(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】集電体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2020192477
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2022-02-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】山中 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 一彰
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】都藤 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】中山 愛美
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-68065(JP,A)
【文献】特開2018-55967(JP,A)
【文献】国際公開第2010/117060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用の集電体であって、
第1導電性フィラーを含む第1導電性樹脂層と、
前記第1導電性樹脂層上に形成されており、第2導電性フィラーを含む第2導電性樹脂層とを備え、
前記第1導電性フィラーは、導電性カーボンであり、
前記第2導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、SUS(Stainless Used Steel)、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、
前記第1導電性樹脂層の厚みは、前記集電体の厚みの50%以上である、集電体。
【請求項2】
前記第1導電性樹脂層の厚みは、前記集電体の厚みの67%以上である、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記第1導電性樹脂層の厚みは、前記集電体の厚みの75%以上である、請求項2に記載の集電体。
【請求項4】
前記第2導電性樹脂層は、前記第1導電性樹脂層に近い第1層と、前記第1導電性樹脂層から遠い第2層とを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の集電体。
【請求項5】
前記第2導電性フィラーはニッケルを含む、請求項4に記載の集電体。
【請求項6】
前記第2層における前記金属の質量パーセント濃度は、前記第1層における前記金属の質量パーセント濃度よりも高い、請求項4又は請求項5に記載の集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体に関し、特に、リチウムイオン電池用の集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-55967号公報(特許文献1)は、第1導電性フィラーを含む第1導電性樹脂層と、第2導電性フィラーを含む第2導電性樹脂層とを備えるリチウムイオン電池用の集電体を開示する。このリチウムイオン電池用の集電体において、第1導電性フィラーは、導電性カーボンであり、第2導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属元素を含む。第1導電性フィラーとして導電性カーボンを用いることによって、第1導電性フィラーとして金属元素を用いる場合と比較して、集電体の軽量化を実現することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているような集電体を用いたリチウムイオン電池の製造過程において、集電体にプレス加工が施される場合がある。上記特許文献1に開示されているような集電体にプレス加工を施すと、集電体の貫通抵抗値が上昇することを本発明者(ら)は見出した。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、プレス加工に起因する貫通抵抗値の上昇を抑制可能な集電体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う集電体は、リチウムイオン電池用の集電体である。この集電体は、第1導電性樹脂層と、第2導電性樹脂層とを備える。第1導電性樹脂層は、第1導電性フィラーを含む。第2導電性樹脂層は、第1導電性樹脂層上に形成されており、第2導電性フィラーを含む。第1導電性フィラーは、導電性カーボンである。第2導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、SUS(Stainless Used Steel)、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。第1導電性樹脂層の厚みは、集電体の厚みの50%以上である。
【0007】
本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層の厚みを厚くすることによって、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制可能であることを見出した。本発明に従う集電体においては、第1導電性樹脂層の厚みが、集電体の厚みの50%以上である。したがって、この集電体によれば、第1導電性樹脂層の厚みが比較的厚いため、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0008】
上記集電体において、第1導電性樹脂層の厚みは、集電体の厚みの67%以上であってもよい。
【0009】
上記集電体において、第1導電性樹脂層の厚みは、集電体の厚みの75%以上であってもよい。
【0010】
上記集電体において、第2導電性樹脂層は、第1導電性樹脂層に近い第1層と、第1導電性樹脂層から遠い第2層とを含んでもよい。
【0011】
この集電体においては、第2導電性樹脂層が第1層と第2層とを含んでいる。したがって、この集電体によれば、第1層と第2層とで金属の質量パーセント濃度を変更することができる。その結果、この集電体によれば、金属の質量パーセント濃度を層毎に適切に調節することができる。
【0012】
上記集電体において、第2導電性フィラーはニッケルを含んでもよい。
【0013】
上記集電体において、第2層における金属の質量パーセント濃度は、第1層における金属の質量パーセント濃度よりも高くてもよい。
【0014】
本発明者(ら)は、第2層における金属の質量パーセント濃度を高くする程、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制可能であることを見出した。本発明に従う集電体においては、第2層における金属の質量パーセント濃度が、第1層における金属の質量パーセント濃度よりも高い。したがって、この集電体によれば、第2層における金属の質量パーセント濃度が比較的高いため、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレス加工に起因する貫通抵抗値の上昇を抑制可能な集電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】変形例における、集電体の断面を示す図である。
【
図4】引裂き強度の測定に用いられた試験片の形状を示す図である。
【
図5】カールに関し評価が「A」の例を示す図である。
【
図6】カールに関し評価が「B」の例を示す図である。
【
図7】カールに関し評価が「C」の例を示す図である。
【
図8】カールに関し評価が「D」の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
[1.集電体の構成]
図1は、本実施の形態に従う集電体10の断面を示す図である。集電体10は、例えば、リチウムイオン電池の負極用集電体に用いられる。
図1に示されるように、集電体10は、第1導電性樹脂層100と、第2導電性樹脂層200とを含んでいる。
【0019】
リチウムイオン電池においては、第2導電性樹脂層200の上方に負極用の活物質が塗布され、第1導電性樹脂層100の下方に正極用集電体が配置される。リチウムイオン電池の製造過程においては、集電体10上に負極用の活物質が塗布された状態で、集電体10にプレス加工が施される。リチウムイオン電池においては、集電体10の貫通方向(図中上下方向)に電流が流れる。なお、第1導電性樹脂層100の厚さ(T1)は、集電体10の厚さ(T2)の50%以上、90%以下である。好ましくは、第1導電性樹脂層100の厚さ(T1)は集電体10の厚さ(T2)の67%以上であり、より好ましくは、第1導電性樹脂層100の厚さは集電体10の厚さの75%以上である。以下、各層について説明する。
【0020】
<1-1.第1導電性樹脂層>
第1導電性樹脂層100は、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいる。すなわち、第1導電性樹脂層100は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを混合することによって形成されている。
【0021】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)が挙げられる。また、炭素数4~30のα-オレフィン(1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン又は1-ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等がポリオレフィンとして用いられてもよい。これらのポリオレフィンは、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
ポリオレフィンの中でも、防湿特性及び機械的強度の観点で、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0023】
ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは、4.5重量%以下)のエチレン単位を含む共重合体である。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。酸変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応させる等の公知の方法を通じて得ることができる。
【0024】
第1導電性樹脂層100に含まれる導電性フィラーとしては、導電性カーボンが挙げられる。導電性カーボンとしては、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
導電性カーボンの中では、カーボンブラックが好ましく、アセチレンブラック、ファーネスブラック、又は、それらの混合物がより好ましい。カーボンブラックの体積平均粒子径は、特に限定されないが、集電体10が用いられるリチウムイオン電池の電気特性の観点から、3~500nmであることが好ましい。
【0026】
<1-2.第2導電性樹脂層>
第2導電性樹脂層200は、第1導電性樹脂層100上に形成されており、第1層210と、第2層220とを含んでいる。第1層210及び第2層220の各々は、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいる。すなわち、第1層210及び第2層220の各々は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを混合することによって形成されている。ポリオレフィンとしては、例えば、第1導電性樹脂層100の説明において例示したものを用いることができる。
【0027】
第2導電性樹脂層200に含まれる導電性フィラーとしては、白金、金、銀、銅、SUS(Stainless Used Steel)、ニッケル、チタン及びこれらの混合物が挙げられる。すなわち、第2導電性樹脂層200に含まれる導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、SUS、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。なお、これらの中では、ニッケル粒子が導電性フィラーとしてより好ましい。
【0028】
第2導電性樹脂層200においては、第1層210における導電性フィラー(金属元素)の質量パーセント濃度が70wt%以上である。したがって、集電体10においては、第1導電性樹脂層100の温度が上昇し該温度上昇に伴なって第1層210が膨張したとしても、第1層210の導電性フィラーの質量パーセント濃度が高いため、導電性フィラー同士の接触が維持され易い。したがって、集電体10によれば、第1導電性樹脂層100の温度上昇に伴なう第2導電性樹脂層200の抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0029】
また、第2層220における導電性フィラー(金属)の質量パーセント濃度は60wt%以上である。第2層220における導電性フィラーの質量パーセント濃度がある程度高いため、集電体10にプレス加工が施されても第2層220における導電性フィラー間の導電経路が切断されにくい。その結果、集電体10によれば、プレス加工に起因する貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0030】
なお、第2層220における導電性フィラーの質量パーセント濃度は、第1層210における導電性フィラーの質量パーセント濃度よりも高くてもよい。この集電体10によれば、第2層220における導電性フィラーの質量パーセント濃度が比較的高いため、プレス加工に起因する集電体10の貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0031】
[2.第1導電性樹脂層が厚い理由]
上述のように、集電体10においては、第1導電性樹脂層100の厚さ(T1)が、集電体10の厚さ(T2)の50%以上である。このように、集電体10においては、第1導電性樹脂層100の厚さが比較的厚い。以下、第1導電性樹脂層100が厚い理由について説明する。
【0032】
リチウムイオン電池の製造過程において、集電体にプレス加工が施される場合がある。集電体の構成によっては、集電体にプレス加工が施されると、集電体の貫通抵抗値が上昇することに本発明者(ら)は気付いた。
【0033】
本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層100の厚みを厚くすることによって、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制可能であることを見出した。集電体10においては、第1導電性樹脂層100の厚みが、集電体10の厚みの50%以上である。したがって、集電体10によれば、第1導電性樹脂層100の厚みが比較的厚いため、プレス加工に起因する集電体の貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0034】
また、本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層100の厚みを厚くすることによる他のメリットも見出した。一般的に、リチウムイオン電池の使用中に集電体の温度は上昇する。集電体の温度が上昇すると、集電体の貫通抵抗値も上昇する。本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層100の厚みを厚くすることによって、集電体10の温度上昇に伴なう集電体10の貫通抵抗値の上昇が抑制されることを見出した。また、本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層100の厚みを厚くすることによって、集電体10の引裂強度が高まることを見出した。これらについては、後述の実施例を通じて後程詳細に説明する。これらの観点から、集電体10においては、第1導電性樹脂層100の厚みが集電体10の厚みの50%以上になっている。また、本発明者(ら)は、第1導電性樹脂層100の厚みを厚くすることによって、第1導電性樹脂層100が内側に巻かれるような集電体10のカールが抑制されることを見出した。
【0035】
[3.集電体の製造方法]
図2は、集電体10の製造装置500を模式的に示す図である。
図2に示されるように、製造装置500は、Tダイ部510と、原料投入部520,530,540とを含んでいる。
【0036】
原料投入部520には、第2導電性樹脂層200の第2層220を形成するための導電性樹脂原料が投入される。原料投入部530には、第2導電性樹脂層200の第1層210を形成するための導電性樹脂原料が投入される。原料投入部540には、第1導電性樹脂層100を形成するための導電性樹脂原料が投入される。
【0037】
Tダイ部510は、原料投入部520,530,540を介して投入された原料を共押出しすることによって、導電性樹脂原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルムとするように構成されている。すなわち、Tダイ部510は、原料投入部520,530,540を介して投入された原料に基づいて、フィルム状の集電体10を生成するように構成されている。このように、集電体10は、例えば、製造装置500によって、第1導電性樹脂層100、第1層210及び第2層220が積層されることによって製造される。
【0038】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う集電体10においては、第1導電性樹脂層100の厚みが、集電体10の厚みの50%以上である。したがって、集電体10によれば、第1導電性樹脂層100の厚みが比較的厚いため、プレス加工に起因する集電体10の貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0039】
また、集電体10においては、第2導電性樹脂層200が第1層210と第2層220とを含んでいる。したがって、集電体10によれば、第1層210と第2層220とで金属フィラーの質量パーセント濃度を変更することができる。その結果、集電体10によれば、金属フィラーの質量パーセント濃度を層毎に適切に調節することができる。
【0040】
[5.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0041】
上記実施の形態においては、第2導電性樹脂層200が第1層210と第2層220とを含んでいた。しかしながら、第2導電性樹脂層200は、必ずしも第1層210と第2層220とを含んでいなくてもよい。例えば、第2導電性樹脂層200は、一層で構成されていてもよい。
【0042】
図3は、変形例における、集電体10Aの断面を示す図である。
図3に示されるように集電体10Aは、第1導電性樹脂層100と、第2導電性樹脂層200Aとを含んでいる。第1導電性樹脂層100の厚みは、集電体10Aの厚みの50%以上である。第2導電性樹脂層200Aは、一層で構成されている。第2導電性樹脂層200Aは、上記実施の形態における第2導電性樹脂層200と同様、ポリオレフィンと、導電性フィラーとを含んでいる。このような構成が採用されてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態において、集電体10は、共押出成形で製造された。しかしながら、集電体10の製造方法はこれに限定されない。例えば、集電体10は、張り合わせ及びキャスト法で製造されてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、第2導電性樹脂層200の上方及び第1導電性樹脂層100の下方に特に金属被膜層が形成されていなかった。しかしながら、第2導電性樹脂層200の上方及び第1導電性樹脂層100の下方の両方又は一方に金属被膜層が形成されてもよい。被覆層に使用される金属種としては、ニッケル、銅、銀、アルミニウムが挙げられる。または、それらの合金でもよい。また、被覆方法としては、蒸着法、スパッタ法、メッキ法、コーティングが挙げられる。
【0045】
また、第1導電性樹脂層100に白金、金、銀、銅、SUS、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属が混合されてもよく、第2導電性樹脂層200に導電性カーボンが混合されてもよい。
【0046】
[6.実施例等]
<6-1.実施例及び比較例>
実施例1-7及び比較例1の集電体を準備した。実施例1-3,7及び比較例1の各々の集電体は、
図1に示されるような3層構成であった。実施例4-6の各々の集電体は、
図3に示されるような2層構成であった。いずれの例においても、各層はポリプロピレン樹脂を含んでいた。
【0047】
(6-1-1.比較例1)
比較例1の集電体の厚みは、49.0μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は40%であった。第1層及び第2層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、60wt%であった。第1層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、70wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、26wt%であった。
【0048】
(6-1-2.実施例1)
実施例1の集電体の厚みは、54.2μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は50%であった。第1層及び第2層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、60wt%であった。第1層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、70wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、26wt%であった。
【0049】
(6-1-3.実施例2)
実施例2の集電体の厚みは、53.0μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は67%であった。第1層及び第2層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、60wt%であった。第1層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、70wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、26wt%であった。
【0050】
(6-1-4.実施例3)
実施例3の集電体の厚みは、47.6μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は75%であった。第1層及び第2層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、60wt%であった。第1層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、70wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、26wt%であった。
【0051】
(6-1-5.実施例4)
実施例4の集電体の厚みは、52.6μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は50%であった。第2導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2導電性樹脂層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、71wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、30wt%であった。
【0052】
(6-1-6.実施例5)
実施例5の集電体の厚みは、52.4μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は50%であった。第2導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2導電性樹脂層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、72wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、30wt%であった。
【0053】
(6-1-7.実施例6)
実施例6の集電体の厚みは、53.8μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は50%であった。第2導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2導電性樹脂層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、73wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、30wt%であった。
【0054】
(6-1-8.実施例7)
実施例7の集電体の厚みは、56.6μmであった。集電体の厚みに対する第1導電性樹脂層の厚みの割合は50%であった。第1層及び第2層の導電性フィラーとしてはニッケル(Ni)を用いた。第2層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、80wt%であった。第1層におけるニッケルの質量パーセント濃度は、70wt%であった。第1導電性樹脂層の導電性フィラーとしてはファーネスブラックを用いた。第1導電性樹脂層におけるファーネスブラックの質量パーセント濃度は、32wt%であった。
【0055】
実施例1-7及び比較例1に関し、以下の表1にまとめる。
【0056】
【表1】
<6-2.試験>
(6-2-1.プレス前後における抵抗値の比較)
各実施例及び比較例における集電体の貫通抵抗値が集電体のプレス前後でどの程度変化するかに関し試験を行なった。具体的には、以下の手順で試験を行なった。まず、各実施例及び比較例の各々に関し、プレス前の貫通抵抗値を測定した。その後、各実施例及び比較例の各々に対して面プレスを行ない、各実施例及び比較例の各々に関しプレス後の貫通抵抗値を測定した。面プレスの方法は以下の通りである。プレス前における貫通抵抗値を測定したサンプルを大きさ100mm角、厚さ1.5mmの平滑なSUS板で挟み、圧力16.5kNにて10秒間プレスを行った[SA-401 テスター産業(株)製]。
【0057】
プレス前後における貫通抵抗値の測定方法は以下の通りである。各集電体から7cm角サンプルを裁断して取り出し、電気抵抗測定器[IMC-0240型 井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548 HIOKI製]を用いて集電体の厚み方向(貫通方向)の抵抗値を測定した。電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態で集電体の抵抗値を測定し、荷重をかけてから60秒後の値をその集電体の抵抗値とした。下記式(1)に示すように、抵抗測定時の治具の接触表面の面積(3.14cm2)を抵抗値に乗算した値を貫通抵抗値(Ω・cm2)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2)・・・(1)
なお、貫通抵抗値の測定方法は、他の試験においても共通である。
【0058】
(6-2-2.温度毎の抵抗値の比較)
実施例1-3及び比較例1における集電体の貫通抵抗値が周囲の温度変化によってどの程度影響を受けるかに関し試験を行なった。具体的には、以下の手順で試験を行なった。
【0059】
(1)室温環境に集電体を2分間静置し、その後、集電体の貫通抵抗値を測定した。この測定結果を室温における抵抗値とした。
【0060】
(2)60℃の恒温槽内に集電体を2分間静置し、その後、集電体を恒温槽から取り出し、貫通抵抗値を測定した。この測定結果を60℃における抵抗値とした。
【0061】
(3)80℃の恒温槽内に集電体を2分間静置し、その後、集電体を恒温槽から取り出し、貫通抵抗値を測定した。この測定結果を80℃における抵抗値とした。
【0062】
(4)100℃の恒温槽内に集電体を2分間静置し、その後、集電体を恒温槽から取り出し、貫通抵抗値を測定した。この測定結果を100℃における抵抗値とした。
【0063】
(6-2-3.引裂強度の測定)
実施例1-3及び比較例1における集電体に関し、TD(Transverse Direction)について、引裂強度を測定した。引裂強度の測定は、JIS-K-6732に準拠した方法によって行なわれた。
【0064】
図4は、引裂き強度の測定に用いられた集電体10の試験片の形状を示す図である。引裂強度の測定においては、直角型引裂強さが測定された。具体的には、
図4に示されるように切り出された試験片を引張試験機に試験片の軸方向と試験機のつかみ具方向とを一致させて正確に取り付けた。測定器としては、オートグラフ(島津精密万能試験機 オートグラフ AG-X 500N)が用いられた。試験速度は200mm/minとし、試験片切断時の強さが測定された。
【0065】
(6-2-4.カール状態の比較)
実施例1-3及び比較例1における集電体のカールに関し試験を行なった。具体的には、以下の手順で試験を行なった。まず、各実施例及び比較例の各々に関し、MD200mm、TD100mmに切り出し、第1導電性樹脂層が上になる向きで机に平置きした。その後、各実施例及び比較例の各々に対して、1分間静置後のMF方向のカールを目視で官能評価した。評価基準は以下の通りとした。
A・・・端部のカールが45°未満(
図5参照)
B・・・端部のカールが45°以上90°未満(
図6参照)
C・・・端部のカールが90°以上180°未満(
図7参照)
D・・・端部のカールが180°以上(
図8参照)
<6-3.試験結果>
(6-3-1.プレス前後における抵抗値の比較結果)
表2は、比較例1及び実施例1-3に関し、プレス前後における抵抗値の変化をまとめたものである。
【0066】
【表2】
表2に示されるように、比較例1と比べて、実施例1-3の各々においては、プレス前後における集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制された。すなわち、集電体の厚さに対する第1導電性樹脂層の厚さが50%以上となることで、プレス前後における集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制されることを確認することができた。
【0067】
表3は、実施例1,4-7に関し、プレス前後における抵抗値の変化をまとめたものである。
【0068】
【表3】
表3に示されるように、実施例1と比べて、実施例4-7の各々においては、プレス前後における集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制された。すなわち、第2導電性樹脂層における導電性フィラーの質量パーセント濃度が高くなる程、プレス前後における集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制されることを確認することができた。
【0069】
(6-3-2.温度毎の抵抗値の比較結果)
表4は、比較例1及び実施例1-3に関し、温度毎での集電体の抵抗値の変化をまとめたものである。表5は、室温におけるデータを1.00とした場合に、温度毎で比較例1及び実施例1-3の各々の集電体の抵抗値がどのように変化するかをまとめたものである。
【0070】
【0071】
【表5】
表4及び表5に示されるように、比較例1と比べて、実施例1-3の各々においては、温度上昇に伴なう集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制された。すなわち、集電体の厚さに対する第1導電性樹脂層の厚さが50%以上となることで、温度上昇に伴なう集電体の貫通抵抗値の上昇率(変化比)が抑制されることを確認することができた。
【0072】
(6-3-3.引裂強度の測定結果)
表6は、比較例1及び実施例1-3に関し、引裂強度をまとめたものである。
【0073】
【表6】
表6に示されるように、比較例1と比べて、実施例1-3の各々の引裂強度が強かった。すなわち、集電体の厚さに対する第1導電性樹脂層の厚さが50%以上となることで、引裂強度が強くなることを確認することができた。
【0074】
(6-3-4.カール状態の比較結果)
表7は、比較例1及び実施例―3に関し、カール状態をまとめたものである。
【0075】
【表7】
表7に示されるように、比較例1と比べて、実施例1-3の各々においては、カールが抑制された。
【符号の説明】
【0076】
10 集電体、100 第1導電性樹脂層、200 第2導電性樹脂層、210 第1層、220 第2層、500 製造装置、510 Tダイ、520,530,540 原料投入部。
【要約】
【課題】プレス加工に起因する貫通抵抗値の上昇を抑制可能な集電体を提供する。
【解決手段】集電体は、第1導電性樹脂層と、第2導電性樹脂層とを備える。第1導電性樹脂層は、第1導電性フィラーを含む。第2導電性樹脂層は、第1導電性樹脂層上に形成されており、第2導電性フィラーを含む。第1導電性フィラーは、導電性カーボンである。第2導電性フィラーは、白金、金、銀、銅、SUS(Stainless Used Steel)、ニッケル及びチタンが含まれる群から選択される少なくとも1種類の金属を含む。第1導電性樹脂層の厚みは、集電体の厚みの50%以上である。
【選択図】
図1