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特許7047237自動車用ドアヒンジの製造方法及び自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】自動車用ドアヒンジの製造方法及び自動車
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/10 20060101AFI20220329BHJP
   E05D 9/00 20060101ALI20220329BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20220329BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20220329BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20220329BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20220329BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220329BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
E05D7/10
E05D9/00 A
E05D3/02
B22D17/00 B
B22D21/04 A
B22D17/22 H
B60J5/04 L
F16C11/04 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018563742
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2018010319
(87)【国際公開番号】W WO2019176069
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】森永 浩司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久美子
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-101048(JP,A)
【文献】特開2006-214259(JP,A)
【文献】特開2015-121073(JP,A)
【文献】実開平05-057244(JP,U)
【文献】国際公開第2011/030417(WO,A1)
【文献】特表2009-542942(JP,A)
【文献】実開昭56-034963(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/10
B60J 5/04
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、
前記自動車用ドアヒンジは、
前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、
前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、
前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、
前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、
前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し
前記一つのベース部材を、前記軸孔の中心軸線方向が鋳造金型の固定金型と可動金型との分割面に対して直交し、かつ前記可動金型の可動方向と平行となるように製造したことを特徴とする自動車用ドアヒンジの製造方法。
【請求項2】
前記一つのベース部材の前記取付孔を、前記鋳造金型に設けたスライド中子により形成したことを特徴とする請求項記載の自動車用ドアヒンジの製造方法。
【請求項3】
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、
前記自動車用ドアヒンジは、
前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、
前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、
前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、
前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、
前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、
前記螺合体は、前記一方のベース部材の前記軸孔の一方の入口に設けた一方のテーパー部に接触する円錐部を有し、
前記ヒンジ軸は、前記一方のベース部材の前記軸孔の前記一方の入口と反対側の他方の入口に設けた他方のテーパー部に接触する拡径円錐部を有し、
前記螺合体の円錐部の円錐角度を、前記一方のテーパー部のテーパー角度よりも小さくし、
前記ヒンジ軸の拡径円錐部の円錐角度を、前記螺合体の円錐部の円錐角度よりも大きく、かつ前記他方のテーパー部のテーパー角度よりも小さくしたことを特徴とする自動車用ドアヒンジの製造方法。
【請求項4】
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、
前記自動車用ドアヒンジは、
前記ドアの上位を支持するアッパ用ドアヒンジ、及び前記ドアの下位を支持するロア用ドアヒンジを含み、
前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、
前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、
前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、
前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、
前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、
前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、
前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、
前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成としたことを特徴とする自動車用ドアヒンジの製造方法。
【請求項5】
左右のフロントドア及び左右のリアドアを備えた自動車であって、
前記左右のフロントドアの上位及び前記左右のリアドアの上位をそれぞれ車体に支持するアッパ用ドアヒンジと、前記左右のフロントドアの下位及び前記左右のリアドアの下位をそれぞれ前記車体に支持するロア用ドアヒンジを備え、
前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、
前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、
前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、
前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、
前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、
前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、
全ての前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、
全ての前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成とし、
前記左リアドアを車体に支持する前記ロア用ドアヒンジ及び前記アッパ用ドアヒンジと、前記右リアドアを前記車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジとをそれぞれ左右線対称構造とし、
前記左リアドアのロア用ドアヒンジと、前記左フロントドアのロア用ドアヒンジとを同一構造とし、
前記左リアドアのアッパ用ドアヒンジと、前記左フロントドアのアッパ用ドアヒンジとを同一構造とし、
前記右リアドアのロア用ドアヒンジと、前記右フロントドアのロア用ドアヒンジとを同一構造とし、
前記右リアドアのアッパ用ドアヒンジと、前記右フロントドアのアッパ用ドアヒンジとを同一構造としたことを特徴とする自動車。
【請求項6】
左右のフロントドア及び左右のリアドアを備えた自動車であって、
前記左右のフロントドア及び前記左右のリアドアの上位をそれぞれ車体に支持するアッパ用ドアヒンジと、前記左右のフロントドア及び前記左右のリアドアの下位をそれぞれ前記車体に支持するロア用ドアヒンジを備え、
前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、
前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、
前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、
前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、
前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、
前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、
前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、
全ての前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、
全ての前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成とし、
前記左リアドアを車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジと、前記右リアドアを前記車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジとをそれぞれ左右線対称構造とし、
前記右フロントドアのアッパ用ドアヒンジを、前記左リアドアのロア用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、
前記右フロントドアのロア用ドアヒンジを、前記左リアドアのアッパ用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、
前記左フロントドアのアッパ用ドアヒンジを、前記右リアドアのロア用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、
前記左フロントドアのロア用ドアヒンジを、前記右リアドアのアッパ用ドアヒンジを180回転させた構造としたことを特徴とする自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化、生産効率の向上を可能にした自動車用ドアヒンジの製造方法及び自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野においては、自動車のさらなる軽量化が求められている。このために、自動車のドアを支持するドアヒンジにも軽量化が求められている。
【0003】
一方、各種安全装置及び電動装置等の搭載によりドア自体の重量が増える傾向にあり、ドアヒンジのさらなる支持強度の向上が求められている。さらに、ドアの閉じ音にも高級感が要求されるようになってきており、それらの要求に応えるためにはドアヒンジの支持剛性及び取付剛性を向上させることが必要となってきている。
【0004】
また、ドアと車体との色の均質性を確保するため、車体組立工程において、ドアを車体に組み付けてその状態で車体と共に塗装した後に車体から取り外して艤装工程に移行し、艤装工程でドアに各種安全装置及び電動装置等を取り付け、その後、再度車体組立工程でドアを車体に組み付けるようにした脱着作業が採用されていることから、ドアを車体に効率的に脱着できるようにした自動車用ドアヒンジが求められている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の自動車用ドアヒンジは、ドア側に固定されるドアベース部材及び車体側に固定される車体側ベース部材を型鋼により製造するとともに、車体組立工程において、ドアを車体から取り外すことができるようにした脱着機能を有する構成とすることで、板金プレス成型により製造された板金ドアヒンジに比較して、剛性感のある開閉フィーリングを得ることができるとともに、ドアの車体への脱着作業を効率的に行うことができる。しかし、その一方、型鋼の切削に係わる加工時間を多く必要とするため、生産性が悪くコスト高を招くとともに、軽量化の要求に対しては応えられない。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、ドア側ベース及び車体側ベースを鋳物により半完成品を製造し、その後、半完成品をプレス加工で完成品を製造することで、切削加工を必要としないで、生産性を高めることが可能である。しかし、ヒンジ軸がドア側ベースまたは車体側ベースのいずれか一方に一体的に形成される構成であるため、車体に対するドアの脱着機能を有していない。
【0007】
特許文献3に記載の発明は、車体側ベース部材及びドア側ベース部材を板状鋼製の素材を圧造により半完成品を製造し、その後、パンチング等により軸孔を形成することで完成品を製造することで、強度がありながら安価に製造できるようにしたものである。しかし、その一方で圧造を用いて製造するため、製造工程において圧造工程後で軸孔形成工程の前に焼き鈍し工程等を必要とするため、製造工程管理が複雑である。また、素材を板状鋼製としているため、軽量化の要求に対しては応えられない。さらには、その構成上、ドアの脱着機能をも有していない。
【0008】
特許文献4に記載の発明は、鋼製の丸棒から切断工程、加熱工程、熱間鍛造工程、トリミング工程、冷却工程、軸孔形成工程、軸孔仕上工程及び穴形成工程により自動車用ドアヒンジを製造するようにしたものである、しかしながら、製造工程が多くの工程を要するため、製造工程管理が複雑である。また、素材を鋼製の丸棒としているため、軽量化の要求に対しては応えられない。さらには、その構成上、ドアの脱着機能をも有していない。
【0009】
特許文献5に記載の発明は、冷間鍛造により柱状の素材を押圧することにより中間素材を形成し、当該中間素材の不要部をシャー刃を用いて除去することによってドア側ベース部材及び/または車体側ベース部材を製造するようにしたものである。しかしながら、この発明は、軽量化の要求に対して十分に応えることができない。また、その構成上、ドアの脱着機能をも有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3046575号公報
【文献】特開2005-238326号公報
【文献】特許第4625974号公報
【文献】特許第4792536号公報
【文献】特開2017-131997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、自動車用ドアヒンジの分野においては、様々な工法に用いて製造されるドアヒンジが提案されているが、脱着機能を有し、かつ軽量化及び生産効率の向上を可能にした自動車用ドアヒンジについては未だ実現されていない。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、脱着機能を可能にするとともに、重量を軽減し、かつ生産効率を高めることを可能にした自動車用ドアヒンジの製造方法及び自動車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、前記自動車用ドアヒンジは、前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、前記一つのベース部材を、前記軸孔の中心軸線方向が鋳造金型の固定金型と可動金型との分割面に対して直交し、かつ前記可動金型の可動方向と平行となるように製造する。これにより、ドアの脱着機能を可能するとともに、ドアヒンジの重量を軽減し、かつ生産効率を高めることができる。なお、ここで言う抜止め部は、本実施形態に係るヒンジ軸のかしめ部、または当該かしめ部とワッシャを含む構成を定義するものである。さらに、ベース部材に対して孔開け加工を要することなく軸孔を形成できる。
【0015】
好ましくは、前記一つのベース部材の前記取付孔を、前記鋳造金型に設けたスライド中子により形成する。これにより、ベース部材に対して孔開け加工を要することなく取付孔を形成できる。
【0016】
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、前記自動車用ドアヒンジは、前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、前記螺合体は、前記一方のベース部材の前記軸孔の一方の入口に設けた一方のテーパー部に接触する円錐部を有し、前記ヒンジ軸は、前記一方のベース部材の前記軸孔の前記一方の入口と反対側の他方の入口に設けた他方のテーパー部に接触する拡径円錐部を有し、前記螺合体の円錐部の円錐角度を、前記一方のテーパー部のテーパー角度よりも小さくし、前記ヒンジ軸の拡径円錐部の円錐角度を、前記螺合体の円錐部の円錐角度よりも大きく、かつ前記他方のテーパー部のテーパー角度よりも小さくする。これにより、螺合体を用いて、ヒンジ軸を一方のベース部材の軸孔に強固に固定することができる。
【0018】
ドアを車体に開閉可能に支持するための自動車用ドアヒンジの製造方法において、前記自動車用ドアヒンジは、前記ドアの上位を支持するアッパ用ドアヒンジ、及び前記ドアの下位を支持するロア用ドアヒンジを含み、前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成とする。これにより、ドアの脱着作業を容易に行うことができる。
【0019】
左右のフロントドア及び左右のリアドアを備えた自動車であって、前記左右のフロントドアの上位及び前記左右のリアドアの上位をそれぞれ車体に支持するアッパ用ドアヒンジと、前記左右のフロントドアの下位及び前記左右のリアドアの下位をそれぞれ前記車体に支持するロア用ドアヒンジを備え、前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、全ての前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、全ての前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成とし、前記左リアドアを車体に支持する前記ロア用ドアヒンジ及び前記アッパ用ドアヒンジと、前記右リアドアを前記車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジとをそれぞれ左右線対称構造とし、前記左リアドアのロア用ドアヒンジと、前記左フロントドアのロア用ドアヒンジとを同一構造とし、前記左リアドアのアッパ用ドアヒンジと、前記左フロントドアのアッパ用ドアヒンジとを同一構造とし、前記右リアドアのロア用ドアヒンジと、前記右フロントドアのロア用ドアヒンジとを同一構造とし、前記右リアドアのアッパ用ドアヒンジと、前記右フロントドアのアッパ用ドアヒンジとを同一構造とする。これにより、ロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジの共用化を促進して、コストの低減を図ることができる。
【0020】
左右のフロントドア及び左右のリアドアを備えた自動車であって、前記左右のフロントドア及び前記左右のリアドアの上位をそれぞれ車体に支持するアッパ用ドアヒンジと、前記左右のフロントドア及び前記左右のリアドアの下位をそれぞれ前記車体に支持するロア用ドアヒンジを備え、前記アッパ用ドアヒンジ及び前記ロア用ドアヒンジはそれぞれ、前記ドアに固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有するドア側ベース部材と、前記車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔及び当該取付孔に直交する方向の軸孔を有する車体側ベース部材と、前記ドア側ベース部材の軸孔と前記車体側ベース部材の軸孔にそれぞれ挿入され、前記ドア側ベース部材と前記車体側ベース部材とを互いに回動可能に連結するヒンジ軸と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか一方のベース部材と前記ヒンジ軸とが一体回動するように前記ヒンジ軸の一端部に軸方向へ着脱可能に螺合する螺合体と、前記ドア側ベース部材または前記車体側ベース部材のいずれか他方のベース部材と前記ヒンジ軸とが相対回転するように前記他方のベース部材の軸孔と前記ヒンジ軸の他端部との間に介在されるブッシュと、前記ヒンジ軸の他端部が前記他方のベース部材の軸孔から軸方向へ抜止めする抜止め部とを備え、前記ドア側ベース部材及び前記車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材の全ての部分を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造し、全ての前記アッパ用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に下方から着脱可能に螺合する構成とし、全ての前記ロア用ドアヒンジを、前記螺合体が前記ヒンジ軸の一端部に上方から着脱可能に螺合する構成とし、前記左リアドアを車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジと、前記右リアドアを前記車体に支持するロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジとをそれぞれ左右線対称構造とし、前記右フロントドアのアッパ用ドアヒンジを、前記左リアドアのロア用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、前記右フロントドアのロア用ドアヒンジを、前記左リアドアのアッパ用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、前記左フロントドアのアッパ用ドアヒンジを、前記右リアドアのロア用ドアヒンジを180°回転させた構造とし、前記左フロントドアのロア用ドアヒンジを、前記右リアドアのアッパ用ドアヒンジを180回転させた構造とする。これにより、ロア用ドアヒンジ及びアッパ用ドアヒンジの共用化を促進して、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、螺合体をヒンジ軸に対して着脱可能としたことでドアの脱着を可能にするとともに、ドア側ベース部材及び車体側ベース部材のうち少なくとも一つのベース部材を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造することにより重量を軽減し、かつ生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、本発明を適用した自動車ドアヒンジのアッパ用ドアヒンジの斜視図である。(b)は、同じくロア用ドアヒンジの斜視図である。
図2】(a)は、アッパ用ドアヒンジの正面図である。(b)は、ロア用ドアヒンジの正面図である。
図3】アッパ用ドアヒンジの分解斜視図である。
図4】ロア用ドアヒンジの分解斜視図である。
図5】(a)は、アッパ用ドアヒンジの平面図である。(b)は、ロア用ドアヒンジの平面図である。
図6】(a)は、アッパ用ドアヒンジの脱着方法を説明するための正面図である。(b)は、ロア用ドアヒンジの脱着方法を説明するための正面図である。
図7図2(a)におけるVII-VII線縦断面拡大図である。
図8図2(b)におけるVIII-VIII線縦断面拡大図である。
図9図8と同一部位における分解図である。
図10】本発明に係る自動車用ドアヒンジの製造を説明するための概略断面図である。
図11】(a)は、変形例における車体側ベース部材の側面図である。(b)は、(a)におけるXI-XI線断面図である。
図12】自動車に対する例1のドアヒンジの取付形態を説明するための概略説明図である。
図13】自動車に対する例2のドアヒンジの取付形態を説明するための概略説明図である。
図14】自動車に対する例3のドアヒンジの取付形態を説明するための概略説明図である。
図15】自動車に対する例4のドアヒンジの取付形態を説明するための概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。
自動車用ドアヒンジは、ドアの上位を車体に枢支するためのアッパ用ドアヒンジ1Uと、ドアの下位を車体に枢支するためのロア用ドアヒンジ1Lとを含む。車体側面に開閉可能に支持されるスイング式のドアは、アッパ用ドアヒンジ1Uとロア用ドアヒンジ1Lとによって車体に枢支される。
【0024】
図1(a)、図2(a)、図3図5(a)及び図6(a)は、アッパ用ドアヒンジ1Uを示し、図1(b)、図2(b)、図4図5(b)及び図6(b)は、ロア用ドアヒンジ1Lを示す。図7は、アッパ用ドアヒンジ1Uの要部の拡大縦断面図を示し、図8、9は、ロア用ドアヒンジ1Lの要部の拡大縦断面図を示す。
【0025】
本実施形態に係るアッパ用ドアヒンジ1U及びロア用ドアヒンジ1Lは、左側のリアドア(以下、「ドア」という)Dを車体Bに開閉可能に支持する左リアドア用である。なお、右側のリアドアを車体に開閉可能に支持する右リアドア用のアッパ用ドアヒンジ及びロア用ドアヒンジは、左リアドア用のアッパ用ドアヒンジ1U及びロア用ドアヒンジ1Lと左右線対称形状を呈している。
【0026】
本実施形態に係るアッパ用ドアヒンジ1U及びロア用ドアヒンジ1Lにより車体Bに組み付けられたドアDは、車体組立工程において車体Bと共に塗装した後に車体Bから取り外し可能で、取り外した後に艤装工程で各種安全装置及び電動装置等が取り付けられ、その後、再度車体組立工程で車体Bに組み付け可能である。
【0027】
自動車用ドアヒンジの説明においては、先ず、アッパ用ドアヒンジ1Uの各構成要素について説明し、その後に、ロア用ドアヒンジ1Lの各構成要素について説明する。
【0028】
なお、アッパ用ドアヒンジ1U及びロア用ドアヒンジ1Lは、それぞれが取り付けられる車体構造、ドア構造の関係から互いに外観形状が相違するが、各要素の基本的な機能は両者同一である。したがって、アッパ用ドアヒンジ1U及びロア用ドアヒンジ1Lの両者の各構成要素に付与する符号については、両者同一の機能を有する構成要素の符号については、同一のアラビア数字とするとともに、アッパ用ドアヒンジ1Uとロア用ドアヒンジ1Lとを区別するため、アッパ用ドアヒンジ1Uについては、アラビア数字の後に「U」を付与し、ロア用ドアヒンジ1Lについては、アラビア数字の後に「L」を付与する。
【0029】
アッパ用ドアヒンジ1Uは、ドアD側に固定されるドア側ベース部材2Uと、車体B側に固定される車体側ベース部材3Uと、上半部がドア側ベース部材2Uに対して回転可能で、かつ軸線方向へ実質的に抜き取り不能に組み付けられ、下半部が車体側ベース部材3Uに対して回転不能で、かつ軸線方向へ着脱可能に組み付けられて、ドア側ベース部材2Uと車体側ベース部材3Uとを互いに回動し得るように連結可能な上下方向を向くヒンジ軸4Uと、ヒンジ軸4Uの下部に設けられた雄ねじ部41Uに下方から着脱可能に螺合する螺合体5Uとを備え、螺合体5Uを下方からヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uから取り外すことで、車体側ベース部材3Uを車体Bに固定したまま、ドア側ベース部材2Uを車体側ベース部材3Uから取り外し可能な脱着機能を有する。
【0030】
図3、7に示すように、ヒンジ軸4Uは、脱着機能を可能にするため、鉄鋼により形成されるとともに、下半部にあって、ドア側ベース部材3の後述の軸孔32Uに回転不能に挿入され、螺合体5Uが着脱可能に螺合する雄ねじ部41Uと、上半部に設けられドア側ベース部材2Uの後述の軸孔22Uに回転可能に挿入される回転部42Uと、雄ねじ部41Uと回転部42Uとの間に設けられる拡径円錐部43Uと、回転部42Uの上端に設けられる小径部44Uとを一体形成する。拡径円錐部43Uの下側を向く円錐面には、セレーション45Uが刻設される。なお、小径部44Uは、ヒンジ軸4Uをドア側ベース部材2Uの軸孔22Uに挿入された後、ヒンジ軸4Uが軸孔22Uから抜き取りできないようにかしめられる。
【0031】
螺合体5Uは、鉄鋼により形成されるとともに、下半部にあって、6角形の頭部51Uと、上半部にあって、ヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uと螺合可能な雌ねじ部52Uを内周面に刻設した円筒部53Uと、頭部51Uと円筒部53Uとの間にあって、上方へ向けて径が漸次縮径する円錐部54Uとを一体形成する。
【0032】
ドア側ベース部材2Uは、軽量化、生産効率の向上を図るため、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造され、ドアDの取付面(垂直面)に図示略のボルトにより固定されるベース部21Uと、ヒンジ軸4Uの回転部42Uが相対回転可能に挿入される上下方向の軸孔22Uを穿設した軸受部23Uを一体形成する。
【0033】
好ましくは、ドア側ベース部材2Uの表面には、ドアDが鉄鋼の場合、ドアDとの接触面に生じる異種金属接触腐食を防止するため、電着塗装処理が施され、ドアDがアルミニウムの場合、異種金属接触腐食を防止する必要がないため、防塵としてアルマイト処理(陽極酸化処理)が施される。
【0034】
ドア側ベース部材2Uのベース部21Uには、当該ベース部21UをドアDに固定するための図示略のボルトを前方から挿入可能とする前後方向、すなわち軸孔22Uに対して直交する方向へ貫通する取付孔24U、24Uが形成される。
【0035】
ドア側ベース部材2Uの軸受部23Uの外周には、当該外周の面よりも外方へ突出し、ドアDの全開位置を規制するためのストッパ部25Uが設けられる。ストッパ部25Uは、車体側ベース部材3Uの当接面34Uに当接することで、ドアDの全開位置を規制する。
【0036】
図3、7から理解できるように、ドア側ベース部材2Uの軸孔22Uには、ヒンジ軸4Uの回転部42Uが軸孔22U内で円滑に回転できるように、上方から上側の鍔付き形状のブッシュ6U、下方から下側の鍔付き形状のブッシュ7Uがそれぞれ実質的に回転不能に内嵌合される。
【0037】
軸孔22Uに内嵌合された上側のブッシュ6Uから上方へ突出したヒンジ軸4Uの小径部44Uは、軸孔22Uから抜き取りできないようにかしめられる。この場合、上側のブッシュ6Uには予め鍔部61Uが形成されているため、ヒンジ軸4Uのかしめ時に、ブッシュ6Uに鍔加工を施す必要性がない。
好ましくは、かしめ部分と上側のブッシュ6Uの鍔部61Uとの間にワッシャ8Uが介在される。
【0038】
これにより、ヒンジ軸4Uの回転部42Uは、ブッシュ6U、7Uを介してドア側ベース部材2Uの軸孔22Uに回転可能で、かつ軸線方向へ抜き取り不能に組み付けられる。なお、ブッシュ6U、7Uの内周面には、ヒンジ軸4Uの回転部42Uががた付き無く、かつ円滑に回転できるような表面処理が施される。
【0039】
車体側ベース部材3Uは、ドア側ベース部材2Uと同様に、軽量化、生産効率の向上を図るため、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造され、車体Bの取付面(垂直面)に図示略のボルトにより固定されるベース部31Uと、ドア側ベース部材2Uの軸受部23Uよりも下位にあって、ヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uが挿入される上下方向の軸孔32Uを穿設した軸受部33Uを一体形成する。
【0040】
好ましくは、車体側ベース部材3Uの表面には、車体Bが鉄鋼の場合、車体Bとの接触面に生じる異種金属接触腐食を防止するため、電着塗装処理が施され、車体Bがアルミニウムの場合、異種金属接触腐食を防止する必要がないため、アルマイト処理(陽極酸化処理)が施される。
【0041】
ベース部31Uには、当該ベース部31Uを車体Bに固定するための図示略のボルトを車外側から挿入可能とする左右方向、すなわち軸孔32Uに対して直交する方向へ貫通する取付孔35U、35Uが形成される。
【0042】
車体側ベース部材3Uの軸孔32Uには、ヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uが上方から挿入され、下方から螺合体5Uの円筒部53Uが挿入され、この状態で、螺合体5Uの雌ねじ部52Uはヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uに螺合する。これにより、ヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uは、車体側ベース部材3Uの軸孔32Uに回転不能に固定される。また、螺合体5Uを下方からヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uから取り外して、ドアDを上方へ変位させることで、車体側ベース部材3Uを車体B、またドア側ベース部材2UをドアDにそれぞれ固定したまま、ドアDを車体Bから取り外すことができる。
【0043】
なお、アッパ用ドアヒンジ1Uにおいて、螺合体5Uの着脱を下方から行なう理由は、正面視で上下中央部分が外側に膨らんだ湾曲形状しているドアDに対して、螺合体5Uの着脱作業のスペースを容易に確保できるためである。
【0044】
軸孔32Uの上側の入口には、ヒンジ軸4Uの拡径円錐部43Uに設けられたセレーション45Uが当接するテーパー部36Uが設けられ、同じく下側の入口には、螺合体5Uの円錐部54Uが接触するテーパー部37Uが設けられる。
【0045】
螺合体5Uをヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uに螺合して、工具を用いて頭部51Uを締め付けることにより、螺合体5Uの円錐部54Uが車体側ベース部材3Uにおける軸孔32Uの下側のテーパー部37Uに下方から楔作用により内嵌合する。これにより、ヒンジ軸4Uの下半部の雄ねじ部41Uを車体側ベース部材3Uの軸孔32Uに強固に固定することができる。また、螺合体5Uの締付けにより、ヒンジ軸4Uの拡径円錐部43Uのセレーション45Uも軸孔32Uの上側のテーパー部36Uに上方から楔作用により内嵌合する。これにより、ヒンジ軸4Uの下半部の雄ねじ部41Uは、より一層車体側ベース部材3Uの軸孔32Uに強固に固定される。
【0046】
本実施形態においては、螺合体5Uにおける円錐部54Uの円錐角度(図9に示すθ1と同一角度)を26度とし、ヒンジ軸4Uにおける拡径円錐部43Uの円錐角度(同じくθ2と同一角度)を28度とし、軸孔32Uにおける上下のテーパー部36U、37Uのテーパー角(同じくθ3と同一角度)をθ1及びθ2よりも大きい30度としている。すなわち、各部位の角度は、θ1<θ2<θ3の関係となるように設定される。このように角度を設定することにより、螺合体5Uの円錐部54Uを車体側ベース部材3Uにおける軸孔32Uの下側のテーパー部37Uにより確実に内嵌合させ、ヒンジ軸4Uにおける拡径円錐部43Uのセレーション45Uを車体側ベース部材3Uにおける軸孔32Uの上側のテーパー部36Uにより確実に内嵌合させることが可能となる。
【0047】
次に、ロア用ドアヒンジ1Lの各構成要素について説明する。なお、ロア用ドアヒンジ1Lにおけるヒンジ軸4L及び螺合体5Lは、アッパ用ドアヒンジ1Uにおけるヒンジ軸4U及び螺合体5Uと上下対称形状であるため、それらの説明については簡単に行なう。
【0048】
ロア用ドアヒンジ1Lは、ドアD側に固定されるドア側ベース部材2Lと、車体B側に固定される車体側ベース部材3Lと、下半部が車体側ベース部材3Lに対して回転可能で、かつ軸線方向へ実質的に抜き取り不能に組み付けられ、上半部がドア側ベース部材2Lに対して回転不能で、かつ軸線方向へ着脱可能に組み付けられて、ドア側ベース部材2Lと車体側ベース部材3Lとを互いに回動し得るように連結可能な上下方向を向くヒンジ軸4Lと、ヒンジ軸4Lの上半部に設けられた雄ねじ部41Lに上方から着脱可能に螺合する螺合体5Lとを備え、螺合体5Lを上方からヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lから取り外すことで、ドア側ベース部材2Lを車体側ベース部材3Lから取り外し可能な脱着機能を有する。
【0049】
なお、ロア用ドアヒンジ1Lにおいて、螺合体5Lの着脱を上方から行なう理由は、前述のような湾曲形状しているドアDに対して、螺合体5Lの着脱作業のスペースを容易に確保できるためである。
【0050】
図4、8及び図9に示すように、ヒンジ軸4Lは、脱着機能を可能にするため、上半部にあって、螺合体5Lが着脱可能に螺合する雄ねじ部41Lと、下半部に設けられる回転部42Lと、雄ねじ部41Lと回転部42Lとの間に設けられる拡径円錐部43Lと、回転部42Lの下端に設けられる小径部44Lとを一体形成する。拡径円錐部43Lの上側を向く円錐面には、セレーション45Lが刻設される。小径部44Lは、ヒンジ軸4Lを車体側ベース部材3Lの軸孔32Lに挿入した後、ヒンジ軸4Lが軸孔32Lから抜き取りできないようにかしめられる。
【0051】
螺合体5Lは、上半部の頭部51Lと、下半部にあって、ヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lに螺合可能な雌ねじ部52Lを内周面に刻設した円筒部53Lと、頭部51Lと円筒部53Lとの間にあって、下方へ向けて径が漸次縮径する円錐部54Lとを一体形成する。
【0052】
ドア側ベース部材2Lは、軽量化、生産効率の向上を図るため、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造され、ドアDの取付面(垂直面)に図示略のボルトにより固定されるベース部21Lと、ヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lが挿入される上下方向の軸孔22Lを穿設した軸受部23Lを一体形成する。ドア側ベース部材2Lのベース部21Lには、当該ベース部21LをドアDに固定するための図示略のボルトを前方から挿入可能とする前後方向、すなわち軸孔22Lに対して直交する方向へ貫通する取付孔24L、24Lが形成される。
【0053】
ドア側ベース部材2Lの表面には、ドアDとの接触面に生じる異種金属接触腐食を防止するため、ドア側ベース部材2Uと同じ表面処理が施される。
【0054】
ドア側ベース部材2Lの軸受部23Lの外周には、当該外周の面よりも外方へ突出し、ドアDの全開位置を規制するためのストッパ部25Lが設けられる。ストッパ部25Lは、車体側ベース部材3Lの当接面34Lに当接することで、アッパ用ドアヒンジ1Uのストッパ25Uと協働してドアDの全開位置を規制する。
【0055】
ドア側ベース部材2Lの軸孔22Lには、ヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lが下方から挿入され、上方から螺合体5Lの円筒部53Lが挿入され、この状態で、螺合体5Lの雌ねじ部52Lはヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lに螺合する。これにより、ヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lは、ドア側ベース部材2Lの軸孔22Lに回転不能に固定される。また、螺合体5Lを上方からヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lから取り外して、ドアDを上方へ変位させることで、ドア側ベース部材2LをドアD、また車体側ベース部材3Lを車体Bにそれぞれ固定したまま、ドアDの車体Bからの取り外しを可能にする。
【0056】
軸孔22Lの上側の入口部分には、螺合体5Lの円錐部54Lが接触するテーパー部26Lが設けられ、同じく下側の入口部分には、ヒンジ軸4Lの拡径円錐部43Lに設けられたセレーション45Lが当接するテーパー部27Lが設けられる。
【0057】
螺合体5Lをヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lに螺合して工具を用いて締め付けることにより、螺合体5Lの円錐部54Lがドア側ベース部材2Lにおける軸孔22Lの上側のテーパー部26Lに上方から楔作用により内嵌合する。また、これと同時に、ヒンジ軸4Lの拡径円錐部43Lのセレーション45Lが軸孔22Lの下側のテーパー部27Lに下方から楔作用により内嵌合するため、ヒンジ軸4Lの上半部は、強固にドア側ベース部材2Lの軸孔22Lに固定される。
【0058】
本実施形態においては、アッパ用ドアヒンジ1Uと同様に、螺合体5Lにおける円錐部54Lの円錐角度θ1を26度とし、ヒンジ軸4Lにおける拡径円錐部43Lの円錐角度θ2を28度とし、軸孔22Lにおける上下のテーパー部26L、27Lのテーパー角θ3をθ1及びθ2よりも大きい30度としている。これにより、螺合体5Lの円錐部54Lをドア側ベース部材2Lにおける軸孔22Lの上側のテーパー部26Lに確実に内嵌合させ、ヒンジ軸4Lにおける拡径円錐部43Lのセレーション45Lをドア側ベース部材2Lにおける軸孔22Lの下側のテーパー部27Lに確実に内嵌合させることが可能となる。
【0059】
車体側ベース部材3Lは、ドア側ベース部材2Lと同様に、軽量化、生産効率の向上を図るため、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造され、車体Bの取付面(垂直面)に図示略のボルトにより固定されるベース部31Lと、ドア側ベース部材2Lの軸受部23Lよりも下位にあって、ヒンジ軸4Lの回転部42Lが挿入される上下方向の軸孔32Lを穿設した軸受部33Lを一体形成する。
【0060】
ベース部31Lには、当該ベース部31Lを車体Bに固定するための図示略のボルトを車外側から挿入可能とする左右方向、すなわち軸孔32Lに対して直交する方向へ貫通する取付孔35L、35Lが形成される。
【0061】
車体側ベース部材3Lの軸孔32Lには、ヒンジ軸4Lの回転部42Lが軸孔32L内で円滑に回転できるように、上方から上側の鍔付き形状のブッシュ6L、下方から下側の鍔付き形状のブッシュ7Lがそれぞれ実質的に回転不能に内嵌合される。下側のブッシュ7から下方へ突出したヒンジ軸4Lの小径部44Lは、軸孔32Lから抜き取りできないようにかしめられる。好ましくは、かしめ部分と下側のブッシュ7Lの鍔部71Lとの間にワッシャ8Lが介在される。
これにより、ヒンジ軸4Lの回転部42Lは、ブッシュ6L、7Lを介して車体側ベース部材3Lの軸孔32Lに相対回転可能で、かつ軸線方向へ抜き取り不能に組み付けられる。
【0062】
次に、本実施形態に係るドアDの車体Bへの組付け、及び取り外し方の要領について説明する。
【0063】
ドア側ヒンジ部材2L、2Uと車体側ヒンジ部材3L、3Uとを互いに分離した状態で、ドア側ヒンジ部材2U、2Lは、予めドアDに図示略のボルトにより固定され、車体側ヒンジ部材3U、3Lは、予め車体Bに図示略のボルトに固定される。
【0064】
車体組立工程において、ドアDを車体Bに組み付ける場合には、図6から理解できるように、アッパ用ドアヒンジ1Uにおいては、ドア側ヒンジ部材2Uに組み付けられたヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uを車体B側に固定された車体側ヒンジ部材3Uの軸孔32Uに上方から挿入し、ロア用ドアヒンジ1Lにおいては、ドア側ヒンジ部材2Lの軸孔22Lを、車体側ヒンジ部材3Lに組み付けられたヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lに上方から外嵌させる。
【0065】
続いて、アッパ用ドアヒンジ1Uにおいては、螺合体5Uを下方からヒンジ軸4Uの雄ねじ部41Uに螺合して締め付ける。ロア用ドアヒンジ1Lにおいては、螺合体5Lを上方からヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lに螺合して締め付ける。これにより、ドアDは、車体Bに対して仮組付けされる。
【0066】
続いて、車体組立工程で塗装及びその他の処理が終了した後、アッパ用ドアヒンジ1Uにおいては、螺合体5Uを下方からヒンジ軸4の雄ねじ部41Uから取り外し、ロア用ドアヒンジ1Lにおいては、螺合体5Lを上方からヒンジ軸4Lの雄ねじ部41Lから取り外す。これにより、ドア側ベース部材2L、2UにおいてはドアDに固定したまま、車体側ベース部材3L、3Uにおいては車体Bに固定したままの状態で、ドアDを車体Bから取り外すことができる。取り外されたドアDは、艤装工程に移行されて、各種装置が搭載される。各種装置が搭載されたドアDは、前述のように、車体Bに組み付けられ、螺合体5L、5Uはそれぞれヒンジ軸4L、4Uの雄ねじ部41L、41Uに本締めされる。
【0067】
次に、アッパ用ドアヒンジ1Uのドア側ヒンジ部材2U及び車体側ヒンジ部材3U、並びにロア用ドアヒンジ1Lのドア側ヒンジ部材2L及び車体側ヒンジ部材3Lの製造方法について説明する。なお、各ヒンジ部材2U、2L、3U、3Lの製造方法は、全て同一であるので、以下の説明においては、アッパ用ドアヒンジ1Uのドア側ヒンジ部材2Uを例にとって説明する。他のヒンジ部材2L、3L、3Uについては、当該説明から容易に理解することができる。
【0068】
図10は、ドア側ヒンジ部材2Uを製造するための鋳造金型100の概略断面説明図である。
本実施形態に係るドア側ヒンジ部材2Uの製造製法は、素材であるアルミニウム合金を溶融した溶湯をプランジャにより高圧で注湯するアルミダイカスト製法に基づくものである。鋳造金型100は、固定金型200と可動金型300とスライド中子400、500とを備えて、固定金型200と可動金型300とにより鋳造金型100内にキャビティ600が画成されるように構成されている。
【0069】
キャビティ600には、図示略の給湯口より注入された溶湯700がスリーブ800内での図示略のプランジャの摺動によって充填される。
【0070】
可動金型300は、可動型分割面301に対向する固定金型200の固定型分割面201に直交する方向、即ち、図10の左右方向へ進退可能である。可動金型300が図10の右方へ前進し可動型分割面301と固定型分割面201とが互いに当接し合うことにより型締めが行われてキャビティ600が画成される。また、可動金型300が図10の左方へ後退し可動型分割面301と固定型分割面201とが互いに離間し合うことにより型開きが行われるように構成されている。
好ましくは、鋳造による成型品であるドア側ヒンジ部材2Uが複数取りできるように、キャビティ600を画成する。
【0071】
スライド中子400は、可動金型300に設けられたガイド孔302内に上下動可能に挿入され、キャビティ600内に進退可能に構成されており、図10において下降し、キャビティ600に対して図10に示される状態となったときに型締め可能なスライド中子の位置となる。また、可動金型300に対して図10の上方へ移動してキャビティ600から退出することにより、キャビティ600で凝固したドア側ヒンジ部材2Uを可動金型300から取り外し可能な状態となるように構成されている。
【0072】
スライド中子500は、固定金型200に設けられたガイド孔202内に上下動可能に挿入され、キャビティ600内に進退可能に構成されており、図10において下降し、キャビティ600に対して図10に示される状態となったときに型締め可能なスライド中子の位置となる。また、固定金型200に対して図10の上方へ移動してキャビティ600から退出することにより、キャビティ600で凝固したドア側ヒンジ部材2Uを固定金型200から取り外し可能な状態となるように構成されている。
【0073】
キャビティ600から取り外された成型品であるドア側ヒンジ部材2Uは、仕上げのために必要な部分をバリ取りされて完成品となる。
【0074】
キャビティ600内でのドア側ヒンジ部材2Uは、軸孔22Uの中心軸線Xの方向が図10において左右方向、すなわち可動金型300の進退方向と平行になるように製造される。これにより、ドア側ヒンジ部材2Uの軸孔22Uを別工程で孔開け加工を施すことなく形成できる。
【0075】
ドア側ヒンジ部材2Uの取付孔24U、24Uは、固定金型200及び可動金型300にそれぞれ設けたスライド中子400、500により形成される。これにより、ドア側ヒンジ部材2Uを鋳造により製造した後、取付孔24U、24Uを形成するため、別工程で孔開け加工を必要としない。
【0076】
図10において、ドア側ヒンジ部材2Uのベース部21Uの左部及び右部には、可動金型300の進退方向、すなわち軸孔22Uの中心軸線Xの方向に対して約0.3度以下の鋳造抜き勾配が形成される。
【0077】
これにより、上述から理解できるように、ロア用ヒンジ部材1L及びアッパ用ヒンジ部材1Uを本実施形態のような構成とするとともに、各ヒンジ部材2L、2U、3L、3Uを素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造することによって、車体組立工程において、ドア側ヒンジ部材2L、2UをドアD、また車体側ヒンジ部材3L、3Uを車体Bにそれぞれ固定したまま、車体Bに対するドアDの脱着を可能にし、かつロア用ヒンジ部材1L及びアッパ用ヒンジ部材1Uの軽量化、生産効率の向上を図ることができる。
【0078】
図11(a)、(b)は、本発明に係る各ヒンジ部材2L、2U、3L、3Uを鋳造により製造するための変形例を示す。
【0079】
例えば、図1(b)から理解できるように、ロア用ドアヒンジ1Lにおける車体側ヒンジ部材3Lのように、ベース部31Lに設けられる2個の取付孔35L、35Lが互いに前後に離間して並んでいる構成、または取付孔35Lが1個の構成の場合には、スライド中子を用いることなく、取付孔35Lを鋳造により成型可能である。これは、図11(a)、(b)に示すように、取付孔35L、35Lが固定金型200及び図11(b)において左右方向へ移動可能な可動金型300に対してアンダーカットとならないように、ベース部31Lの表面に、取付孔35Lの左半部に繋がり、かつベース部31Lの肉厚の1/2の深さの凹部38Lを軸孔32Lの中心軸線Xの方向と平行となるように設け、ベース部31Lの裏面に、取付孔35Lの右半部に繋がり、かつベース部31Lの肉厚の1/2の深さの凹部39Lを中心軸線Xと平行になるように設けることで達成される。
【0080】
したがって、本発明においては、各ヒンジ部材2L、2U、3L、3Uをアルミダイカスト製法に基づいて製造する場合、各取付孔24L、24U、35L、35Uの位置を適宜変更することで、スライド中子は必ずしも必要しない。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更及びそれらの組み合わせを施すことが可能である。
【0082】
(a)ドア側ベース部材2L、2U、車体側ベース部材3L、3Uのうち少なくとも一つのベース部材を、素材をアルミニウム合金とする鋳造により製造する。
【0083】
(b)自動車に対する例1のドアヒンジの取付形態を図12に基づいて説明する。
左リアドアのロア用ドアヒンジ1L及びアッパ用ドアヒンジ1Uと、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L及びアッパ用ドアヒンジ10Uとを、それぞれ左右線対称構造とし、左リアドアのロア用ドアヒンジ1Lを、左フロントドアのロア用ドアヒンジ20Lと共用し、左リアドアのアッパ用ドアヒンジ1Uを、左フロントドアのアッパ用ドアヒンジ20Uと共用し、右リアドアのロア用ドアヒンジ10Lを、右フロントドアのロア用ドアヒンジ30Lと共用し、右リアドアのアッパ用ドアヒンジ10Uを、右フロントドアのアッパ用ドアヒンジ30Uと共用する。
この場合には、車体Bに対する左右のリアドア及びフロントドア組付けは下方移動となり、同じく取外しは上方移動となる。
このような構成とすることにより、ドア用ドアヒンジ1L、10Lの共用化を促進してコストの低減を図ることができる。
さらに、アッパ用ドアヒンジ1U、10U、20U、30Uにおいては、全て螺合体をヒンジ軸に対して下方から着脱可能とし、ロア用ドアヒンジ1L、10L、20L、30Lにおいては、全て螺合体をヒンジ軸に対して上方から着脱可能とすることができ、ドアの脱着作業を容易に行うことができる。
【0084】
(c)自動車に対する例2のドアヒンジの取付形態を図13に基づいて説明する。
左リアドアのロア用ドアヒンジ1L及びアッパ用ドアヒンジ1Uと、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L及びアッパ用ドアヒンジ10Uとを、それぞれ左右線対称構造とし、左リアドアのロア用ドアヒンジ1Lを、右フロントドアのアッパ用ドアヒンジ30U(取付形態は、ロア用ドアヒンジ1Lを180°回転させた形態)と共用し、左リアドアのアッパ用ドアヒンジ1Uを、右フロントドアのロア用ドアヒンジ30L(取付形態は、ロア用ドアヒンジ1Uを180°回転させた形態)と共用し、右リアドアのロア用ドアヒンジ10Lを、左フロントドアのアッパ用ドアヒンジ20U(取付形態は、ロア用ドアヒンジ10Lを180°回転させた形態)と共用し、右リアドアのアッパ用ドアヒンジ10Uを、左フロントドアのロア用ドアヒンジ20L(取付形態は、ロア用ドアヒンジ10Uを180°回転させた形態)と共用する。
この場合には、車体Bに対する左右のリアドアの組付けは下方移動となり、同じく取外しは上方移動となる。また、車体Bに対する左右のフロントドアの組付けは上方移動となり、同じく取外しは下方移動となる。
このような構成とすることにより、ドア用ドアヒンジ1L、10Lの共用化を促進してコストの低減を図ることができる。
さらに、アッパ用ドアヒンジ1U、10U、20U、30Uにおいては、全て螺合体をヒンジ軸に対して下方から着脱可能とし、ロア用ドアヒンジ1L、10L、20L、30Lにおいては、全て螺合体をヒンジ軸に対して上方から着脱可能とすることができ、ドアの脱着作業を容易に行うことができる。
【0085】
(d)自動車に対する例3のドアヒンジの取付形態を図14に基づいて説明する。
左リアドアのロア用ドアヒンジ1L’及びアッパ用ドアヒンジ1U’と、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L’及びアッパ用ドアヒンジ10U’とを、それぞれ左右線対称構造とし、左リアドアのロア用ドアヒンジ1L’を、左フロントドアのロア用ドアヒンジ20L’と共用し、左リアドアのアッパ用ドアヒンジ1U’、左フロントドアのアッパ用ドアヒンジ20U’と共用し、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L’を、右フロントドアのロア用ドアヒンジ30L’と共用し、右リアドアのアッパ用ドアヒンジ10U’を、右フロントドアのアッパ用ドアヒンジ30U’と共用する。
なお、ロア用ドアヒンジ1L’は、図12及び図13に示すアッパ用ドアヒンジ1Uと上下線対称構成であり、アッパ用ドアヒンジ1U’は、図12及び図13に示すロア用ドアヒンジ1Lと上下線対称構成である。
この場合には、車体Bに対する左右のリアドア及びフロントドア組付けは上方移動となり、同じく取外しは下方移動となる。
このような構成とすることにより、ドア用ドアヒンジの共用化を促進してコストの低減を図ることができる。
さらに、アッパ用ドアヒンジ1U’、10U’、20U’、30U’においては、全て螺合体をヒンジ軸に対して下方から着脱可能とし、ロア用ドアヒンジ1L’、10L’、20L’、30L’においては、全て螺合体をヒンジ軸に対して上方から着脱可能とすることができ、ドアの脱着作業を容易に行うことができる。
【0086】
(e)自動車に対する例3のドアヒンジの取付形態を図15に基づいて説明する。
左リアドアのロア用ドアヒンジ1L’及びアッパ用ドアヒンジ1U’と、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L’及びアッパ用ドアヒンジ10U’とを、それぞれ左右線対称構造とし、左リアドアのロア用ドアヒンジ1L’を、右フロントドアのアッパ用ドアヒンジ30U’(取付形態は、ロア用ドアヒンジ1L’を180°回転させた形態)と共用し、左リアドアのアッパ用ドアヒンジ1U’を、右フロントドアのロア用ドアヒンジ30L’ (取付形態は、ロア用ドアヒンジ1U’を180°回転させた形態)と共用し、右リアドアのロア用ドアヒンジ10L’を、左フロントドアのアッパ用ドアヒンジ20U’ (取付形態は、ロア用ドアヒンジ10L’を180°回転させた形態)と共用し、右リアドアのアッパ用ドアヒンジ10U’を、左フロントドアのロア用ドアヒンジ20L’ (取付形態は、ロア用ドアヒンジ10U’を180°回転させた形態)と共用する。
この場合も、図14に示す実施形態と同様に、ロア用ドアヒンジ1L’は、図12及び図13に示すアッパ用ドアヒンジ1Uに対して上下線対称構成であり、アッパ用ドアヒンジ1U’は、図12及び図13に示すロア用ドアヒンジ1Lに対して上下線対称構成である。
この場合には、車体Bに対する左右のリアドアの組付けは上方移動となり、同じく取外しは下方移動となる。また、車体Bに対する左右のフロントドアの組付けは下方移動となり、同じく取外しは上方移動となる。
このような構成とすることにより、ドア用ドアヒンジの共用化を促進してコストの低減を図ることができる。
さらに、アッパ用ドアヒンジ1U’、10U’、20U’、30U’においては、全て螺合体をヒンジ軸に対して下方から着脱可能とし、ロア用ドアヒンジ1L’、10L’、20L’、30L’においては、全て螺合体をヒンジ軸に対して上方から着脱可能とすることができ、ドアの脱着作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
1L ロア用ドアヒンジ 1U アッパ用ドアヒンジ
2L、2U ドア側ベース部材 21L、21U ベース部
22L、22U 軸孔 23L、23U 軸受部
24L、24U 取付孔 25L、25U ストッパ部
3L、3U 車体側ベース部材 31L、31U ベース部
32L、32U 軸孔 33L、33U 軸受部
34L、34U 当接面 35L、35U 取付孔
26L、36U テーパー部 27L、37U テーパー部
38L、39L 凹部 4L、4U ヒンジ軸
41L、41U 雄ねじ部 42L、42U 回転部
43L、43U 拡径円錐部 44L、44U 小径部
45L、45U セレーション 5L、5U 螺合体
51L、51U 頭部 52L、52U 雌ねじ部
53L、53U 円筒部 54L、54U 円錐部
6U、7U ブッシュ 6L、7L ブッシュ
61U、71L 鍔部 8L、8U ワッシャ
100 鋳造金型 200 固定金型
201 固定型分割面 300 可動金型
301 可動型分割面 202、302 ガイド孔
400、500 スライド中子 600 キャビティ
700 溶湯 800 スリーブ
B 車体 D ドア
X 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15