(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】テクスチャマッピング装置、及びテクスチャマッピング方法
(51)【国際特許分類】
G06T 15/04 20110101AFI20220329BHJP
【FI】
G06T15/04
(21)【出願番号】P 2017157365
(22)【出願日】2017-08-17
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一将
(72)【発明者】
【氏名】池田 一貴
【審査官】片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102637(JP,A)
【文献】特開2002-092625(JP,A)
【文献】草なぎ真人,距離濃淡画像を利用した実物体の三次元モデル生成手法の構築,[online],2009年07月01日,https://chuo-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=5043&item_no=1&page_id=13&block_id=21
【文献】草なぎ 真人,実物体の三次元モデル生成における距離濃淡画像を利用した色情報の改善,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS,vol.J92-D No.7,pp.1045-1055
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に光を照射する光源と、
前記対象物の複数の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像データから前記対象物の3次元モデルを生成する3次元モデル生成部と、
前記3次元モデル上の着目点の法線方向と、前記光源と前記画像取得部の位置関係とから、着目点における前記画像取得部の方向の反射強度を推定する反射強度推定部と、
前記反射強度推定部で推定された反射強度を用いて着目点の画素情報を補正するテクスチャ補正部と
を備え、
前記反射強度推定部は、
前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分のみであると仮定した場合の前記反射強度を、着目点上の光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度の余弦成分を乗じて推定し、
前記テクスチャ補正部は、
着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に前記余弦成分の逆数を乗じて
算出し、
前記反射強度推定部は、
前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分と鏡面反射成分の和であると仮定した場合の前記反射強度を、前記光源から着目点に照射される光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度から着目点の正反射方向の角度を減じた角度の余弦成分を乗じて推定し、
前記テクスチャ補正部は、
着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に下記の逆数を乗じて算出する
【数7】
ここでAは前記拡散反射成分の反射率、Bは前記鏡面反射成分の反射率、θcは着目点の法線方向と着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度、θsは着目点の法線方向と着目点の正反射方向の成す角度である
ことを特徴とするテクスチャマッピング装置。
【請求項2】
前記光源の位置は、
該光源が、前記画像取得部と支持部材を介して支持されることで固定されている
ことを特徴とする請求項
1に記載のテクスチャマッピング装置。
【請求項3】
前記光源の位置は、
前記画像取得部で取得した前記光源からの光で映し出される校正器の画像から推定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテクスチャマッピング装置。
【請求項4】
テクスチャマッピング装置が行うテクスチャマッピング方法であって、
対象物に光源から光を照射し、
撮像する位置を変えて前記対象物の複数の画像データを取得し、
前記画像データから前記対象物の3次元モデルを生成し、
前記3次元モデル上の着目点の法線方向と、前記光源と前記撮像する位置との位置関係から、着目点から前記撮像する位置に向けての反射強度を推定し、
推定された反射強度を用いて着目点の画素情報を補正し、
前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分のみであると仮定した場合の前記反射強度を、着目点上の光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像データを取得した位置を結ぶ直線とが成す角度の余弦成分を乗じて推定し、
着目点の法線方向に反射する光強度を、推定した前記反射強度に前記余弦成分の逆数を乗じて
算出し、
前記反射強度を推定する反射強度推定部は、
前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分と鏡面反射成分の和であると仮定した場合の前記反射強度を、前記光源から着目点に照射される光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像データを取得する画像取得部を結ぶ直線とが成す角度から着目点の正反射方向の角度を減じた角度の余弦成分を乗じて推定し、
前記画素情報を補正するテクスチャ補正部は、
着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に下記の逆数を乗じて算出する
【数8】
ここでAは前記拡散反射成分の反射率、Bは前記鏡面反射成分の反射率、θcは着目点の法線方向と着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度、θsは着目点の法線方向と着目点の正反射方向の成す角度である
ことを特徴とするテクスチャマッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元モデルのテクスチャリングを行うテクスチャマッピング装置、及びテクスチャマッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数枚の画像から3次元モデルを復元する画像計測技術であるSfM(Structure from Motion)法が普及し始めている。SfM法による3次元モデル復元では、ディジタルカメラで撮影した複数の画像からカメラの撮影位置を推定する。そして、推定した撮影位置情報から対象物の3次元点群を生成し、更にメッシュモデルを生成する。
【0003】
撮影画像の色情報を、メッシュモデルに投影するテクチャマッピングを用いることで、リアリティに富んだ3次元モデルを生成する。SfM法は、リアリティのある3次元モデルが生成可能であることから、例えばインフラメンテナンスなどの現場保存が重要な案件に対して適用されている。
【0004】
3次元モデルのテクスチャ画像データを生成する方法としては種々、提案されている。(例えば、特許文献1,2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2014/199860A1号
【文献】特開2016-119086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術は、単に、対応するピクセルの色情報を統計処理して処理対象のピクセルの色を決定する方法である。したがって、対象物を均一に照らすことが困難な環境で撮影された画像から復元した3次元モデルは、不自然な色変化及びムラが生じ、リアリティのある3次元モデルの生成が困難であるという課題がある。特に、例えばトンネル内や配管内のような暗所で撮影した画像から、リアリティのある画像を復元することはできないという不具合がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、暗所で撮影した画像からリアリティのある3次元画像を復元することができるテクスチャマッピング装置、及びテクスチャマッピング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るテクスチャマッピング装置は、対象物に光を照射する光源と、前記対象物の複数の画像データを取得する画像取得部と、前記画像データから前記対象物の3次元モデルを生成する3次元モデル生成部と、前記3次元モデル上の着目点の法線方向と、前記光源と前記画像取得部の位置関係とから、着目点における前記画像取得部の方向の反射強度を推定する反射強度推定部と、前記反射強度推定部で推定された反射強度を用いて着目点の画素情報を補正するテクスチャ補正部とを備え、前記反射強度推定部は、前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分のみであると仮定した場合の前記反射強度を、着目点上の光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度の余弦成分を乗じて推定し、前記テクスチャ補正部は、着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に前記余弦成分の逆数を乗じて算出し、前記反射強度推定部は、前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分と鏡面反射成分の和であると仮定した場合の前記反射強度を、前記光源から着目点に照射される光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度から着目点の正反射方向の角度を減じた角度の余弦成分を乗じて推定し、前記テクスチャ補正部は、着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に下記の逆数を乗じて算出する。また、本発明の一態様に係るテクスチャマッピング方法は、上記のテクスチャマッピング装置が行うテクスチャマッピング方法であって、対象物に光源から光を照射し、撮像する位置を変えて前記対象物の複数の画像データを取得し、前記画像データから前記対象物の3次元モデルを生成し、前記3次元モデル上の着目点の法線方向と、前記光源と前記撮像する位置との位置関係から、着目点から前記撮像する位置に向けての反射強度を推定し、推定された反射強度を用いて着目点の画素情報を補正し、前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分のみであると仮定した場合の前記反射強度を、着目点上の光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度の余弦成分を乗じて推定し、着目点の法線方向に反射する光強度を、推定した前記反射強度に前記余弦成分の逆数を乗じて算出し、前記反射強度を推定する反射強度推定部は、前記3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分と鏡面反射成分の和であると仮定した場合の前記反射強度を、前記光源から着目点に照射される光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像データを取得する画像取得部を結ぶ直線とが成す角度から着目点の正反射方向の角度を減じた角度の余弦成分を乗じて推定し、前記画素情報を補正するテクスチャ補正部は、着目点の法線方向に反射する光強度を、前記反射強度推定部で推定した前記反射強度に下記の逆数を乗じて算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、暗所で撮影した画像からリアリティのある3次元画像を復元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るテクスチャマッピング装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】対象物の複数の画像データを取得する様子を模式的に示す平面図である。
【
図3】対象物の着目点上の反射強度を推定する方法を説明するための模式図である。
【
図4】
図1に示すテクスチャマッピング装置の画像取得部に対する光源の位置を固定する例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図5】
図1に示すテクスチャマッピング装置の画像取得部に対する光源の位置を固定する他の例を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図6】
図1に示すテクスチャマッピング装置の光源の位置を推定する為の校正器の画像例を模式的に示す図である。
【
図7】
図1に示すテクスチャマッピング装置が行うテクスチャマッピング方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係るテクスチャマッピング装置の動作について説明する。
【0012】
<テクスチャマッピング装置>
図1は、実施形態に係るテクスチャマッピング装置の機能構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係るテクスチャマッピング装置1は、光源10、画像取得部20、画像保存部30、3次元モデル生成部40、3次元モデル保存部50、反射強度推定部60、及びテクスチャ補正部70を備える。テクスチャマッピング装置1は、例えば暗所で撮影した対象物αの画像からリアリティのある3次元画像を復元する装置である。
【0014】
光源10は、暗所内の対象物αに光を照射する。暗所内の対象物αとは、例えばトンネル内の構造物等のことである。
【0015】
画像取得部20は、対象物αの複数の画像データを取得する。画像取得部20は、例えばディジタルカメラ(カメラ)で構成され、対象物αの画像データを取得する。
【0016】
図2は、対象物αの複数の画像データを取得する様子を、模式的に示す平面図である。
図2は、対象物αを例えばトンネル内の壁とし、複数の画像データを取得する様子を示す。
【0017】
光源10の位置は、例えば固定であり、画像取得部20の位置を変えて複数の画像データを取得(撮影)する。
図2中の座標(x,y,z)は3次元座標である。これらの座標値は、地球座標系で定義されたものではなく、画像を復元するために設定された架空の3次元空間における座標値である。
【0018】
光源10の位置は、例えば座標(xL,yL,zL)で固定である。一方、画像取得部20の位置は変化させられる。例えばその位置は、座標(x1,y1,z1)、座標(x2,y2,z2)、及び座標(x3,y3,z3)に示すように変えられる。なお、光源10の位置は、既知であれば固定でも良いし、動いても良い。
【0019】
画像保存部30は、画像取得部20で取得した複数の画像データを保存(記憶)する。なお、画像データは、テクスチャマッピング装置1を構成する汎用のRAM等の記憶部に保存するようにしても良い。又は、テクスチャマッピング装置1の画像データの処理速度が高速であれば、画像保存部30は無くても良い。
【0020】
3次元モデル生成部40は、画像取得部20で取得した複数の画像データから、対象物αの3次元モデルを生成する。3次元モデルは、例えばSfM(Structure from Motion)法を用いて生成する。
【0021】
SfM法は、対象物αに対する視点を変えながら撮影した複数の画像データから、対象物αの3次元形状と、撮影したカメラの撮影位置とを同時に復元する手法である。
【0022】
3次元モデル生成部40は、復元した撮影位置情報から対象物αの3次元点群を生成し、更に3次元モデルを生成する。また、3次元モデル生成部40は、複数の撮影位置で撮影された画像データを対応付けた特徴点が存在すると推定される推定面の法線方向の法線ベクトルも算出する。
【0023】
上記の3次元点群は、複数の撮影位置から撮影した対象物αの表面の点の集合である。撮影した対象物αの表面の点とは、複数の撮影位置で撮影された画像データを対応付けた特徴点のことである。つまり、特徴点は、対象物の表面の着目点である。
【0024】
また、上記の3次元モデルは、3Dメッシュとも称され、メッシュのそれぞれに画素情報及び上記の法線ベクトルを対応付けたものである。ここで画素情報とは、例えば画素毎のRGBのそれぞれに対応する輝度情報である。
【0025】
3次元モデル保存部50は、3次元モデル生成部40で生成された3次元モデルを保存する。3次元モデルは、一時的にテクスチャマッピング装置1を構成する汎用のRAM等の記憶部に記憶するようにしても良い。また、3次元モデルは、外部に出力するようにしても良い。その場合、テクスチャマッピング装置1は、3次元モデル保存部50を備えなくて良い。
【0026】
反射強度推定部60は、3次元モデル上の着目点の法線方向と、光源10と画像取得部20の位置関係とから、着目点の画像取得部20の方向の反射強度を推定する。なお、光源10の位置は、3次元モデル生成部40では得られない。よって、光源10の位置情報は与える必要がある。その与え方と反射強度の推定方法について、詳しくは後述する。
【0027】
テクスチャ補正部70は、反射強度推定部60で推定された反射強度を用いて、3次元モデル上の着目点の画素情報を補正する。
【0028】
以上説明した実施形態に係るテクスチャマッピング装置1によれば、対象物αに照射した光の対象物α上における反射強度を推定し、当該反射強度を用いて対象物αの画素情報を補正するので、暗所で撮影した画像からリアリティのある3次元画像を復元することができる。
【0029】
次に、反射強度の推定方法について、
図3を参照して詳しく説明する。反射強度の推定方法は、対象物の着目点における反射が拡散反射のみとして推定する方法と、拡散反射と鏡面反射の和として推定する方法の二通りがある。
【0030】
図3は、対象物αの着目点α
1上の反射強度を推定する方法を説明するための模式図である。光源10から対象物αに照射された光が、着目点α
1で反射し、画像取得部20に入射する。
【0031】
〔拡散反射〕
先ず、着目点α1の反射が拡散反射のみであると仮定した場合の反射強度を推定する方法について説明する。拡散反射は、平坦では無いざらざらした表面で、入射光が半球状に一様に反射することである。
【0032】
【0033】
ここで、I0は光源10の光源強度、L(rL,g)は光源特性、及びR(g,n)は反射特性である。また、gは光源方向、nは着目点が存在すると推定される推定面の法線方向、及びrLは光源10と着目点α1の距離である。
【0034】
光源10が点光源で、且つ着目点α
1の表面が理想的な拡散反射であった場合、画像取得部20に入射する光の強度(反射強度I)は、次式で表せる。
【数2】
【0035】
ここでθ
cは、着目点α
1の法線方向と反射光とが成す角度である。したがって、画像取得部20で撮影した光強度を、次式の補正項Cで補正することで、着目点α
1の法線方向の光強度を求めることができる。
【数3】
【0036】
ここでkは、正規化のための係数であり、補正後の平均的な輝度値を指定する値である。
【0037】
このように、画像取得部20で取得した着目点α1の画像情報を、反射強度推定部60で推定された反射強度を用いて補正する。具体的には、画像情報のRGBのそれぞれの輝度情報を、推定した反射強度に対応させて補正する。この処理を3Dメッシュの全てについて行うことで、暗所で撮影した画像からリアリティのある3次元画像を復元することができる。
【0038】
つまり、反射強度推定部60は、3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分のみであると仮定した場合の反射強度Iを、着目点上の光強度に、着目点の法線方向と、着目点と画像取得部20を結ぶ直線とが成す角度の余弦成分を乗じて推定する。そして、テクスチャ補正部70は、着目点の法線方向に反射する光の強度を、反射強度推定部60で推定した反射強度Iに上記の余弦成分の逆数を乗じて補正する。
【0039】
〔拡散反射+鏡面反射〕
次に、着目点α1の反射が拡散反射と鏡面反射の2つから成ると仮定した場合について説明する。その場合の反射強度Iは、それらの和として表現できる。
【0040】
鏡面反射モデルは、いくつか提案されているが、Phongのモデルでは鏡面反射I
sを次式に示すように定式化している。
【数4】
【0041】
ここで、θcは着目点α1の法線方向と画像取得部20の成す角度、θsは法線方向と光源10の正反射方向の成す角度である。次数nは鏡面反射の角度依存性を決定する定数で、実験的に求める値である。つまり、画像取得部20が正反射方向に近づくと反射強度が増加する関係である。
【0042】
【0043】
ここでA,Bのそれぞれは、拡散反射率と鏡面反射率を表す係数であり、対象物の表面の粗さと光源10のスペクトルによって決まる。この場合の補正項Cは、次式で表せる。kは正規化のための係数であり、上記の拡散反射のみの場合と同じである。
【数6】
【0044】
このように、拡散反射と鏡面反射の和であると仮定して対象物αの反射強度を推定しても良い。この場合、拡散反射率A及び鏡面反射率Bを、予め対象物αの素材に対応させて実験等で求めておけば、よりリアリティのある3次元画像を復元することができる。
【0045】
また、拡散反射率Aと鏡面反射率Bは定数である。よって、復元した3次元画像を見てよりリアリティのある画像に成るように事後的に修正するようにしても良い。事後的に拡散反射率Aと鏡面反射率Bを修正する作業を繰り返すことで、更にリアリティのある3次元画像を復元することができるようになる。
【0046】
以上述べたように、反射強度推定部60は、3次元モデル上の着目点からの反射光が拡散反射成分と鏡面反射成分の和であると仮定した場合の反射強度を、前記光源から着目点に照射される光強度に、着目点の法線方向と、着目点と前記画像取得部を結ぶ直線とが成す角度から着目点の正反射方向の角度を減じた角度の余弦成分を乗じて推定する。そして、テクスチャ補正部70は、着目点の法線方向に反射する光強度を、反射強度推定部60で推定した反射強度に余弦成分の逆数を乗じて補正する。
【0047】
〔光源の位置〕
光源10の位置は、SfM法(3次元モデル生成部40)で得ることができない。したがって、光源10の位置情報は、本実施形態に係るテクスチャマッピング装置1に与える必要がある。
【0048】
テクスチャマッピング装置1に、光源10の位置情報を入力する方法には幾つかの方法が考えられる。例えば、光源10をスタンド(三脚)等で、対象物αを撮影する撮影環境の中に配置し、光源10の座標値を入力するようにしても良い。
【0049】
また、SfM法では、画像取得部20の位置(撮影位置)を復元できるので、画像取得部20に対する光源10の相対的な位置を固定する方法が考えられる。また、撮影した画像から光源10の位置を推定する方法も考えられる。
【0050】
図4は、画像取得部20に対する光源10の位置を固定する例を示す図である。
図4(a)はそのテクスチャマッピング装置1を上から見た平面図、
図4(b)は正面図である。
【0051】
光源10の位置は、光源10が、画像取得部20と支持部材80を介して支持されることで固定されている。筐体90は、テクスチャマッピング装置1の画像取得部20、画像保存部30、3次元モデル生成部40、3次元モデル保存部50、反射強度推定部60、及びテクスチャ補正部70を含む。
図4においてそれらの表記は省略している。
【0052】
画像取得部20の座標(x1,y1,z1)は、3次元モデル生成部40において復元される。よって、画像取得部20と光源10を支持部材80で固定し、画像取得部20に対する光源10の相対位置(xL,yL,zL)を決めておけば、光源10の座標情報(xxL+x1,yyL+y1,zzL+z1)を得ることができる。
【0053】
図5は、画像取得部20に対する光源10の位置を固定する他の例を示す図である。
図5(a)はそのテクスチャマッピング装置1を正面から見た正面図、
図5(b)は側面図である。
【0054】
図5に示すように、光源10は、画像取得部20に対して12時の方向に配置しても良い。なお、光源10は、画像取得部20に対する相対位置が固定であれば、何れの方向に配置しても良い。
【0055】
また、光源10の位置情報は、撮影した画像から推定しても良い。その場合は、校正器の画像を画像取得部20で取得(撮影)する。
【0056】
図6は、画像取得部20で撮影した校正器100の画像を示す図である。校正器100は、例えば球体である。なお、その形状は球体でなくても良い。直方体でも良いし、剣山のようなものであっても良い。また、その個数は複数でも良い。
【0057】
光源10から光が照射される撮影環境の中に校正器100を配置すると、校正器100の陰影を撮影することができる。映し出されたその陰影の位置から光源10の位置を推定することが可能である。
【0058】
光源10の位置は、例えば参考文献(佐藤いまり、他2名、「物体の陰影に基づく光源環境の推定」、情報処理学会論文誌、Vol. 41 No. SIG 10(CVIM 1), Dec. 2000)に記載された方法で推定できる。
【0059】
以上述べたように光源10の位置は、画像取得部20に対する相対的な座標を予め決めることで求めても良いし、参考文献に記載された計算方法で求めても良い。その計算は、画像取得部20で取得した画像データを用いて例えば光源位置推定部(図示せず)で行っても良い。
【0060】
<テクスチャマッピング方法>
図7は、テクスチャマッピング装置1が行うテクスチャマッピング方法の手順を示すフローチャートである。
【0061】
実施形態に係るテクスチャマッピング装置1が行うテクスチャマッピング方法は、対象物に光を照射し(ステップS1)、撮像する位置を変えて対象物の複数の画像データを取得し(ステップS2)、画像データから対象物の3次元モデルを生成し(ステップS3)、3次元モデル上の着目点の法線方向と、光源10と画像取得部20の位置関係とから、着目点の画像取得部20の方向の反射強度を推定し(ステップS4)、推定された反射強度を用いて着目点の画素情報を補正する(ステップS5)。
【0062】
これにより、暗所で撮影した画像からリアリティのある3次元画像を復元することができる。
【0063】
以上、各実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、光源は複数でも良い。光源が複数の場合は、個々の光源について上記の計算を行い、その結果を足し合わせて3次元画像を復元すれば良い。
【0064】
また、3次元モデルを生成する方法としてSfM法を例に説明したが、他の画像特徴量関連技術(SIFT等)を用いて3次元モデルを生成しても良い。このように、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…テクスチャマッピング装置、10…光源、20…画像取得部、30…画像保存部、40…3次元モデル生成部、50…3次元モデル保存部、60…反射強度推定部、70…テクスチャ補正部、80…支持部材、90…筐体、100…校正器。