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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220328BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20220328BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20220328BHJP
【FI】
F25B1/00 385Z
F25B1/00 304D
F25B13/00 104
F25B13/00 N
F24F11/86
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020547640
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035477
(87)【国際公開番号】W WO2020065730
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】今任 尚希
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-312428(JP,A)
【文献】特開2007-315750(JP,A)
【文献】特開2005-114184(JP,A)
【文献】特開平08-035710(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026369(WO,A1)
【文献】特開2017-180882(JP,A)
【文献】特開2009-250554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 13/00
F24F 11/86
F24F 140:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器、第1電動膨張弁を含む室外ユニットと、
それぞれ第2電動膨張弁および室内熱交換器を含む複数の室内ユニットと、
暖房運転時、前記圧縮機から吐出される冷媒を前記各室内熱交換器に流し、その各室内熱交換器から流出する冷媒を前記各第2電動膨張弁および前記第1電動膨張弁を通して前記室外熱交換器に流し、その前記室外熱交換器から流出する冷媒を前記圧縮機に戻す冷凍サイクルと、
前記第1電動膨張弁と前記各第2電動膨張弁との間の前記室外ユニットの液側配管に設けられ冷媒温度を検知する温度センサと、
前記室外ユニットおよび前記各室内ユニットの運転を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記各室内ユニットのうち、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁を開き、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁を全閉し、
前記室外熱交換器における冷媒の過熱度が目標値となるように前記第1電動膨張弁の開度を制御し、
前記各室内ユニットのうち、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットの前記室内熱交換器における冷媒の過冷却度が目標値となるように同室内ユニットの前記第2電動膨張弁の開度を制御し、
前記冷凍サイクル中の冷媒循環量の不足率を、前記温度センサにより検知される実際の冷媒温度が、モリエル線図上の不足率0%のときの冷媒温度と不足率100%のときの冷媒温度との間のどの位置に在しているかによって検出し、検出した不足率が閾値以上で、かつ前記第1電動膨張弁の開度が設定値以上の場合に、前記運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁の開度を徐々に増す、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記コントローラは
前記第2電動膨張弁の開度を所定開度を上限として徐々に増す、
ことを特徴とする請求項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、少なくとも1つの室外ユニットおよび複数の室内ユニットを有するマルチタイプの空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1つの室外ユニットおよび複数の室内ユニットを有するマルチタイプの空気調和装置は、圧縮機から吐出される冷媒を四方弁、室外熱交換器、減圧器、各室内熱交換器に通して上記圧縮機に戻すヒートポンプ式冷凍サイクルを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記空気調和装置では、暖房運転時、冷媒の一部が停止中の室内ユニットの室内熱交換器に溜まり込んで、冷凍サイクル中の冷媒循環量が不足することがある。
【0004】
本発明の実施形態の目的は、冷凍サイクル中の冷媒循環量の不足を解消できる空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器、第1電動膨張弁を含む室外ユニットと;それぞれ第2電動膨張弁および室内熱交換器を含む複数の室内ユニットと;暖房運転時、前記圧縮機から吐出される冷媒を前記各室内熱交換器に流し、その各室内熱交換器から流出する冷媒を前記各第2電動膨張弁および前記第1電動膨張弁を通して前記室外熱交換器に流し、その前記室外熱交換器から流出する冷媒を前記圧縮機に戻す冷凍サイクルと;前記室外ユニットおよび前記各室内ユニットの運転を制御するコントローラと;を備える。このコントローラは、前記各室内ユニットのうち、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁を開き、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁を全閉する。さらに、上記コントローラは、前記室外熱交換器における冷媒の過熱度が目標値となるように前記第1電動膨張弁の開度を制御するとともに、前記各室内ユニットのうち、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットの前記室内熱交換器における冷媒の過冷却度が目標値となるように同室内ユニットの前記第2電動膨張弁の開度を制御する。そして、上記コントローラは、前記冷凍サイクル中の冷媒循環量の不足率を、前記温度センサにより検知される実際の冷媒温度が、モリエル線図上の不足率0%のときの冷媒温度と不足率100%のときの冷媒温度との間のどの位置に在しているかによって検出し、検出した不足率が閾値以上で、かつ前記第1電動膨張弁の開度が設定値以上の場合に、前記運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける前記第2電動膨張弁の開度を徐々に増す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態の構成を示す図。
図2】一実施形態の制御を示すフローチャート。
図3】一実施形態における冷媒温度TLの変化を示すモリエル線図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、圧縮機1の吐出口に高圧側配管2を介して四方弁3が接続され、その四方弁3にガス側配管4を介して室外熱交換器5の一端が接続されている。この室外熱交換器5の他端に液側配管6を介して減圧器たとえば電動膨張弁(第1電動膨張弁)7の一端が接続され、その電動膨張弁7の他端に液側配管8を介してパックドバルブ9が接続されている。電動膨張弁7は、入力される駆動パルス信号の数に応じて開度Qoが変化するパルスモータバルブ(PMV)である。開度Qoは、“0”個の駆動パルス信号plsに対応する最小開度Qomin(全閉)から、“3000”個の駆動パルス信号plsに対応する最大開度Qomax(全開)まで、連続的に変化させることができる。
【0008】
上記パックドバルブ9に液側渡り配管31および複数の電動膨張弁(第2電動膨張弁)41を介して複数の室内熱交換器42の一端が接続され、その室内熱交換器42の他端がガス側渡り配管32を介してパックドバルブ10に接続されている。各電動膨張弁41は、入力される駆動パルス信号の数に応じて開度Qiが変化するパルスモータバルブ(PMV)である。開度Qiは、“0”個の駆動パルス信号plsに対応する最小開度Qimin(全閉)から、“1500”個の駆動パルス信号plsに対応する最大開度Qimax(全開)まで、連続的に変化させることができる。
【0009】
パックドバルブ10にガス側配管11を介して上記四方弁3が接続され、その四方弁3に低圧側配管12を介してアキュームレータ13の流入口が接続されている。このアキュームレータの流出口に低圧側配管14を介して上記圧縮機1のサクションカップ15が接続されている。
【0010】
これら配管接続により、ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成される。
【0011】
上記圧縮機1は、インバータ18の出力により動作するモータ1Mを密閉ケースに収めた密閉型圧縮機であって、アキュームレータ13から流出する冷媒を吸込み、その吸込み冷媒を圧縮して吐出する。インバータ18は、交流電源19の電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧を室外コントローラ20からの指令に応じた周波数F(出力周波数Fという)およびその出力周波数Fに対応するレベルの交流電圧に変換し出力する。出力周波数Fの値に応じて、モータ1Mの速度つまり圧縮機1の能力が変化する。
【0012】
冷房運転時、実線矢印で示すように、圧縮機1から吐出された冷媒が四方弁3、室外熱交換器5、電動膨張弁7、各電動膨張弁41を通って各室内熱交換器42に流入する。各室内熱交換器42から流出する冷媒は、四方弁3およびアキュームレータ13を通って圧縮機1に吸込まれる。室外熱交換器5が凝縮器として機能し、各室内熱交換器42が蒸発器として機能する。
【0013】
暖房運転時は、四方弁2の流路が切換わることにより、破線矢印で示すように、圧縮機1から吐出された冷媒が四方弁3を通って各室内熱交換器42に流入する。各室内熱交換器42から流出する冷媒は、電動膨張弁7、室外熱交換器5、四方弁3、アキュームレータ13を通って圧縮機1に吸込まれる。各室内熱交換器42が凝縮器として機能し、室外熱交換器5が蒸発器として機能する。
【0014】
室外熱交換器5の近傍に、外気を吸込んで室外熱交換器5に供給する室外ファン16が配置されている。この室外ファン16によって吸込まれる外気の流路に、外気温度Toを検知する外気温度センサ17が配置されている。圧縮機1の吐出口と四方弁3との間の高圧側配管2に、高圧側の冷媒温度TDを検知する温度センサ21および高圧側の冷媒圧力PDを検知する圧力センサ22が取付けられている。電動膨張弁7とパックドバルブ9との間の液側配管8に、冷媒温度TLを検知する温度センサ23が取付けられている。四方弁3とアキュームレータ13との間の低圧側配管12に、低圧側の冷媒温度TSを検知する温度センサ24および低圧側の冷媒圧力PSを検知する圧力センサ25が取付けられている。
【0015】
上記各室内熱交換器42の近傍に、室内空気を吸込んで各室内熱交換器42に供給する室内ファン43が配置されている。この室内ファン43によって吸込まれる室内空気の流路に、室内温度Taを検知する室内温度センサ44が配置されている。
【0016】
各室内熱交換器42の他端側に、暖房時に各室内熱交換器42から流出する冷媒の温度TC2を検知する温度センサ47が取付けられている。各室内熱交換器42の一端側に、暖房時に各室内熱交換器42に流入する冷媒の温度TC1を検知する温度センサ48が取付けられている。これら温度センサ47,48の検知信号が各室内コントローラ45に送られる。各室内コントローラ45には、冷房運転、除湿運転、暖房運転、送風運転、目標室内温度Tas、運転開始、運転停止などの各種運転条件をユーザに設定させるためのリモートコントロール式の操作器(いわゆるリモコン)46がそれぞれ接続されている。
【0017】
上記圧縮機1、四方弁3、室外熱交換器5、電動膨張弁7、パックドバルブ9,10、アキュームレータ13、室外ファン16、インバータ18、室外コントローラ20、各配管、および各センサは、室外ユニットAに収容されている。上記各室内熱交換器42、各室外ファン43、各室内コントローラ45、各操作器46、各配管、および各センサは、N台の室内ユニットB1,B2,…Bnにそれぞれ収容されている。これら室外ユニットAおよび室内ユニットB1,B2,…Bnにより、マルチタイプの空気調和機が構成されている。そして、室外コントローラ20と各室内コントローラ45がデータ伝送用の信号線50によって相互に接続されている。
【0018】
室外コントローラ20は、各室内コントローラ45との連係により室外ユニットAおよび室内ユニットB1~Bnの運転を制御するもので、主要な機能として第1制御セクション20a、第2制御セクション20b、検出セクション20c、第3制御セクション20dを含む。
【0019】
第1制御セクション20aは、暖房運転時、室外熱交換器(蒸発器)5における冷媒の過熱度(スーパーヒート)SHが目標値SHsとなるように、電動膨張弁7の開度Qoを制御する過熱度制御を実行する。冷媒の過熱度SHは、温度センサ23の検知温度TLと温度センサ24の検知温度TSとの差に相当する。
【0020】
第2制御セクション20bは、暖房運転時、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットの室内熱交換器(凝縮器)42における冷媒の過冷却度(サブクール)SCが目標値SCsとなるように同室内ユニットの電動膨張弁41の開度Qiを操作する過冷却度制御を実行するとともに、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットの電動膨張弁41を全閉する。各室内熱交換器42における冷媒の凝縮温度TGと各温度センサ47の検知温度TC2との差を、各室内熱交換器42における冷媒の過冷却度SCとして求めることができる。凝縮温度TGは、高圧側配管2の圧力センサ22が検知する冷媒圧力PDから換算して求めることができる。また、第2制御セクション20bは、過冷却度制御の実行に伴い、運転状態の室内ユニットにおける操作器46の目標室内温度Tasと室内温度センサ44の検知温度Taとの差が大きくなって暖房負荷が増加した場合に、過冷却度SCに対する目標値SCsを低下させることで、電動膨張弁7の開度Qoを増加方向に変化させ、これにより室内熱交換器42への冷媒流量を増して暖房能力を増加させる。さらに、第2制御セクション20bは、過冷却度制御の実行に伴い、運転状態の室内ユニットにおける操作器46の目標室内温度Tasと室内温度センサ44の検知温度Taとの差が小さくなって暖房負荷が減少した場合に、過冷却度SCに対する目標値SCsを上昇させることで、電動膨張弁7の開度Qoを減少方向に変化させ、これにより室内熱交換器42への冷媒流量を減らして暖房能力を減少させる。
【0021】
検出セクション20cは、暖房運転時のヒートポンプ式冷凍サイクルにおける冷媒循環量を検出するもので、具体的には冷媒循環量の不足率X(%)を検出する。
【0022】
第3制御セクション20dは、検出セクション20cで検出される冷媒循環量が不足の場合、具体的には検出セクション20cで検出される不足率Xが閾値Xs(例えば30%)以上の無視できない状況にある場合に、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける電動膨張弁41の開度Qiを全閉状態から徐々に増す。詳細には、第3制御セクション20dは、検出セクション20cで検出された不足率Xが閾値Xs以上で、かつ第1制御セクション20aの過熱度制御によって操作される電動膨張弁7の開度Qoが設定値Qos以上の場合に(つまり冷媒循環量の不足に伴う過熱度SHの上昇を過熱度制御によって抑えることが困難な場合に)、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットにおける電動膨張弁41の開度Qiを全閉状態から所定開度Qis(例えば最大開度Qimaxの10%)を上限として一定開度ΔQずつ徐々に増す。設定値Qosは、最大開度Qomaxの例えば2/3の開度に相当する。上限として定めた所定開度Qisは、電動膨張弁41の開き過ぎによる余計な冷媒の流入を防ぐためのものである。
【0023】
冷媒循環量の不足率Xは、凝縮器における冷媒の凝縮温度TG、蒸発器(室内熱交換器42)における冷媒の蒸発温度TU、蒸発器から流出する冷媒の温度(温度センサ47の検知温度)TC2、凝縮器に流入する冷媒の温度(温度センサ23の検知温度)TLのうち、いずれか1つまたは複数の要素を用いて検出することができる。蒸発温度TUは、低圧側配管12における圧力センサ25の検知圧力PSから換算して求めることができる。
【0024】
例えば、ヒートポンプ式冷凍サイクル中の冷媒が全ての室内ユニットB1~Bnに溜まり込むことなく適切に循環し、冷媒循環量に不足がない場合、液側渡り配管31および液側配管8,7が液状の冷媒で満たされた状態となり、その液状の冷媒が室外熱交換器(蒸発器)5に流入する。冷媒が室内ユニットB1~Bnのいずれかに溜まり込んで、ヒートポンプ式冷凍サイクル中の冷媒循環量が不足気味になると、液側渡り配管31および液側配管8,7に液状の冷媒とガス状の冷媒が共存して流れ、いわゆる気液二相状態の冷媒が室外熱交換器5に流入するようになる。
【0025】
気液二相状態の冷媒が室外熱交換器5に流入すると、室外熱交換器5における冷媒の過熱度SHが上昇し、この過熱度SHの上昇を抑えるべく過熱度制御が働いて電動膨張弁7の開度Qoが増加方向に変化する。ただし、電動膨張弁7の開度Qoの増加が続いてその開度Qoが電動膨張弁7の最大開度Qomaxに達すると、過熱度SHの上昇を抑えることができなくなり、圧縮機1に吸込まれる冷媒の温度TSが上昇する。冷媒温度TSが上昇すると、圧縮機1から吐出される冷媒の温度TD(および圧力PD)が上昇し、その冷媒温度TDの上昇に対する室内コントローラ20の高圧保護制御によってインバータ18の出力周波数Fが低下する。出力周波数Fが低下すると、圧縮機1の能力が低下し、これに伴い運転状態の室内ユニットにおける暖房能力が低下してしまう。
【0026】
液状の冷媒が室外熱交換器5に流入する場合のヒートポンプ式冷凍サイクルの状態を図3のモリエル線図に実線で示し、気液二相状態の冷媒が室外熱交換器5に流入する場合のヒートポンプ式冷凍サイクルの状態を同モリエル線図に破線で示す。冷媒温度TLは、液状の冷媒が流入する場合は凝縮温度TGに近い側に存するが、気液二相状態の冷媒が流入する場合は凝縮温度TGから離れて蒸発温度TU側に寄った値TL´となる。
【0027】
そこで、検出セクション20cは、温度センサ23により検知される実際の冷媒温度TLが、上記モリエル線図上の冷媒温度TLと冷媒温度TL´との間のどの位置に存しているかを、冷媒循環量の不足率X(%)として検出する。すなわち、実際の冷媒温度TLがモリエル線図上の冷媒温度TLと同じ位置にあれば不足率Xは0%、実際の冷媒温度TLがモリエル線図上の冷媒温度TLと冷媒温度TL´との間の中間位置にあれば不足率Xは50%、実際の冷媒温度TLがモリエル線図上の冷媒温度TL´と同じ位置にあれば不足率Xは100(%)である。
【0028】
つぎに、室外コントローラ20が実行する制御を図3のフローチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。
【0029】
暖房運転時、室外コントローラ20は、室外熱交換器(蒸発器)5における冷媒の過熱度SHが目標値SHsとなるように、電動膨張弁7の開度を制御する(S1)。同時に、室外コントローラ20は、運転状態の1つまたは複数の室内ユニットたとえば室内ユニットB1,B2の室内熱交換器42における冷媒の過冷却度SCがそれぞれ目標値SCsとなるように同室内ユニットB1,B2の各電動膨張弁41の開度を制御し、運転停止状態の1つまたは複数の室内ユニットたとえば室内ユニットB3~Bnの電動膨張弁41を全閉する(S2)。
【0030】
続いて、室外コントローラ20は、ヒートポンプ式冷凍サイクル中の冷媒循環量の不足率Xを検出し(S3)、検出した不足率Xが閾値Xs以上であるか否かを判定する(S4)。検出した不足率Xが閾値Xs以上でない場合(S4のNO)、室外コントローラ20は、上記S1からの処理を繰り返す。
【0031】
検出した不足率Xが閾値Xs以上の場合(S4のYES)、室外コントローラ20は、過熱度制御によって調整されている電動膨張弁7の開度Qoが設定値Qos以上であるか否かを判定する(S5)。開度Qoが設定値Qos以上でない場合(S5のNO)、室外コントローラ20は、上記S1からの処理を繰り返す。
【0032】
開度Qoが設定値Qos以上の場合(S5のYES)、室外コントローラ20は、運転停止状態の室内ユニットB3~Bnの電動膨張弁41の開度Qiが所定開度Qis未満であることを条件に(S6のYES)、その室内ユニットB3~Bnの電動膨張弁41の開度Qiをそれぞれ所定開度ΔQだけ増大する(S7)。全閉していた各電動膨張弁41が開くことにより、室内ユニットB3~Bnの室内熱交換器42に溜まり込んで液化していた寝込み冷媒が液側渡り配管31および液側配管8へと流出する。
【0033】
この開度増に伴い、室外コントローラ20は、タイムカウントtを開始し(S8)、そのタイムカウントtが一定時間ts(例えば300秒)に達しているか否かを判定する(S9)。タイムカウントtが一定時間ts未満であれば(S9のNO)、室外コントローラ20は、上記増大した電動膨張弁41の開度Qiを保持し(S10)、タイムカウントtを継続する(S8)。そして、タイムカウントtが一定時間tsに達したとき(S9のYES)、室外コントローラ20は、上記S1,S2の処理を経て、冷媒循環量の不足率Xを再び検出する(S3)。
【0034】
開度増にもかかわらず、検出した不足率Xが閾値Xs以上の場合(S4のYES)、かつ電動膨張弁7の開度Qoが設定値Qos以上の場合(S5のYES)、室外コントローラ20は、運転停止状態の室内ユニットB3~Bnの電動膨張弁41の開度Qiが所定開度Qis未満であることを条件に(S6のYES)、その室内ユニットB1~Bnの電動膨張弁41の開度Qiをそれぞれ所定開度ΔQだけ再び増大する(S7)。全閉していた各電動膨張弁41の開度Qiがさらに増すことにより、室内ユニットB3~Bnの室内熱交換器42に溜まり込んで液化していた寝込み冷媒が液側渡り配管31および液側配管8へとさらに流出する。
【0035】
この開度増に伴い、室外コントローラ20は、タイムカウントtを初めから開始し(S8)、そのタイムカウントtが一定時間tsに達しているか否かを判定する(S9)。タイムカウントtが一定時間ts未満であれば(S9のNO)、室外コントローラ20は、増大した電動膨張弁41の開度Qiを保持し(S10)、タイムカウントtを継続する(S8)。タイムカウントtが一定時間tsに達したとき(S9のYES)、室外コントローラ20は、上記S1,S2の処理を経て、冷媒循環量の不足率Xの検出を繰り返す(S3)。
【0036】
上記S6において運転停止状態の室内ユニットB3~Bnにおける電動膨張弁41の開度Qiが設定値Qisに達した場合(S6のYES)、室外コントローラ20は、S7の開度増の処理を実行することなく、タイムカウントtを初めから開始する(S8)。
【0037】
以上のように、冷媒循環量が不足した場合、運転停止状態の室内ユニットB3~Bnの電動膨張弁41を全閉状態から開き、しかもその開度Qiを一定時間tsごとに徐々に増していくことにより、室内ユニットB3~Bnの室内熱交換器42に溜まり込んでいた寝込み冷媒の流出が徐々に促進される。この流出により、液側渡り配管31および液側配管8,7における冷媒の気液二相状態が徐々に解消される。
【0038】
気液二相状態の冷媒が室外熱交換器5に流入しなくなれば、室外熱交換器5における冷媒の過熱度SHの不要な上昇を防ぐことができ、よって過熱度制御による電動膨張弁7の開度Qoの不要な増加を防ぐことができる。これに伴い、圧縮機1に吸込まれる冷媒の温度TSの不要な上昇を回避することができ、ひいては圧縮機1から吐出される冷媒の温度TD(および圧力PD)の不要な上昇を回避することができ、よって高圧保護制御によるインバータ18の出力周波数Fの不要な低下を回避することができる。結果として、運転状態の室内ユニットにおける暖房能力の不要な低下を防ぐことができる。
【0039】
電動膨張弁41の開度Qiを一気に大きく増大すると、運転停止状態の室内ユニットB3~Bnに多量の冷媒が一気に流入してしまうが、電動膨張弁41の開度Qiを一定時間tsごとに徐々に増すので、運転停止状態の室内ユニットB3~Bnに多量の冷媒が一気に流入しなくなり、よってヒートポンプ式冷凍サイクルの安定した効率のよい省エネルギー運転が可能となる。
【0040】
[変形例]
上記実施形態では、凝縮温度TGの値に対する冷媒温度TLの値の割合を冷媒循環量の不足率X(%)として検出したが、それに限らず、要は、凝縮温度TG、蒸発温度TU、冷媒温度TC2、冷媒温度TLのうち、いずれか1つまたは複数の要素を用いて検出すればよい。
【0041】
不足率X(%)は反対の概念の充足率Y(%)として見ることもできるので、不足率X(%)とは反対の概念の充足率Y(%)を検出してもよい。充足率Y(%)は、冷媒循環量の不足分が多いほど0%に近づく値となり、冷媒循環量の不足分が少ないほど100%に近づく値となる。すなわち、不足率X=0%は充足率Y=100%、不足率X=50%は充足率Y=50%、不足率X=100%は充足率Y=0%である。
【0042】
上記実施形態では、冷媒循環量の不足率Xが閾値Xs以上で、かつ電動膨張弁7の開度Qoが設定値Qos以上の場合に、電動膨張弁41の開度Qiを徐々に増す制御を開始したが、電動膨張弁7の開度Qoが設定値Qos以上という条件については省略し、冷媒循環量の不足率Xが閾値Xs以上であれば、直ちに、電動膨張弁41の開度Qiを徐々に増す制御を開始してもよい。
【0043】
その他、上記各実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
A…室外ユニット、B1~Bn…室内ユニット、1…圧縮機、3…四方弁、5…室外熱交換器、7…電動膨張弁、16…室外ファン、18…インバータ、20…室外コントローラ、41…電動膨張弁、42…室内熱交換器、43…室内ファン、45…室内コントローラ、46…操作器
図1
図2
図3