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特許7047080成形システムにおけるリアルタイム材料および速度制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】成形システムにおけるリアルタイム材料および速度制御
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220328BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20220328BHJP
【FI】
B29C45/76
G06F30/23
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020518674
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018049687
(87)【国際公開番号】W WO2019070362
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】62/692,329
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,548
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514159601
【氏名又は名称】アイエムフラックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ゲルゴフ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ-チー ホアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アンドリュー バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】リック アラン ポラード
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-252957(JP,A)
【文献】特開平08-244078(JP,A)
【文献】特開2000-355033(JP,A)
【文献】特開平08-281756(JP,A)
【文献】特開平05-237897(JP,A)
【文献】特開昭62-003916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200710(US,A1)
【文献】特開昭50-052169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
空洞と、
材料を前記空洞に射出するように構成されている射出ノズルと、
センサ場所における複数のセンサであって、前記複数のセンサの各々が、第1の成形サイクル中に前記センサ場所のうちの1つにおいてパラメータを測定するように構成されており、前記システムは、機械変数を材料変数および溶融変数と相関させる制御の統計的方法で、前記空洞へ射出された前記材料の重量又は質量を計算し、前記システムは、成形型内の前記射出された材料の実際の重量および質量を測定する、該複数のセンサと、
前記空洞への材料の射出の流量を制御するように構成されているコントローラと、を備え、
前記コントローラが、前記測定されたパラメータを受信し、かつ前記第1の成形サイクル中に前記測定されたパラメータを所定の曲線と比較するように構成されており、
前記第1の成形サイクル中に、前記コントローラが、前記測定されたパラメータが前記所定の曲線から逸脱するとき、前記流量を制御するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
有限要素解析(「FEA」)計算を通して、前記所定の曲線を作成するように構成されたプロセッサをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、成形型のFEAモデル上で前記FEA計算を実行するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記成形型の前記FEAモデルが、前記センサ場所に対応する場所において仮想センサを含むことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前方への射出のための機械信号、充填指数、および粘度変化指数のうちの1つの統計処理の関数として、前記空洞内部の前記材料の重量を計算するように構成されたプロセッサをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
前方への射出のための機械信号、充填指数、および粘度変化指数のうちの1つの統計処理の関数として、前記空洞内部の前記材料の質量を計算するように構成されたプロセッサをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラが、圧力、ねじ速度、および温度のうちの少なくとも1つを制御するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、圧力、ねじ速度、または組み合わせプロファイルによって材料の溶融を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
射出成形システム内の漏れを検出する方法であって、
駆動機構を有する射出成形型を提供することと、
射出材料を射出成形型に射出することと、
前記駆動機構において前記射出成形型の内部の圧力、体積、および温度を判定することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前記圧力、体積、および温度の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の重量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前記圧力、体積、および温度の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の質量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前方射出のための機械信号の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の重量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前方射出のための前記機械信号の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の質量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における充填指数の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の重量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前記充填指数の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の質量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における粘度変化指数の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の重量を計算することと、
材料の射出中の前記駆動機構における前記粘度変化指数の統計処理の関数として、前記射出成形型の内部の前記射出材料の質量を計算することと、
前記射出成形型の内部の前記射出材料の実際の重量を測定することと、
前記射出成形型の内部の前記射出材料の実際の質量を測定することと、
前記計算された質量を前記実際の質量と比較することと、
前記計算された重量を前記測定された重量と比較することと、
少なくとも1つの事前定義された漏れ条件が存在すると判定すると、漏れ警報を生成することであって、前記事前定義された漏れ条件が、前記計算された質量と所定の質量閾値を超える前記実際の質量との間の差、および前記計算された重量と所定の重量閾値を超える前記実際の重量との間の差、から選択される群のうちの少なくとも1つからなる、生成することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記圧力、体積、および温度の各々が、複数のセンサによって直接測定および計算されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力、体積、および温度の各々が、計算されたパラメータであることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記事前定義された漏れ条件が、少なくとも3%の漏れ率に対応することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記漏れ警報を生成すると、前記射出成形型への前記射出材料の前記射出を終了することをさらに含むことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
空洞と、前記空洞に射出材料を射出するように構成された駆動機構と、を有する、射出成形デバイス内の漏れを補償する方法であって、
センサ場所に複数のセンサを提供することであって、前記複数のセンサの各々が、前記センサ場所において前記射出材料の圧力、体積、および温度を感知ならびに計算するように構成されている、該提供することと、
前記複数のセンサから受信した情報の関数として、射出プロセス中に前記空洞の内部の前記射出材料の重量および質量を計算することと、
前記計算された前記射出材料の重量および質量に従って、前記駆動機構の速度を調節することと、
前記計算された前記射出材料の重量および質量に基づいて、前記空洞が前記射出材料によって充填されたときを判定することと、
前記空洞が充填されたと判定すると、前記駆動機構を停止することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記複数のセンサが、歪みゲージを欠くことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記射出成形デバイスはチェックリングを含み、前記漏れは前記チェックリングの周囲で発生することを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前方への射出のための機械信号の統計処理の関数として、射出プロセス中に前記空洞の内部の前記射出材料の前記重量および前記質量を計算することをさらに含むことを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
充填指数の関数として、射出プロセス中に前記空洞の内部の前記射出材料の前記重量および前記質量を計算することをさらに含むことを特徴とする請求項14ないし17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
粘度変化指数の統計処理の関数として、射出プロセス中に前記空洞の内部の前記射出材料の前記重量および前記質量を計算することをさらに含むことを特徴とする請求項14ないし18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
コントローラは、前記計算された重量および質量のうちの少なくとも1つが所定の閾値を超えて、予想された重量および質量と異なるとき、漏れ警報を生成するように構成されたことを特徴とする請求項14ないし19のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以前の出願の参照による組み込み
2017年6月29日に出願された、米国仮特許出願第62/526,559号、2017年10月5日に出願された、同第62/568,548号、および2018年6月29日に出願された、同第62/692,329号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、射出成形の分野に関する。より具体的には、本開示は、射出成形プロセス中の射出材料の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
部品の射出成形は、材料を成形型に射出することと、成形型内の材料を圧縮および冷却して所望の部品を形成することと、完成した部品を成形型から取り出すことと、を含む。制御システムは、プレス、往復ねじ、または他の駆動機構の速度を制御し、それによって射出材料の流れを調整するために、温度センサ、歪みゲージ、および他のセンサからのフィードバック用い得る。かかるセンサはまた、射出材料の漏れなどの誤動作または不規則性を検出するためにも用いられ得る。例えば、従来のシステムは、漏れを検出するために、空気の流れまたは背圧における変化を検出するセンサを用い得る。歪みゲージを有するチェックリングが、かかるシステム内の変化を感知するために使用されている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、システムは、空洞と、空洞に材料を射出するように構成された射出ノズルと、センサ場所における複数のセンサと、を含む。複数のセンサの各々は、センサ場所のうちの1つにおいてパラメータを測定するように構成されている。システムは、歪みゲージを欠く。システムは、空洞への材料の射出の流量を制御するように構成されたコントローラをさらに含む。コントローラは、測定されたパラメータを受信し、受信した情報を所定の曲線と比較するように構成されている。コントローラは、測定されたパラメータが所定の曲線から逸脱するとき、流量を制御するように構成されている。
【0005】
別の実施形態では、空洞と、空洞に射出材料を射出するように構成されたノズル駆動機構と、を有する、射出成形デバイス内の漏れを補償する方法が、開示される。本方法は、センサ場所に複数のセンサを提供することを含み、複数のセンサの各々が、センサ場所において射出材料の圧力、体積、および温度を感知ならびに計算するように構成されている。本方法は、複数のセンサから受信した情報の関数として、射出プロセス中に空洞の内部の射出材料の重量および質量を計算することをさらに含む。本方法はまた、計算された射出材料の重量および質量に従って、駆動機構の速度を調整することも含む。本方法は、計算された射出材料の重量および質量に基づいて、空洞が射出材料によって充填されたときを判定することをさらに含む。本方法はまた、空洞が充填されたことを判定すると、駆動機構を停止することも含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、空洞と、空洞に射出材料を射出するように構成されたノズル駆動機構とを有する射出成形デバイス内の漏れを補償する方法が、開示される。本方法は、センサ場所に複数のセンサを提供することを含み、複数のセンサの各々が、センサ場所において射出材料の圧力、体積、および温度を感知、ならびに計算するように構成されている。本方法は、複数のセンサから受信した情報の関数として、射出プロセス中に空洞の内部の射出材料の重量および質量を計算することをさらに含む。本方法はまた、計算された射出材料の重量および質量に従って、駆動機構の速度を調整することも含む。本方法は、計算された射出材料の重量および質量に基づいて、空洞が射出材料によって充填されたときを判定することと、空洞が充填されたと判定すると、駆動機構を停止することと、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面では、構造が例解され、以下に提供される詳細な説明とともに、特許請求される発明の例示的な実施形態を説明する。同様の要素は、同じ参照番号で識別される。単一の構成要素として示される要素は、複数の構成要素に置き換えることができ、複数の構成要素として示される要素は、単一の構成要素に置き換えることができることを理解されたい。図面は、縮尺通りではなく、特定の要素の割合は、例解目的のために誇張されている場合がある。
【0008】
図1】例示的な射出成形デバイスの斜視図である。
図2】モデリングおよび成形システムの入力と出力を示す概略図である。
図3】射出成形プロセス中の成形パラメータの経時変化を例解するグラフである。
図4】モデリングシステムにより実行される特定のプロセス工程を例解するフローチャートである。
図5】射出成形プロセスの特定の工程を例解するフローチャートである。
図6】漏れを検出するためのプロセスを例解するフローチャートである。
図7】漏れを検出するための代替的なプロセスを例解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
射出成形システムでは、チェックリングの漏れを認識し、かかる漏れを補償するために、射出材料の重量および質量に関するパラメータを測定または計算することが望ましい。歪みゲージを使用することなく、かかる測定または計算を行うことがさらに望ましい。これは、重量および質量の変位または漏れを測定および制御するために、機械変数を材料変数および溶融変数と相関させる制御の統計的方法で行うことができる。
【0010】
例えば、材料が、ポイントAからポイントBまで一定の速度で射出され、速度を制御するバルブへの射出信号が5ボルトである場合、空洞に入る材料のそれぞれの重量および質量を計算することができる。しかし、この電圧が変化する場合、射出材料の粘度、密度、重量、または質量に対応する変化を示す。
【0011】
図1は、例示的な射出成形デバイス100を例解する簡略図である。この図は、射出成形プロセスの流量および他のパラメータに影響を与える射出成形デバイス内の幾何学形状の例として提供される。任意の射出成形デバイスが、より単純またはより複雑なデバイスを含む、開示されたシステムとともに用いられ得ることを理解されたい。
【0012】
例解された実施形態では、射出成形デバイス100は、第1の成形型110a、および第2の成形型110bを同時に充填するように構成されている。射出成形デバイス100は、大径部130と、主通路150に通じる縮径部140と、を有する、ゲート120を含む。主通路は、第1のアーム160aおよび第2のアーム160bで終了し、その各々が、主通路150に直交する。第1のアーム160aは、第1のアーム160aに直交し、第1の成形型110aで終了する第1の出口ノズル170aにつながる。第2のアーム160bは、第2のアーム160bに直交し、第2の成形型110bで終了する第2の出口ノズル170bにつながる。
【0013】
射出材料は、プレス、往復ねじ、または他の駆動機構(図示せず)を使用して、射出成形デバイス100に強制的に通される。射出材料は、ABS、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、PVC、ナイロン、アクリル、スチレン、ポリエーテルイミド、または前述の材料の配合物などの熱可塑性材料であってもよい。いくつかの実施例では、射出材料は、膨張性架橋ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニルまたは「EVA」)であり得る。膨張性架橋ポリマーの射出中、ポリマーは、ポリマーの活性化温度、またはポリマー内で膨張および架橋が発生し始める温度より低い温度に加熱される。次いで、射出材料は、成形型空洞に射出され、これは、ポリマーに膨張と架橋を開始させる化学反応または複数の化学反応を活性化するのに十分高い温度値に設定される。材料は、適切な架橋および膨張が起こることを可能にする圧力下に保持され、成形型は、その後、成形型から排出される。これらの材料は、単なる例示であり、任意の射出材料が、用いられ得ることを理解されたい。射出材料は、ホッパ(図示せず)内に設置される熱可塑性ペレットの形態で提供されてもよい。次いで、熱可塑性ペレットが溶融され、駆動機構によってゲート120に強制的に通される。
【0014】
センサは、デバイス内部の温度および圧力を測定するために、射出成形デバイス100または成形型110上の様々な場所で用いられる。センサはまた、射出材料が射出成形デバイス100または成形型110を通過する際の射出材料の速度を測定するために用いられる。一実施形態では、センサは、出口ノズル170および成形型110の充填端に位置付けられる。しかしながら、センサは、いずれの場所でも用いられ得る。付加的に、駆動機構の位置および速度はまた、エンコーダまたは他の測定デバイスによって測定される。充填時間および冷却時間はまた、射出成形プロセス中に測定される。
【0015】
従来のシステムは、所与の測定値を駆動機構の速度の調節または他の調節に関連付ける表データに依存することにより、充填時間および冷却時間を最適化しようと試みてきた。本開示のシステムでは、リアルデータは、リアルタイム測定値から得られ、付加的なパラメータは、数学的に計算される。リアルタイムの測定値および計算されたパラメータは、駆動機構の速度をオンザフライで調節するために使用される。
【0016】
図2は、モデリングならびに成形システム200の入力および出力を示す概略図である。一実施形態では、射出成形デバイス100および成形型110のコンピュータ化されたモデルが構築され、射出成形プロセスのコンピュータ化されたシミュレーションが実行されて、様々な条件で最適な結果を見出す。コンピュータ化されたシミュレーションはまた、繰り返し使用されて、初期パラメータを調整し、射出成形プロセスをさらに最適化し得る。例えば、設計者は、射出材料のために異なる材料組成を選択するか、初期温度を変更するか、射出成形デバイスの幾何学形状もしくは材料を変更するか、成形型の幾何学形状もしくは材料を変更するか、または他のパラメータを変更し得る。
【0017】
センサの場所は、固体モデルの構築中に識別される。センサの場所は、物理的なセンサが物理的な成形型内に位置付けられる場所に対応する。単一のセンサ場所が識別され得るか、または2つ以上のセンサ場所が識別され得る。一実施形態では、少なくとも2つのセンサ場所が識別され、ノズルにおける第1の場所、および充填場所の端部における第2の場所を含む。しかしながら、任意の数のセンサの場所が、用いられ得ることを理解されたい。
【0018】
センサの場所が識別された後、仮想センサが、センサの場所における固体モデル内に設置される。仮想センサは、シミュレーション中に情報が収集される節点である。
【0019】
結果の有限要素モデルまたは他の離散化ソリューションドメインを定義して、ユーザは、分析のための境界条件を指定する。境界条件は、成形される物体、成形プロセス内で使用される材料、成形型自体、または材料を提供する機械に関するパラメータである。より具体的には、射出成形型では、境界条件は、部品、射出材料、射出成形型、または射出機械に関するパラメータである。
【0020】
図2において見ることができるように、複数のパラメータ210が、マルチフィジックスFEAプロセッサ220に入力される。パラメータ210は、部品パラメータ210a、材料パラメータ210b、成形型パラメータ210c、および機械パラメータ210dを含む。
【0021】
部品パラメータ210aは、部品の推定重量、部品の熱伝達面積、公称壁厚、他の部品の幾何学形状、表面仕上げ、および部品の最小ならびに最大壁厚を含む。部品パラメータ210aはまた、部品が成形型110から取り出される最終温度も含み得る。最終温度は、オペレータによって選択され得るか、または部品がその形状を維持する温度として判定され得る。
【0022】
材料パラメータ210bは、質量密度、モル熱容量、流体組成、および熱伝導率を含む。射出材料は、各々が異なる材料特性を有する複数の材料の配合物であってもよい。各成分材料は、既知の質量密度、モル熱容量、および熱伝導率を有する。得られる材料の材料特性は、これらの構成値および構成材料の重量パーセントから判定され得る。
【0023】
材料パラメータ210bは、データベース内に記録された表データを含んでもよい。例示的な表データは、以下の表1内に示されるデータを含む。このデータは、単なる例であり、様々な材料のために記録され得るデータのタイプを例解するために提示される。以下に見ることができるように、材料特性が、所与の温度または圧力に対して示されるが、これらの特性は、温度と圧力の変化につれて変化する場合がある。このため、表データは、様々な範囲の温度および圧力のデータを含み得る。適切な時間における適切な場所での材料特性評価が、リアルタイムでの監視と制御に使用可能である。
【0024】
【表1】
【0025】
成形型パラメータ210cは、成形型温度、空洞寸法、空洞構成、成形型分割面、成形型体積、成形型の構造(成形型の構築に使用される材料、成形型の材料特性など)、成形型に関する加熱または冷却仮定を含む。付加的な部品パラメータは、熱伝達を支援する加熱または冷却要素を含む。
【0026】
機械パラメータ210dは、適用温度、流体射出場所、流体射出温度、流体射出圧力、流体射出体積流量、および溶融圧力を含む。オペレータは、温度を変更するか、駆動機構の位置または速度を変更して、流量を調節することができる。かかるバリエーションは、サイクル内ベースで実行され得、すなわち、機械パラメータが測定および/または得られた同じ射出成形サイクル中である。温度は、射出成形デバイス100内および成形型110内の両方で測定され得る。
【0027】
機械パラメータ210dはまた、機械の幾何学形状も含む。射出材料が、射出成形デバイス100に強制的に通される際、射出成形デバイスの幾何学形状は、射出材料の流量に影響する。例えば、図1の実施形態では、射出材料は、ゲート120の大径部130から縮径部140に通過する際に、剪断力を経験する。この剪断力は、射出材料の流量に影響する。ゲート120の縮径部における射出材料の初期衝撃はまた、空洞内の圧力の急上昇を引き起こす場合があり、これが射出材料の粘度を変化させ、さらに流量に影響を与え得る。
【0028】
射出材料が主通路150、アーム160、および出口ノズル170を通過する際、射出材料は、付加的な剪断および圧力変化を経験し、射出材料の流量にさらに影響を及ぼす。同様に、射出材料が成形型110を通って流れる際に、さらなる剪断および圧力変化を経験する。
【0029】
射出材料はまた、射出成形デバイス100および成形型110を通って流れる際、温度の変化を経験し得る。材料は、熱源から遠ざかるにつれて冷却されてもよい。しかしながら、摩擦が、材料がその経路に沿って進行する際に材料を加熱する場合がある。かかる温度の変化は、材料の粘度に影響を与え、さらに流量に影響し得る。しかしながら、これらの変更は、ごくわずかであり得る。温度の変化は、射出成形デバイス100および成形型110のために選択された材料の熱伝導率に基づいて、または射出材料の経路に沿って加熱または冷却要素を使用することにより、緩和または加速され得る。
【0030】
マルチフィジックスFEAプロセッサは、部品パラメータ210a、材料パラメータ210b、成形型パラメータ210c、および機械パラメータ210dに基づいて付加的なパラメータを計算する。例えば、熱偏向温度または熱変形温度(すなわち、ポリマーまたはプラスチックのサンプルが特定の負荷の下で変形する温度)は、材料、機械、および成形型のパラメータから判定され得る。
【0031】
マルチフィジックスFEAはまた、シミュレートされた射出成形プロセスを実行し、シミュレーション中に付加的な追加パラメータを測定および計算する。計算されたパラメータは、限定されるものではないが、射出材料の質量密度、射出材料の質量熱容量、射出材料のモル平均熱容量、分子量、体積、ねじストローク、相対粘度、絶対粘度、所与の場所におけるレイノルズ数、射出材料の熱伝導率、熱拡散率、所与の場所でのプラントル数、相対剪断、相対剪断速度、メルトフロー指数、分子量の関数としての粘度、剪断の関数としての粘度、剪断速度の関数としての質量、位置の関数としての判定された応力、位置の関数としての部品内の判定された質量、位置の関数としての部品の最小および最大の多分散性、理論的冷却時間、経済的先行指標、動的溶融圧力、体積流量、体積弾性率、流速、コーシー数、ならびに密度を含む。
【0032】
これらのシミュレーションから、最適なフローが、マルチフィジックスFEAプロセッサ220によって判定され、圧力、体積、温度の曲線が、仮想センサの場所に対して作成される。同様に、他のデータを表す曲線もまた、生成され得る。曲線は、測定データ、計算データ、または読み出しデータを反映し得る。例えば、温度曲線は、センサまたは仮想センサによって測定された温度を反映してもよい。材料特性を表現する曲線は、測定温度における所与の材料に関する所与の特性のための表エントリを反映してもよい。相対剪断を表現する曲線は、解法を使用して測定データまたは表データから計算され得る。
【0033】
パラメータがオンザフライで自動的に調節されるため、曲線を、実行時間230で生成および読み取ることができる。別の実施形態では、FEA計算が最初に実行され、曲線は、最適なプラスチック材料の流れを達成するための圧力、ねじ速度、または組み合わせプロファイルによって溶融を制御するために、どのフィードフォワードプロファイルを使用する判定するように、物理的なセンサからの読み取り値を読み取り、事前計算された曲線を使用することによって判定される。
【0034】
同じパラメータ210が、成形システムのプロセス制御240内で使用される。成形システムが材料を空洞に射出する際、プロセス制御240は、センサ場所における圧力、体積、および温度を、圧力、体積、ならびに温度曲線と比較する。圧力、体積、および温度の曲線は、実際の成形動作において使用されて、成形プロセス中の圧力、ねじ速度、温度を調節することになり、そのため物理的なセンサのPVT読み取り値が、仮想センサのPVT曲線と一致する。
【0035】
成形プロセス中に1つ以上のパラメータが変更されると、これらの変更は、他のパラメータに影響する。例えば、温度の増加は、特定の材料特性に影響し、同様に、材料の体積流量に影響する。このため、成形プロセス中、パラメータは、絶えず監視、測定、再計算される。これらのパラメータをリアルタイムで測定および計算することにより、システムは、コントローラにフィードバックを提供し、コントローラは、次いで他のパラメータ(ねじ速度など)を調節して、成形プロセスを細かく制御し得る。このため、システムは、単一の射出サイクル中に(つまり、サイクル内ベースで)自己制御射出機能を有するものとして特徴付けられ得る。
【0036】
コントローラは、機械学習または深層学習機能を用いて、成形プロセスを制御し得る。かかる実施形態では、アルゴリズムおよび解法が、特定のパラメータを計算するために用いられながら、コントローラが、機械学習技術を用いて、リアルタイム入力を読み取り、システムに適切な調節を行うことができる。
【0037】
システムが、射出成形プロセスをシミュレートするために使用されるとき、データは、センサ場所の各々において記録される。かかるデータ記録は、固体モデル内の仮想センサによるデータ捕捉と呼ばれる場合がある。具体的には、圧力、体積、および温度が、シミュレーション中にセンサの場所で記録され、そのため圧力、体積、および温度の曲線が、作成できる。圧力、体積、および温度曲線は、圧力、体積、および温度の経時的な変化、または射出材料の単位変位あたりの圧力、体積、および温度の変化を表現することができる。
【0038】
分析が完了すると、分析結果は、様々な様式で出力され得る。例えば、関連する変数は、ユーザが視覚的に確認できるように固体モデルを重ね合わせる図式形式で表示され得、またはさらなる処理もしくは分析のために電子的に出力され得る。充填期および圧縮期の結果が許容可能であると判断された場合、シミュレーションは終了し、ユーザは、設計を製造にリリースすることができる。指定された境界条件には、射出成形型の構成およびプロセスパラメータに関する情報が含まれたため、設計は、射出成形型の加工および直接生成される射出成形プロセスのオペレーションシートに関してリリースすることができる。圧力、体積、温度曲線はまた、成形プロセス中に物理的な成形型で使用するために、オペレータにリリースすることもできる。
【0039】
しかしながら、ユーザが、シミュレーションの結果が許容不可能である、または最適とは言えないと判定する場合、ユーザは、1つ以上の境界条件、またはモデルソリューションドメインの離散化を修正するオプションを有し、その後、ユーザが結果に満足するときまで、シミュレーションを繰り返し再現させる。容認不可能な結果の実施例は、モデルの分析的不安定性、またはショートショットなどのプロセス障害を含み、成形型空洞が完全に充填されない、または充填中に過剰な温度、速度、圧力が発生し、構成要素のポリマー材料特性が低下するか、過剰な残留応力が構成要素内に発生し、生産収率に悪影響を及ぼし、構成要素の早期故障につながる可能性がある。設計プロセスの早い段階でこの非常に正確な分析シミュレーション機能を提供することにより、初期生産実行中の、ダウンストリームでの多大なコストと遅延が、回避され得る。
【0040】
代替的に、分析結果は、結果をオペレータに表示せずに、マルチフィジックスFEAプロセッサに直接供給される場合もある。マルチフィジックスFEAプロセッサは、分析結果をリアルタイムでレビューし得、または各シミュレーション後に結果をレビューし得る。マルチフィジックスFEAプロセッサは、測定および計算されたパラメータに基づいて、上記と同じ様式で、パラメータをオンザフライで調節し得る。このため、システムは、自己制御射出シミュレーションを提供する。または、シミュレーション後に、マルチフィジックスFEAプロセッサが、結果をレビューし、後続のシミュレーションの変更を提案してもよい。いずれの実施形態でも、マルチフィジックスFEAプロセスは、深層学習または機械学習機能を用いて、シミュレーションを制御することができる。
【0041】
図3は、射出成形デバイス100を使用した射出成形プロセス中の経時的な成形パラメータの変化を例解するグラフ300である。このため、射出材料がゲート120の大径部130から縮径部140へと通過し、次いで主通路150、アーム160、および出口ノズル170を通って通過する際、測定されたパラメータの多くは、プロセスの開始時に大きな変動を経験する。射出材料が成形型110を充填し始めた後、測定されたパラメータは、実質的に一定の速度で保持されるか、より滑らかな速度で変化する。この特定のグラフ300は、結果を最適化するために、射出成形プロセスの複数の実行のオーバーレイである。シミュレーション中に1つの変数を変更すると、他の変数に影響するはずである。このため、オーバーレイは、結果が最適化されるまでの異なる変数を伴う実験を表現する。
【0042】
グラフ300は、射出成形プロセスのコンピュータシミュレーションのコンテキスト内で生成されてもよく、物理的な射出成形プロセスの結果として生成されてもよい。
【0043】
線310は、内部溶融圧力(「IMP」)信号を表現し、これは、充填、圧縮、および保持中の成形型抵抗、部分凝固、および空気抵抗の結果としての溶融物内の圧力を表現する。この信号は、溶融圧力および温度の物理的なセンサからの2つのリアルタイム測定値から計算される。第1のセンサは、ノズルに位置付けられ、第2のセンサは、空洞を充填するための最後の場所に位置付けられる。IMP信号は、射出の閉ループ制御に関するフィードバックとして使用される。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、IMP信号310は、射出成形デバイス100が射出材料によって充填されると最初に低下し、次いで、元の状態に戻り、成形型110の充填中、実質的に同じレベルのままである。
【0044】
線320は、経時的な油圧射出圧力の変化を表現する。油圧射出圧力は、駆動機構によって生成される圧力である。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、油圧射出圧力320は、射出材料がゲート120の大径部130から縮径部140へと通過すると最初に急上昇する。次いで、油圧射出圧力320は、射出材料が主通路150を通過し始めると低下し、次いで、射出材料がアーム160と出口ノズル170を通過すると再び増加する。次いで、油圧射出圧力320は、成形型110が充填されると低下する。このグラフ300内で見ることができるように、油圧射出圧力320は、他のパラメータへの変更に基づいて、異なるシミュレーション中に異なる速度で低下する。
【0045】
線330は、経時的な空洞圧力(すなわち、成形型110の内部の圧力)の変化を表現する。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、空洞圧力330は、射出成形デバイス100が射出材料によって充填されている間、最初はゼロであり、空洞は空のままである。空洞圧力330は、成形型110が充填し始めると上がり、成形型110の充填中、実質的に同じレベルのままである。
【0046】
線340は、経時的な溶融圧力における変化を表現する。溶融圧力は、射出の充填、圧縮、および保持段階中の、成形型抵抗、部分凝固、および空気抵抗の結果としての溶融物内の圧力である。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、溶融圧力340は、射出材料がゲート120の大径部130から縮径部140へ通過する際に最初に急上昇する。次いで、溶融圧力320は、射出材料が射出成形デバイス100を通過して成形型110を充填する際、低下し、再度徐々に増加する。
【0047】
線350は、経時的な駆動機構の位置(すなわち、ねじ位置)における変化を示す。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、ねじ位置350は、最初は速いペースで変化し、次いで駆動機構がその終点に到達するまでより遅いペースで変化する。しかしながら、いくつかの試行では、ねじ位置350は、駆動機構がその終点に到達するまで急速に変化し続ける。これらの試行の結果は、様々な段階で最適なねじ速度を判定するために比較され得る。
【0048】
ライン360は、経時的な空洞温度における変化を示す。図3に例解されたシミュレーションにおいて見ることができるように、ねじ位置350は、最初は速いペースで変化し、次いで駆動機構がその終点に到達するまでより遅いペースで変化する。しかしながら、いくつかの試行では、ねじ位置350は、駆動機構がその終点に到達するまで急速に変化し続ける。これらの試行の結果は、様々な段階で最適なねじ速度を判定するために比較され得る。
【0049】
図4は、FEA動作時間データ230およびプロセス制御240を使用して、部品を射出成形する特定のプロセス工程を要約した、簡略化されたトップレベルシステムフローチャート400の一実施形態の概略図である。第1の工程410として、上記で考察されるように、射出成形デバイス100および成形型110の計算モデルが、生成または提供される。次いで工程420において、固体モデルに基づいて、有限要素メッシュを生成することにより有限要素モデルが生成される、有限要素解析などの様々な方法のいずれかによって、モデルソリューションドメインが、定義および離散化される。メッシュは、共有ノードによって定義された複数の連続した固体要素からなる。
【0050】
結果の有限要素モデルまたは他の離散化ソリューションドメインを定義して、ユーザは、工程430において分析のための境界条件を指定する。境界条件は、上記で考察された、パラメータ210ならびに計算されたパラメータを含む。
【0051】
一度境界条件が入力されると、マルチフィジックスFEAは、工程440において、シミュレーションモデルに従って命令を実行して、関連する充填期プロセス変数を最初に計算または解く。上記で考察されたように、かかる変数は、流動性、成形型空洞の充填時間、圧力、剪断速度、応力、速度、粘度、および温度を含むことができる。計算は、これらの変数に限定されないが、これらは、結晶化速度および繊維配向分布などの計算内に含まれる他の変数を解くために使用することができる基本変数である。
【0052】
このシステムでは、マルチフィジックスFEAは、解法を使用して溶融物の特性をリアルタイムで作成することができる。特に、システムは、単に体積を測定するのではなく、時間の関数(V(t))として体積を計算する。このシステムは、プロセスの最初から最後まで溶融を特徴付けて、体積と流れとの間の関係を調べる。一実施形態では、システムは、体積解法を用いて、空洞内に充填された体積を計算する。体積解法は、2次微分方程式の解を必要とする。
【0053】
【数1】
【0054】
。かかる体積解法を使用することにより、停止ポイントに到達した時点を特定することができる。
【0055】
さらに、充填はまた、圧縮性流体として解くこともでき、この場合、圧縮期計算内に含まれる質量項(例えば、密度、質量、体積収縮など)もまた、充填期において計算することができる。一実施形態によれば、シミュレーションは、流体が充填期において非圧縮性であり、圧縮期において圧縮性であるという仮定に基づくことができる。別の実施形態によれば、流体は、充填期と圧縮期の両方において圧縮可能であると仮定することができる。ただし、圧力、速度、および粘度の前に流動性を解くことは必須ではなく、流動性を解く必要も全くない。
【0056】
シミュレーションが、成形型空洞が充填されたと判定される分析における段階に達すると、コンピュータは、シミュレーションモデルに従って命令を実行し、次に工程450において、ノードのための関連する圧縮期プロセス変数を計算または解く。かかる変数は、流動性、充填時間、圧力、剪断速度、応力、速度、粘度、および温度に加えて、密度および体積収縮など、シミュレーションモデルに従って生成された構成要素の質量特性を含む。
【0057】
シミュレーション中、データは、センサ場所の各々で記録される。かかるデータ記録は、固体モデル内の仮想センサによるデータ捕捉と呼ばれる場合がある。具体的には、圧力、体積、および温度が、シミュレーション中にセンサの場所で記録され、そのため圧力、体積、および温度の曲線が、作成できる。圧力、体積、および温度曲線は、圧力、体積、および温度の経時的な変化、または射出材料の単位変位あたりの圧力、体積、および温度の変化を表現することができる。
【0058】
分析が完了すると、分析結果は、工程460において、グラフ300などのグラフの形態で、または任意の様々な様式で出力され得る。例えば、関連する変数は、ユーザが視覚的に確認できるように固体モデルを重ね合わせる図式形式で表示され得、またはさらなる処理もしくは分析のために電子的に出力され得る。
【0059】
ユーザが、工程470におけるシミュレーションの結果が許容不可能である、または最適とは言えないと判定する場合、ユーザは、工程480において、1つ以上の境界条件またはモデルソリューションドメインの離散化を修正するオプションを有し、その後、ユーザが結果に満足するときまで、シミュレーション工程440から工程460を繰り返し再現させる。容認不可能な結果の実施例は、モデルの分析的不安定性、またはショートショットなどのプロセス障害を含み、成形型空洞が完全に充填されない、または充填中に過剰な温度、速度、圧力が発生し、構成要素のポリマー材料特性が低下するか、過剰な残留応力が構成要素内に発生し、生産収率に悪影響を及ぼし、構成要素の早期故障につながる可能性がある。設計プロセスの早い段階でこの分析シミュレーション機能を提供することにより、初期の生産実行中のダウンストリームでの大幅なコストと遅延が、回避され得る。
【0060】
工程470において、充填期および圧縮期の結果が許容可能であると判断された場合、工程490において、シミュレーションは終了し、ユーザは、設計を製造にリリースすることができる。指定された境界条件は、射出成形型の構成およびプロセスパラメータに関する情報が含まれたため、設計は、射出成形型の加工および直接生成される射出成形プロセスのオペレーションシートに関してリリースすることができる。圧力、体積、温度曲線はまた、成形プロセス中に物理的な成形型で使用するために、オペレータにリリースすることもできる。
【0061】
分析結果が許容可能と見なされた後、設計ならびに圧力、体積、および温度の曲線がリリースされ、固体モデルにおける仮想センサのセンサ場所に対応するセンサ場所において物理的なセンサを有する、物理的な成形型が構築される。物理的なセンサは、各センサ場所における圧力、体積、および温度を監視する。物理的な成形型はまた、空洞および空洞に材料を射出するように構成された射出ノズルを有する。コントローラ240は、空洞への材料の射出の流量を制御するように構成されている。
【0062】
コントローラ240は、センサから圧力、体積、および温度情報を受信するように構成されている。特定の成形サイクル中に、コントローラ240は、この受信した情報を、圧力、体積、および温度曲線と比較する。射出材料の監視された圧力、体積、または温度が、圧力、体積、および温度曲線から所定の量を超えて逸脱する場合、コントローラ240は、成形サイクル中に射出材料の流量を調節することができる。例えば、コントローラ240は、圧力、ねじ速度、および温度のうちの少なくとも1つを調節することにより、物理的な流量を調節することができる。コントローラ240はまた、圧力、ねじ速度、または組み合わせプロファイルによって材料の溶融を制御することもできる。このため、コントローラ240および射出成形デバイス100は、「自動駆動」射出成形デバイスとして機能する。そのように構成されて、コントローラ240は、サイクル内ベースで動作することができ、それにより、射出成形運転内の単一成形サイクル中に物理的流量に対して変更が成され得る。
【0063】
図5は、圧力、体積、および温度曲線を使用して物体を成形する方法500を例解するフローチャートである。510で、物理的射出成形デバイス(射出成形デバイス100など)および物理的成形型(成形型110など)が提供される。成形型は、センサ場所で複数の物理的なセンサを有する。
【0064】
520で、圧力、体積、および温度曲線は、センサ場所における射出材料の所望の流量プロファイルに関して提供される。530で、射出材料は、所望の流量プロファイルに対応する物理的流量で物理的成形型に射出される。
【0065】
物理的なセンサは、射出材料の圧力、体積、および温度を継続的に監視する。射出成形サイクル中に、感知された圧力、体積、温度が、(540で)圧力、体積温度曲線と一致しない場合、(550で)物理的流量が調節され、(530で)材料が成形型に連続的に射出される。物理的流量は、射出成形中(すなわち、サイクル内ベースで)に調節され得、そのため、後続の射出サイクルを待つことなく、射出サイクルを即座に変更することが可能である。感知された圧力、体積、および温度が、(540で)圧力、体積、温度曲線に一致する場合、(570で)空洞が充填され、(580で)プロセスが終了するまで、(560で)材料は、成形型に連続的に射出される。
【0066】
従来の成形システムと比較して、成形システム200または方法500を用いる他の成形システムは、より少ない合計数のセンサまたはより少ないタイプのセンサを必要とし得る。上記で説明されたように、システムは、解法を用いて、物理的なセンサによって継続的に監視される圧力、体積、および温度の測定パラメータに基づいて、リアルタイムでパラメータを計算する。かかるパラメータは、限定されるものではないが、射出材料の質量密度、射出材料の質量熱容量、射出材料のモル平均熱容量、分子量、体積、ねじストローク、相対粘度、絶対粘度、所与の場所におけるレイノルズ数、射出材料の熱伝導率、熱拡散率、所与の場所でのプラントル数、相対剪断、相対剪断速度、メルトフロー指数、分子量の関数としての粘度、剪断の関数としての粘度、剪断速度の関数としての質量、位置の関数としての判定された応力、位置の関数としての部品内の判定された質量、位置の関数としての部品の最小および最大の多分散性、理論的冷却時間、経済的先行指標、動的溶融圧力、体積流量、体積弾性率、流速、コーシー数、ならびに密度を含む。これらのパラメータの計算は、付加的なセンサの必要性を除去する。換言すると、解法を使用してパラメータを計算すると、付加的なセンサの使用なしで、リアルタイムの材料および速度の制御が可能になる。
【0067】
一実施例として、開示されたシステムおよび方法は、歪みゲージを使用せずに、射出成形システム内の漏れを検出するために用いられてもよい。システムは、歪みゲージを使用する代わりに、速度の関数として、成形型内の射出材料の重量および質量をリアルタイムで予測する。測定された、または予想された重量および質量が予測を満たしていない場合、コントローラは、漏れがあることをオペレータに信号で伝える。かかる漏れ検出システムは、歪みゲージまたは他の漏れ検出器を使用するよりも信頼性がより高い場合がある。システムは、冗長性を目的として、上記の漏れ検出方法および他の漏れ検出システムを用いることができることを理解されたい。
【0068】
図6は、漏れを検出するためのかかるプロセスを例解するフローチャートである。610で、射出材料が、射出成形型に射出される。620で、射出材料の速度が、判定される。速度は、直接測定され得、または単位時間あたりの射出ピストンストロークに基づいて、計算されたパラメータであり得る。物理的なセンサは、射出材料の他のパラメータを継続的に監視する。(630で)これらの監視されたパラメータから、システムは、判定された速度および変位量の関数として、成形型内の材料の重量および質量を計算する。
【0069】
一実施形態では、システムは、材料の射出中の駆動機構における圧力、体積、および温度の統計処理の関数として、成形型の内部の材料の重量および質量を計算する。付加的に、または代替的に、システムは、材料の射出中の駆動機構における前方へ射出するための機械信号の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算する。また付加的に、または代替的に、システムは、材料の射出中の駆動機構における充填指数の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算する。また付加的に、または代替的に、システムは、材料の射出中の駆動機構における粘度変化指数の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算する。
【0070】
(640で)システムはまた、成形型内の材料の実際の重量および質量も測定する。(650で)測定された重量および質量が、計算された重量および質量と一致し、(660で)空洞がまだ充填されていない場合、(610で)材料が成形型に連続して射出され、工程620~工程660の測定、計算、および判定が、空洞が充填されかつ、プロセスが終了する(670で)まで続く。しかしながら、(650で)測定された重量および質量が、計算された重量および質量と一致しない場合、(680で)システムは、漏れ警報を生成し、(670で)プロセスは終了する。代替的に、プロセスは、空洞が充填されるまで、漏れ警報が生成された後も依然として続行されてもよい。
【0071】
図7は、漏れを検出するための代替的なプロセスを例解するフローチャートである。710で、射出材料が、射出成形型に射出される。720で、射出材料の速度が、判定される。速度は、直接測定され得、または単位時間あたりのピストンストロークに基づいて、計算されたパラメータであり得る。物理的なセンサは、射出材料の他のパラメータを継続的に監視する。(730で)これらの監視されたパラメータから、システムは、判定された速度の関数として、成形型内の材料の重量および質量を計算する。(740で)システムはまた、成形型内の材料の予想重量および質量を読み出す。予想される重量および質量は、射出成形プロセスの段階に対応し、各段階に対する値は、ルックアップ表または他のデータベース内に記録され得る。例えば、値は、機械学習データベースまたは深層学習データベース内に記録され得る。(750で)予想された重量および質量が、計算された重量および質量と一致し、(760で)空洞がまだ充填されていない場合、(710で)材料が成形型に連続して射出され、工程720~工程760の測定、計算、および判定が、空洞が充填されかつ、プロセスが終了する(770で)まで続く。しかしながら、(650で)予測された重量および質量が、計算された重量および質量と一致しない場合、(680で)システムは、漏れ警報を生成し、(670で)プロセスは終了する。代替的に、プロセスは、空洞が充填されるまで、漏れ警報が生成された後も依然として続行されてもよい。
【0072】
一実施形態では、システムは、漏れが、所定の閾値を超えると判定されたときにのみ警報を生成するように構成されてもよい。例えば、1~2%の漏れ率は許容可能であるが、3~4%の漏れ率は修理が必要であるとオペレータが判定してもよい。所定の閾値は、材料のコストおよび修理のコストに関連する経済的要因、ならびに完成品の品質および所与の生産実行の緊急性に対する漏れの影響を含む、任意の数の要因によって判定され得る。
【0073】
場合によっては、漏れている機械が成形品を製造ために効果的に実行できる場合、修理を実行するために長期間機械をシャットダウンするよりも、漏れているマシンを使用し続ける方が、費用効率が高い場合がある。場合によっては、25%以上の漏れ率が、許容可能な場合もある。漏れている機械が効果的に実行されるためには、空洞が射出材料で充填されたときを判定されなければならない。
【0074】
かかる実施形態では、射出成形機械内の複数のセンサが、1つ以上のセンサ場所で射出材料の圧力、体積、および温度を感知する。例えば、センサは、往復ねじまたは他の駆動機構における射出材料の圧力、体積、および温度を感知し得る。次いで、プロセッサは、複数のセンサから受信した情報の関数として、射出プロセス中の空洞の内部の射出材料の重量および質量を計算する。コントローラは、計算された射出材料の重量および質量に従って、駆動機構の速度を調節する。プロセッサは、空洞が、計算された射出材料の重量および質量に基づいて、射出材料によって充填されたと判定するまで、複数のセンサから受信した情報の関数として重量および質量を計算し続ける。コントローラは、次いで、空洞が充填されたと判定すると、駆動機構を停止する。
【0075】
圧力、体積、および温度の測定値に基づいて、重量および質量を計算することに加えて、またはその代替として、プロセッサは、材料の射出中の駆動機構における前方への射出のための機械信号の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算し得る。代替的にまたはこれらの計算のうちの1つ以上に加えて、プロセッサは、材料の射出中の駆動機構における充填指数の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算し得る。別の追加または代替として、プロセッサは、材料の射出中の駆動機構における粘度変化指数の統計処理の関数として、射出成形型の内部の射出材料の重量および質量を計算し得る。
【0076】
他の実施形態では、付加的なセンサは、排除されるか、または計算されたパラメータに依存する検出器に対する冗長性として使用されてもよい。より一般的には、システムは、センサを使用することなく、リアルタイム制御を提供する。
【0077】
「含む(includes)」または「含む(including)」という用語が、明細書または特許請求の範囲内で使用される限り、その用語が特許請求の範囲内の移行語として用いられるとき解釈される「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることを意図している。さらに、「または(or)」という用語が用いられる限り(例:AまたはB)、「AまたはB、もしくは両方」を意味することを意図する。 出願人が、「AまたはBのみで、両方ではない」ことを指すことを意図するとき、「AまたはBのみで、両方ではない」という用語が、用いられるであろう。このため、本明細書における「または」という用語の使用は、包括的であり、排他的使用ではない。Bryan A. Garner, A Dictionary of Modern Legal Usage 624 (2d. Ed.1995)を参照のこと。また、「内(in)」または「に(into)」という用語が、明細書または特許請求の範囲内で使用される限り、「上(on)」または「上(onto)」を付加的に意味することが意図される。さらに、「接続する(connect)」という用語が、明細書または特許請求の範囲内で使用される限り、「直接接続されている(directly connected to)」だけでなく、別の構成要素または複数の構成要素を介して接続されているなどの「間接的に接続されている(indirectly connected to)」ことも意味することが意図される。
【0078】
本出願は、その実施形態の説明によって例解され、実施形態はかなり詳細に説明されているが、出願人は、添付の特許請求の範囲をかかる詳細に限定または何らかの方法で制限することを意図しない。付加的な利点および修正は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本出願は、そのより広い態様において、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに示されかつ説明された例解的な実施例に限定されない。したがって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、かかる詳細からの逸脱が成され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7