(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 31/00 20190101AFI20220328BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20220328BHJP
【FI】
A41D31/00 502S
A41D31/18
(21)【出願番号】P 2021570099
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000431
(87)【国際公開番号】W WO2021141102
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020003111
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中光 準司
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027302(JP,A)
【文献】特開2018-111898(JP,A)
【文献】特開2002-327310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/00, 1/06
A41D 13/002, 13/005
A41D 27/02
A41D 31/00-31/02, 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地を含む衣服であって、
前記裏地は伸縮性生地であり、
前記伸縮性生地は、身幅方向に弾性糸が部分的に挿入され、弾性糸挿入部分が収縮して凹凸が形成されており、身幅方向に伸びるワンウエイ生地であり、
前記裏地の凹凸は、10~100mmの幅のうねりであり、凹凸の差は水平な場所に置いた時、高低差が10~50mmであ
り、
前記裏地と表地の身幅方向の関係は、表地の長さに対して裏地の長さは1.05~3倍であることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記伸縮性生地は複数本の弾性糸が並列して挿入されており、前記凹凸は身丈方向に向いている請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記弾性糸は、1mあたり2~25本並列して挿入されている請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記伸縮性生地の質量は30~300g/m
2である請求項1~3のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項5】
前記伸縮性生地の伸長率は、タテ又はヨコの一方(A)が70~600%であり、他方(B)が5~150%であり、A>Bである請求項1~4のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項6】
前記伸縮性生地の身幅方向の伸長率は、幅100mm、荷重15Nのとき70%以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項7】
前記伸縮性生地はパイル生地であり、パイルはループパイルであり、パイル長さは0.1~7mmである請求項1~6のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項8】
前記表地は、ポリエステルマルチフィラメント糸、ナイロンマルチフィラメント糸、ポリプロピレンマルチフィラメント糸、及びポリエチレンマルチフィラメント糸から選ばれる少なくとも1種類のフィラメント糸が30重量%以上で構成された織物である請求項1~7のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項9】
前記表地の単位面積当たりの質量は40~300g/m
2である請求項1~8のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項10】
前記表地は、JIS L-1096に規定されるフラジール法で測定した通気度が0~150cc/cm
2・secであり、裏地より通気度が50cc/cm
2・sec以上低い請求項1~9のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項11】
前記衣服は、上衣及び下衣から選ばれる少なくとも一つである請求項1~10のいずれか1項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏地に特定のしわを入れ、衣服内気流の動きを抑えた保温効果の高い衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防寒用の衣服として、中綿及び/又はダウンを充填した衣服が知られている。中綿及びダウンは断熱性は高いが、中綿、ダウンの漏れを防ぐため、表地、裏地は高密度であり、ストレッチ性が悪い。また、衣服内のゆとりを確保した衣服形状のため、身体に裏地をフィットできず、衣服内の温められた空気が衣服によるふいご効果により、衣服外に排出されやすく、衣服としての保温性が低下しやすい。一方、防寒用の裏地のついた衣服は、中綿やダウンと比べ、膨らみが少なく、衣服断面方向から見た時の断熱性が高くなく、また、ふいご効果による温められた空気の排出があり、保温性は高くない。
特許文献1には、中綿を挟んだキルティング生地で吸水時に凹凸が発生し、べとつきを抑えることが提案されている。特許文献2には、一面の布帛が編み組織構造により、うね状の凹凸を有する衣服が提案されている。特許文献3には、基布に弾性糸を使用してステッチを施してなる凹凸のあるギャザー布帛が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-297657号公報
【文献】特開昭61-047803号公報
【文献】特開2019-166171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の衣服はキルティング加工されているため、凹凸の差が少なく、保温性が高くできず、ストレッチ性も阻害される。特許文献2の衣服は、編み組織構造による編目ごとに、生地表面上の凹凸であり、生地全体が波打ちのような凹凸を成しておらず、保温性を高めることができないという問題がある。特許文献3は、凹凸があり、伸縮性があるが、1枚で衣類にした際、寸法変化の安定性がなく、凹部がコールドスポットとなり、保温性が低いという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、衣服と人体の間の隙間を小さな空間で仕切り、暖気を外に逃がさず、保温効果を高めた衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衣服は、表地と裏地を含む衣服であって、前記裏地は伸縮性生地であり、前記伸縮性生地は、身幅方向に弾性糸が部分的に挿入され、弾性糸挿入部分が収縮して凹凸が形成されており、身幅方向に伸びるワンウエイ生地であり、前記裏地の凹凸は、10~100mmの幅のうねりであり、凹凸の差は水平な場所に置いた時、高低差が10~50mmであり、前記裏地と表地の身幅方向の関係は、表地の長さに対して裏地の長さは1.05~3倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の衣服は、裏地は伸縮性生地であり、身幅方向に弾性糸が部分的に挿入され、弾性糸挿入部分が収縮して凹凸を発現しており、身幅方向に伸びるワンウエイ生地であることにより、衣服と人体の間の隙間を小さな空間で仕切り、暖気を外に逃がさず、保温効果を高め、かつ動きやすい衣服を提供できる。また、裏地の垂れ下がり及び凹凸潰れがなく、着用感が良好な衣服とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の衣服の内面側の模式的正面図である。
【
図2】
図2は同、衣服の内面側の模式的裏面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例と比較例の衣服内気流の風速を示すグラフである。
【
図4A】
図4Aは本発明の別の実施形態の衣服の外面側の模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の衣服は、表地と裏地を含む衣服であって、裏地は伸縮性生地であり、身幅方向に弾性糸が部分的に挿入され、身幅方向に伸びるワンウエイ生地である。裏地は織物又は編み物で、編み物は経編でもよいし丸編みでもよい。裏地の凹凸は10~100mm程度の幅のしわ(うねり)が好ましい。凹凸の差は、水平な場所に置いた時、高低差が10~50mm程度が好ましい。また裏地の凹凸は身丈方向に配向している。すなわち、前記凹凸は身幅方向に沿って形成されている。表地は通常のジャケット又は防寒着に使われる織物生地が好ましい。本発明において、凹凸はしわまたはうねりと同義である。
【0010】
裏地のワンウエイ生地は、生地を水平面に置いた際、投影面積において、(生地に負荷がかからない状態で試験片をとる、の意味)幅100mm、長さ150mmの試験片を、つかみ間隔76mm、荷重15Nのとき、伸長率はタテ又はヨコの一方(A)が70~600%が好ましく、より好ましくは80~550%、さらに好ましくは90~550%である。タテ又はヨコの他方(B)は5~150%が好ましく、より好ましくは10~130%、さらに好ましくは10~110%である。但し、A>Bであり、好ましくはA-B≧30%であり、より好ましくはA-B≧40%であり、更に好ましくはA-B≧50%である。前記の範囲であれば、衣服と人体の間の隙間を小さな空間で仕切り、暖気を外に逃がさず、保温効果を高めた衣服を提供できる。また、裏地の垂れ下がり及び凹凸潰れがなく、保温性の高い衣服とすることができる。前記伸縮性生地の身幅方向の伸長率は、幅100mm、荷重15Nのとき70%以上が好ましく、70%~600%がより好ましい。
【0011】
裏地の凹凸は、伸縮性生地に複数の弾性糸挿入部分が並列して配置され、前記弾性糸が縮められていることにより発現しているのが好ましい。前記において複数とは、1mあたり、2~25本が好ましく、より好ましくは3~23本であり、さらに好ましくは3~20本である。これにより、複数本の弾性糸が並列して配置されている部分と弾性糸がない部分で凹凸が形成され、かつ凹凸のしわ(うねり)は弾性糸と交差する方向(身丈方向)に形成され、生地全体が波打ちのような凹凸が構成される。凹凸のしわ(うねり)は交差する方向に連続してつながっていない。これにより、保温性がよく、かつ人体の動きに追従し、着用感が良好となる。
【0012】
凹凸のしわ(うねり)の高低差は、裏地を平坦な台に置き、台に対してしわの最高部が1cm以上あることが好ましい。凹凸のしわ(うねり)のピッチは、30cmあたり1個以上あるのが良い。好ましくは、2個以上、更に好ましくは3個以上である。凹凸のしわ(うねり)により、身体にフィットしながらも、フレキシビリティーがあるため、衣服と身体との隙間を埋め、保温性を高める。また、動いた時も、裏地が伸びながらも凹凸が形成され、凹凸のしわ(うねり)が身体にフィットしているため、身体周りの温められた空気を保持し、保温性を維持できる。凹凸のしわ(うねり)は交差する方向に連続してつながっていないため、身丈方向に熱を逃しにくくなる。
【0013】
伸縮性生地の表面にパイルがあると、更に好ましい。パイルはループパイルであり、パイル長さは0.1~7mmが好ましい。より好ましいパイル長さは0.2~5mmである。この伸縮性パイル生地は、下に着用する衣服とパイル面が摩擦抵抗をもって接触するため、衣服の重量が分散するため、軽い着用感となり、着用感が良好である。
【0014】
裏地の伸縮性生地の質量は30~300g/m2が好ましく、さらに好ましくは50~250g/m2である。これにより、衣服全体の重量を軽くできる。
【0015】
表地は、通常のジャケット又は防寒着に使われる織物生地または通気性を抑えた編物生地が好ましく、ポリエステルマルチフィラメント糸、ナイロンマルチフィラメント糸、ポリプロピレンマルチフィラメント糸、及びポリエチレンマルチフィラメント糸から選ばれる少なくとも1種類のフィラメント糸が30重量%以上で構成された織物が好ましい。ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン及びポリエチレンマルチフィラメント糸はスパン糸(紡績糸)より強度があり、少なくとも1種類のフィラメント糸が30%以上で構成することで、薄くて軽い側地となり、かつ濡れても乾きやすい利点がある。また、フィラメント糸はスパン糸(紡績糸)より織密度を高くでき、通気性を抑える事ができる。少なくとも1種類のフィラメント糸が30%未満の場合、強度が低下するため、薄くて軽い側地を実現することが出来ず、適していない。
表地は撥水加工されていてもよい。織物組織は、平織、綾織、朱子織、変化織などいかなる組織であってもよい。表地の単位面積当たりの質量(目付)は40~300g/m2が好ましい。これにより薄くて軽い側地となる。また、表地の通気度は、JIS L-1096に規定されるフラジール法で測定した通気度が0~150cc/cm2・secが好ましい。さらに好ましくは、0.5~100cc/cm2・secである。表地は、裏地より通気性が低いことで、裏地が凹の部分にも温かい空気を保持でき、保温性が高まる。表地は裏地より通気度が50cc/cm2・sec以上低い事が好ましい。また、裏地より表地の方が伸長しないため、着用し、動作した後、伸び切ってしまわない利点がある。凹凸のしわ(うねり)により、表地と裏地の間に空気をため込み、保温性を高める。また、洗濯などをした際も、表地による保形を保つことができる。
【0016】
衣服内の風速は以下の手順で測定できる。被験者に、先ずコンプレッションウエアを着用させ、胸部、脇部に風速センサーモジュールを取り付け、その上から本発明の衣服を着用し、1秒ごとに腕を上げ下げさせた時の衣服内気流を計測する。風速センサーモジュールはホルトプラン合同会社製のHWS-16-ONEを使用する。また、本発明の衣服は、JASPO規格に対応する被験者のサイズに合うものを着用させた。この測定方法において衣服内の風速が0.05~0.6m/secが好ましく、さらに好ましくは0.1~0.4m/secである。これにより、衣服内気流の動きを抑制し、保温効果を向上できる。
【0017】
前記裏地は衣服の上部で表地と縫製により接合されてあるのが好ましい。これにより、下方向への裏地全体の垂れさがりを防止できる。例えば、裏地と表地は襟付き線と肩峰線の少なくとも一方で縫製により接合されているのが好ましい。裏地に襟付き線と肩峰線がない場合は、裏地の最も上部で表地と縫製により接合されているのが好ましい。脇線において、表地と裏地が縫製により接合されていないのが、より好ましい。これにより、衣服内で裏地が身体胴回りとフィットしやすくなる。
身幅方向の裏地と表地の関係は、表地の長さに対して裏地の長さは3倍以下が好ましく、より好ましくは2.5倍以下であり、さらに2倍以下が好ましい。これにより、凹凸によるヒダの垂れさがりを防ぐことができる。表地の長さに対して裏地の長さは1.05倍以上が好ましく、更には1.1倍以上が好ましい。これにより凹凸の形状を潰さずに保つことができる。衣服における一定面積部位において、表地より裏地の面積を大きくすることで、裏地の凹凸を保つことができる。また、衣服の外囲より内囲の方が小さいが、裏地は伸縮性があり、アコーディオンのように変形するため、動きやすいが、温かい空気を排出しないので、保温性が高い。裏地と表地の間に生地や充填物を入れても良い。
【0018】
裏地と裏地に接する生地(表地、芯地、ポケット地、その他の衣服副生地)は、いせ込み、タック、ギャザーなどの長さが異なる2枚の生地を縫製する手法により、裏地に接する生地より長い裏地を同じ個所に縫製でき、裏地の凹凸を保持して、衣服にする事ができる。裏地は衣服内の任意の場所に配置する事ができる。裏地は身頃部位の少なくとも一部に配置する事により、熱の放散が大きい胴体部分の保温性を高める事ができる。裏地を襟口、裾口、袖口等の外気が侵入しやすい場所に配置する事により、衣服内の温められた空気の流出を抑える事ができる。衣服の目的に応じて、身頃、襟口、裾口、袖口等の裏地の配置部位を検討する事により、最適な衣服設計をする事ができる。
【0019】
本発明の衣服は、上衣及び/又は下衣に適用できる。とくに寒い時期のゴルフ、登山、スキー、ランニング、ウォーキング、サイクリング、登山、テニス等のスポーツで着用する衣服に好適である。この衣服は、洗濯も容易であり、汗をかいても乾きやすく、スポーツ用衣料として機能性が高く、人体の動きを妨げにくい。
【0020】
以下図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態の衣服1の内面側の模式的正面図であり、
図2は同、衣服1の内面側の模式的裏面図である。この衣服1の前身頃裏地2、後身頃裏地3は伸縮性パイル生地である。前身頃裏地2、後身頃裏地3の伸縮性パイル生地は、身幅方向に複数本の弾性糸が部分的に挿入され、弾性糸挿入部分4が収縮されることにより凹凸5を発現しており、身幅方向に伸びるワンウエイ生地である。前記凹凸5のしわ(うねり)は弾性糸と交差する方向(身丈方向)に向いている。腕部の裏地6a,6b及び後身頃の肩甲骨より上の裏地7は任意の生地とするか、または裏地なしとしてもよい。
図1において、前身頃裏地2は表地8と襟付き線9と肩峰線10で縫製によって接合されており、脇線において、表地と裏地が縫製により接合されていない仕様としてある。また、
図2において、後身頃裏地3は表地8と背中部切り返し線11で縫製によって接合されている。これにより、下方向への裏地全体の垂れさがりを防止できる。また、裏地は伸縮性パイル生地であるため、中着との摩擦により中着に追従してある程度自由に動き、運動時の人体の動きを妨げることがない。
なお、
図1-2は首を通すタイプの上衣の例を示したが、前開きの上衣であってもよい。前開きの場合は、前部をファスナー、ホック、ボタン止めなどで開閉可能にする。
【0021】
図4Aは本発明の別の実施形態の衣服の外面側の模式的正面図、
図4Bは同衣服の外面側の模式的裏面図、
図5Aは同衣服の内面側の模式的正面図、
図5Bは同衣服の内面側の模式的裏面図である。
図1-2と異なる点は、ブルゾンジャケットの前部をファスナーで開閉可能にした点である。この衣服12は、前身頃表地13、脇部表地14a,14b、後身頃裏地15、袖部表地16a,16bで構成され、前部はファスナー17で開閉可能である。
裏面は、前身頃から後身頃裏地19は1枚の伸縮性パイル生地で構成し、伸縮性パイル生地の袖部裏地20a,20bと縫製により繋いでいる。後身頃裏地の上部の背中部(
図5Bの白抜き部)は、通常の織物の裏生地である。裏地19は前身頃表地13と襟付き線18で縫製によって接合され、後身頃表地15とは前記背中部生地を介して襟付き線18で縫製によって接合されており、脇線においては表地と裏地が縫製により接合されていない仕様である。
【実施例】
【0022】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0023】
<衣服内気流の風速>
被験者に、先ずコンプレッションウエアを着用させ、胸部、脇部に風速センサーモジュールを取り付け、その上から本発明の衣服を着用し、1秒ごとに腕を上げ下げさせた時の衣服内気流を計測した。風速センサーモジュールはホルトプラン合同会社製のHWS-16-ONEを使用した。
<生地の通気度>
JIS L-1096に規定されるフラジール法で測定した。
<保温性評価>
KES(精密迅速物性測定装置サーモラボII)保温性評価(ΔT=20℃)によって評価した。座布団形状の試料を使用した。
【0024】
(実施例1)
<裏地>
(1)
図1-2に示す裏地2,3
経編のループパイル生地を用いた。この生地は、地組織はポリエチレンテレフタレート、トータル繊度84decitex,構成本数72本のマルチフィラメントを使用し、ループパイル長さ1mm、70mm間隔で150decitexのポリウレタン弾性繊維を110decitex,構成本数48本のポリエステルフィラメントでカバーしたFTY(Filament Twisted yarn)5本を並列に配置し、15%伸長(ドラフト)した状態で編成し、編成後伸長分を弛緩させた。これにより、ポリウレタン弾性繊維の挿入方向とは交差する方向に凹凸のしわ(うねり)が形成されていた。単位面積当たりの質量(目付)は140g/m
2であった。凹凸のしわ(うねり)は30cmあたり5個あり、しわの最高部は2cmであった。
(2)
図1-2に示す裏地6a,6b
起毛トリコット編地を用いた。使用糸は、84decitex,構成本数72本ポリエステルフィラメントであり、編地の単位面積当たりの質量(目付)は100g/mであった。この裏地の身幅方向の伸長率は、幅100mm、荷重15Nのとき150%、同身丈方向の伸長率は30%であった。
(3)
図1-2に示す裏地7
裏地7は、裏地6a、6bと同一の生地を使用した。
<表地>
経(タテ)糸として、ポリエチレンテレフタレート(PET)マルチフィラメント糸(総繊度:22decitex,繊維本数:48本)、緯(ヨコ)糸として、ポリエチレンテレフタレート(PET)マルチフィラメント糸(総繊度:22decitex,繊維本数:48本)を使用し、タテ糸密度260本/インチ、ヨコ糸密度120本/インチの平織組織の織物を表地とした。単位面積当たりの質量(目付)は150g/m
2であった。表地の身幅方向の伸長率は、幅100mm、荷重15Nのとき40%、同身丈方向の伸長率は20%であった。
<上衣>
図1-2に示す上衣を縫製した。
図1-2に示す裏地2,3は、伸び方向を身幅方向に配置した。伸縮性生地の身幅方向の伸長率は、幅100mm、荷重15Nのとき150%、同身丈方向の伸長率は30%であった。この上衣は男性用Lサイズで510gであった。身幅方向の裏地と表地の関係は、表地の長さに対して裏地の長さは1.5倍とした。
<保温性試験用試料>
タテ20cm、ヨコ20cmの座布団形状の試料。表地と裏地2の2層構造にしており、裏地の凹凸を保持するようにいせ込みながら4辺を縫製した。
【0025】
(比較例1)
・上衣:表地、裏地に実施例1の表地を使用し、ポリエステル樹脂中綿(目付80g/m2)挟み込んだ3層構造である上衣を縫製した。外観のシルエットは実施例1と同等にした。
・保温性試験用試料:表地、裏地に実施例1の表地を使用し、ポリエステル樹脂中綿(目付80g/m2)挟み込んだ3層構造である座布団形状の試料を縫製した。
【0026】
(比較例2)
・上衣:表地に実施例1の表地を使用し、全ての裏地に実施例1の裏地6aを使用し、2層構造である上衣を縫製した。外観のシルエットは実施例1と同等にした。
・保温性試験用試料:表地に実施例1の表地を使用し、全ての裏地に実施例1の裏地6aを使用し、2層構造である座布団形状の試料を縫製した。
条件及び結果はまとめて表1に示す。
図3は本発明の実施例と比較例の衣服内気流の風速を示すグラフである。
【0027】
【0028】
表1から明らかなとおり、実施例1の上衣は、保温効果が高く、かつ動きやすい衣服であり、また、裏地の垂れ下がり及び凹凸潰れがなく、着用感が良好な衣服であった。さらに、着用時の通気性が良好でムレ感もなく、洗濯後の乾き易さも良好であることが確認できた。これに対して比較例1及び比較例2の上衣は、衣服内気流の風速が高く、温かい空気を閉じ込める機能は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の衣服は、寒い時期のゴルフ、登山、スキー、ランニング、ウォーキング、サイクリング、登山、テニス等のスポーツで着用する衣服に好適であるほか、作業着や一般の防寒着にも好適である。
【符号の説明】
【0030】
1,12 衣服
2,13 前身頃裏地
3,15 後身頃裏地
4 弾性糸挿入部分
5 凹凸部(うねり)
6a,6b 腕部の裏地
7 後身頃肩甲骨より上の裏地
8 表地
9,18 襟付き線
10 肩峰線
11 背中部切り返し線
14a,14b 脇部表地
16a,16b 袖部表地
17 ファスナー
19 裏地
20a,20b 袖部裏地