IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三生国健薬業(上海)股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7047128ヒトIL-4Rに結合する抗体、その製造方法と治療薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ヒトIL-4Rに結合する抗体、その製造方法と治療薬
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220328BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220328BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220328BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220328BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220328BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/04
A61P11/02
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P43/00 111
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020557997
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2019101628
(87)【国際公開番号】W WO2020048312
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】201811023880.9
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510277073
【氏名又は名称】三生国健薬業(上海)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE GUOJIAN PHARMACEUT ICAL(SHANGHAI)CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】趙▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】蒋良豊
(72)【発明者】
【氏名】陳臣
(72)【発明者】
【氏名】呉恵玲
(72)【発明者】
【氏名】黄玉平
(72)【発明者】
【氏名】黄浩旻
(72)【発明者】
【氏名】朱禎平
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108409860(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0189178(US,A1)
【文献】WHO Drug Information,2013年,Vol.27, No.3, pp.275-321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
a)重鎖相補性決定領域としてアミノ酸配列がSEQ ID NO:6で表されるHCDR1、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表されるHCDR2及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表されるHCDR3と、
b)軽鎖相補性決定領域としてアミノ酸配列がSEQ ID NO:9で表されるLCDR1、アミノ酸配列がSEQ ID NO:10で表されるLCDR2及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表されるLCDR3と
を含むことを特徴とする、ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項2に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体は、マウス由来の抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体は、IgG1型の抗体又はIgG4型の抗体である、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、一本鎖抗体らなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片は、IL-4とIL-4Rの相互作用を遮断可能である、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記ヒトIL-4Rに結合する結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:3で表され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:5で表され、若しくは重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:15で表される、請求項1に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記ヒトIL-4Rに結合する結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:16で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表され、若しくは重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:17で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表され、若しくは重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表される、請求項8に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記ヒトIL-4Rに結合する結合抗体又はその抗原結合断片は、Fcフラグメントを含み、前記Fcフラグメントは、変異サイトとしてS267EおよびL328Fを含む、請求項1~9の何れか1項に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
単離されたヌクレオチドであって、
前記請求項1~10の何れか1項に記載のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド。
【請求項12】
前記ヌクレオチドは、SEQ ID NO:2で表され且つ重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びSEQ ID NO:4で表され且つ軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を有し、若しくはSEQ ID NO:12で表され且つ重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びSEQ ID NO:14で表され且つ軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項11に記載のヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のヌクレオチドを含んでなることを特徴とする、発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含んでなることを特徴とする、ホスト細胞。
【請求項15】
請求項1~10の何れか1項に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合
断片を製造する方法であって、
発現条件下で前記請求項14に記載のホスト細胞を培養することにより、前記ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片を発現するステップaと、
ステップaで発現したヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を分離精製するステップbと、を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
請求項1~10の何れか1項に記載ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなることを特徴とする、薬物組成物。
【請求項17】
請求項1~10の何れか1項に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片または請求項16に記載の薬物組成物の、IL-4R過剰発現に起因する疾患の治療薬
【請求項18】
前記IL-4R過剰発現に起因する疾患は、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー反応、好酸球性食道炎、皮膚感染症または鼻ポリープである、請求項17に記載の治療薬
【請求項19】
請求項1~10の何れか1項に記載のヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片の活性を高める方法であって、
前記ヒトIL-4Rに結合する抗体又はその抗原結合断片は、Fcフラグメントを含み、前記Fcフラグメントは、変異サイトとしてS267EおよびL328Fを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体工学の分野に属し、より具体的にはヒトIL-4Rに結合する抗体、その製造方法と治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-4受容体(interleukin-4 receptor,IL-4R)は、α鎖およびγc鎖からなるヘテロダイマーであり、そのうちα鎖(IL-4Rα)はインターロイキン-4(IL-4)に特異的に結合し、そしてγc鎖と三元複合体を形成してIL-4による増殖促進および遺伝子転写活性化の信号を伝達する。インターロイキン-13受容体(interleukin-13 receptor,IL-13R)は、IL-13Rα1鎖およびIL-4Rα鎖からなるヘテロダイマーであり、そのうちIL-13Rα1はインターロイキン-13に特異的に結合し、そしてIL-4Rα鎖と三元複合体を形成してIL-13による増殖促進および遺伝子転写活性化の信号を伝達する。IL-4及びIL-13は、例えばアレルギー性皮膚炎や喘息など、アレルギー症の病態機構において重要な役割を果たす。
【0003】
現在市販のデュピルマブ(Dupilumab、商品名:DUPIXENT)注射液は、IL-4Rα鎖を標的とするモノクローナル抗体薬品であり、リジェネロン社(Regeneron Pharmaceuticals)とサノフィ・アベンティス社(Sanofi-aventis)が共同開発したものである。デュピルマブは、完全ヒトIgG4型のモノクローナル抗体であり、分子量が約147kDaであり、IL-4及びIL-13受容体複合体が何れも認識しうるIL-4Rαサブユニットに特異的に結合することにより、IL-4およびIL-13サイトカインを介した炎症反応を抑制することができる。デュピルマブは、それぞれ2017年3月28日、2017年9月27日および2018年1月19日付で米国FDA、欧州EMA及び日本PMDAにより販売が認められ、適応症として局部治療で制御不能又は効果不十分な中程度から重度のアトピー性皮膚炎を持つ成人患者を治療するために用いられ、局部治療でコルチコステロイドとの併用については特に制限がない。
【0004】
近頃の2つの第III相試験(Castro M,Corren J,Pavord I D,et al.Dupilumab efficacy and safety in moderate-to-severe uncontrolled asthma[J].New England Journal of Medicine,2018;378:2486-2496,DOI:10.1056/NEJMoa1804092)から、プラセボを投与した対照組の患者に比べ、デュピルマブ治療を受けた患者が重度喘息の悪化率が著しく低下し、同時に肺機能および喘息に対する制御がより優れ、かつ好酸性顆粒球レベルが高い患者に対してより優れた効果を示すことが実証された。これらの治験結果に鑑み、デュピルマブを中程度から重度の喘息を患う成人患者および青少年(12歳以上)の追加維持治療に用いる一部変更承認申請(sBLA)がアメリカ食品医薬品局(FDA)によって認められた。
【0005】
現在、デュピルマブはFDAからアトピー性皮膚炎の治療用で市販許可を取得し、後には中程度から重度の喘息の治療用で承認が得られる見通しもある。ところが、新規でありながら特異性が高く、かつ優れた効果を示すIL-4Rαを標的とする薬品に対して依然として期待が高く、同類薬品に対する国内市場の需要を満たし、アレルギー性自己免疫疾患を持つ患者の生活品質を高め、患者の需要に対応できるようにすることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術課題を解決するため、本発明者は、抗原免疫からハイブリドーマの選別、抗体の発現と精製、生物活性の同定に至るまで鋭意研究を重ねることによりヒトIL-4Rに特異的に結合するマウス由来4-2号抗体を選別して取得し、さらに該にマウス由来の抗体基づきキメラ抗体4-2-Chimeric-IgG1、ヒト化抗体4-2-Humanized-IgG1及び4-2-Humanized-IgG4を構築した。また、実験結果からキメラ抗体4-2-Chimeric-IgG1、ヒト化抗体4-2-Humanized-IgG1及び4-2-Humanized-IgG4がIL-4とIL-4Rの相互作用を効果的に遮断し、かつIL-4が誘導するTF-1細胞増殖、ヒト末梢血単核球(PBMC)のCD23発現およびIgE分泌を阻害する活性を有することが実証された。このことから、本発明に係るヒトIL-4Rに結合する抗体(以下、「ヒトIL-4Rの結合抗体」とも称する)がIL-4R過剰発現患者を治療するための薬品製造に有用であると考えられる
【0007】
また、抗体エピトープの解析から、本発明の抗体がIL-4Rα細胞外領域におけるアミノ酸残基L39、F41、L42、L43、D72及びY74に特異的に結合することが実証された。
【0008】
そこで、本発明の第1側面では、ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
本発明の第2側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片をコードする単離されたヌクレオチドを提供する。
【0010】
本発明の第3側面では、上記ヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0011】
本発明の第4側面では、上記発現ベクターを含むホスト細胞を提供する。
【0012】
本発明の第5側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第6側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を含む薬物組成物を提供する。
【0014】
本発明の第7側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片、又は上記薬物組成物の用途を提供する。
【0015】
本発明の第8側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片の活性を高める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第1側面では、ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、
a)重鎖相補性決定領域としてアミノ酸配列がSEQ ID NO:6で表されるHCDR1、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表されるHCDR2及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表されるHCDR3と、
b)軽鎖相補性決定領域としてアミノ酸配列がSEQ ID NO:9で表されるLCDR1、アミノ酸配列がSEQ ID NO:10で表されるLCDR2及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:11で表されるLCDR3と、を含む。
【0017】
本発明によれば、上記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。好ましくは、上記抗体はモノクローナル抗体である。
【0018】
本発明によれば、上記抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体などである。
【0019】
本発明によれば、上記抗体は、IgG1型の抗体又はIgG4型の抗体である。
【0020】
本発明によれば、上記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、一本鎖抗体(scFv)及びシングルドメイン抗体(sdAb)などから選ばれる。
【0021】
本発明によれば、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、IL-4とIL-4Rの相互作用を遮断することができる。
【0022】
本発明の一好適な実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域のアミノ酸配列がEQ ID NO:3で表される、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:5で表される。本発明のもう1つの好適は実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:15で表される。
【0023】
本発明の一好適な実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:16で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表される。本発明のもう1つの好適は実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:17で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表される。本発明のもう1つの好適は実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表される。
【0024】
本発明の一好適な実施形態では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、Fcフラグメントを含み、上記Fcフラグメントは、変異サイトとしてS267E及びL328Fを含む。
【0025】
本発明の第2側面では、単離されたヌクレオチドを提供し、上記ヌクレオチドは、上記何れか1項に記載のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片をコードする。
【0026】
本発明の一好適な実施形態では、上記ヌクレオチドは、SEQ ID NO:2で表されて重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びSEQ ID NO:4で表されて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を有する。本発明のもう1つの好適は実施形態では、上記ヌクレオチドは、SEQ ID NO:12で表されて重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びSEQ ID NO:14で表されて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0027】
本発明の第3側面では、上記何れか1項に記載のヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0028】
本発明の第4側面では、上記発現ベクターを含むホスト細胞を提供する。
【0029】
本発明の第5側面では、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を製造する方法を提供し、前記方法は、発現条件下で上記ホスト細胞を培養することにより、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を発現するステップaと、ステップaで発現したヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を分離精製するステップbと、を含む。
【0030】
本発明の第6側面では、上記何れか1項に記載のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容可能な担体を含む薬物組成物を提供する。
【0031】
本発明の第7側面では、上記何れか1項に記載のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片又は上記薬物組成物の、IL-4R過剰発現に起因する疾患を治療するための薬物製造における使用を提供する。
【0032】
さらに、本発明は、IL-4R過剰発現に起因する疾患を治療する方法を提供し、該治療方法は、本発明に係るヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片、または上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を含む薬物組成物を患者に投与することを含む。
【0033】
さらに、本発明は、IL-4R過剰発現に起因する疾患を治療するための抗体又はその抗原結合断片、または上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片を含む薬物組成物を提供する。
【0034】
本発明の一好適な実施形態では、上記IL-4R過剰発現に起因する疾患としては、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー反応、好酸球性食道炎、皮膚感染症および鼻ポリープなどが挙げられる。
【0035】
本発明の第8側面では、上記何れか1項に記載のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片の活性を高める方法を提供し、上記ヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、変異サイトとしてS267E及びL328Fを含むことを特徴とするFcフラグメントを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明において一連のヒトIL-4Rの結合抗体を製造し、これらの抗体は、可変領域が同じであるが定常領域が異なり、可変領域はヒトIL-4Rに特異的に結合可能であり、定常領域は独特の作用機能を利用することにより抗体全体の活性に影響を与える。本発明に係る抗体は、IL-4R過剰発現に起因する疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、喘息など)を治療するための薬物製造に有用であり、臨床で応用価値が高く実用化が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対するIL-4R-ECD-hFcおよびIL-4R-ECD-FLAGの阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果を示す図である。
図2】IL-4R抗原に対する精製されたマウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の相対結合親和性を、ELISAで測定したときの結果を示す図である。
図3】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する精製されたマウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果を示す図である。
図4】IL-4R抗原に対する4-2-Chimeric-IgG1及び4-2-Humanized-IgG1の相対結合親和性を、ELISAで測定したときの結果を示す図である。
図5】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Chimeric-IgG1及び4-2-Humanized-IgG1の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果を示す図である。
図6】IL-13が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Chimeric-IgG1及び4-2-Humanized-IgG1の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果を示す図である。
図7-1】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Humanized-IgG1及び4-2-Humanized-IgG4の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図7-2】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Humanized-IgG1及び4-2-Humanized-IgG4の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図7-3】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Humanized-IgG1及び4-2-Humanized-IgG4の阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図8】IL-4とIL-4Rの相互作用に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害活性を、ELISAで測定したときの結果を示す図である。
図9】IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4、4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、TF-1細胞を用いて測定したときの結果を示す図である。
図10-1】IL-4が誘導するPBMCのCD23発現に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、PBMCを用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図10-2】IL-4が誘導するPBMCのCD23発現に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、PBMCを用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図10-3】IL-4が誘導するPBMCのCD23発現に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、PBMCを用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図11-1】IL-4が誘導するPBMCのIgE分泌に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、PBMCを用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図11-2】IL-4が誘導するPBMCのIgE分泌に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4及び4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を、PBMCを用いて測定したときの結果をそれぞれ示す。
図12】4-2-Humanized-IgG4の薬物動態特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明において、「抗体(Ab)」および「免疫グロブリンG(IgG)」とは、同じ構造特徴を有する約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)とで構成される。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合を介して重鎖に結合し、異なる免疫グロブリンにとって同型重鎖のジスルフィド結合数が異なる。各重鎖および軽鎖は、規則的な間隔で鎖内ジスルフィド結合を有し、重鎖の一端に可変領域(VH)を有し、可変領域に続いて定常領域を有する。各軽鎖の一端に可変領域(VL)を有し、他端に定常領域を有し、軽鎖の定常領域と重鎖の第1定常領域が対向し、かつ軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が対向して構成される。また、本発明の抗体としては、マウス由来の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などが挙げられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2種類の抗体からなる多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体の抗原結合断片などが含まれる。
【0039】
本発明において、「モノクローナル抗体」とは、基本的に均一である群から得られる抗体を指し、すなわち極一部が自然変異を形成する以外、該群に含まれる単一抗体が同じである。モノクローナル抗体は、1つの抗原サイトを高い特異性で認識して結合する。そして、通常のポリクローナル抗体製剤(通常、異なる決定基を認識する複数種類の抗体を含む)と異なり、各モノクローナル抗体は、抗原の単一決定基を認識して結合する。こうした特異性以外でも、モノクローナル抗体の利点としてはハイブリドーマを培養することにより得られ、他の免疫グロブリンによって汚染されないことが挙げられる。また、「モノクローナル」とは抗体の特性を指し、すなわちほぼ均一な抗体群から得られ、何ら特別な方法で製造されたものと解釈してはいけない。
【0040】
本発明において、「マウス由来の抗体」とはラットやモウス由来の抗体を指し、マウス由来の抗体が好ましい。本発明に係るマウス由来の抗体は、ヒトIL-4Rの細胞外領域を抗原としてマウスを免疫し、ハイブリドーマ細胞を選別して得られたものである。好ましくは、本発明のマウス由来の抗体は、4-2号抗体である。
【0041】
本発明において、「キメラ抗体」とは、ある種に由来の重鎖および軽鎖の可変領域配列と、別の種に由来の定常領域配列とを含む抗体を指し、例えば、ヒト定常領域と連結したマウス重鎖および軽鎖の可変領域を備える抗体が挙げられる。好ましくは、本発明のキメラ抗体は、マウス由来の抗体4-2号抗体の重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列と、ヒト定常領域とを繋ぐことで得られる。より好ましくは、本発明のキメラ抗体としては、重鎖がマウス由来の抗体4-2号抗体の重鎖可変領域配列とヒトIgG1又はIgG4(S228P)定常領域を繋ぐことで得られ、軽鎖がマウス由来の抗体4-2号抗体の軽鎖可変領域配列とヒトkappa鎖を繋ぐことで得られる。より好ましくは、本発明のキメラ抗体は、4-2-Chimeric-IgG1である。
【0042】
本発明において、「ヒト化抗体」とは、CDRがヒト以外の動物(例えば、マウス)の抗体から得られ、抗体分子においてCDR以外の部分(フレームワーク領域および定常領域を含む)がヒト抗体から得られるものを指す。なお、フレームワーク領域のアミノ酸残基については、結合性が維持できる限り種々の変更を加えることができる。好ましくは、本発明のヒト化抗体は、マウス由来の抗体である4-2号抗体のCDR領域とヒト由来の抗体の非CDR領域を組み合せ、さらに埋込み残基、CDR領域に直接作用する残基、並びに4-2号抗体のVLとVHの空間構造に対して重要な影響を与える残基に対して復帰変異を導入することで得られる。より好ましくは、本発明のヒト化抗体は、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4である。
【0043】
本発明において、「結合」、「特異的結合」および「特異的に結合する」とは、分子同士の規則的な結合反応を指すものであり、例えば抗体とそれに対等する抗原との反応が挙げられる。抗体は、通常であれば約10-5M未満の解離定数(KD)で、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mや10-10M、又はそれ以下の解離定数(KD)でそれに対等する抗原に結合することができる。
【0044】
本発明において、「KD」とは特定抗体と抗原が相互作用するときの解離定数を指し、抗体と抗原の結合親合力を意味するものである。解離定数が低いほど,抗体と抗原の結合が強く、抗体と抗原の親合力が高くなる。抗体は、通常であれば以約10-5M未満の解離定数で、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M又は或それ以下の解離定数で抗原(例えば、IL-4Rタンパク質)に結合することができ、解離定数としては、例えば表面プラズモン共鳴法(SPR)を利用してBIACORE測定装置で測定することができる。
【0045】
本発明において、「抗原結合断片」とは、ヒトIL-4Rのエピトープに特異的に結合しうる抗体断片を指す。本発明の抗原結合断片としは、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、一本鎖抗体(scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)などが挙げられる。Fab断片は、抗体をパパインで消化して得られ、F(ab’)2断片は、抗体をペプシンで消化して得られる。Fv断片は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域が非共有結合を介して緊密に連結したダイマーである。一本鎖抗体(scFv)は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を15~20個のアミノ酸からなるペプチドリンカー(linker)で連結した抗体である。シングルドメイン抗体(sdAb)は重鎖のみで形成され、ナノ抗体(nanobody)又は重鎖抗体とも呼ばれ、その抗原結合領域はヒンジ領域を介してFc領域に連結したシングルドメインである。
【0046】
本発明において、「可変」とは、抗体可変領域の一部に配列上差異があり、特定抗原に対する各抗体の結合性や特異性を決定する構成である。しかしながら、可変度は、抗体可変領域全体に渡って均一に分布せず、軽鎖および重鎖の可変領域における相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と称される3つのフラグメントに集中して存在する。可変領域で保存性が比較的高い部分は、フレームワーク領域(以下、「FR領域」とも称する)と称される。天然重鎖および軽鎖の可変領域にそれぞれ4つのFR領域を含み、これらのFR領域はp折り畳み構造を形成し、接続リングを形成する3つのCDRによって互いに連結され、ある状況では部分的なp折り畳み構造を形成することができる。各鎖のCDRは、FR領域を介して緊密に隣接し、かつ他鎖のCDRと共同で抗体の抗原結合サイトを形成する[Kabat等,NIH Publ.No.91-3242、第I巻647-669頁(1991)]。定常領域は、抗体と抗原の結合に直接に関与せず、例えば抗体依存性細胞介在性の細胞毒性(ADCC,antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity )などの他の生体作用機序を示す。
【0047】
本発明において、「Fcフラグメント」とは、パパインで抗体を2つの完全に一致したFabフラグメントと一Fcフラグメントに分解したものを指し、Fcフラグメントが所謂結晶性フラグメント(fragment crystallizable,Fc)であり、抗体のCH2およびCH3構造領域で構成される。Fcフラグメントは、抗原への結合活性がなく、抗体とエフェクター分子又は細胞が互いに作用する部分である。
【0048】
本発明において、「ヒトIL-4Rの結合抗体」又は「抗ヒトIL-4R抗体」とは、ヒトIL-4Rに特異的に結合する抗体を指す。好ましくは、前記ヒトIL-4Rは、ヒトIL-4Rの細胞外領域である。より好ましくは、前記ヒトIL-4Rの細胞外領域は、SEQ ID NO:1で表されるアミノ酸配列を有する。また、本発明のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片は、IL-4とIL-4Rの相互作用に対して阻害活性を示すことが好ましい。
【0049】
本発明において、発現ベクターについては特に制限がなく、例えばpTT5、pSECtag系、pCDNA系ベクター及び他の哺乳動物発現系に用いるベクターなどを使用することができ、発現ベクターには、適切な転写および翻訳調節配列が連結された融合DNA配列が含まれる。
【0050】
本発明に適用可能なホスト細胞として、上記発現ベクターを発現しうる細胞が挙げられ、例えば、哺乳類動物や昆虫ホスト細胞培養系を利用して本発明の融合タンパク質を発現してもよく、CHO(Chinese Hamster Ovary)、HEK293、COS、BHKなどの真核細胞も本発明に利用可能である。
【0051】
本発明において、「薬物組成物」とは、本発明のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容可能な担体とからなる薬物製剤を指し、本発明に係る薬物組成物は、安定な治療効果を確保することができ、同時に本発明のヒトIL-4Rの結合抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸コア配列の構造完全性を維持することができ、さらにタンパク質の多官能基が分解(例えば、凝集、脱アミノ化や酸化)から免れるようにすることができる。
【0052】
本発明において、「IL-4R過剰発現に起因する疾患」とは、異常病態の細胞におけるIL-4R発現レベルが同じ組織の正常細胞におけるIL-4R発現レベルを越えることを意味する。本発明のIL-4R過剰発現に起因する疾患については特に制限がないが、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー反応、好酸球性食道炎、皮膚感染症、鼻ポリープなどが挙げられる。
【0053】
以下、実施例、実験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例、実験例に制限されない。以下において、ベクター及びプラスミドの構築方法、タンパク質をコードする遺伝子を前記ベクターやプラスミドに導入する方法や、プラスミドをホスト細胞に導入する方法など、従来より周知の操作方法については説明を省略する。これらの操作は当業者が熟知し、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniais,T.(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Laboratory Pressなどの出版物に詳細な説明がある。
【0054】
実施例1:マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の選別と調製
1.1、IL-4R抗原及び陽性対照物抗体デュピルマブの調製
抗原としてヒトIL-4Rα細胞外領域(IL-4R-ECD)の配列は、http://www.uniprot.orgに登録されているものを使い、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1で表される。該アミノ酸配列については、コドンを最適化した後に全遺伝子を合成して原核発現ベクターに導入した。組換えPCR法を利用してIL-4R-ECDコーディング領域の末端に1つのhFc(IgG1)又はFLAGタグを付け、そしてpTT5一過性発現ベクター(NRC biotechnology Research Institute社製)に導入した。標準手順に従って上記ベクターをHEK293細胞(NRC biotechnology Research Institute社製)に導入し、Freestyle 293発現培地(Gibco社製)で5日間培養した後、上澄み液からIL-4R-ECD-hFc及びIL-4R-ECD-FLAG抗原を分離精製した。そして、protein A及びanti-FLAGカラムを用いて上記抗原を精製した。
【0055】
陽性対照物抗体であるデュピルマブの重鎖および軽鎖配列は、WHO Drug Information(2013,27(3):284-285)に記載され、該抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の遺伝子を合成し、それぞれヒト重鎖IgG4(S228P)および軽鎖Kappa定常領域と組み合せた後、pTT5一過性発現ベクターに導入してHEK293E系で発現し、Protein Aカラムで精製した。
【0056】
上記タンパク質を精製し、TF-1細胞を用いてIL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対するIL-4R-ECD-hFc、IL-4R-ECD-FLAGおよびデュピルマブの阻害作用を測定した。具体的には、対数増殖期のTF-1細胞(ATCC社製)を37℃に予め加温したRPMI1640完全培地(Gibco社製のRPMI1640基本培地に10%のウシ胎児血清を含む)で2回洗い、1000rpm、5分間遠心した。TF-1細胞数を計測し、RPMI1640完全培地で適切な密度に調整して10000個/150μl/ウェルの量で96ウェルプレートに播種した。RPMI1640完全培地にIL-4(R&D systems社製)を濃度が80ng/mlになるように加え、IL-4を含む培地でヒトIL-4R抗原(IL-4R-ECD-hFcおよびIL-4R-ECD-FLAG)および陽性対照物抗体であるデュピルマブを適宜希釈した後、適切な倍率で9つの濃度勾配を希釈した。そして、希釈済みの抗原と抗体を96ウェル細胞培養用プレートに各ウェル当たり50μlずつ注入し、さらに96ウェルプレートの周囲に200μl/ウェルの蒸留水を補充し、37℃、5%のCO条件のインキュベータで4日間培養した。4日後、96ウェルプレートの各ウェルに20μlのCCK-8(Dojindo社製)溶液を加え、37℃のインキュベータで引続き8時間培養した。十分振り混ぜてからプレートリーダー(SpectraMax 190,Molecular Devices社製)でOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析し、用量反応曲線を作成してIC50を算出した。
【0057】
図1に示すように、IL-4R-ECD-hFc、IL-4R-ECD-FLAGおよびデュピルマブは何れもIL-4が誘導するTF-1細胞増殖を効果的に阻害することができ、IC50はそれぞれ280.2ng/ml、315.1ng/mlおよび502.8ng/mlであった。
【0058】
1.2、抗原によるマウス免疫
実施例1.1で調製したIL-4R-ECD-hFc抗原を生理食塩水で適切な濃度に希釈した後、同量のフロイント完全アジュバントと混ぜ合わせ、超音波で完全に乳化してから4~5週齢のBalb/cマウス(上海霊暢バイオテック社製、動物製造許可証番号:SCXK(滬)2013-0018)に1匹ごとに50μg抗原/100μl、皮下数箇所に注射した。3週間後、タンパク質とフロイント不完全アジュバントを同量で混ぜ合わせて超音波で完全に乳化し、マウス皮下の数箇所に注射して免疫を行い、2週間後に再び同じ免疫操作を繰り返した。3回目免疫が終わってから7日目にマウスから採血し、血清を分離してELISA法で血清抗体価を測定した。血清抗体価が100000を越えるマウスについては、抗体価を測定して1週間後に抗原タンパク質10μgを生理食塩水100μLに溶かしたものを尾静脈注射で補足免疫を行った。
【0059】
血清抗体価は、ELISA法を用いて測定した。具体的には、炭酸ナトリウム緩衝液(1.59gのNaCO、2.93gのNaHCOを純水1Lに溶かしたもの)を用いてIL-4R-ECD-hFcを1000ng/mlに希釈し、ELISAプレートの各ウェルに100μlずつ分注した。室温で4時間インキュベートし、0.05%のTween-20を含むPBST緩衝液(0.2gのKHPO、2.9gのNaHPO・12HO、8.0gのNaCl、0.2gのKClおよび0.5mlのTween-20を純水1000mlに調製したもの)でプレートを洗い流した。ウェルを1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSTでブロッキングし、PBSTで洗い流してから段階的に希釈したマウス血清を入れて一定時間かけてインキュベートした。プレートをPBSTで洗い、適宜希釈したHRP標識のヒツジ抗マウス二次抗体を加えて一定時間かけてインキュベートした。プレートを洗い流して着色液[基質着色液A:酢酸ナトリウム3水和物13.6g、クエン酸1水和物1.6g、30%の過酸化水素水0.3mlを純水500mlで調製したもの、基質着色液B:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.2g、クエン酸1水和物0.95g、グリセリン50ml、TMB0.15gを純水500mlで調製したもの、使用に先立って基質着色液Aと基質着色液Bを1:1の体積比で混合]を入れて着色させ、終止液(2Mの硫酸溶液)を加えて反応を中止させた。プレートリーダーでOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析し、用量反応曲線を作成して血清抗体価を算出した。
【0060】
1.3、ハイブリドーマの調製と選別
マウスに対して補足免疫を行い、3日後に脾細胞を取って融合を行った。具体的には、成長状態が良好なハイブリドーマsp2/0細胞(中国科学院典型培養物保存委員会の細胞バンクより入手)を37℃、5%COのインキュベータで培養し、融合前日に培養液を1回変えた。融合および選別は、以下のようにして行われた。マウス脾臓を取って研磨、洗浄して細胞数を計測し、脾細胞とsp2/0細胞を2:1の割合で混ぜ合わせて1500rpm、7分間遠心した。上澄み液を取り除き、細胞を20mlの融合緩衝液(BTX社製)で洗い、1000rpm、5分間遠心し、こうした洗浄処理を3回繰り返した。細胞を融合緩衝液2mlに分散して密度が1×10個/mlになるようにし、この分散液2mlを取って電気細胞融合装置ECM2001に設置して30秒、指定条件で(AC60V,30S;DC1700V,40μS,3X;POST AC60V,3S)細胞融合を行った。融合が終わると、ゆっくりと細胞を37℃に予め加温し且つ10%血清(Gibco社製)を含むRPMI1640培地に移し、室温で引き続き60分間放置した。細胞を10個/100μl/ウェルの量で96ウェルプレートに播種し、翌日に各ウェルに2×HAT(Gibco社製)および10%血清を含むRPMI1640培地を100μl追加補充した。融合から4日目に1×HATおよび10%血清を含むRPMI1640培地を半分変え、7日目に1×HATおよび10%血清を含むRPMI1640培地を全部新しく変えた。融合から9日目にサンプルを取ってELISAで測定し、陽性ハイブリドーマを24ウェルプレートで拡大培養し、さらに有限希釈法によってサブクローン化することで目的抗体を安定に発現するハイブリドーマ株を選別し、これらのサブクローンを拡大培養し、冷凍して保存ライブラリとした。前記ハイブリドーマ細胞株を無血清培地HybriGRO SF(Corning社製)7日間培養し、Protein A/Gカラムで上澄み液からマウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体を精製した。
【0061】
IL-4R-ECD-hFcをIL-4R-ECD-FLAGに変えた以外、上記1.2の方法と同様にしてELISA法で測定を行った。
【0062】
1.4、ELISA測定
ELISA法で上記マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体とIL-4R抗原の相対結合親和性を測定した。
【0063】
炭酸ナトリウム緩衝液を用いてIL-4R-ECD-hFcを100ng/mlに希釈し、ヒトIL-4Rに結合しないマウス由来の抗体を陰性対照物とした以外、上記1.2の方法と同様にして測定を行った。図2に示すように、EC50値に基づき相対結合親和性の比較的高い抗体を選んで次の選別に用いた。
【0064】
1.5、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害効果
TF-1細胞を用いてIL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する上記マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の阻害活性を測定した。測定は、上記1.1と同様にして行った。
【0065】
図3に示すように、IC50値に基づき阻害効果が比較的強いモノクローナル抗体を選んで次の実験に用いた。
【0066】
実施例2:マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体のヒト化
2.1、マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の可変領域配列の確定
実施例1の1.4及び1.5のELISA測定結果と細胞レベルの評価実験結果に基づき、クローン番号21、31、40及び4-2を選出して候補抗体とした。Trizol(Life technologies社製)を用いて上記4つのモノクローナル抗体に対応するハイブリドーマ細胞株から全RNAを抽出し、逆転写キット(Takara社製)を用いてmRNAからcDNAを合成し、文献記載のプライマーペア(Antibody Engineering,Volume 1,Edited by Roland Kontermann and Stefan Duebel,p323)を用いてPCR法でマウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の遺伝子を増幅し、PCR産物をpMD18-Tベクターに導入して配列解析を行い、可変領域の遺伝子配列を確定した。各クローンの可変領域配列を対比解析したところ、4-2号抗体の配列がヒト化に適することが分かり、そこで4-2号クローンを最終の候補抗体とした。該4-2号クローンの配列としては、重鎖可変領域の遺伝子配列が全長360bpであり、120個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:2で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:3で表され、軽鎖可変領域の遺伝子配列が全長318bpであり、106個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:4で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:5で表される。
【0067】
2.2、マウス由来の抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体のヒト化
上記軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列を解析し、KABAT法則に従って4-2号抗体の3つの抗原相補性決定領域(CDR)および4つのフレームワーク領域(FR)を確定した。そのうち重鎖相補性決定領域のアミノ酸配列としてHCDR1がDDYIN(SEQ ID NO:6)であり、HCDR2がWIFPGNGNSYYNEKFKD(SEQ ID NO:7)であり、HCDR3がGLVRYRALFDY(SEQ ID NO:8)であり、軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列としてLCDR1がRASSSINYMH(SEQ ID NO:9)であり、LCDR2がAASNLAS(SEQ ID NO:10)であり、LCDR3がQQWSSYPIT(SEQ ID NO:11)であった。
【0068】
NCBI IgBlastを利用してヒトIgG生殖系配列(Germline)と相同性対比を行い、IGHV1-301を選んで重鎖CDR移植テンプレートとし、マウス由来の4-2号抗体の重鎖CDRをIGHV1-301のフレームワーク領域に導入することで重鎖CDR移植抗体を形成し、同時にヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGKV1-1601を選んで軽鎖CDR移植テンプレートとし、マウス由来の4-2号抗体の軽鎖CDRをIGKV1-1601のフレームワーク領域に導入することで軽鎖のCDR移植抗体を形成し、こうして得られた抗体を4-2-Graftedと定義した。さらに、一部フレームワーク領域のアミノ酸サイトに復帰変異を導入し、ここで復帰変異とは、人由来フレームワーク領域の一部アミノ酸残基をマウス由来フレームワーク領域の同一サイトのアミノ酸残基に変えることを意味する。復帰変異に際して、アミノ酸配列に対してKABAT編集を行い、サイトの位置をKABATナンバリングで表記した。重鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第48位のMをマウス由来のV、第67位のVをA、第69位のIをL、第71位のRをV、第73位のTをK、第91位のYをFにそれぞれ変えることが好ましく、軽鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第36位のFをY、第46位のSをP、第47位のLをWにそれぞれ変えることが好ましい。上記可変領域遺伝子配列は、蘇州GENEWIZ社がCricetulus griseusのコドン使用好みを参考にしてコドンを最適化して合成したものであった。以上のようにして得られたヒト化重鎖可変領域配列をヒトIgG1およびIgG4(S228P)定常領域とつなぎ、得られた遺伝子をそれぞれ4-2-Humanized-IgG1-HCおよび4-2-Humanized-IgG4-HCと命名した。また、ヒト化軽鎖可変領域をヒトKappa鎖の定常領域とつなぎ、得られた遺伝子を4-2-Humanized-LCと命名した。なお、マウス由来の重鎖可変領域配列をヒトIgG1およびIgG4(S228P)定常領域とそれぞれつなぎ、得られた遺伝子をそれぞれ4-2-Chimeric-IgG1-HCおよび4-2-Chimeric-IgG4-HCと命名し、マウス由来の軽鎖可変領域とヒトKappa鎖の定常領域とつなぎ、得られた遺伝子を4-2-Chimeric-LCと命名した。
【0069】
このように、4-2号抗体のヒト化重鎖可変領域の遺伝子配列は全長360bpであり、120個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表される。また、ヒト化軽鎖可変領域の遺伝子配列は全長318bpであり、106個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:14で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:15で表される。ヒト化重鎖可変領域をヒトIgG1定常領域とつなぎ、447個のアミノ酸残基からなる4-2-Humanized-IgG1-HC重鎖(SEQ ID NO:16)が得られ、ヒト化重鎖可変領域をヒトIgG4(S228P)定常領域とつなぎ、447個のアミノ酸残基からなる4-2-Humanized-IgG4-HC重鎖(SEQ ID NO:17)が得られた。また、軽鎖可変領域をヒトKappa定常領域とつなぎ、213個のアミノ酸残基からなる4-2-Humanized-LC軽鎖(SEQ ID NO:18)が得られた。
【0070】
上記抗体の軽鎖および重鎖遺伝子をpTT5発現ベクターに導入し、上記軽鎖および重鎖発現ベクターを組み合せてHEK293E系に一過的に導入して抗体を発現させた。HEK293細胞は、Free Style 293発現培地で培養し、PEI法によってプラスミドを細胞に導入し、5日後に上澄み液を回収してProtein Aカラムで抗体を精製した。4-2-Humanized-IgG1-HCおよび4-2-Humanized-IgG4-HCをそれぞれ4-2-Humanized-LCと組み合せて発現することにより得られた抗体を、それぞれ4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4と命名し、なお、4-2-Chimeric-IgG1-HCを4-2-Chimeric-LCと組み合せて発現することにより得られた抗体を、4-2-Chimeric-IgG1と命名した。
【0071】
実施例3:キメラ抗体4-2-Chimeric-IgG1およびヒト化抗体4-2-Humanized-IgG1の生体活性評価
3.1、ELISA法による測定
本実施例では、ELISA法を利用して4-2-Chimeric-IgG1および4-2-Humanized-IgG1とIL-4R抗原の相対結合親和性を測定した。具体的には、IL-4R-ECD-hFcをIL-4R-ECD-FLAG(炭酸ナトリウム緩衝液でIL-4R-ECD-FLAGを100ng/mlに希釈したもの)に変え、かつHRP標識のヒツジ抗マウス二次抗体をHRP標識のヒツジ抗二次抗体に変え、ヒトIL-4Rに結合しないヒト化抗体を陰性対照物とした以外、実施例1の1.2と同様にして測定した。
【0072】
図4に示すように、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Chimeric-IgG1およびデュピルマブは、何れも抗原IL-4R-ECD-FLAGに効率よく結合することができ、EC50がそれぞれ12.39ng/ml、11.81ng/mlおよび12.52ng/mlであった。
【0073】
3.2、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害効果
TF-1細胞を用い、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Chimeric-IgG1および4-2-Humanized-IgG1の阻害活性を測定した。 測定は、IL-4を含まないがヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陰性対照物とし、IL-4を含み且つヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陽性対照物とした以外、実施例1の1.1と同様であった。
【0074】
図5に示すように、デュピルマブ、4-2-Chimeric-IgG1および4-2-Humanized-IgG1は、何れもIL-4が誘導するTF-1細胞増殖を効果的に抑制することができ、IC50がそれぞれ289.4ng/ml、225.2ng/mlおよび207.4ng/mlであった。
【0075】
3.3、IL-13が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害効果
TF-1細胞を用い、IL-13が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Chimeric-IgG1および4-2-Humanized-IgG1の阻害活性を測定した。
【0076】
具体的には、IL-4をIL-13に変え、IL-13を含まないがヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陰性対照物とし、IL-13を含み且つヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陽性対照物とした以外、実施例1の1.1と同様であった。
【0077】
図6に示すように、デュピルマブ、4-2-Chimeric-IgG1および4-2-Humanized-IgG1は、何れもIL-13が誘導するTF-1細胞増殖を効果的に抑制することができ、IC50がそれぞれ73.8ng/ml、81.6ng/mlおよび34.3ng/mlであった。
【0078】
実施例4:ヒト化抗体4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4の生体活性評価
4.1、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害効果
TF-1細胞検出するヒト化抗体4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4対IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害活性を測定した。具体的には、IL-4を含まないがヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むもの陰性対照物とし、IL-4を含み且つヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陽性対照物とした以外、実施例1の1.1と同様であった。
【0079】
図7-1に1回目の実験結果が示され、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4によってIL-4が誘導するTF-1細胞増殖が抑制されるときのIC50がそれぞれ841.6ng/ml、560.6ng/mlおよび1291ng/mlであった。図7-2に2回目の重複実験結果が示され、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4によってIL-4が誘導するTF-1細胞増殖が抑制されるときのIC50がそれぞれ616.1ng/ml、426.9ng/mlおよび1113ng/mlであった。図7-3に3回目の重複実験結果が示され、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4によってIL-4が誘導するTF-1細胞増殖が抑制されるときのIC50がそれぞれ687.1ng/ml、520.4ng/mlおよび1145ng/mlであった。
【0080】
3回独立して行われた重複実験から、生体活性が高い順で4-2-Humanized-IgG1>デュピルマブ>4-2-Humanized-IgG4であることが確認できた。3回の実験結果を統計学的に分析したところ、4-2-Humanized-IgG1とデュピルマブの間に有意差があり(P=0.026<0.05、統計法はT-testであり、P<0.05である場合に統計学的に有意差があると認められる)、生体活性において4-2-Humanized-IgG1がデュピルマブを上回ることが確認できた。
【0081】
4.2、Biacore測定
4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4とIL-4Rとの親合力については、Biacore T200(GE healthcare社製)を用いて測定した。
【0082】
具体的には、Amine Coupling Kit(GE healthcare社製)に含まれる活性化試薬EDC/NHSおよびブロッキング試薬Ethanolamineを用い、捕捉分子であるProtein A/Gを共有結合を介してチップ表面に結合させた。Biacore T200において、ProteinA/Gが結合したCM5チップを利用してIL-4R抗体を捕捉し、さらにIL-4R-ECD-FLAGを注入して結合―解離曲線を作成した。6Mの塩酸グアニジニウムからなる再生化緩衝液で洗ってからサイクリングをもう1回繰り返し、最後にBiacore T200 Evaluation Softwareを用いてデータ解析を行った。下記表1に、測定結果を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実験結果から、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4およびデュピルマブは、IL-4Rに対する親合力がそれぞれ7.17E-10、6.92E-10および6.71E-10と同等のレベルにあり、且つ4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG4がデュピルマブに比べてより迅速にIL-4Rに結合できることが確認できた。
【0085】
実施例5:ヒト化抗ヒトIL-4R抗体のSELF変異体の調製
実施例の4の4.1の実験結果が示すように、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害活性では4-2-Humanized-IgG1に比べて4-2-Humanized-IgG4のほうがやや弱く、また、実施例の4の4.2でBiacoreを用いる親合力測定の結果が示すように、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4のIL-4Rに対する親合力がほぼ同じであることから、上述のIL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害活性差が親合力と緊密な相関性がないのが分かり、実施例の4の4.1の実験で4-2-Humanized -IgG1と4-2-Humanized-IgG4との活性差が恐らく抗体Fcフラグメントの差異によるものと考えられる。
【0086】
Xencor社が提出した米国特許出願公開第20090136485A1号の記載によれば、抗体のFcフラグメント定常領域に変異としてS267E、L328F(つまり、第267位のSをE、第328位のLをFに変える)を導入するとき、FcフラグメントとCD32分子(Fc受容体分子の1つである)との相互作用を約400倍高めることができる(Chu S Y,Vostiar I,Karki S,et al.Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcγRIIb with Fc-engineered antibodies[J].Molecular immunology,2008,45(15):3926-3933.)。本発明においても変異としてS267E、L328Fを4-2-Humanized-IgG1-HCのFcフラグメントコーディング領域に導入し、これらの変異を導入した抗体重鎖遺伝子を4-2-Humanized-IgG1-HC-SELFと名づけた。そして、実施例1の1.1および実施例2の2.2と同様にして、該重鎖遺伝子と4-2-Humanized-LCを組合わせてHEK293E細胞で発現させて精製した。このようにして得られた抗体変異体を、それぞれ4-2-Humanized-IgG1-SELFと定義した。本実施例において、抗体配列のアミノ酸位置はEuコーディング法を採用し、具体的にはhttp://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.htmlを参照することができ、そのうち4-2-Humanized-IgG1-SELF抗体重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表される。
【0087】
実施例6:ヒト化抗ヒトIL-4R抗体のSELF変異体及び非SELF変異体の生体活性評価
6.1、IL-4とIL-4R相互作用に対する阻害活性
ELISA法を利用して、IL-4とIL-4Rの相互作用に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害活性を測定した。
【0088】
ヒトIL-4配列は、http://www.uniprot.orgに登録された配列を使い、アミノ酸配列がSEQ ID NO:20で表される。該アミノ酸配列については、コドンを最適化した後、全遺伝子を合成して原核クローニングベクターに導入した。組換えPCR法を利用して、ヒトIL-4コーディング領域の末端に1つのhFc(IgG1)タグを添加し、遺伝子を構築してpTT5一過性発現ベクターに導入した。標準操作手順に従って上記ベクターをHEK293細胞に導入し、Freestyle 293発現培地で培養し、5日後に上澄み液から発現したIL-4-hFcを精製した。上記抗原をprotein Aカラムを用いてそれぞれ精製し、精製済みのIL-4-hFcを測定阻害用のリガンドとした。IL-4R-ECD-hFcについては透析して濃度を確定した後、Biotin N-hydroxysuccinimide ester(Sigma社製、カタログ番号:H1759-100MG)でビオチン化することにより標識した。
【0089】
炭酸ナトリウム緩衝液を用いてIL-4-hFcを2000ng/mlに希釈し、ELISAプレートの各ウェルに100μlずつ加え、室温で4時間インキュベートした。0.05%のTween-20を含むリン酸塩緩衝液(PBST)でプレートを洗い流し、各ウェルに1%のウシ血清アルブミンを含むPBSTを加えてブローキングし、PBSTでプレートを洗い流した。PBSTでビオチン化IL-4R-ECD-hFcを終濃度が100ng/mlとなるように希釈し、この溶液で測定用抗体を適宜希釈し、96ウェルプレートにおいて希釈して濃度勾配を形成し、希釈済の抗体を、上記IL-4-hFcでコーティングしたELISAプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートをPBSTで洗い流し、1%のBSAを含むPBSTでStreptavidin-HRPを1:1000の比で希釈して1ウェル当たり100μlずつ加え、37℃、30分間インキュベートした。着色液(TMB基質溶液)を1ウェル当たり100μlずつ加え、室温で1~5分間程度インキュベートした後、各ウェルに終止液を50μlずつ加えて着色反応を停止させた。プレートリーダーでOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析し、用量反応曲線を作成してIC50を算出した。そのうち、ヒトIL-4Rに結合しないヒト化抗体を陰性対照物とした。
【0090】
図8に示すように、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG4、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG1-SELFは、何れもIL-4とIL-4Rの相互作用を効果的に阻害することができ、IC50がそれぞれ137.9ng/ml、140.3ng/ml、138.3ng/mlおよび144.1ng/mlであった。以上のことから、IL-4とIL-4Rの相互作用に対する阻害活性からしてデュピルマブ、4-2-Humanized-IgG4、4-2-Humanized-IgG1および4-2-Humanized-IgG1-SELFがほぼ同じレベルにあり、明らかな差がないのが確認できた。
【0091】
6.2、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する阻害効果
TF-1細胞を用い、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害活性を測定した。このとき、IL-4を含まないがヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陰性対照物とし、IL-4およびヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを陽性対照物とした以外、実施例1の1.1と同様にして測定を行った。
【0092】
図9に示すように、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFは、IL-4が誘導するTF-1細胞増殖を抑制するときのIC50がそれぞれ1008ng/ml、667.7ng/ml、2782ng/mlおよび291.9ng/mlであり、阻害活性が高い順からして4-2-Humanized-IgG1-SELF>4-2-Humanized-IgG1>デュピルマブ>4-2-Humanized-IgG4であった。
【0093】
6.3、IL-4が誘導するPBMCのCD23発現に対する阻害効果
IL-4は、ヒト末梢血単核球(PBMC)のCD23発現を誘導することができ、CD23は、アレルギー反応と関連性を示す低結合性のIgE受容体である。ここで、PBMCを用い、IL-4が誘導するPBMCCD23発現に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害活性を測定した。
【0094】
Histopaqueを用いてヒト全血からPBMCを分離し、細胞数を計測してからRMPI-1640完全培地(10%のウシ胎児血清を含む)で丸底の96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに2×10個細胞、150μlずつ播種した。IL-4をRMPI-1640で80ng/mlに希釈し、こうして得られた培地を用いて抗IL-4R抗体を希釈して濃度勾配を形成した。上記96ウェルプレートにRPMI-1640で濃度勾配に希釈した抗IL-4R抗体とIL-4の混合液を50μl加え、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに置いて2日間インキュベートした。2日後、PE標識のマウス抗ヒトCD23抗体で上記細胞を染色し、染色後に4%のパラホルムアルデヒドを加えて固定した。300gで遠心し、洗浄を行ってからフローサイトメータ(CytoFLEX Cytometer System、Beckman Coulter社製)でPEチャネルの蛍光強度を測定し、FCS/SSC又はCD14蛍光強度を利用して単核球を確定した。フローサイトメータ付属のソフトで実験データを処理して平均蛍光強度を算出し、測定データをGraphPad Prism6で解析し、用量反応曲線を作成してIC50を算出した。
【0095】
図10-1に、1回目実験の結果を示す。図10-1に示すように、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFは、何れもIL-4が誘導するPBMCのCD23発現を効果的に抑制することができ、IC50がそれぞれ90.91ng/ml、29.38ng/ml、232.1ng/mlおよび7.404ng/mlであった。図10-2に、2回目重複実験の結果を示す。図10-2に示すように、IL-4が誘導するPBMCのCD23発現に対するデュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFのIC50がそれぞれ20.65ng/ml、3.56ng/ml、34.00ng/mlおよび0.49ng/mlであった。2回にわたって独立して行った重複実験から、生体活性が高い順で4-2-Humanized-IgG1-SELF>4-2-Humanized-IgG1>デュピルマブ>4-2-Humanized-IgG4であることが確認でき、そのうち2回実験で使った血液は異なるドナーから集めたものであった。
【0096】
上述の実験結果を検証するため、さらにHistopaqueを用いて6名の異なるドナーの血液からPBMCを分離し、細胞数を計測してからRMPI-1640完全培地で丸底の96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに2×10個細胞ずつ播種した。そして、抗IL-4R抗体(終濃度が25ng/ml)およびIL-4(終濃度が20ng/ml)を加え、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに置いて2日間インキュベートした。2日後、上記実験方法に従ってフローサイトメータでCD23の発現状況を確認した。そのうち、陰性対照物としてIL-4を含まないがヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを使い、陽性対照物としてIL-4を含み且つヒトIL-4Rに結合しない抗体を含むものを使った。図10-3に実験結果を示す。図10-3に示すように、4-2抗体の生体活性は高い順で4-2-Humanized-IgG1-SELF>4-2-Humanized-IgG1>4-2-Humanized-IgG4であり、統計学的に有意差があった(統計法はT-testであり、P<0.05の場合、統計学的に有意差があると見なされる)。
【0097】
6.4、IL-4が誘導するPBMCのIgE分泌に対する阻害効果
IL-4は、ヒト末梢血単核球(PBMC)のIgE分泌を誘導することができ、IgE分子はアレルギー反応と緊密な関連性を示す。本実験では、PBMCを用いてIL-4が誘導するPBMCのIgE分泌に対する4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFの阻害効果を評価した。
【0098】
Histopaqueを用いてヒト全血からPBMCを分離し、細胞数を計測してからRMPI-1640完全培地(10%のウシ胎児血清を含む)で丸底の96ウェル細胞培養用プレートの各ウェルに2×10個細胞、150μlずつ播種した。IL-4をRMPI-1640で80ng/mlに希釈し、同時にデキサメタゾンを加えて終濃度が400ng/mlになるようにし、こうして得られた培地でIL-4R抗体を希釈して濃度勾配を形成した。上記96ウェルプレートに、RPMI-1640で濃度勾配を形成した抗IL-4R抗体、IL-4とデキサメタゾンノの混合溶液を50μl加え、96ウェルプレートを37℃のインキュベータに置いて14日間インキュベートした。14日後、上澄み液を取って抗ヒトIgE抗体を捕捉抗体とし、ビオチン標識の抗ヒトIgE抗体を検出抗体とし、二重抗体サンドイッチ法を利用して上澄み液におけるIgE分泌量を測定した。測定データをGraphPad Prism6で整理解析し、用量反応曲線を作成してIC50を算出した。
【0099】
図11-1に、1回目実験の結果を示す。図11-1に示すように、デュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFは、何れもIL-4が誘導するPBMCのIgE分泌を効果的に抑制することができ、IC50がそれぞれ995.7ng/ml、448.0ng/ml、1953ng/mlおよび50.85ng/mlであった。図11-2に、2回目重複実験の結果を示す。図11-2に示すように、IL-4が誘導するPBMCのIgE分泌に対するデュピルマブ、4-2-Humanized-IgG1、4-2-Humanized-IgG4および4-2-Humanized-IgG1-SELFのIC50がそれぞれ189.4ng/ml、61.34ng/ml、412.9ng/mlおよび26.61ng/mlであった。2回にわたって独立して行った重複実験から、活性が高い順で4-2-Humanized-IgG1-SELF>4-2-Humanized-IgG1>デュピルマブ>4-2-Humanized-IgG4であることが確認でき、そのうち2回実験で使った血液は異なるドナーから集めたものであった。
【0100】
実施例7:ヒト化抗ヒトIL-4R抗体の薬物動態
本実施例では、ラットを動物モデルとし、本発明に係る4-2-Humanized-IgG4を静脈注射(I.V.)にて投与する際の薬物動態を検討した。
【0101】
具体的には、体重約200gのラット4匹を1組とし、ラットに抗IL-4R抗体を静脈注射にて1mg投与した。投与後の所定時間で眼窩採血を行い、血液が自然に凝固してから遠心して血清を回収した。血清中の抗体濃度は、以下の通りにして測定した。ELISAプレートを、濃度が100ng/ml、1ウェル当たり100μlのIL-4R-ECD-FLAGでコーティングし、そして1%のBSAを含むPBSTでブローキングした。適宜希釈したラット血清を加え、一定時間かけてインキュベートした後、プレートを洗い流してHRP標識のヒツジ抗ヒト二次抗体(Sigma社製、該抗体は種交差性を考慮して吸着処理を行い、ラット由来の抗体に結合しないものである)を加え、さらに一定時間かけてインキュベートした。プレートを洗い流し、着色液を加えて反応させ、終止液を加えて反応を終止させてOD450を測定した。標準検量線を用いてOD450を抗体濃度に変換し、測定データをGraphPad Prism6で整理解析し、Phoenixソフトでラット体内における抗体薬物の半衰期を算出した。
【0102】
図12に示すように、静脈注射後の薬物動態実験結果から、4-2-Humanized-IgG4抗体は、ラット体内において陽性対照物であるデュピルマブ並みの半衰期を有し、各自の半衰期がそれぞれ282.4時間、281.6時間であることが確認できた。
【0103】
実施例8:ヒト化抗ヒトIL-4R抗体のエピトープ解析
文献報道[Zhang J L,Simeonowa I,Wang Y,et al.The high-affinity interaction of human IL-4 and the receptor α chain is constituted by two independent binding clusters[J]. Journal of molecular biology,2002,315(3):399-407.]によれば、IL-4Rαの細胞外領域(アミノ酸配列がSEQ ID NO:1で表される)においてIL-4結合に重要であるアミノ酸残基としては、F13、M14、S15、L39、F41、L42、L43、D66、D67、V68、D69、S70、D72、N73、Y74、K91、P92、S93、E94、D125、N126、Y127、L128、Y129およびY183である。本実施例では、部位特異的変異法を利用して上記アミノ酸残基をそれぞれアラニンに変え、一連のIL-4Rα変異体を構築した。HEK293E細胞で上記IL-4Rα変異体をそれぞれ発現し、ニッケルカラムで変異体を精製し、得られたIL-4Rα変異体を用い、1ウェル当たり10ngの量でプレートをコーティングした。そして、IL-4R-ECD-hFcを上記IL-4Rα変異体に変え、かつHRP標識のヒツジ抗マウス二次抗体をHRP標識のヒツジ抗ヒト二次抗体に変えた以外、実施例1の1.2と同様にELISA法を利用して各IL-4Rα変異体二対する4-2-Humanized-IgG4 (4-2-Hu-IgG4)およびデュピルマブの結合強度を測定した。測定結果は、下記表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2において、「+」とは抗体と変異体の結合が著しく低下し、野生型IL-4Rαの場合に比べてEC50の上昇が3倍以上越えること意味し、「-」とは抗体と変異体の結合が顕著な変化を示さず、野生型IL-4Rαの場合に比べてEC50の上昇が3倍未満であることを意味する。
【0106】
以上の実験結果から、3つのIL-4Rα変異体L39A、D72AおよびY74Aに対して4-2-Hu-IgG4及びデュピルマブの結合が著しくて低下し、アミノ酸残基L39、D72及びY74が4-2-Hu-IgG4、デュピルマブとIL-4Rαとの結合に必須であることが確認できた。また、4-2-Hu-IgG4の場合、3つのIL-4Rα変異体F41A、L42AおよびL43Aに対する結合が著しくて低下するが、デュピルマブの場合、IL-4Rα変異体に対する結合が顕著な変化を示さないため、3つのアミノ酸残基F41、L42およびL43が4-2-Hu-IgG4とIL-4Rαとの結合に必須であり、デュピルマブとIL-4Rαとの結合に必須でないことが確認できた。上記結果から、4-2-Hu-IgG4とデュピルマブは、異なるエピトープでIL-4Rαに結合することが実証された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12