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特許7047118基板搬送ロボット及びターゲット体のエッジ位置教示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット及びターゲット体のエッジ位置教示方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020546824
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033379
(87)【国際公開番号】W WO2020054387
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】16/127,491
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】タン,マーク
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-260176(JP,A)
【文献】特開2015-153809(JP,A)
【文献】特開2019-102695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するハンド、当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットに、板状のターゲット体のエッジの位置を教示する方法であって、
主面が水平となる姿勢で設置された前記ターゲット体のエッジよりも外側且つ前記ターゲット体より上方又は下方に規定された所定の初期位置に前記光電センサの光軸を移動させること、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されるまで、前記光軸の所定の前進サイクルを繰り返すこと、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたときの前記基板搬送ロボットの姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶すること、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたあと、前記光軸を所定量だけ水平な所定の走査方向へ前進させてから、前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなるまで、前記光軸の所定の後進サイクルを繰り返すこと、及び、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなったときの前記基板搬送ロボットの姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶すること、を含み、
前記前進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記ターゲット体へ向かう前記走査方向へ所定の第1移動量の前進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向への前記第1移動量の前進の一連の移動を含み、
前記後進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記走査方向への所定の第2移動量の後進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第2移動量の後進の一連の移動を含む、
ターゲット体のエッジ位置教示方法。
【請求項2】
前記第1移動量よりも、前記第2移動量が小さい、
請求項1に記載のエッジ位置教示方法。
【請求項3】
基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有するロボット本体と、
エッジ位置教示プログラムを記憶したメモリ、及び、前記エッジ位置教示プログラムを実行するプロセッサを有するコントローラとを備え、
前記エッジ位置教示プログラムは、前記コントローラが、
主面が水平となる姿勢で設置された板状のターゲット体のエッジよりも外側且つ前記ターゲット体より上方又は下方に規定された所定の初期位置に前記光電センサの光軸が移動するように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されるまで、前記光軸の所定の前進サイクルを繰り返すように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたときの前記ロボット本体の姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶し、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたあと、前記光軸が所定量だけ水平な所定の走査方向へ前進するように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなるまで、前記光軸の所定の後進サイクルを繰り返すように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなったときの前記ロボット本体の姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶するように、構成されており、
前記前進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記ターゲット体へ向かう前記走査方向へ所定の第1移動量の前進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第1移動量の前進の一連の移動を含み、
前記後進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記走査方向へ所定の第2移動量の後進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第2移動量の後進の一連の移動を含む、
基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記第1移動量よりも、前記第2移動量が小さい、
請求項3に記載の基板搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送ロボットにおいて、基板保持ハンドに設けられた光電センサを利用して基板のエッジ位置を教示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板保持ハンドの先端部に透過型の光電センサを備えた基板搬送ロボットが知られている。この光電センサは、例えば、基板キャリアの各スロットに収容された基板の有無を検出するために利用される。光電センサは、この本来の用途の他に、基板搬送ロボットに基板やその載置部の位置を自動教示するために利用される。特許文献1では、この種技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、半導体ウェハと同一の外径を有する大円板部と、大円板部と中心軸を共通にする小円板部とを上下に並べた教示用治具を、半導体ウェハを設置する位置に設置し、この教示用治具をウェハ把持部の先端部に設けた透過式センサで検出することにより、半導体ウェハの位置を自動教示することが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された小円板部の位置決め方法は以下の通りである。即ち、(1)作業者の操作によりウェハ把持部を小円板部の上に移動させ、(2)ウェハ把持部を降下させ、小円板部の上面を透過式センサで検出し、その時のロボットのZ軸の座標値を記録し、(3)ウェハ把持部を降下させ、小円板部の下面を透過式センサで検出し、その時のロボットのZ軸の座標値を記録し、(4)ウェハ把持部の高さを小円板部の上面と下面の中間に設定し、(5)透過式センサが小円板部を検出しない位置までアームを縮め、(6)ウェハ把持部の向きを変え、ウェハ把持部を小円板部にゆっくり接近させ、透過式センサが小円板部を最初に検出した(つまり、透過式センサの光軸が小円板部の円周に接した)時の、ロボットのθ軸とR軸の座標を記録し、(7)上記(5)と(6)とを繰り返して、ウェハ把持部を異なる方向から小円板部に接近させて、光軸が小円板部の円周に接する時のロボットのθ軸とR軸の座標を複数組求め、これらの値から、小円板部の中心の位置を求めて記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2003/022534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術によれば、光電センサの光軸が円形基板のエッジ(円周)に接したときのロボットの位置を検出するために、先ず、光軸をZ軸に沿って移動させながら基板の上面と下面とを検出することにより、基板の上面と下面のZ軸の位置を特定し、次に、基板の上面のZ軸の位置と下面のZ軸の位置との中間を基板のZ軸の位置と設定し、基板のZ軸の位置において光軸をZ軸と直交する平面内で移動させて基板のエッジを検出する。このように、真に必要な基板のZ軸と直交する平面内での位置を特定するために、基板のZ軸の位置を特定する前段階を踏まなければならず、処理に時間を要する。また、基板のZ軸の位置を特定するために、基板を模した教示用冶具に相当な厚みが必要であり、実際の基板での適用が難しい。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、基板を保持するハンド、当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットに、板状のターゲット体のエッジの位置を教示する技術であって、板状のターゲット体の厚みにかかわらず、ロボットにターゲット体のエッジの位置を教示できるものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るターゲット体のエッジ位置教示方法は、基板を保持するハンド、当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットに、板状のターゲット体のエッジの位置を教示する方法であって、
主面が水平となる姿勢で設置された前記ターゲット体のエッジよりも外側且つ前記ターゲット体より上方又は下方に規定された所定の初期位置に前記光電センサの光軸を移動させること、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されるまで、前記光軸の所定の前進サイクルを繰り返すこと、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたときの前記基板搬送ロボットの姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの被検出点の位置を求めてそれを記憶すること、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたあと、前記光軸を所定量だけ水平な所定の走査方向へ前進させてから、前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなるまで、前記光軸の所定の後進サイクルを繰り返すこと、及び、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなったときの前記基板搬送ロボットの姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶すること、を含み、
前記前進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記ターゲット体へ向かう前記走査方向へ所定の第1移動量の前進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向への前記第1移動量の前進の一連の移動を含み、
前記後進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記走査方向への所定の第2移動量の後進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第2移動量の後進の一連の移動を含むものである。
【0009】
本発明の一態様に係る基板搬送ロボットは、基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有するロボット本体と、エッジ位置教示プログラムを記憶したメモリ、及び、前記エッジ位置教示プログラムを実行するプロセッサを有するコントローラとを備えるものである。
前記エッジ位置教示プログラムは、前記コントローラが、
主面が水平となる姿勢で設置された板状のターゲット体のエッジよりも外側且つ前記ターゲット体より上方又は下方に規定された所定の初期位置に前記光電センサの光軸が移動するように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されるまで、前記光軸の所定の前進サイクルを繰り返すように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたときの前記ロボット本体の姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの被検出点の位置を求めてそれを記憶し、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されたあと、前記光軸が所定量だけ水平な所定の走査方向へ前進するように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなるまで、前記光軸の所定の後進サイクルを繰り返すように前記ロボット本体を動作させ、
前記光電センサで前記ターゲット体のエッジが検出されなくなったときの前記ロボット本体の姿勢に基づいて前記ターゲット体のエッジの位置を求めてそれを記憶するように、構成されており、
前記前進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記ターゲット体へ向かう前記走査方向へ所定の第1移動量の前進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第1移動量の前進の一連の移動を含み、
前記後進サイクルが、前記ターゲット体の高さレベルを通過する上昇又は降下、前記走査方向へ所定の第2移動量の後進、前記ターゲット体の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、前記走査方向へ前記第2移動量の後進の一連の移動を含むものである。
【0010】
上記基板搬送ロボット及びターゲット体のエッジ位置教示方法によれば、ターゲット体のエッジの上下方向及び水平方向の位置を光軸の移動のサイクルを繰り返す中で検出するので、ターゲット体の上下方向の位置(即ち、厚み方向の位置)を特定する前段階はない。よって、この前段階の処理の省略により、処理に要する時間を短縮することができる。また、この前段階の処理の省略により、ターゲット体の厚みが限定されない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を保持するハンド、当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットに、板状のターゲット体のエッジの位置を教示する技術であって、板状のターゲット体の厚みにかかわらず、ロボットにターゲット体のエッジの位置を教示できるものを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る基板搬送ロボットの概略側面図である。
図2図2は、基板保持ハンドの平面図である。
図3図3は、基板搬送ロボットの制御系統の構成を示すブロック図である。
図4図4は、ターゲット体のエッジ位置教示方法を説明する図である。
図5図5は、ターゲット体のエッジ位置教示処理のフロー図である。
図6図6は、ターゲット体のエッジ位置教示方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔基板搬送ロボット1の概略構成〕
図1は本発明の一実施形態に係る基板搬送ロボット1の概略側面図、図2図1に示す基板搬送ロボット1が備えるハンド5の平面図である。図1及び図2に示す基板搬送ロボット1は、ロボット本体10と、ロボット本体10の動作を制御するコントローラ6とを備える。基板搬送ロボット1は、図示されない基板載置部に対し基板3の搬入(積載)及び搬出を行うものである。基板搬送ロボット1は、例えば、EFEM(Equipment Front End Module)、ソータ、基板処理システムなどの、各種の基板3を搬送するシステムに備えられてよい。
【0014】
〔ロボット本体10の構成〕
ロボット本体10は、基台73と、基台73に支持された水平多関節型ロボットアーム(以下、「アーム7」と称する)と、アーム7の先端に連設された基板保持ハンド(以下、「ハンド5」と称する)と、ハンド5に設けられた透過型の光電センサ4とを有する。なお、本実施形態では光電センサ4として透過型の光電センサが採用されているが、これに代えて回帰反射型の光電センサが採用されてもよい。
【0015】
アーム7は、基台73に支持された昇降軸74と、水平方向に延びる第1リンク75及び第2リンク76とを備える。第1リンク75の基端と昇降軸74の先端とが第1関節A1を介して連結されている。第1リンク75の先端と第2リンク76の基端とが第2関節A2を介して連結されている。第2リンク76の先端とハンド5の基端とが手首関節A3を介して連結されている。基台73内には、昇降軸74を昇降駆動する昇降駆動装置60が設けられている。昇降駆動装置60は、例えば、コントローラ6から与えられる信号に従って角変位するサーボモータと、減速装置を含みサーボモータの動力を直進力に変換して昇降軸74へ伝達する動力伝達機構と、サーボモータの角変位を検出する位置検出器とを含む(いずれも図示略)。第1リンク75内には、第1関節A1を駆動する第1関節駆動装置61、及び、第2関節A2を駆動する第2関節駆動装置62が設けられている。第2リンク76内には手首関節A3を駆動する手首関節駆動装置63が設けられている(図3、参照)。各関節の駆動装置61,62,63は、コントローラ6から与えられる信号に従って角変位するサーボモータと、減速装置を含みサーボモータの動力をリンク体に伝達する動力伝達機構と、サーボモータの角変位を検出する位置検出器とを含む(いずれも図示略)。
【0016】
ハンド5は、手首関節A3を介してアーム7の先端と連結されたハンド基部51と、ハンド基部51と結合されたブレード52とを備える。ブレード52は、先端部が二股に分かれたY字状(又は、U字状)を呈する薄板部材である。ブレード52の主面は水平であって、基板3を支持する複数の支持パッド53,54がブレード52上に設けられている。複数の支持パッド53,54は、ブレード52に載置された基板3のエッジと接触するように配置されている。更に、ハンド5においてブレード52の基端側には、エアシリンダ64の動作により進退移動するプッシャ55が設けられている。このプッシャ55とブレード52の先端部に配置された支持パッド53との間で、ブレード52に載置された基板3が把持される。なお、本実施形態に係るハンド5の基板3の保持方式は、エッジ把持式であるが、エッジ把持式に代えて、吸着式、落とし込み式、載置式などの公知の基板3の保持方式が採用されてもよい。
【0017】
ハンド5には、少なくとも1組の光電センサ4が設けられている。光電センサ4は、ブレード52の二股に分かれた先端部の裏面に設けられている。光電センサ4は、ブレード52の二股に分かれた先端部の一方に設けられた投光器41と他方に設けられた受光器42とを含む。投光器41と受光器42とは、ブレード52の主面と平行な方向(即ち、水平方向)に離れている。
【0018】
投光器41は、検出媒体となる光を投射する光源を備える。受光器42は、投光器41の投射光を受けて電気信号に変換する受光素子を備える。投光器41と受光器42は対向配置されており投光器41を出た光は、直線状に進んで、受光器42の入光窓に入射する。図2において、投光器41を出た光の光軸43が鎖線で示されている。光電センサ4は、光軸43上を物体が通過して、受光器42に入射する光量が減少したことを検出すると、検出信号をコントローラ6へ出力する。
【0019】
〔基板搬送ロボット1の制御系統の構成〕
図3は、基板搬送ロボット1の制御系統の構成を示すブロック図である。コントローラ6は、いわゆるコンピュータであって、例えば、マイクロコントローラ、CPU、MPU、PLC、DSP、ASIC又はFPGA等のプロセッサ66と、ROM、RAM等のメモリ67とを有する。メモリ67には、エッジ位置教示プログラム70を含むプロセッサ66が実行するプログラムが記憶されている。また、メモリ67には、プロセッサ66が行う処理に使用される初期位置、第1移動量、第2移動量、基板3(ターゲット体30)の形状、基板3のおおよその載置位置などの設定データ、教示点データなどを含む各種データなどが格納されている。
【0020】
コントローラ6では、メモリ67に記憶されたプログラム等のソフトウェアをプロセッサ66が読み出して実行することにより、ロボット本体10の動作を制御するための処理が行われる。なお、コントローラ6は単一のコンピュータによる集中制御により各処理を実行してもよいし、複数のコンピュータの協働による分散制御により各処理を実行してもよい。
【0021】
より詳細には、コントローラ6は、昇降駆動装置60、第1関節駆動装置61、第2関節駆動装置62、手首関節駆動装置63、及び光電センサ4と電気的に接続されている。コントローラ6は、これらの駆動装置に含まれる位置検出器からサーボモータの回転位置を取得し、それらの回転位置と対応するハンド5のポーズ(位置及び姿勢)と記憶された教示点データとに基づいて、目標ポーズを演算する。更に、コントローラ6は、ハンド5が目標ポーズとなるようにサーボアンプへ制御指令を出力する。サーボアンプは、制御指令に基づいて各サーボモータに対して駆動電力を供給することにより、ハンド5が目標ポーズへ移動する。
【0022】
〔ターゲット体30のエッジ位置教示方法〕
以下、上記構成の基板搬送ロボット1によって行われるターゲット体30のエッジ位置教示方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、ターゲット体30のエッジ位置教示方法を説明する図であり、図5は、ターゲット体30のエッジ位置教示処理のフロー図である。コントローラ6において、プロセッサ66がエッジ位置教示プログラム70を実行することにより、基板搬送ロボット1でターゲット体30のエッジ位置教示に係る処理が行われる。
【0023】
図4に示すように、ハンド5に設けられた光電センサ4の光軸43の先に、板状のターゲット体30が、その主面が水平となる姿勢で置かれている。ターゲット体30は、任意の教示用冶具に載置されていてもよいし、キャリア等の収容体に収容されていてもよい。また、ターゲット体30は、基板3又は基板3を模した円板状のものであってもよいが、ターゲット体30の外形は円形に限定されない。
【0024】
まず、コントローラ6は、光電センサ4の光軸43(ハンド5)を初期位置へ移動させるように、ロボット本体10を動作させる(ステップS1)。初期位置は、光電センサ4の光軸43が基板3と接触せず、光軸43がターゲット体30のエッジよりも外側において当該エッジに近接しており、且つ、光軸43がターゲット体30よりも下方(又は上方)にある、任意の位置である。予め教示された初期位置へハンド5を移動させるようにロボット本体10が動作してもよいし、オペレータによる遠隔操作によってハンド5を任意の初期位置へ移動させるようにロボット本体10が動作してもよい。
【0025】
続いて、コントローラ6は、ロボット本体10に検出動作を行わせる(ステップS2)。検出動作において、コントローラ6は、次の(1)~(4)の一連の移動を1前進サイクルとして、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されるまで、光軸43(ハンド5)がこの前進サイクルを繰り返すように、ロボット本体10を動作させる。なお、初期位置は、この前進サイクルが1回以上行われたあとでターゲット体30のエッジが検出されるように設定されてよい。
(A1)ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇(又は、降下)、
(A2)ターゲット体30へ向かう水平な所定の走査方向へ所定の第1移動量の前進、
(A3)ターゲット体30の高さレベルを通過する降下(又は、上昇)、
(A4)ターゲット体30へ向かう走査方向へ第1移動量の前進。
【0026】
上記において、「ターゲット体30の高さレベル」は、コンロローラ6に予め記憶されたターゲット体30のおおよその高さ位置であってよい。また、上記においてターゲット体30の「走査方向」とは、初期位置からターゲット体30のおおよその中心位置へ向かう任意の水平方向である。コントローラ6は、記憶された初期位置の座標とターゲット体30のおおよその中心位置の座標とから走査方向を決定してもよいし、走査方向が予めコントローラ6に記憶されていてもよい。また、上記において「第1移動量」は、任意の極めて小さな値である。上記(A2)の第1移動量と上記(A4)の第1移動量とは、原則として同じ値であるが、それらは異なる値であってもよい。上記の前進サイクルを繰り返すハンド5(又は光軸43)の動きは、犬がふんふん嗅ぎまわる動作に例えられる。
【0027】
光軸43(ハンド5)が上記の前進サイクルを繰り返すうちに、光電センサ4によってターゲット体30のエッジが検出される。コントローラ6は、光電センサ4によってターゲット体30のエッジが検出されたときの(ステップS3でYES)、ロボット本体10の姿勢(各位置検出器で検出された回転位置)を取得及び記憶し(ステップS4)、これらの値からターゲット体30のエッジの被検出点の位置を求めて記録する(ステップS5)。
【0028】
以上のステップS1~S5の処理により、基板搬送ロボット1にターゲット体30のエッジの位置を自動教示することができるが、以下に説明するステップS6以降の処理を更に加えると、より信頼性が高く且つ詳細なターゲット体30のエッジの位置を基板搬送ロボット1に自動教示することができる。
【0029】
コントローラ6は、ステップS5で記憶されたターゲット体30のエッジの位置から、光軸43が走査方向へ所定量だけ前進しており、且つ、光軸43がターゲット体30よりも下方(又は上方)にある位置へ移動させるように、ロボット本体10を動作させる(ステップS6)。ここで、上記「所定量」は、移動後のハンド5を上昇又は降下させたときにハンド5がターゲット体30と当接せず、且つ、光軸43がターゲット体30を通過するような、ハンド5(又は光軸43)の移動量であって、予めコントローラ6に記憶されている。
【0030】
続いて、コントローラ6は、ロボット本体10に検出動作を行わせる(ステップS7)。この検出動作において、図6に示すように、コントローラ6は、次の(B1)~(B4)の一連の移動を1後進サイクルとして、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されなくなるまで、光軸43(ハンド5)がこの後進サイクルを繰り返すように、ロボット本体10を動作させる。なお、上述の所定量は、この後進サイクルが1回以上行われたあとでターゲット体30のエッジが検出されなくなるように設定されてよい。
(B1)ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇(又は、降下)、
(B2)ターゲット体30のエッジに近づくように走査方向へ所定の第2移動量の後進、
(B3)ターゲット体30の高さレベルを通過する降下(又は、上昇)、
(B4)ターゲット体30のエッジに近づくように走査方向へ第2移動量の後進。
【0031】
上記において、「後進」の方向は、前述の「前進」の方向と逆の方向である。また、上記において「第2移動量」は、第1移動量と同じ又はそれよりも小さい、任意の極めて小さな値である。第2移動量は第1移動量よりも小さい値であることが望ましい。上記(B2)の第2移動量と上記(B4)の第2移動量とは、原則として同じ値であるが、それらは異なる値であってもよい。
【0032】
光軸43(ハンド5)が上記の後進サイクルを繰り返すうちに、光電センサ4によってターゲット体30のエッジが検出されなくなる。コントローラ6は、光電センサ4によってターゲット体30のエッジが検出されなくなったときの(ステップS8でYES)、ロボット本体10の姿勢(各位置検出器で検出された回転位置)を取得及び記憶し(ステップS9)、これらの値からターゲット体30のエッジの二度目の被検出点の位置を求めて記録する(ステップS10)。
【0033】
ターゲット体30のエッジの一度目の被検出点の位置と、ターゲット体30のエッジの二度目の被検出点の位置とが同じである場合には、コントローラ6は一度目(又は、二度目)の被検出点の位置をターゲット体30のエッジの位置として教示する。また、ターゲット体30のエッジの一度目の被検出点の位置と、ターゲット体30のエッジの二度目の被検出点の位置とが異なる場合には、コントローラ6は、光軸43を走査方向に更に後退させたあと、ステップS2~S5を繰り返して、ターゲット体30のエッジの三度目の被検出点の位置を求めてよい。この場合、コントローラ6が検出動作(ステップS2、S7)を繰り返すたびに、前進又は後進の移動量を小さくしていくとよい。
【0034】
以上の処理により、基板搬送ロボット1にターゲット体30のエッジの位置を自動教示することができる。このターゲット体30のエッジの位置教示方法を応用して、基板搬送ロボット1に円形の基板3の中心位置を教示することができる。具体的には、ターゲット体30のエッジの位置教示方法を利用して、基板3の異なる3か所以上のエッジで位置を検出し、それらの位置から演算により基板3の中心位置を求めることができる。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態に係る基板搬送ロボット1は、基板3を保持するハンド5、ハンド5を変位させるロボットアーム7、及び、ハンド5の先端部に設けられた光電センサ4を有するロボット本体10と、エッジ位置教示プログラム70を記憶したメモリ67、及び、エッジ位置教示プログラム70を実行するプロセッサ66を有するコントローラ6とを備えるものである。エッジ位置教示プログラム70は、コントローラ6が、主面が水平となる姿勢で設置された板状のターゲット体30のエッジよりも外側且つターゲット体30より上方又は下方に規定された所定の初期位置に光電センサ4の光軸43が移動するようにロボット本体10を動作させ、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されるまで、光軸43の所定の前進サイクルを繰り返すようにロボット本体10を動作させ、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されたときのロボット本体10の姿勢に基づいてターゲット体30のエッジの位置を求めてそれを記憶するように、構成されている。前進サイクルは、ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇又は降下、ターゲット体30へ向かう水平な所定の走査方向へ所定の第1移動量の前進、ターゲット体30の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、走査方向へ第1移動量の前進の一連の移動を含む。
【0036】
また、本実施形態のターゲット体のエッジ位置教示方法は、基板搬送ロボット1に、板状のターゲット体30のエッジの位置を教示する方法であって、主面が水平となる姿勢で設置されたターゲット体30のエッジよりも外側且つターゲット体30より上方又は下方に規定された所定の初期位置に光電センサ4の光軸43を移動させること、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されるまで、光軸43の所定の前進サイクルを繰り返すこと、及び、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されたときの基板搬送ロボット1の姿勢に基づいてターゲット体30のエッジの位置を求めてそれを記憶すること、を含むものである。前進サイクルは、ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇又は降下、ターゲット体30へ向かう水平な所定の走査方向へ所定の第1移動量の前進、ターゲット体30の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、走査方向への第1移動量の前進の一連の移動を含む。
【0037】
上記基板搬送ロボット1及びターゲット体のエッジ位置教示方法によれば、ターゲット体30のエッジの上下方向及び水平方向の位置を光軸43の移動サイクルを繰り返す中で検出するので、ターゲット体30の上下方向の位置(即ち、厚み方向の位置)を特定する前段階はない。よって、この前段階の処理の省略により、処理に要する時間を短縮することができる。また、この前段階の処理の省略により、ターゲット体30の厚みが限定されない。
【0038】
また、上記実施形態に示したように、上記基板搬送ロボット1において、エッジ位置教示プログラム70は、コントローラ6が、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されたあと、光軸43が所定量だけ走査方向へ前進するようにロボット本体10を動作させ、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されなくなるまで、光軸43の所定の後進サイクルを繰り返すようにロボット本体10を動作させ、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されなくなったときのロボット本体10の姿勢に基づいてターゲット体30のエッジの位置を求めてそれを記憶するように、構成されていてもよい。この場合、後進サイクルは、ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇又は降下、走査方向へ所定の第2移動量の後進、ターゲット体30の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、走査方向へ第2移動量の後進の一連の移動を含む。
【0039】
同様に、上記実施形態に示したように、上記エッジ位置教示方法において、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されたあと、光軸43を所定量だけ走査方向へ前進させてから、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されなくなるまで、光軸43の所定の後進サイクルを繰り返すこと、光電センサ4でターゲット体30のエッジが検出されなくなったときの基板搬送ロボット1の姿勢に基づいてターゲット体30のエッジの位置を求めてそれを記憶すること、を更に含んでいてよい。この場合、後進サイクルは、ターゲット体30の高さレベルを通過する上昇又は降下、走査方向へ所定の第2移動量の後進、ターゲット体30の高さレベルを通過する降下又は上昇、及び、走査方向へ第2移動量の後進の一連の移動を含む。
【0040】
上記基板搬送ロボット1及びターゲット体30のエッジ位置教示方法によれば、ターゲット体30のエッジの同じ箇所に対し複数回の検出が行われる。これにより、検出されたターゲット体30のエッジの位置の信頼度を高めることができる。
【0041】
また、上記基板搬送ロボット1及びターゲット体30のエッジ位置教示方法において、第1移動量よりも、第2移動量が小さいことが望ましい。
【0042】
これにより、より細かい精度でターゲット体30のエッジの位置を検出することができる。
【0043】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【符号の説明】
【0044】
1 基板搬送ロボット
3 基板
10 ロボット本体
30 ターゲット体
4 光電センサ
41 投光器
42 受光器
43 光軸
5 ハンド
51 ハンド基部
52 ブレード
6 コントローラ
60 昇降駆動装置
61 第1関節駆動装置
62 第2関節駆動装置
63 手首関節駆動装置
64 エアシリンダ
66 プロセッサ
67 メモリ
70 エッジ位置教示プログラム
73 基台
74 昇降軸
75 第1リンク
76 第2リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6