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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】透明電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20220328BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20220328BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220328BHJP
   H01B 5/14 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
H01B13/00 503B
B22F9/24 E
B22F1/00 K
H01B5/14 A ZNM
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020536800
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2018013941
(87)【国際公開番号】W WO2019132243
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183639
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520231337
【氏名又は名称】アイテッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジ-フン
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231029(JP,A)
【文献】米国特許第08018568(US,B2)
【文献】特開2013-073748(JP,A)
【文献】特開2011-216468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B22F 9/24
B22F 1/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板を準備する段階;
前記ベース基板の一面に接触する銀ナノワイヤを形成する段階;
前記ベース基板及び前記銀ナノワイヤを所定の熱により加熱する段階;
前記銀ナノワイヤをカバーするように、前記ベース基板の前記一面に未硬化のポリマーを塗布する段階;
前記未硬化のポリマー上にフレキシブルフィルムを配置する段階;
前記配置されたフレキシブルフィルムと前記ベース基板との間に所定の圧力を印加する段階;
前記フレキシブルフィルム上に特定の波長を有する光を照射し、前記未硬化のポリマーを硬化させ、硬化したポリマーに変更する段階;
前記銀ナノワイヤが前記ベース基板から分離し、前記硬化したポリマーに結合するように、前記ベース基板と前記硬化したポリマーとを分離して、前記銀ナノワイヤ、前記硬化したポリマー、及び前記フレキシブルフィルムを含む銀ナノワイヤ組立体を形成する段階;
前記銀ナノワイヤ組立体を、塩化系列の混合物及びカリウムを含むヨード混合物に所定の時間の間に露出させ、前記銀ナノワイヤの表面のうちの一部分のみを灰色または黒色を有する塩化銀に変更させ、前記銀ナノワイヤのうちの他の部分が有する導電性は維持する段階;及び、
前記ヨード混合物に露出した前記銀ナノワイヤ組立体を、100℃以上150℃以下の温度にて2分以上及び5分以下の間にアニーリングする段階、を含み、
前記所定の圧力は、30HB以上40HB以下の硬度を有するローラーのローリングにより印加される、透明電極の製造方法。
【請求項2】
前記ベース基板は、ガラス基板である請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項3】
前記ベース基板は、石定盤である請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項4】
前記フレキシブルフィルムは、PETを含む請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項5】
前記所定の熱は、200℃以上300℃以下である請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項6】
ベース基板を準備する段階;
前記ベース基板の一面に接触する銀ナノワイヤを形成する段階;
前記ベース基板及び前記銀ナノワイヤを所定の熱により加熱する段階;
前記銀ナノワイヤを塩化系列の混合物及びカリウムを含むヨード混合物に所定の時間の間に露出させ、前記銀ナノワイヤの表面のうちの一部分のみを灰色または黒色を有する塩化銀に変更させ、前記銀ナノワイヤのうちの他の部分が有する導電性は維持させて変色した銀ナノワイヤを生成する段階;
前記変色した銀ナノワイヤをカバーするように、前記ベース基板の前記一面に未硬化のポリマーを塗布する段階;
前記未硬化のポリマー上にフレキシブルフィルムを配置する段階;
前記配置されたフレキシブルフィルムと前記ベース基板との間に所定の圧力を印加する段階;
前記フレキシブルフィルム上に特定の波長を有する光を照射し、前記未硬化のポリマーを硬化させ、硬化したポリマーに変更する段階;
前記変色した銀ナノワイヤが前記ベース基板から分離され、前記硬化したポリマーに結合するように、前記ベース基板と前記硬化したポリマーとを分離し、前記変色した銀ナノワイヤ、前記硬化したポリマー、及び前記フレキシブルフィルムを含む銀ナノワイヤ組立体を形成する段階;及び、
前記銀ナノワイヤ組立体を、100℃以上150℃以下の温度にて2分以上及び5分以下の間にアニーリングする段階、を含み、
前記所定の圧力は、30HB以上40HB以下の硬度を有するローラーのローリングにより印加される透明電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノワイヤを含む透明電極(transparent electrode)または透明熱線を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に電極は様々な分野に広く使用されている。電極の役割は、各電気素子に電荷を伝達することにより、各電気素子を駆動するエネルギーの伝達役割を担う。したがって、できるだけ低い比抵抗及び安定性を有することが必須である。一般的に、銀、銅などの金属が電極をなす主要素材であり、ディスプレイ分野においては透明電極(ITO等)が多く使用されている。
【0003】
透明電極は、通常80%以上の高透明度を有する電子部品であって、LCD前面電極、OLED電極などのディスプレイ、タッチスクリーン、太陽電池、光電子素子等の電子分野に広範囲に使用される。これらのデバイスには共通的にインジウムスズ酸化物(indium tin oxide;以下「ITO」)が透明電極として用いられる。ITO電極は、光学的透明性、電気伝導度、及び環境安全性のような多くのメリットを有する。
【0004】
しかし、既存タッチスクリーンパネル(Touch Screen Panel;TSP)に適用されたITO電極は、柔軟性が弱くて、曲がったり曲面であるフレキシブルディスプレイに使用することが困難であるため、ITOフィルムを代替する次世代新素材としてグラフェン(Graphene)、CNT、銀ナノワイヤ(AgnW)等が注目されている。
【0005】
その中、銀ナノワイヤは、高伝導性を有し、電気伝導性を保有した電極である。よって、銀ナノワイヤを含む透明電極に対する需要がますます増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、面抵抗が低く、柔軟性を有し、視認性が向上した透明電極または透明熱線を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法は、ベース基板を準備する段階と、上記ベース基板の一面に接触する銀ナノワイヤを形成する段階と、上記ベース基板及び上記銀ナノワイヤを所定の熱により加熱する段階と、上記冷えた銀ナノワイヤをカバーするように、上記ベース基板の上記一面に未硬化のポリマーを塗布する段階と、上記未硬化のポリマー上にフレキシブルフィルムを配置する段階と、上記配置されたフレキシブルフィルムと上記ベース基板との間に所定の圧力を印加する段階と、上記フレキシブルフィルム上に特定の波長を有する光を照射し、上記未硬化のポリマーを硬化させ、硬化したポリマーに変更する段階と、上記銀ナノワイヤが上記ベース基板から分離されて上記硬化したポリマーに結合するように、上記ベース基板と上記硬化したポリマーとを分離し、上記銀ナノワイヤ、上記硬化したポリマー、及び上記フレキシブルフィルムを含む銀ナノワイヤ組立体を形成する段階と、上記銀ナノワイヤ組立体をヨード混合物に所定の時間の間に露出し、上記銀ナノワイヤの一部分のカラーを灰色または黒色に変更させる段階と、上記ヨード混合物に露出した上記銀ナノワイヤ組立体をアニーリングする段階と、を含む。
【0008】
本発明の一実施例において、上記ベース基板としては、ガラス基板を用いることができる。
【0009】
本発明の一実施例において、上記ベース基板としては、石定盤を用いることができる。
【0010】
本発明の一実施例において、上記フレキシブルフィルムは、PETを含むことができる。
【0011】
本発明の一実施例において、上記所定の熱は、200℃以上300℃以下であり得る。
【0012】
本発明の一実施例において、上記所定の圧力は、ローラーのローリングにより印加することができる。上記ローラーの硬度は、30HB以上50HB以下であり得る。
【0013】
本発明の一実施例において、上記ヨード混合物は、塩化系列の混合物を含むことができる。上記ヨード混合物は、カリウムをさらに含むことができる。
【0014】
本発明の一実施例において、上記灰色または黒色に変更された上記銀ナノワイヤの上記一部分は、塩化銀であり得る。
【0015】
本発明の一実施例において、上記アニーリングは、100℃以上150℃以下の温度にて2分以上及び5分以下で行われることができる。
【0016】
本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法は、ベース基板を準備する段階と、上記ベース基板の一面に接触する銀ナノワイヤを形成する段階と、上記ベース基板及び上記銀ナノワイヤを所定の熱により加熱する段階と、上記銀ナノワイヤをヨード混合物に所定の時間の間に露出させ、上記銀ナノワイヤの一部分のカラーを灰色または黒色に変色させる段階と、上記変色された銀ナノワイヤをカバーするように、上記ベース基板の上記一面に未硬化のポリマーを塗布する段階と、上記未硬化のポリマー上にフレキシブルフィルムを配置する段階と、上記配置されたフレキシブルフィルムと上記ベース基板との間に所定の圧力を印加する段階と、上記フレキシブルフィルム上に特定の波長を有する光を照射し、上記未硬化のポリマーを硬化させ、硬化したポリマーに変更する段階と、上記変色した銀ナノワイヤが上記ベース基板から分離され、上記硬化したポリマーに結合するように、上記ベース基板と上記硬化したポリマーとを分離し、上記変色した銀ナノワイヤ、上記硬化したポリマー、及び上記フレキシブルフィルムを含む銀ナノワイヤ組立体を形成する段階と、上記銀ナノワイヤ組立体をアニーリングする段階と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施例によれば、銀ナノワイヤがフレキシブルフィルム上に配置され、柔軟性が向上した透明電極または透明熱線を提供することができる。
【0018】
また、低い面抵抗を有し、大面的に具現可能な透明電極または透明熱線を提供することができる。
【0019】
また、目で見た時、霧のようにぼやけて見える現象(一名、ヘイズ現象)を低減し、視認性が向上した透明電極または透明熱線を提供することができる。
【0020】
また、本発明の一実施例によれば、銀ナノワイヤがフレキシブルフィルムの表面から一定の深みに配置され、耐久性が向上した透明電極または透明熱線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ベース基板に銀ナノワイヤが配置されたことを例示的に示した図である。
図2a図1の銀ナノワイヤに熱を印加することを例示的に示した図である。
図2b図1の銀ナノワイヤに熱を印加することを例示的に示した図である。
図3図1に示されたベース基板上に、銀ナノワイヤをカバーする未硬化のポリマーを塗布することを例示的に示した図である。
図4図3に示された未硬化のポリマー上にフレキシブルフィルムを配置することを例示的に示した図である。
図5a】ローラーを用いて、図4に示された組立体に圧力を印加することを例示的に示した図である。
図5b図5aのローラーの硬度に応じるフレキシブルフィルムの加工品質を比較して示した図である。
図6】未硬化のポリマーを硬化させるために紫外線を印加することを例示的に示した図である。
図7】ベース基板から銀ナノワイヤ組立体を分離することを例示的に示した図である。
図8a】銀ナノワイヤ組立体を例示的に示した図である。
図8b図8aのI-I’に沿って切断した断面を例示的に示した図である。
図9】ヨード混合物を含む溶液により、図8aの銀ナノワイヤ組立体を加工することを例示的に示した図である。
図10a】ヨード混合物により加工された銀ナノワイヤ組立体を例示的に示した図である。
図10b図10aのII-II’に沿って切断した断面を例示的に示した図である。
図11】本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法の順序図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0023】
図面において、構成要素の割合及び寸法は、技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。
【0024】
「含む」等の用語は、明細書に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためのものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたもの等の存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0025】
図1から図10bは、本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法を例示的に示した図である。図11は、本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法の順序図である。
【0026】
図1は、ベース基板BSに銀ナノワイヤNWを配置することを例示的に示した図である。
【0027】
ベース基板BSは、ガラス基板または石定盤であることができる。ガラス基板及び石定盤は耐熱性に優れる。このため、以後の熱処理工程において200℃以上の高熱を印加しても変形が起こらない利点がある。
【0028】
銀ナノワイヤNWは、ベース基板BS上に直接配置される。このとき、ディスペンシング、バーコーティング、スロットダイコーティング、アプリケーター、スピンコーティング、またはスプレーコーティング等の方式を用いることができる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、スピンコーターを用いて銀ナノワイヤを塗布する場合は、銀ナノワイヤインクをガラス基板に落とした後、スピンコーターを1000~3000rpmに維持して銀ナノワイヤインクをコーティングすることができ、上記条件を外れると、ベース基板BSに均一な厚さに銀ナノワイヤNWをコーティングすることができない。
【0030】
本発明の一実施例によれば、バーコーター(bar coater)を用いて1~100cm/secで塗布することができ、
本発明の一実施例によれば、スプレーコーターを用いる場合は0.2~0.3のノズルサイズで、1~5kgf/cmの圧力によりベース基板BS上に塗布することができる。
【0031】
本発明の一実施例によれば、アプリケーター(applicator)を用いる場合は、銀ナノワイヤインクを一列に落とした後に、1~100cm/secで塗布することができる。
【0032】
上述の数値範囲を満たさない場合、ベース基板BS上に銀ナノワイヤNWが均一な厚さにコーティングされないこともある。
【0033】
銀ナノワイヤNWとしては、直径1~100nm、長さ2~100μm大きさの銀ナノワイヤを用いることができる。直径が5nmよりも小さい場合は、機械的な安定性が非常に弱くてよく切れることがあり、安定的なネットワーク形状を維持しにくい問題が生じることがあり、100nmを超過する場合は、透明度(光透過率)が70%以下に急激に低くなるという問題が生じることがある。
【0034】
また、長さが2μmよりも小さい場合は、ネットワークを構成する銀ナノワイヤの長さが短くなりすぎて、多数の銀ナノワイヤが必要となり、透明度が低くなり、接触点が多いことによる電気伝導特性の低下の問題もあり得る。長さが100μmよりも長い場合は、銀ナノワイヤの製造が困難となるという問題や銀ナノワイヤが長くなりすぎてコーティングの時によく切れるという問題が発生することがある。
【0035】
図2a及び図2bは、図1の銀ナノワイヤNWに熱を印加することを例示的に示した図である。
【0036】
加熱は、バーンオフ(burn-off)、マイクロパルスフォトニック(micro pulse photonic)加熱、連続フォトニック加熱、マイクロウエーブ加熱、またはオーブン加熱により行われることができる。
【0037】
図2bを参照すると、第1銀ナノワイヤNW1と第2銀ナノワイヤNW2との接触部CTは、印加する熱により伝導性が強くなり、銀ナノワイヤNW全体の面抵抗を低くすることができる。より具体的には、第1銀ナノワイヤNW1と第2銀ナノワイヤNW2との接触部CTは、単純物理的な接触ではなく、若干の溶融が生じて接触部CTが柔軟になり、接触面積がより大きくなって全体的な抵抗特性を改善することができる。またテンションを有する銀ナノワイヤが熱により柔軟になりながらベース基板BSとさらに密着し、表面積を広げる効果をもたらすため、接着力(付着力)も向上することができる。
【0038】
銀ナノワイヤNWに印加する熱は、約100~300℃であり、好ましくは、約200~300℃である。温度が200℃よりも低い場合は、銀ナノワイヤNWの面抵抗が十分に低くならなく、温度が300℃よりも高い場合は、高熱により、ベース基板BSまたは銀ナノワイヤNWの一部が損傷することがある。
【0039】
ベース基板BSがガラス基板または石定盤である場合にのみ、200℃以上でも加工可能であり、若しベース基板BSがポリマーを含む基板であれば、このような高い温度で加工する場合は、熱による変形が起こることがある。
【0040】
図3は、図1に示されたベース基板BS上に、銀ナノワイヤNWをカバーする未硬化のポリマーRS-Nを塗布することを例示的に示した図である。
【0041】
未硬化のポリマーRS-Nは、ゲル状の液状物質であって、バーコーディング、またはディスペンシング等により、約3μm以下まで薄く塗布することができる。
【0042】
未硬化のポリマーRS-Nは、特定の波長帯の光に反応して硬化することができ、具体的には、紫外線UVに反応して硬化することができる。
【0043】
未硬化のポリマーRS-Nとしては、光透過性等の光学的特徴が優れた材料を選択することができる。これは、本発明の一実施例に係る銀ナノワイヤNWが、透明な電極を製造するためのものであるので、これに付随する他の材料も高い光透過性を確保することにより透明な電極を製造できるからである。
【0044】
図4は、図3に示された未硬化のポリマーRS-N上にフレキシブルフィルムFMを配置することを例示的に示した図である。
【0045】
フレキシブルフィルムFMは、PET(Polyethylene terephthalate)を含むことができる。フレキシブルフィルムFMは、柔軟性を有するため、以後に完成された透明電極をフォルダブル表示装置、ローラブル表示装置、またはスライダブル表示装置等のフレキシブル表示装置に実装するのに有利である。
【0046】
図5aは、ローラーRLを用いて、図4に示された組立体FM、RS-N、BSに圧力を印加することを例示的に示した図である。図5bは、図5aのローラーの硬度に応じるフレキシブルフィルムの加工品質を比較して示した図である。
【0047】
ベース基板BS上にコーティングされた銀ナノワイヤNWを未硬化のポリマーRS-N及びフレキシブルフィルムFMの方へ転写するために、ローラーRLを用いて、図4に示された組立体FM、RS-N、BSに圧力を印加する。
【0048】
ローラーRLの硬度は、30~50HBであり、好ましくは、約40HBであってもよい。ローラーRLの硬度が30HBよりも小さい場合、銀ナノワイヤNWを転写するには硬度が不足であり、ローラーRLの硬度が50HBよりも大きい場合、フレキシブルフィルムFMに、塊によるしわや押されることによるしわが発生して加工品質が悪くなることがある。
【0049】
図5bを参照すると、ローラーRLの硬度が80HBである時のフレキシブルフィルムFMの加工品質を調べると、表面にしわが多数発生して、鮮明な視認性を確保せず、裏側の事物が正確に見えなくなる。これに対して、ローラーRLの硬度が40HBである時のフレキシブルフィルムFMの加工品質を調べると、表面がなめらかで、鮮明な視認性を確保し、裏側の事物が正確に見えることが分かる。
【0050】
ローラーRLにより圧力を印加し、未硬化のポリマーRS-Nの厚さが約4~6μm程度となるようにする。未硬化のポリマーRS-Nの厚さが4μmよりも小さい場合、薄すぎて銀ナノワイヤNWが損傷する恐れがあり、6μmよりも大きい場合、以後の工程において熱によるストレスが発生し、しわが発生することがある。よって、以後連続する工程を考慮し、未硬化のポリマーRS-Nの厚さを約4~6μm程度となるようにすることが好ましい。
【0051】
図6は、未硬化のポリマーRS-Nを硬化させるために紫外線を印加することを例示的に示した図である。
【0052】
紫外線を照射する光源は、ランプまたはLEDであってもよい。
【0053】
未硬化のポリマーRS-Nは、紫外線UVに反応し、アクリル系の重合反応により数秒以内に硬化することができる。但し、これに制限されず、未硬化のポリマーRS-Nは、紫外線ではなく他の特定の波長帯の光により硬化することができる。
【0054】
未硬化のポリマーRS-Nは、硬化して硬化ポリマーRS-Hに変わることになり、これにより、未硬化のポリマーRS-Nによりカバーされていた銀ナノワイヤNW(図3参照)は、硬化ポリマーRS-Hに固定することになる。
【0055】
図7は、ベース基板BSから銀ナノワイヤ組立体NWAを分離することを例示的に示した図である。
【0056】
ベース基板BSの一方の端から硬化ポリマーRS-H及びフレキシブルフィルムFMを分離し始めると、銀ナノワイヤNWがベース基板BSから離れて、硬化ポリマーRS-Hに転写される。
【0057】
ベース基板BSから硬化ポリマーRS-H及びフレキシブルフィルムFMがすべて分離されると、銀ナノワイヤNW、硬化ポリマーRS-H、及びフレキシブルフィルムFMを含む銀ナノワイヤ組立体NWAが形成される。
【0058】
図8aは、銀ナノワイヤ組立体NWAを例示的に示した図である。図8bは、図8aのI-I’に沿って切断した断面を例示的に示した図である。
【0059】
図8bを参照すると、銀ナノワイヤNWは、硬化ポリマーRS-Hに埋没された形態に固定される。この形態は、転写工程において未硬化のポリマーRS-N(図3参照)を用いて銀ナノワイヤNWをカバーしたので、形成可能である。
【0060】
硬化ポリマーRS-Hの厚さH1は、図5で説明した未硬化のポリマーRS-Nの厚さと同じく、約4~6μm程度であることが好ましい。その理由は、上述した通りである。但し、必要により、硬化ポリマーRS-Hの厚さH1は、約4~15μmであってもよい。
【0061】
フレキシブルフィルムFMの厚さH2は、約50~100μmであることが好ましい。これは、フレキシブルフィルムFMの厚さH2が上記数値範囲よりも大きくなる場合、柔軟性が小さくなるからである。
【0062】
図9は、ヨード混合物を含む加工溶液PLにより図8aの銀ナノワイヤ組立体NWAを加工することを例示的に示した図である。図10aは、ヨード混合物により加工された銀ナノワイヤ組立体NWAを例示的に示した図である。図10bは、図10aのII-II’に沿って切断した断面を例示的に示した図である。
【0063】
加工溶液PLは、ヨード混合物を含み、ヨード混合物は塩化系列の混合物を含む。
【0064】
塩化系列の混合物を含むヨード混合物は、銀ナノワイヤNWと反応し、これにより、銀ナノワイヤNWの表面には塩化銀が形成されて、銀ナノワイヤNWの表面が灰色または黒色に変わることになる。このように銀ナノワイヤNWが変色する部分は、変色部BKと称することができる。
【0065】
変色部BKにより、光学的効果のために、銀ナノワイヤ組立体NWAが全体的にぼやけて見えるヘイズ(Haze)現象が低減することになる。
【0066】
ヨード混合物における質量を基準とした塩化系列の混合物の割合は、20~30%であることが好ましい。塩化系列の混合物の割合が上記数値範囲を外れる場合、銀ナノワイヤ組立体NWAの表面にヨード混合物による沈殿物が生じ、かえってヘイズ現象が増加することになるからである。
【0067】
ヨード混合物にカリウムを一定割合で混ぜる場合、この変色反応を促進することができる。このとき、ヨード混合物とカリウムとの質量を基準にした割合は1:1乃至1:5程度であってもよい。カリウムの割合が上記数値範囲より小さい場合、反応速度の増加は微々たるものであり、上記数値範囲より大きい場合、ヘイズ現象が増加するという問題が生じ得る。
【0068】
変色部BKの形成まで完了した銀ナノワイヤ組立体NWAは、アニーリング処理されることができる。銀ナノワイヤ組立体NWAがヨード混合物により加工される場合、銀ナノワイヤNWの面抵抗が約10%程度増加することになるが、アニーリング処理により高くなった抵抗を低くすることができる。
【0069】
アニーリング処理は、ボックスオーブンまたはIRオーブンにより行われることができる。
【0070】
本発明の一実施例において、ボックスオーブンを用いてアニーリング処理する場合、約100~150℃で約10~60分程度加熱することができる。
【0071】
本発明の一実施例において、IRオーブンを用いてアニーリング処理する場合、約100~150℃で約1~20分程度加熱することができる。
【0072】
アニーリング工程において、加熱温度及び加熱時間が上記数値範囲よりも小さい場合、面抵抗が充分に低くならなく、上記数値範囲よりも大きい場合、かえって銀ナノワイヤ組立体NWAが熱により損傷することがある。
【0073】
より具体的には、IRオーブンを用いてアニーリング処理する場合、面抵抗が増加した程度に応じて処理時間を調整することができる。例えば、ヨード混合物により銀ナノワイヤNWの面抵抗が約10%程度増加する場合、100~150℃で、約2分程度加熱し、ヨード混合物により銀ナノワイヤNWの面抵抗が約20%程度増加する場合、100~150℃で、約5分程度加熱することができる。
【0074】
図11は、本発明の一実施例に係る透明電極の製造方法の順序図である。図11は、図1乃至図10bで説明した工程を順序図に要約して示した図である。
【0075】
ベース基板の準備段階(S100)及びAgNWの形成段階(S110)は、図1に対応することができる。
【0076】
加熱及び冷却段階(S120)は、図2a及び図2bに対応することができる。
【0077】
未硬化のポリマーの塗布段階(S130)は、図3に対応することができる。
【0078】
フレキシブルフィルムの配置段階(S140)は、図4に対応することができる。
【0079】
圧力印加段階(S150)は、図5a及び図5bに対応することができる。
【0080】
UVの照射段階(S160)は、図6に対応することができる。
【0081】
銀ナノワイヤ組立体の分離段階(S170)は、図7乃至図8bに対応することができる。
【0082】
ヨード混合物との反応段階(S180)は、図9乃至図10bに対応することができる。
【0083】
本発明の一実施例において、ヨード混合物との反応段階(S180)は、加熱及び冷却段階(S120)と未硬化のポリマー塗布段階(S130)との間に行われることができる。この場合、ヨード混合物と反応する銀ナノワイヤNWの面積が広くなり、視認性がさらによくなる効果がある。
【0084】
アニーリング段階(S190)は、別に図示しなかったが、上述した通りである。
【0085】
実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練された当業者は、下記の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更することができることを理解できるだろう。また、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、下記の特許請求範囲及びそれと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
ディスプレイ分野を始めとして様々な電気機器に関する分野において人の目に鮮明に視認されない透明電極が多く使用されている。
【0087】
したがって、面抵抗が低く、視認性が向上した透明電極を製造するための本特許は産業上の利用可能性が高い。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図11