(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】半透明薄膜ソーラーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0468 20140101AFI20220328BHJP
【FI】
H01L31/04 532C
(21)【出願番号】P 2020517563
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2018107709
(87)【国際公開番号】W WO2019062773
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-05-26
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519375963
【氏名又は名称】(シーエヌビーエム)ボンブー デザイン アンド リサーチ インスティテュート フォー グラス インダストリー カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハイス
(72)【発明者】
【氏名】イェルク パルム
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート フォクト
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-299663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0194523(US,A1)
【文献】特開2012-074619(JP,A)
【文献】特開2006-245507(JP,A)
【文献】特開2010-272871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/046-31/0468
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)、ならびに前記基板上に適用された層構造であって、
不透明な背面電極層(5)、
透明な前面電極層(8)、および前記背面電極層と前記前面電極層との間に配置された吸収体層(6)を含む層構造(3)を有する薄膜ソーラーモジュール(1)であって、
背面電極層区分(5-1、5-2、5-3)をそれぞれ有する直列接続した太陽電池(11-1、11-2、11-3)が、パターニングゾーン(14)によって前記層構造(3)に形成されており、
前記層構造(3)が少なくとも1つの線形コーティング除去領域(19)を有し、この線形コーティング除去領域によって、前記直列接続した太陽電池(11)が少なくとも2つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)に細分割されており、
前記コーティング除去領域(19)が光学的に透明なゾーン(18)と電極ゾーン(20)との交互の並びを有しており、
前記光学的に透明なゾーン(18)が、それぞれ、背面電極層を含まず、かつ前記電極ゾーン(20)が、それぞれ、吸収体層を含まず、かつ
不透明な背面電極層区分(5-4)を有しており、
1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)と、他の1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)とから構成される少なくとも1つの対となる前記背面電極層区分(5-1、5-2、5-3)が、少なくとも1つの電極ゾーン(20)の前記
不透明な背面電極層区分(5-4)によって互いに
電気的に接続されている、
薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項2】
前記光学的に透明なゾーン(18)が、吸収体層を含まない、請求項1に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの線形コーティング除去領域(19)が、前記パターニングゾーン(14)に対し直交して、またはこのゾーンに対し90°とは異なる角度で斜めに配置されている、請求項1または2に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項4】
1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)と、他の1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)とから構成される少なくとも1つの対となる前記背面電極層区分(5-1、5-2、5-3)が、少なくとも1つの電極ゾーン(20)の前記背面電極層区分(5-4)によって互いに面的に接続されていない、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項5】
前記層構造(3)が、並列配置で複数の線形コーティング除去領域(19)を有している、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの光学的に透明なゾーン(18)が、吸収体層を含まない直近隣接する縁部ゾーン(21)によって完全に取り囲まれている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項7】
前記縁部ゾーン(21)の総面積に対する、前記光学的に透明なゾーン(18)の総面積の比が、1を超え
る、請求項6に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項8】
前記太陽電池(11)の総面積に対する、前記光学的に透明なゾーン(18)の総面積
の比率が、5%~50%の範囲内にある、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の薄膜ソーラーモジュール(1)を製造する方法:
- 平担な基板(2)を提供すること、
- 前記基板(2)の一方の側に背面電極層(5)を堆積すること、
- 前記背面電極層(5)の上に吸収体層(6)を堆積すること、
- 前記吸収体層(6)の上に前面電極層(8)を堆積すること、
- 第1のパターニングライン(P1)によって前記背面電極層(5)をパターニングすること、
- 第2のパターニングライン(P2)によって前記吸収体層(6)をパターニングすること、
- 第3のパターニングライン(P3)によって前記前面電極層(8)をパターニングすること、
ここで、パターニングゾーン(14)を、第1のパターニングライン(P1)、第2のパターニングライン(P2)、および第3のパターニングライン(P3)の直近の並びによって形成し、前記パターニングゾーン(14)が太陽電池(11-1、11-2、11-3)のモノリシック直列接続を形成し、前記太陽電池(11-1、11-2、11-3)が、背面電極層区分(5-1、5-2、5-3)をそれぞれ有し、
- 少なくとも前記背面電極層(5)の区分毎の除去によって、それぞれ背面電極層を含まない、光学的に透明なゾーン(18)を形成すること、
- 少なくとも前記吸収体層(6)の区分毎の除去によって、それぞれ、吸収体層を含まず、かつ背面電極層区分(5-4)を有する電極ゾーン(20)を形成すること、
ここで、前記光学的に透明なゾーン(18)および前記電極ゾーン(20)が、交互に並んで配置し、かつ少なくとも1つの線形コーティング除去領域(19)を形成するようにして、これらのゾーンを形成し、この線形コーティング除去領域(19)によって、前記直列接続した太陽電池を少なくとも2つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)に細分割し、1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)と、他の1つの太陽電池ストリング(22-1、22-2、22-3)の1つの太陽電池(11-1、11-2、11-3)とから構成された少なくとも1つの対となる背面電極層区分(5-1、5-2、5-3)は、少なくとも1つの電極ゾーン(20)の前記背面電極層区分(5-4)によって互いに面的に接続されている。
【請求項10】
前記光学的に透明なゾーン(18)を、
- パルスレーザビームの照射、および/または
- 機械的材料除去
による、少なくとも前記背面電極層(5)の区分毎の除去によって作り出す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電極ゾーン(20)、および任意に縁部ゾーン(21)を、
- パルスレーザビームの照射、および/または
- 機械的材料除去
による、少なくとも前記吸収体層(6)の区分毎の除去によって作り出す、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学的に透明なゾーン(18)を、前記パターニングゾーン(14)の作製に先立って作り出し、かつ前記電極ゾーン(20)および任意に縁部ゾーン(21)を、前記パターニングゾーン(14)の作製後に作り出す、請求項9ないし11のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項13】
- 前記吸収体層(6)の堆積に先立ち、
レーザビームの照射による少なくとも前記背面電極層(5)の区分毎の除去によって、前記光学的に透明なゾーン(18)を作り出すこと;
-
機械的材料除去による、少なくとも前記吸収体層(6)および前記前面電極層(8)の区分毎の除去によって、前記吸収体層(6)および前面電極層(8)の堆積後であり、かつ前記第3のパターニングライン(P3)を作り出した後に、前記電極ゾーン(20)および任意に縁部ゾーン(21)を作り出すこと;
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的に透明なゾーン(18)および電極ゾーン(20)、ならびに任意に
縁部ゾーン(21)を、前記パターニングゾーン(14)の作製後に作り出す、請求項9ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
縁部ゾーン(21)によって取り囲まれた光学的に透明なゾーン(18)を、下記によって作り出す、請求項14に記載の方法:
- 作り出すべき前記光学的に透明なゾーン(18)および周囲の縁部ゾーン(21)にそれぞれ対応する加工ゾーンにおける、
機械的材料除去による、少なくとも前記吸収体層(6)の区分毎の除去、ここで、前記光学的に透明なゾーン(18)を前記加工ゾーンの内部領域に作り出し、かつ前記縁部ゾーン(21)を前記加工ゾーンの縁部領域に作り出し、
- 前記光学的に透明なゾーン(18)を作り出すための前記加工ゾーンの前記内部領域での、
パルスレーザビームの照射による、少なくとも前記背面電極層(5)の除去、ここで、前記加工ゾーンの前記縁部領域が、前記縁部ゾーン(21)を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オープンスペースシステムでは、ソーラーモジュールの大幅な成長が見られる。しかしながら、建物一体型の設置における利用分野では、現在なお、はるかに小さい規模でしか利用されていない。集中を排したエネルギーソリューションに向けた努力の強化に照らして、太陽光発電のためにファサード表面も同様に使用できるようにすることに対する実需が生じつつある。建築学的かつ構造工学的な理由から、建物への一体化のためには、平担で不透明なソーラーモジュールと、光透過性のソーラーモジュールとの両方が必要である。一方では適切な電力を得るために、そして他方では十分な光透過率を確保するために、ソーラーモジュールの総面積にわたって平均化して、可視光に対する5~50%の範囲内の透過性(光学的半透明性)が望ましい。半透明ソーラーモジュールの他の利用分野は、騒音軽減壁(車道、鉄道)、屋外エリア内のプライバシー障壁または温室用の壁である。
【背景技術】
【0002】
原則として太陽電池を不透明にしか実現できない結晶シリコン(c-Si)技術とは対照的に、薄膜太陽電池には、モノリシック直列接続の結果として、電気的および光学的に能動的な場所ならびに周囲の受動的領域を非常に柔軟に設計することができる、という利点がある。さらに、非晶質シリコンに基づく吸収体の場合と比べて、黄銅鉱ベースの吸収体によって著しく高い効率レベルを達成することができる。薄膜太陽電池の製造におけるプロセス技術の一つの特徴は、全表面コーティングと局所的コーティング除去との逐次的実行にあり、ここでは、例えば、太陽電池を製造するために、キャリア基板上に異なる層を直接適用し、この層のパターニング後に基板を前面側の透明なカバー層に対して接着(「積層」)して、耐候安定性複合体を形成する。マイクロエレクトロニクスにおいては慣習となっているマスキングプロセスは、全表面コーティングおよび局所的コーティング除去を用いることによって回避されている。大型の薄膜ソーラーモジュールの場合、マスキングプロセスを行うことは、非常に費用集約的で時間のかかるものである。
【0003】
現在まで、特に透明な前面電極層および透明な背面電極層と併せて、半透明モジュールを製造するための吸収体用の出発材料として、主に薄膜シリコンが使用されてきた。このために、吸収体は非常に薄く作製されてきたので、層システム全体が、赤外線および赤色波長の範囲内の電磁放射線に対して透明になっている。しかしながら、薄い吸収体を用いた結果として、望ましくないカラーフィルタ効果が発生することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対照的に、本発明の目的は、先行技術において公知の半透明薄膜ソーラーモジュールならびにその製造を改善することにあり、ここで、このモジュールは、可視光範囲内での特筆すべき透明性と共に、比較的大きい光学的に活性な領域を有していなければならない。同様に、このモジュールは視覚的に魅力的なものでなければならず、かつ特にいかなるカラーフィルタ効果も有していてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらのおよび他の目的は、請求項に記載したとおりの半透明薄膜ソーラーモジュールならびにその製造方法により、本発明の提案にしたがって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴を通して示されている。
【0006】
本発明の文脈において、「透明性」なる用語は、少なくとも85%の可視光透過率を意味する。典型的には、可視光は、380nm~780nmの波長範囲内にある。「不透明性」なる用語は、5%未満の可視光透過率を意味する。したがって、太陽電池の光学的に透明なゾーンは、85%~100%の範囲内の可視光透過率を有し;不透明ゾーンは、0%(完全不透明)から5%未満までの範囲内の可視光透過率を有する。「半透明性」なる用語は、5%から85%未満までの範囲内の可視光透過率を意味する。本発明の文脈において、「半透明性」なる用語は、薄膜ソーラーモジュールの全ての太陽電池の全面積にわたって平均化した可視光透過率と関連付けて使用される。換言すると、所望される半透明性は、薄膜ソーラーモジュールの全ての太陽電池全体にわたる不透明な領域および光学的に透明な領域の光学的透過率を平均化した結果もたらされるものである。
【0007】
本発明によれば、一体型直列接続太陽電池を有する半透明薄膜ソーラーモジュールが提示されている。「半透明性」なる用語の上述の定義を踏まえて、この薄膜ソーラーモジュールは、太陽電池の(光学的に)不透明な領域および光学的に透明な領域を有しており、ここで、太陽電池の半透明性は、全ての太陽電池の全面積にわたって可視光透過率を平均化した結果である。薄膜ソーラーモジュールの(半)透明性は、測定装置によって単純な様式で決定することができ、例えば、薄膜ソーラーモジュールの一方の側に白色光源(可視光源)を配置し、かつ薄膜ソーラーモジュールの他の側に可視光検出器を配置した測定装置で決定可能である。ここで、この検出器が、薄膜ソーラーモジュールの全ての太陽電池を通過する光を(例えば同時に)検出できることが不可欠であり、それによって、太陽電池の全面積にわたる薄膜ソーラーモジュールの光学的透明性を平均化できるようになっている。
【0008】
本発明による薄膜ソーラーモジュールは、太陽光エネルギー生成のための太陽電池のモノリシックに一体化した直列接続を伴う層構造を有する基板を含む。「薄膜ソーラーモジュール」なる用語の慣習的な使用にしたがうと、薄膜ソーラーモジュールは、適切な機械的安定性のためにキャリア基板が必要とされるような、例えば数マイクロメートルといった小さい厚みを有する層構造を有するモジュールを意味する。キャリア基板は、例えば、無機ガラス、プラスチックまたは金属、特に金属合金でできているものであってよく、かつそれぞれの層厚みおよび特定の材料特性に応じて、剛性プレートまたは可撓性フィルムとして設計することができる。本発明は、太陽電池を製造するために、光入射側に面する基板表面に層構造が適用されるサブストレート構造の薄膜ソーラーモジュール、ならびに、基板が透明であり、かつ光入射側とは反対側に面する基板表面に層構造が適用されるスーパーストレート構造の薄膜ソーラーモジュールの両方に関する。
【0009】
それ自体公知の形で、層構造は、背面電極層、前面電極層、および背面電極層と前面電極層との間に配置された光起電活性の吸収体層を含む。好ましくは、吸収体層は、例えば銅インジウム/ガリウムジスルフィド/ジセレニド(Cu(In,Ga)(S,Se)2)、例えば、銅インジウムジセレニド(CuInSe2またはCIS)または関連化合物の群からのI-III-VI族半導体である黄銅鉱化合物でできている。吸収体層は、典型的には不透明であるか、または非常に薄いものである場合には、少なくとも周波数選択的に透明であり、そのために一般的には、ある種のカラーフィルタ効果または周波数フィルタ効果が発生する。背面電極層は典型的に不透明である。前面電極層は、特にサブストレート構造の薄膜ソーラーモジュールの場合には、層構造への光の通過が可能になっていなければならないので、典型的には光学的に透明である。
【0010】
層構造において、一体型直列接続太陽電池は、従来からパターニングゾーンを用いて形成されている。したがって、少なくとも背面電極層は、第1のパターニングラインP1によって複数の区分へと細分割され、これらの区分が太陽電池の背面電極を形成する。さらに、少なくとも吸収体層は、第2のパターニングラインP2によって複数の区分へと細分割され、これらの区分は、それぞれ、太陽電池と結び付けられた吸収体であり、そして少なくとも前面電極層は、第3のパターニングラインP3によって複数の区分へと細分割され、これらの区分は太陽電池の前面電極を形成する。互いに隣り合う太陽電池は、第2のパターニングラインP2を介して互いに電気的に直列接続されており、ここで、1つの太陽電池の前面電極は、隣り合う太陽電池の背面電極に対して電気的に接続され、典型的には、ただし強制的にではないが、この背面電極と直接接触する。
【0011】
パターニングラインは、一般的には、P1-P2-P3の順で配置される。パターニングゾーンは、第1から第3のパターニングラインP1-P2-P3という直接の順番により形成される。パターニングゾーンは、例えば、線形、特に直線であり得る。パターニングラインは、一般的には、第1から第3のパターニングラインP1-P2-P3を含む順番で互いに平行に配置され、例えば、矩形または方形モジュールの縁部の一つに対して平行に走っている。例えば、パターニングラインP1-P2-P3は、それぞれ、層構造の縁部に至るまでずっと延在している。パターニングラインP1-P2-P3の延在方向は、モジュールまたは太陽電池の幅として定義することができ、それに直交する方向は、モジュールまたは太陽電池の長さとして定義することができる。各太陽電池は、例えば、層構造の幅に対応する幅を有する。
【0012】
用語の一般的使用を踏まえて、「太陽電池」は、本発明の意味するところにおいて、太陽電池の前面電極を形成する前面電極層の一区分、太陽電池の光起電活性吸収体を形成する吸収体層の一区分、および太陽電池の背面電極を形成する背面電極層の一区分を有しており、かつそれぞれパターニングラインP1-P2-P3で構成された互いに直接隣り合う2つのパターニングゾーンによって境界画定されている層構造(以下「層領域」とも呼ぶ)の一領域を意味する。これは、類推によってモジュールの縁部領域にもあてはまり、ここではパターニングゾーンの代わりに、太陽電池の直列接続と電気的に接触するための接続区分が存在し、それによって、パターニングゾーンと直近して隣り合う接続区分との間に位置する前面電極、吸収体および背面電極を有する層領域によって太陽電池が画定されるようになっている。典型的には、層領域は、隣接する一つまたは複数のパターニングゾーンの全長に沿って延在する。各パターニングゾーンは、光起電不活性(デッド)ゾーンを形成するが、一方で、それとは対照的に、層領域は(単一の)光起電活性ゾーンを有しており、かつ光起電的に活性である。
【0013】
本発明によると、層構造は少なくとも1つの線形コーティング除去領域(コーティング除去ライン)を有しており、これにより、直列接続した太陽電池は、少なくとも2つの太陽電池ストリングへと細分割されている。少なくとも1つの線形コーティング除去領域は、その延在部分全体にわたって光起電的に不活性である。したがって、少なくとも1つの線形コーティング除去領域は、直列接続した太陽電池を、第1の太陽電池を伴う第1の太陽電池ストリングと、第2の太陽電池を伴う第2の太陽電池ストリングとに分割する。第1の太陽電池および第2の太陽電池は、それぞれ、線形コーティング除去領域に隣接している。第1の太陽電池ストリングの第1の太陽電池と、それとは反対側に(向かい合って)位置する第2の太陽電池ストリングとは、それぞれ、本発明の意味するところにおいて、一つの対となる複数の太陽電池を形成する。各々の太陽電池は、背面電極層区分または背面電極を有している。
【0014】
線形コーティング除去領域は、光学的に透明なゾーンと電極ゾーンとの交互の並びを有しているか、またはこれらのゾーンで構成されている。光学的に透明なゾーンは、特に、縁部ゾーンによって取り囲まれていてよく、電極ゾーンは縁部ゾーンの一部にすぎない。光学的に透明なゾーンと電極ゾーンとの交互の並びにおいて、光学的に透明なゾーンは、それぞれ、2つの電極ゾーンの間に位置し、かつ/または、電極ゾーンは、それぞれ、2つの光学的に透明なゾーンの間に位置している。各々の光学的に透明なゾーンは、背面電極層を含まず、かつ好ましくは吸収体層も含まない。各々の電極ゾーンは、吸収体層を含まないが、背面電極層の一区分を有する。
【0015】
ここで、1つの太陽電池ストリングの1つの太陽電池と、他の1つの太陽電池ストリングの1つの太陽電池とから構成される少なくとも1つの対(すなわち、第1の太陽電池ストリングの第1の太陽電池と、第1の太陽電池に直接隣接する第2の太陽電池ストリングの第2の太陽電池とからなる1つの対)となる複数の背面電極層区分(すなわち、複数の背面電極)が、少なくとも1つの電極ゾーンの背面電極層区分によって互いに面的に接続されていることが不可欠である。したがって、2つの太陽電池の背面電極または背面電極層区分は、面的に連続している。しかしながら、吸収体層は、線形コーティング除去領域によって完全に細分割されていることから連続的ではない。したがって、線形コーティング除去領域に直交する(例えばパターニングゾーンに平行な)列の形に配置された異なる太陽電池ストリングの太陽電池は、直列接続の形で電気的に互いに直接接続されている。
【0016】
有利な効果は、太陽電池の連続的背面電極を用いて達成可能である。特に、局所的な影に対する感度が比較的高いという問題は回避される。別の重要な効果は、ホットスポット、すなわち高い電流密度に起因する局所的過熱部位の回避にある。さらに太陽電池の連続的背面電極が電位補償表面として役立つことから、層の不均質性の不利な効果を回避することができる。
【0017】
典型的には、線形コーティング除去領域が、太陽電池の直列接続を個々の直列接続太陽電池ストリングに細分割しながら、複数の太陽電池にわたって、特に全ての直列接続太陽電池にわたって、少なくとも1つの線形コーティング除去領域が連続的に延在している。本発明によれば、太陽電池の背面電極は、線形コーティング除去領域に直交する方向で直列接続されている。
【0018】
有利には、線形コーティング除去領域に直交するそれぞれの列において、薄膜ソーラーモジュールの全ての太陽電池は、電極ゾーンによって電気的に直列接続しており、ここで、このことは個々の太陽電池にはあてはまらず、そのため、第1の太陽電池と第2の太陽電池から構成される少なくとも1つの太陽電池対の背面電極が、互いに面的に接続されておらず、かつ電気的に直接接続されていないということを想定することができる。
【0019】
本発明による薄膜ソーラーモジュールの有利な実施形態においては、少なくとも1つの線形コーティング除去領域は、パターニングゾーンに直交して配置されている。しかしながら、少なくとも1つの線形コーティング除去領域を、パターニングゾーンに対し90°とは異なる(0度ではない)角度で斜めに配置することもまた可能である。原則として、少なくとも1つの線形コーティング除去領域は、パターニングゾーンに対して任意の角度で斜めに配置することができる。
【0020】
本発明の特に有利な実施形態においては、層構造は、複数の線形コーティング除去領域によって平行な配置へと細分割され、ここで、直列接続した太陽電池の2つの隣り合う太陽電池ストリングは、各々の線形コーティング除去領域によって作り出される(すなわち、第1の太陽電池を伴う第1の太陽電池ストリングおよび第2の太陽電池を伴う第2の太陽電池ストリング)。層構造の内部領域において、線形コーティング除去領域の第2の太陽電池ストリングは、直接隣り合う線形コーティング除去領域の第1の太陽電池ストリングと同一であり、その逆もまた成立する。
【0021】
光学的に透明なゾーンは、原則として、任意の形状をとることができる。好ましくは、透明なゾーンは、各場合において線形、点状、円板型、または方形である。
【0022】
有利には、全ての太陽電池の総面積に対する、全ての光学的に透明なゾーンの総面積の比率は、5%から50%までの範囲内にある。薄膜ソーラーモジュール全体にわたり平均化された、可視光に対する光学的透明性は、好ましくは5%から50%までの範囲内にあり、特に20%である。このようにして、一方では、比較的高い電気出力を達成することができ、他方では、光学的透過率は、実際の利用分野にとって適切である程度に高いものであり、それによって、出力と光学的透明性という相反する特性について優れた妥協を達成することができる。
【0023】
本発明による薄膜ソーラーモジュールの有利な実施形態において、少なくとも1つの光学的に透明なゾーンは、吸収体層を含まないが背面電極層の区分を有している直近隣接する縁部ゾーンによって取り囲まれている。すでに指摘したように、電極ゾーンは、それぞれ、縁部ゾーンの一構成要素であるものとして理解される。換言すると、光学的に透明なゾーンの縁部ゾーンは、光学的に透明なゾーンに隣接する電極ゾーンを含んでいる。したがって、電極ゾーンおよび縁部ゾーンの構造は同一である。
【0024】
光学的に透明なゾーンを作り出すためのコーティング除去プロセスのために、例えば、5から50ナノ秒の範囲内のパルス持続時間のパルスレーザビームを使用することによって、熱レーザプロセスを用いる場合、概して、コーティング除去したエリアの縁部上に短絡電流路(「分路」)が発生して、電力損失を増大させるリスクが存在する。この不利な効果は、縁部ゾーン内の部分的コーティング除去によって回避でき、モジュールの効率を有利に改善することができる。
【0025】
本発明によれば、縁部ゾーンの総面積に対する、光学的に透明なゾーンの総面積の比が、1を超え、好ましくは10を超えることが好ましい。こうすることで、光起電不活性の縁部ゾーンを通じた過度の電力損失を持続させること無く、言及した有利な効果を満足のいく形で達成することができる。
【0026】
本発明はさらに、上述のとおりに実装された薄膜ソーラーモジュールを製造する方法にも及ぶ。この方法は以下に記載する工程を含む。
【0027】
まず、平担な基板を提供する。基板の一方の側に背面電極層を堆積する。背面電極層は、基板の表面上に直接堆積することができる。代替的には、基板と背面電極層の間に少なくとも1つの追加の層が位置し得る。吸収体層を、背面電極層の上に堆積する。背面電極層は、基板と吸収体層の間に位置する。吸収体層は、背面電極層の1つの表面上に直接堆積することができる。代替的には、少なくとも1つの追加の層が、背面電極層と吸収体層の間に位置し得る。吸収体層の上に前面電極層を堆積する。吸収体層は、前面電極層と背面電極層の間に位置する。前面電極層を、吸収体層の表面上に直接堆積することができる。代替的には、前面電極層と吸収体層の間に少なくとも1つの追加の層が位置することができる。典型的には、吸収体層と前面電極層の間には少なくとも1つのバッファ層が位置している。少なくとも背面電極層、吸収体層および前面電極層で構成された層シーケンスによって、層構造を形成する。
【0028】
少なくとも背面電極層を、第1のパターニングライン(P1)によってパターニング(細分割)する。背面電極層のパターニングは、典型的には、ただし強制的にではないが、吸収体層の堆積前に行う。少なくとも吸収体層を、第2のパターニングライン(P2)によってパターニング(細分割)する。吸収体層のパターニングは、典型的には、ただし強制的にではないが、前面電極層の堆積前に行う。少なくとも前面電極層を、第3のパターニングライン(P3)によってパターニング(細分割)する。パターニングラインの創出は、典型的には、P1-P2-P3の順で行う。第1のパターニングライン(P1)、第2のパターニングライン(P2)、および第3のパターニングライン(P3)の直接の並びが、パターニングゾーン(14)を形成しつつ、太陽電池のモノリシックな直列接続が、このパターニングゾーンによって形成される。太陽電池は、それぞれ、第1のパターニングライン(P1)による背面電極の細分割に起因して、背面電極層区分を有している。
【0029】
それぞれ背面電極層を含まない光学的に透明なゾーンを、同様に少なくとも背面電極層の区分毎の除去によって作り出す。さらに、それぞれ吸収体層を含まないが背面電極層区分は有する電極ゾーンを、少なくとも吸収体層の区分毎の除去によって作り出す。光学的に透明なゾーンと電極ゾーンとを、交互の並びで配置し、共に少なくとも1つの線形コーティング除去領域を形成するように実施し、この少なくとも1つの線形コーティング除去領域によって、直列接続した太陽電池が少なくとも2つの太陽電池ストリングへと細分割される。ここで、少なくとも1つの電極ゾーンの背面電極層区分によって、一方の太陽電池ストリングの1つの太陽電池と、他方の太陽電池ストリングの1つの太陽電池とから構成される少なくとも1つの対となる背面電極層区分が、互いに面的に接続されるように、光学的に透明なゾーンと電極ゾーンとを実施することが不可欠である。
【0030】
本発明による方法の一実施形態によると、光学的に透明なゾーンは、パルスレーザビームの照射および/または機械的材料除去による、少なくとも背面電極層の区分毎の除去によって作り出される。
【0031】
本発明による方法の別の実施形態によると、電極ゾーン、および任意に縁部ゾーンは、パルスレーザビームの照射および/または機械的材料除去による、少なくとも吸収体層の区分毎の除去によって作り出される。
【0032】
一般的には、光学的に透明なゾーンは、パターニングゾーンの作製前に、換言すると、太陽電池の形成および太陽電池のモノリシック直列接続のプロセス中に、あるいはパターニングゾーンの作製後に、換言すると、太陽電池のモノリシック直列接続の製造後に、作り出すことができる。このことは、電極ゾーンならびに任意に提供される縁部ゾーンについても言えることであり、これらは、パターニングゾーンの作製中または作製後に作り出すことができる。
【0033】
本発明の有利な実施形態において、光学的に透明なゾーンを、パターニングゾーン作製前に作り出し、かつ電極ゾーンおよび任意に縁部ゾーンを、パターニングゾーンの作製後に作り出す。
【0034】
有利には、このような方法は、吸収体層の堆積前に、少なくとも背面電極層の区分毎の除去によって光学的に透明なゾーンを作り出す工程を含む。背面電極層のコーティング除去は、好ましくはレーザビームの照射によって行われる。この方法は、吸収体層および前面電極層の堆積後ならびに第3のパターニングライン(P3)の生成後に、少なくとも吸収体層および前面電極層の区分毎の除去によって、電極ゾーンおよび任意に縁部ゾーンを作り出すさらなる工程を含む。吸収体層および前面電極層のコーティング除去は、好ましくは、機械的材料除去によって行われる。
【0035】
本発明の別の有利な実施形態においては、光学的に透明なゾーンおよび電極ゾーン、ならびに任意に縁部ゾーンは、パターニングゾーンの作製後、換言すると太陽電池のモノリシック直列接続の生成後に初めて作り出される。この手順は、従来のとおりに製造された薄膜ソーラーモジュールの太陽電池の直列接続を本発明による方法に付して、所望の半透明性を有する薄膜ソーラーモジュールを提供することができるという点で有利である。直列接続した太陽電池を製造するためにすでに使用されている方法を、有利にも保持することができる。
【0036】
有利には、縁部ゾーンによって取り囲まれている光学的に透明なゾーンを作り出すためのこのような方法には、少なくとも吸収体層を加工ゾーン内で区分毎に除去する工程が含まれる。加工ゾーンの寸法は、各場合において作り出すべき光学的に透明なゾーンおよび縁部ゾーンの寸法に対応する。ここで、光学的に透明なゾーンは、加工ゾーンの内部領域に作り出され、縁部ゾーンは、それぞれ、この内部領域を取り囲む加工ゾーンの縁部領域に作り出される。加工ゾーンにおける層除去を、好ましくは機械的材料除去によって行う。この方法は、加工ゾーンの内部領域で少なくとも背面電極層を除去し、これにより光学的に透明なゾーンを作り出すさらなる工程を含む。加工ゾーンの背面電極層を含まない内部領域を取り囲む縁部領域は、吸収体層を含まない縁部ゾーンを形成するが、この縁部ゾーンは背面電極層の一区分を有している。内部領域の層除去は、好ましくは、パルスレーザビームの照射により行なわれる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも背面電極層、特に層構造に、1ナノ秒未満のパルス持続時間を有するパルスでパルスレーザビームを照射することによって、光学的に透明なゾーンを作り出す。代替的には、少なくとも背面電極層、特に層構造に、少なくとも1ナノ秒のパルス持続時間を有するパルスでパルスレーザビームを照射することによって、光学的に透明なゾーンを作り出す。例えば、ニードルライティング(スクラッチング)、ブラッシング、またはスクレーピングなどによる機械的材料除去も想定することができる。好ましくは、光学的に透明なゾーンを作り出すためには、パルス持続時間が1ナノ秒未満、特に好ましくは100ピコ秒未満のパルスを有するパルスレーザビームを使用する。発明者らによる実験が明らかにしたように、例えば5から50ナノ秒の範囲内のより長いパルス幅を有するレーザ-パルスを使用すると、吸収体層内への高い熱流入に起因する層構造の局所的損傷、および前面電極層と背面電極層との間の溶融接合の生成が結果としてもたらされる。驚くべきことに、1ナノ秒未満の持続時間でレーザパルスを使用することによって、有利には、これらの不利な効果を著しく削減することが可能である。
【0038】
好ましくは、電極ゾーン、および任意に縁部ゾーンでさえも、少なくとも吸収体層のパルスレーザビームの照射によって作り出すことが可能であり、ここで、パルスは1ナノ秒未満のパルス持続時間を有する。代替的には、層除去は、例えば、ニードルライティング(スクラッチング)、ブラッシング、またはスクレーピングなどによる機械的材料除去によって行うことができる。特に有利には、同様に、光学的に透明なゾーンを取り囲む縁部ゾーンを作り出すために、1ナノ秒未満、好ましくは100ピコ秒未満の持続時間のパルスを有するレーザビームを使用し、それによって、溶融接合が生じることを回避する。
【0039】
光学的に透明なゾーンおよび電極ゾーン、ならびに任意に縁部ゾーンを作り出すための、レーザビームを使用した層構造での層の選択的除去は、特に、以下のプロセスパラメータのうちの1つまたはそれを超えるものを改変することによって達成可能である:
- レーザ出力、
- 層構造または基板の照射表面に対するレーザビームの走行速度、
- レーザパルス繰り返し率、
- パルス持続時間、
- レーザのオンオフ周期。
【0040】
特に、層構造内に特に生成される穴の深さを、レーザパルスの空間的重なりによって変えることができ、これにより、例えば、縁部ゾーンの場合に、本質的に背面電極層の上方の層のみを除去することができる。
【0041】
レーザパルスを用いた光学的に透明なゾーンおよび電極または縁部ゾーンの生成は、例えば、照射出力および/またはレーザパルスの繰り返し率などのプロセスパラメータを変更することなどによって、単一のプロセスステップ中の一段階の手順において行うことができる。ここでは、各場合において、光学的に透明なゾーン、次いで電極ゾーンまたは縁部ゾーンを作り出す。しかしながら、第1のプロセスステップにおいて全ての光学的に透明なゾーンを作り出し、かつプロセスパラメータを変更したさらなるプロセスステップにおいて全ての電極ゾーンまたは縁部ゾーンを作り出すような二段階の手順も同様に可能である。ここでは、順序は重要ではない。
【0042】
コストの観点から見て有利である本発明の一実施形態において、層構造における光学的に透明なゾーン(すなわちパターニングゾーンの作製)は、レーザビーム源のパルスレーザビームを用いて作り出され、ここで、レーザビームのパルスは、1ナノ秒超であり、特に5から50ナノ秒の範囲内のパルス持続時間を有する。次に、電極ゾーン、および任意に縁部ゾーンが、レーザビームのパルスが1ナノ秒未満、好ましくは100ピコ秒未満の持続時間を有するレーザビーム源のパルスレーザビームを用いて作り出される。代替的には、電極ゾーン、および任意に縁部ゾーンは、例えば、ニードルライティング(スクラッチング)、ブラッシング、またはスクレーピングなどの層構造での機械的材料除去を用いて作り出される。経済的理由から好ましいのは、縁部ゾーンを作り出すために層構造において機械的材料除去を使用することである。
【0043】
本発明による方法においては、光学的に透明なゾーンおよび電極ゾーン、ならびに任意に縁部ゾーンを作り出すために、パルスレーザを用いた層構造の側からの照射によって、(パターニングゾーンの作製後の)層構造における層除去を行うことができる。代替的には、層除去は、透明な基板を通じて行うことができる(「アブレーション」)。この目的で、層構造は、例えばガラスなどの透明な基板上に適用される。アブレーションの間、背面電極のわずかな部分の気化を伴いながら、導入されたレーザエネルギーが背面電極層に吸収され、それによって、完全な層構造をその上に有する背面電極層は、膨張する気体によって膨らむ。これは、この膨らんだ領域が、円形形状の周囲の積層から取り除かれるまで起こる。この領域が取り除かれた結果として、感知できるほどのレーザエネルギーがこの縁部領域を融解させることもなければ、さらには背面および前面電極を溶融させることさえもないので、円形領域の縁部は分路の無い状態を維持する。このようにして、分路の割合が比較的小さい透明なゾーンを作り出すことができ、これによりモジュールの性能損失を削減することができる。
【0044】
本発明のさまざまな実施形態は、個別にまたは任意の組合せで実現可能である。特に、以上および以下で言及する特徴は、指示された組合せでのみならず、他の組合せでまたは孤立した形態でも、本発明の範囲から逸脱することなく使用可能である。
【0045】
ここで、本発明について、例示的実施形態を用い、添付図を参照しながら詳細に説明する。これらの図は、簡略化され原寸に比例しないで示されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明による薄膜ソーラーモジュールの一実施形態にしたがった太陽電池の一体化された直列接続の概略的断面図である。
【
図2】本発明による薄膜ソーラーモジュールの例示的実施形態の概略的平面図である。
【
図3】本発明による薄膜ソーラーモジュールの別の例示的実施形態の概略的平面図である。
【
図4】周囲の縁部ゾーンを伴う光学的に透明なゾーンの概略図である。
【
図5】切断線A-Aに沿った
図4の光学的に透明なゾーンおよび縁部ゾーンの断面図である。
【
図6】本発明による方法の例示的実施形態を示すための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、断面図を用いて、全体として番号1として言及する本発明による薄膜ソーラーモジュールを概略的に例示する。薄膜ソーラーモジュール1は、一体化された形態で互いに直列接続した複数の太陽電池11を含むが、ここでは大幅に簡略化した形で2つの太陽電池11のみが描かれている。当然のことながら、一般的には、薄膜ソーラーモジュール1の中では、多数の太陽電池11(例えばおおよそ100~150)が直列接続している。
【0048】
薄膜ソーラーモジュール1は、サブストレート構造において複合ペイン構造を有し、換言すると、その上に適用された薄膜でできた層構造3を有する第1の基板2を有し、ここで、層構造3は第1の基板2の入光側の表面(受光面)に配置されている。ここでは、第1の基板2は、比較的高い光透過率を有する剛性ガラスプレートとして実装されるものの、実施するプロセスステップとの関係において所望される安定性および不活性挙動を有する他の電気絶縁性の材料も同様に使用可能である。
【0049】
層構造3は、第1の基板2の入光側表面上に配置された状態で、例えばモリブデン(Mo)などの光不透過性金属から作られ、蒸着またはマグネトロン強化カソードスパッタリング(スパッタリング)によって第1の基板2上に適用された不透明な背面電極層5を含む。背面電極層5は、例えば、300nmから600nmの範囲内の層厚さを有する。
【0050】
割り当てられる日光を可能なかぎりたくさん吸収することのできるバンドギャップを有する金属イオンをドープした半導体でできた光起電活性(不透明)吸収体層6が、背面電極層5上に適用される。吸収体層6は、例えば、p-伝導型黄銅鉱化合物半導体、例えばCu(In/Ga)(S/Se)2群、特にナトリウム(Na)-ドープ型Cu(In/Ga)(S/Se)2の化合物でできている。上記式は、インジウム(In)またはガリウム(Ga)、ならびに硫黄(S)またはセレン(Se)が、代替的にまたは組合せた形で存在し得ることを意味するものとして理解される。吸収体層6は、例えば1から5μmの範囲内にあり、特におおよそ2μmである層厚さを有する。典型的には、吸収体層6の生成のためには、例えばスパッタリングによってさまざまな材料の層を適用し、その後、任意にはSおよび/またはSeを含有する雰囲気中で、炉内で加熱すること(RTP=急速加熱処理)によって、熱変換させて化合物半導体を形成する。化合物半導体のこの製造方法は、当業者にとって周知のものであり、したがってここで詳述する必要はない。
【0051】
バッファ層7を吸収体層6上に堆積し、このバッファ層は、ここでは例えば、
図1には詳細に描かれていない硫化カドミウム(CdS)の単一層と真性酸化亜鉛(i-ZnO)の単一層とで構成されている。
【0052】
前面電極層8を、例えばスパッタリングによってバッファ層7上に適用する。前面電極層8は、可視スペクトル範囲内の放射線に対して透明であり(「ウィンドウ電極」)、それによって、入射日光(
図1に4本の平行な矢印により描かれている)は僅かしか弱められないようになっている。前面電極層8は、例えば、ドープした金属酸化物、例えばn伝導型アルミニウム(Al)-ドープ型金属酸化物(ZnO)である。このような前面電極層8は、概してTCO層(TCO=透明導電性酸化物)と呼ばれる。前面電極層8の層厚さは、例えばおおよそ500nmである。バッファ層7および吸収体層6と合わせて前面電極層8によって、ヘテロ接合(すなわち相対する導体タイプの層シーケンス)が形成される。バッファ層7は、吸収体層6と前面電極層8の間の電子適応をもたらすことができる。
【0053】
太陽電池11の形成および直列接続のために、層構造3は、例えばレーザリトグラフィおよび/または機械的除去などの好適なパターニング技術を用いてパターニングされた。典型的には、それぞれ層溝の形をした3本のパターニングラインP1-P2-P3の複数の直近の並びを、この順序で層構造3内に導入する。ここでは、少なくとも背面電極5が第1のパターニングラインP1によって;少なくとも吸収体層が第2のパターニングラインP2によって;そして、少なくとも前面電極層8が第3のパターニングラインP3によって;それぞれの溝の生成によって細分割される。例えば、前面電極層8が直接背面電極層5と直接接触しながら、第2のパターニングラインP2を介して、1つの太陽電池11の前面電極層8を、それぞれ隣接する太陽電池11の背面電極層5に対して導電的に接続する。描かれた例示的実施形態において、第1のパターニングラインP1の溝には、吸収体層6の材料が充填されている。第2のパターニングラインP2の溝には、前面電極層8の材料が充填されており、第3のパターニングラインP3の溝には、以下で言及する接着剤層9が充填されている。第1、第2および第3のパターニングラインP1-P2-P3の各々の直近の並びが、パターニングゾーン14を形成する。
図1には、一例として、単一のパターニングゾーン14のみが描かれており、これによって、2つの隣接する太陽電池11の直列接続が画定され、ここで薄膜ソーラーモジュール1には、太陽電池11のパターニングおよび直列接続のためにこのようなパターニングゾーン14が多数提供されていることが理解される。
【0054】
ここで描かれている例示的実施形態においては、薄膜ソーラーモジュール1の正の電源コネクタ(+)および負の電源コネクタ(-)の両方が、背面電極層5を介して経路設定され、そこで電気的に接触させられている。この目的で、薄膜ソーラーモジュール1の2つの周辺接続区分13で、層構造3の層は、背面電極層5に至るまで除去されている。
【0055】
環境の影響に対する保護のため、層構造3を封入するのに役立つ(プラスチック)接着剤層9を、前面電極層8の上に適用する。接着剤層9で接着結合するのは、例えば、低い鉄含量の超白色ガラス製のガラスシートの形態で実装される日光に対して透明な第2の基板10であり、この場合、実施するプロセスステップとの関係において所望の強度および不活性挙動を有する他の電気的絶縁性材料の使用も同様に可能である。第2の基板10は、層構造3の封止および機械的保護のために役立つ。薄膜ソーラーモジュール1は、第2の基板10の前面側のモジュール表面4を介して光を吸収することができ、それによって、2つの電源コネクタ(+、-)に電圧を生じさせるようになっている。結果として得られる電流路は、直列に配設された矢印によって、
図1に描かれている。
【0056】
2つの基板2、10は、接着剤層9を介して互いに固定的に結合(「積層」)されており、この場合、接着剤層9は、ここでは例えば、加熱により可塑的に再整形することができかつ冷却中に2つの基板2、10を互いに固定的に結合する熱可塑性接着剤層として実装されている。接着剤層9はここでは、例えばPVB製である。2つの基板2、10は、接着剤層9に組み込まれた太陽電池11と共に、積層複合体12を形成する。
【0057】
ここで、
図2および3を参照すると、それぞれ、本発明による薄膜ソーラーモジュール1の例示的実施形態の概略図が平面図で描かれている。この2つの薄膜ソーラーモジュール1は、それぞれ、
図1に関して説明したとおり太陽電池11の一体化された直列接続を有する。
【0058】
まず
図2を考慮すると、薄膜ソーラーモジュール1の方形または典型的には矩形の形状が、平面図で認識できる。互いに平行でかつパターニングゾーン14を形成する第1から第3のパターニングラインP1-P2-P3の直近の並びは、
図2中では、表現をより簡略化する目的で、それぞれ唯一本の線として描かれている。パターニングゾーン14は、それぞれ、エネルギーの生成には全く寄与することができない光起電的に不活性なデッドゾーン15を形成している。
図2に描かれているように、パターニングゾーン14は、それぞれ、例えばここではx方向に、モジュール縁部に平行に配置されており、これは、薄膜ソーラーモジュール1の幅と呼ぶこともできる。それに直交するy方向は、薄膜ソーラーモジュール1の長さと呼ぶことができる。
図1に描かれている周辺接続区分13は、
図2には詳細に示されていない。2つの接続区分13は同様に、それぞれ、エネルギーの生成に全く寄与することができない光起電的に不活性なデッドゾーンを形成していする。
【0059】
パターニングゾーン14に隣接して両側に位置しているのは、それぞれ、本発明の意味するところにおいて、光起電活性ゾーン17を有する太陽電池11を示す層領域16である。薄膜ソーラーモジュール1の内部領域において、各層領域16は、2つの直近で隣り合うパターニングゾーン14の間に配置され、かつこれらのパターニングゾーンによって境界画定されている。2つの周辺太陽電池11の場合は、層領域16が、それぞれ、パターニングゾーン14と隣り合うコネクタ区分13との間に配置され、このパターニングゾーンとコネクタ区分とによって境界画定されている。層領域16は、隣り合うパターニングゾーン14の全寸法にわたってx方向に延在している。
【0060】
図2に描かれているように、層構造3はさらに、パターニングゾーン14に直交して走る複数の線形コーティング除去領域19を含む。線形コーティング除去領域19による細分割に起因して、直列接続した太陽電池11は、それぞれ直列接続太陽電池11-1、11-2、11-3を有する複数の太陽電池ストリング22-1、22-2、22-3に細分割される。
図2は、一例として、3つの太陽電池ストリング22-1、22-2、22-3を画定する2本の線形コーティング除去領域19を描いている。線形コーティング除去領域19の両側で、このコーティング除去領域19に直近して隣り合い、かつ直近して隣り合う2つの太陽電池ストリングに属する、それぞれ向かい合って位置する2つの太陽電池が、本発明の意味するところにおいて一対の太陽電池を形成しながら、これらの太陽電池ストリングのこれらの太陽電池が、互いに向かい合って(反対側に)位置している。こうして、
図2では、互いに反対側に位置し、上部線形コーティング除去領域19の両側に配置された太陽電池11-1、11-2は、太陽電池の対を形成する。同じことは、互いに反対側に位置し、下部線形コーティング除去領域19の両側に配置され、同様に太陽電池対を形成する太陽電池11-2、11-3についてもあてはまる。第1の太陽電池ストリングの太陽電池11-1は、それぞれ、背面電極層区分または背面電極5-1、吸収体層区分または吸収体6-1、および前面電極層区分または前面電極8-1を含む。相応して、第2の太陽電池ストリング22-2の太陽電池11-2は、それぞれ、背面電極層区分または背面電極5-2、吸収体層区分または吸収体6-2、および前面電極層区分または前面電極8-2を含み;第3の太陽電池ストリング22-3の太陽電池11-3は、それぞれ、背面電極層区分または背面電極5-3、吸収体層または吸収体6-3、および前面電極層区分または前面電極8-3を含む。
【0061】
コーティング除去領域19は、それぞれ、多数の太陽電池11にわたって層構造3に連続的に延在する。各々の線形コーティング除去領域19は、光起電的に不活性であり、交互に並んだ光学的に透明なゾーン18および電極ゾーン20で構成されている。換言すると、光学的に透明なゾーン18は2つの電極ゾーン20の間に位置し、かつ/または電極ゾーン20は、2つの光学的に透明なゾーン18の間に位置する。
【0062】
光学的に透明なゾーン18および電極ゾーン20の構造は、
図4および5に例示されている。光学的に透明なゾーン18および電極ゾーン20の層シーケンスは、切断線A-Aに沿った
図4の断面図である
図5に提示されている。したがって、光学的に透明なゾーン18は、薄膜ソーラーモジュール1の所望される光学的透明性を達成するために、背面電極層を含まず、好ましくは吸収体層も含まない。
図5に示されているように、例えば、光学的に透明なゾーン18では、層構造3の全ての層(すなわち、背面電極層5、吸収体層6、バッファ層7、および前面電極層8)が、基板2に至るまで除去されている。しかしながら、いずれの場合でも、通常は不透明な背面電極層5を除去しつつ、光学的に透明なゾーン18で層構造3の全ての層は、除去しないということも可能である。
【0063】
図示されているように、光学的に透明なゾーン18は縁部ゾーン21によって取り囲まれており、ここで電極ゾーン20は互いに向き合って位置する縁部ゾーン21の2つの区分である。したがって、電極ゾーン20およびそれらを含む縁部ゾーン21の層構造は同じである。電極ゾーン20または縁部ゾーン21では、背面電極層区分5-4を除いて、全ての層が除去されている。
【0064】
さらなる説明のため、ここで再び
図2を参照する。
図4および5の実施形態とは対照的に、これらの実施形態において、光学的に透明なゾーン18は縁部ゾーン21によって完全に取り囲まれておらず、その代わりに、それぞれ、2つの電極ゾーン20は光学的に透明なゾーン18に境を接する。電極ゾーン20は、それぞれ矩形であり、パターニングゾーン14に対して平行にx方向に延在し、ここで、これらの電極ゾーンは、線形コーティング除去領域19の寸法全体を跨ぎ、それによって、互いに隣接する太陽電池対となる直近して隣り合う2つの太陽電池11-1および11-2、または11-2および11-3の背面電極層区分5-1および5-2、または5-2および5-3が、電極ゾーン20の背面電極層区分5-4によって互いに面的に(上下に)接続するようになっている。したがって、線形コーティング除去領域19に直交する列の形で配置した太陽電池11-1、11-2、11-3の背面電極5-1、5-2、5-3は、電極ゾーン20によって互いに面的に(上下に)接続されている。こうして、線形コーティング除去領域19に直交する列の形で配置した太陽電池11-1、11-2、11-3は、直列接続の形で互いに電気的に直接接続される。当然のことながら、線形コーティング除去領域19に直交する列の形で配置した太陽電池11-1、11-2、11-3の直近して隣り合う2つの背面電極層区分5-1および5-2、または5-2および5-3は、それぞれ同様に、複数の電極ゾーン20によって互いに面的に(上下に)結合することができる。
図2において、線形コーティング除去領域19はパターニングゾーン14に直交して配置されているが、これらの線形コーティング除去領域をパターニングゾーン14との関係において90°とは異なる角度で斜めに配置することも同様に可能である。
【0065】
光起電活性ゾーン17または太陽電池11は不透明であり、5%未満の可視光透過率を有する。これとは対照的に、線形コーティング除去領域19の光学的に透明なゾーン18は、少なくとも85%という可視光透過率を有する。太陽電池11の総面積に対する、全ての光学的に透明なゾーン18の総面積の比率は、5%から50%の範囲内にある。したがって、薄膜ソーラーモジュール1の総面積にわたって平均化した半透明薄膜ソーラーモジュールの光学的透明性も同様に5%から50%の範囲内にあり、特に20%である。
【0066】
光学的に透明なゾーン18は、線形コーティング除去領域19に沿って薄膜ソーラーモジュール1全体にわたって均等に分布して配置されており、これにより、全体的に非常に滑らかな視覚効果を得ることができる。線形コーティング除去領域19に直交する列の形で配置した太陽電池11-1、11-2、11-3の直列接続によって、本明細書の導入部で言及した利点(例えば、影に対する低い感度、ホットスポットの回避、層の不均質性の電位補償など)を達成することができる。
【0067】
ここで
図3を参照すると、本発明による薄膜ソーラーモジュール1の別の例示的実施形態が平面図で描かれている。不要な繰り返しを避けるため、
図2の例示的実施形態に比べた差異のみを説明し、それ以外では、
図2における記述を参照するものとする。したがって、光学的に透明なゾーン18は、ここでは、それぞれ光学的に透明なゾーン18を完全に取り囲む、すでに
図4および5に関連して説明した縁部ゾーン21を含む。各縁部ゾーン21は、互いに向かい合って位置する2つの電極ゾーン20を含み、ここでコーティング除去領域19の端部を除いて、1つの電極ゾーン20は2つの直近隣接する縁部ゾーン21に属している。縁部ゾーン21によって、コーティング除去されたエリアの縁部の短絡電流路を有利に回避できる。有利には、縁部ゾーン21の総面積に対する、光学的に透明なゾーン18の総面積の比は、1を超え、好ましくは10を超える。
【0068】
図6は、本発明による薄膜ソーラーモジュール1を製造するための例示的方法を示す。
【0069】
この方法によれば、工程Iにおいて、直列接続した太陽電池11の形成のために、内部にパターニングゾーン14を導入した層構造3がその上に適用された基板2を提供する。
【0070】
工程IIでは、線形コーティング除去領域19を作り出す。ここでは、光学的に透明なゾーン18を、レーザビーム源のパルスレーザビームを用いて基板2に至るまで層構造3の全ての層を除去することによって作り出す。この目的で、層構造3に、1ナノ秒未満の持続時間を有するパルスで、パルスレーザビームを照射する。層構造3に、好ましくは、透明な基板2を通じて照射する。しかしながら、基板2の反対側に面する側からの層構造3の直接照射も同様に可能である。代替的には、光学的に透明なゾーン18を、機械的材料除去によって作り出すことができる。さらに、1ナノ秒未満の持続時間を有するパルスでのパルスレーザビームを用いた層構造3の照射、および/または機械的材料除去によって、電極ゾーン20を作り出す。電極ゾーン20は、線形コーティング除去領域19に対し横断方向にある列で配置した太陽電池11-1、11-2、11-3の背面電極層区分5-1、5-2、5-3を面的に結合する。光学的に透明なゾーン18および電極ゾーン20の生成は、必ずしも時間的に連続して実施する必要はない。代わりに、1つの光学的に透明なゾーン18およびそれに隣接する電極ゾーン20を直近連続して生成することができる。
【0071】
あるいは、工程IIでは、電極ゾーン20を含む縁部ゾーン21を光学的に透明なゾーン18の周りに作り出す。1ナノ秒未満の持続時間を有するパルスでのパルスレーザビームを用いた層構造3の照射によって、および/または機械的材料除去によって、縁部ゾーン21を作り出す。縁部ゾーン21を光学的に透明なゾーン18の周りに作り出す場合、少なくとも1ナノ秒の持続時間を有するパルスをもつパルスレーザビームの照射によって、光学的に透明なゾーン18を作り出すことも可能である。
【0072】
本発明は、可視光に対し半透明な薄膜ソーラーモジュールにおいて、層構造が線形コーティング除去領域によって複数の太陽電池ストリングへと細分割されており、各々の線形コーティング除去領域が光学的に透明なゾーンと電極ゾーンとを交互の並びで有している、薄膜ソーラーモジュールを提供する。光学的に透明なゾーンを、比較的複雑なパターンで、簡単な方法によって配置することができる。したがって、表面パターニングを小さな部分へと視覚的に魅力ある形で分割することが、簡単な様式で実現可能になる。線形コーティング除去領域に直交する列の形に配置した太陽電池の面的に接続した背面電極を用いて、局所的な影および高い電流密度に起因する局所的過熱部位に関する問題を防止する。さらに、接続した背面電極層が電位補償表面として役立つので、層不均質性の不利な効果を回避することができる。
【0073】
以上の説明において述べたとおり、本発明は、有利に、技術的に相対的に複雑ではなく、汎用性が高く、かつ経済的な、薄膜ソーラーモジュールの製造を可能にするものであり、本発明によって、比較的高い可視光透過率を有しながら、比較的大きい光学的に活性な面積を有する薄膜ソーラーモジュールを得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 薄膜ソーラーモジュール
2 第1の基板
3 層構造
4 モジュール表面
5 背面電極層
5-1、5-2、5-3、5-4 背面電極層区分
6 吸収体層
6-1、6-2、6-3 吸収体層区分
7 バッファ層
8 前面電極層
8-1、8-2、8-3 前面電極層区分
9 接着剤層
10 第2の基板
11、11-1、11-2、11-3 太陽電池
12 複合体
13 接続区分
14 パターニングゾーン
15 デッドゾーン
16 層領域
17 光起電活性ゾーン
18 光学的に透明なゾーン
19 コーティング除去領域
20 電極ゾーン
21 縁部ゾーン
22-1、22-2、22-3 太陽電池ストリング