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特許7047090燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタック
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20220328BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20220328BHJP
   H01M 8/0245 20160101ALI20220328BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20220328BHJP
   H01M 8/2404 20160101ALI20220328BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220328BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M8/0228
H01M8/0245
H01M8/0258
H01M8/2404
H01M8/10 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020525079
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2018023031
(87)【国際公開番号】W WO2019239605
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390032528
【氏名又は名称】株式会社エノモト
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】谷内 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政廣
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020843(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072584(WO,A1)
【文献】特開2017-016942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/96
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に上流側から下流側に向かって燃料電池用ガスが流れる燃料電池用ガス供給拡散層であって、
前記燃料電池用ガスを透過、拡散し、導電性を有する多孔質体層を備え、
前記多孔質体層は、多孔質体からなるガス拡散部と、前記多孔質体層の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴とを有し、
前記孤立穴の各々は、互いに孤立して前記多孔質体層に形成され、
開口部を除く周囲が前記ガス拡散部に囲まれ、多孔質体の底を有する凹部からなり、
前記上流側から前記下流側に向かう方向をY方向とし、平面的に前記Y方向に直交する幅方向をX方向とするとき、前記複数の孤立穴は、前記X方向及び前記Y方向に点在して配置されていることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項2】
使用時に上流側から下流側に向かって燃料電池用ガスが流れる燃料電池用ガス供給拡散層であって、
前記燃料電池用ガスを透過、拡散し、導電性を有する多孔質体層を備え、
前記多孔質体層は、多孔質体からなるガス拡散部と、前記多孔質体層の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴とを有し、
前記孤立穴の各々は、互いに孤立して前記多孔質体層に形成され、
開口部を除く周囲が前記ガス拡散部に囲まれ、多孔質体の底を有する凹部からなり、
前記上流側から前記下流側に向かう方向をY方向とし、平面的に前記Y方向に直交する幅方向をX方向とするとき、前記複数の孤立穴は、前記X方向及び前記Y方向に点在して配置され、
各前記孤立穴の底面は、下流側にいくに従って深くなるように傾斜していることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
記複数の孤立穴のうちの一の孤立穴から前記下流側に位置する孤立穴のうち、前記一の孤立穴から前記X方向に沿った距離が最も短い孤立穴を第1近接孤立穴とし、前記一の孤立穴から前記X方向に沿った距離が二番目に短い孤立穴を第2近接孤立穴としたとき、前記一の孤立穴と前記第1近接孤立穴の第1間隔L1と、前記一の孤立穴と前記第2近接孤立穴の第2間隔L2とは、「L2≦L1」の関係を満たすことを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項4】
請求項に記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記第1間隔L1と前記第2間隔L2とは、「L1<2×L2」の関係を満たすことを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記多孔質体層の一方の面に形成された孤立穴のうち、外側の孤立穴の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲の面積をS1とし、前記複数の孤立穴の合計面積をS2としたとき、「0.9×S1≧S2≧0.1×S1」の関係を満たすことを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記孤立穴においては、前記多孔質体が露出していることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴の少なくとも一部の孤立穴は、幅が変化していることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴の少なくとも一部の孤立穴は、幅が一定であることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴の少なくとも一部の孤立穴は、斜めの方向に沿って延びている孤立溝であることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴の少なくとも一部の孤立穴は、途中で曲がっていることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴は、前記下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記複数の孤立穴は、前記下流側にいくに従って、幅方向に近接する孤立穴同士の間隔が段階的に狭くなっていることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記多孔質体層の一方の面に、前記多孔質体層の幅方向一杯に延びた1又は複数のガス圧均等化用溝をさらに有することを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記多孔質体層の一方の面に、少なくとも前記燃料電池用ガスの流入側から中央部まで延びた、又は中央部から前記燃料電池用ガスの流出側まで延びた1又は複数のバイパス用溝をさらに有することを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記燃料電池用ガス供給拡散層が、カソードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層であることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項16】
請求項15に記載の燃料電池用ガス供給拡散層において、
前記カソードガスが空気であることを特徴とする燃料電池用ガス供給拡散層。
【請求項17】
ガス遮蔽板と、前記ガス遮蔽板の少なくとも一方の面に配設された燃料電池用ガス供給拡散層とを備える燃料電池用セパレータであって、
前記燃料電池用ガス供給拡散層は、請求項1~16のいずれかに記載の燃料電池用ガス供給拡散層であり、
前記燃料電池用ガス供給拡散層は、前記複数の孤立穴が前記ガス遮蔽板側に位置するように前記ガス遮蔽板に対して配置されており、
前記孤立穴と前記ガス遮蔽板とでガス流路が構成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項18】
燃料電池用セパレータと、膜電極接合体とが積層されてなる燃料電池セルスタックであって、
前記燃料電池用セパレータは、請求項17に記載の燃料電池用セパレータであり、
前記燃料電池用セパレータと前記膜電極接合体とは、前記燃料電池用ガス供給拡散層の前記複数の孤立穴が形成されていない側の面に前記膜電極接合体が位置する位置関係で積層されていることを特徴とする燃料電池セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)の技術分野において、燃料電池用ガス(アノードガス、カソードガス)を均一に供給及び拡散させることが可能な燃料電池セルスタックが知られている(例えば、特許文献1参照。)。図20は、従来の燃料電池セルスタック920を模式的に示す正面図である。図21及び図22は、従来の燃料電池セルスタック920におけるタイプCAのセパレータ921の平面図である。このうち図21は燃料電池用ガス供給拡散層(カソードガス供給拡散層)942側から見た平面図であり、図22は燃料電池用ガス供給拡散層(アノードガス供給拡散層)941側から見た平面図である。図23は、図21のA-A線に沿った断面図である。
【0003】
従来の燃料電池セルスタック920は、図20図23に示すように、金属板30の少なくとも一方の面に多孔質体層による燃料電池用ガス供給拡散層が設けられた構造の複数のセパレータ(タイプCAのセパレータ921、タイプAのセパレータ922、タイプCのセパレータ923、タイプAWのセパレータ924)が積層された構造を有する。なお、タイプCAのセパレータ921、タイプAのセパレータ922及びタイプAWのセパレータ924の「A」は燃料電池用ガス供給拡散層(アノードガス供給拡散層)941を表し、タイプCAのセパレータ921及びタイプCのセパレータ923の「C」は燃料電池用ガス供給拡散層(カソードガス供給拡散層)942を表し、タイプAWのセパレータ924の「W」は冷却水供給拡散層を表す。従来の燃料電池セルスタック920によれば、セパレータそのものに多孔質体層からなる燃料電池用ガス供給拡散層941,942が形成されていることから、燃料電池用ガスを燃料電池用ガス供給拡散層の全面にわたって均一に拡散できる。その結果、燃料電池用ガスを膜電極接合体(MEA)81の全面にわたって均一に供給でき、燃料電池の発電効率を従来よりも高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/072584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池の技術分野においては、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる技術が求められており、固体高分子形燃料電池の技術分野においても同様である。そこで、本発明は、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による燃料電池用ガス供給拡散層は、使用時に上流から下流側に向かって燃料電池用ガスが流れる燃料電池用ガス供給拡散層であって、前記燃料電池用ガスを透過、拡散し、導電性を有する多孔質体層を備え、前記多孔質体層は、多孔質体からなるガス拡散部と、前記多孔質体層の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴とを有し、前記孤立穴の各々は、互いに孤立して前記多孔質体層に形成され、開口部を除く周囲が前記ガス拡散部に囲まれ、多孔質体の底を有する凹部からなる。
【0007】
本発明の一実態様による燃料電池用セパレータは、ガス遮蔽板と、前記ガス遮蔽板の少なくとも一方の面に配設された燃料電池用ガス供給拡散層とを備える燃料電池用セパレータであって、前記燃料電池用ガス供給拡散層は、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層であり、前記燃料電池用ガス供給拡散層は、前記複数の孤立穴が前記ガス遮蔽板側に位置するように前記ガス遮蔽板に対して配置されており、前記孤立穴と前記ガス遮蔽板とでガス流路が構成されている。
【0008】
本発明の一態様による燃料電池セルスタックは、燃料電池用セパレータと、膜電極接合体とが積層されてなる燃料電池セルスタックであって、前記燃料電池用セパレータは、本発明の燃料電池用セパレータであり、前記燃料電池用セパレータと前記膜電極接合体とは、前記燃料電池用ガス供給拡散層の前記複数の孤立穴が形成されていない側の面に前記膜電極接合体が位置する位置関係で積層されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様による燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックによれば、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す正面図である。
図2】実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す側面図である。
図3】膜電極接合体(MEA)81を説明するために示す図である。
図4】実施形態に係る燃料電池用セパレータ23の平面図である。
図5図4の断面図である。
図6】燃料電池用ガスの流れを説明するために示す図である。
図7】燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ(燃料電池用セパレータ21,22,24,25)の断面図である。
図8】変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aの平面図である。
図9】変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの平面図である。
図10】変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cの平面図である。
図11】変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dの平面図である。
図12】変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eの平面図である。
図13】変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fの平面図である。
図14】変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gの平面図である。
図15】変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの平面図である。
図16】変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iの平面図である。
図17】変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jの平面図である。
図18図17の部分断面図である。
図19】変形例11に係る燃料電池用セパレータ23kの断面図である。
図20】従来の燃料電池セルスタック920を模式的に示す正面図である。
図21】従来の燃料電池セルスタック920におけるタイプCAの燃料電池用セパレータ921の平面図である。
図22】従来の燃料電池セルスタック920におけるタイプCAの燃料電池用セパレータ921の平面図である。
図23図21のA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックを図に示す実施形態を用いて詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す正面図である。図2は、実施形態に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す側面図である。
【0013】
[燃料電池セルスタック]
実施形態に係る燃料電池セルスタック20は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)である。燃料電池セルスタック20は、複数の単セルを有する。燃料電池の単セルは、概念的には電解質膜(高分子膜)(触媒層を含めてもよい)とこれを挟むカソード側を構成する要素とアノード側を構成する要素とから構成される。ここでは、燃料電池セルスタック20の各セルは、後述する膜電極接合体81を挟んでカソード側を構成する要素とアノード側を構成する要素とを有する。各セルは、セパレータを挟んで複数スタックされ、燃料電池セルスタック20を構成する。
【0014】
本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータは、各セル間を分ける金属板30を備えるとともに、種々のバリエーションを持って構成される。燃料電池用セパレータ21は、ガス遮蔽板としての金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成され、他方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成されている(タイプCAのセパレータ)。したがって本発明の実施形態に係るタイプCAのセパレータのカソードガス供給拡散層Cとアノードガス供給拡散層Aとはそれぞれ別のセルに組み込まれる。なお、タイプCAのセパレータの詳細については後述する。燃料電池用セパレータ22は、金属板30の一方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成されている(タイプAのセパレータ)。燃料電池用セパレータ23は、金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成されている(タイプCのセパレータ)。燃料電池用セパレータ24は、金属板30の一方の面にカソードガス供給拡散層Cが形成され、他方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されている(タイプCWのセパレータ)。
【0015】
各セルは、カソード側とアノード側が交互になるように配置されている。カソードガス供給拡散層Cとアノードガス供給拡散層Aとは、膜電極接合体(MEA)81を挟んで対向して設けられている。実施形態においては、単セルが2つ配置される毎に冷却水を供給する冷却水供給拡散層Wが設けられている。なお、冷却水供給拡散層Wは、単セル1つ置きに設けられていてもよいし、3つ置き又はそれ以上置きに設けられていてもよい。冷却水供給拡散層Wには金属板30(好ましくはタイプA又はタイプCのセパレータにおける金属板30)が対向するように、燃料電池用セパレータ21~24が組み合わされて積層されている。
【0016】
なお、本発明の燃料電池セルスタックは、図1及び図2には図示していないが、金属板30の一方の面にアノードガス供給拡散層Aが形成され、他方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されたもの(タイプAWのセパレータ)を備えていてもよい。また、金属板30の一方の面に冷却水供給拡散層Wが形成されたセパレータ(タイプWのセパレータ)を備えていてもよい。また、金属板30の両面に冷却水供給拡散層Wが形成されたセパレータを備えていてもよい。各燃料電池用セパレータの構成の詳細については後述する。
【0017】
積層されたセルの両端部には、集電板27A,27Bが配設されている。さらに集電板27A、27Bの外側には、絶縁シート28A,28Bを介してエンドプレート75,76が配置されている。燃料電池用セパレータ21~24は、エンドプレート75、76によって両側から押圧されている。燃料電池セルスタック20の両端に位置し、集電板27A,27Bに接する燃料電池用セパレータについては、その金属板30(耐食層)が外方を向くようにすることが好ましい。
【0018】
図1及び図2においては、燃料電池用セパレータ21~24、膜電極接合体81、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B、及び、エンドプレート75,76は、分かり易くするために、離間して描かれているが、これらは、図示された配列の順に、相互に密に接合されている。接合の方法は特に限定されない。例えば、エンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することのみによって接合してもよいし、各部材の適宜の位置を接着剤により接着したうえでエンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することにより接合してもよし、その他の方法により接合してもよい。各燃料電池用セパレータ21~24、膜電極接合体81、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B等は、例えば厚さが百μm程度から十mm程度である。本明細書の各実施形態における各図は、厚さを誇張して描かれている。
【0019】
アノード側のエンドプレート75の一端部にはアノードガス供給口71A、カソードガス排出口72B及び冷却水排出口73Bがそれぞれ設けられている。他方、カソード側のエンドプレート76の一端部(エンドプレート75の上記一端部とは反対側)には、アノードガス排出口71B、カソードガス供給口72A及び冷却水供給口73A(図2ではこれらがまとめて破線で示されている)が設けられている。これらの各供給口、各排出口にはそれぞれ対応する流体の供給管、排出管が接続されることになる。
【0020】
各燃料電池用セパレータ21~24には、それぞれ、アノードガス供給口71Aに連通するアノードガス流入口61A、カソードガス排出口72Bに連通するカソードガス(及び生成水)流出口62B、及び、冷却水排出口73Bに連通する冷却水流出口63Bが設けられている。また、各燃料電池用セパレータ21~24には、それぞれ、アノードガス排出口71Bに連通するアノードガス流出口61B、カソードガス供給口72Aに連通するカソードガス流入口62A、及び、冷却水供給口73Aに連通する冷却水流入口63Aが設けられている。
【0021】
アノードガス供給口71A、カソードガス供給口72A及び冷却水供給口73Aを通じてカソードガス、アノードガス及び冷却水が供給される。実施形態においては、アノードガスとして水素ガスを使用し、カソードガスとして空気を用いた場合を例示する。
【0022】
[膜電極接合体]
次に、膜電極接合体81について説明する。
図3は、膜電極接合体(MEA)81を説明するために示す図である。図3(a)は膜電極接合体81の平面図であり、図3(b)は膜電極接合体81の正面図であり、図3(c)は膜電極接合体の側面図である。
【0023】
膜電極接合体81は、図3に示すように、電解質膜(PEM)82と、電解質膜82の両面にそれぞれ配置された触媒層(CL)85と、各触媒層85の外側の面に配置されたマイクロポーラスレイヤ(MPL)83とを有する。実施形態においては、電解質膜82とその両側に配置された触媒層85から構成されるものを触媒コート電解質膜(Catalyst Coated Membrame:CCM)という。マイクロポーラスレイヤ83は多孔質体層40よりも微細な径の気孔(細孔)を有する。なお、マイクロポーラスレイヤ83は、省略することもできる。
【0024】
[燃料電池用セパレータ、燃料電池用ガス供給拡散層]
次に、燃料電池用セパレータ21~24及び燃料電池用ガス供給拡散層42について説明する。
図4は、タイプCの燃料電池用セパレータ23の金属板30の側から見た平面図である。但し、図4においては、燃料電池用セパレータ23の流路パターンを分かり易く表すために、金属板30の図示は省略している。図5は、図4の断面図である。図5(a)は図4のA1-A4断面図(但し、A2-A3部分は省略)であり、図5(b)は図4のA2-A3断面図である。図5においては、燃料電池用セパレータ23と膜電極接合体81との位置関係を示すために、膜電極接合体81が接合された状態の燃料電池用セパレータ23を示している。また、膜電極接合体81の断面構造は省略している。図6は、燃料電池用ガスの流れを説明するために示す図である。図6(a)は図4のB部を拡大した平面図であり、図6(b)は図6(a)のC-C線に沿った断面図である。
【0025】
なお、燃料電池用セパレータ23には符号55で示す孤立穴が複数形成されているが、図4においては図を見易くするために、一部の孤立穴にのみ符号を付して他の孤立穴に符号を付すのを省略する。また、図4図6においては、孤立穴を示す符号55の後に(551)~(553)のカッコ付きの符号を示す場合があるが、カッコ内の符号は、各孤立穴の相対位置関係に関する説明の便宜上示しており、特定の位置にある孤立穴を示すものではない。また、図6においては、矢印でカソードガスの流れを示すが、太い矢印で流入側から流出側に向かうカソードガスの全体的な流れを示し、細い矢印で孤立穴55からガス拡散部43中に押し出されたカソードガスの流れ(伏流ガス流れ)を示す。
【0026】
燃料電池用セパレータ23は、図4及び図5に示すように、金属板30の一方の面に燃料電池用ガス供給拡散層42が形成された構造を有する。図5中、金属板30には、断面であることを示すハッチングを施している。金属板30は、インコネル、ニッケル、金、銀及び白金のうち一以上からなる金属、又はオーステナイト系ステンレス鋼板への金属のめっきもしくはクラッド材であることが好ましい。これらの金属を用いることにより、耐食性を向上できる。
【0027】
燃料電池用セパレータ23においては、金属板30の縦方向の一端部(図4の下部)に、図4の右、中央、左の順に、カソードガス流入口62Aと、冷却水流入口63Aと、アノードガス流出口61Bとが設けられている。また、他端部(図4の上部)に、図4の左、中央、右の順に、カソードガス流出口62Bと、冷却水流出口63Bと、アノードガス流入口61Aとが設けられている。
【0028】
各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域のそれぞれの周囲は、電子導電性又は非電子導電性の緻密枠32によって囲まれている。緻密枠32はアノードガス、カソードガス及び冷却水の漏洩を防ぐ。緻密枠32の外面には、各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域を囲むように、緻密枠32に沿って溝33Aが形成されている(図4には不図示。)。この溝33A内にガスケット(パッキン、Oリングなどのシール材)33が配置されている。
【0029】
金属板30の両面には、上記の各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bが設けられている部分を除いて、その全面に電子導電性を有する耐食層(図5においては図示せず)が形成されている。各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bの内周面に耐食層が形成されていてもよい。金属板30の側面及び端面に耐食層が形成されていてもよい。耐食層は、好ましくは緻密枠32と同じ組成の緻密層であり、金属板30の腐食を抑制する作用を有する。燃料電池用セパレータを組み合わせて図1あるいは図2に示すような燃料電池セルスタックを構成する段階で、ガスケット33は接合される他の燃料電池用セパレータ、膜電極接合体81又は集電板27A,27Bと密着して流体の漏洩を抑制する。
【0030】
燃料電池用セパレータ23は、タイプCの燃料電池用セパレータであって、図4及び図5に示すように、基板としての長方形の金属板30の一方の面における中央部に、上流側から下流側に向かってカソードガス(燃料電池用ガス)が流れてカソードガスを供給・拡散する燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されている。燃料電池用ガス供給拡散層42は、使用時に上流側から下流側に向かって燃料電池用ガスが流れる燃料電池用ガス供給拡散層であって、燃料電池用ガスを透過、拡散し、導電性を有する多孔質体層40を備える。多孔質体層40は、多孔質体からなるガス拡散部43と、多孔質体層40の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴55とを有する。孤立穴55の各々は、互いに孤立して多孔質体層40に形成され、開口部を除く周囲がガス拡散部43に囲まれ、多孔質体の底を有する凹部からなる。また、多孔質体層40は、一方の面の流入側の隅部に位置するガス流入側溝51と一方の面の流出側の隅部に位置するガス流出側溝52とを有する(図4参照)。なお、多孔質体層40は、必要に応じて、後述(変形例7)のガス圧均等化用溝56、及び後述(変形例9)のバイパス用溝59を有していてもよい。
【0031】
以降、上流側から下流側に向かう流れ方向(燃料電池用ガスの流入口が設けられている側の辺から燃料電池用ガスの流出口が設けられている辺に向かう方向,図4では符号Yの矢印の方向)をY方向とし、平面的にY方向に直交する幅方向(図4では符号Xの矢印の方向)をX方向として説明する。
【0032】
ガス流入側溝51は、平面的に見て、多孔質体層40の流入側の隅部において幅方向一杯に延びた細い矩形状の溝部分(段差部分)を有する。また、ガス流入側溝51は、孤立穴55に対応するように矩形状の溝部分(段差部分)からY方向流出側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)を有していてもよい。例えば、図4には、矩形状の溝部分(段差部分)から円形の孤立穴55を切り取った形状でY方向流出側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)が描かれている。ガス流入側溝51は、所定の深さで形成されている。
【0033】
ガス流出側溝52は、平面的に見て、多孔質体層40の流出側の隅部において幅方向一杯に延びた細い矩形状の溝部分(段差部分)を有する。また、ガス流出側溝52は、孤立穴55に対応するように矩形状の溝部分(段差部分)からY方向流入側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)を有していてもよい。例えば、図4には、矩形状の溝部分(段差部分)から円形の孤立穴55を切り取った形状でY方向流入側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)が描かれている。ガス流出側溝52は、ガス流入側溝51と同じ深さで形成されている。
【0034】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層においては、孤立穴55が、多孔質体層40の一方の面の所望の範囲にわたって分散して配置されている。各孤立穴55は、所定の規則性を備えた形状が好ましく、各孤立穴55の重心位置が、所定の規則性を備えて多孔質体層40の一方の面に配置されていることが好ましい。ここで、所望の範囲とは、多孔質体層40の一方の面に形成された孤立穴のうち、外側の孤立穴の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲(図4では符号Rで示す二点鎖線に囲まれる範囲)である。所望の範囲は、多孔質体層の一方の表面積の60%以上をカバーしていればよく、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上カバーしていればよい。所望の範囲は、多孔質体層40の一方の面の全面にわたって分散配置するようにしてもよい。また、孤立穴が分散して配置されているというのは、X方向及びY方向に等ピッチで並んで配置されている場合だけを意味するものではなく、所望の範囲においてそれほど偏ることなく点在して配置されていることを意味する。
【0035】
孤立穴55は、所望の範囲の面積(多孔質体層40の一方の面に形成された孤立穴のうち、外側の孤立穴の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲の平面的な投影範囲の面積)をS1とし、複数の孤立穴55の合計面積(複数の孤立穴55を構成する全ての孤立穴について、それぞれの孤立穴の平面的な投影面積を合計した面積)をS2としたとき、「0.9×S1≧S2≧0.1×S1」の関係を満たすように配置されていることが好ましい。
【0036】
また、各孤立穴55は、全て同じ形状、大きさとしてもよいし、形状のみ同じにしてその大きさを変えてもよい。なお、少なくとも所望の範囲において、孤立穴55は、規則性をもたせて配置されていることが好ましい。
【0037】
また孤立穴55の底の形状は、膜電極接合体81あるいは電解質膜(PEM)82に対し平行に平坦でも、場所によってその深さが異なるようにしてもよい。
【0038】
したがって、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、複数の孤立穴55が多孔質体層40の一方の面に配置されていることから、燃料電池用ガスが孤立穴55を流れる際にガス拡散部43を伏流するよりも移動抵抗が小さくスムーズに流れるため、膜電極接合体81に対して従来よりも多量の燃料電池用ガスを供給できる。
【0039】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、複数の孤立穴55が多孔質体層40の一方の面に形成されていることから、多孔質体層40の他方の面に配設される膜電極接合体81に対する燃料電池用ガスの供給は必ず多孔質体(ガス拡散部43)を介して行われるため、複数のガス流路が多孔質体層40の一方の面から他方の面にかけて形成されている場合よりも燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できる。
【0040】
また、孤立穴の周囲が多孔質体(ガス拡散部43)で囲まれていることから、下流側の孤立穴には必ず多孔質体(ガス拡散部43)を通って進行するため、多孔質体層40にガス流路が流入側から流出側まで繋がるように形成されている場合よりも、燃料電池用ガスを多孔質体層40全体にわたって均一に拡散させることができる。
【0041】
その結果、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、従来よりも多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できるようになることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0042】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかった燃料電池用ガス(この場合カソードガス(酸素ガス、窒素ガス))を、多孔質体(ガス拡散部43)及び孤立穴55を介して効率良く燃料電池用ガス供給拡散層42外に排出できるようになるため、従来よりも燃料電池用ガスの移動抵抗が低く、ひいては、反応ガス濃度を高く保つことになり、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0043】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気または凝集水を、多孔質体(ガス拡散部43)及び孤立穴55を介して効率良く燃料電池用ガス供給拡散層42外に排出できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0044】
各孤立穴55は、幅が変化している形状であってもよく、例えば平面的に見て円形、楕円、菱形、三角形などとしてもよい。各孤立穴55は、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52と同じ深さ、且つ一定の深さで形成してもよい。各孤立穴55は、内表面に多孔質体からなるガス拡散部43が露出している。
【0045】
このように、複数の孤立穴55が円形、楕円、菱形、三角形などのように幅が変化するような構成をとれば、燃料電池用ガスを二次元的に広げて供給することも可能となる。
【0046】
孤立穴は、複数の孤立穴のうちの一の孤立穴と一の孤立穴の下流側に近接する孤立穴との位置関係に規則性をもたせて配置されていることが好ましい。孤立穴55は、図4に示すように、複数の孤立穴55のうちの一の孤立穴551から下流側に位置する孤立穴のうち、一の孤立穴551からX方向に沿った距離が最も短い孤立穴(すなわち孤立穴551の重心位置と近接する孤立穴の重心位置とを結ぶベクトルのX方向成分の絶対値が最も小さい(当該絶対値がゼロの場合ももちろん含む)孤立穴を第1近接孤立穴552とし、一の孤立穴551からX方向に沿った距離が二番目に短い孤立穴(すなわち孤立穴551の重心位置と近接する孤立穴の重心位置とを結ぶベクトルのX方向成分の絶対値が二番目に小さい孤立穴)を第2近接孤立穴553としたとき、一の孤立穴551と第1近接孤立穴552との間の距離であって、一の孤立穴551の開口部と第1近接孤立穴552の開口部との間の最短距離である第1間隔L1と、一の孤立穴551と第2近接孤立穴553との間の距離であって、一の孤立穴551の開口部と第2近接孤立穴553の開口部との間の最短距離である第2間隔L2とは、図4に示すように、「L2≦L1」の関係を満たすようにするとよい。すなわち、一の孤立穴551には、Y方向に並ぶ(X方向に沿った距離が最も短い)第1近接孤立穴552と隣の列(両隣の列)に位置する第2近接孤立穴553とが近接しているが、燃料電池用ガスが一の孤立穴551から第2近接孤立穴553に移動する際にガス拡散部43を通過する距離は、一の孤立穴551から第1近接孤立穴552に移動する際にガス拡散部43を通過する距離よりも短くなるようにする。このようにすると、一の孤立穴551から押し出された燃料電池用ガスは、第1近接孤立穴552よりも第2近接孤立穴553に向かって流れやすくなる。このため、一の孤立穴551から押し出された燃料電池用ガスが、第1近接孤立穴552に向かうよりも第2近接孤立穴553に多く向かうことでより広く拡散するようになる。よって、燃料電池用ガスを多孔質体層40全体にわたって均一に拡散させることができる。
【0047】
また、第1間隔L1と第2間隔L2とは、図4に示すように、さらに「L1<2×L2」の関係を満たすようにしてもよい。すなわち、一の孤立穴551と第2近接孤立穴553との間隔が第2近接孤立穴553と第1近接孤立穴552との間隔と同じであるため、燃料電池用ガスが一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に移動する際にガス拡散部43を通過する距離は、一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552に移動する際にガス拡散部43を通過する距離よりも短くする。このようにすると、燃料電池用ガスが一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に移動する際にガス拡散部43を通過する距離(第1間隔L1)は、料電池用ガスが一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552に移動する際にガス拡散部43を通過する距離(2×第2間隔L2)より短くなる。このため、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に向かう燃料電池用ガスの流れが極端に少なくなることはなく、多孔質体層40全体にわたってバランス良く燃料電池用ガスを拡散させることができる。
【0048】
なお、「L2≦L1」の関係、及び、「L1<2×L2」の関係を満たす場合には、孤立穴間のX方向のピッチ及びY方向のピッチの値については、これらの、「L2≦L1」の関係、及び、「L1<2×L2」の関係を満たす範囲で、適宜設定すればよい。
【0049】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層においては、所望の範囲の面積(多孔質体層40の一方の面に形成された孤立穴のうち、外側の孤立穴の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲の平面的な投影範囲の面積)S1と複数の孤立穴の合計面積S2とが「0.9×S1≧S2≧0.1×S1」の関係を満たすように配置されていることが好ましい理由は以下の通りである。すなわち、上記のS2が上記のS1の10%以上である場合には、燃料電池用ガスが所望の範囲を流れる際の移動抵抗を十分に小さくできるため、膜電極接合体81に対して従来よりも多量の燃料電池用ガスを供給できるからである。また、S2がS1の90%以下である場合には、燃料電池用ガスが所望の範囲内を拡散しながら伏流する領域を最低限確保できるため、燃料電池用ガスを所望の範囲内において均一に拡散させやすくできるからである。なお、より多量の燃料電池用ガスを供給するという観点からは、多孔質体層40の面積S1と複数の孤立穴の合計面積S2とは、「S2≧0.2×S1」の関係を満たすことがより好ましく、「S2≧0.3×S1」の関係を満たすことがより一層好ましい。また、所望の範囲内において拡散させるという観点からは、「0.8×S1≧S2」の関係を満たすことがより好ましく、「0.7×S1≧S2」の関係を満たすことがより一層好ましい。
【0050】
ガス拡散部43は、導電性を有し、細かな空隙が形成されている多孔質体からなる。ガス拡散部43は、平面的に見て略矩形状をしている。ガス拡散部43は、気体や液体をこの空隙を通して伏流させるのに適した気孔率で形成されている。詳細は後述する。
【0051】
なお、本明細書において、「伏流」とは、ガス流入側溝51、各孤立穴55、後述のガス圧均等化用溝56(変形例7)、及び後述のバイパス用溝59(変形例9)等からガス拡散部43中に押し出されたカソードガス(伏流ガス)の流れをいう。
また、本明細書において、「ガスの流入側から流出側に向かって」とは、「およそガスの流れるY方向に沿って」という意味であり、「ガスの流入側から流出側に向かう」方向は、多孔質体層40全体としてみた場合の多孔質体層40内のガスのY方向に沿った流れの方向である。これは、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42のように、カソードガス流入口62Aとカソードガス流出口62Bが金属板30の対角線上の位置に配設されている場合に、ガス流路は上記の対角線に沿って形成されている必要はなく、実施形態のように、「ガスの流入側から流出側に向かう」方向は、「多孔質体層40全体としてみた場合の多孔質体層40内のガスの流れの方向が、図4の紙面の下から上のY方向に向かうような場合は」、図4のように、図4の紙面の下から上のY方向に沿って孤立穴55は整列されていればよいし、また、それ以外の方向に沿って整列されていてもよい。
【0052】
さらに、燃料電池用セパレータ23に関して詳しく説明する。カソードガスとしての空気(酸素ガス及び窒素ガス)は、多孔質体層40(ガス拡散部43)内を拡散する。多孔質体層40は、導電材(好ましくは炭素系導電材)と高分子樹脂の混合物を含む。高分子樹脂に炭素系導電材を混合することにより、高分子樹脂に高い導電性を付与することができ、また高分子樹脂の結着性により炭素材の成型性を向上させることができる。多孔質体層40の流体抵抗は、多孔質体層の気孔率と流体の流れる面の面積に依存する。気孔率が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。およその目安としては、(カソードガス用の)燃料電池用ガス供給拡散層42においては、多孔質体層40の気孔率は、50~85%程度である。なお、(アノードガス用の)燃料電池用ガス供給拡散層41においては、多孔質体層40の気孔率は、30~85%程度である。
【0053】
多孔質体層40の気孔率が上記のように構成されていることから、ガス流路用溝55の内表面を介して、孤立穴55と多孔質体層40との間のカソードガス、水蒸気、凝結水の流通が適切に行われるようになる結果、多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できるようになり、また、発電時に使用されなかったカソードガスや発電時に生成した水蒸気や凝結水を孤立穴外に効率よく排出することができるようになる。その結果、燃料電池用ガス供給拡散層42においては、孤立穴55は、孤立穴55の内表面に金属、セラミックス、樹脂等からなるガス不透過層に微細なガス流通孔を多数開口したガス透過フィルターのようなものを形成する必要が無く、内表面に多孔質体からなるガス拡散部43が露出するよう構成されている。
【0054】
炭素系導電材の含有率を調整することにより、燃料電池用ガス供給拡散層42の気孔率を調整することができ、ひいては、燃料電池用ガス供給拡散層42の移動抵抗を調整することができる。特に炭素系導電材の含有率を高くすると移動抵抗が小さくなる(気孔率が大きくなる)。逆に、炭素系導電材の含有率を低くすると移動抵抗が大きくなる(気孔率が小さくなる)。耐食層及び緻密枠32も炭素系導電材と高分子樹脂の混合物であり、炭素系導電材の適度な含有率により、導電性を確保しつつ緻密化したものであるのが好ましい。
【0055】
炭素系導電材としては特に限定されないが、例えば黒鉛、カーボンブラック、ダイヤモンド被覆カーボンブラック、炭化ケイ素、炭化チタン、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。高分子樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。高分子樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ゴム系樹脂、フラン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0056】
カソードガス流入口62Aと多孔質体層40が形成されている領域との間には流入通路57が形成されている(図4参照。)。カソードガス流出口62Bと多孔質体層40が形成されている領域との間には流出通路58が形成されている。これらの流入通路57及び流出通路58は膜電極接合体81又はそのフレーム81Aを支持するためのものである。したがって、カソードガスを円滑に流し、かつ膜電極接合体81をサポートできる構造であればよい。例えば、気孔率のきわめて大きい多孔質体層でもよいし、多数の支柱を配列した構造でもよい。多孔質体層40における流入通路57と面する領域には金属板30の幅方向に沿って細長い流入側溝51が形成されている。また、多孔質体層40における流出通路58と面する領域にも金属板30の幅方向に沿って細長い流出側溝52が形成されている。但し、流入側溝51及び流出側溝52は、これらを省略することもできる。
【0057】
多孔質体層40、流入通路57、及び流出通路58は、図5に示すように、緻密枠32と同じ高さ(厚さ)に形成されている。燃料電池用ガス供給拡散層42における金属板30に対向する側の面には、空隙からなる複数の孤立穴55が設けられており、これら複数の孤立穴55と金属板30との隙間に複数のガス流路が形成されている。孤立穴55は前述したような配置で複数形成されている。各孤立穴55は、ガス拡散部43を伏流して流入してきた燃料電池用ガスを、移動抵抗を減らして広げて再びガス拡散部43に流出させることで、強制伏流により拡散させる。孤立穴55の数及び構造は図示のものに限定されない。
【0058】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、これを輸送機器用の燃料電池に用いる場合には、輸送機器の種類・大きさにもよるが、多孔質体層40の横幅は例えば30mm~300mm程度である。孤立穴55の幅Wは例えば0.3mm~2mm程度である。多孔質体層40の厚さは例えば150~400μm程度であり、孤立穴55の深さは例えば100~300μm程度であり、孤立穴の底と多孔質体層40の他方の面との距離(天井厚)は例えば100~300μm程度である。実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42を輸送機器以外の用途(例えば定置用)の燃料電池に用いる場合には、上記のサイズに限定されるものではなく、必要とされる性能などに応じて適宜のサイズのものを用いることができる。
【0059】
タイプAの燃料電池用セパレータ22における燃料電池用ガス供給拡散層41も、基本的には燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有する。但し、燃料電池用ガス供給拡散層に供給するガスが水素ガスであることから、燃料電池用ガス供給拡散層42よりも気孔率が低く、また、厚さが薄い(後述する図7(b)参照。)。
【0060】
タイプCAの燃料電池用セパレータ21においては、燃料電池用ガス供給拡散層として燃料電池用ガス供給拡散層41及び燃料電池用ガス供給拡散層42を用いる(後述する図7(a)参照。)。タイプCWの燃料電池用セパレータ24は、タイプCの燃料電池用セパレータ23における燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されていない面に冷却水供給拡散層が形成されたものである(後述する図7(c)参照。)。タイプAWの燃料電池用セパレータ25は、タイプAの燃料電池用セパレータ22における燃料電池用ガス供給拡散層41が形成されていない面に冷却水供給拡散層が形成されたものである(後述する図7(d)参照。)。
【0061】
燃料電池スタック20を運転すると、アノードガス(水素ガス)を導入する燃料極ではプロトン(H+)が生成する。プロトンは、膜電極接合体81中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して水が生成する。生成した水は、酸素極側から排出される。このとき、上記のような構造を有する燃料電池用ガス供給拡散層42を備える燃料電池用セパレータ23においては、カソードガス流入口62Aから流入した空気は流入通路57及び流入側溝51からガス拡散部43に入り、伏流した空気は、孤立穴55を経由することで移動抵抗が大きい多孔質体内通過する距離を減らせるため、孤立穴55間を渡り進むようにして流出側に向かう。孤立穴55に流入した空気は、孤立穴55内に広がり、孤立穴55の内表面から再びガス拡散部43に押し出されて強制伏流させられてさまざまな方向に拡散する。
【0062】
空気が孤立穴55間を渡り進むようにして流出側に向かうことを図4及び図6(a)を参照してさらに詳しく説明すると、孤立穴55は空洞であり空気の移動抵抗がガス拡散部43よりも小さくなるため、空気は、ガス拡散部43を通過するよりも孤立穴55を通過しようとする。このため、一の孤立穴551からガス拡散部43に平面方向に押し出された空気は、下流側に近接する第1近接孤立穴552又は第2近接孤立穴553に向かって伏流する。特に、第1間隔L1と第2間隔L2とが「L1≦L2」の関係を満たす場合には、一の孤立穴551から第2近接孤立穴553までのガス拡散部43を通過する距離(第2間隔L2)が第1近接孤立穴552までのガス拡散部43を通過する距離(第1間隔L1)と同じ又はより短くなり、一の孤立穴551から押し出された空気の多くは、X方向にずれて第2近接孤立穴553に向かって伏流する。第2近接孤立穴553に流入した空気は、再びガス拡散部43に押し出され、同様にして、第2近接孤立穴553の上流に隣接する孤立穴に向けて伏流する。このような繰り返しにより、空気が孤立穴55間を渡り進むようにして流出側に向かう。
【0063】
また、第1間隔L1と第2間隔L2とが「L1<2×L2」の関係をさらに満たす場合には、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552までのガス拡散部43を通過する距離(第1間隔L1)が一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552までのガス拡散部43を通過する距離(2×第2間隔L2)より短くなり、空気の一部は、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に向かうルートで伏流する。
【0064】
また、図6(b)に示すように、空気は、多孔質体層40(ガス拡散部43)内を平面方向に拡散しながら厚さ方向にも拡散し、多孔質体層40(ガス拡散部43)に接して設けられた膜電極接合体81に供給され、発電反応に寄与する。発電に使用されなかったガス(未使用の酸素ガス及び窒素ガス)及び発電時に生成した水(水蒸気又は凝縮水)は多孔質体層40(ガス拡散部43)、孤立穴55、流出側溝52を介して流出通路58に流出する。流出通路58に流出した酸素ガス、窒素ガス及び水は、最終的に流出通路58からカソードガス流出口62B及びカソードガス排出口72Bを通って排出されていく。このとき、燃料電池用ガス供給拡散層42の構造上、全ての水は排出されず、一部が多孔質体層40(ガス拡散部43)内に留まる。
【0065】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42は、上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体で生成した水(水蒸気又は凝縮水)を、多孔質体層40及び孤立穴55を介して孤立穴外に効率良く排出できるようになる。また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で水を孤立穴外に効率良く排出できるようになる。
【0066】
また、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42を、カソードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層に利用した場合には、特に顕著な効果が得られる。この場合には、上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかったカソードガスを、ガス拡散部43(多孔質体)及び孤立穴55を介して効率良く回収できるようになるため、従来よりも燃料電池の発電効率をより一層高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。さらにまた、上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気又は凝集水を、ガス拡散部43(多孔質体)及び孤立穴55を介して効率良く回収できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0067】
実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42を、カソードガスが空気である場合に特に顕著な効果が得られる。この場合には、上記のような特徴を有することから、発電に使用されない窒素ガスをガス拡散部43(多孔質体)及び孤立穴55を介して効率良く排出できるようになるため、従来よりも燃料電池用ガスの移動抵抗を低くでき、従来よりも燃料電池の発電効率をより一層高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0068】
実施形態に係る燃料電池用セパレータ23は、金属板30と、金属板30の少なくとも一方の面に配設された燃料電池用ガス供給拡散層とを備える燃料電池用セパレータであって、燃料電池用ガス供給拡散層が実施形態に係る
燃料電池用ガス供給拡散層42であり、当該燃料電池用ガス供給拡散層42は、複数のガス流路用溝55が金属板30側に位置するように金属板30に対して配置されており、ガス流路用溝55と金属板30とでガス流路が構成されていることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池用セパレータとなる。
【0069】
また、実施形態に係る燃料電池セルスタック20は、燃料電池用セパレータと、膜電極接合体とが積層されてなる燃料電池セルスタックであって、燃料電池用セパレータが、実施形態に係る燃料電池用セパレータ23であり、当該燃料電池用セパレータ23と膜電極接合体81とは、燃料電池用ガス供給拡散層42の複数のガス流路用溝55が形成されていない側の面に膜電極接合体81が位置する位置関係で積層されていることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池セルスタックとなる。
【0070】
[燃料電池用セパレータ23の製造方法]
一例として、耐食層、緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42等は等方圧加圧により形成する。たとえば熱硬化性樹脂を用いる場合(熱可塑性樹脂でもよい)、炭素系導電材粉末(及び、状況に応じて炭素繊維)、樹脂粉末及び揮発性溶剤を混錬してペースト状にする。このペーストには、耐食層、及び緻密枠用のもの、流体供給拡散層用のもの等、多数種類を用意しておく。そして、金属板30上に、耐食層、緻密枠32のパターン、燃料電池用ガス供給拡散層42のパターン等を順次プリント、スタンプ、絞り出し等により形成する。各パターンの形成ごとに溶剤を揮発させる。上記のすべてのパターンが形成された金属板30の全体を軟質の薄いゴムバックに入れ、真空に脱気した後、ゴムバックを耐圧容器に入れ、加熱流体を容器内に導入して、加熱流体で等方圧加圧して樹脂を硬化させる。緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42の高さ(厚さ)を最終的に同じ高さ(厚さ)にするために、樹脂硬化の際の収縮の程度に応じて、これらの各枠、壁、層等の高さ(厚さ)をパターン作製時に調整しておくことが好ましい。
【0071】
一方で、金属板30上に耐食層を形成しておき、他方で緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42を形成し、最後にこれらを熱圧着して製造することもできる。このとき緻密枠32は金属板30上の耐食層と同時に作成してもよい。第1段階で金属板30上に耐食層と緻密枠32とを作成し、この後第2段階で燃料電池用ガス供給拡散層42のペーストを金属板30の耐食層上に順次印刷し、乾燥させた後、ロールプレス(ホットプレス)で硬化させて製造することもできる。
【0072】
または、次のような製造方法を用いることもできる。カーボンファイバー(CF)、少量の黒煙微粒子(GCB)及び結着剤となる熱可塑性もしくは熱硬化性又は繊維状物を形成する樹脂を混錬してシート状に形成し、硬化する前のグリーンシート状態のときに、流入通路57、流出通路58、流入側溝51、流出側溝52及孤立穴55に対応する形状の突起を有するスタンプ型をシートに押し当てて、流入通路57、流出通路58、流入側溝51、流出側溝52及孤立穴55を形成する。最後にグリーンシートを熱処理し、これを耐食層が形成された金属板30に接着する。
【0073】
燃料電池用ガス供給拡散層42の移動抵抗(又は流体抵抗)は、多孔質体層40の気孔率と流体の流れる方向に直交する面の面積(各層の高さ(厚さ)と幅)に依存する。気孔率が大きくなれば移動抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば移動抵抗は小さくなる(単位面積当りの移動抵抗は一定である)。おおよその目安としては、燃料電池用ガス供給拡散層の気孔率は、(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42については30~85%程度、(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41については50~85%程度である。気孔率Pは、測定が容易な、P=(多孔質体層中の気孔の体積)/(多孔質体層の体積)で定められる。ここで、気孔は外部に通じていない気孔を含む真の気孔である。
【0074】
なお、上記した製造方法は、燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ(燃料電池用セパレータ21、燃料電池用セパレータ22、燃料電池用セパレータ24及び燃料電池用セパレータ25)を製造する際にも適用できる。
【0075】
[燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ]
図7は、燃料電池用セパレータ23以外の燃料電池用セパレータ(燃料電池用セパレータ21、燃料電池用セパレータ22、燃料電池用セパレータ24及び燃料電池用セパレータ25)の断面図である。図7(a)はタイプCAの燃料電池用セパレータ21の断面図であり、図7(b)はタイプAの燃料電池用セパレータ22の断面図であり、図7(c)はタイプCWの燃料電池用セパレータ24の断面図であり、図7(d)はタイプAWの燃料電池用セパレータ25の断面図である。
【0076】
本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ21の(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42及び/又は(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(図7(a)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ22の(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(図7(b)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ24の(カソードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層42に適用することができる(図7c)参照。)。また、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層は、燃料電池用セパレータ25の(アノードガス用)燃料電池用ガス供給拡散層41に適用することができる(図7(b)参照。)。
【0077】
このように本発明の燃料電池用ガス供給拡散層を上記のような燃料電池用セパレータ21,22,24,25の燃料電池用ガス供給拡散層に適用した場合であっても、従来よりも多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できるようになることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる、燃料電池用ガス供給拡散層となる。
【0078】
[構成例1]
本発明の1実施形態として図4に示すような燃料電池用ガス供給拡散層の構成例を示すことができる。すなわち図4では、上述のような基本構成の加え、所定の規則性として、X方向に等ピッチ(Xピッチ)で並んだY方向に延びる複数の線上に、Y方向に等ピッチ(Yピッチ)で配置されている。孤立穴55は、Y方向の並びを1列としX方向の端側からn列とすると、奇数列同士及び偶数列同士のY方向の位置が同じで、奇数列と偶数列とのY方向の位置がYピッチの半分ずれている(いわゆる千鳥パターン構成である)。このように、孤立穴55は、X方向及びY方向に規則性をもたせて配置されている。また、図4では、各孤立穴55は、形や大きさを含め、全て同形状であり 、各孤立穴55が多孔質体層40の一方の面に配置されている。各孤立穴55は、幅が変化している形状であり、具体的には円形である。各孤立穴55は、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52と同じ深さ、且つ一定の深さで形成されている。各孤立穴55は、内表面に多孔質体からなるガス拡散部43が露出している。
【0079】
このようにすれば、上記した効果に加え、さらに複数の孤立穴55が多孔質体層40の一方の面の全面にわたって分散しているため、燃料電池用ガスを多孔質体層40全体にわたってより均一に拡散させることができる。
【0080】
[変形例1]
図8は、変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aの(金属板30の側から見た)平面構造を説明するために示す図である。但し、図4の場合と同様に、燃料電池用セパレータ23の流路パターンを分かり易く表すために、金属板30の図示は省略している。以降の図9図17においても同様である。
【0081】
変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aは、基本的には実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、孤立穴の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、図8に示すように、変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aにおいては、孤立穴として平面形状が菱形である孤立穴55aを用いている。
【0082】
変形例1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aによれば、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、孤立穴55aが平面状の壁面を有し、近接する孤立穴55a同士の壁面を平行に配置することが可能となることから、孤立穴55a間の流体抵抗がある程度広い範囲で一定になり、より燃料電池用ガスを均一に伏流させることができる。
【0083】
[変形例2]
図9は、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの平面構造を説明するために示す図である。
【0084】
変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bは、基本的には実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、孤立穴の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、図9に示すように、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bにおいては、孤立穴として幅が一定の平面形状(この場合、Y方向に沿って延びる長方形)である孤立穴55bを用いている。
【0085】
変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bによれば、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、孤立穴55bの幅が一定、すなわち平面形状が正方形又は長方形であることから、特に多孔質体層の平面形状が矩形の場合に、孤立穴55bを多孔質体層の一方の面の全体にわたって配置しやすくできる。
【0086】
[変形例3]
図10は、変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cの平面構造を説明するために示す図である。
【0087】
変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cは、基本的には実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、孤立穴の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、図10に示すように、変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cにおいては、孤立穴として斜めの方向に沿って延びている孤立溝である孤立穴55cを用いている。
【0088】
変形例3に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cによれば、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、孤立穴55cが斜めの方向に沿って延びている孤立溝であることから、燃料電池用ガスをX方向に広げるとともにY方向に進行させることができる。
【0089】
[変形例4]
図11は、変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dの平面構造を説明するために示す図である。
【0090】
変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dは、基本的には実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の構成を有するが、孤立穴の平面形状が実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42の場合と異なる。すなわち、図11に示すように、変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいては、孤立穴として途中で曲がっている孤立穴55dを用いている。途中で曲がっている孤立穴55dの形状としては、例えば図11に示すようなL字形状の他、U字、C字、円弧などの形状を挙げることができる。なお、孤立穴55dは、図11の2点鎖線Gで表すジグザグのライン上に沿って、間欠的に配置されている。
【0091】
変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42dによれば、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42と同様の効果が得られるのに加えて、孤立穴55dが途中で曲がっていることで、燃料電池用ガスを素早く方向を変えて広げることができるという効果が得られる。
【0092】
[変形例5]
図12は、変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eの平面構造を説明するために示す図である。
【0093】
変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eは、基本的には変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、孤立穴の平面構造が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、図12に示すように、変形例4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eにおいては、孤立穴55eが下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるように形成されている。図12では、図9に示したものと同様に長方形の孤立穴を構成した例を示している。ここで孤立穴55eが流入側から流出側に向かうに従って、長方形の孤立穴55eのX方向の長さ(幅)がW1>W2>W3と段階的に細くなるように形成されている。
【0094】
変形例5に係る燃料電池用ガス供給拡散層42eによれば、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、孤立穴55eが下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるため、下流側にいくに従って減っていく燃料電池用ガスの流量に対応するようになる。このため、上流側と下流側との燃料電池用ガスの濃度がより均一になり、燃料電池用ガスを効率よく拡散できる。
【0095】
[変形例6]
図13は、変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fの平面構造を説明するために示す図である。
【0096】
変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fは、基本的には変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、孤立穴の平面構造が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、図13に示すように、変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fにおいては、孤立穴55fが下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるように形成されている。図13では、図9に示したものと同上に長方形の孤立穴55eを構成した例を示している。ここで孤立穴55fが流入側から流出側に向かうに従って、長方形の孤立穴55eのY方向の長さがD1>D2>D3と段階的に短くなっている。
【0097】
変形例6に係る燃料電池用ガス供給拡散層42fによれば、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、孤立穴55fが下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるため、下流側にいくに従って減っていく燃料電池用ガスの流量に対応するようになる。このため、上流側と下流側との燃料電池用ガスの濃度がより均一になり、燃料電池用ガスを効率よく拡散できる。
【0098】
なお、変形例5及び変形例6においては、孤立穴として、いずれも長方形の孤立穴(55e,55f)として示したが、孤立穴の大きさ(面積)を下流側にいくに従って小さくなるようにすれば、孤立穴は、円、楕円、菱形、三角形などその他の形状でも構わない。また、孤立穴ごとに最適な形状としてもよい。
【0099】
[変形例7]
図14は、変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gの平面構造を説明するために示す図である。
【0100】
変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gは、基本的には変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、ガス圧均等化用溝をさらに有する点で変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、図14に示すように、変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gにおいては、多孔質体層40は、多孔質体層40の一方の面に、多孔質体層40の幅一杯に延びた1又は複数のガス圧均等化用溝56(図14では2本のガス圧均等化用溝56)をさらに有している。ガス圧均等化用溝56は多孔質体層40をY方向にほぼ三等分するように2か所に形成されている。ガス圧均等化用溝56は孤立穴55gと同等の深さで形成されている。ガス圧均等化用溝56を備えるため、孤立穴55gは、多孔質体層40の一方の面の内、ガス圧均等化用溝56同士、流入側溝51とガス圧均等化用溝56、あるいは流出側溝52とガス圧均等化用溝56にそれぞれ挟まれた範囲(所望の範囲)にわたって分散して配置されている。
【0101】
変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gによれば、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の効果が得られるのに加えて、多孔質体層40の幅方向一杯に延びたガス圧均等化用溝56を有することで、多孔質体層40の幅方向全体にわたって燃料電池用ガスの供給量をより一層均一にできるという効果が得られる。
【0102】
[変形例8]
図15は、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hの平面構造を説明するために示す図である。
【0103】
変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hは、基本的には変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gと同様の構成を有するが、ガス圧均等化用溝の本数及び孤立穴の平面構造が変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gの場合と異なる。すなわち、図15に示すように、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hにおいては、ガス圧均等化用溝56が1本だけ形成されている。また、変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hにおいては、複数の孤立穴55hは、下流側にいくに従って、幅方向(X方向)に近接する孤立穴同士の間隔が段階的に狭くなっている。より詳しくは、孤立穴55hは、ガス圧均等化用溝56の下流側における孤立穴55h同士の間隔P2がガス圧均等化用溝56の上流側における孤立穴55h同士の間隔P2よりも狭くなっている。また、孤立穴55hは、ガス圧均等化用溝56の下流側における幅がガス圧均等化用溝56の上流側における幅よりも狭くなっている。変形例8)では、ガス圧均等化用溝56を1つ備える構成例のため、孤立穴55hは、多孔質体層40の一方の面の内、流入側溝51とガス圧均等化用溝56、あるいは流出側溝52とガス圧均等化用溝56に挟まれた範囲(所望の範囲)にわたって分散して配置されている。しかしながら変形例7のようにさらにガス圧均等化用溝56を加えて、ガス圧均等化用溝56同士、流入側溝51とガス圧均等化用溝56、あるいは流出側溝52とガス圧均等化用溝56に挟まれた範囲(所望の範囲)にわたって分散して配置してもよい。変形例8では、流入側溝51とガス圧均等化用溝56、あるいは流出側溝52とガス圧均等化用溝56に挟まれた範囲(所望の範囲)ごとに孤立穴55hの大きさや形状、分散配置の配置規則とを個別に代えて配置している。
【0104】
変形例8に係る燃料電池用ガス供給拡散層42hによれば、変形例7に係る燃料電池用ガス供給拡散層42gと同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、X方向に近接する孤立穴55h同士の間隔が段階的に狭くなっていることから、X方向沿った方向に整列している孤立穴55hの数が段階的に多くなる。このため、下流側にいくに従って圧力損失が大きくなっても、伏流する燃料電池用ガス及び発電時に膜電極接合体で生成した水蒸気又は凝集水が、密に配置されている下流側の孤立穴に流れ込みやすくなり、燃料電池用ガスをより均一に拡散させるとともに、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気または凝集水をより効率良く燃料電池用ガス供給拡散層42h外に排出できる。また、ガス圧均等化用溝56の下流において、より均一に燃料電池用ガスを拡散させることができる。
【0105】
[変形例9]
図16は、変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iの平面構造を説明するために示す図である。
【0106】
変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iは、基本的には変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、バイパス用溝をさらに有する点で変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、図16に示すように、変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iにおいては、多孔質体層40は、多孔質体層40の一方の面に、燃料電池用ガスの流入側から中央部まで延びたバイパス用溝59(流入用のバイパス用溝59A)をさらに有している。また、変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iにおいては、多孔質体層40は、中央部から前記燃料電池用ガスの流出側まで延びたバイパス用溝59(流出用のバイパス用溝59B)をさらに有している。
【0107】
各バイパス用溝59(59A,59B)は、細い矩形状の部分が組み合わされた溝である。各バイパス用溝59(59A,59B)は、連通する流入側溝51又は流出側溝52と同じ深さで形成されている。流入用のバイパス用溝59Aは、送り溝部分591Aと幅広げ溝部分592Aと複数の分岐溝部分593Aとが組み合わされて形成されている。送り溝部分591Aは、流入側が流入側溝51のX方向における一方の端部付近に繋がり、流入側溝51から多孔質体層40の中央部までY方向に延びている。幅広げ溝部分592Aは、送り溝部分591Aの先端側からX方向に延びている。分岐溝部分593Aは、孤立穴55iの連続パターン形状と対応するように複数、幅広げ溝部分592Aから短くY方向流出側に延びている。流出用のバイパス用溝59Bは、送り溝部分591Bと幅広げ溝部分592Bと複数の分岐溝部分593Bとが組み合わされて形成されている。送り溝部分591Bは、流出側が流出側溝52のX方向における他方の端部付近に繋がり、流出側溝52から多孔質体層40の中央部までY方向に延びている。幅広げ溝部分592Bは、送り溝部分591Bの先端側からX方向に延びている。分岐溝部分593Bは、孤立穴55iの連続パターン形状と対応するように複数、幅広げ溝部分592Bから短くY方向流入側に延びている。流入用のバイパス用溝59Aにおける幅広げ溝部分592Aは、流出用のバイパス用溝59Bにおける幅広げ溝部分592Bよりも流出側に配置されている。流入用のバイパス用溝59Aにおける幅広げ溝部分592Aは、流出用のバイパス用溝59Bにおける送り溝部分591Bと交差しない程度でX方向に広がっている。流出用のバイパス用溝59Bにおける幅広げ溝部分592Bは、流入用のバイパス用溝59Aにおける送り溝部分591Aと交差しない程度でX方向に広がっている。このように構成することにより、流入側溝51と幅広げ溝部分592Bの間の第1のブロックと、流出側溝52と幅広げ溝部分592Bの間の第2のブロックとを構成している。燃料電池用ガスは、第1のブロックと第2のブロックとに分かれて流れる。したがって、両ブロックの両方を通過する燃料電池用ガスはほぼ0である。本変形例においては、このブロック内、すなわち流入側溝51と幅広げ溝部分592B、あるいは流出側溝52と幅広げ溝部分592Bに挟まれた範囲(所望の範囲)ごとに孤立穴55iを配置している。このとき孤立穴55iの大きさや形状、分散配置の配置規則を、個別に代えて配置してもよい。
【0108】
変形例9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42iによれば、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の効果が得られるのに加えて、以下の効果が得られる。すなわち、多孔質体層40は、燃料電池用ガスの流入側から中央部まで延びたバイパス用溝59(流入用のバイパス用溝59A)を有していることで、中央部よりも上流で減ってしまった燃料電池用ガスが中央部で補給されるため、中央部よりも下流の発電効率の低下を抑えることができる。また、多孔質体層40は、中央部から前記燃料電池用ガスの流出側まで延びたバイパス用溝59(流出用のバイパス用溝59B)を有していることで、中央部よりも上流で発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気または凝集水が中央部から効率よく排出されるため、中央部よりも下流の発電効率の低下を抑えることができる。
【0109】
なお、変形例1~9に係る燃料電池用ガス供給拡散層42a~42iにおいては、一の孤立穴551a~551i(変形例8では一の孤立穴551h1,551h2)と第1近接孤立穴552a~552i(変形例8では第1近接孤立穴552h1,552h2)の第1間隔L1(変形例8では第1間隔L11,L12)と、一の孤立穴551a~551iと第2近接孤立穴553a~553i(変形例8では第2近接孤立穴553h1,553h2)の第2間隔L2(変形例8では第2間隔L12,L22)とは、実施形態の場合と同様に、「L2≦L1」及び「L1<2×L2」を満たす。
【0110】
また、図10(変形例3)及び図11(変形例4)には、一の孤立穴551c,551dから下流側に位置する孤立穴のうち、一の孤立穴551c,551dからX方向に沿った距離が三番目に短い、又は第2近接孤立穴553c,553dと同等で二番目に短い孤立穴(すなわち孤立穴551c,551dの重心位置と近接する孤立穴の重心位置とを結ぶベクトルのX方向成分の絶対値が三番目に小さい、又は他の孤立穴と同等に二番目に小さい孤立穴)が第3近接孤立穴554c,554dとして描かれている。一の孤立穴551c,551dと第3近接孤立穴554c,554dとの間隔は、特に限定するものではないが、より広く拡散させるように、第1間隔L1よりも短くすることが好ましい。
【0111】
[変形例10]
図17は、変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jの平面構造を説明するために示す図である。図18は、図17におけるE-E線に沿った断面図である。
【0112】
変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jは、基本的には変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の構成を有するが、孤立穴の底形状が変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bの場合と異なる。すなわち、図18に示すように、変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jにおいては、孤立穴として各前記孤立穴の底面が下流側にいくに従って深くなるように傾斜している孤立穴55jを用いている。なお、変形例10においては、その平面視において長方形の孤立穴55jを用いている例を示しているが、このとき孤立穴55jの大きさや形状、分散配置の配置規則を他の変形例などのように任意に代えてもよい。
【0113】
変形例10に係る燃料電池用ガス供給拡散層42jによれば、変形例2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42bと同様の効果が得られるのに加えて、各孤立穴の底面が下流側にいくに従って深くなるように傾斜していることから、各孤立穴55j内を流れる燃料電池用ガスの流れは、膜電極接合体81に向かうベクトルを含むようになる。このため、孤立穴55jから伏流する燃料電池用ガスがより膜電極接合体81に向かうこととなり、より多くの燃料電池用ガスを膜電極接合体81に供給することができるという効果も得られる。
【0114】
[変形例11]
図19は、変形例11に係る燃料電池用ガス供給拡散層42kの断面図である。図5の場合と同様に、膜電極接合体81が接合された状態の燃料電池用セパレータ23kを示している。上記した実施形態においては、燃料電池用ガス供給拡散層として、一方の面に複数の孤立穴55が形成された多孔質体層40を備える燃料電池用ガス供給拡散層42を用いたが(図5参照。)、本発明はこれに限定されるものではない。図19に示すように、一方の面に複数の孤立穴55が形成された多孔質体層40と、当該多孔質体層40の他方の面に配設されたマイクロポーラスレイヤ44とを備える燃料電池用ガス供給拡散層を用いこともできる。このような構成とした場合には、マイクロポーラスレイヤを備えない膜電極接合体を用いて燃料電池用セパレータを構成することができるようになる。
【0115】
以上、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックを、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。
【0116】
[1]上記した実施形態においては、孤立穴として、多孔質体層40(又は孤立穴55)の表面における孤立穴の幅と、孤立穴55の底におけるガス流路用溝の幅とが等しく、断面が長方形状の孤立穴55を用いたが(図5及び図7参照。)、本発明はこれに限定されるものではない。溝の底が表面よりも狭い断面三角形状の孤立穴を用いてもよいし、溝の底が表面よりも狭い断面半円形状の孤立穴を用いてもよいし、その他の形状の孤立穴を用いてもよい。
【0117】
[2]上記した実施形態においては、ガス遮蔽板として、金属板30を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。金属板30以外の、ガスを遮蔽する性質をもった材料からなる板(例えば、セラミックス板、樹脂板)を用いてもよい。
【0118】
[3]上記各変形例は、各変形例に記載の特徴を、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42、燃料電池用セパレータ23及び燃料電池セルスタック20に適用したものであるが、各変形例に記載の特徴は、これに限らず、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックの全般に適用可能である。例えば、各変形例に記載の特徴は、タイプCAの燃料電池用ガス供給拡散層21、タイプAの燃料電池用ガス供給拡散層22、タイプCWの燃料電池用ガス供給拡散層24及びタイプAWの燃料電池用ガス供給拡散層25、並びに、これらの燃料電池用ガス供給拡散層を備えた燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックにも適用可能である。
【0119】
[4]上記各変形例は、上記実施形態又は上記他の変形例に対して、特徴のある一部のみを変形して記載しているが、適宜、各一部を組みあわせて変形することも可能である。例えば、変形例5~9を組み合わせて、孤立穴55を流出側に向かうに従って細く、短く、X方向に隣接する孤立穴55同志の間隔が狭くなるように形成するとともに、ガス圧均等化用溝56及びバイパス用溝59が形成された燃料電池セパレータ23を構成してもよい。
【0120】
[5]上記実施形態及び上記各変形例は、ある程度同形状の孤立穴55がX方向に一定のピッチで配置されるものとして説明したがこれに限定されるものではない。例えば、複数種類の全く形状の異なる孤立穴を組み合わせて構成されていてもよいし、X方向のピッチが変化するように配置されていても良い。
【0121】
[6]上記実施形態及び上記変形例1~10は、孤立穴や各溝の深さが同じであるものとして説明したがこれに限定されるものではない。例えば、孤立穴や溝の深さは、孤立穴や溝ごとに異なっていてもよいし、孤立穴や溝のなかで変動していてもよい。
【0122】
[7]上記各変形例は、各変形例に記載の特徴を、実施形態に係る燃料電池用ガス供給拡散層42、燃料電池用セパレータ23及び燃料電池セルスタック20に適用したものであるが、各変形例に記載の特徴は、これに限らず、本発明の燃料電池用ガス供給拡散層、燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックの全般に適用可能である。例えば、各変形例に記載の特徴は、タイプCAの燃料電池用ガス供給拡散層21、タイプAの燃料電池用ガス供給拡散層22、タイプCWの燃料電池用ガス供給拡散層24及びタイプAWの燃料電池用ガス供給拡散層25、並びに、これらの燃料電池用ガス供給拡散層を備えた燃料電池用セパレータ及び燃料電池セルスタックにも適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
20 燃料電池セルスタック
21,22,23,24,25 燃料電池用セパレータ
27A,27B 集電板
28A,28B 絶縁シート
30 金属板
32 緻密枠
33 ガスケット
33A ガスケット用溝
40 多孔質体層
41 燃料電池用ガス供給拡散層(アノードガス供給拡散層)
42、42a~42k 燃料電池用ガス供給拡散層(カソードガス供給拡散層)
43 ガス拡散部
44 マイクロポーラスレイヤ
51 流入側溝
52 流出側溝
55、55a~55j 孤立穴
56 ガス圧均等化用溝
57 流入通路
58 流出通路
59 バイパス用溝
59A 流入用のバイパス用溝
59B 流出用のバイパス用溝
61A アノードガス流入口
61B アノードガス流出口
62A カソードガス流入口
62B カソードガス流出口
63A 冷却水流入口
63B 冷却水流出口
74 締め付け・バネサポート
75、76 エンドプレート
80 セル構造体
81 膜電極接合体
81A 枠(フレーム)
82 電解質膜
83 マイクロポーラスレイヤ
85 触媒層
551,551a~551i 一の孤立穴
552,552a~552i 第1近接孤立穴
553,553a~553i 第2近接孤立穴
L1,L11,L21 第1間隔
L2,L12,L22 第2間隔
W1~W3 孤立穴のY方向の長さ(幅)
D1~D3 孤立穴のX方向の長さ
P1,P2 孤立穴同士のX方向の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23