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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】マイクロポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 7/06 20060101AFI20220328BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
F04B7/06
A61M5/142 500
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020535103
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084247
(87)【国際公開番号】W WO2019121123
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】17209179.5
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ブーリ・ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウィース・トーマス
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521969(JP,A)
【文献】特表2012-527972(JP,A)
【文献】特開昭61-196965(JP,A)
【文献】特表2007-509647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0231549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 7/06
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプにおいて、
ステータ(4)と、
少なくとも部分的に前記ステータ内にスライド可能かつ回転可能に装着されたロータ(6)であって、前記ロータは、第1の直径(D1)を有する第1の軸方向延長部(24)と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径(D2)を有する第2の軸方向延長部(26)と、を含む、ロータと、
前記第1の軸方向延長部の周りで前記ステータ上に装着された第1のバルブシール(18)によって形成された第1のバルブ(V1)であって、前記第1のバルブが開位置にあるときに前記第1のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第1のチャネル(42)と関連する、第1のバルブと、
前記第2の軸方向延長部の周りで前記ステータ上に装着された第2のバルブシール(20)によって形成された第2のバルブ(V2)であって、前記第2のバルブが開位置にあるときに前記第2のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第2のチャネル(44)と関連する、第2のバルブと、
前記ロータと前記ステータとの間および前記第1のバルブシールと前記第2のバルブシールとの間に形成されたポンプチャンバ(8)と、
を含み、
前記ポンプは、前記ステータのハウジング上に装着され、プライミング位置からロックされた動作位置まで移動可能なプライミングアクチュエータ(30)をさらに含み、前記プライミングアクチュエータ(30)は、前記ロータに係合し、前記第1および第2のバルブの両方が開いているプライミング位置から、前記第1および第2のバルブの少なくとも一方が閉じられている動作位置まで、前記ロータを軸方向に変位させるように構成されていることを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記プライミングアクチュエータ(30)は、ロック機構(30)を含み、前記ロック機構(30)は、前記ポンプの動作位置において前記ステータの前記ハウジング上の相補的なロックショルダー(37)に係合するロックショルダー(36)を含む、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを可能にするために解除可能であり、前記プライミングアクチュエータは、前記ロータに係合し、前記動作位置から前記プライミング位置まで、前記ロータを軸方向に変位させるように構成されている、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
最初の使用前に、前記プライミングアクチュエータは、前記ロックされた動作位置に位置付けられている、請求項3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ロック機構は、旋回可能なラッチ(34)を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記旋回可能なラッチ(34)は、一体的に形成されたヒンジ(41)を介して前記プライミングアクチュエータ(30)に接続された、手動で係合可能なボタン(35)を含む、請求項5に記載のポンプ。
【請求項7】
前記ロック機構は、前記ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを防止するために不可逆的であり、それによって、最初の使用前に、前記ロータはプライミング位置にある、請求項2に記載のポンプ。
【請求項8】
前記プライミングアクチュエータは、前記ステータの前記ハウジング上にスライド可能に装着されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記ロータは、前記ロータシャフト(12)の端部に形成されたロータヘッド(10)を含み、前記ロータヘッドは、その周囲に延在する作動リム(50)を含み、前記作動リムは、前記プライミングアクチュエータ(30)の作動ショルダー(40)と係合可能な内側軸方向ショルダー(57)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項10】
前記作動リム(50)は、前記プライミングアクチュエータがロックされた動作位置にあり、かつ前記ロータが前記ポンプの動作を妨げるために前記動作位置にないときに、前記プライミングアクチュエータ(30)上に設けられたリム軸方向制御ショルダー(56)に干渉するように構成された、外側軸方向ショルダー(58)を含む、請求項9に記載のポンプ。
【請求項11】
カムトラック(46)が、前記作動リムの内側半径方向部分上に設けられ、前記作動ショルダー(40)によって係合可能な前記内側軸方向ショルダー(57)は、前記作動リムの外側半径方向部分上に設けられている、請求項9または10に記載のポンプ。
【請求項12】
前記ロータの前記第1の軸方向延長部は、前記ポンプの入口(14)への液体の貫通流のためにチャネルセクションを増大させるように構成された、前記第1の軸方向延長部(24)の自由端部に近接する凹部(54)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項13】
前記プライミングアクチュエータ(30)は、前記ステータからの前記ロータの取り外しを阻止するために前記ロータのヘッド(10)の上に部分的に延在するヘッド(54)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項14】
前記ポンプの入口(14)が、前記第1のバルブ(V1)を介して前記ポンプチャンバ(8)に接続され、前記ポンプの出口(16)が、前記第2のバルブ(V2)を介して前記ポンプチャンバに接続され、前記入口は、前記ロータのシャフト(12)の軸方向自由端部に位置付けられている、請求項1から13のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項15】
前記入口は、前記ロータから実質的に半径方向に延在し、前記出口は、前記ロータから実質的に半径方向に延在する、請求項14に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、マイクロポンプに関する。マイクロポンプは、少量の液体を分配するために、特に医学的適用、例えば薬物送達装置において使用するために使用され得る。本発明に関連するマイクロポンプは、少量の液体の高精度送達を必要とする非医学的適用においても使用することができる。
【0002】
〔関連技術の説明〕
特に医学的および非医学的適用において使用され得る、少量の液体を送達するためのマイクロポンプが、EP1803934およびEP1677859に記載されている。前述の文献に記載されたマイクロポンプは、異なる直径の第1および第2の軸方向延長部を有するロータを含み、第1および第2の軸方向延長部は、ステータの第1および第2のシールと係合して、ロータの角度および軸方向変位の関数として、それぞれのシールを横切る液体連通を開閉する、第1および第2のバルブを形成する。ステータの第1のシールと第2のシールとの間にポンプチャンバが形成され、それによって、ロータの1回転サイクル当たりの液体のポンピング体積は、ロータの第1の軸方向延長部と第2の軸方向延長部との直径の差、およびステータに対するロータの角度位置の関数としてカムシステムによってもたらされるロータの軸方向変位の両方の関数である。ロータの回転および軸方向変位だけでなく、回転延長部間の直径の差の関数として、1サイクル当たりのポンピング体積を制御する能力は、ロータの1回転につき非常に少量の液体を高精度でポンピングすることを可能にする。
【0003】
前述の特許に記載されたポンプの有利な特徴の1つは、入口と出口との間に直接的な液体連通がないことであり、これは、入口バルブと出口バルブとが同時に開くことができないためである。この特徴は、特に医学的適用でポンプの安全な動作を保証し、それによって、ポンプが動作しているときにのみ薬物を投与することができ、ポンプがポンプの任意の位置で動作を停止したときに、液体の貫通流が自動的に防止される。
【0004】
しかしながら、このポンプシステムの欠点の1つは、ポンプのプライミング動作が遅くなり得、さらに、最初の動作時のポンプシャフトとバルブシールとの間の摩擦が、ポンプが空で、よって乾燥しているときに、発生することである。
【0005】
例えば、カテーテルチューブを介した薬物の注入のための特定の適用では、EP1803934およびEP1677859に記載されるようなポンプのポンプサイクル容積と比較して、大量の液体が、輸液セットにおいて空気をプライミングし除去するために、投与される必要がある。したがって、プライミング処置はあまり効率的ではない。
【0006】
〔発明の概要〕
上記に鑑みて、本発明の目的は、迅速かつ確実なプライミングを可能にするが、正確かつ安全に動作するマイクロポンプを提供することである。
【0007】
特に、輸液セットのようなポンプの下流の液体送達システムと関連して迅速なプライミングを可能にするマイクロポンプを提供することが有利であろう。
【0008】
使いやすく、製造が経済的であるポンプを提供することが有利であろう。
【0009】
薬物送達適用では、非常に少量の液体を正確に、確実に、かつ高い安全性で送達することができるポンプを提供することが有利である。
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載のマイクロポンプによって達成される。
【0011】
本明細書には、ポンプが開示され、ポンプは、
ステータと、
少なくとも部分的にステータ内にスライド可能かつ回転可能に装着されたロータであって、ロータは、第1の直径を有する第1の軸方向延長部と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2の軸方向延長部と、を含む、ロータと、
第1の軸方向延長部の周りでステータ上に装着された第1のバルブシールによって形成された第1のバルブであって、第1のバルブが開位置にあるときに第1のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成されたロータ内の第1のチャネルと関連する、第1のバルブと、
第2の軸方向延長部の周りでステータ上に装着された第2のバルブシールによって形成された第2のバルブであって、第2のバルブが開位置にあるときに第2のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成されたロータの第2のチャネルと関連する、第2のバルブと、
ロータとステータとの間および第1のバルブシールと第2のバルブシールとの間に形成されたポンプチャンバと、を含む。
【0012】
本発明によれば、ポンプは、ステータのハウジング上に装着され、プライミング位置からロックされた動作位置まで移動可能なプライミングアクチュエータをさらに含み、プライミングアクチュエータは、ロータに係合し、第1および第2のバルブの両方が開いているプライミング位置から、第1および第2のバルブの少なくとも一方が閉じられている動作位置まで、ロータを軸方向に変位させるように構成されている。
【0013】
プライミングアクチュエータは、最初の使用前に、ロックされた動作位置に位置付けられて、ロックされた動作位置からプライミング位置まで移動可能とすることができ、プライミングアクチュエータは、ロータに係合し、第1および第2のバルブのうちの少なくとも一方が閉じられている動作位置から、第1および第2のバルブの両方が開いているプライミング位置まで、ロータを軸方向に変位させるように構成される。この実施形態では、ロック機構は、ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを可能にするために解除可能である。
【0014】
代替の実施形態では、ロック機構は、ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを防止するために不可逆的であり、それによって、最初の使用前に、ロータはプライミング位置にある。
【0015】
有利な実施形態では、プライミングアクチュエータは、ステータのハウジング上にスライド可能に装着される。
【0016】
有利な実施形態では、プライミングアクチュエータは、ロック機構を含み、ロック機構は、ポンプの動作位置においてステータハウジング上の相補的なロックショルダーに係合するロックショルダーを含む。
【0017】
有利な実施形態では、ロック機構は、旋回可能なラッチを含む。
【0018】
有利な実施形態では、旋回可能なラッチは、一体的に形成されたヒンジを介してプライミングアクチュエータに接続された、手動で係合可能なボタンを含む。
【0019】
有利な実施形態では、ロータは、ロータシャフトの端部に形成されたロータヘッドを含み、ロータヘッドは、その周囲に延在する作動リムを含み、作動リムは、プライミングアクチュエータの作動ショルダーと係合可能な内側軸方向ショルダーを含む。
【0020】
有利な実施形態では、作動リムは、プライミングアクチュエータがロックされた動作位置にあり、かつロータがポンプの動作を妨げるために動作位置にないときに、プライミングアクチュエータ上に設けられたリム軸方向制御ショルダーに干渉するように構成された、外側軸方向ショルダーを含む。
【0021】
有利な実施形態では、カムトラックが、作動リムの内側半径方向部分上に設けられ、作動ショルダーによって係合可能な内側軸方向ショルダーは、作動リムの外側半径方向部分上に設けられる。
【0022】
有利な実施形態では、ロータの第1の延長部は、入口への液体の貫通流のためのチャネルセクションを増大させるように構成された、第1の延長部の自由端部に近接する凹部を含む。
【0023】
有利な実施形態では、プライミングアクチュエータは、ステータからのロータの取り外しを阻止するためにロータのヘッド上に部分的に延在するヘッドを含む。
【0024】
有利な実施形態では、ポンプの入口が、第1のバルブを介してポンプチャンバに接続され、ポンプの出口が、第2のバルブを介してポンプチャンバに接続され、入口は、ロータのシャフトの軸方向自由端部に位置付けられる。
【0025】
一実施形態では、入口は、ロータから実質的に半径方向に延在してよく、出口は、ロータから実質的に半径方向に延在してよい。
【0026】
有利な実施形態では、ステータは、注入されたポリマー、ステータの本体のための第1のポリマーと、バルブシールのための弾性特性を有する第2のポリマーと、で作られる。
【0027】
一実施形態では、ロータは、注入されたポリマーで作られる。別の実施形態では、ロータは金属、好ましくは鋼で作られる。
【0028】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態によるマイクロポンプのポンプモジュールの斜視図である。
図2図1のポンプモジュールの分解組立斜視図である。
図3a図1のポンプモジュールの断面図である。
図3b】ポンプモジュールのロータがプライミング位置にある、図3aに類似した図である。
図4a図1のマイクロポンプの斜視部分断面図である。
図4b】ポンプモジュールのロータがプライミング位置にある、図4aに類似した図である。
図5a】本発明の一実施形態によるポンプモジュールのポンプチャンバおよびロータシャフト部分の詳細部分図である。
図5b】プライミング位置にあるロータを示す、図5aに類似した図である。
【0030】
〔例示的な実施形態の詳細な説明〕
図面を参照すると、マイクロポンプは、ステータ4と、回転軸Aを中心とした回転運動をロータに与える回転駆動部(不図示)によって駆動されるロータ6と、を含むポンプモジュール2を含む。ロータ6は、例えばばね(不図示)によって軸方向に付勢されており、ステータ上の相補的なカムフォロア48と係合するロータ上のカムトラック46を含むカムシステムは、ロータが回転するときのロータの角度位置の関数として、ステータに対するロータの軸方向変位Axを与える。ステータに対するロータの軸方向および回転変位により、以下でさらに詳細に説明する第1および第2のバルブが開閉してポンピング作用をもたらす。この一般的に機能する原理は、それ自体が既知であり、例えば、EP1803934に記載されている。
【0031】
一実施形態では、ポンプの入口14は、ロータの軸方向端部に形成され得、出口16は、カムを含むロータの端部に向かって設けられ得る。出口16は、ステータを通って半径方向に延びることができる。入口および出口は、ステータに対するロータの回転方向およびバルブシール構成に応じて逆にされてもよい。さらに、特定の実施形態では、ポンプは、流体流の方向がロータの回転方向に依存する、双方向となるように構成されてもよい。ロータの軸方向端部に形成された入口または出口は、ステータの端部から軸方向ではなく、ステータを通って半径方向に向けられてもよい。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、流体源および流体送達位置への接続の必要性に従って、入口および出口のための様々な流体チャネルを構成し得ることを理解するであろう。
【0032】
ロータ6は、第1の直径D1を有する第1の延長部24と、第2の直径D2を有する第2の延長部26と、を有し、第1の直径と第2の直径とは異なる値を有する。図示の実施形態では、第2の延長部26の直径D2は、第1の延長部24の直径D1よりも大きい直径である。第1の直径と第2の直径との差は、ロータの軸方向変位と相まって、ロータの1回転当たりのポンピング体積を規定する。
【0033】
マイクロポンプは、ロータの第1の延長部とステータとの間に形成された第1のバルブV1と、ロータの第2の延長部とステータとの間に形成された第2のバルブV2と、を含む。第1のバルブV1および第2のバルブV2は、対応する入口14または出口16の開閉を制御する。
【0034】
第1のバルブV1は、ステータに装着された第1のバルブシール18と、ロータに装着された第1のチャネル42と、によって形成され、第1のチャネルは、第1のバルブシールが開位置にあるときには第1のバルブシールを横切る液体連通を可能にし、第1のバルブV1が閉位置にあるときには第1のバルブシールを横切って液体連通させないように構成される。第2のバルブV2は、ステータ4上の第2のバルブシール20と、ロータ6に形成された第2のチャネル44と、によって形成され、第2のチャネルは、第2のバルブV2が開位置にあるときには第2のバルブシールを横切る液体連通を可能にし、第2のバルブV2が閉位置にあるときには第2のバルブシールを横切って液体連通させない。ロータ6とステータ4との間、および第1のバルブシール18と第2のバルブシール20との間には、ポンプチャンバ8が形成されている。ポンプチャンバシール22が、第2の延長部26を囲み、ポンプチャンバ8をポンプの外部環境から分離する。
【0035】
本発明の範囲内では、第1および第2のチャネルが、ロータの角度および軸方向の変位によってそれぞれのシールを越えることを可能にし、充填および排出段階中に必要に応じて第1および第2のバルブを開閉することを可能にし、入口と出口との間の液体の直接の連通を可能にしない、斜めまたは軸方向のオフセットがシールにあることを条件として、第1のバルブシール18および第2のバルブシール20は、様々な構成および形状を有することができる。
【0036】
図示の実施形態では、液体チャネル42、44は、それぞれの第1のロータ延長部24および第2のロータ延長部26内で軸方向に延びる溝として図示されている。しかしながら、変形例では、他の液体チャネル構成を実装することができ、例えば、チャネルは溝ではなく、ロータ内に埋設され、対応するシールを横切る連通を可能にするオリフィスをロータ表面上に有することができる。さらに、第1のバルブシール18は、図示された実施形態と比較して、それぞれの第2のバルブシール20と異なる角度方向を有することができ、それに応じてロータチャネル44、42の位置が適合されることに留意されたい。
【0037】
ステータは、注入された構成要素、例えば2段階の注入プロセスにおいてシールが注入される、注入されたポリマーであってもよい。シールは、それ自体が当技術分野で知られているように、エラストマー材料中に注入されてもよい。ロータ6も、注入されたポリマーであってよく、したがって、ステータおよびロータは、低コストの使い捨て部品を形成する。しかしながら、ロータ6は、鋼または別の金属のような、より耐久性のある材料で作られてもよい。金属ロータは、特定の適用において、摩耗もしくは摩擦を低減し、かつ/またはロータの寸法精度を向上させ、したがってポンプサイクル容積精度を向上させるのに有利となり得る。
【0038】
本発明の一態様によれば、ポンプモジュール2は、ステータ4のハウジングに移動可能に装着されたプライミングアクチュエータ30をさらに含む。プライミングアクチュエータ30は、図1図3a、図4a、図5aに示すようなロック位置から図3b、図4b、図5bに示すプライミング位置まで移動され得る。
【0039】
ロック位置では、ポンプモジュールは、前述のようにロータを回転させることによって液体を投与するように駆動され得る。ポンプの動作中、第1および第2のバルブは同時に開くことはなく、したがって、ロータが駆動されていないとき、ロータの回転位置に関係なく、液体は入口14から出口16へ自由に通過することができず、またはその逆も同様である。
【0040】
ポンプを最初に使用する前、またはポンプが停止されているときの最初の動作の後、ポンプを通して、ポンプの上流および下流で、液体チャネルを充填するために、プライミング動作が行われ得る。チャネルは、入口14、ポンプチャンバ8、および出口16、ならびにポンプの下流または上流の流体チャネルを含む。例えば、ポンプがカテーテルチューブを介して薬物を注入するために使用される医学的適用では、患者に通じるチャネル内の液体の体積は、ポンプチャンバ8の容積よりも著しく大きくなることがあり、したがって、ロータ6の回転によるポンプの動作のみに依存するプライミング動作は、時間がかかることがある。
【0041】
本発明によれば、プライミング動作は、両方のバルブV1、V2を開き、液体がポンプモジュール2および上流および下流の液体チャネルを迅速に通過するのを可能にする。プライミングアクチュエータ30は、入口バルブV1および出口バルブV2の両方が開くまで、ポンプチャンバ8の容積を増大させる方向にロータ6を軸方向に変位させるようにロータ6に係合するように構成される。入口バルブV1は、第1のロータ延長部24内の第1のチャネル42が第1のバルブシール18と交差するときに開かれ、出口バルブV2は、第2のロータ延長部26内の第2のチャネル44が第2のバルブシール20と交差するときに開かれる。
【0042】
流体の貫通流に対する抵抗を減少させるために、ロータの第1の延長部24は、ロータシャフト12の自由端部に切り取り部分または凹部54を有利に備えることができる。
【0043】
プライミングアクチュエータ30は、ステータハウジング上の相補的なガイドレール52bに係合するガイドレール52aを含み、プライミングアクチュエータ30がステータハウジングに対して軸方向にスライドすることを可能にする。プライミングアクチュエータは、解除可能なロック機構32をさらに含み、このロック機構は、図示の実施形態では、ステータハウジング上のロックショルダー37に係合するロックショルダー36を含む押しボタンラッチ34の形態である。
【0044】
図3a、図4a、および図5aに示すようなポンプモジュールの動作中、プライミングアクチュエータはロック位置にあり、ロータ6がその動作位置から軸方向に移動するのを妨げる。プライミング動作では、ロック機構32を作動させて、そのロックショルダー36をハウジングのロックショルダー37から係合解除し、次いでプライミングアクチュエータ30をステータハウジングに対してプライミング方向P+に変位させることができる。プライミングアクチュエータは、図3bおよび図4bに示すように、プライミングアクチュエータ30上の作動ショルダー40がロータヘッド10上の相補的なショルダー57に係合し、ポンプチャンバ容積を増加させる方向に対応する、プライミング方向P+に、ステータから離してロータを軸方向に持ち上げるまで変位される。
【0045】
図示の実施形態では、ロータヘッド10は、プライミングアクチュエータ30の作動ショルダー40によって係合されるように構成された内側軸方向ショルダー57を有する作動リム50を含む。図3bで最もよく分かるように、ロータ上のカムトラック46は、ステータ上の相補的なカムフォロア48からある距離だけ離れて持ち上げられる。図5bで最もよく分かるように、液体は、直接、入口14からロータの第1の延長部24内の第1のチャネル42を通過し、ポンプチャンバ8内に入り、出口16を通って出ることができる。したがって、入口14に入る液体に対し、重力によってまたは能動的に圧力発生器によって加えられる圧力を使用して、プライミング動作中にポンプを通して液体を迅速に送達することができる。
【0046】
プライミング動作が完了すると、プライミングアクチュエータ30は、ステータハウジングに対するプライミングアクチュエータ30の逆方向の軸方向スライドによって、図3aに示されているロック位置まで、ロック方向P-に戻ることができる。
【0047】
ステータハウジングは、プライミングアクチュエータ上に設けられた相補的なストップ38に係合するように構成されたアクチュエータストップ39を備えることができる。また、ロック機構32のロックショルダー36は、プライミングアクチュエータの軸方向変位が制限され、プライミングアクチュエータがステータハウジングに組み付けられたままであり、ステータハウジングから取り外すことができないように、ステータ上のアクチュエータストップ39に係合するように構成されてもよい。
【0048】
本発明の範囲から逸脱することなく、動作位置におけるステータハウジングへのプライミングアクチュエータのロック、ならびにロック解除およびプライミング位置へのプライミングアクチュエータの変位を可能にする、他のストップおよびラッチ構成が提供され得ることに留意されたい。当業者は、ストップがアクチュエータおよびステータハウジング上の異なる位置に設けられてよく、第2の部品に装着される第1の部品を固定するために利用可能な様々なロック機構があることを理解する。図示の実施形態では、プライミングアクチュエータ30は、ステータハウジングにスライド可能に装着され、ステータハウジングとは別個の部品として設けられたものとして示されている。しかしながら、変形例では、プライミングアクチュエータは、ステーティングハウジングに対するプライミングアクチュエータの回転によって、プライミングアクチュエータの軸方向変位が生じ、次いで、プライミングアクチュエータがロータに係合してロータを動作位置からプライミング位置まで持ち上げるように、ステータハウジング上に回転可能に装着され得る。
【0049】
図示の実施形態では、プライミングアクチュエータ30は、ロータのヘッド10を部分的に取り囲み、ステータハウジングの円筒状キャビティ内に嵌合する本質的にU字形の部分を含むヘッド部分54を含む。ヘッド部54は、ロータヘッド10のエッジ61の上に延在するロータ軸方向ブロックショルダー60を含み、よって、ロータ6がステータ4から取り外され得ないことを確実にする。また、ヘッド部分54は、ステータハウジングへのプライミングアクチュエータ30の安定かつ確実な固定を提供する。
【0050】
解除可能なロック機構32のヒンジ41は、ロック機構のボタン35をプライミングアクチュエータ30の残りの部分に接続する一体成形ウェブの形態であってもよい。ロータ6を動作位置からプライミング位置に移動させるために、ラッチボタン35は、使用者によって押され、同時にプライミング方向P+に押されてよく、プライミングアクチュエータ30がロック解除され、動作位置からプライミング位置に軸方向に変位する。
【0051】
図示の実施形態では、ロータヘッド上のカムトラック46は、リム50の外周に関して内側半径方向位置に設けられ、リム50の外側部分はプライミングアクチュエータ30の作動ショルダー40と係合するように機能する。カムトラック46がロータの角度位置の関数として、変化する軸方向プロファイルを規定するとき、ステータ4に対するロータ6の軸方向変位は、カムフォロア48を押圧するカムトラック46によって課される。
【0052】
作動リム50に外側軸方向制御ショルダー58を設けることができ、これは、ロータ6がポンプモジュールの正常な動作前に正しい軸方向動作位置にあることを保証する役割を果たす。この点に関し、プライミングアクチュエータ30は軸方向制御ショルダー56を備え、これは、動作位置においてロータの回転を可能にするが、カムトラック46がカムフォロア48に対して付勢されていない不正確な軸方向位置にある場合には、ロータヘッドリムの外側軸方向ショルダー58と係合する。
【0053】
本発明の変形例(図示せず)によれば、ロータは、最初の使用の前にプライミング位置で供給され、ポンプが使用のための状態に置かれたときに、プライミングの後に、またはプライミングなしで、ロックされた動作位置に移動されてもよい。このような変形例では、ロータのためのロック機構は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。非可逆的なロック機構を備えた変形例では、ロータは、プライミング位置から動作位置に移動された後、動作位置から解放されることができなくなる。種々の不可逆的ロックラッチおよびロックシステムを実装して、一方向ロック機能を達成することができる。
【0054】
〔図示された特徴部のリスト〕
マイクロポンプ
ポンプモジュール2
ステータ4
入口14
出口16
相補的なロック機構33
ロックショルダー37
アクチュエータストップ39
相補的なガイドレール52b
プライミングアクチュエータ30
ガイドレール52a
ヘッド54
ロータ軸方向ブロックショルダー60
リム軸方向制御ショルダー56
ロック機構32
押しボタンラッチ(旋回可能)34
ロックショルダー36
ヒンジ41
ストップ38
作動ショルダー40

第1のバルブV1
第1のバルブシール18
第2バルブV2
第2のバルブシール20
ポンプチャンバシール22
ロータ6
連結インターフェース7
ロータヘッド10
作動リム50
外側軸方向ショルダー58
内側軸方向ショルダー57
カムトラック46

ロータシャフト12
第1の延長部(第1の直径を有する)24
第1のチャネル42
凹部54
第2の延長部(第2の直径を有する)26
第2のチャネル44
端部45(第1の延長部に接続される)
ポンプチャンバ(ロータとステータとの間に形成される)8
軸方向変位システム
カムシステム
ロータ上のカムトラック46
ステータ上の相補的なカムフォロア48

回転駆動部
【0055】
〔実施の態様〕
(1) ポンプにおいて、
ステータ(4)と、
少なくとも部分的に前記ステータ内にスライド可能かつ回転可能に装着されたロータ(6)であって、前記ロータは、第1の直径(D1)を有する第1の軸方向延長部(24)と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径(D2)を有する第2の軸方向延長部(26)と、を含む、ロータと、
前記第1の軸方向延長部の周りで前記ステータ上に装着された第1のバルブシール(18)によって形成された第1のバルブ(V1)であって、前記第1のバルブが開位置にあるときに前記第1のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第1のチャネル(42)と関連する、第1のバルブと、
前記第2の軸方向延長部の周りで前記ステータ上に装着された第2のバルブシール(20)によって形成された第2のバルブ(V2)であって、前記第2のバルブが開位置にあるときに前記第2のバルブシールを横切る液体連通を可能にするように構成された前記ロータ内の第2のチャネル(44)と関連する、第2のバルブと、
前記ロータと前記ステータとの間および前記第1のバルブシールと前記第2のバルブシールとの間に形成されたポンプチャンバ(8)と、
を含み、
前記ポンプは、前記ステータのハウジング上に装着され、プライミング位置からロックされた動作位置まで移動可能なプライミングアクチュエータ(30)をさらに含み、前記プライミングアクチュエータ(30)は、前記ロータに係合し、前記第1および第2のバルブの両方が開いているプライミング位置から、前記第1および第2のバルブの少なくとも一方が閉じられている動作位置まで、前記ロータを軸方向に変位させるように構成されていることを特徴とする、ポンプ。
(2) 前記プライミングアクチュエータ(30)は、ロック機構(30)を含み、前記ロック機構(30)は、前記ポンプの動作位置において前記ステータハウジング上の相補的なロックショルダー(37)に係合するロックショルダー(36)を含む、実施態様1に記載のポンプ。
(3) 前記ロック機構は、前記ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを可能にするために解除可能であり、前記プライミングアクチュエータは、前記ロータに係合し、前記動作位置から前記プライミング位置まで、前記ロータを軸方向に変位させるように構成されている、実施態様2に記載のポンプ。
(4) 最初の使用前に、前記プライミングアクチュエータは、前記ロックされた動作位置に位置付けられている、実施態様3に記載のポンプ。
(5) 前記ロック機構は、旋回可能なラッチ(34)を含む、実施態様2から4のいずれかに記載のポンプ。
【0056】
(6) 前記旋回可能なラッチ(34)は、一体的に形成されたヒンジ(41)を介して前記プライミングアクチュエータ(30)に接続された、手動で係合可能なボタン(35)を含む、実施態様5に記載のポンプ。
(7) 前記ロック機構は、前記ロータが動作位置からプライミング位置まで移動されるのを防止するために不可逆的であり、それによって、最初の使用前に、前記ロータはプライミング位置にある、実施態様2に記載のポンプ。
(8) 前記プライミングアクチュエータは、前記ステータのハウジング上にスライド可能に装着されている、実施態様1から7のいずれかに記載のポンプ。
(9) 前記ロータは、前記ロータシャフト(12)の端部に形成されたロータヘッド(10)を含み、前記ロータヘッドは、その周囲に延在する作動リム(50)を含み、前記作動リムは、前記プライミングアクチュエータ(30)の作動ショルダー(50)と係合可能な内側軸方向ショルダー(57)を含む、実施態様1から8のいずれかに記載のポンプ。
(10) 前記作動リム(50)は、前記プライミングアクチュエータがロックされた動作位置にあり、かつ前記ロータが前記ポンプの動作を妨げるために前記動作位置にないときに、前記プライミングアクチュエータ(30)上に設けられたリム軸方向制御ショルダー(58)に干渉するように構成された、外側軸方向ショルダー(58)を含む、実施態様9に記載のポンプ。
【0057】
(11) 前記カムトラック(46)が、前記作動リムの内側半径方向部分上に設けられ、前記作動ショルダー(40)によって係合可能な前記内側軸方向ショルダー(57)は、前記作動リムの外側半径方向部分上に設けられている、実施態様9または10に記載のポンプ。
(12) 前記ロータの前記第1の延長部は、前記入口への液体の貫通流のためにチャネルセクションを増大させるように構成された、前記第1の延長部(24)の自由端部に近接する凹部(54)を含む、実施態様1から11のいずれかに記載のポンプ。
(13) 前記プライミングアクチュエータ(30)は、前記ステータからの前記ロータの取り外しを阻止するために前記ロータのヘッド(10)の上に部分的に延在するヘッド(54)を含む、実施態様1から12のいずれかに記載のポンプ。
(14) 前記ポンプの入口(14)が、前記第1のバルブ(V1)を介して前記ポンプチャンバ(8)に接続され、前記ポンプの出口(16)が、前記第2のバルブ(V2)を介して前記ポンプチャンバに接続され、前記入口は、前記ロータのシャフト(12)の軸方向自由端部に位置付けられている、実施態様1から13のいずれかに記載のポンプ。
(15) 前記入口は、前記ロータから実質的に半径方向に延在し、前記出口は、前記ロータから実質的に半径方向に延在する、実施態様14に記載のポンプ。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b