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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20220329BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220329BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20220329BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20220329BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C08G59/62
C08L63/00 C
C08K3/28
C08J5/18 CFC
B32B27/20 A
B32B27/38
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017066046
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018168262
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-10-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282488(JP,A)
【文献】特開昭63-081117(JP,A)
【文献】特開2015-117302(JP,A)
【文献】特開2017-073432(JP,A)
【文献】特開平11-133443(JP,A)
【文献】特開平10-218976(JP,A)
【文献】特開平11-352500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/00- 5/24
B32B 27/00- 27/42
H05K 1/00- 1/18
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~9.5質量%であり、
(D)成分の含有量が、10~60質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~10質量%であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(F)無機充填材の含有量が50質量%以下である、プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(但し、液晶シール剤を除く。)
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~10質量%である、プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(但し、シリカ膜により被覆されたチタンブラックを含む樹脂組成物、及び、液晶シール剤を除く)。
【請求項4】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.1~40質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(但し、ビス[4-(2,3-エポキシプロピルチオ)フェニル]スルフィドを除く。)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分中の窒化チタンの含有量が、(C)成分の全体質量を100質量%としたとき、20質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1、4~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
半導体封止用である、請求項1、4~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、(C)チタンブラックを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(F)無機充填材の含有量が50質量%以下である樹脂組成物の層を含む、シート状積層材料(但し、繊維基材を含むシート状積層材料及び液晶セルを除く。)
【請求項10】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、(C)チタンブラックを含有する樹脂組成物(但し、シリカ膜により被覆されたチタンブラックを含む樹脂組成物を除く)の層を含む、シート状積層材料(但し、繊維基材を含むシート状積層材料及び液晶セルを除く。)
【請求項11】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.1~40質量%である、請求項9又は10に記載のシート状積層材料。
【請求項12】
(A)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(但し、ビス[4-(2,3-エポキシプロピルチオ)フェニル]スルフィドを除く。)を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項13】
(C)成分中の窒化チタンの含有量が、(C)成分の全体質量を100質量%としたとき、20質量%以上である、請求項9~12のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項14】
樹脂組成物の層の厚さが100μm以下である、請求項9~13のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項15】
樹脂組成物の層の厚さが20μm以下である、請求項9~14のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項16】
(F)成分の平均粒子径が3μm以下である、請求項9~15のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項17】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項9~16のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項18】
半導体封止用である、請求項9~16のいずれか1項に記載のシート状積層材料。
【請求項19】
請求項9~17のいずれか1項に記載のシート状積層材料の樹脂組成物の層を熱硬化して得られた絶縁層(但し、液晶シール剤を除く。)を含む、プリント配線板。
【請求項20】
回路基板と、該回路基板に実装された半導体と、該半導体を封止する封止材(但し、液晶シール剤を除く。)とを含み、封止材が、請求項16に記載のシート状積層材料の樹脂組成物の層の硬化物から形成されている、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、該樹脂組成物を用いたシート状積層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路部品は、近年、微細化・薄膜化が進められており、その中に含まれる絶縁部材には高い絶縁性が求められるようになっている。電子回路部品は用途によって染料や顔料等の着色剤によって黒色に着色することが求められるが、黒色着色剤であるカーボンブラックは導電性であるため薄膜絶縁層の絶縁信頼性において懸念がある。非導電性をもたらす黒色着色剤としては、窒化チタンと、一酸化チタン、二酸化チタン等の酸化チタンとから構成されるチタンブラックが挙げられ、該チタンブラックを使用して絶縁部材を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-81117号公報
【文献】特開昭63-215774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チタンブラックは、半導体実装時などの高温の熱履歴で窒化チタンならびに一酸化チタンが二酸化チタンに酸化され、その成分構成比が変化することに伴い褪色する課題があることを本発明者らは見出した。また、チタンブラックを使用する場合、高誘電率の絶縁部材に帰着する傾向がある。
【0005】
本発明は、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の絶縁部材をもたらす樹脂組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題につき鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基を有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~10質量%である樹脂組成物が上記課題を実現し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基を有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有する樹脂組成物であって、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~10質量%である、樹脂組成物。
[2] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.1~40質量%である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (D)成分の含有量が、5質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分中の窒化チタンの含有量が、(C)成分の全体質量を100質量%としたとき、20質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] プリント配線板の絶縁層用又は半導体封止用である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された樹脂組成物層を含む、シート状積層材料。
[7] 樹脂組成物層の厚さが100μm以下である、[6]に記載のシート状積層材料。
[8] 樹脂組成物層の厚さが20μm以下である、[6]又は[7]に記載のシート状積層材料。
[9] [6]~[8]のいずれかに記載のシート状積層材料の樹脂組成物層を熱硬化して得られた絶縁層を含む、プリント配線板。
[10] 回路基板と、該回路基板に実装された半導体と、該半導体を封止する封止材とを含み、封止材が、[6]~[8]のいずれかに記載のシート状積層材料の樹脂組成物層の硬化物から形成されている、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の絶縁部材をもたらす樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基を有する化合物、(C)チタンブラック及び(D)有機溶剤を含有し、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.5~10質量%であることを特徴とする。
【0011】
チタンブラックは、非導電性の着色剤であり、それを使用して形成される絶縁部材は、薄膜絶縁信頼性に優れることが期待される。しかしながら、チタンブラックを使用して絶縁部材を形成すると、半導体実装時などの高温の熱履歴で窒化チタンならびに一酸化チタンが二酸化チタンに酸化され、その成分構成比が変化することに伴い褪色する課題のあることを本発明者等は見出した。
【0012】
近年、プリント配線板や半導体パッケージ等の電子回路部品を製造する際に、シート状積層材料を用いて絶縁部材を形成する技術が提案されているが(例えば、特開2011-132507号公報)、とりわけ、斯かる技術の適用に際して、上述のチタンブラックの褪色の課題は深刻化する傾向にあることを本発明者らは確認している。シート状積層材料を作製するに際して、チタンブラックを含有する樹脂組成物は樹脂ワニス(樹脂インク)の状態で準備され、該樹脂ワニスを乾燥・固化して樹脂層を形成するが、樹脂ワニス形態でのチタンブラックと雰囲気酸素との接触のし易さ、乾燥・固化の際の入熱等が影響して、その後の半導体実装時などの高温の熱履歴によりチタンブラックの成分構成比が変化し易い状態となったことが一因と考えられる。
【0013】
これに対し、所定量のチタンブラックと組み合わせて、フェノール性水酸基を有する化合物を含有すると共に、有機溶剤を含有する本発明の樹脂組成物は、本来的にチタンブラックに期待される薄膜絶縁信頼性を高いレベルにて実現すると共に、低誘電率を呈する絶縁部材をもたらすことが可能であり、さらには、シート状積層材料の作製に好適な樹脂ワニスの状態で準備する場合に、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制することができる。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は(A)エポキシ樹脂(「(A)成分」ともいう。)を含む。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学(株)製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG-100」、「CG-500」、三菱化学(株)製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(A)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:15の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)シート状積層材料の形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)シート状積層材料の形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.5~1:10の範囲がより好ましく、1:0.7~1:8の範囲がさらに好ましい。
【0019】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下である。
【0020】
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0021】
(A)成分のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0022】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0023】
一実施形態において、(A)成分中のナフタレン型エポキシ樹脂の含有量は、(A)成分の不揮発成分を100質量%としたとき、12質量%以下(好ましくは10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下)である。他の実施形態において、(A)成分は、ナフタレン型エポキシ樹脂を実質的に含有しない。ここで、「ナフタレン型エポキシ樹脂を実質的に含有しない」とは、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有量が1質量%未満であることを表す。
【0024】
<(B)フェノール性水酸基を有する化合物>
本発明の樹脂組成物は、(B)フェノール性水酸基を有する化合物(「(B)成分」ともいう。)を含む。フェノール性水酸基とは、芳香環構造の水素原子が水酸基(ヒドロキシ基)で置換された形で存在する水酸基をいう。
【0025】
(B)成分としては、その分子中にフェノール性水酸基を有する限り特に限定されないが、後述する(C)成分との組み合わせにおいて、高温熱履歴に伴う褪色を抑制する観点から、1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上含む化合物が好ましい。(B)成分の水酸基当量は、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下、10000以下、5000以下、2000以下、又は1000以下である。該水酸基当量の下限は、好ましくは50以上、より好ましくは80以上、100以上、又は120以上である。なお、水酸基当量とは、1グラム当量の水酸基を含む樹脂のグラム数である。
【0026】
(B)成分としては、例えば、1分子当たりフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー及びポリマーの1種以上が挙げられ、中でも、シート状積層材料の作製に好適な樹脂ワニスの状態で樹脂組成物を準備する場合に、高温熱履歴に伴う褪色をより一層抑制し得る観点から、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイドから選ばれる1種以上が好ましく、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイドから選ばれる1種以上がより好ましい。本発明の樹脂組成物において、(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)成分としては、例えば、フェノール性水酸基を有し且つエポキシ樹脂を硬化する機能を有する化合物(以下、単に「フェノール性水酸基を有する硬化剤」という。)、フェノール性水酸基を有し且つ樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与する機能を有する化合物(以下、単に「フェノール性水酸基を有する難燃剤」という。)を使用してよい。フェノール性水酸基を有する硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性(ピール強度)の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤及びトリアジン骨格含有ナフトールノボラック系硬化剤が好ましい。フェノール性水酸基を有する難燃剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する有機リン系難燃剤、フェノール性水酸基を有する有機系窒素含有リン化合物が挙げられ、中でも、フェノール性水酸基を有する有機リン系難燃剤(例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド)が好ましい。
【0027】
(B)成分の具体例としては、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC(株)製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-1356」、「TD2090」、(株)三光製の「HCA-HQ」等が挙げられる。
【0028】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(C)成分との組み合わせにおいて、高温熱履歴に伴う褪色を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上である。(B)成分の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下である。
【0029】
<(C)チタンブラック>
本発明の樹脂組成物は、(C)チタンブラック(「(C)成分」ともいう。)を含む。チタンブラックは、樹脂との混合系において非導電性をもたらす黒色着色剤であり、該チタンブラックを含む絶縁部材は高い薄膜絶縁信頼性を呈する。本発明の樹脂組成物において、チタンブラックは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
先述のとおり、本発明者等は、チタンブラックを使用して絶縁部材を形成すると、半導体実装時などの高温の熱履歴で褪色する課題のあることを見出した。とりわけ、プリント配線板や半導体パッケージ等の電子回路部品を製造する際に、シート状積層材料を用いて絶縁部材を形成する技術の適用に際して、斯かる課題が深刻化することを本発明者等は確認している。これに対し、所定量のチタンブラックと組み合わせて、フェノール性水酸基を有する化合物を含有すると共に、有機溶剤を含有する本発明の樹脂組成物によれば、本来的にチタンブラックに期待される薄膜絶縁信頼性を高いレベルにて実現すると共に、低誘電率を呈する絶縁部材をもたらすことが可能であり、さらには、シート状積層材料の作製に好適な樹脂ワニスの状態で準備する場合に、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制することができる。
【0031】
薄膜絶縁信頼性を高いレベルにて実現すると共に、低誘電率を呈する絶縁部材をもたらすことが可能であり、さらには、樹脂ワニスの状態で準備する場合に、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制し得る観点から、(C)成分中の窒化チタンの含有量は、(C)成分の全体質量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上である。該含有量の上限は、通常、80質量%以下、75質量%以下である。
【0032】
一実施形態において、(C)成分中の窒化チタンと酸化チタン(一酸化チタン、二酸化チタン等)との質量比[窒化チタン/酸化チタン]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上、特に好ましくは0.45以上、0.5以上、0.55以上、又は0.6以上である。該質量比の上限は、通常、0.8以下、0.75以下である。
【0033】
(C)成分の平均粒子径は特に限定されないが、適度な粘度を有する樹脂組成物が得られ易い観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上、40nm以上、又は50nm以上である。該平均粒子径の上限は、良好な充填密度を実現する観点から、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、1μm以下、0.8μm以下、又は0.5μm以下である。(C)成分の平均粒子径は、後述する(F)成分の平均粒子径について説明する方法と同様にして測定することができる。
【0034】
(C)成分として、チタンブラックをそのまま使用してもよい。あるいはまた、分散性を向上させて所期の黒色を呈する樹脂組成物(ひいては絶縁部材)を得る観点から、その表面を分散剤により処理したチタンブラックを使用してもよい。
【0035】
(C)成分の具体例としては、三菱マテリアルズ(株)製の「13MC」、「13M」、「12S」、「13MT」が挙げられる。
【0036】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、所期の黒色を呈すると共に低誘電率の絶縁部材を実現する観点から、0.5~10質量%の範囲である。(C)成分の含有量の下限は、好ましくは0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、好ましくは9.5質量%以下、9質量%以下、又は8.5質量%以下である。また、高温熱履歴に伴う褪色を抑制する観点から、(B)成分に対する(C)成分の質量比((C)成分/(B)成分)は、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、60以下、50以下、40以下、30以下又は20以下である。該質量比の下限は特に限定されないが、好ましくは0.0125以上、より好ましくは0.02以上、0.03以上、0.04以上又は0.05以上である。
【0037】
<(D)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、(D)有機溶剤(「(D)成分」ともいう。)を含む。(D)成分を含むことにより、本発明の樹脂組成物は、樹脂ワニス(樹脂インク)の状態で準備することができ、シート状積層材料の作製に好適に使用することができる。
【0038】
有機溶剤としては、1気圧下での沸点が好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、130℃以下、又は120℃以下の有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、他の成分と共に樹脂ワニスの状態で樹脂組成物を調製し得る限り特に限定されない。(D)成分の含有量は、樹脂組成物全体の質量を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、又は20質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下又は40質量%以下である。
【0040】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、無機充填材、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤及び有機充填材からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0041】
-(E)熱可塑性樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(E)熱可塑性樹脂(「(E)成分」ともいう。)をさらに含んでもよい。本発明の樹脂組成物が(E)成分を含む場合、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の絶縁部材をもたらすという所期の効果を奏しつつ、更に良好な柔軟性(ひいては優れたクラック耐性)を呈する絶縁部材を実現することが可能である。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000~70,000の範囲が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましく、20,000~60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0044】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」、「YL6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0045】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0046】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0047】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0048】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0049】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0050】
(E)成分を使用する場合、樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、本発明の所期の効果を奏しつつクラック耐性にも優れる絶縁部材を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、又は3質量%以上である。(E)成分の含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下又は10質量%以下である。
【0051】
-(F)無機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(F)無機充填材(「(F)成分」ともいう。)をさらに含んでもよい。本発明の樹脂組成物が(F)成分を含む場合、線熱膨張係数が一層低い絶縁部材を実現することが可能である。
【0052】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。市販されている球形シリカとして、(株)アドマテックス製「SO-C2」、「SO-C1」、Unimin社製「IMSIL A-8」、「IMSIL A-10」等が挙げられる。
【0053】
無機充填材の平均粒径は、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下、0.7μm以下、又は0.5μm以下である。無機充填材の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上である。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA-500」、「LA-750」、「LA-950」等を使用することができる。
【0054】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0055】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0056】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0057】
(F)成分を使用する場合、線熱膨張係数の低い絶縁部材を得る観点から、樹脂組成物中の(F)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上である。(F)成分の含有量の上限は、得られる絶縁部材の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下である。
【0058】
-(G)硬化剤-
本発明の樹脂組成物は、(G)硬化剤(「(G)成分」ともいう。)をさらに含んでもよい。ここで、(G)成分は、(B)成分とは異なる成分、すなわち、フェノール性水酸基を有する硬化剤以外の硬化剤である。
【0059】
(G)成分としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。(G)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。
【0061】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0062】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0063】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0064】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0065】
エポキシ樹脂と硬化剤[フェノール性水酸基を有する硬化剤及び(G)成分]との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0066】
-(H)硬化促進剤-
本発明の樹脂組成物は、(H)硬化促進剤(「(H)成分」ともいう。)をさらに含んでもよい。(H)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。(H)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(H)成分を使用する場合、樹脂組成物中の(H)成分の含有量は特に限定されないが、0.05質量%~3質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0067】
-(I)有機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(I)有機充填材(「(I)成分」ともいう。)をさらに含んでもよい。(I)成分としては、電子回路部品の絶縁部材を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられ、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、アイカ工業(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。(I)成分を使用する場合、樹脂組成物中の(I)成分の含有量は特に限定されないが、1質量%~20質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、及び密着性付与剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0069】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0070】
本発明の樹脂組成物の粘度(23℃)は、好ましくは50mPa・s~5Pa・s、より好ましくは100mPa・s~1Pa・sである。
【0071】
本発明の樹脂組成物を用いて形成した絶縁部材は、黒色を呈する。例えば、本発明の樹脂組成物を用いて形成した絶縁部材の明度指数(dL)は、200μm厚において、好ましくは-62未満、より好ましくは-63未満、さらに好ましくは-64未満、-66未満、-68未満、又は-70未満である。明度指数(dL)は、後述の<明度指数dLの測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物を用いて形成した絶縁部材は、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制することができる。例えば、本発明の樹脂組成物を用いて形成した絶縁部材は、3回のリフロー処理(最高温度260℃)に付した後も、高い明度指数(dL)を維持する。3回のリフロー処理に付す前の明度指数(dL)をdL、3回のリフロー処理に付した後の明度指数(dL)をdLとしたとき、本発明の樹脂組成物を用いて形成した絶縁部材(200μm厚)は、dLとdLの差|dL-dL|が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、1以下、又は0である。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の絶縁部材を実現できる。したがって本発明の樹脂組成物は、黒色に着色することが求められる電子回路部品の絶縁部材を形成するために好適に使用することができる。例えば、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)、又は、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、シート状積層材料の作製に好適な樹脂ワニスの状態で準備する場合に、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制することが可能である。したがって本発明の樹脂組成物は、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料を形成するために好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。
【0075】
[シート状積層材料]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、該樹脂組成物から樹脂組成物層を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0076】
シート状積層材料としては、以下に示す接着フィルム、プリプレグが好ましい。
【0077】
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。
【0078】
本発明のシート状積層材料は、絶縁性に優れる絶縁部材をもたらす。例えば、配線のライン/スペース(L/S)比が5μm/5μmと小さい場合であっても、配線の線間絶縁性に優れる絶縁部材を実現可能である。一実施形態において、樹脂組成物層の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、50μm以下又は40μm以下である。本発明のシート状積層材料は、とりわけ薄膜絶縁性に優れる絶縁部材を実現することができる。したがって一実施形態において、樹脂組成物層の厚さは、30μm以下であってもよく、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下又は10μm以下であってもよい。本発明のシート状積層材料は、電子回路部品の微細化・薄膜化に著しく寄与するものである。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上などとし得る。
【0079】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0080】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0081】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0082】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」などが挙げられる。
【0083】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0084】
接着フィルムは、例えば、樹脂組成物(樹脂ワニス)を、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0085】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の(D)成分の含有量が好ましくは5質量%以下、4質量%以下又は3質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の(D)成分の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の(D)成分を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0086】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0087】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸し乾燥させて形成される。斯かる実施形態において、樹脂組成物を含浸させた乾燥後のシート状繊維基材の全体を指して「樹脂組成物層」と称する。
【0088】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。シート状繊維基材の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、50μm以下又は40μm以下である。電子回路部品の微細化・薄膜化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下又は10μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されないが、通常、5μm以上である。
【0089】
プリプレグにおける樹脂組成物層の厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層の厚さと同様の範囲とし得る。
【0090】
所定量のチタンブラックと組み合わせて、フェノール性水酸基を有する化合物を含有すると共に、有機溶剤を含有する本発明の樹脂組成物を用いて形成したシート状積層材料は、本来的にチタンブラックに期待される薄膜絶縁信頼性を高いレベルにて実現すると共に、低誘電率を呈する絶縁部材をもたらすことが可能であり、さらには、高温熱履歴に伴う褪色を著しく抑制することができる。したがって本発明のシート状積層材料は、黒色に着色することが求められる電子回路部品の絶縁部材を形成するために好適に使用することができる。例えば、本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)、又は、半導体を封止するため(半導体封止用)に好適に使用することができる。
【0091】
[プリント配線板及びその製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明のシート状積層材料の樹脂組成物層を熱硬化して得られた絶縁層を含む。
【0092】
本発明のプリント配線板は、本発明のシート状積層材料を内層基板上に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成することにより製造することができる。ここで、「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい。
【0093】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0094】
工程(I)において、内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0095】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0096】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0097】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0098】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0099】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0100】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0101】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)とすることができる。
【0102】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0103】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0104】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に接着フィルムを用いる場合と同様である。
【0105】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0106】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に硬化体を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0107】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。
【0108】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0109】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0110】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0111】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0112】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0113】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX金属(株)製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱業(株)製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0114】
本発明のシート状積層材料を使用することにより、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の絶縁層を備えたプリント配線板を製造することが可能である。
【0115】
[半導体パッケージ及びその製造方法]
本発明の半導体パッケージは、回路基板と、該回路基板に実装された半導体と、該半導体を封止する封止材とを含み、封止材が、本発明のシート状積層材料の樹脂組成物層の硬化物から形成されていることが特徴である。ここで、本発明の半導体パッケージを構成する回路基板、半導体の構造・種類は特に限定されず、半導体パッケージを形成するに際して通常使用される任意の回路基板、半導体を使用してよい。
【0116】
本発明の半導体パッケージは、本発明のシート状積層材料の樹脂組成物層により半導体を封止することにより製造することができる。半導体を封止する際の条件は特に限定されず、半導体パッケージを製造するに際して通常使用される任意の封止条件を採用してよい。
【0117】
本発明のシート状積層材料を使用することにより、薄膜絶縁信頼性に優れ、高温熱履歴に伴う褪色を抑制することが可能な、黒色を呈する低誘電率の封止材を備えた半導体パッケージを製造することができる。
【0118】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて半導体装置を製造することができる。
【0119】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0120】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は別途明示のない限り「質量部」を意味する。
【0121】
<明度指数dLの測定>
(1)サンプル作成
実施例及び比較例において得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)を、離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「PET501010」)の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布した。その後、80~110℃(平均95℃)で6分間乾燥させて、PETフィルム上に樹脂組成物層を形成した(n=5)。この樹脂組成物層を5枚貼りあわせて厚さ200μmのフィルムを作成し、190℃のオーブンで2時間加熱し、硬化物サンプルを得た。また、得られた硬化物サンプルの一部を切り出しリフロー装置(アントム(株)製「HAS6116」、最高到達温度260℃)にて3回加熱処理を行った。リフロー装置にて3回加熱処理を行った硬化物サンプルを「リフロー3回後のサンプル」、リフロー装置による加熱処理に付さなかった硬化物サンプルを「樹脂硬化後のサンプル」と称す。
【0122】
(2)明度指数dLの測定
樹脂硬化後のサンプルとリフロー3回後のサンプルについて、色差計(ミノルタ(株)製「CR-10」)を用いて、白色校正板(ミノルタ(株)製、C0-03用)を基準とし明度指数dLを測定した。明度指数dLの値が、-64未満を「○」、-64以上-62未満を「△」、-62以上を「×」とした。
【0123】
<誘電率の測定>
実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスを、離型処理されたPETフィルム(リンテック(株)製「PET501010」)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80~110℃(平均95℃)で6分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下にて200℃で90分間熱処理し、PETフィルムから剥離することで硬化物フィルムを得た。
【0124】
硬化物フィルムを長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについて、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。5つのの評価サンプルについて測定を行い、平均値を算出した。誘電率の平均値が3.5未満を「〇」、3.5以上を「×」とした。
【0125】
<層間絶縁性の評価>
(1)接着フィルムの作製
支持体として、離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」)を用意した。この支持体の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが12μmとなるように、実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスをダイコーターにて均一に塗布した。その後、80~110℃(平均95℃)で6分間乾燥させて接着フィルムを得た。
【0126】
(2)内層回路基板の下地処理
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)の両面にエッチングにより回路パターンを形成した後、マイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理を行い、内層回路基板を作製した。
【0127】
(3)接着フィルムの積層
上記(1)で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。
【0128】
(4)樹脂組成物層の硬化
接着フィルムの積層後、支持体を剥離し、樹脂組成物層を露出させた。次いで、100℃にて30分間、180℃にて30分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成した。
【0129】
(5)粗化処理
上記(4)で得られた積層板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有の水酸化ナトリウム水溶液)に60℃で10分間、次いで粗化液(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトP」、KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分間乾燥させた。得られた基板を「評価基板A」と称する。
【0130】
(6)セミアディティブ法によるめっき
セミアディティブ法により、評価基板Aに導体層を形成した。具体的には、評価基板Aを、PdClを含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解めっきを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次いで、アニール処理を190℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板B」と称する。
【0131】
(7)絶縁試験用テストピースの作製
評価基板Bを10cm×10cmの寸法に切断し、片面に直径1cmのテープを10枚貼った。テープを貼っていない部分のめっきを、塩化鉄(III)を主成分とする40℃のエッチング液によりエッチングした。市水で洗浄した後、テープをはがし、ミリポアろ過を行った純水で洗浄した。その後、100℃のオーブンで15分間乾燥後、190℃のオーブンで60分間硬化した。基板の端の樹脂を削って下地の銅箔を露出させ、10箇所のめっき銅箔の中央と下地の銅箔とに電極として銅線をはんだ付けした。次いで、ジクロロメタン、メタノールで順に洗浄し、130℃のオーブンで30分乾燥させて、テストピースを得た。
【0132】
(8)抵抗値の測定
上記(7)で得られたテストピースの絶縁抵抗値を、抵抗測定機(J-RAS社製「ECM-100」)にて測定した。その後、テストピースを、HAST試験機(楠本化成(株)製「PM422」)を用いて温度130℃、相対湿度85%の環境に付し、さらに電極の両端に3.3Vの電圧を印加した。200時間後、テストピースを取り出し、絶縁抵抗値を測定した。200時間後のテストピースの絶縁抵抗値が1×10Ω未満の配線が3箇所未満のときに「○」、3箇所以上発生したとき「×」とした。
【0133】
(9)層間絶縁膜厚の確認
上記(8)の試験後、テストピースの断面を光学顕微鏡で確認し、層間絶縁膜厚が9~11μmであることを確認した。
【0134】
<線間絶縁性の評価>
(1)接着フィルムの作製
支持体として、離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」)を用意した。この支持体の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが20μmとなるように、実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスをダイコーターにて均一に塗布した。その後、80~110℃(平均95℃)で6分間乾燥させて接着フィルムを得た。
【0135】
(2)内層基板の下地処理
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)の両面に、マイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理を行った。
【0136】
(3)接着フィルムの積層
上記(1)で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。
【0137】
(4)樹脂組成物層の硬化
接着フィルムの積層後、支持体を剥離し、樹脂組成物層を露出させた。次いで、100℃にて30分間、180℃にて30分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成した。
【0138】
(5)粗化処理
上記(4)で得られた積層板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル含有の水酸化ナトリウム水溶液)に60℃で10分間、次いで粗化液(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトP」、KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分間乾燥させた。得られた基板を「評価基板A」と称する。
【0139】
(6)無電解めっき層の形成
セミアディティブ法により、評価基板Aに導体層を形成した。具体的には、評価基板Aを、PdClを含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った。
【0140】
(7)ドライフィルムのラミネート
ドライフィルム(日立化成(株)製「RY-5107」)をバッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、(6)で作製した基板の片面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。
【0141】
(8)露光
露光機((株)ウシオ電機製 投影露光機UX-2240SM)を用いて、櫛刃パターンの配線(ライン/スペース(L/S)比=5μm/5μm)となるようにドライフィルムの露光を行い(200mJ)、その後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像を行った。
【0142】
(9)電気めっき層の形成
(8)で作成した基板に硫酸銅電解めっきを行い、5μmの厚さで導体層を形成した。次いで、アニール処理を190℃にて60分間行った。
【0143】
(10)櫛刃パターンの配線の形成
(9)で得られた基板の表面を洗浄し、ドライフィルムを除去した。その後エッチングを行い、櫛刃パターンの配線を形成した。得られた基板を「評価基板B」と称する。
【0144】
(11)接着フィルムの積層
上記(1)で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が評価基板Bの櫛刃パターンの配線と接合するように積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。
【0145】
(12)樹脂組成物層の硬化
接着フィルムの積層後、支持体を剥離し、樹脂組成物層を露出させた。190℃にて90分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成した。得られた基板を「評価基板C」と称する。
【0146】
(13)絶縁試験用テストピースの作製
評価基板Cの櫛刃パターンの両端の樹脂を削って銅を露出させ、10箇所を電極として銅線をはんだ付けした。次いで、ジクロロメタン、メタノールで順に洗浄し、130℃のオーブンで30分間乾燥させて、テストピースを得た。
【0147】
(14)抵抗値の測定
上記(13)で得られたテストピースの絶縁抵抗値を、抵抗測定機(J-RAS社製「ECM-100」)にて測定した。その後、テストピースを、HAST試験機(楠本化成(株)製「PM422」)を用いて温度130℃、相対湿度85%の環境に付し、さらに電極の両端に3.3Vの電圧を印加した。200時間後、テストピースを取り出し、絶縁抵抗値を測定した。200時間後のテストピースの絶縁抵抗値が1×10Ω未満の配線が3箇所未満のときに「○」、3箇所以上発生したとき「×」とした。
【0148】
(15)線間絶縁膜厚の確認
上記(14)の試験後、テストピースの断面を光学顕微鏡で確認し、線間絶縁膜厚が4~6μmであることを確認した。
【0149】
<クラック耐性の評価>
(1)接着フィルムの作製
支持体として、離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」)を用意した。乾燥後の樹脂組成物層の厚さが100μmとなるように、実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスを支持体の離型層上にダイコーターにて均一に塗布した。その後、70~120℃(平均95℃)で7分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0150】
(2)内層回路基板の作成
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.2mm、日立製作所(株)製「E679FGR」)の両面にエッチングにより回路パターンを形成し、さらにマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理を行い、内層回路基板を作製した。内層回路基板に機械式ドリルで12mm×12mmの貫通穴を形成した。
【0151】
(3)仮接着フィルムの積層
ポリイミド系仮接着フィルム(有沢製作所(株)製「PFDKE 1525PT」)を用意し、保護フィルムを剥離した。その後、仮接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、接着層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の片面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより行った。
【0152】
(4)ダミーウエハの仮固定と接着フィルムの積層
10mm×10mmのダミーウエハを、上記(3)で作製した仮接着フィルム付内層回路基板の穴に挿入した。次いで、上記(1)で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の片面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間、圧着することにより行った。
【0153】
(5)樹脂組成物層の硬化
接着フィルムの積層後、100℃にて30分間、170℃にて30分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成した。その後、接着フィルムの支持体であるPETフィルムを剥離した。
【0154】
(6)仮接着フィルムの剥離と絶縁層の完全硬化
ポリイミド系仮接着フィルムを剥離した後、200℃にて60分間の条件で絶縁層を完全硬化させた。
【0155】
(7)クラック耐性の評価
上記(6)で得られた硬化物サンプルの一部を切り出し、リフロー装置(アントム(株)製「HAS6116」、最高到達温度260℃)にて20回加熱処理を行った。その後、ダミーウエハ内蔵回路基板を光学顕微鏡にて観察し、クラックが0箇所の時は「○」、1箇所以上3箇所未満の場合は「△」、3箇所以上の場合は「×」とした。
【0156】
<実施例1>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)20部、ビフェニルジメチレン型樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000」)20部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量171、DIC(株)製「HP4710」)3部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL6954BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)15部を、MEK(以下「MEK1」ともいう。)20部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12質量%)の固形分60質量%のMEK溶液15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN-485」)の固形分60質量%のMEK溶液15部、反応型難燃剤(水酸基当量162、(株)三光製「HCA-HQ」、リン含有量9.5%)2部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、アミノシラン処理付き)40部、チタンブラック黒色顔料(三菱マテリアルズ(株)製「13MC」、分散剤被覆品)の固形分33質量%のプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート分散液7部、硬化促進剤(TCI(株)製ジメチルアミノピリジン(DMAP)、5質量%MEK溶液)5部を、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0157】
<実施例2>
ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN-485」)の固形分60質量%のMEK溶液15部に代えて、活性エステル硬化剤(活性基当量約223、DIC(株)製「HPC8000-65T」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)15部を使用した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0158】
<実施例3>
チタンブラック黒色顔料分散液の配合量を7部から2.5部に変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0159】
<実施例4>
(1)チタンブラック黒色顔料分散液の配合量を7部から30部に変更した点、(2)MEK1の配合量を20部から5部に変更した点以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0160】
<実施例5>
(1)トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(「LA7054」)の固形分60質量%のMEK溶液と、ナフトール系硬化剤(「SN-485」)の固形分60質量%のMEK溶液の両方の配合量を15部から0.15部に変更した点、(2)反応型難燃剤(「HCA-HQ」)の配合量を2部から0.02部に変更した点以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0161】
<実施例6>
(1)トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(「LA7054」)の固形分60質量%のMEK溶液と、ナフトール系硬化剤(「SN-485」)の固形分60質量%のMEK溶液の両方の配合量を15部から37.5部に変更した点、(2)反応型難燃剤(「HCA-HQ」)の配合量を2部から5部に変更した点以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0162】
<実施例7>
ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量171、DIC(株)製「HP4710」)3部に代えて、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量196、三菱化学(株)製「1031S」)3部を使用した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0163】
<比較例1>
チタンブラック黒色顔料分散液7部に代えて、カーボンブラック黒色顔料(御国色素(株)製「MHIブラック#RK-173M」、カーボンブラック含有量26質量%の分散処理品、MEK分散液)10部を使用した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0164】
<比較例2>
チタンブラック黒色顔料分散液の配合量を7部から1部に変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0165】
<比較例3>
(1)チタンブラック黒色顔料分散液の配合量を7部から45部に変更した点、(2)MEK1を使用しなかった点以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0166】
<比較例4>
トリアジン含有フェノールノボラック樹脂、ナフトール系硬化剤及び反応型難燃剤に代えて、活性エステル硬化剤(活性基当量約223、DIC(株)製「HPC8000-65T」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)30部を使用した以外、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを調製した。
【0167】
上述した実施例及び比較例の評価結果を、下記の表に示す。
【0168】
【表1】
【0169】
球形シリカ「SOC2」を配合しない場合、硬化促進剤(ジメチルアミノピリジン(DMAP))を配合しない場合に関しても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。