超音波イメージングセンサと電極とを有するカテーテルを患者の体内に配置する工程と、を含む画像位置合わせの技術が開示されている。患者の体内にあるカテーテルの一部の位置情報は位置センサを用いて特定され、標的の表面の電気活性データポイントは電極を用いて得られる。標的の超音波画像は超音波イメージングセンサを用いて取得され、標的の表面の電気活性データポイントに関する位置情報が特定される。標的の電気生理学的マップは、電気活性データポイント及び電気活性データポイントに関する位置情報に基づいて生成される。標的の超音波画像の任意の画素に関する位置情報が特定される。事前取得済み画像及び電気生理学的マップが超音波画像に位置合わせされ、結果が表示される。
【0008】
上述した米国特許出願公開第2007/0049817号及び米国特許第7,517,318号に開示されている方法を用い、電気解剖学的マップ内の典型的に健康な組織よりも電圧が低いことを示す特徴部(例えば、心臓内の瘢痕組織)を局所化して三次元画像上に正確に詳述し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
心臓の電気解剖学的マップを解剖学的標識点に位置合わせすることは、必ずしも至適であるとは限らない。開示されている本発明の実施形態によると、種々の技術を用いて観測される電気的事象に通常的に関連している位置を指定する画像の位置合わせが実行される。画像上の電気的事象はそれぞれ、別々のアルゴリズムを適用することにより、又は別々のシステムを用いて取得することにより、識別され得る。1つのマップからの位置データは、例えば、カテーテル及びデバイス配置に関する別のマップの整列済み位置データと併用され得る。
【0010】
本発明の実施形態によれば、生体被検者の心臓の第1の電気解剖学的マップを生成する工程と、心臓の第2の電気解剖学的マップを生成する工程と、第1の電気解剖学的マップ上の第1の電気的事象及び第2の電気解剖学的マップ上の第2の電気的事象に対応する共通の空間位置を指定する工程と、によって遂行される方法が提供されている。本方法は、第1の電気解剖学的マップ及び第2の電気解剖学的マップの共通の空間位置を整列し、一連の整列済みマップを確立し、その一連の整列済みマップを用いてプローブを関心対象のポイントに誘導することにより、更に遂行される。
【0011】
本方法の更なる態様は、一連の整列済みマップを表示する工程を含む。
【0012】
本方法の更にもう1つの態様は、心臓にカテーテルを導入して、第1の電気解剖学的マップ及び第2の電気解剖学的マップのうちの少なくとも1つに関する電気データを取得する工程を含む。
【0013】
本方法の別の態様は、電気データの解析によって、心臓内のそれぞれの位置における局所活性化時間を特定する工程を含む。
【0014】
本方法の一態様は、電気データの解析によって、心臓内のそれぞれの位置における卓越周波数を特定する工程を含む。
【0015】
本方法の一態様は、電気データの解析によって、心臓内のそれぞれの位置におけるフェーズ情報を特定する工程を含む。
【0016】
本方法の更なる態様によれば、電気データを解析する工程は、第1の電気解剖学的マップの測定単位を、第2の電気解剖学的マップの測定単位に適合するように転換又は変換する工程を含む。
【0017】
本方法の更に別の態様によれば、第1の電気解剖学的マップ及び第2の電気解剖学的マップのうちの少なくとも1つは、体表面マッピングにより取得される。
【0018】
本方法の別の態様によれば、第1の電気解剖学的マップは体表面マッピングにより取得され、第2の電気解剖学的マップは心臓内マッピングカテーテルを用いて取得される。
【0019】
本方法の更にもう1つの態様によれば、第1の電気解剖学的マップ及び第2の電気解剖学的マップは、心臓内マッピングカテーテルを用いて取得される。
【0020】
本発明の実施形態によるデータ処理システムが更に提供されている。このデータ処理システムは、プロセッサ、視覚表示画面と、プログラム及びデータオブジェクトを格納するためのプロセッサにアクセス可能なメモリと、をプログラムは、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、解析プログラムと、視覚表示画面上にグラフィカル情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を含む。プログラムの実行により、プロセッサが、以下の工程:電気解剖学的マップ生成器を起動して生体被検者の心臓の少なくとも第1の電気解剖学的マップを生成する工程と、第2の心臓の電気解剖学的マップを生成する工程と、解析プログラムを呼び出して第1の電気解剖学的マップ上の第1の電気的事象及び第2の電気解剖学的マップ上の第2の電気的事象に対応する共通の空間位置を識別する工程と、画像位置合わせプログラムを呼び出し、第1の電気解剖学的マップ及び第2の電気解剖学的マップの共通の空間位置を整列させて、第3の電気解剖学的マップを確立する工程と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明が更に理解されるように、-一例として、本発明の詳細な説明を参照するが、-その説明は以下の図面と共に読まれるべきであり、図面において同様の要素は同様の参照番号を与えられている。
図1】本発明の実施形態による、生体被験者の心臓における電気活性を評価するためのシステムの描画図である。
図2】本発明の実施形態による、関心対象のポイントを識別するための心臓の電気解剖学的マップを位置合わせする方法の流れ図である。
図3】本発明の実施形態による、図2に示す方法の一部を記載した詳細な流れ図である。
図4】本発明の代替実施形態による、図2に示す方法の一部を記載した詳細な流れ図である。
図5】本発明の代替実施形態による、図2に示す方法の一部を記載した詳細な流れ図である。
図6】本発明の実施形態に従って位置合わせされる、心臓の電気解剖学的マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、本発明の様々な原理が完全に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には理解されよう。この例において、一般的な概念を不要に曖昧にすることのないよう、周知の回路、制御ロジック、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳細には示されていない。
【0023】
システム概要
ここで図面に目を向け、最初に図1を参照すると、この図は、本発明の開示される実施形態に従って構築され作動する、電気活性を評価し、生体被験者の心臓12に対してアブレーション手技を行うためのシステム10を描図したものである。このシステムは、患者の血管系を通して、心臓12の心房・心室又は血管構造内に操作者16によって経皮的に挿入されるカテーテル14を備えている。通常、医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を、心臓壁、例えばアブレーション標的部位と接触させる。その開示内容が本明細書に参照により援用されている、米国特許番号第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、電気的活性化マップが作成できる。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に記載されている本発明の原理が具現化されるように、当業者が修正を施すことができる。
【0024】
例えば、電気的活性化マップの評価によって異常と判定された領域は、例えば、心筋に高周波エネルギーを加える遠位先端部18の1つ又は2つ以上の電極に、カテーテル内のワイヤを通して高周波電流を流すことなどにより熱エネルギーを加えることによってアブレーションできる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。支障なく行われた場合、この手技によって心臓組織に非伝導性の損傷部位が形成され、この損傷部位が不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理を異なる心房・心室に適用することによって、多数の様々な心不整脈を診断し、治療することができる。
【0025】
カテーテル14は通常、ハンドル20を備えており、ハンドル20はハンドル上に好適な制御器を有し、操作者16がカテーテルの遠位端部をアブレーションに望ましいように操舵、位置決め、及び方向付けできるようになっている。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、以下に記載するいくつかの処理機能を果たす。
【0026】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18に又は遠位先端部18の付近に配置される、1つ又は2つ以上のアブレーション電極32を通じて、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓12へ、及び心臓12から、搬送することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を通して、心臓12へと搬送することができる。検知電極33は、同様にコンソール24にも接続され、アブレーション電極32の間に配設されて、ケーブル34への結線を有する。
【0027】
ワイヤ接続部35はコンソール24を、体表面電極30と、カテーテル14の位置座標及び配向座標を測定するための位置決定サブシステムの他の構成要素と、に連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決定サブシステムの要素であってよい。電極32及び体表面電極30は、Govariらに対して発行された、本明細書において参照により援用されている米国特許第7,536,218号に教示されているように、アブレーション部位にて組織インピーダンスを測定する目的に使用され得る。温度センサ(図示せず)は、典型的には熱電対又はサーミスタは、アブレーション電極32の各々の上に又はその近くに載置され得る。
【0028】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の既知のアブレーション技術を用いて、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように、適応させることができる。このような方法は、参照により本明細書に援用されている、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0029】
1つの実施形態において、この位置決定サブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、既定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを特定する、磁気位置追跡の仕組みを含む。位置決定サブシステムは、本明細書に参照により援用されている米国特許第7,756,576号、及び上述した米国特許第7,536,218号に見出される。
【0030】
上述したように、カテーテル14は、コンソール24に連結され、これにより操作者16が、カテーテル14の機能を観察及び調節できるようになっている。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは好適な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結されている。信号処理回路は、通常、カテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化するが、そのような信号には、カテーテル14の遠位側に設置された、電気、温度、及び接触力センサのようなセンサ、及び複数の位置検知電極(図示せず)により生成される信号が含まれる。デジタル化された信号はコンソール24及び位置決定システムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0031】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には、他の要素も含まれる。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。また、上に述べたように、システム10は通常、基準位置センサをも含むが、基準位置センサは、患者の身体の外側に取り付けられた、体位外貼付式基準パッチ上、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された、体内配置式カテーテル上のいずれかに配置される。カテーテル14に液体を通して循環させるための、従来のポンプ及びラインが、アブレーション部位を冷却するために提供される。システム10は、画像データを外部MRIユニット等のような画像診断法から受信することもできるし、画像生成及び表示の目的で、プロセッサ22に統合され得る又はプロセッサ22により起動され得る画像プロセッサを具備することもできる。
【0032】
表現は異なるが、概して、電気信号又は技術のタイプを用いて作成された電気解剖学的マップでは、解剖学的標識点の位置を識別できる。例えば、特定の標識点が、別々の機能的マップ上に識別用特徴例えば、(1)基準ポイントに対して測定された第1のマップ上の公知の局所活性化時間と;(2)第2のマップ上の特徴的な電位図形態と;を有することもあり得る。特徴は、患者固有のものであってもよいし、又は一般のものであってもよい。電気的事象を識別するポイントを用いて2つのマップを位置合わせできる。電気解剖学的マップ上の関心対象のポイントは、多様な電気的現象により識別され得る。そのような現象の例としては、ユニポーラ電位図の第1又は第2の誘導体のモルフォロジー、多活動面の存在、活性化ベクトルの異常な集中、及び速度ベクトルの変化又はこのベクトルの正常値からの逸脱が挙げられる。これらの現象は、典型的に多電極マッピングカテーテルを介して得られた電気信号に信号処理及びフィルタリング技術を適用することで、マッピングされ得る。この種のマッピングの例証的な方法は、「Hybrid Bipolar/Unipolar Detection of Activation Wavefront」と題する本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第14/166,982号に記載されており、この出願は本明細書において参照により援用されている。
【0033】
電気解剖学的マップを生成するために、プロセッサ22は典型的に、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、画像又はデータ解析プログラムと、モニタ29上にグラフィカル情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を備える。
【0034】
1つのマップは、ユニポーラ心臓内電極から計測された読取値に基づいて作成され得る。別のマップの作成には、例えば、上述した米国特許出願公開第2008/0058657号に記載されているような体表面技術を用いるのが一般的であるが、必ずしもその必要はない。例えば、マップのうちの1つをCardioInsight Technologies,Inc.から入手可能なECVUE(商標)体表面技術を用いて作成してもよいし、EP Solutions SA,Y-Parc Rue Galilee 7 Yverdon-les-Bains,Vaud 1400 Switzerlandから入手可能なAMYCARD-01CTM(商標)診断システムのフェーズ分析方法を用いて別の作成済みマップを用いて作成してもよい。
【0035】
マッピング技術は多くの組み合わせが可能であるが、いずれの場合も、マップ上のそれぞれの電気的事象に従って一般的な解剖学的標識点を定義できる。測定値はマップ間で互換性のあるものでなければならず、そのためには単位換算又は変換を実行して、マップ間での相互運用を可能にする必要のある場合がある。
【0036】
ここで図2を参照すると、この図は、本発明の実施形態による、関心対象のポイントを識別するための心臓の電気解剖学的マップを位置合わせする方法の流れ図である。図2では、プロセス工程は、明確に示すため特定の直鎖状配列で示してある。しかしながら、それらのプロセス工程の多くは、並列的に、非同期的に、又は異なる順序で実行し得ることが明白であろう。当業者であれば、プロセスは、別の方法としては、例えば、状態図において、相互関連状態又は事象の数として表現され得ることが理解されるであろう。更には、例示されているすべてのプロセス工程が、このプロセスの実行に必要とされるとは限らない場合もある。
【0037】
初期工程37において、第1の電気解剖学的マップは、第1の方法を用いて作成される。このマップは典型的に、心臓にマッピングカテーテルを導入し、複数回の読取りを行うことによって作成される。例えば、様々なポイントにおける波面伝播及び局所活性化時間が、マップに示され得る。
【0038】
次いで、工程39において、第2の電気解剖学的マップが作成される。第2のマップは、初期工程37で生成されたマップと同じ心臓エリアを含む。第2のマップは、例えば、上記の体表面マッピング技術のうちの1つにより作成することもできるし、又はマッピングカテーテルを用いて得られたマップであってもよい。関心対象のポイントは、第2の電気解剖学的マップ上で識別され得る。
【0039】
第1及び第2のマップは、二次元又は三次元であり得る。片方又は両方のマップが、ポイントクラウドからの心臓再構築に基づく場合は事実上、マップに含まれる外形寸法数がはるかに多くなる可能性がある。疎なポイントクラウドから心臓を再構築する1つの方法は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許仮出願第61/844,024号(Bar Talらに付与)に教示されており、この出願は本明細書において参照により援用されている。
【0040】
次いで、工程41において、共通の電気活性を有する区域が、第1及び第2のマップ上で識別される。
【0041】
次いで、工程43において、第1のマップ及び第2のマップの画像が位置合わせされる。各々のマップ上での位置合わせには、最小限3つのポイントを使用する必要がある。ポイント数が多いほど、精度が高まる傾向がある。使用されるポイントには、工程41で識別されたポイントが含まれ得る。工程43は、公知のポイントセット位置合わせ技術を含む上述した位置合わせ方法を用いて実行され得る。代わりに、当業者は工程41を実行するためBiosense Websterから入手可能なCARTOMERGE(商標)Image Integration Moduleを修正することもできる。いくつかの実施形態において、位置合わせは、電気的事象に相関する解剖学的特徴の識別に基づくことができる。加えて又は代わりに、信号モルフォロジーの類似度に基づいて、例えば、波面伝播、フェーズ分析又は電圧解析に基づいて、位置合わせを行うこともできる。工程43の結果として、2つのマップに共通する解剖学的区域リアが整列される。
【0042】
次いで、最終の工程45において、カテーテルを第1の電気解剖学的マップにより誘導された標的へと航行させ、第2の電気解剖学的マップ上で識別されるポイントを追加することにより、修正を行う。任意選択的に、位置合わせされた一連の画像を含む重ね合わせを生成し、工程43の副産物として表示することもできる。マップ上で通常識別された関心対象のポイントは、位置合わせ後に、好適な視覚的手がかり又はアイコンで示され得る。
【0043】
ここで図3を参照すると、この図は、本発明の実施形態による工程41,43(図2)を記述した詳細な流れ図である。工程47においては、少なくとも3つの対応する電気解剖学的ポイントが、工程39,41(図2)で作成された2つの各マップ内で識別される。
【0044】
次いで、工程49では、工程47で取得された対応するポイントのうちの少なくとも3つが、選択される。3つのポイントは、以下の2つの基準:(1)2つのポイントの局所活性化時間(LAT)が、第1の閾値を超えて違わないこと、及び(2)各マップ上で、ポイント間のそれぞれの距離が第2の閾値を超えないこと、を満たす。
【0045】
工程51では、工程49で選択された関心対象のポイントの位置を用いて、2つのマップを位置合わせする。任意の好適な当該技術分野において公知のポイントセット位置合わせ技術が使用できる。
【0046】
ここで図4を参照すると、この図は、本発明の代替実施形態による工程41,43(図2)を記述した詳細な流れ図である。工程53では、2つの電気解剖学的マップが作成される。この種の電気解剖学的マップは、典型的に、表示対象の電気解剖学的機能に応じて変化する擬似カラーで表示される。
【0047】
工程55では、2つのマップが有意に異なる時点で作成されたときに特定の領域内で起こり得る間隔変化を考慮に入れ、工程53で作成されたマップのカラースケールどうしを互いにできるだけ緊密に適合するように調整する。しかしながら、その場合でも、基準ポイントは典型的に不変のままであり、調整の基準として使用され得る。
【0048】
工程57では、公知の画像処理技術を用い、2つのマップをカラースケールに従って位置合わせする。そのような方法の多くは、例えば、空間又は周波数強度パターン、構造的特徴部、及び様々な類似度の測定に基づいており、当該技術分野において公知である。
【0049】
ここで図5を参照すると、この図は、本発明の代替実施形態による工程41,43(図2)を記述した詳細な流れ図である。工程59では、2つのマップの調製中に、少なくとも3つの心内心電図(ECG)信号が、対応する位置で取得される。
【0050】
次いで、工程61では、対応するECG信号の信号類似度指数が決定される。信号類似度を決定するためのこの種の指数は、当該技術分野において公知である。
【0051】
次いで、工程63では、工程59で得られた対応するポイントのうちの少なくとも3つが選択される。3つのポイントは、以下の:(1)2つのポイントの信号類似度指数値が第1の閾値に等しいか又はそれを超えること、及び(2)各マップ上でポイント間のそれぞれの距離が第2の閾値を超えないこと、2つの基準を満たす。
【0052】
工程65では、工程59で識別された関心対象のポイントの位置を用いて、2つのマップを位置合わせする。当該技術分野において公知のポイントセット位置合わせ技術としては、任意の好適なものを使用できる。
【実施例
【0053】
(実施例1)
ここで図6を参照すると、この図には、本発明の実施形態に従って位置合わせする必要のある心臓の2つの電気解剖学的マップ67,69が示してある。マップ67,69は別々のシステムで調製されたものであるため、座標系及び縮尺は一般的に同一ではない。間隔71,73を参照することにより、マップ67,69の縮尺が異なることに気づくであろう。しかも、マップ67,69の回転軸は、交差線75,77で示してあるように同一のものではない。マップ67は局所活性化時間を例証するものであり、上述したCARTOシステムのフェーズ分析モードを用いて作成された。マップ69は、AMYCARD-01C診断システムのフェーズ分析モードを用いて作成された等時性マップである。
【0054】
マップを位置合わせする際に使用されたポイントは、両方のマップ67,69上で認識され得る。例えば、マップ67上のポイント79,81,83、及びマップ69上のポイント85,87,89のすべてに、対応する電気的事象が示される。これらの電気的事象は、三尖弁の環に隣接した心筋、及び右心室の頂端に解剖学的に対応するものである。これらのポイントを使用してマップ67,69を位置合わせすることもできる。マップの位置合わせには、少なくとも3つのポイントを使用する必要がある。使用されているポイント数が多いほど、精度が高まる。
【0055】
任意選択的に、マップ67,69を重ね合わせて合成画像(不図示)を作成することもできる。しかしながら、これは必須ではない。代わりに、いったんマップが位置合わせされた後に、関心対象のポイントをマップ69上の座標からマップ67の座標に変換してもよい。図6には、この様式でのマップ67の修正が、第3のマップ91として表されている。マップ91を用いて医療手技が遂行され得る。このようにして、マップ69に示される電気的事象の位置を利用し、マップ67を生成した技術を用いてカテーテルを所望される位置へと航行させることが可能である。例えば、マップ69上の位置93(x,y)の座標は、マップ91上の位置95における座標(x’,y’)に変換される。マップ91を用いて、カテーテルを位置95に誘導し得る。位置95では、マップ69上の位置93における電気的事象の位置が正確に識別される。
【0056】
本発明は、上記に具体的に示し、説明したものに限定されないことが、当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、以上で述べた様々な特徴の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術にはない特徴の変形及び改変をも含むものである。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
生体被検者の心臓の第1の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記心臓の第2の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記第1の電気解剖学的マップ上の第1の電気的事象及び前記第2の電気解剖学的マップ上の第2の電気的事象に対応する共通の空間位置を指定する工程と、
前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップの前記共通の空間位置を整列させて、一連の整列済みマップを確立する工程と、
前記一連の整列済みマップを使用してプローブを関心対象のポイントに誘導する工程と、
を含む、方法。
(2) 前記一連の整列済みマップを表示する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記心臓にカテーテルを導入して、前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップのうちの少なくとも1つに関する電気データを取得する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記心臓内のそれぞれの位置における局所活性化時間を特定するために、前記電気データを解析する工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記心臓内のそれぞれの位置における卓越周波数を特定するために、前記電気データを解析する工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
【0058】
(6) 前記心臓内のそれぞれの位置におけるフェーズ情報を特定するために、前記電気データを解析する工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(7) 前記電気データを解析する工程が、前記第1の電気解剖学的マップの測定単位を、前記第2の電気解剖学的マップの測定単位に準ずるように換算又は変換する工程を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップのうちの少なくとも1つが、体表面マッピングにより取得される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記第1の電気解剖学的マップが体表面マッピングにより取得され、前記第2の電気解剖学的マップが心内マッピングカテーテルを用いて取得される、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップが、心内マッピングカテーテルを用いて取得される、実施態様1に記載の方法。
【0059】
(11) データ処理システムであって、
プロセッサと、
視覚表示画面と、
プログラム及びデータオブジェクトが格納されている前記プロセッサにアクセス可能なメモリと、を具備し、
前記プログラムが、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、解析プログラムと、前記視覚表示画面上にグラフィカル情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を含み、前記プログラムの実行により、前記プロセッサが、以下の工程:
前記電気解剖学的マップ生成器を起動して生体被検者の心臓の少なくとも第1の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記心臓の第2の電気解剖学的マップを生成する工程と、
前記解析プログラムを呼び出して、前記第1の電気解剖学的マップ上の第1の電気的事象及び前記第2の電気解剖学的マップ上の第2の電気的事象に対応する共通の空間位置を識別する工程と、
前記画像位置合わせプログラムを呼び出し、前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップの前記共通の空間位置を整列させて、第3の電気解剖学的マップを確立する工程と、
を実行する、データ処理システム。
(12) 前記プログラムの実行により、更に、前記プロセッサが、前記グラフィカルユーザインタフェースを呼び出し、前記視覚表示画面上に前記第3の電気解剖学的マップを表示する、実施態様11に記載のシステム。
(13) 信号を受信するように適応された電気回路を更に具備し、かつ前記プロセッサが、前記信号から前記第1の電気解剖学的マップ及び前記第2の電気解剖学的マップのうちの少なくとも1つを生成させるように作動可能である、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記解析プログラムが、前記信号を解析して、前記心臓内のそれぞれの位置における局所活性化時間を特定するように作動可能である、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記解析プログラムが、前記信号を解析して、前記心臓内のそれぞれの位置におけるフェーズ情報を特定するように作動可能である、実施態様13に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6