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  • 特許-架橋性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/00 20060101AFI20220328BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220328BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C08L33/00
C08L33/14
G02B5/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020507530
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2018009331
(87)【国際公開番号】W WO2019117423
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0172983
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】サン・キ・チュン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/020867(WO,A1)
【文献】特開平08-259922(JP,A)
【文献】特開2005-247909(JP,A)
【文献】特開2004-051812(JP,A)
【文献】特開2013-216756(JP,A)
【文献】特表2010-525098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0188620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00
C08L 33/14
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性単量体単位としてのカルボキシル基含有単量体を含むアクリル重合体と、リチウムカチオンを有するイオン性化合物と、前記リチウムカチオンと複合体を形成して架橋を促進するアセチルアセトンとを含み、
イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤またはアジリジン系架橋剤をさらに含み、
前記アセチルアセトンが、イオン性化合物100重量部に対して0.01~30重量部の比率で含まれ、
前記アクリル重合体は、アルキル(メタ)アクリレート単位をさらに含み、前記架橋性単量体単位は、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対して0.01~10重量部の比率の範囲内で含まれる、架橋性組成物。
【請求項2】
イオン性化合物は、下記化学式1のアニオンを含む、請求項1に記載の架橋性組成物:
[化学式1]
[X(YO
化学式1でXは、窒素原子または炭素原子であり、Yは、炭素原子または硫黄原子であり、Rは、ペルフルオロアルキル基であり、mは、1または2であり、nは、2または3である。
【請求項3】
イオン性化合物は、下記化学式2~4のうちいずれか一つで表されるアニオンを含む、
請求項1又は2に記載の架橋性組成物:
[化学式2]
[OSO2n+1
[化学式3]
[N(SO2n+1
[化学式4]
[C(SOn+1
化学式2~4でnは、0~4の範囲内の数である。
【請求項4】
イオン性化合物は、アクリル重合体100重量部に対して0.001~20重量部で含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
イオン性化合物は、アクリル重合体100重量部に対して3重量部以上の比率で含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
架橋剤は、アクリル重合体100重量部に対して10重量部以下の比率で含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
架橋剤は、アクリル重合体100重量部に対して1重量部以下の比率で含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
光学フィルムと、前記光学フィルムの一面に形成されており、請求項1~7のいずれか一項に記載の架橋性組成物の架橋物を有する粘着剤層とを含む光学積層体。
【請求項9】
保護用基材フィルムと、前記基材フィルムの一面に形成されており、請求項1~7のいずれか一項に記載の架橋性組成物の架橋物を有する粘着剤層とを含む表面保護フィルム。
【請求項10】
請求項8に記載の光学積層体がその粘着剤層を介して付着しているディスプレイパネルを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月15日付けで提出された第10-2017-0172983号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
粘着剤または接着剤等のような架橋性組成物の架橋層は、多様な分野および用途に用いられている。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)等のようなディスプレイ装置には、偏光板等のような各種光学フィルムが適用されるが、光学フィルムは、前記ディスプレイ装置に付着するものに一般的に粘着剤や接着剤が使用される。
【0004】
また、粘着剤は、ディスプレイ装置に適用される光学フィルムを保護するための表面保護フィルム等にも適用される。
【0005】
用途に応じて前記粘着剤や接着剤に導電性が付与される場合があるが、粘着剤や接着剤に導電性を付与する代表的な方式は、当該当粘着剤や接着剤にイオン性化合物を配合する方式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願では、架橋性組成物にイオン性化合物が配合される場合にも、架橋効率が良好に確保される架橋性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願で用語「架橋性組成物」は、化学的または物理的方式により架橋構造を具現し得る成分、主に化学的方式により架橋構造を具現し得る成分を含む組成物を指すことができる。
【0008】
前記架橋性組成物は、例えば、粘着剤組成物または接着剤組成物であってもよい。用語「粘着剤組成物」は、粘着剤として作用したり、架橋後に粘着剤として作用し得る組成物であり、接着剤組成物は、接着剤として作用したり、架橋後に接着剤として作用し得る組成物である。
【0009】
前記で粘着剤と接着剤の定義は、当業界に知られている定義に従う。
【0010】
架橋性組成物は、アクリル重合体を含むことができる。用語「アクリル重合体」は、アクリル単量体単位を主成分として含む重合体である。本明細書で用語「重合体」が含む任意の単量体の単位は、当該単量体が重合反応を経て前記重合体に含まれている状態を意味する。また、本明細書で任意の成分Aが他の成分Bに主成分として含まれているというのは、前記成分Aの前記成分B内の比率が成分Bの全体重量を基準として約55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または約90重量%以上の比率で含まれている場合を意味する。前記比率の上限は、特に制限されず、例えば、約98重量%以下または約95重量%以下であってもよい。
【0011】
また、本明細書で用語「アクリル単量体」は、アクリル酸またはメタクリル酸や、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等の前記アクリル酸やメタクリル酸の誘導体を意味する。
【0012】
また、本明細書で用語「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0013】
本出願の架橋性組成物において前記アクリル重合体は、主成分として含まれていてもよい。
【0014】
前記アクリル重合体は、粘着重合体または接着重合体であってもよい。用語「粘着または接着重合体」は、そのガラス転移温度等の物性が架橋前および/または後に粘着性能または接着性能が発現できるように調節された重合体を意味し、当該分野にそのような重合体の構成はよく知られている。
【0015】
一例において、アクリル重合体は、アルキル(メタ)アクリレート単位を含むことができる。前記でアルキル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数4~8の直鎖、分岐鎖または環状アルキル基であってもよい。
【0016】
このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレートまたはイソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートおよびテトラデシル(メタ)アクリレート等を例示することができ、前記のうち1種または2種以上を適用することができる。一般的には、n-ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレート等を使用する。
【0017】
前記アルキル(メタ)アクリレート単位は、アクリル重合体内に主成分として含まれていてもよい。
【0018】
また、アクリル重合体は、架橋性官能基を有する架橋性重合体であってもよい。前記架橋性官能基は、架橋性官能基を有する単量体(以下、架橋性単量体と呼ぶ)の単位を重合体に含ませて導入することができる。前記で架橋性官能基としては、一般的にヒドロキシ基またはカルボキシル基を適用することができる。
【0019】
したがって、前記架橋性単量体としては、例えば、ヒドロキシ基含有単量体やカルボキシル基含有単量体を適用することができる。前記各架橋性単量体の具体的な種類は、特に制限されず、当業界で公知となった単量体を使用することができる。
【0020】
例えば、前記ヒドロキシ基含有単量体としては、炭素数が1~12の範囲内のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであって、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび/または6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することができ、カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸および/またはマレイン酸無水物等を使用することができる。
【0021】
一般的に高い剥離力の具現のためには、前記単量体のうちカルボキシル基含有単量体を使用することがあるが、本出願では、目的に応じて好適な単量体を選択および適用することができる。
【0022】
前記架橋性単量体単位の比率は、目的とする凝集力等を考慮して選択されるものであって、特に制限されないが、一般的に前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対して約0.01~約10重量部の比率の範囲内で重合体に含まれ得る。前記単量体単位の比率は、他の例において、約0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上または約5重量部以上であってもよく、約9.5重量部以下、9重量部以下、8.5重量部以下、8重量部以下、7.5重量部以下、7重量部以下、6.5重量部以下または約6重量部以下であってもよい。
【0023】
アクリル重合体は、前記言及された単量体単位にさらに必要な場合、他の単量体単位を含むことができ、その種類は、特に制限されない。さらに含まれ得る単量体単位としては、芳香族基含有単量体単位、例えば、芳香族環を有する(メタ)アクリレート単位がある。このような単位は、いわゆる光学補償効果を得るために使用するか、その他、他の理由で適用することができる。
【0024】
このような単位を形成できる芳香族基含有単量体の種類は、特に制限されず、例えば、下記化学式6の単量体を例示することができる。
【0025】
【化1】
【0026】
化学式6でRは、水素またはアルキルを示し、Aは、アルキレンを示し、nは、0~3の範囲内の整数を示し、Qは、単一結合、-O-、-S-またはアルキレンを示し、Pは、芳香族環を示す。
【0027】
化学式6で単一結合は、両側の原子団が別途の原子を媒介とせず、直接結合した場合を意味する。
【0028】
化学式6でRは、例えば、水素または炭素数1~4のアルキルであるか、水素、メチルまたはエチルであってもよい。
【0029】
化学式6の定義で、Aは、炭素数1~12または1~8のアルキレンであってもよく、例えば、メチレン、エチレン、ヘキシレンまたはオクチレンであってもよい。
【0030】
化学式6でnは、例えば、0~2の範囲内の数であるか、0または1であってもよい。
【0031】
化学式6でQは、単一結合、-O-または-S-であってもよい。
【0032】
化学式6でPは、芳香族化合物から誘導される置換基であって、例えば、炭素数6~20の芳香族環由来官能基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはアントラセニルであってもよい。
【0033】
化学式6で、芳香族環は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよく、前記で置換基の具体例としては、ハロゲンまたはアルキルや、ハロゲンまたは炭素数1~12のアルキルや、塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ノニルまたはドデシルが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0034】
化学式6の化合物の具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルチオ-1-エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-sec-ブチルフェノキシ)-1-ヘキシル(メタ)アークレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)-1-エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)-1-エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)-1-ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)-1-オクチル(メタ)アクリレートおよび8-(2-ナフチルオキシ)-1-オクチル(メタ)アクリレートの一種または二種以上の混合が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
前記芳香族基含有単位の比率は、目的に応じて制御されるものであって、特に制限されず、例えば、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対して約0.1~約45重量部の比率の範囲内で重合体に含まれ得る。前記比率は、他の例において、約40重量部以下、35重量部以下または約30重量部以下であってもよい。
【0036】
粘着重合体は、必要な場合に、前記言及された単位の他に公知の他の単位でさらに含むことができる。
【0037】
このような粘着重合体は、前記に言及された単量体を適用した公知の重合方法で製造することができる。
【0038】
前記アクリル重合体は、重量平均分子量(Mw)が約50万以上であってもよい。本出願で用語「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)で測定した標準ポリスチレン換算数値であり、単純に分子量と呼ぶこともある。前記分子量(Mw)は、他の例において、約60万以上程度、70万以上程度、80万以上程度、90万以上程度、100万以上程度、110万以上程度、120万以上程度、130万以上程度、140万以上程度または約150万以上程度であってもよく、約300万以下、280万以下、260万以下、240万以下、220万以下または約200万以下であってもよい。
【0039】
架橋性組成物は、前記重合体にさらにイオン性化合物を含む。イオン性化合物を適用することによって、用途に応じて適切な導電性を付与することができる。
【0040】
イオン性化合物としては、公知の化合物を使用することができ、例えば、アルカリ金属カチオンを含むイオン性化合物である塩(salt)を使用することができる。一例において、前記金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムカチオンを適用できるし、最も好適な例としては、リチウムカチオンがある。
【0041】
イオン性化合物に含まれるアニオンの種類は、特に制限されない。一例において、前記アニオンは、PF 、AsF、NO 、フルオライド(F)、クロリド(Cl)、ブロミド(Br-)、ヨーダイド(I-)、ペルクロレート(ClO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレート(NO )、トリフルオロメタンスルホネート(CFSO )、スルホネート(SO )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、メチルベンゼンスルホネート(CH(C)SO )、p-トルエンスルホネート(CHSO )、テトラボレート(B 2-)、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C)SO )、トリフルオロメタンスルホネート(CFSO )、ベンゾエート(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフルオロアセテート(CFCOO)、テトラフルオロボラート(BF )、テトラベンジルボレート(B(C )および/またはトリスペタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C )等であってもよい。
【0042】
一例において、前記イオン性化合物は、下記化学式2で表されるアニオンまたはビスフルオロスルホニルイミド等を含むこともできる。
【0043】
[化学式2]
[X(YO
【0044】
化学式2でXは、窒素原子または炭素原子であり、Yは、炭素原子または硫黄原子であり、Rは、ペルフルオロアルキル基であり、mは、1または2であり、nは、2または3である。
【0045】
化学式2でYが炭素原子である場合、mは、1であり、Yが硫黄原子である場合、mは、2であり、Xが窒素原子である場合、nは、2であり、Xが炭素原子である場合、nは、3であってもよい。
【0046】
化学式2のRは、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であってもよく、この場合、前記ペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有することができる。化学式2のアニオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系またはカルボニルイミド系アニオンであってもよく、具体的には、トリストリフルロエメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスペルフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスペルフルオロブタンカルボニルイミドまたはビスペタフルオロエタンカルボニルイミド等の一種または二種以上の混合であってもよい。
【0047】
また、アニオンとしては、下記化学式3~5のうちいずれか一つで表されるアニオンを適用することもできる。
【0048】
[化学式3]
[OSO2n+1
【0049】
[化学式4]
[N(SO2n+1
【0050】
[化学式5]
[C(SO2n+1
【0051】
化学式3~5で、nは、0~4の範囲内の数である。
【0052】
化学式2のアニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドまたは前記化学式3~5のアニオンは、ペルフルオロアルキル基(R)またはフルオル基によって高い電気陰性度を示し、また、特有の共鳴構造を含み、カチオンとの弱い結合を形成すると同時に、疎水性を有する。したがって、イオン性化合物が重合体等の組成物の他の成分と優れた相溶性を示すと共に、少量でも高い帯電防止性を付与することができる。
【0053】
イオン性化合物の架橋性組成物内においての比率は、特に制限されず、目的とする帯電防止性等を考慮して適正範囲に調節され得る。一例において、前記イオン性化合物は、アクリル重合体100重量部に対して約0.001重量部~約20重量部の量で使用することができる。一例において、前記範囲でイオン性化合物は、前記アクリル重合体100重量部に対して約0.005重量部以上、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上または約3重量部以上の比率で含まれていてもよい。また、前記比率は、約18重量部以下、16重量部以下、14重量部以下、12重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4.5重量部以下または約4重量部以下であってもよい。本出願では、このように過量のイオン性化合物が適用される場合にも、そのイオン性化合物による架橋効率の低下問題を解決することができる。
【0054】
架橋性組成物は、前記成分にさらに下記化学式1で表される化合物を含む。このような化合物は、架橋性組成物の架橋効率を改善させることができる成分である。本発明者らは、架橋性組成物がイオン性化合物、特にリチウムカチオン等の金属カチオンを含む場合に、前記カチオンが架橋成分、例えば、前記アクリル重合体の架橋性官能基や後述する架橋剤と相互作用をして架橋効率を悪化させることを確認した。したがって、イオン性化合物を含む架橋性組成物の架橋効率を改善するためには、前記金属カチオンが架橋作用を阻害しないようにすることが必要である。本発明者らは、化学式1の化合物は、構造的に前記金属カチオンと複合体を形成することができ、これにより、前記カチオンが架橋作用を阻害しないシステムが具現されるという点を確認した。
【0055】
下記化学式1の化合物の範疇に属する構造を有する化合物のうち一部の化合物は、いわゆる架橋遅延剤として粘着剤組成物等の架橋性組成物に適用される場合がある。しかしながら、本出願で前記化合物は、架橋遅延剤として適用されるものではなく、あえて言及すると、架橋を促進する成分として用いられる。
【0056】
架橋遅延剤として当該成分が用いられるシステムは、一般的に金属キレート系の架橋剤や、やはり金属キレート系のような金属含有架橋触媒を含むシステムであり、前記架橋剤や架橋触媒と共に下記化学式1の構造を有する化合物が適用される場合がある。このようなシステムにおいて前記化合物は、前記架橋剤や架橋触媒の少なくとも一部の成分と相互作用を通じて架橋を遅延させる作用をする。しかしながら、本出願では、下記化学式1の化合物が架橋を妨害する成分の作用を抑制できるシステムであり、特にアクリル重合体の架橋官能基がカルボキシル基であり、架橋剤としてエポキシ化合物や、アジリジン化合物が適用される場合に、架橋効率の低下を防止する作用を行うことができるようにシステムが調節される。
【0057】
したがって、本出願の架橋性組成物は、金属キレート架橋剤および金属含有架橋触媒を含まない。このような成分が下記化学式1の化合物と共に適用される場合には、本出願で意図する架橋効率の改善効果が発揮され難い。
【0058】
下記化学式1の化合物は、さらに、イオン性化合物の解離を促進して、導電性がより円滑に確保され得るようにする作用もすることができる。
【0059】
【化2】
【0060】
化学式1でR~Rは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。
【0061】
化学式1でアルキル基としては、例えば、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が適用され、メチル基やエチル基等が適用されることもできる。
【0062】
化学式1の化合物としては、前記規定された範疇内の構造を有するものであれば、多様に適用され得、例えば、化学式1でRおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、例えば、メチル基やエチル基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基、例えば、水素原子、メチル基またはエチル基である化合物を使用することができる。
【0063】
一例において、前記RおよびRは、いずれも、水素原子であるか、または、少なくとも一つが前記炭素数1~4のアルキル基である化合物を使用することができる。
【0064】
前記化学式1の化合物の架橋性組成物内においての比率は、特に制限されないが、架橋性組成物の架橋効率の低下を解決できる観点から、架橋効率低下を誘導する成分であるイオン性化合物の比率に応じて好適な比率を適用することができる。
【0065】
一例において、前記化学式1の化合物は、前記イオン性化合物100重量部に対して約0.01~約30重量部の比率で含まれ得る。前記化学式1の化合物の比率は、他の例において、約0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.5重量部以上、0.7重量部以上、0.75重量部以上、0.9重量部以上、約1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上または約4重量部以上であるか、約25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下または約5重量部以下であってもよい。このような比率は、目的に応じて適切に変更され得る。
【0066】
また、架橋性組成物は、架橋剤をさらに含むことができ、前記架橋剤は、前記アクリル重合体を架橋させる成分であってもよい。
【0067】
架橋剤としては、特別な制限なしに公知の架橋剤を使用することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤またはアジリジン系架橋剤等を使用することができる。特に本出願の架橋性組成物の場合、重合体の架橋性官能基がカルボキシル基であり、架橋剤が前記の種類のうちエポキシまたはアジリジン系である場合に、好適な効果を発揮することができる。
【0068】
本出願で適用される架橋剤の種類は、特に制限されない。例えば、イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはナフタレンジイソシアネート等のようなジイソシアネートや前記ジイソシアネートのうち一つまたはそれ以上の種類とポリオール(例えばトリメチロールプロパン)との反応物等を使用することができ、エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジルエチレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルよりなる群から選ばれる一つ以上を使用することができ、アジリジン系架橋剤としては、N,N-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)およびトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドよりなる群から選ばれる一つ以上を使用することができる。
【0069】
架橋剤は、アクリル重合体100重量部に対して約10重量部以下の比率、または約0.001重量部~約10重量部の量で使用することができ、この比率下で架橋物の凝集力を適切に維持しつつ、層間剥離や浮き上がり現象が発生する等の耐久信頼性の低下を防止することができる。前記架橋剤の比率は、他の例において、約0.005重量部以上、0.01重量部以上または約0.02重量部以上であってもよく、約9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下または約0.05重量部以下であってもよい。
【0070】
架橋性組成物は、前述した成分の他にも、必要な公知の他の添加剤もさらに含むことができる。このような添加剤としては、シランカップリング剤等のカップリング剤と、帯電防止剤と、粘着付与剤(tackifier)と、紫外線安定剤と、酸化防止剤と、調色剤と、補強剤と、充填剤と、消泡剤と、界面活性剤と、多官能性アクリレートのような光重合性化合物、および可塑剤よりなる群から選ばれる一つ以上を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0071】
前記のような架橋性組成物は、多様な用途に適用することができる。一例において、前記架橋性組成物は、粘着型光学積層体や、表面保護フィルム等において粘着剤層を形成するものに適用することができる。
【0072】
したがって、本出願は、例えば、光学積層体または表面保護フィルムに関するものであってもよい。
【0073】
前記で光学積層体は、光学フィルムと、前記光学フィルムの一面に形成されており、前記架橋性組成物の架橋物である粘着剤層とを含むことができ、表面保護フィルムの場合、保護用基材フィルムと、前記基材フィルムの一面に形成されており、前記架橋性組成物の架橋物である粘着剤層とを含むことができる。
【0074】
前記で光学積層体や表面保護フィルムに含まれる構成、例えば、光学フィルムや保護用基材フィルムの種類は、特に制限されず、公知となった構成を使用することができる。
【0075】
例えば、前記光学積層体に含まれる光学フィルムとしては、各種ディスプレイ装置で使用される多様な種類が含まれ得るが、例えば、前記光学フィルムは、偏光板、偏光子、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルムまたは輝度向上フィルム等であってもよい。本明細書で用語「偏光子」と「偏光板」は、互いに区別される対象を指す。偏光子は、偏光機能を示すフィルム、シートまたは素子そのものを指し、偏光板は、前記偏光子と共に他の要素を含む光学素子を意味する。偏光子と共に光学素子に含まれ得る他の要素としては、偏光子保護フィルムまたは位相差層等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0076】
本出願の光学フィルムに含まれ得る偏光子は、基本的には特に制限されない。例えば、偏光子として、ポリビニルアルコール偏光子を使用することができる。用語「ポリビニルアルコール偏光子」は、例えば、ヨードや二色性色素のような異方性吸収物質を含むポリビニルアルコール(以下、PVAと呼ぶ)系の樹脂フィルムを意味する。このようなフィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに異方性吸収物質を含ませ、延伸等により配向させて製造することができる。前記でポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールまたはエチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化物等が挙げられる。前記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100~5,000または1,400~4,000程度であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0077】
このようなポリビニルアルコール偏光子は、例えば、PVA系フィルムに、染色工程、架橋工程および延伸工程を少なくとも行って製造することができる。染色工程、架橋工程および延伸工程には、それぞれ染色浴、架橋浴および延伸浴の各処理浴が使用され、これらの各処理浴は、各工程による処理液を使用することができる。
【0078】
染色工程では、前記PVA系フィルムに異方性吸収物質を吸着および/または配向させることができる。このような染色工程は、延伸工程と共に行われ得る。染色は、前記フィルムを異方性吸収物質を含む溶液、例えば、ヨード溶液に浸漬させて行われ得る。ヨード溶液としては、例えば、ヨードおよび溶解補助剤であるヨウ化化合物によりヨードイオンを含有させた水溶液等を使用することができる。ヨウ化化合物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズまたはヨウ化チタン等を使用することができる。ヨード溶液のうちヨードおよび/またはヨウ化イオンの濃度は、目的とする偏光子の光学特性を考慮して調節することができ、このような調節方式は、公知となっている。染色工程でヨード溶液の温度は、通常、20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、浸漬時間は、通常、10秒~300秒または20秒~240秒程度であるが、これらに制限されるものではない。
【0079】
偏光子の製造過程で行われる架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を使用して行うことができる。架橋工程の順序は、特に制限されず、例えば、染色および/または延伸工程と共に行うか、別に行うことができる。架橋工程は、複数回実施することもできる。ホウ素化合物としては、ホウ酸またはホウ砂等を使用することができる。ホウ素化合物は、水溶液または水と有機溶媒の混合溶液の形態で一般的に使用することができ、通常、ホウ酸水溶液を使用する。ホウ酸水溶液においてのホウ酸の濃度は、架橋度とそれによる耐熱性等を考慮して適正範囲に選択され得る。ホウ酸水溶液等にも、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。
【0080】
架橋工程は、前記PVA系フィルムをホウ酸水溶液等に浸漬することによって行うことができるが、この過程で処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または30℃~60℃程度の範囲であり、処理時間は、通常、5秒~800秒間または8秒~500秒間程度である。
【0081】
延伸工程は、一般的に一軸延伸で行う。このような延伸は、前記染色および/または架橋工程と共に行うこともできる。延伸方法は、特に制限されず、例えば、湿潤式延伸方式を適用することができる。このような湿潤式延伸方法では、例えば、染色後に延伸を行うことが一般的であるが、延伸は、架橋と共に行われ得、複数回または多段で行うこともできる。
【0082】
湿潤式延伸方法に適用される処理液にヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができ、この過程での比率調節等を通しても光遮断率の調節が可能になり得る。延伸で処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または50℃~70℃の範囲内の程度であり、処理時間は、通常、10秒~800秒または30秒~500秒間であるが、これらに制限されるものではない。
【0083】
延伸過程で総延伸倍率は、配向特性等を考慮して調節することができ、PVA系フィルムの元の長さを基準として総延伸倍率が3倍~10倍、4倍~8倍または5倍~7倍程度であってもよいが、これらに制限されるものではない。前記で総延伸倍率は、延伸工程以外の膨潤工程等において延伸を伴う場合には、各工程における延伸を含む累積延伸倍率を意味する。このような総延伸倍率は、配向性、偏光子の加工性ないしは延伸切断可能性等を考慮して適正範囲に調節され得る。
【0084】
偏光子の製造工程では、前記染色、架橋および延伸にさらに前記工程を行う前に膨潤工程を行うこともできる。膨潤によりPVA系フィルム表面の汚染やブロッキング防止剤を洗浄することができ、また、これにより、染色偏差等の不均一を減らすことができるという効果もある。
【0085】
膨潤工程では、通常、水、蒸留水または純水等を使用することができる。当該処理液の主成分は、水であり、必要に応じて、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物または界面活性剤等のような添加物や、アルコール等が少量含まれていてもよい。この過程でも工程変数の調節を通じて前述した光遮断率の調節が可能になり得る。
【0086】
膨潤過程においての処理温度は、通常、20℃~45℃または20℃~40℃程度であるが、これらに制限されない。膨潤偏差は、染色偏差を誘発することができるので、このような膨潤偏差の発生ができるだけ抑制されるように工程変数が調節され得る。
【0087】
必要に応じて、膨潤工程において適切な延伸が行われ得る。延伸倍率は、PVA系フィルムの元の長さを基準として6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍または2倍~3倍程度であってもよい。膨潤過程においての延伸は、膨潤工程後に行われる延伸工程での延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が発生しないように制御することができる。
【0088】
偏光子の製造過程では、金属イオン処理が行われ得る。このような処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬することによって実施する。これにより、偏光子内に金属イオンを含有させることができるが、この過程で金属イオンの種類ないしは比率を調節することによって、PVA系偏光子の色調調節が可能である。適用できる金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガンまたは鉄等の遷移金属の金属イオンを例示することができ、このうち適切な種類の選択によって色調の調節が可能になり得る。
【0089】
偏光子の製造過程では、染色、架橋および延伸後に洗浄工程が行われ得る。このような洗浄工程は、ヨウ化カリウム等のヨード化合物溶液により行うことができるが、この過程で前記溶液内のヨウ化化合物の濃度ないしは前記洗浄工程の処理時間等を利用して前述した光遮断率の調節が可能になり得る。したがって、前記ヨウ化化合物の濃度とその溶液での処理時間は、前記光遮断率を考慮して調節され得る。ただし、洗浄工程は、水を使用して行うこともできる。
【0090】
このような水による洗浄とヨード化合物溶液による洗浄は組合わせられてもよく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールまたはプロパノール等の液体アルコールを配合した溶液も使用することもできる。
【0091】
このような工程を経た後に乾燥工程を行って偏光子を製造することができる。乾燥工程では、例えば、偏光子に要求される水分率等を考慮して適切な温度で適切な時間の間行われ得、このような条件は、特に制限されない。
【0092】
前記のような偏光子の厚さは、特に制限されず、目的に応じて好適な厚さで形成され得る。通常、偏光子の厚さは、5μm~80μmの範囲内であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0093】
本明細書で言及する物性のうち測定温度および/または圧力がその物性値に影響を及ぼす場合には、特に別途言及しない限り、当該物性は、常温および/または常圧で測定した物性を意味する。
【0094】
本出願で用語「常温」は、加温されたり減温されない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~約30℃の範囲内のいずれか一つの温度、25℃または23℃程度の温度を意味することになる。
【0095】
本出願で用語「常圧」は、特別に減圧も加圧もしないときの圧力であって、通常、大気圧のようなほぼ一気圧を意味する。
【0096】
また、本出願は、前記のような光学積層体を含むディスプレイ装置に関するものであってもよい。前記装置は、例えば、前記光学積層体が前記言及した粘着剤層を介して付着しているディスプレイパネルを含むことができる。前記でディスプレイパネルの種類は、特に制限されず、例えば、公知のLCDパネルまたはOLEDパネル等であってもよい。また、光学積層体が前記パネルに付着する位置等も、公知の方式に従うことができる。
【発明の効果】
【0097】
本出願は、架橋性組成物に関する。本出願では、イオン性化合物を含んでいて、導電性を示しながらも、架橋効率の低下がない架橋性組成物とその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1図1は、本出願の効果を確認するためのNMR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【実施例
【0100】
1.硬化率の測定方法
硬化率は、ゲル分率を通じて評価した。実施例または比較例で製造された架橋性組成物を適切な厚さでコーティングした後、約120℃の温度で約3分間維持した後、さらに50℃で約3日間維持して架橋層を形成し、その後、当該架橋層を7日間恒温除湿室(23℃, 50%相対湿度)に維持した。その後、架橋層の中から約0.2g(=ゲル分率測定数式でA)を採取した。採取された架橋物を50mLのエチルアセテートに完全に浸るように入れた後、常温の暗室で1日間保管した。次に、エチルアセテートに溶解しない部分(不溶解分)を#200ステンレス金網に採取し、これを150℃で30分間乾燥して、質量(不溶解分の乾燥質量=ゲル分率測定数式でB)を測定した。次に、前記測定結果を下記式に代入してゲル分率(単位:%)を測定した。
【0101】
<ゲル分率測定数式>
ゲル分率=B/A×100
A:粘着剤の質量(0.2g)
B:不溶解分の乾燥質量(単位:g)
【0102】
2.面抵抗の測定方法
面抵抗は、三菱社の面抵抗測定機を使用してプローブ方式で確認した。また、高温面抵抗は、架橋層を80℃で約120時間維持した後、前記方式で評価し、耐湿熱面抵抗は、架橋層を60℃の温度および90%の相対湿度で約240時間維持した後、前記方式で評価した。
【0103】
3.NMRの測定方法
NMRは、Bruker 500MHz NMR機器を使用してLi NMRで確認した。
【0104】
製造例1.粘着重合体(A)の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易となるように冷却装置を設置した1Lの反応器にn-ブチルアクリレート(n-BA)およびアクリル酸(AA)を95:5の重量比(n-BA:AA)で投入し、溶剤としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。次に、酸素除去のために窒素ガスを1時間パージングした後、反応開始剤としてエチルアセテートに50重量%の濃度で希釈させたアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入し、8時間反応させて、分子量(Mw)が約180万程度である共重合体(A)を製造した。
【0105】
実施例1
製造例1の共重合体(A)にエポキシ架橋剤(T-743L、日本のSOKEN社)を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.037重量部の比率で配合し、イオン性化合物として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.74重量部の比率で配合した後、さらにアセチルアセトンを前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.03重量部の比率で配合して、架橋性組成物を製造した。
【0106】
実施例2
実施例1に準じた方式で行うものの、イオン性化合物として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を製造例1の共重合体(A)の固形分100重量部に対して約3.7重量部で配合し、アセチルアセトンを前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.03重量部の比率で配合して、架橋性組成物を製造した。
【0107】
実施例3
実施例1に準じた方式で行うものの、イオン性化合物として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を製造例1の共重合体(A)の固形分100重量部に対して約3.7重量部で配合し、アセチルアセトンを前記共重合体(A)の固形分100重量部に対して約0.15重量部の比率で配合して、架橋性組成物を製造した。
【0108】
比較例1
イオン性化合物とアセチルアセトンを適用しないことを除いて、実施例1と同一に架橋性組成物を製造した。
【0109】
比較例2
アセチルアセトンを配合しないことを除いて、実施例1と同一に架橋性組成物を製造した。
【0110】
比較例3
アセチルアセトンを配合しないことを除いて、実施例2と同一に架橋性組成物を製造した。
【0111】
前記各架橋性組成物に対して測定した硬化率と表面抵抗の数値を整理すると、下記表1の通りである。
【0112】
【表1】
【0113】
結果の検討
前記実施例1~3および比較例1~3の各架橋性組成物に対して硬化率を前記に言及された方式で測定した結果、実施例1~3の場合、それぞれ85.3%、45.5%および80%であり、比較例1~3の場合、それぞれ81.5%、78.9%および0%であった。
【0114】
前記結果のうち比較例1の場合、イオン性化合物が含まれていない状態で高い硬化率を示すのに対し、これを比較例2および3の結果と比較するとき、イオン性化合物の添加量が増加するに伴って、硬化率が劣ることが分かるので、イオン性化合物が架橋効率を低下させる原因となり、特に比較例3のように相当量のイオン性化合物を配合する場合には、架橋がほとんど行われないことを確認することができる。
【0115】
しかしながら、前記比較例2および3と同一組成で化学式1の化合物に該当するアセチルアセトンを配合する場合(実施例1~3)、硬化率が大きく増加することを確認することができる。
【0116】
このような結果は、NMR測定によっても検証され得るが、図1を参照してこれを説明すると、次の通りである。
【0117】
図1で最も下段のNMR結果は、実施例および比較例で使用したイオン性化合物であるLiTFSIをエチルアセテート溶媒内に単独で溶解させた後に測定した結果であり、最も上段のNMRは、前記に実施例および比較例で適用したものと同じエポキシ架橋剤を配合して測定した結果である。
【0118】
前記二つの結果を比較すると、LiTFSIにエポキシ架橋剤が添加されると、ピークがダウンフィールド(down field)にシフトすることが分かる。図1で上段から2番目のNMRは、LiTFSIおよびエポキシ架橋剤を含む溶液にアセチルアセトンを前記エポキシ架橋剤との体積比率が1:0.25(エポキシ架橋剤:アセチルアセトン)になるように添加した場合であり、3番目のNMRは、前記体積比率が約1:0.5(エポキシ架橋剤:アセチルアセトン)になるように添加した後に測定した結果である。図面を見れば、アセチルアセトンが添加されることによって、ピークがさらにアップフィールド(upfield)にシフトすることが確認され、これにより、LiTFSIがアセチルアセトンとの相互作用を通じて架橋反応を妨害する現象が解消されていることを確認することができる。
図1