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特許7047231情報処理システム、コンピュータシステム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】情報処理システム、コンピュータシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20220329BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220329BHJP
【FI】
G06Q50/18
G06N20/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021105946
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2021-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521280899
【氏名又は名称】株式会社Robot Consulting
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】横山 英俊
(72)【発明者】
【氏名】本田 崇人
【審査官】塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111047092(CN,A)
【文献】特表2017-530495(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110377632(CN,A)
【文献】特開2015-141522(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110825880(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示部と、
前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得部と、
被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む特量を生成する変換部と、
前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部と、
を備え、
前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルである情報処理システム。
【請求項2】
複数の前記質問毎に選択肢の数が異なる場合、前記変換部は、それぞれの前記質問に対する回答を、最も選択肢が多い数の要素を有する配列に変換することによって、複数の配列を前記特徴量として生成する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記被害回答情報が変換された前記配列は、選択された選択肢の順番の要素が1、選択されなかった選択肢の順番の要素が0の配列である
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記被害は、セクシャルハラスメントまたはパワーハラスメントである
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示部と、
前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得部と、
被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む特量を生成する変換部と、
前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部と、
を備え、
前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルであるコンピュータシステム。
【請求項6】
コンピュータに、
被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示手順、
前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得手順、
被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む特量を生成する変換手順、
前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力手順、
を実行させるためのプログラムであって、
前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルであるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、コンピュータシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの発達及び人工知能の研究開発の進展によって、法務の領域においてコンピュータを介した様々なサービスが提供され始めている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010‐257413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セクシャルハラスメント(以下、セクハラともいう)またはパワーハラスメント(以下、パワハラともいう)などの被害にあった当事者は、その被害に対する賠償について裁判で争った場合に勝訴できる可能性を、弁護士に相談する前に把握することは難しい。そのため、弁護士に相談しても裁判で勝訴できる可能性が低いと弁護士に判断されれば、加害者と争うことを断念せざるをえず、弁護士への相談費用だけがかかってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、被害にあった当事者が、弁護士への相談費用だけがかかってしまうという問題が生じる頻度を抑制することを可能とする情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理システムは、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示部と、前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得部と、被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する変換部と、前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部と、を備え、前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルである。
【0007】
この構成によれば、セクハラ、パワハラなどの被害にあった当事者は、その被害に対する賠償について裁判で争った場合に勝訴できる可能性を、弁護士に相談する前に把握することができる。そのため、裁判で争った場合に勝訴できる可能性が一定程度ある場合に弁護士に相談することによって、被害にあった当事者が、弁護士への相談費用だけがかかってしまうという問題が生じる頻度を抑制することができる。更に裁判で勝訴できる可能性が高い場合に被害者が弁護士に相談するようになるので、弁護士の貴重な時間が受任できない事件の相談に取られてしまう事態の頻度を抑制することができる。更に情報処理システムが質問を被害者に提示することによって、弁護士が毎回同じ質問を繰り返す必要がなくなり弁護士の貴重な時間が取られるのを抑制することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る情報処理システムは、第1の態様に係る情報処理システムであって、複数の前記質問毎に選択肢の数が異なる場合、前記変換部は、それぞれの前記質問に対する回答を、最も選択肢が多い数の要素を有する配列に変換することによって、前記複数の配列を生成してもよい。
【0009】
本発明の第3の態様に係る情報処理システムは、第1または第2の態様に係る情報処理システムであって、前記回答情報が変換された前記配列は、選択の有無に応じて選択肢に対応する要素が0または1となる配列であってもよい。
【0010】
本発明の第4の態様に係る情報処理システムは、第1から第3のいずれかの態様に係る情報処理システムであって、前記被害は、セクシャルハラスメントまたはパワーハラスメントであってもよい。
【0011】
本発明の第5の態様に係るコンピュータシステムは、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示部と、前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得部と、被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する変換部と、前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部と、を備え、前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルである。
【0012】
本発明の第6の態様に係るプログラムは、コンピュータに、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報を出力する提示手順、前記質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得手順、被害回答情報に含まれる前記少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが前記ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する変換手順、前記変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、前記被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力手順、を実行させるためのプログラムであって、前記機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルであるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、セクハラ、パワハラなどの被害にあった当事者は、その被害に対する賠償について裁判で争った場合に勝訴できる可能性を、弁護士に相談する前に把握することができる。そのため、裁判で争った場合に勝訴できる可能性が一定程度ある場合に弁護士に相談することによって、被害にあった当事者が、弁護士への相談費用だけがかかってしまうという問題が生じる頻度を抑制することができる。更に裁判で勝訴できる可能性が高い場合に被害者が弁護士に相談するようになるので、弁護士の貴重な時間が受任できない事件の相談に取られてしまう事態の頻度を抑制することができる。更に情報処理システムが質問を被害者に提示することによって、弁護士が毎回同じ質問を繰り返す必要がなくなり弁護士の貴重な時間が取られるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成図である。
図2】本実施形態に係るユーザ端末の概略構成図である。
図3】本実施形態に係るWEBサーバの概略構成図である。
図4】機械学習における学習工程と推定工程を説明するための模式図である。
図5】ユーザ端末1に表示される被害内容入力画面の一例である。
図6図5の続きの判定結果画面の一例である。
図7】本実施形態の処理の流れの一例を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
上記の課題に加えてまたは替えて、弁護士にとっても被害にあった当事者から事件についてヒアリングするまでは、裁判で勝訴できる可能性が分からない。裁判で勝訴できる可能性が低い場合には事件を受任できず、弁護士の貴重な時間が受任できない事件の相談に取られてしまうという問題がある。
【0017】
更に加えて、弁護士が被害にあった当事者(相談者)からヒアリングする際の質問は、その被害の種類毎に共通しているので、例えばセクハラなら相談者が違っても弁護士は同じ質問をすることになる。このように弁護士は、毎回同じ質問を繰り返すことになり、忙しい弁護士の貴重な時間が取られてしまうという問題がある。本実施形態では、これらの問題についても解決する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの概略構成図である。図1に示すように、情報処理システムSは一例として、ユーザ端末1と、ユーザ端末1と通信回路網CN1を介して接続されたコンピュータシステム2のWEBサーバ20と、コンピュータシステム2と通信回路網CN2を介して接続された管理者端末3を備える。コンピュータシステム2は、ユーザ端末1と通信するWEBサーバ20と、管理者端末3及びWEBサーバ20と通信するデータベースサーバ4と、WEBサーバ20及びデータベースサーバ4と通信するAIサーバ5とを備える。
【0019】
データベースサーバ4はデータベース41を有し、データベース41には、被害(例えばセクハラ、パワハラなど)について過去の裁判の情報が蓄積されている。具体的には例えばデータベース41には、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量と、当該過去の裁判の勝敗を表す情報との組が蓄積されている。
【0020】
AIサーバ5は、ストレージ50とプロセッサ52とを有する。ストレージ50には、機械学習モデル51が記憶されており、この機械学習モデル51は、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルである。この学習は、プロセッサ52によって、データベース41に蓄積されたデータを用いて実行される。プロセッサ52は、ストレージ13から本実施形態に係るプログラムをメモリ14にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することによって、出力部521として機能する。出力部521は、当該変換後の特徴量を機械学習モデル51に入力することによって、当該被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する。
【0021】
ユーザ端末1は、例えばセクハラ、パワハラなどの被害にあった当事者がユーザとして使用する端末装置であり、例えば、多機能携帯電話(いわゆるスマートフォン)などの携帯電話、タブレット、ノートパソコン、またはデスクトップパソコンなどである。ユーザ端末1は例えば、WEBブラウザを用いて、コンピュータシステム2から提供される情報を表示する。なお、これに限らず、ユーザ端末1は例えば、専用のアプリケーションがインストールされており、このアプリケーションを立ち上げることで、このアプリケーションによって表示される画面においてコンピュータシステム2から提供される情報を表示してもよい。以下、本実施形態では、ユーザ端末1は、一例としてスマートフォンであるものとして説明する。
【0022】
例えば管理者端末3は、コンピュータシステム2を管理する管理者が使用する端末装置であり、例えば、多機能携帯電話(いわゆるスマートフォン)などの携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータ(例えば、ノートパソコンまたはデスクトップパソコン)などである。管理者の操作に従って、管理者端末3は、データベース41を更新するために、データをデータベース41を追加するようデータを送信する。以下、本実施形態では、管理者端末3は、一例としてパーソナルコンピュータであるものとして説明する。
【0023】
図2は、本実施形態に係るユーザ端末の概略構成図である。図2に示すように、ユーザ端末1は例えば、入力インタフェース11と、通信モジュール12と、ストレージ13と、メモリ14と、ディスプレイ15と、プロセッサ16とを備える。
入力インタフェース11は、ユーザからの入力を受け付け、受け付けた入力に応じた入力信号をプロセッサ16へ出力する。入力インタフェース11は例えばタッチパネルである。
通信モジュール12は、通信回路網CN1に接続されて、通信回路網CN1に接続されているコンピュータシステム2と通信する。この通信は有線であっても無線であってもよい。
【0024】
ストレージ13には、プロセッサ16が読み出して実行するためのプログラム、アプリケーション及び各種のデータが格納されている。このアプリケーションは、コンピュータシステム例えばクラウド経由でダウンロードされてインストールされたものであってもよい。
メモリ14は、データ及びプログラムを一時的に保持する。メモリ14は、揮発性メモリであり、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0025】
ディスプレイ15は、プロセッサ16の指令に従って情報を表示する。なお、ディスプレイ15はユーザ端末1に内蔵ではなく、ユーザ端末1に外付けであってもよい。
【0026】
プロセッサ16は、ストレージ13から本実施形態に係るプログラムをメモリ14にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。
【0027】
図3は、本実施形態に係るWEBサーバの概略構成図である。図3に示すように、WEBサーバ20は、入力インタフェース21と、通信モジュール22と、記憶装置の一例であるストレージ23と、メモリ24と、プロセッサ26とを備える。
入力インタフェース21は、コンピュータシステム2(具体的にはWEBサーバ20)の管理者からの入力を受け付け、受け付けた入力に応じた入力信号をプロセッサ26へ出力する。
【0028】
通信モジュール22は、通信回路網CN1に接続されて、通信回路網CN1に接続されているユーザ端末1と通信する。この通信は有線であっても無線であってもよい。更に通信モジュール22は、データベースサーバ4と通信する。これにより、データベース41にアクセスできる。また通信モジュール22は、AIサーバ5と通信する。これにより、通信モジュール22は、機械学習モデル51に対して入力データを送信し、この入力データが機械学習モデル51に入力されたときに出力されるデータを受信することができる。これらの通信は有線であっても無線であってもよい。
【0029】
ストレージ23は、プロセッサ26が読み出して実行するためのプログラム及び各種のデータが格納されている。
メモリ24は、データ及びプログラムを一時的に保持する。メモリ24は、揮発性メモリであり、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0030】
プロセッサ26は、ストレージ23からプログラムをメモリ24にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することで、提示部261、取得部262、変換部263として機能する。
【0031】
<機械学習モデルへ入力する特徴量に変換する前処理の例について>
本実施形態に係るコンピュータシステム2は、機械学習モデルを用いた訴訟結果予測システムである。コンピュータシステム2は、被害者(相談者)から得られた被害回答情報を特徴量に変換し、その特徴量に基づき、その訴訟の勝敗を予測する。
【0032】
具体的には例えば本実施形態に係るコンピュータシステム2は、相談者が選択肢を選択することによって被害に関する内容を表す被害回答情報が入力された場合、勝訴/敗訴の確率を出力する。被害回答情報はそれぞれ選択方式であるため、変換部263は、選択された項目に基づいて、被害回答情報をOne-hotベクトルに変換し特徴量とする。
ここで、One-hotベクトルvとは、例えば選択項目数nのうち、i番目を選択した場合、1それ以外の要素は0となるようなベクトルのことであり、次のようなベクトルである。
【0033】
【数1】
【0034】
1つの質問に対する回答が1つのOne-hotベクトルに変換され、すなわち1つの配列に変換される。これにより複数の質問に対する回答が、複数の配列に変換される。この変換により、文章として表現された選択項目を数値的に解析することが可能である。なお、0と1は逆であってもよく、配列は選択の有無に応じて選択肢に対応する要素が0または1となる配列であってもよい。
【0035】
続いて機械学習における学習工程と推定工程について図4を用いて説明する。図4は、機械学習における学習工程と推定工程を説明するための模式図である。図4に示すように、学習工程では、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習される。予測結果として扱う出力データは、勝訴を1、敗訴を0(もしくは勝訴を0、敗訴を1)として機械学習を行う。
【0036】
一方、学習後の推定工程では、対象被害の状況に相当する特徴量が機械学習モデル51に入力された場合、当該対象被害に対する裁判の勝敗の確率を表す情報が出力される。
【0037】
続いて、図5及び図6を用いてセクハラを例に画面遷移の一例を説明する。図5は、ユーザ端末1に表示される被害内容入力画面の一例である。図6は、図5の続きの画面の一例である。図5の被害内容入力画面G1には、セクハラ行為の加害者の情報を記載するテキストボックスB1~B3、この加害者の協力者の情報を記載するテキストボックスB4~B6、セクハラを行った加害者とユーザ(被害者)との関係を選択するセレクトボックスB7、セレクトボックスB7での選択肢が「その他」の場合に関係を入力するテキストボックスB8、セクハラ行為の内容を選択するチェックボックスB9~B11が示されている。図6には、一例としてセクハラでの勝訴確率(ここでは一例として70%)が表示され、最初のページに戻るためのボタンB21が表示されている。
【0038】
図5の画面G1に示すように、弁護士への相談を希望する被害者は、ユーザとして図5に示すWeb画面上で被害内容(もしくは相談内容)を入力し、その被害内容は全てデータベース41に格納される。格納された被害回答情報のうち選択形式のものが上記の処理によって特徴量に変換され、変換された特徴量が機械学習モデル51へ入力されると、勝訴確率が出力される。これにより、被害内容に基づいた勝訴確率が図6の画面G2に示すようにWeb画面上で提示される。
【0039】
上述の一連の処理の間に、提示部261は、被害(例えば、セクシャルハラスメントまたはパワーハラスメントなど)を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つのそれぞれに対する選択肢を提示するよう制御する。これにより、ユーザ端末1に、例えば図5のセレクトボックスB7、チェックボックスB9~B11が提示される。
取得部262は、当該少なくとも一つの質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を表す被害回答情報を取得する。
【0040】
変換部263は、被害回答情報に含まれる当該少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが当該ユーザが選択した選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する。
【0041】
その際、例えば、当該少なくとも一つの質問毎に選択肢の数が異なる場合、変換部263は、それぞれの当該質問に対する回答を、最も選択肢が多い数の要素を有する配列に変換することによって、当該少なくとも一つの配列を生成する。具体的には例えば、当該被害回答情報が変換された当該配列は、選択された選択肢の順番の要素が1、選択されなかった選択肢の順番の要素が0の配列である。
【0042】
この相談から実際に訴訟に発展し、勝訴/敗訴のデータが得られた場合、新たに機械学習モデル51の学習データとして使用されてもよい。加えて、機械学習モデル51が予測した勝訴確率は弁護士側でも確認することができ、自由記述項目と合わせて弁護士の判断材料として効果的に使用してもよい。
【0043】
図7は、本実施形態の処理の流れの一例を示すフローチャートの一例である。
(ステップS10)まずユーザ端末1は、被害内容を入力するWEBページのURLをWEBサーバ20へ送信する。
【0044】
(ステップS20)これに応じて、WEBサーバ20は、被害内容入力画面情報を送信する。具体的には例えば提示部261は、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するための情報として被害内容入力画面情報を出力する。
【0045】
(ステップS30)次にユーザ端末1は、ステップS20で送信された被害内容入力画面情報を受信し、この被害内容入力画面を表示する。
【0046】
(ステップS40)次にユーザ端末1は、被害内容入力画面において被害者から回答を受け付けた場合、被害回答情報をWEBサーバ20へ送信する。
【0047】
(ステップS50)次にWEBサーバ20は、被害回答情報を受信した場合、WEBサーバ20の取得部262は、被害回答情報を受信した場合、当該複数の質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する。次にWEBサーバ20の変換部263は、被害回答情報を受信した場合、被害回答情報に含まれる当該少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが当該ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する。
【0048】
(ステップS60)次にWEBサーバ20は、生成した特徴量をAIサーバ5へ送信する。
【0049】
(ステップS70)次にAIサーバ5の出力部521は、ステップS60で送信された特徴量を受信した場合、機械学習モデルにこの特徴量を入力して、裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する。
【0050】
(ステップS80)次にAIサーバ5の出力部521は、裁判の勝敗の確率を表す情報をWEBサーバ20へ送信する。
【0051】
(ステップS90)次にWEBサーバ20の提示部261は、この裁判の勝敗の確率を表す情報を含む判定結果画面情報を生成する。
【0052】
(ステップS100)次にWEBサーバ20の提示部261は、生成した判定結果画面情報をユーザ端末1へ送信する。
【0053】
(ステップS110)ユーザ端末1は、ステップS100で送信された判定結果画面情報を受信し、この判定結果画面を表示する。
【0054】
以上、本実施形態に係る情報処理システムは、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、当該少なくとも一つの質問それぞれに対する選択肢を提示するよう制御する提示部261と、当該複数の質問それぞれに対してユーザが選択した選択肢を表す被害回答情報を取得する取得部262と、被害回答情報に含まれる当該少なくとも一つの質問それぞれについて複数の選択肢のそれぞれが当該ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する変換部263と、当該変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、当該被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部521と、を備える。当該機械学習モデルは、過去の裁判における被害の状況に相当する特徴量を入力データとし当該過去の裁判の勝敗を表す情報を出力データとする学習データセットを用いて学習された機械学習モデルである情報処理システムである。
【0055】
この構成によれば、セクハラ、パワハラなどの被害にあった当事者は、その被害に対する賠償について裁判で争った場合に勝訴できる可能性を、弁護士に相談する前に把握することができる。そのため、裁判で争った場合に勝訴できる可能性が一定程度ある場合に弁護士に相談することによって、被害にあった当事者が、弁護士への相談費用だけがかかってしまうという問題が生じる頻度を抑制することができる。更に裁判で勝訴できる可能性が高い場合に被害者が弁護士に相談するようになるので、弁護士の貴重な時間が受任できない事件の相談に取られてしまう事態の頻度を抑制することができる。更に情報処理システムが質問を被害者に提示することによって、弁護士が毎回同じ質問を繰り返す必要がなくなり弁護士の貴重な時間が取られるのを抑制することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態で説明したコンピュータシステム2の少なくとも一部の機能は、ユーザ端末1で実行されてもよい。例えばユーザ端末1が提示部、取得部、変換部、出力部の少なくとも一つを備えていてもよい。また上述した実施形態で説明したコンピュータシステム2の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、コンピュータシステム2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0057】
また、コンピュータシステム2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0058】
さらに、一つまたは複数の情報機器によってコンピュータシステム2を機能させてもよい。複数の情報機器を用いる場合、そのうちの1つをコンピュータとし、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することによりコンピュータシステム2の少なくとも1つの手段として機能が実現されてもよい。
【0059】
また、方法の発明においては、全ての工程(ステップ)をコンピュータによって自動制御で実現するようにしてもよい。また、各工程をコンピュータに実施させながら、工程間の進行制御を人の手によって実施するようにしてもよい。また、さらには、全工程のうちの少なくとも一部を人の手によって実施するようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ユーザ端末
11 入力インタフェース
12 通信モジュール
13 ストレージ
14 メモリ
15 ディスプレイ
16 プロセッサ
2 コンピュータシステム
20 WEBサーバ
21 入力インタフェース
22 通信モジュール
23 ストレージ
24 メモリ
26 プロセッサ
261 提示部
262 取得部
263 変換部
3 管理者端末
4 データベースサーバ
41 データベース
5 AIサーバ
50 ストレージ
51 機械学習モデル
52 プロセッサ
521 出力部
CN1、CN2 通信回路網
S 情報処理システム
【要約】      (修正有)
【課題】被害にあった当事者が、弁護士への相談費用だけがかかってしまう頻度を抑制する情報処理システム、コンピュータシステム及びプログラムを提供する。
【解決手段】コンピュータシステム1において、WEBサーバ20は、被害を受けた状況に関する少なくとも一つの質問と、少なくとも一つの質問夫々に対する選択肢を提示するための情報を出力する提示部261と、複数の質問夫々に対してユーザが選択した選択肢を含む被害回答情報を取得する取得部262と、被害回答情報に含まれる少なくとも一つの質問夫々について複数の選択肢の夫々が当該ユーザによって選択された選択肢であるか否かを示す要素を含む配列に変換することによって、少なくとも一つの配列を特徴量として生成する変換部263と、変換後の特徴量を機械学習モデルに入力することによって、当該被害について裁判の勝敗の確率を表す情報を出力する出力部521と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7