(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220328BHJP
G06F 3/042 20060101ALI20220328BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/042 480
G06F3/01 560
(21)【出願番号】P 2020558197
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041977
(87)【国際公開番号】W WO2020110545
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018225703
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】涌田 宏
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-514681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/172623(WO,A2)
【文献】特開2002-373540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台と、
前記土台から見て第1の方向に位置し、入力操作面を有し、当該入力操作面内の操作位置の座標を検出する操作パネル部材と、
前記土台に固定され、前記操作パネル部材を振動させるアクチュエータと、
前記第1の方向から見たときに、前記アクチュエータを取り囲むN角形(Nは3以上の整数)の頂点の位置に配置され、前記操作パネル部材を前記土台に弾性的に支持するN個の弾性支持部材と、
前記アクチュエータと前記操作パネル部材との間に設けられた弾性緩衝部材と、
を有し、
前記アクチュエータと前記弾性緩衝部材とを直列結合した合成ばねのばね定数は、前記N個の弾性支持部材のばね定数に揃っていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記アクチュエータと前記弾性緩衝部材とを直列結合した合成ばねのばね定数をk
sとし、
前記N個の弾性支持部材を並列結合した合成ばねのばね定数をk
Nとしたとき、
「k
N/N≦k
s≦k
N」の関係が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
「k
N/N≦k
s≦k
N/2」の関係が成り立つことを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、圧電アクチュエータ又は磁気アクチュエータであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作パネル部材への押圧操作を検知する検知部と、
前記検知部による押圧操作の検知に応答して、前記操作パネル部材を前記押圧操作の方向と実質的に平行な方向に前記操作パネル部材を振動させる駆動信号を前記アクチュエータに供給する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
前記操作パネル部材から離間した基準面内に配置され、それぞれが前記操作パネル部材との間の距離を検出する第1のセンサ、第2のセンサ及び第3のセンサを有し、
前記制御部は、前記操作パネル部材、前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記第3のセンサからの信号を処理し、
前記操作パネル部材は、前記操作位置に加えられた荷重に応じて前記基準面に対して傾斜可能であり、
前記制御部は、前記操作パネル部材が検出した前記入力操作面内の前記操作位置の座標並びに前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記第3のセンサが検出したそれぞれの距離から前記操作位置における前記操作パネル部材の操作前後での変位量を算出することを特徴とする請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記第1のセンサは前記操作パネル部材の第1の点との間の距離を検出し、
前記第2のセンサは前記操作パネル部材の第2の点との間の距離を検出し、
前記第3のセンサは前記操作パネル部材の第3の点との間の距離を検出し、
前記制御部は、前記第1の点、前記第2の点及び前記第3の点を含む平面を特定し、前記操作パネル部材が検出した前記入力操作面内の前記操作位置の座標に対応する前記平面内の座標を特定することを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記第3のセンサが検出する距離の方向は、前記第1の方向であることを特徴とする請求項6又は7に記載の入力装置。
【請求項9】
前記操作パネル部材は、
タッチパッド部と、
前記タッチパッド部を保持する保持部と、
を有し、
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記第3のセンサは前記保持部との間の距離を検出することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項10】
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記第3のセンサはフォトセンサであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパッドのように入力操作面に触れることで入力操作が行うことができる入力装置が普及している。このような入力装置を操作したとき、操作者はスイッチ装置や可変抵抗器などを操作したときのような操作感触が得られない。そこで、操作されたときに入力操作面に振動を加えることで擬似的な操作感触が感じられる振動フィードバックを行うことができる入力装置が提案されている。
【0003】
例えば、操作面の押し下げ幅に制限がある場合であっても押し下げ操作時にクリック感を呈示することを目的として、タッチセンサとアクチュエータとの間の弾性部を設け、所定値以上の力で押し下げ操作された場合に弾性部を座屈させる入力装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-151777号公報
【文献】特開2003-177857号公報
【文献】特開2008-123429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の入力装置では、入力操作面内でのストローク感にばらつきが生じてしまう。
【0006】
本開示は、入力操作面内でのストローク感のばらつきを抑制することができる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、土台と、前記土台から見て第1の方向に位置し、入力操作面を有し、当該入力操作面内の操作位置の座標を検出する操作パネル部材と、前記土台に固定され、前記操作パネル部材を振動させるアクチュエータと、前記第1の方向から見たときに、前記アクチュエータを取り囲むN角形(Nは3以上の整数)の頂点の位置に配置され、前記操作パネル部材を前記土台に弾性的に支持するN個の弾性支持部材と、前記アクチュエータと前記操作パネル部材との間に設けられた弾性緩衝部材と、を有し、前記アクチュエータと前記弾性緩衝部材とを直列結合した合成ばねのばね定数は、前記N個の弾性支持部材のばね定数に揃っている入力装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、入力操作面内でのストローク感のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る入力装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る入力装置の構成を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る入力装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る入力装置における操作パネル部材の運動モデルを示す図である。
【
図5】
図5は、任意のXYZ座標系を示す図である。
【
図6】
図6は、XYZ直交座標系における位置関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、加えられた荷重とZ軸方向の変位量との関係の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、加えられた荷重とZ軸方向の変位量との関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、荷重の判断方法の一例における位置関係を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、荷重の判断方法の一例における線形補間を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、荷重の判断方法の一例における線形補間を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、荷重の判断方法の一例における線形補間を示す図である。
【
図11】
図11は、信号処理装置による処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
本実施形態は、アクチュエータとして圧電アクチュエータを備えた入力装置に関する。
図1は、実施形態に係る入力装置の構成を示す斜視図であり、
図2は、実施形態に係る入力装置の構成を示す上面図であり、
図3は、実施形態に係る入力装置の構成を示す断面図である。
図3は
図2中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0012】
図1~
図3に示すように、実施形態に係る入力装置100は、固定ベース110と、固定ベース110の縁上に固定されたベゼル120と、ベゼル120の内側の化粧パネル150とを有する。化粧パネル150の固定ベース110側にタッチセンサ140が設けられており、タッチセンサ140の固定ベース110側に可動ベース130が設けられている。可動ベース130は、タッチセンサ140及び化粧パネル150と平行に配置された平板部131と、平板部131の縁に設けられ、ベゼル120の内側面に沿うようにして設けられた壁部132とを有する。壁部132とベゼル120との間にはスライドガイド190が設けられている。固定ベース110は、平面視で中央に凸部111を有し、凸部111上にアクチュエータ160が固定されている。アクチュエータ160は、例えば圧電アクチュエータである。タッチセンサ140はタッチパッド部の一例であり、可動ベース130はタッチセンサ140を保持する保持部の一例であり、可動ベース130、タッチセンサ140及び化粧パネル150が操作パネル部材145に含まれる。固定ベース110は土台の一例である。アクチュエータ160は操作パネル部材145を振動させる。
【0013】
固定ベース110上に複数の反射型のフォトインタラプタ171、172、173及び174が設けられている。フォトインタラプタ171~174は、その上方の平板部131の点171A~174Aに光を照射し、平板部131により反射された光を受光して、平板部131の光が照射された部分までの距離を検出することができる。例えば、フォトインタラプタ171~174は、平面視でタッチセンサ140の四隅の内側に配置されている。従って、フォトインタラプタ171~174は、平面視で少なくとも一つの三角形を構成する。フォトインタラプタ171~174は第1~第4のセンサ(フォトセンサ)の一例であり、第1~第4のセンサ(フォトセンサ)は検知部の一例であり、固定ベース110のフォトインタラプタ171~174が設けられた面112は基準面の一例である。基準面は操作パネル部材145から離間している。本実施形態では、基準面をX軸及びY軸を含む基準平面、基準面に垂直な方向をZ軸方向(第1の方向)とする。
【0014】
平面視で平板部131の固定ベース110側の面にラバー11、12、13、14が設けられている。また、平面視で平板部131の化粧パネル150側の面にラバー21、22、23、24が設けられている。例えば、ラバー11及び21は、フォトインタラプタ171が設けられた隅に設けられ、ラバー12及び22は、フォトインタラプタ172が設けられた隅に設けられている。例えば、ラバー13及び23は、フォトインタラプタ173が設けられた隅に設けられ、ラバー14及び24は、フォトインタラプタ174が設けられた隅に設けられている。
【0015】
ラバー11~14と固定ベース110との間にラバー支持部材15が設けられている。ラバー支持部材15は固定ベース110に固定されている。ラバー11~14は、ラバー支持部材15と平板部131との間に圧縮されて挟み込まれている。従って、ラバー11~14は可動ベース130を固定ベース110から離間する方向に付勢する。
【0016】
支柱25aと、支柱25aの上端に設けられ、平板部131との間でラバー21~24を圧縮して挟み込む支持部25bとを含むラバー支持部材25が設けられている。支柱25aは固定ベース110に固定されている。従って、ラバー21~24は可動ベース130を固定ベース110に近づく方向に付勢する。
【0017】
例えば、ラバー11~14は互いに同じ材料から構成され、互いに同じ形状を有し、ラバー21~24は互いに同じ材料から構成され、互いに同じ形状を有している。従って、ラバー11及び21を直列結合した合成ばねのばね定数k31と、ラバー12及び22を直列結合した合成ばねのばね定数k32と、ラバー13及び23を直列結合した合成ばねのばね定数k33と、ラバー14及び24を直列結合した合成ばねのばね定数k34とは互いに等しい。これら4つの合成ばねを並列結合した合成ばねのばね定数の合計をk3とすると、下記の式(1)、(2)の関係が成り立つ。
【0018】
k31=k32=k33=k34 ・・・(1)
k3=k31+k32+k33+k34 ・・・(2)
【0019】
ラバー11及び21を直列結合した合成ばね、ラバー12及び22を直列結合した合成ばね、ラバー13及び23を直列結合した合成ばね、ラバー14及び24を直列結合した合成ばねは、いずれも、弾性支持部材の一例である。つまり、本実施形態は4個の弾性支持部材を含む。これら4個の弾性支持部材は、Z軸方向(第1の方向)から見たときに、アクチュエータ160を取り囲む四角形の頂点位置に配置されている。
【0020】
平板部131のアクチュエータ160に対向する部分にラバー31が設けられており、ラバー31とアクチュエータ160との間に剛性板32が設けられている。剛性板32は、アクチュエータ160のラバー31側の面に固定されており、剛性板32の弾性変形の量は、アクチュエータ160及びラバー31の弾性変形の量に対して無視し得る程度である。従って、アクチュエータ160の厚さ方向のばね定数をk1、ラバー31の厚さ方向のばね定数をk2とすると、平板部131と凸部111との間の、アクチュエータ160及びラバー31を直列結合した合成ばねのばね定数ksは、(k1×k2)/(k1+k2)である。このため、この合成ばねのばね定数ksは、アクチュエータ160のばね定数k1より小さくなる。ラバー31は、弾性緩衝部材の一例である。
【0021】
図4は、入力装置100における操作パネル部材145の運動モデルを示す図である。この運動モデルでは、ラバー11~14を並列結合した合成ばね10と、ラバー21~24を並列結合した合成ばね20とを直列結合して合成ばね40が構成されている。合成ばね40のばね定数は、ばね定数k
31~k
34を足し合わせたばね定数k
3である。
【0022】
本実施形態では、ラバー31が設けられているため、アクチュエータ160とラバー31とを直列結合した合成ばね50のばね定数ksがアクチュエータ160のばね定数k1未満である。合成ばね50のばね定数ksがアクチュエータ160のばね定数k1未満であるため、ラバー31が介在していない場合と比べて、アクチュエータ160の近傍にて操作パネル部材145が固定ベース110側に移動しやすい。
【0023】
また、本実施形態では、合成ばね50のばね定数ksがばね定数k31、k32、k33及びk34と揃っている。ただし、合成ばね50のばね定数ksがばね定数k31、k32、k33及びk34と完全に一致している必要はなく、合成ばね50のばね定数ksがばね定数k31、k32、k33及びk34と概ね一致していればよい。例えば、合成ばね50のばね定数ksは、ばね定数k31、k32、k33及びk34の平均値k3/4以上であることが好ましい。つまり、次の式(3)が成り立つことが好ましい。
【0024】
k3/4≦ks=(k1×k2)/(k1+k2) ・・・(3)
【0025】
ばね定数ksが低すぎる場合、アクチュエータ160が発生した振動が、ラバー31によって吸収されて、操作パネル部材145に伝達しにくくなる。ばね定数ksが平均値k3/4以上であれば、アクチュエータ160が発生した振動を操作パネル部材145に適切に伝達することができる。
【0026】
また、合成ばね50のばね定数ksは合成ばね40のばね定数k3以下であることが好ましい。つまり、次の式(4)が成り立つことが好ましい。
【0027】
ks=(k1×k2)/(k1+k2)≦k3 ・・・(4)
【0028】
合成ばね50のばね定数ksが合成ばね40のばね定数k3超であると、アクチュエータ160の近傍にて操作パネル部材145が固定ベース110側に移動しにくく、ストローク感にばらつきが生じやすい。このようなストローク感のばらつきをより抑制するために、より好ましくは、合成ばね50のばね定数ksは合成ばね40のばね定数k3の1/2以下である。
【0029】
更に、固定ベース110上に信号処理装置180が設けられている。信号処理装置180は、後述の処理により、タッチセンサ140の操作に応じて、アクチュエータ160を駆動させてユーザへの触覚フィードバックを行う。つまり、アクチュエータ160が、可動ベース130、タッチセンサ140及び化粧パネル150を含む操作パネル部材145を振動させ、操作パネル部材145を通じたユーザへの触覚フィードバックが行われる。信号処理装置180は、例えば半導体チップである。本実施形態では信号処理装置180が固定ベース110上に設けられているが、信号処理装置180が設けられる場所は限定されず、例えばタッチセンサ140と可動ベース130との間等に設けられていてもよい。信号処理装置180は制御部の一例である。
【0030】
このように構成された入力装置100の動作の一例では、タッチセンサ140が操作されると、その操作位置及び操作荷重に応じてアクチュエータ160がタッチセンサ140の入力操作面に垂直の方向に振動する。ユーザは、入力操作面に振動を感じることで、入力装置100等に設けられる表示装置を視認せずとも、入力装置100に対して行った操作がどのように反映されたかを認識することができる。例えば、入力装置100が自動車の各種スイッチ用にセンターコンソールに設けられる場合、運転手は入力装置100に視線を移さずとも自身が行った操作がどのように反映されたかをアクチュエータ160の振動から認識することができる。なお、アクチュエータ160は、上記の例に限らず、任意の方向の振動を発生させる構成であってもよい。
【0031】
次に、本実施形態における、タッチセンサ140に加えられた荷重の検出処理の基本的原理について説明する。本実施形態では、各フォトインタラプタ171~174により検出される平板部131までの距離及びタッチセンサ140により検出される操作位置の座標から平板部131についての平面の方程式、つまり点171A~174Aを含む平面の方程式を求め、操作位置での変位量を求める。
【0032】
ここで、平面の方程式について説明する。
図5は、任意のXYZ座標系を示す図である。XYZ座標系に3つの点a(x
a,y
a,z
a)、点b(x
b,y
b,z
b)、点c(x
c,y
c,z
c)があるとする。この場合、ベクトルac(以下、「V
ac」と表記することがある。)の成分(x
1,y
1,z
1)は(x
c-x
a,y
c-y
a,z
c-z
a)であり、ベクトルab(以下、「V
ab」と表記することがある。)の成分(x
2,y
2,z
2)は(x
b-x
a,y
b-y
a,z
b-z
a)である。従って、これらの外積(V
ac×V
ab)は(y
1z
2-z
1y
2,z
1x
2-x
1z
2,x
1y
2-y
1x
2)である。この外積は点a、点b及び点cを含む平面の法線ベクトルに相当する。このため、(y
1z
2-z
1y
2,z
1x
2-x
1z
2,x
1y
2-y
1x
2)を(p,q,r)と表すと、点a、点b及び点cを含む平面の方程式は、次の式(5)で表される。
【0033】
p(x-xa)+q(y-ya)+r(z-za)=0 ・・・(5)
【0034】
式(5)は一般式であるが、XYZ座標系として点aのX座標及びY座標が0の直交座標系を用いることで、簡略化することができる。
図6は、XYZ直交座標系における位置関係を示す図である。
図6に示すように、このXYZ直交座標系では、平面200に4つの点a(0,0,z
a)、点b(x
b,0,z
b)、点c(0,y
c,z
c)、点d(x
b,y
c,z
d)があるとする。これらのうち、例えば、点a、点b、点cの座標について下記の関係が成り立つ。
【0035】
Vac=(0,yc,zc-za)=(x1,y1,z1)
Vab=(xb,0,zb-za)=(x2,y2,z2)
Vac×Vab=(yc(zb-za),(zc-za)xb,-ycxb)=(p,q,r)
【0036】
このため、第1の点a、第2の点b及び第3の点cを含む平面200の方程式は、次の式(6)で表される。
【0037】
yc(zb-za)x+(zc-za)xby-ycxb(z-za)=0 ・・・(6)
【0038】
そして、式(6)は次の式(7)のように表すことができる。
【0039】
z=(zb-za)x/xb+(zc-za)y/yc+za ・・・(7)
【0040】
従って、任意の平面200内の3点のZ座標を第1のセンサ、第2のセンサ及び第3のセンサによって特定し、平面200内の操作位置のX座標及びY座標をタッチパッドで特定できれば、当該操作位置のZ座標を特定することができる。そして、操作前後でのZ座標の変化から当該操作位置でのZ軸方向での変位量を取得することができる。
【0041】
本実施形態では、タッチセンサ140の操作位置のX座標及びY座標はタッチセンサ140により検出できる。従って、
図6中の点eに接触があった場合、点eのX座標(x)及びY座標(y)はタッチセンサ140の出力から取得することができる。また、第1のセンサ、第2のセンサ及び第3のセンサとして点a、点b及び点cに対応するようにフォトインタラプタを配置し、点bのX座標(x
b)及び点cのY座標(y
c)を予め取得しておけば、フォトインタラプタの出力から平板部131までの距離を検出して各点のZ座標(z
a、z
b及びz
c)を取得し、式(7)から点eのZ座標(z)を取得することができる。
【0042】
すなわち、初期状態で、タッチセンサ140の平面200と、点a、点b及び点cに対応するように配置された3個のフォトインタラプタを含む平面とが平行である場合に、タッチセンサ140が押圧されて平板部131及びタッチセンサ140が傾斜した後の点eの座標を取得することができる。従って、押圧前後での点eのZ軸方向の変位量を取得することができる。初期状態で平面200と3個のフォトインタラプタを含む平面とが平行でない場合でも、同様の計算により押圧前後での点eのZ軸方向の変位量を取得することができる。
【0043】
更に、操作前後での点eのZ軸方向の変位量を用いることで、点eに加えられた荷重が所定の基準値超になっているか判断し、この判断結果に基づいて触覚フィードバックの制御を行うこともできる。すなわち、予め平面200内の複数の位置にて加えられた荷重とZ軸方向の変位量との関係を求めておき、上記の方法で取得したZ軸方向の変位量が、荷重の基準値に相当する閾値超になっているか判断し、触覚フィードバックの制御を行う。
図7A及び
図7Bは、加えられた荷重とZ軸方向の変位量との関係の一例を示す図である。
図7Aは、9個の測定点の位置を示し、
図7Bは、各測定点における変位量を示す。
【0044】
ここでは、
図7Aに示すように、格子状に配置された9個の測定点201、202、203、204、205、206、207、208及び209で、
図7Bに示すように、0gf(0N)、100gf(0.98N)、458gf(4.5N)、858gf(8.4N)の荷重での操作が行われるとする。また、458gf(4.5N)を基準値とし、458gf(4.5N)超の荷重が加えられたときに触覚フィードバックを行うこととする。なお、可動ベース130の下にアクチュエータ160等が設けられているため、測定点によって変位量が相違する。
【0045】
測定点201~209が操作された場合は、
図7A及び
図7Bに示す関係から荷重が基準値超であるか否かを判断することができる。つまり、式(7)から算出されたZ軸方向の変位量が、
図7B中の458gf(4.5N)の変位量超であれば、荷重が基準値超であると判断できる。例えば、測定点201が操作された場合は、0.15mmが変位量の閾値となり、変位量が0.15mm超であれば、荷重が触覚フィードバックを生じさせる基準値に達していると判断することができる。
【0046】
また、測定点201~209からずれた位置が操作された場合は、その周辺の測定点における変位量の閾値を用いて、荷重が基準値に達しているかを判断することができる。
図8及び
図9A~
図9Cは、荷重の判断方法の一例を示す図である。
図8に示すように、ここでは、測定点201、202、204及び205がなす四角形の内側の点210が操作されたとする。この場合、
図9Aに示すように、X軸方向に並ぶ2つの測定点202及び測定点205の間で、点210とY座標が同一の点225における変位量の閾値を、測定点202及び測定点205における各閾値から線形補間により算出する。同様に、
図9Bに示すように、X軸方向に並ぶ2つの測定点201及び測定点204の間で、点210とY座標が同一の点214における変位量の閾値を、測定点201及び測定点204における各閾値から線形補間により算出する。そして、
図9Cに示すように、点225及び点214の各閾値から点210における閾値を線形補間により算出する。その一方で、点210におけるZ軸方向の変位量は、上記の式(7)から算出することができる。従って、これらを比較することで、測定点201~209からずれた位置の点210に加えられた荷重が基準値に達しているか否かを判断することができる。
【0047】
信号処理装置180は、上記のような荷重の検出処理の基本的原理に基づいて、タッチセンサ140の操作位置に加えられた荷重が触覚フィードバックを生じさせる基準値に達しているか判断し、その結果に応じてアクチュエータ160を駆動して触覚フィードバックを生じさせる。
図10は、信号処理装置180の構成を示す図である。
【0048】
信号処理装置180は、CPU(Central Processing Unit)181、ROM(Read Only Memory)182、RAM(Random Access Memory)183及び補助記憶部184を備える。CPU181、ROM182、RAM183及び補助記憶部184は、いわゆるコンピュータを構成する。信号処理装置180の各部は、バス185を介して相互に接続されている。
【0049】
CPU181は、補助記憶部184に格納された各種プログラム(例えば、荷重判定プログラム)を実行する。
【0050】
ROM182は不揮発性の主記憶デバイスである。ROM182は、補助記憶部184に格納された各種プログラムを、CPU181が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する。具体的には、ROM182は、BIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラムなどを格納する。
【0051】
RAM183は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性の主記憶デバイスである。RAM183は、補助記憶部184に格納された各種プログラムがCPU181によって実行される際に展開される作業領域として機能する。
【0052】
補助記憶部184は、CPU181により実行される各種プログラム及び各種プログラムがCPU181によって実行されることで生成される各種データを格納する補助記憶デバイスである。
【0053】
信号処理装置180は、このようなハードウェア構成を備えており、次のような処理を行う。
図11は、信号処理装置180による処理の概要を示すフローチャートである。
【0054】
先ず、信号処理装置180はタッチセンサ140を検出する(ステップS1)。そして、タッチセンサ140に指が接触したか否かを判断し(ステップS2)、指が接触していない場合には、フォトインタラプタ171~174のドリフトをキャンセルする(ステップS3)。
【0055】
一方、タッチセンサ140に指が接触したと判断した場合は、フォトインタラプタ171~174の各々から検出信号を取得する(ステップS4)。例えば、フォトインタラプタ171~174の出力信号がアナログ信号である場合、デジタル信号への変換後の信号を取得する。
【0056】
次いで、フォトインタラプタ171~174の各検出信号から、平板部131のこれらによる検出位置でのZ軸方向の変位量Z1~Z4を計算する(ステップS5)。
【0057】
その後、4つのフォトインタラプタ171~174のうちの3つが構成する複数の三角形のうちから、1つの三角形を代表三角形として決定する(ステップS6)。例えば、代表三角形としては、タッチセンサ140の操作位置を内側に含む三角形を用いることが好ましい。すなわち、
図6において点eが触れられている場合であれば、三角形acd又は三角形acbを用いることが好ましい。操作位置とフォトインタラプタ171~174との間の距離が小さいほど高い精度が得られるためである。
【0058】
続いて、タッチセンサ140の操作位置におけるZ軸方向の変位量Zを算出する(ステップS7)。すなわち、式(7)を用いて、ステップS6で決定した代表三角形をなす3つのフォトインタラプタの検出信号から計算したZ軸方向の変位量、並びにタッチセンサ140により検出された操作位置のX座標及びY座標から、操作位置でのZ軸方向の変位量Zを算出する。
【0059】
また、
図7A及び
図7Bに示す例のような、加えられた荷重とZ軸方向の変位量との関係を予め求め、これをROM182に記憶させておき、これを読み出して、操作位置でのZ軸方向の閾値(オン閾値)Zthを算出する(ステップS8)。
【0060】
そして、変位量Zがオン閾値Zth超であるか判断し(ステップS9)、オン閾値Zth超であれば、加えられた荷重が基準値超であるとして、アクチュエータ160を駆動して触覚フィードバックを実施する(ステップS10)。
【0061】
本実施形態に係る入力装置100は、このようにして、触覚フィードバックを実施する。フォトインタラプタ171~174は平板部131の点171A~174AのZ座標を高精度で検出でき、また、タッチセンサ140は操作位置のX座標及びY座標を高精度で検出することができる。従って、上記の処理によれば、操作位置のZ座標も高精度で検出することができる。従って、例えばオン閾値Zthを数十μm程度と小さな値としても、高精度で触覚フィードバックのオン/オフの判断を行うことができる。
【0062】
本実施形態によれば、アクチュエータ160と可動ベース130との間にラバー31が設けられ、合成ばね50のばね定数ksが適切であるため、操作パネル部材145の入力操作面が押圧された時のストローク感のばらつきを抑制することができる。また、アクチュエータ160が発生した振動を可動ベース130に適切に伝達することもできる。
【0063】
なお、アクチュエータの周辺に設けられる弾性支持部材の数は3以上であれば、4に限定されない。つまり、Z軸方向(第1の方向)から見たときに、アクチュエータを取り囲むように頂点に弾性支持部材が配置される多角形の頂点の数Nは3以上であれば、4に限定されない。また、N個の弾性支持部材の間でばね定数が一致している必要はない。例えば、入力装置が自動車のセンターコンソールに設けられる場合は、コンソールの形状に適した数の弾性支持部材を用いることができ、各弾性支持部材の形状及び材料は個別に選択することができる。弾性支持部材の数をN(Nは3以上の整数)としたとき、N個の弾性支持部材を並列結合した合成ばねのばね定数をkNとすると、次の式(8)が成り立つことが好ましく、式(9)が成り立つことがより好ましい。
【0064】
kN/N≦(k1×k2)/(k1+k2)≦kN ・・・(8)
kN/N≦(k1×k2)/(k1+k2)≦kN/2 ・・・(9)
【0065】
アクチュエータは電歪効果を用いた圧電アクチュエータに限定されず、磁歪効果を用いた磁気アクチュエータであってもよい。
【0066】
また、上記の処理では、1つの代表三角形を特定し、操作位置での変位量を算出し、この変位量に基づく判断を行っているが、2つ以上の代表三角形を特定し、各代表三角形について変位量(第1変位量、第2変位量、等)を算出し、これら変位量の平均値を求め、この平均値に基づく判断を行ってもよい。このような処理によれば、より精度の高い判断を行うことができる。
【0067】
また、フォトインタラプタ171~174は平板部131に接触しないため、操作に伴うタッチセンサ140の移動に影響を及ぼさない。フォトインタラプタ171~174に代えて静電センサ等の非接触の位置検出センサを用いてもよい。また、検知部として、接触型の感圧センサ等を用いてもよい。
【0068】
本開示の入力装置は、特に自動車のセンターコンソールに設けられる入力装置に好適である。自動車の運転手は進行方向から視線を逸らすことなく、自身が行った入力操作がどのようなものであったかを入力装置からの触覚フィードバックにより確認することができる。
【0069】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0070】
本国際出願は、2018年11月30日に出願した日本国特許出願第2018-225703号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0071】
10、20、40、50 合成ばね
11~14、21~24、31 ラバー
15、25 ラバー支持部材
100 入力装置
110 固定ベース
120 ベゼル
130 可動ベース
131 平板部
132 壁部
140 タッチセンサ
145 操作パネル部材
150 化粧パネル
160 アクチュエータ
171~174 フォトインタラプタ
180 信号処理装置