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特許7047184近位および遠位圧力または流れセンサならびに遠位センサのトラッキングを有する血管内ポンプ
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  • 特許-近位および遠位圧力または流れセンサならびに遠位センサのトラッキングを有する血管内ポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】近位および遠位圧力または流れセンサならびに遠位センサのトラッキングを有する血管内ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/174 20210101AFI20220328BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20220328BHJP
   A61M 60/32 20210101ALI20220328BHJP
   A61M 60/416 20210101ALI20220328BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20220328BHJP
   A61M 60/538 20210101ALI20220328BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/32
A61M60/416
A61M60/806
A61M60/538
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021505328
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019044069
(87)【国際公開番号】W WO2020028320
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】62/711,766
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/524,548
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508132034
【氏名又は名称】カーディオバスキュラー システムズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARDIOVASCULAR SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1225 Old Highway 8 NW St. Paul MN 55112 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス,ジョセフ・ピィ
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0112312(US,A1)
【文献】米国特許第04969865(US,A)
【文献】特表2015-534853(JP,A)
【文献】特表2001-523983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0021070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/174
A61M 60/237
A61M 60/32
A61M 60/416
A61M 60/806
A61M 60/538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と入口筐体と出口とを有し、かつ、患者の大動脈内および左心室内に位置決めするために適合された血液ポンプアセンブリであって、
インペラアセンブリと動作可能に回転係合するモータを備え、前記インペラアセンブリは、インペラ筐体と、前記インペラ筐体内のインペラとを含み、前記インペラは、インペラハブと、前記インペラハブと動作可能に係合するブレードとを含み、前記インペラアセンブリは、流れインデューサまたは流れディフューザを含まず、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記インペラ筐体と動作可能に接続されたシースを備え、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記シースを通って移動され、かつ、前記インペラの近位端および前記モータと動作可能に接続している可撓性ドライブシャフトを備え、ルーメンが、前記ドライブシャフトがそれ自体を通って移動されるときに前記可撓性ドライブシャフトと前記シースとの間に設けられ、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記インペラに対して近位方向の場所で前記シースに沿って搭載された近位圧力または流量センサを備え、前記近位圧力または流量センサは、動作のために位置決めされると、前記患者の大動脈内に位置し、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記インペラに対して近位方向の第1の位置に位置する遠位圧力または流量センサを備え、前記遠位圧力または流量センサは、前記インペラの場所に対して遠位方向の前記患者の左心室内の第2の場所まで続けて移動するように適合され、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
外部電源と、
前記外部電源と動作可能に接続している外部コントローラと、
前記近位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続され、かつ、前記ドライブシャフトと前記シースとの間でルーメンに沿って移動される第1の導線と、
前記遠位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続され、かつ、前記ドライブシャフトと前記シースとの間で前記ルーメンを通って移動される第2の導線とを備える、血液ポンプアセンブリ。
【請求項2】
前記外部コントローラは、前記近位圧力または流量センサおよび前記遠位圧力または流量センサから受信される入力に基づいて、前記血液ポンプアセンブリの前記圧力または流量を計算するように適合される、請求項1に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項3】
前記遠位圧力または流量センサと動作可能に接続され、かつ、前記遠位圧力または流量センサを前記第2の場所に移動させるように適合されたプッシュワイヤをさらに備える、請求項2に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項4】
患者の大動脈内および左心室内に位置決めするために適合された入口および出口を有する血液ポンプアセンブリであって、
インペラアセンブリと動作可能に回転係合するモータを備え、前記インペラアセンブリは、インペラ筐体と、前記インペラ筐体内のインペラとを含み、前記インペラは、インペラハブと、前記インペラハブと動作可能に係合するブレードとを含み、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記インペラ筐体と動作可能に接続されたシースを備え、前記インペラアセンブリは、流れインデューサまたは流れディフューザを含まず、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記シースを通って移動され、かつ、前記インペラの近位端および前記モータと動作可能に接続している可撓性ドライブシャフトと、
前記インペラに対して近位方向の場所で前記シースに沿って搭載された近位圧力または流量センサとを備え、前記近位圧力または流量センサは、動作のために位置決めされると、前記患者の大動脈内に位置し、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
前記インペラに対して近位方向の第1の位置に位置する遠位圧力または流量センサを備え、前記遠位圧力または流量センサは、前記インペラに対して遠位方向の場所で、患者の左心室内の第2の場所まで続けて移動するように適合され、前記血液ポンプアセンブリはさらに、
外部電源と、
前記外部電源と動作可能に接続している外部コントローラと、
前記近位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続され、かつ、前記ドライブシャフトと前記シースとの間でルーメンに沿って移動される第1の導線と、
前記遠位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続され、かつ、前記ドライブシャフトと前記シースとの間で前記ルーメンを通って移動される第2の導線とを備える、血液ポンプアセンブリ。
【請求項5】
前記外部コントローラは、前記近位圧力または流量センサおよび前記遠位圧力または流量センサから受信される入力に基づいて、前記血液ポンプアセンブリの流量を計算するように適合される、請求項4に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項6】
前記遠位圧力または流量センサと動作可能に接続され、かつ、前記遠位圧力または流量センサを前記第2の場所に移動させるように適合されたプッシュワイヤをさらに備える、請求項5に記載の血液ポンプアセンブリ。
【請求項7】
モータ駆動回転インペラと、入口と、入口筐体と出口とを有し、患者の大動脈および左心室内での位置決めのために適合された血液ポンプであって、
前記インペラに対して近位方向の場所でシースに沿って搭載され、かつ、動作のために位置決めされると患者の大動脈内に位置する近位圧力または流量センサと、
前記インペラに対して近位方向の第1の位置に位置し、かつ、前記血液ポンプが位置決めされると前記インペラに対して遠位方向の場所で患者の左心室内の第2の場所まで続けて移動されるように適合された遠位圧力または流量センサと、
外部電源と、
外部電源と動作可能に接続している外部コントローラと、
前記近位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続している第1の導線と、
前記遠位圧力または流量センサ、前記外部電源および前記外部コントローラと動作可能に接続している第2の導線とを備える、血液ポンプ。
【請求項8】
前記外部コントローラは、前記近位圧力または流量センサおよび前記遠位圧力または流量センサから受信される入力に基づいて前記血液ポンプの流量を計算するように適合される、請求項7に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記遠位圧力または流量センサと動作可能に接続され、かつ、前記遠位圧力または流量センサを前記第2の場所まで移動させるように適合されたプッシュワイヤをさらに備える、請求項8に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
ヒギンス,ジョセフ・ピィ(Joseph P. Higgins)、米国市民、ミネソタ州(MN)、ミネトンカ(Minnetonka)在住
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月29日に出願された「近位および遠位圧力または流れセンサならびに遠位センサのトラッキングを有する血管内ポンプ(INTRAVASCULAR PUMP WITH PROXIMAL AND DISTAL PRESSURE OR FLOW SENSORS AND DISTAL SENSOR TRACKING)」と題された米国非仮特許出願第16/524,548号の優先権を主張し、さらに、2018年7月30日に出願された「遠位センサのトラッキングを有する直接流量圧力センサを含む血管内ポンプ(INTRAVASCULAR PUMP WITH DIRECT FLOW RATE PRESSURE SENSORS WITH DISTAL SENSOR TRACKING)」と題された米国仮特許出願第62/711,766号の優先権を主張する。当該各出願の内容全体はここに引用により援用される。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
該当なし
【背景技術】
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、拡張かつ折畳み可能な入口領域を有する血管内血液ポンプに関する。
【0004】
関連技術の説明
図1を参照すると、ヒトの心臓は、4つの部屋と、心臓を通過する順方向(順行性)の血流を補助する4つの心臓弁とを含む。部屋は、左心房、左心室、右心房および右心室を含む。4つの心臓弁は、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁および肺動脈弁を含む。
【0005】
僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐために一方通行の弁としての機能を果たすことによって、左心房から左心室への血流を制御するのを助ける。同様に、三尖弁は、右心房と右心室との間に位置する一方で、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から離れるように血液を流す動脈内に位置する半月弁である。これらの弁はすべて、順方向(順行性)の血流を可能にするように開口した尖頭を有する一方通行の弁である。通常は機能している弁尖頭は、逆方向の血液によって加えられる圧力を受けて閉じて、血液の逆流(逆行)を防止する。
【0006】
そのため、図示するように、通常の血流は体から戻る脱酸素化血液を含み、そこで血流は上大静脈および下大静脈を介して右心房によって受け取られ、次に右心室に送り込まれるが、これは三尖弁によって制御されるプロセスである。右心室は、脱酸素化血液を肺動脈を介して肺に送るように機能し、そこで血液は再酸素化され、肺静脈を介して左心房に戻される。
【0007】
心臓疾患は、死亡率が高い健康問題である。手術中に短期間の緊急の支援を提供するため、または、患者が危機を乗り切るのを助けるように一時的なつなぎの支援として、一時的な機械式血液ポンプ装置がますます頻繁に用いられている。これらの一時的な血液ポンプは、数年にわたって開発され進化して、心臓のポンプ作用を短期的に補い左心室または右心室補助装置として血流を補っており、左心室補助装置(「LVAD」)が現在最も一般に使用されている装置である。
【0008】
公知の一時的なLVAD装置は通常、経皮的に、たとえば大腿動脈を通って送達されて、装置の本体が大動脈弁にまたがって配設されている状態で、患者の左心室にLVAD入口を、および、患者の上行大動脈に出口を設けるまたは位置決めする。当業者であれば理解するように、患者の大腿動脈へのアクセスを可能にするために、患者の鼠径部下方に切れ目を入れてもよい。医師であれば、上行大動脈に到達するまで大腿動脈および下行大動脈を通ってガイドワイヤを平行移動させ、その後カテーテルまたは送達シースを平行移動させるであろう。その後、回転ドライブシャフトが取付けられたLVADを、送達カテーテルまたはシースルーメンを通って平行移動させて、ドライブシャフトの近位端を患者の外側で露出させ、電気モータなどの原動機、またはドライブシャフトおよび関連するLVADインペラを回転させそれらの回転速度を制御するための等価物と連結されたままにすることが可能である。
【0009】
一時的な軸流血液ポンプは一般に、(1)ポンプのインペラと接続された装置に一体化されたモータによって動力が供給されるポンプ(米国特許第5,147,388号および第5,275,580号を参照)、ならびに(2)ポンプのインペラに接続されたドライブシャフトに回転トルクを供給する外部モータによって動力が供給されるポンプ(本明細書においてその全体が援用によって引用される、Wamplerの米国特許第4,625,712号およびSummersの米国特許第5,112,349号を参照)の2種類からなる。
【0010】
LVADおよびRVAD(右心補助装置)を含む公知の一時的な心室補助装置(「VAD」)は通常、一体化モータを有しているものであろうと外部モータを有しているものであろうと、流入端部から流出端部への順番で列挙される、筐体内に搭載された以下の要素を含む。これらの要素は、流入アパーチャ(複数可)、技術において流入アパーチャまたは入口からインペラへの流れを導く構成要素としても知られる流れインデューサ、回転インペラ、ならびに回転インペラによって生成される回転流れをまっすぐにするように機能するまたは軸方向の流れに向けると技術において知られる流れディフューザおよび/または流出構造、ならびに例示的な従来技術のポンプおよび/またはインペラアセンブリの図2の断面切断図に示される流出アパーチャ(複数可)である。
【0011】
図2では、心室において流入する血流が流入アパーチャ(複数可)(図示せず)を通って装置筐体に入り、周囲の筐体14によって画成されたものを通過して流れ、最終的にインペラ/ポンプアセンブリ4に入るように、公知の装置2が流入端(遠位端)が図面の左側にあり流出端(近位)が右側にある状態で向けられている。そこで、流入する血液は、回転するインペラ8によって前方に付勢される前に、流れインデューサ6に向かい合う。その後血流は、流れディフューザ9によって変更されることがあり、流出して筐体の流出アパーチャ(複数可)10を介して大動脈内に流入する。
【0012】
公知のVADまたはLVAD装置はさらに、送達構成および機能または動作構成を備え、とりわけ送達シースを通る非外傷性の送達を容易にするために、送達構成は機能または動作構成よりも薄く直径が小さい。別の言い方をすれば、さまざまな手段によって、VADもしくはLVADの筐体、および/またはインペラのブレードは、機能または動作構成を実現するために拡張されてもよく、送達構成を実現するために折畳まれてもよい。しかしながら、公知の装置はインペラブレードおよび/または筐体の折畳みならびに拡張を行い、拡張されたまたは動作している構成の間の移動を可能にし、および/またはインペラに近接する一体化モータを必要とするために、折畳みかつ拡張可能な筐体が、インペラの少なくとも一部を取囲む。たとえば、米国特許第7,027,875号、第7,927,068号、および第8,992,163号を参照。
【0013】
公知のLVAD装置は典型的には、大動脈弓を収容するために角度の付いた筐体を備え、その角度または湾曲は一般に135°の範囲である。
【0014】
筐体内に一体化モータを有するLVAD装置は、非外傷性の血管内の平行移動および心臓内での位置決めを可能にするために十分小さいものでなければならない。装置の一部を折畳むためにさまざまな手段が知られているが、筐体および/またはインペラもしくはブレードなどの部品を含むカテーテルまたは送達シース内で、折畳まれた装置のサイズは一体化モータによって制限される場合がある。
【0015】
さらに、公知のLVAD装置は送達構成を含み、この構成では、筐体および/またはインペラ、たとえばインペラ上のブレードの直径が小さくなる場合があり、送達カテーテルまたはシースから遠位方向に送達されると、折畳まれた要素が拡張可能になる。これらの装置は、いくつかの点で制限がある。第一に、折畳みおよび拡張は、インペラが占める筐体の少なくとも一部を含む。第二に、筐体の流入領域、すなわち、回転歯車および固定インデューサまたは整流器に対して遠位方向の領域は、カニューレまたは筐体を通って血流を最適化するチャンスの領域を含む。公知のLVADまたはVAD装置は、このチャンスを利用しない。第三に、公知のLVADまたはVAD装置は、ポンプ内へ流入すると血液に向かい合う流れインデューサまたは整流器を含むが、これは、とりわけ血栓症および/または溶血の一因となり得る。第4に、VADまたはLVAD装置の断面輪郭を小さくすることは、本明細書で説明する理由、装置の筐体にわたってまたはこれに沿って導線を延在する必要があるためさらに困難になる設計上の要求から重要であり、導線は、たとえば、モータまたはセンサ(複数可)または他の動作動力要素で動力を供給するおよび/またはこれと通信するために用いられ得る。これに関連して、導線は断面輪郭、ならびに、隣接する導線間の絶縁および/もしくは間隔をそのような絶縁および/もしくは間隔が必要であるまたは所望される場合に可能な限り低く保つために、輪郭を小さくする必要がある。さらに、圧力および/または流量を測定する直接的な方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のさまざまな実施形態が特にこれらの問題に取り組んでいる。
図面および以下の詳細な説明は、発明のこれらおよび他の実施形態をより詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヒトの心臓の切断図である。
図2】従来技術の装置の断面図である。
図3】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図4】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図5】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図6A】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図6B】本発明の一実施形態の切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明のさまざまな実施形態は一般に、患者において血液をポンプで送込むための機械的な補助装置に向けられる。経皮的かつ経脈管的に送達される、改良された一時的なLVADまたはVAD血液ポンプについて本明細書で説明する。
【0019】
図3を参照すると、例示的なLVAD血液ポンプ100が図示され、図の左側に流入口12が位置し、装置の右側に流出口10が位置する。モータは、患者の体の外側の装置の近位端に設けられ、かつ、回転ドライブシャフトと接続されると図示されており、回転ドライブシャフトは、インペラまたはロータ8またはポンプアセンブリと接続される。しかしながら、技術においてよく知られているように、モータは、装置自体の筐体内に設けられてもよく、モータはロータ8またはインペラまたはポンプアセンブリの近位側に搭載されることが典型的である。これらの構成のいずれも、本明細書で説明するような本発明のさまざまな実施形態と共に用いることが可能である。
【0020】
外側筐体14の全長は、入口または流入アパーチャ12から出口または流出アパーチャ10まで、比較的一定の直径を含むと図示されている。ガイドワイヤ16が、入口アパーチャ12に到達するまで装置の外面に沿って位置し、入口アパーチャ12において、カニューレCのルーメンに入り、図示するようにそこから遠位方向に延在する。ガイドワイヤ16はそのため、インペラまたはロータ8またはポンプアセンブリを通過しない。図3に示す構成は、導入部または送達シースまたはカテーテル200内で圧縮された拡張可能な領域102を有する送達構成を含み得る。
【0021】
概して図面を参照すると、装置100は、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリを取囲む筐体の直径が送達中または回転中に変化しないように、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリに対して遠位方向に位置する場合もある拡張可能な領域102を含み得る。別の言い方をすると、拡張不能な近位領域122を設けてもよく、拡張不能な近位領域122は少なくとも、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリを含み、このアセンブリを取囲む筐体は、感知できるほどに拡張または収縮しないが弾性でもよい。さらに、拡張不能な遠位領域124が、少なくとも入口アパーチャ12を含む入口領域を少なくとも含んで設けられてもよい。拡張可能な領域102はそのため、近位端と遠位端とを含む。拡張可能な領域102の近位端は拡張不能な近位領域122の遠位端に当接する、またはこれに隣接する一方で、拡張可能な領域102の遠位端は、拡張不能な遠位領域124の近位端に当接する、またはこれに隣接する。しかしながら、拡張不能な領域(複数可)122、124を取囲む筐体Hは弾性でも柔軟でもよいが、これらは付勢されて拡張するように配設されない。
【0022】
代替的に、図3の装置100の筐体Hは拡張不能でもよい。
図4は装置100の拡張可能な実施形態を示し、折畳まれ変形した拡張可能な領域への/からの例示的な拡張した変形していない拡張可能な領域への直径の変化を破線で示し、この拡張可能な領域は、インペラ、ロータおよび/またはポンプアセンブリの端に対して遠位方向の地点から中空のカニューレに沿って、入口アパーチャにまさに近位する点まで遠位方向に延在する。拡張可能な領域102は、12~20Fr、より好ましくは16~20Frの範囲の変形していない最大直径に拡張し得る。これとは対照的に、拡張されていない領域は、9~12Frの範囲の実質的に固定された直径にとどまる。
【0023】
続けて図3および図4ならびに残りの図を参照すると、装置100は通常、拡張構成に部分的にまたは完全に付勢され得る拡張可能な領域102を含んでもよく、そのため、拡張を容易にし付勢されて拡張可能な材料または構造を含む。拡張可能な領域102の例示的な構成は、外側材料、たとえば、技術において知られているような下地支持構造の拡張に対応するプラスチックもしくはポリマー材料で構成された外装または被覆またはスリーブで取り囲まれた支持構造130を含み得る。支持構造130は、形状記憶材料、たとえばニチノールまたはこれと類似の材料で形成されてもよい。他の材料は、金、タンタル、ステンレス鋼、金属合金、航空宇宙合金、ならびに/または比較的熱および冷気にさらされると拡張し収縮するポリマーを含むポリマーを含み得る。他の場合、拡張可能な領域102の少なくとも一部、たとえば以下で説明する拡張可能な中央部分104は、ポリマーのスリーブ、または拡張および折畳みを可能にするならびに/もしくは拡張および折畳みに対応するように構成された他の材料のスリーブを含んでもよく、支持構造130は省略されてもよい。図4は、インペラアセンブリと接続され、患者の体の外部に位置する電気モータなどの原動機と接続された回転ドライブシャフトを示す。しかしながら、本明細書で説明する本発明のさまざまな実施形態は、その内部で一体化されたモータを含む、すなわち、外部モータを含まない血液ポンプと組合わせて用いてもよい。上述のように、装置100はさらに、拡張かつ折畳み可能な筐体Hもしくは領域102を含んでもよい、または、拡張不能でもよい。
【0024】
本明細書で説明される実施形態の多くでは、拡張可能な領域102は、近位移行部分、拡張可能な中央部分および/または遠位移行部分との間で区別する必要または理由はなく、1つの拡張可能な領域を含み得る。
【0025】
本発明の拡張可能な領域102は通常、拡張可能な領域102の拡張および折畳みに適合するポリマー被覆または外装によって取囲まれた支持構造130を含み得る。
【0026】
さらに、支持構造130は、相互作用するおよび/もしくは相互接続されたワイヤならびに/または支柱で形成された一連のセルで形成され、構造の折畳みおよび付勢された拡張を可能にする拡張可能なステント状の構造、たとえば、技術において知られているようなステントを含み得る。たとえば、本明細書においてその全体が援用によって引用される、Kanesakaの米国特許出願第5,776,183号、Pinchukの米国特許出願第5,019,090号、Towerの米国特許出願第5,161,547号、Savinの米国特許出願第4,950,227号、Fontaineの米国特許出願第5,314,472号、Wiktorの米国特許出願第4,886,062号および第4,969,458号、ならびにHillsteadの米国特許出願第4,856,516号を参照。
【0027】
本明細書で説明する拡張可能な領域102は例示にすぎず、いかなる点でも制限的なものではない。そのため、血液ポンプ装置100のどのような拡張可能な筐体Hも、血液ポンプ筐体内でまたはこれに沿って、導線もしくは導体Eの絶縁および/または間隔および/または輪郭の減少または一体化に関する本発明のさまざまな実施形態に容易に適合可能である。拡張可能な領域102は、拡張および折畳みが可能な1つの領域も含み得る。
【0028】
ここで図5を参照すると、例示定なポンプアセンブリまたはインペラアセンブリ200が示される。
【0029】
まず、流れインデューサ6と流れディフューザ9とを含む図2に示す公知のインペラアセンブリと対照的に、図5の例示的なポンプまたはインペラアセンブリでは、図2に示すような公知のポンプで見られるインペラアセンブリの流れインデューサ6と流れディフューザ9とが完全に取り除かれている。流入する血流の効果的な制御または操作にインデューサ6および/またはディフューザ9が必要でない用途、ならびに、少なくともインデューサ6と回転インペラ8の遠位端との間の付加的な固定表面積および相互接続によって血栓症のリスクが増加する用途が見られる。そのため、流れインデューサの助けを借りずに、またはこれを必要とせずに、ポンプまたはインペラアセンブリを作動させて所定の速度で回転させることによって、血液がカニューレを通って流れるようにする。それによって、流れディフューザまたは整流装置の助けを借りずに、またはこれを必要とせずに、インペラブレード11を回転させることによって、血液がブレード11を含む回転インペラ8に直接流れ、出口アパーチャ10において装置のカニューレまたはルーメンから出るようにする。
【0030】
ここで図6Aおよび図6Bを参照すると、流量を直接測定するためにシステム200が提供される。現在知られている解決策では、インペラポンプ筐体アセンブリに対して近位方向に位置する圧力センサを介した大動脈圧測定が提供される。出力流れは、大動脈圧、インペラ回転速度およびモータ電流に基づいてこれらの公知の装置において計算される。そのため、位置決めされた血液ポンプ装置上で左心室内に圧力センサを設けることによって、LVDP圧力検知および測定から、左心室からの流量だけでなく心室の負荷軽減の測定までもが可能になる。
【0031】
装置の筐体に沿って導線を延ばすことは、公知の解決策では断面輪郭を大きくする必要があるために困難である。本発明はこの問題を解決する。
【0032】
対象のルーメンの直径は、圧力データに基づいて流量を計算するために本発明で便利な場合がある。そのため、直接流量測定センサ装置は、特に筐体が拡張不能な実施形態では、直径が固定された既知の量である場所で血液ポンプ内に設けられてもよい。代替的に、筐体が拡張可能な実施形態では、直径はLVAD手順の間に撮像または他の公知の手段によって判断可能である。
【0033】
図6に示すように、まず、圧力センサまたは超音波流量計を含み得る少なくとも1つの遠位センサ202が、インペラに対して近位方向の第1の場所Lで血液ポンプ装置内にまたはこれに沿って配設され、次に、プッシュワイヤ204または同等物で患者の左心室内の第2の場所Lに遠位方向に平行移動され得る。ここで、第2の場所Lは、血液ポンプ装置が操作可能に位置決めされている場合は、インペラに対して遠位方向である。
【0034】
遠位圧力センサ202の第1の場所から第2の場所までの平行移動またはトラッキングは、オペレータによって行われる操作によって、たとえば、遠位センサ202を左心室内の第2の場所Lまで移動させるためにプッシュワイヤ204または同等物を用いた技術において知られている手段によって実現される。代替的に、上述の拡張手段および構造を用いた拡張可能な入口を含む血液ポンプの場合、遠位センサ202は、拡張可能な入口と動作可能に接続され得る。本実施形態では、折畳まれた入口は(シースを通って挿入中)、入口が拡張する場合(動作構成)よりも小さな直径を有する。そのため、遠位センサ202は、入口が折畳み位置から拡張位置まで移動すると遠位センサが左心室内の地点まで遠位方向に引っ張られるように、入口に動作可能に取付けられてもよい。
【0035】
少なくとも1つの近位圧力または流量センサ206が、血液ポンプシース、動作可能に位置決めされると患者の大動脈内に通常位置する領域内に搭載されてもよい。
【0036】
両方のセンサ206、204用の導線208P、208Dは、ドライブシャフトがシースを通って平行移動されると、図示するように、外側に位置する電源およびコントローラからシースを通って、ドライブシャフトの外側に生成されたルーメンに沿って延びてもよい。そのため、センサ202、204は、外部電源およびコントローラと動作可能に接続し連通しており、圧力または流量データをコントローラに送信するように適合されている。
【0037】
コントローラは、プログラム命令と、実行されるとセンサ202、204から受信される圧力データに基づいてリアルタイムのセンサ読取り値を生成するプログラム命令を実行するためのプロセッサとを含む。リアルタイムのセンサ読取り値は、ディスプレイに伝達されて、オペレータは確実に、回転インペラ8の動作中に生成される圧力および/または流量が最適範囲内になるようにできる。
【0038】
流量を測定するためのこの方法およびシステムは、流量を直接測定するものであり、測定された圧力またはモータ速度に基づいて流量の推定値を導出する公知のシステムのように間接的な方法ではないため、改良されている。
【0039】
本発明の説明および本明細書の上述の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。さまざまな実施形態の特徴を、本発明の意図する範囲内で他の実施形態と組み合わせることが可能である。本明細書を研究することにより、本明細書で開示された実施形態の変形形態および修正形態が可能となり、実施形態のさまざまな要素の実用的な代替物および同等物が、当業者によって理解されるであろう。本明細書で開示される実施形態のこれらおよび他の変形形態ならびに修正形態は、本発明の範囲および精神の範囲内で可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B