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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】押出成形セメント板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220328BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/08 101U
E04F13/14 102C
E04F13/14 103E
E04F13/14 103F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021049324
(22)【出願日】2021-03-24
(62)【分割の表示】P 2020001106の分割
【原出願日】2015-08-26
(65)【公開番号】P2021101093
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(74)【代理人】
【識別番号】100143122
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 功雄
(72)【発明者】
【氏名】細田 吉大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕輔
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-007455(JP,A)
【文献】実開平01-107744(JP,U)
【文献】特開2012-130270(JP,A)
【文献】特開平05-340062(JP,A)
【文献】特開2006-214129(JP,A)
【文献】特開2005-016175(JP,A)
【文献】特開昭60-098054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に伸びる表面凹部が形成されると共に複数の中空部が一方向に並設され、当該表面凹部を水平方向に向けた状態で建物の躯体に取り付けられ、当該表面凹部内に外装部材が取り付けられる押出成形セメント板であって、
当該押出成形セメント板と前記外装部材とによって、
前記表面凹部内で当該外装部材を係止させる係止手段、及び当該表面凹部からの当該外装部材の離間を防止する第1の離間防止手段が、構成されるものであり、
前記係止手段は、前記表面凹部内に形成された上方へ突出する係止突起と、前記外装部材に形成され前記係止突起に係止する引掛凹部とからなり、
前記第1の離間防止手段は、前記表面凹部内の上部に形成された収納凹部と、前記外装部材の上部に形成され前記収納凹部に下方から収納される収納突部とからなり、
前記係止手段によって係止された状態で、前記第1の離間防止手段の収納凹部と収納突部との間に隙間が存在し、かつ当該係止手段による係止が解除された状態で当該収納凹部に当該収納突部が収納されることで、前記外装部材が前記表面凹部内で上下方向に移動可能となるものであり、
前記外装部材を当該押出成形セメント板に取り付けるときは、当該外装部材を傾けて前記収納突部を前記収納凹部に差し込み、当該収納突部を支点として、当該外装部材の下部を当該押出成形セメント板に近づけ、前記引掛凹部を前記係止突起に係止し、
前記外装部材を当該押出成形セメント板から取り外すときは、当該外装部材を傾けて下部を当該押出成形セメント板から離しつつ、傾けた当該外装部材を上方へ移動させて前記収納突部を前記収納凹部に差し込みつつ、前記引掛凹部の前記係止突起への係止を解除して、
当該押出成形セメント板に対して前記外装部材を傾けるようにして、取り付け、取り外し自在となる前記隙間が構成されるように、
前記外装部材の収納突部に対する前記収納凹部、及び前記外装部材の引掛凹部に対する前記係止突起の寸法が設定されていることを特徴とする押出成形セメント板
【請求項2】
前記第1の離間防止手段の収納凹部の断面における外側部分が、外方へ向けて広がるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の押出成形セメント板
【請求項3】
前記外装部材を前記表面凹部内で上方へ移動させて係合を解除した状態で、当該表面凹部からの当該外装部材の離間を防止する第2の離間防止手段が構成されるものであり、
この第2の離間防止手段は、前記表面凹部内に形成された下方へ開口する係止凹部と、前記外装部材に形成され当該外装部材を前記表面凹部内で上方へ移動させた状態で前記係止凹部に係止する引掛突部とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の押出成形セメント板
【請求項4】
前記表面凹部内には、前記外装部材が係止された状態で当該外装部材を下方から支持する支持部が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の押出成形セメント板
【請求項5】
前記表面凹部からの前記外装部材の離間を防止する第3の離間防止手段が構成されるものであり、
この第3の離間防止手段は、前記表面凹部内の下部に形成された上方へ向かって突出する下部突起と、前記外装部材の下部に形成され当該外装部材が係止された状態で前記下部突起へ上方から嵌められる下部凹部とからなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の押出成形セメント板
【請求項6】
前記表面凹部の横断方向における当該押出成形セメント板の外面露出幅が前記外装部材の外面露出幅と同等程度、又は異なることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の押出成形セメント板
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の躯体に取り付けられた押出成形セメント板の表面に、外装部材を取り付けるためのものであり、特に外装部材を多様な使用環境において確実に取り付けることのできる押出成形セメント板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば押出成形セメント板は軽量かつ高い強度を有していることから、建物の外壁板として広く用いられている。押出成形セメント板を用いる外壁構造では、一般に建物の躯体に下地材となるアングルを固定し、押出成形セメント板の背面に留め付けられたZクリップ等を当該アングルに係止させるようにして、押出成形セメント板を取り付けている。
【0003】
押出成形セメント板の表面に、石材やタイルなどの外装部材を取り付けることも行われている。各種の外装部材は、押出成形セメント板の表面に接着剤やモルタルで直接的に張り付けることや、取付金具で押出成形セメント板に留め付けることで取り付けられる。特許文献1には、セラミック材からなる外壁板に凹部と凸部を交互に形成し、凹部に設けた補強材を介して化粧材を当該外装板に固定する外壁構造が記載されている。特許文献2には、引っ掛け部を有する受け金具を外壁板に固定し、受け金具の引っ掛け部に外装部材を引っ掛けて固定する外壁構造が記載されている。
【0004】
特許文献3及び特許文献4のように、外壁板の表面に直接的に凸部を設け、この凸部に係合可能なタイルを引っ掛けて固定する外壁構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-200962号公報
【文献】特開2003-253848号公報
【文献】実開平3-50146号公報
【文献】実開平4-135643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載された外壁構造では、別体の補強材や受け金具を製作する必要がありコスト増となることに加え、補強材や受け金具を取り付ける手間もかかるといった欠点がある。特許文献3及び特許文献4に記載された外壁構造では、タイルを直接的に引っ掛けるだけなので取り付ける際の手間を軽減することはできる。しかし、例えば地震などでタイルと外壁とを上下方向にずらすような力が作用した場合、外壁に対してタイルが上方へ移動することでタイルが外れてしまうといった問題がある。
【0007】
そこで本発明は従来技術の問題点に鑑み、外装部材を確実に取り付けることができ、それと共にコストが抑えられ、かつ取り付け作業を軽減することができる押出成形セメント板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の押出成形セメント板は、一方向に伸びる表面凹部が形成されると共に複数の中空部が一方向に並設され、当該表面凹部を水平方向に向けた状態で建物の躯体に取り付けられ、当該表面凹部内に外装部材が取り付けられる押出成形セメント板であって、当該押出成形セメント板と前記外装部材とによって、前記表面凹部内で当該外装部材を係止させる係止手段、及び当該表面凹部からの当該外装部材の離間を防止する第1の離間防止手段が、構成されるものであり、前記係止手段は、前記表面凹部内に形成された上方へ突出する係止突起と、前記外装部材に形成され前記係止突起に係止する引掛凹部とからなり、前記第1の離間防止手段は、前記表面凹部内の上部に形成された収納凹部と、前記外装部材の上部に形成され前記収納凹部に下方から収納される収納突部とからなり、前記係止手段によって係止された状態で、前記第1の離間防止手段の収納凹部と収納突部との間に隙間が存在し、かつ当該係止手段による係止が解除された状態で当該収納凹部に当該収納突部が収納されることで、前記外装部材が前記表面凹部内で上下方向に移動可能となるものであり、前記外装部材を当該押出成形セメント板に取り付けるときは、当該外装部材を傾けて前記収納突部を前記収納凹部に差し込み、当該収納突部を支点として、当該外装部材の下部を当該押出成形セメント板に近づけ、前記引掛凹部を前記係止突起に係止し、前記外装部材を当該押出成形セメント板から取り外すときは、当該外装部材を傾けて下部を当該押出成形セメント板から離しつつ、傾けた当該外装部材を上方へ移動させて前記収納突部を前記収納凹部に差し込みつつ、前記引掛凹部の前記係止突起への係止を解除して、当該押出成形セメント板に対して前記外装部材を傾けるようにして、取り付け、取り外し自在となる前記隙間が構成されるように、前記外装部材の収納突部に対する前記収納凹部、及び前記外装部材の引掛凹部に対する前記係止突起の寸法が設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の押出成形セメント板では、押出成形セメント板の表面凹部内に形成された上方へ突出する係止突起と、外装部材に形成され係止突起に係止する引掛凹部とからなる係止手段に加え、押出成形セメント板の表面凹部内の上部に形成された収納凹部と、外装部材の上部に形成され収納凹部に下方から収納される収納突部とかなる第1の離間防止手段が構成される。つまり、外装部材は押出成形セメント板に係止するだけではなく、外装部材の上部の収納突部が押出成形セメント板の表面凹部の収納凹部に収納される。従って取り付け部品を必要とせず、外装部材を押出成形セメント板の所定箇所に引っ掛けるだけで、外装部材を取り付けることができる。外装部材と押出成形セメント板とを上下方向にずらすような力が作用し、押出成形セメント板に対して外装部材が上方へ移動することがあっても、第1の離間防止手段により、押出成形セメント板の収納凹部に、外装部材の収納突部が収納されるため、外装部材が外れるのを防ぐことができる。これにより、多様な使用環境において外装部材を確実に取り付けることができ、それと共にコストが抑えられ、かつ取り付け作業を軽減することができる。
【0010】
前記外装部材を前記表面凹部内で上方へ移動させて係合を解除した状態で、当該表面凹部からの当該外装部材の離間を防止する第2の離間防止手段が構成されるものであることが好ましい。この第2の離間防止手段は、前記表面凹部内に形成された下方へ開口する係止凹部と、前記外装部材に形成され当該外装部材を前記表面凹部内で上方へ移動させた状態で前記係止凹部に係止する引掛突部とからなるものとすればよい。
【0011】
この場合、押出成形セメント板の下方へ開口する係止凹部と、外装部材の引掛突部とからなる第2の離間防止手段によって、外装部材を押出成形セメント板の表面凹部内で上方へ移動させた状態で、係止凹部に引掛突部が係止する。これにより、外装部材が押出成形セメント板の表面凹部内で上方へ移動しただけでは、外装部材が外れることはない。外装部材の下部分が押出成形セメント板から一旦離間してからでなければ、外装部材が押出成形セメント板から外れることはないため、外装部材の脱落を効果的に防ぐことができる。
【0012】
前記表面凹部内に、前記外装部材が係止された状態で当該外装部材を下方から支持する支持部を形成してもよい。この支持部によって、係止された状態の外装部材が下方から支持されるため、押出成形セメント板の表面凹部内に形成された上方へ突出する係止突起へかかる力が支持部へ分散され、係止突起の耐久性を向上させることができる。従って、係止突起の破損により外装部材が外れてしまうことがなく、長期間に渡って外装部材を確実に取り付けることができる。
【0013】
前記表面凹部からの前記外装部材の離間を防止する第3の離間防止手段が構成されるものとしてもよい。この第3の離間防止手段は、前記表面凹部内の下部に形成された上方へ向かって突出する下部突起と、前記外装部材の下部に形成され当該外装部材が係止された状態で前記下部突起へ上方から嵌められる下部凹部とからなるものとすればよい。
【0014】
この場合、押出成形セメント板の表面凹部内の下部に形成された上方へ向かって突出する下部突起と、外装部材の下部に形成された下部凹部とからなる第3の離間防止手段によって、外装部材が係止された状態で、下部突起へ下部凹部が上方から嵌められる。これにより、外装部材が係止された状態で、外装部材の下部分が押出成形セメント板から離間することはないため、外装部材の脱落をより効果的に防ぐことができる。
【0015】
前記表面凹部の横断方向における当該押出成形セメント板の外面露出幅を、前記外装部材の外面露出幅と同等程度、又は異なるようにしてもよい。表面凹部の横断方向における押出成形セメント板の外面露出幅を、外装部材の外面露出幅と同等程度とすれば、従来にはない意匠性が得られ、非常に良好な外観をもつ建物とすることができる。表面凹部の横断方向における押出成形セメント板の外面露出幅を、外装部材の外面露出幅と異なるようにすれば、同等程度にした場合とは相違する意匠性が得られ、非常に良好な外観をもつ建物とすることができる。このように、表面凹部の横断方向における押出成形セメント板の外面露出幅と、外装部材の外面露出幅とを、互いに調整することによって、押出成形セメント板の風合いと外装部材の風合いを兼ね備えたデザイン性の高い外壁構成を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、押出成形セメント板の上方へ突出する係止突起に、外装部材の引掛凹部が係止しているため、取り付け部品を必要とせず、外装部材を押出成形セメント板の所定箇所に引っ掛けるだけで、外装部材を取り付けることができる。外装部材と押出成形セメント板とを上下方向にずらすような力が作用し、押出成形セメント板に対して外装部材が上方へ移動することがあっても、押出成形セメント板の収納凹部に、外装部材の収納突部が収納され、外装部材が外れるのを防ぐことができる。これにより、外装部材を確実に取り付けることができ、それと共にコストが抑えられ、かつ取り付け作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る外装部材の取付構造を示す断面図である。
図2】2つの外壁板が設けられた状態の外装部材の取付構造を示す断面図である。
図3】主要部分を示す断面図である。
図4】外装部材が凹部内で上方へ移動し係合が解除された状態を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る外装部材の取付構造を示す断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る外装部材の取付構造を示す断面図である。
図7】外壁板の変形例を示す断面図である。
図8】外壁板の他の変形例を示す断面図である。
図9】第1実施形態に係る外装部材の取付構造における、第2の離間防止手段で形成された隙間に接着剤を充填した状態の主要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る外装部材の取付構造1を示す断面図であり、図2は2つの外壁板2が設けられた状態の外装部材の取付構造1を示す断面図である。この外装部材の取付構造1は、外壁板2を横張り状態で建物の躯体に取り付け、外壁板2の表面凹部3内に外装部材4を取り付ける取付構造である。なお図1上下方向が外壁板2を建物の躯体取り付けた状態の上下方向である。建物から外された状態の外壁板2及び外装部材4の上下左右という概念はないが、以下、構造の説明上、外壁板2及び外装部材4が図示されている上下方向の上側を単に上側とし、下側を単に下側とし、水平方向の左側を単に左側とし、右側を単に右側とする。また以下に説明する外壁板2及び外装部材4の各箇所は、全て図1貫通方向へ同形状で延びている。
【0020】
本実施形態の外壁板2は所定長さで形成された押出成形セメント板である。外壁板2は、水、セメント、骨材、繊維等を混練した混合物を押出成形機で押し出し、養生硬化後、所定寸法に切断して製作されたものである。外壁板2には、複数の中空部5が押出方向である長手方向に互いに平行して構成されている。本実施形態の外装部材4は所定寸法で形成されたタイルであり、このタイルは各種の素材で構成されて建物の高い意匠性の外観を得るために取り付けられる。
【0021】
外壁板2は従来の横張り工法で建物の躯体に取り付けられている。例えば、建物の躯体に上下方向に延びるL型アングルが固定され、このL型アングルに押出成形セメント板に留め付けられたZクリップなどが係合すると共に、取付ボルトで締め付けられて、外壁板2の端部がL型アングルに固定されている。
【0022】
外壁板2には、長手方向に伸びる複数の表面凹部3が形成されている。従って外壁板2の表面側基材は、基材本体6、複数の表面凹部3及び複数の凸部7からなる。外壁板2は、表面凹部3を水平方向に向けた状態で建物の躯体に取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、本実施形態の外装部材の取付構造1は、表面凹部3内で外装部材4を係止させる係止手段8と、表面凹部3からの外装部材4の離間を防止する第1の離間防止手段9とを備えている。表面凹部3内の上下方向略中央にリブ10が形成されている。このリブ10の上端に上方へ突出する係止突起11が形成されている。これに対して、外装部材4の左側には、リブ10が入り込むリブ用凹部12が形成されている。リブ用凹部12内の上端には、外壁板2の係止突起11に係止する引掛凹部13が形成されている。
【0024】
外壁板2のリブ10に形成された係止突起11と、外装部材4の上端に形成された引掛凹部13とで、表面凹部3内で外装部材4を係止させる係止手段8が構成されている。この係止手段8によって、外装部材4が外壁板2に係止されており、当該係止手段8が外装部材4を外壁板2に取り付ける主要な取付部分となっている。
【0025】
外壁板2の表面凹部3内の上部には、上方へ窪む収納凹部15が形成されている。これに対し、外装部材4の上部には、上方へ突状に形成されて収納凹部15に下方から収納される収納突部16が形成されている。外壁板2の表面凹部3内に形成された収納凹部15と、外装部材4の上部に形成された収納突部16とで第1の離間防止手段9が構成されている。外装部材4の図3に示す係止状態では、外装部材4の収納突部16の先端のみが外壁板2の収納凹部15内に位置して、隙間17が存在している。外装部材4が表面凹部3内で上方へ移動し係合が解除された図4に示す状態では、収納突部16は収納凹部15内に収納されて、外壁板2からの外装部材4の上部の離間が防止されている。従って、外装部材4が上方へ移動したたけでは、外装部材4は外壁板2から外れることがない。
【0026】
外装部材の取付構造1は、さらに、外装部材4を表面凹部3内で上方へ移動させて係合を解除した状態で、表面凹部3からの外装部材4の離間を防止する第2の離間防止手段19を備えている。外壁板2のリブ10の下端には上方へ窪み、下方へ開口する係止凹部20が形成されている。外装部材4のリブ用凹部12内の下端には、外壁板2の係止凹部20に係止する引掛突部21が形成されている。外壁板2の表面凹部3内に形成された係止凹部20と、外装部材4に形成された引掛突部21とで第2の離間防止手段19が構成されている。
【0027】
外装部材4の図3に示す係止状態では、外装部材4の引掛突部21は、外壁板2の係止凹部20には係止されておらず、係止凹部20と引掛突部21間に隙間22が存在している。外装部材4が表面凹部3内で上方へ移動し係合が解除された図4に示す状態では、引掛突部21は係止凹部20に係止されて、外壁板2からの外装部材4の下部の離間が防止されている。従って、この第2の離間防止手段19により、外装部材4が上方へ移動したたけでは、第1の離間防止手段9と相まって外装部材4が外壁板2から外れることがない。外装部材4の下部分が外壁板2から一旦離間してからでなければ、外装部材4が外壁板2から外れることはないため、外装部材4の脱落を効果的に防ぐことができる。
【0028】
図3のように、外装部材4が取り付けられた状態では、係止手段8によって外装部材4が係止されると共に、第1の離間防止手段9によって外装部材4の離間が防止される。図4のように、外装部材4が上方へ移動し係合が解除された状態では、係止手段8の係止は解除されるが、第1の離間防止手段9によって、外装部材4の上部は外壁板2の表面凹部3内の上部に入り込み、それと共に、第2の離間防止手段19によって、外装部材4の裏面側が外壁板2の表面凹部3内で係止される。
【0029】
そのため外装部材4と外壁板2とを上下方向にずらすような力が作用した場合、外壁板2に対して外装部材4が上方へ移動することで外装部材4が外れるのを確実に防ぐことができる。外装部材4を外壁板2に取り付けるときは、外装部材4を傾けて上部の収納突部16を、外壁板2の表面凹部3内の上部の収納凹部15に差し込み、外装部材4の収納突部16を支点として、外装部材4の下部を外壁板2に近づけ、外装部材4の引掛凹部13を外壁板2の係止突起11に係止する。外装部材4を外壁板2から取り外すときは、取り付けのときと逆の動作をする。外装部材4を傾けて下部を外壁板2から離しつつ、傾けた外装部材4を上方へ移動させて、外装部材4の収納突部16を外壁板2の収納凹部15に差し込みつつ、外装部材4の引掛凹部13の係止突起11への係止を解除して、外装部材4を外壁板2から取り外す。
【0030】
このように外壁板2と外装部材4のみで、本実施形態の外装部材の取付構造1が構成されているため、取り付け部品を製作する必要もなく、取り付け、取り外しも容易であり、作業性が向上する。
【0031】
外壁板2の表面凹部3の横断方向における外壁板2の外面露出幅L1が外装部材4の外面露出幅L2と同等程度となっている。外壁板2の外面露出幅L1を外装部材4の外面露出幅L2と同等程度とすれば、従来にはない意匠性が得られ、非常に良好な外観をもつ建物とすることができる。
【0032】
なお、外壁板2の外面露出幅L1と外装部材4の外面露出幅L2とは、外装部材4の係止手段8を形成できる範囲で任意に変更可能である。外壁板2の外面露出幅L1と外装部材4の外面露出幅L2は、建物のデザインに合わせて適宜設定すれば良い。例えば、外壁板2の外面露出幅L1を、外装部材4の外面露出幅L2と異なるようにしても良い。この場合、同等程度にした場合とは相違する意匠性が得られ、非常に良好な外観をもつ建物とすることができる。
【0033】
このように、外壁板2の外面露出幅L1と外装部材4の外面露出幅L2とを、互いに調整することによって、外壁板2の風合いと外装部材4の風合いとを兼ね備えたデザイン性の高い外壁構成が得られる。本実施形態では外壁板2として押出成形セメント板を用い、外装部材4としてタイルを用いたので、凸部7を構成する押出成形セメント板の風合いと、外装部材4であるタイルの風合いが、上下方向に均等に繰り返された高い意匠性の外観を持つ建物とすることができる。
【0034】
本実施形態の外装部材の取付構造1では、外壁板2の表面凹部3内に形成された上方へ突出する係止突起11と、外装部材4に形成され係止突起11に係止する引掛凹部13とからなる係止手段8に加え、外壁板2の表面凹部3内の上部に形成された収納凹部15と、外装部材4の上部に形成され収納凹部15に下方から収納される収納突部16とかなる第1の離間防止手段9を有している。つまり外装部材4は外壁板2に係止しているだけではなく、外装部材4の上部の収納突部16が外壁板2の表面凹部3内の収納凹部15に収納されている。
【0035】
従って、取り付け部品を必要とせず、外装部材4を外壁板2の所定箇所に引っ掛けるだけで、外装部材4を確実に取り付けることができる。外装部材4と外壁板2とを上下方向にずらすような力が作用し、外壁板2に対して外装部材4が上方へ移動することがあっても、第1の離間防止手段9により、外壁板2の収納凹部15に、外装部材4の収納突部16が収納されるため、外装部材4が外れるのを防ぐことができる。これにより、外装部材4を多様な使用環境において確実に取り付けることができ、それと共にコストが抑えられ、かつ取り付け作業を軽減することができる。
【0036】
外壁板2の下方へ開口する係止凹部20と、外装部材4の引掛突部21とからなる第2の離間防止手段19によって、外装部材4を外壁板2の表面凹部3内で上方へ移動させた状態で係止凹部20に引掛突部21が係止する。これにより外装部材4が外壁板2の表面凹部3内で上方へ移動しただけでは、外装部材4が外れることはない。外装部材4の下部分が外壁板2から一旦離間してからでなければ、外装部材4が外壁板2から外れることはないため、外装部材4の脱落を効果的に防ぐことができる。
【0037】
図5は本発明の第2実施形態に係る外装部材の取付構造25を示す断面図である。本実施形態では、外壁板2の表面凹部3内に外装部材4を下方から支持する支持部26が形成されている。本実施形態において第1実施形態と共通する構成に同符号を付している。図5のように外壁板2の表面凹部3内の下部分が、第1実施形態の外壁板2の下部分よりも高く形成されて、支持部26となっている。外装部材4が外壁板2に取り付けられた状態で、外装部材4の下部は外壁板2の支持部26に下方から支持されている。この支持部26によって、係止された状態の外装部材4が下方から支持されるため、外壁板2の表面凹部3内に形成された係止突起11へかかる力が支持部26へ分散され、係止突起11の耐久性を向上させることができる。これにより係止突起11の破損による、外装部材4の脱落が防止され、長期間に渡って外装部材4を確実に取り付けることができる。
【0038】
図6は本発明の第3実施形態に係る外装部材の取付構造28を示す断面図である。本実施形態の外装部材の取付構造28は、表面凹部3からの外装部材4の離間を防止する第3の離間防止手段29を備えている。本実施形態において第1実施形態と共通する構成に同符号を付している。この第3の離間防止手段29は、表面凹部3内の下部に形成された上方へ向かって突出する下部突起30と、外装部材4の下部に形成され外装部材4が係止された状態で下部突起30へ上方から嵌められる下部凹部31とで構成されている。図6のように外装部材4が係止されている状態で、下部突起30が下部凹部31に嵌められていることで、外装部材4の下部分が外壁板2から離間することがなく、外装部材4の脱落をより効果的に防ぐことができる。
【0039】
本発明は上記の実施形態に限定するものではない。開示した実施形態は本発明に係る外装部材の取付構造の例示である。本発明の効果を損なわない限りにおいて、外壁板及び外装部材の大きさ、形状、構成素材は限定されない。図7は外壁板の変形例を示す断面図であり、図8は外壁板の他の変形例を示す断面図である。これらの外装部材の取付構造は、図5に示す第2実施形態に係る外装部材の取付構造25と同様である。図7に示す外壁板33では、外壁板33の表面に小凹部34が多数形成されており、図8に示す外壁板35では、外壁板35に大凹部36が設けられている。このように外壁板33、35の外面露出部分を多様な形状とすることで、光の当たり方によって建物の外壁の模様を変化させ、高い意匠性を発揮させることができる。さらに、外壁板33、35の表面に塗装を施すことによっても高い意匠性を発揮させることが可能となる。
【0040】
係止手段、第1~第3の離間防止手段を構成する各々の部材の凹形状と凸形状を互いに逆の形状に変更してもよい。必要に応じて、外壁板と外装部材間の所要箇所に接着剤を充填してもよい。例えば図9のように、第2の離間防止手段19における係止凹部20と引掛突部21間の隙間22に接着剤40を充填すればよい。この場合、外装部材4の取り付けをより強固なものとすることができる。本発明の外装部材の取付構造の適用対象となる押出成形セメント板の取付構造は限定されない。外装部材の取付構造に使用される押出成形セメント板、押出成形セメント板を取り付けるための角ナット、クリップ、取付ボルト、その他必要に応じて設けられる部材は本発明の効果を損なわない限りにおいてどのような形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、25、28 外装部材の取付構造
2、33、35 外壁板
3 表面凹部
4 外装部材
5 中空部
6 基材本体
7 凸部
8 係止手段
9 第1の離間防止手段
10 リブ
11 係止突起
12 リブ用凹部
13 引掛凹部
15 収納凹部
16 収納突部
17 隙間
19 第2の離間防止手段
20 係止凹部
21 引掛突部
22 隙間
26 支持部
29 第3の離間防止手段
30 下部突起
31 下部凹部
34 小凹部
36 大凹部
40 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9