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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220329BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220329BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220329BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20220329BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B32B7/025
B32B27/18 J
B32B27/20 Z
C09J7/00
H01R11/01 501C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2017159829
(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2018090768
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016233713
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-074020(JP,A)
【文献】特開2006-233202(JP,A)
【文献】特開2016-131152(JP,A)
【文献】特開2016-183224(JP,A)
【文献】特開2006-321223(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118729(WO,A1)
【文献】特開2015-171773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114314(WO,A1)
【文献】特開2015-195198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
H01B 5/00- 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーがバインダー樹脂層に平面視で規則的に格子状に配列され、且つ隣接するフィラー間の中央部における接平面からのフィラーの最深部の距離(Lb)とフィラーの平均粒子径(D)との比である埋め込み率(Lb/D)が60%以上105%以下となるように配列されている長尺のフィラー含有フィルムであって、
フィラーの平均粒子径を、フィラーが球形形状である場合には、その直径として定義し、球形形状でない場合には、フィラー含有フィルムの平面画像又は断面画像に基づき最大長または球形に模した形状の直径として定義したとき、フィラーの平均粒子径は1~50μmであり、
樹脂層の総厚がフィラーの平均粒子径の0.5倍以上2倍以下であり、
フィラー含有フィルムの長手方向の一端における最小フィラー間距離Lpに対する、該一端からフィルム長手方向に5m以上離れた他端における最小フィラー間距離Lqとの比Lq/Lpが1.2以下であるフィラー含有フィルム。
【請求項2】
フィラー含有フィルムが、幅0.3mm以上70mm以下、長さ5m以上5000m以下であって、巻き芯に巻かれた巻装体である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
任意のフィラーP0と、該フィラーP0からの距離が近い順に3個のフィラーP1、P2、P3を選択したときに、その3個のフィラーP1、P2、P3と前記フィラーP0との距離L1、L2、L3のうち、最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)が1.0以上1.2以下である請求項1または2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
フィラー含有フィルムの一方の端部及び他方の端部の双方において、比(Lmax/Lmin)が1.0以上1.2以下である請求項3記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
フィラー含有フィルムが巻き芯に巻かれた巻装体となっている場合、フィラー含有フィルムの巻き芯側の一方の端部は、巻き芯のリード部分とフィラー含有フィルム(もしくはこれを支持している基材フィルム)がつなぎ合わされている箇所であり、他方の端部は巻装体からのフィラー含有フィルムの取り出し位置である請求項4記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
他方の端部における比(Lmax/Lmin)は、最外周の1周分以上の長さから任意に選択した10箇所以上の比(Lmax/Lmin)の平均値と定義され、1.0以上1.2以下となっている請求項5記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
巻き芯の径を2Rとした場合に、フィラー含有フィルムの巻き芯側の一端から長さ2πRの長さの領域において、任意のフィラーP0と、そのフィラーP0からの距離が近い順に3個のフィラーP1、P2、P3を選択し、その3個のフィラーP1、P2、P3とフィラーP0との距離L1、L2、L3のうち、最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)を求めたときに、比(Lmax/Lmin)が1.0以上1.2以下である請求項記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
バインダー樹脂層と基材フィルムが積層しており、基材フィルムの厚さがバインダー樹脂層の層厚の2倍以上である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項9】
バインダー樹脂層に、更に第2の樹脂層もしくは第2の樹脂層及び第3の樹脂層が積層されており、第2の樹脂層及び第3の樹脂層の最低溶融粘度が、バインダー樹脂層の最低溶融粘度よりも低い請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項10】
フィラー含有フィルムの層厚が、フィラーの平均粒子径の0.5倍以上である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項11】
フィラー含有フィルムの層厚が、フィラーの平均粒子径の2.0倍以下である請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項12】
バインダー樹脂層に第2の樹脂層が積層されており、バインダー樹脂層と第2の樹脂層の合計の樹脂層の層厚がフィラー平均粒子径の0.5倍以上2倍以下である請求項1~11のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項13】
フィラーの含有量が1.2vol%以上45vol%以下である請求項1~12のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項14】
フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部におけるバインダー樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有し、該傾斜では、フィラーの周りのバインダー樹脂層の表面が前記接平面に対して欠けており、該起伏では、フィラー直上のバインダー樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上のバインダー樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なくなっている請求項1~13のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項15】
バインダー樹脂層の最低溶融粘度が2000Pa・s以上である請求項1~14のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項16】
異方性導電フィルム以外の用途に使用される請求項1~15のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項17】
フィラーが導電粒子であり、異方性導電フィルムとして使用される請求項1~15のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体。
【請求項19】
請求項1~16のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体。
【請求項20】
請求項17記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項21】
第1電子部品及び第2電子部品の対向する端子の高さの合計が、フィラー含有フィルムのフィラーの粒子径の2倍以下である請求項20記載の接続構造体。
【請求項22】
請求項1~16のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法。
【請求項23】
求項17記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品とを異方性導電接続する接続構造体の製造方法。
【請求項24】
第1電子部品及び第2電子部品の対向する端子の高さの合計をフィラー含有フィルムのフィラーの粒子径の2倍以下とする請求項23記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラー含有フィルムの用途には、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途がある(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0003】
フィラー含有フィルムは、一般に巻装体として製造される。
しかしながら、フィラー含有フィルムを巻装体にすると、フィラーのバインダーとなっている樹脂のはみ出しや、巻装体において重なり合っている上下のフィルムの樹脂層からはみ出した樹脂同士が繋がってしまう現象が起こりやすくなる。特に、巻装体の巻き芯側では巻き締まりによりこの問題が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-15680号公報
【文献】特開2015-138904号公報
【文献】特開2013-103368号公報
【文献】特開2014-183266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題に対し、本発明は、フィラー含有フィルムにおいて、フィラーのバインダーとなっている樹脂のはみ出しを低減すること、さらにフィラー含有フィルムが有する機能をより効果的に発現させることを目的とする。
【0006】
本発明者は、フィラー含有フィルムにおいて、フィラーの平均粒子径と、フィラーを保持するバインダー樹脂層及び該バインダー樹脂層に必要に応じて積層される第2の樹脂層の総厚とを略等しくしてフィラー含有フィルムの長手方向の位置によってフィラー同士の距離が変動することを抑制すると、巻装体にした場合の樹脂のはみ出しを抑制でき、かつフィラーが有する機能も効果的に引き出せることを見いだし、本発明を想到した。
【0007】
即ち、本発明は、フィラーがバインダー樹脂層に保持されている長尺のフィラー含有フィルムであって、
フィラーの平均粒子径が1~50μm、
樹脂層の層厚がフィラーの平均粒子径の0.5倍以上2倍以下であり、
フィラー含有フィルムの長手方向の一端における最小フィラー間距離Lpに対する、該一端からフィルム長手方向に5m以上離れた他端における最小フィラー間距離Lqとの比Lq/Lpが1.2以下であるフィラー含有フィルムを提供する。特に本発明は、フィラー含有フィルムの好ましい一態様として、フィラーが導電粒子であり、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを提供する。このフィラー含有フィルムにおいては、フィラーが格子状に配列していることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、上述のフィラー含有フィルムが物品に貼着しているフィルム貼着体、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とが接続されている接続構造体、特に、異方性導電フィルムとして使用されるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体を提供する。更に、本発明は、上述のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法、並びに、第1物品、第2物品をそれぞれ第1電子部品、第2電子部品とし、異方性導電フィルムとして使用される、フィラーが導電粒子であるフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続された接続構造体と、この異方性導電接続された接続構造体の製造方法を提供する。これらの発明において、第1電子部品及び第2電子部品の対向する端子の高さの合計を異方性導電フィルムにおける導電粒子の大きさの2倍以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィラー含有フィルムによれば、バインダー樹脂層の樹脂のはみ出しを低減することができ、さらにフィラー含有フィルムの用途に応じてフィラー含有フィルムが有する機能をより効果的に発現させることができる。例えば、フィラー含有フィルムが艶消しフィルムの場合、均質な艶消し効果を得ることができ、また、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムの場合、端子高さが例えば3μm以下の低背化が進んだ電子部品の接続に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、フィラー含有フィルム10Aにおけるフィラーの配置を説明する平面図である。
図1B図1Bは、フィラー含有フィルム10Aの断面図である。
図2図2は、フィラー含有フィルム10Bの断面図である。
図3図3は、フィラー含有フィルム10Cの断面図である。
図4図4は、フィラー含有フィルム10Dの断面図である。
図5図5は、フィラー含有フィルム10Eの断面図である。
図6図6は、フィラー含有フィルム10Fの断面図である。
図7図7は、はみ出し試験の試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のフィラー含有フィルムについて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0012】
<フィラー含有フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例のフィラー含有フィルム10Aにおけるフィラーの配置を説明する平面図であり、図1Bは、そのX-X断面図である。
【0013】
このフィラー含有フィルム10Aは長尺であり、6方格子状に配列したフィラー1がバインダー樹脂層2に保持されたフィラー分散層3から形成されている。フィラー1の平均粒子径は1~50μmである。このフィラー含有フィルム10Aでは、バインダー樹脂層2の層厚Laがフィラー含有フィルム10Aの樹脂層の総厚と等しく、この層厚Laがフィラー1の平均粒子径の0.5倍以上2倍以下、好ましくは0.7倍以上1.3倍以下であり、フィラー1の平均粒子径と略等しくなっている。また、このフィラー1の配置は、好ましくは後述するように均等に配置されている。
【0014】
<フィラー>
フィラー1は、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。上述の用途別に挙げたフィラーは、当該用途に限定されるものではなく、必要に応じて他の用途のフィラー含有フィルムが含有してもよい。また、各用途のフィラー含有フィルムでは、必要に応じて2種以上のフィラーを併用することができる。
【0015】
フィラーの形状は、フィラー含有フィルムの用途に応じ、球形、楕円球、柱状、針状、それらの組み合わせ等から適宜選択して定められる。フィラー配置の確認が容易になり、均等な状態を維持し易い点から、球形が好ましい。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、フィラーである導電粒子が、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方性導電フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0016】
<フィラーの粒子径>
フィラーの粒子径は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜定められる。ただし、本発明では、フィラーの平均粒子径とフィラー含有フィルムにおける樹脂層の総厚とを略等しくするため、フィルムの取り扱い性等の点から1μm以上50μm以下とすることが好ましい。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合(フィラーを導電粒子とする場合)には、配線高さや配線の平坦性のばらつきに対応し、導通抵抗の上昇を抑制し、ショートの発生を抑制する点から1μm以上30μm以下とすることが好ましく、特に、端子厚が3μm以下程度に低背化した端子を接続する場合、2.5μm以上20μm以下とすることが好ましい。なお、この場合の端子とは少なくとも一方が異方性導電接続におけるICチップやFPCなどの端子であることが好ましい(端子が設けられた基材から、端子の頂部が突出している形状の電子部品であることが好ましい)。端子の材質としては、例えば、金や銅、錫など公知の電子部品に用いられているものが挙げられる。
【0017】
なお、フィラーの粒子径は一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。粒度分布測定装置としては、一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。この場合、粒子径を測定するサンプル数を200以上、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上とすることが望ましい。また、フィラーをガラス板などの平板上に散布したもの、または硬化性樹脂組成物に混練し単分散させて塗布したものを、金属顕微鏡や走査型電子顕微鏡により観察して粒子径や平均粒子径を求める手法が好ましい場合がある。アスペクト比を有するものの場合、観察装置のZ軸(焦点調整)などから大きさを求めることができるためである。また、フィラーの形状が球形でない場合には、フィラー含有フィルムの平面画像又は断面画像に基づき最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒子径として平均粒子径を求めることもできる。
【0018】
<フィラーの配列>
本発明のフィラー含有フィルムにおいて、後述する樹脂層の総厚に関する条件や最小フィラー間距離に関する条件を満たす限り、フィラーの配置は任意であるが、発明の効果を得るという観点から格子状に配列されていることが好ましい。図1Aに示したフィラー含有フィルム10Aにおいて、フィラー1は平面視にて規則的に格子状に配列している。格子状に配列させることにより、フィラー同士を互いに接触させることなく、均等な位置に配置することが比較的容易となる。そのため、フィラー含有フィルムを巻き回した場合の巻き締まりにより、樹脂のはみ出しやブリーディングが起こり易い箇所が生じることを防止できる。よって、仮にある部位で樹脂のはみ出しやブリーディングが生じても、その樹脂のはみ出しやブリーディングが、巻き回しにより重なり合った上下の樹脂層にさらに拡大することを防止できる。なお、フィラーの配置が任意でも、同様の効果が得られる場合もある。
【0019】
ここで、格子状の配列の態様としては、図1Aに示した6方格子の他、長方格子、斜方格子、正方格子、その他の矩形格子等の格子配列を挙げることができる。なかでも、6方格子、正方格子又は斜方格子(即ち、菱形格子)とすると、各フィラーの配置を均等な配置にすることができるので好ましい。なお、本発明において格子状の配列には、導電粒子の群が格子状に配列されている態様も含まれる。この群を形成する導電粒子は、群内で規則性を持つことが好ましい。また、格子状に配列している導電粒子から、一部のフィラーを規則的に抜き取った配列も含まれる。このフィラーの抜けは、フィラー含有フィルムの発明の効果が得られる範囲において、フィルムの所定の方向に規則的に存在させることで確認できる。また、フィラーの抜けをフィルムの長手方向に繰り返し存在させること、あるいはフィラーの抜けている箇所をフィルムの長手方向に漸次増加または減少させることにより、ロット管理が可能となり、フィラー含有フィルム及びそれを用いた接続構造体にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、フィラー含有フィルムやそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。
【0020】
本発明では、上述の格子状のフィラーの配列の規則性がフィラー含有フィルムの長手方向の位置にかかわらず安定しており、フィラー含有フィルムの長手方向の一端における最小フィラー間距離をLpとし、その一端からフィルム長手方向に5m以上離れた他端における最小フィラー間距離Lqとした場合に、これらの比Lq/Lpが1.2以下である。一端および他端のそれぞれにおいて、格子状に配列しているフィラーの格子間距離の最短部分の距離を10個以上、好ましくは20個以上、より好ましくは100個以上測定し、最小フィラー間距離Lpと他端における最小フィラー間距離Lqを求め、比Lq/Lpを求めることができる。
【0021】
また、本発明ではフィラー1の均等な配置のパラメータとして、次のように求められる比(Lmax/Lmin)を1以上1.2以下とすることが好ましい。即ち、フィルム全体から任意に10箇所以上、好ましくは20箇所以上の領域を抜き取る、もしくはフィルム全長の1%以上、好ましくは2%以上となるようにした領域において、各領域で任意のフィラーP0と、そのフィラーP0からの距離が近い順に3個のフィラーP1、P2、P3を選択し、その3個のフィラーP1、P2、P3とフィラーP0との距離L1、L2、L3のうち、最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)(図1A)をとったときに、その平均が1.0以上1.2以下、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。特に、フィラー1が6方格子に配列している場合には、任意のフィラーP0との距離が近い順に5個のフィラーP1、P2、P3、P4、P5を選択し、上述と同様に最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)を求めたときに、その平均が1.0以上1.1以下であることが好ましい。また、フィラーの配置が、任意のフィラーP0との距離が近い順に3個のフィラーP1、P2、P3、好ましくは5個のフィラーP1、P2、P3、P4、P5を選択し、上記同様に最大の距離(Lmax)と最小の距離(Lmin)との比(Lmax/Lmin)の平均を求めたときに、その平均が1.0以上1.2以下、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である場合、格子配列でなくともよい。任意のフィラーP0に隣接したP1でも同様の数値範囲になることが好ましく、P2でも同様の数値範囲になることがより好ましく、P3でも同様の数値範囲になることが更により好ましい。このようになれば、一面に略均一な分散状態であるといえる。
【0022】
フィラーが6方格子、正方格子又は斜方格子(菱形格子)に配置されている場合、上述の比(Lmax/Lmin)は、設計上は1となるが、実際にはフィラー含有フィルムの製造時に微小な位置ずれが発生し、また、フィラー含有フィルムを巻装体とすると、フィラー含有フィルムの厚みの巻き締まりによっても微小な位置ずれが生じることが懸念される。これに対し、上述の比(Lmax/Lmin)の上限は、本発明におけるフィラーの位置ずれの許容範囲となる。本発明ではこの許容範囲を低く抑えることにより、フィラー同士が互いに非接触に、かつ均等に配置された状態とし、これにより、樹脂のはみ出しやブリーディングを防止する。また、フィラーが導電粒子であり、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムである場合には、異方性導電接続時に各導電粒子1に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを実際的に低減させることができ、また、ショートも防止できる。
【0023】
フィラー含有フィルムにおいて比(Lmax/Lmin)が上述の範囲にあることは該フィルムの任意の箇所で実現されていることが望ましいが、そのことは、フィラー含有フィルムの長手方向の一方の端部と、他方の端部の双方において比(Lmax/Lmin)を調べることで容易に確認することができる。特にフィラー含有フィルムが巻き芯に巻かれた巻装体になっている場合には、巻き芯の直径を2Rとした場合に、フィラー含有フィルムの巻き芯側の一端から長さ2πRの長さ(即ち、巻き芯の周長)の領域において、前記比(Lmax/Lmin)が1.0以上1.2以下であればよい。この領域では巻き締まりによるテンションが最もかかりやすくなるため、比(Lmax/Lmin)が変動しやすいからである。尚、フィラー含有フィルムの巻き芯側の一端とは、例えば、巻き芯のリード部分とフィラー含有フィルム(もしくはこれを支持している基材フィルム)がつなぎあわされている箇所を指す。他方の端部とは、巻き芯を用いて巻装体になっているフィルムの取り出し位置になる。この一端から他端までの長さはフィラー含有フィルムの長さによって変動するが、他方の端部で比(Lmax/Lmin)を調べる場合、最外周の1周分以上の長さから任意に選択した10箇所以上の比(Lmax/Lmin)の平均が1.0以上1.2以下であれば好ましい。
【0024】
また、本発明のフィラー含有フィルムでは、フィラーを任意に配置する、もしくは上述のように格子状にフィラーを配置することにより、フィラー同士が互いに非接触で存在する割合は、95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上である。
【0025】
なお、このようにフィラーの微小な位置ずれを抑制し、フィラー同士を非接触とする方法としては、後述するように、フィラー含有フィルムの製造にあたり、予めフィラーが配置されるべき部位が規定された型を作製し、その部位にフィラーを配置し、そのフィラーをバインダー樹脂層に転写させることが好ましい。
【0026】
なお、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合に、格子状に配列したフィラーの格子軸は、異方性導電フィルムの長手方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルムの長手方向と交叉してもよく、接続する端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。例えば、ファインピッチ用の異方性導電フィルムとする場合、図1Aに示したように導電粒子1の少なくとも一つの格子軸Aを異方性導電フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム10Aで接続する端子20の長手方向と格子軸Aとのなす角度θを16°~74°にすることが好ましい。異方性導電フィルム以外の用途であっても、このように傾斜させることで捕捉状態を安定させる効果が見込まれる。
【0027】
<フィラーの個数密度および占有面積率>
フィラーの個数密度および占有面積率は、フィラー含有フィルムの用途、フィラーの粒子径等に応じて適宜定められる。例えば、フィラーを導電粒子とし、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、導電粒子の個数密度は小さすぎるとファインピッチの電子部品の接続に対応することができず、大きすぎるとショートを招く虞があるので、粒子径1~30μmの場合に、30~72000個/mm2が好ましく、50~50000個/mm2がより好ましい。フィルムの平面視における面積占有率(フィラーの個数密度×フィラー1個の平均面積×100)も、個数密度と同様の理由から0.1~35%とすることが好ましく、0.5~30%とすることがより好ましい。異方性導電フィルム以外のフィラー含有フィルムとしての製造条件も、異方性導電フィルムの場合と概ね同じになるため(著しく異ならないため)、設計上の制約などからフィラーの個数密度および占有面積率の条件も概ね同様になると考えて差し支えない。フィラー含有フィルムを巻装体とする場合、ある程度以上にフィラーの占有面積率が高い方が、樹脂のはみ出しを抑制できることから、下限は6%以上が好ましく、より好ましくは12%以上となる(上限は上記同様に、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましい)。35%以上になると、フィラーが接触して独立性が損なわれることが懸念される。なお、上述したように、個数密度や占有面積率はこの範囲に限定されるものではない。
【0028】
<バインダー樹脂層>
(バインダー樹脂層の粘度)
バインダー樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、フィラー含有フィルムの用途や、フィラー含有フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、後述の凹み2b、2cを形成できる限り、フィラー含有フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、フィラー含有フィルムの製造方法として、フィラーを樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込む方法を行うとき、樹脂層がフィルム形成を可能とする点から樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0029】
また、後述のフィラー含有フィルムの製造方法で説明するように、図1Bに示すようにバインダー樹脂層2に押し込んだフィラー1の露出部分の周りに凹み2bを形成したり、図2に示すようにバインダー樹脂層2に押し込んだフィラー1の直上に凹み2cを形成したりする点から、バインダー樹脂層2の最低溶融粘度は、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、さらにより好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0030】
バインダー樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時に生じるフィラーの不用な移動を抑制でき、特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0031】
また、バインダー樹脂層2にフィラー1を押し込むことによりフィラー含有フィルム10Aのフィラー分散層3を形成する場合において、フィラー1を押し込むときのバインダー樹脂層2は、フィラー1がバインダー樹脂層2から露出するようにフィラー1をバインダー樹脂層2に押し込んだときに、バインダー樹脂層2が塑性変形してフィラー1の周囲のバインダー樹脂層2に凹み2b(図1B)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、フィラー1がバインダー樹脂層2から露出することなくバインダー樹脂層2に埋まるようにフィラー1を押し込んだときに、フィラー1の直上のバインダー樹脂層2の表面に凹み2c(図2)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、バインダー樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定はバインダー樹脂層の最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0032】
バインダー樹脂層2にフィラー1を押し込むときの該バインダー樹脂層2の具体的な粘度は、形成する凹み2b、2cの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0033】
上述したように、バインダー樹脂層2から露出しているフィラー1の周囲に凹み2b(図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時に生じるフィラー1の扁平化に対して樹脂から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減する。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性も向上する。
【0034】
また、バインダー樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1の直上のバインダー樹脂層2の表面に凹み2c(図2)が形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比してフィラー含有フィルムの物品への圧着時の圧力がフィラー1に集中し易くなる。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、また導通性能も向上する。本発明のフィラー含有フィルムは、樹脂量が比較的少ないため、前述した凹み2b、や凹み2cが存在することで、フィラーを物品(異方性導電フィルムの場合には、導電粒子と端子もしくは電極)で挟持し易くなり、圧着の推力を低く抑える効果が見込まれる。圧着後の捕捉されたフィラーの独立性も、圧着の前後で維持され易くなることが見込まれる。流動する樹脂そのものの量が比較的少ないからである。
【0035】
<凹みに代わる“傾斜”もしくは“起伏”>
図1B図2に示すようなフィラー含有フィルム(異方性導電フィルム)の 「凹み」2b、2cは、「傾斜」もしくは「起伏」という観点から説明することもできる。以下に、図面を参照しながら説明する。
【0036】
フィラー含有フィルム(異方性導電フィルム)10Aは、導電粒子等のフィラー分散層3から構成されている(図1B)。フィラー分散層3では、バインダー樹脂層2の片面にフィラー1が露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にてフィラー1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にもフィラー1が互いに重なることなく規則的に分散し、フィラー1のフィルム厚方向の位置が揃った単層のフィラー(例えば導電粒子)層を構成している。
【0037】
個々のフィラー1の周囲のバインダー樹脂層2の表面2aには、隣接するフィラー間の中央部におけるバインダー樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2bが形成されている。なお後述するように、本発明の異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムでは、バインダー樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の直上のバインダー脂層の表面に起伏2cが形成されていてもよい(図2)。
【0038】
本発明において、「傾斜」とは、フィラー1の近傍でバインダー樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対してバインダー樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、フィラーの周りのバインダー樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、フィラーの直上のバインダー樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、フィラー直上のバインダー樹脂層の樹脂量が、フィラー直上のバインダー樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。これらは、フィラーの直上に相当する部位とフィラー間の平坦な表面部分とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0039】
上述したように、バインダー樹脂層2から露出しているフィラー1の周囲に傾斜2b(図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に導電粒子であるフィラー1が端子間で挟持される際に生じるフィラー1の扁平化に対して樹脂から受ける抵抗が、傾斜2bが無い場合に比して低減するため、端子におけるフィラーの挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。この傾斜は、フィラーの外形に沿っていることが好ましい。接続における効果がより発現しやすくなる以外に、フィラーを認識し易くなることで、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの製造における検査などが行い易くなるからである。また、この傾斜および起伏はバインダー樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。この場合、フィラーは樹脂層の表面に1点で露出する場合がある。なお、異方性導電フィルムは、接続する電子部品が多様であり、これらに合わせてチューニングする以上、種々の要件を満たせるように設計の自由度が高いことが望まれるので、傾斜もしくは起伏を低減させても部分的に消失させても用いることができる。
【0040】
また、バインダー樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1の直上のバインダー樹脂層2の表面に起伏2c(図2)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、異方性接続時に端子からの押圧力がフィラーにかかりやすくなる。また、起伏があることによりバインダー樹脂が平坦に堆積している場合よりもフィラーの直上のバインダー樹脂量が低減しているため、接続時のフィラー直上のバインダー樹脂の排除が生じやすくなり、端子とフィラーとが接触し易くなることから、端子におけるフィラーの捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。フィラー含有フィルムの異方性導電フィルム以外の態様の場合においても、同様の効果が得られる。
【0041】
(バインダー樹脂層の厚さ方向におけるフィラーの位置)
「傾斜」もしくは「起伏」という観点を考慮した場合のバインダー樹脂層2の厚さ方向におけるフィラー1の位置は、前述と同様に、フィラー1がバインダー樹脂層2から露出していてもよく、露出することなく、バインダー樹脂層2内に埋め込まれていても良いが、隣接するフィラー間の中央部における接平面2pからのフィラーの最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、フィラーの平均粒子径Dとの比(Lb/D)(以下、埋込率という)が60%以上105%以下であることが好ましい。なお、フィラー1がバインダー樹脂層2を貫通していてもよい。貫通している場合の埋め込み率は100%となる。
【0042】
埋込率(Lb/D)を60%以上とすることにより、フィラー1をバインダー樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し、また、105%以下とすることにより、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、異方性導電接続時に端子間のフィラー(導電粒子)を不要に流動させるように作用するバインダー樹脂層(絶縁性樹脂層)の樹脂量を低減させることができる。フィラー含有フィルムの異方性導電フィルム以外の態様の場合においても、同様の効果が得られる。
【0043】
なお、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに含まれる全フィラー(例えば導電粒子)数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上、更により好ましくは99%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が60%以上105%以下とは、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムに含まれる全フィラー(全導電粒子)数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上、更により好ましくは99%以上の埋込率が60%以上105%以下であることをいう。このように全フィラーの埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重がフィラーに均一にかかるので、異方性導電フィルムの場合には、端子におけるフィラーの捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。フィラー含有フィルムの異方性導電フィルム以外の態様の場合においても、同様の効果が得られる。
【0044】
埋込率(Lb/D)は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムから面積30mm2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上の導電粒子を計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上のフィラーを計測して求めてもよい。
【0045】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ(キーエンス製など)を用いてもよい。
【0046】
埋込率(Lb/D)60%以上105%以下のフィラー1のより具体的な埋込態様としては、まず、図1Bに示したフィラー含有フィルム10Aのように、フィラー1がバインダー樹脂層2から露出するように埋込率60%以上100%未満で埋め込まれた態様を挙げることができる。このフィラー含有フィルム10Aは、バインダー樹脂層2の表面のうち該樹脂層2から露出しているフィラー1と接している部分及びその近傍が、隣接するフィラー間の中央部の絶縁性樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対してフィラーの外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有している。
【0047】
このような傾斜2bもしくは後述する起伏2cは、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルム10Aを、バインダー樹脂層2にフィラー1を押し込むことにより製造する場合に、フィラー1の押し込み時の粘度を、下限は、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上とし、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下とすることで得られる。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。なお、バインダー樹脂層をヒートプレスすることなどにより傾斜2bや起伏2cの一部が消失してもよく、傾斜2bが起伏2cに変化してもよく、また、起伏2cを有するフィラーが、その頂部の1点でバインダー樹脂層2に露出してもよい。
【0048】
上述したフィラーの露出部分の周りのバインダー樹脂層2の傾斜2b(図1B)や、フィラーの直上のバインダー樹脂層の起伏2c(図2)の効果を得易くする点からフィラー1の露出部分の周りの傾斜2bの最大深さLhとフィラー1の粒子径Dとの比(Lh/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり、フィラー1の露出部分の周りの傾斜2bの最大径Lgとフィラー1の粒子径Dとの比(Lg/D)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり、フィラー1の直上のバインダー樹脂における起伏2cの最大深さLfとフィラー1の粒子径Dとの比(Lf/D)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0049】
なお、フィラー1の露出部分の径Lcは、フィラー1の粒子径D以下とすることができ、好ましくは粒子径Dの10~90%である。フィラー1の頂部の1点で露出するようにしてもよく、フィラー1がバインダー樹脂層2内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0050】
このような本発明において、バインダー樹脂層2の表面の傾斜2b、起伏2cの存在は、異方性導電フィルム等のフィラー含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2b、起伏2cの観察は可能である。また、傾斜2b、起伏2cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0051】
(バインダー樹脂層の組成)
バインダー樹脂層2は、フィラー含有フィルムの用途に応じて導電性でも絶縁性でもよく、また、可塑性でも硬化性であってもよいが、好ましくは絶縁性の硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。これらは公知の樹脂組成物および硬化剤、開始剤を用いることができる。以下、フィラー含有フィルムの一態様における異方性導電フィルムを主として、絶縁性樹脂の場合を説明する。
【0052】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ化合物を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0053】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、フィラー含有フィルムの製造時における、バインダー樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、フィラー含有フィルムを被着体に接着するときに使用する光硬化(例えば、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化)とで使用する波長を使い分けることができる。
【0054】
フィラー含有フィルムの製造時の光硬化では、バインダー樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、バインダー樹脂層2におけるフィラー1の配置が保持乃至固定化される。また、この光硬化により、フィラー含有フィルムの製造工程におけるバインダー樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。特にこの光硬化は、バインダー樹脂層2の層厚Laとフィラー1の平均粒子径Dとの比(La/D)が0.6未満である場合に行うことが好ましい。フィラー1の平均粒子径Dに対してバインダー樹脂層2の層厚が薄い場合にもバインダー樹脂層2でフィラー1の配置の保持乃至固定化をより確実に行うと共に、バインダー樹脂層2の粘度調整を行い、フィラー含有フィルムを被着体に接着するときの歩留まりの低下を抑制するためである。
【0055】
バインダー樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がより好ましい。光重合性化合物が多すぎるとフィラー含有フィルムを被着体に熱圧着する場合に、押し込みにかかる推力が増加するためである。特に異方性接続の場合には、このようにすることが好ましい。樹脂流動と、樹脂に保持される導電粒子の押し込みを両立させるためである。
【0056】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、カチオン重合性組成物とラジカル重合性組成物の併用などが挙げられる。
【0057】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0058】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0059】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0060】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0061】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0062】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0063】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0064】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述のフィラー1とは別に絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラー粒径20~1000nmの微小なフィラーが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性組成物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。フィラー1とは別に含有させる絶縁性フィラーは、フィラー含有フィルムの用途が異方性導電フィルムの場合に好ましく使用されるが、用途によっては絶縁性でなくともよく、例えば導電性の微小なフィラーを含有させてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、フィラー分散層を形成する樹脂層には、必要に応じて、フィラー1とは異なるより微小な絶縁性フィラー(所謂ナノフィラー)を適宜含有させることができる。
【0065】
本発明のフィラー含有フィルムには、上述の絶縁性又は導電性のフィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0066】
<バインダー樹脂層の層厚>
バインダー樹脂層2の層厚Laは、フィラー1の平均粒子径Dに応じて定めることが好ましく、図1A及び図1Bに示したように、フィラー含有フィルムにおける樹脂層がバインダー樹脂単層からなる場合、これらの比(La/D)が小さく、樹脂量が少なくなりすぎると、フィラー1の配置を所定の分散状態もしくは格子状に維持することが困難になる。そのため本発明では0.5以上とし、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上とする。一方、この比(La/D)が大きくなり、樹脂量が多くなりすぎるとはみ出しの影響が生じ易くなる。そのため本発明では2以下とし、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.3未満とする。
【0067】
なお、バインダー樹脂層2とフィラー1のフィルム厚方向の位置関係は、図1Aに示したように、バインダー樹脂層2の片面からフィラー1が露出してもよく、図2に示すフィラー含有フィルム10Bのようにバインダー樹脂層2の表裏両面からフィラー1が露出することなく、バインダー樹脂層2内にフィラー1が埋め込まれていてもよく、図3に示すフィラー含有フィルム10Cのように、バインダー樹脂層2の表裏両面からフィラー1が露出していてもよい。これらの場合において、バインダー樹脂層2の表裏のフィルム面のうち、フィラー1により近いフィルム面とフィラー1とは面一に揃っていることが好ましい。
【0068】
<第2の樹脂層>
本発明のフィラー含有フィルムは、必要に応じて、図4に示すフィラー含有フィルム10D又は図5に示すフィラー含有フィルム10Eのようにバインダー樹脂層2にバインダー樹脂層よりも好ましくは最低溶融粘度が低い第2の樹脂層4を積層することができる。
【0069】
この場合、バインダー樹脂層2と第2の樹脂層4の合計の樹脂層の総厚Ltがフィラー平均粒子径Dの0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。ここで、下限が0.5倍である態様は、第2の樹脂層が限りなく薄い場合も包含していることを指す。Ltがこの範囲に収まる場合、更に第2の樹脂層と同様にバインダー樹脂層よりも好ましくは最低溶融粘度が低いもしくは同等の第3の樹脂層を設けてもよい。第3の樹脂層は、バインダー樹脂層の第2の樹脂層とは反対の面に設けられていてもよく、第2の樹脂層側に積層されていてもよい。バインダー樹脂層又は第2の樹脂層と最低溶融粘度が異なる層を積層することで、フィラー含有フィルムとしての特性を適宜調整できる。フィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムの場合において、端子間スペースへの樹脂の充填を適宜行えるようになり、接着強度の向上が見込まれる。異方性導電フィルム以外の用途においても、接続する物品の表面状態において、同様の効果が見込まれる。
【0070】
一方、フィラー含有フィルムの樹脂層として、フィラーの配置が異なるバインダー樹脂層を積層してもよい。積層するフィラーの配置が異なるバインダー樹脂層の最低溶融粘度は等しくてもよく、異なっていてもよい。また、上述した第2の樹脂層のようにフィラーを含有しない樹脂層を間に介在させてもよく、最外層に第2の樹脂層や第3の樹脂層を設けてもよい。これはフィラー含有フィルムそのものの厚みの調整や、物品の一方にのみフィラーを接触させる、もしくは物品間におけるフィラーの位置の調整(どちらの物品にも接触させない等)といった調整のために行われてもよい。
【0071】
また、図6に示したフィラー含有フィルム10Fのように、基材フィルム5を有することができる。基材フィルム5は、機能性フィルムとして機能するものでもよく、剥離フィルムとして機能するものでもよい。基材フィルム5は、剥離フィルムである必要がないため、本発明は基材フィルム5(機能性フィルム)とフィラー含有フィルム10が一体となった態様も含まれる。同様に、基材フィルム5とフィラー含有フィルム10が一体となっていない(フィラー含有フィルムが基材フィルムを含まない)態様も含まれる。機能性フィルムとしては、光学的機能を担うものや、表面に導電パターンを有しているもの(例えば、タッチセンサー用の電極パターンが施されたフィルム)などが挙げられる。機能性フィルムとは、それ単体の物性により効果を発現するもの、と言い換えることもできる。基材フィルムである機能性フィルムとフィラー含有フィルムの組み合わせることによって、機能の向上や複合的な機能を付与するなど、用途を適宜調整することができる。例えば、タッチセンサー用の電極パターンが施されたフィルムに光学特性に特徴のあるフィラー含有フィルムを組み合わせる、などが挙げられる。
【0072】
基材フィルム5は、PET(Poly Ethylene Terephthalate)フィルム等の公知の熱可塑性樹脂フィルムから形成することができるが、これに限定されない。PET以外には、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などが挙げられる。また、これらと同等程度の引張弾性率を有していればバインダー樹脂層の支持層として機能させることができる。
【0073】
基材フィルム5の厚さLeは、取り扱い性の点から20μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上85μm以下がより好ましく、30μm以上80μm以下が更により好ましい。また、基材フィルム5の厚さLeが樹脂層の総厚Ltに対して十分に大きいと樹脂のはみ出しを低減させ、樹脂層のはみ出しの問題を無くすることができる。そのため、一例としては、基材フィルム5の厚さLeを樹脂層の総厚Lt(第2の樹脂層が無い場合にはフィラー含有層2の厚さLa)の10倍以下とすることが好ましく、4倍以下とすることがより好ましい。一方、基材フィルム5を過度に厚くすることは資材の無駄となり、一つの巻装体においてフィラー含有フィルムの全長を十分に確保することが困難になる。そのため、基材フィルム5の厚さLeは樹脂層の総厚Lt(第2の樹脂層が無い場合にはバインダー樹脂層2の層厚La)の2倍以上とすることが好ましい。
【0074】
即ち、本発明において、フィラー含有フィルム10Fが異方性導電フィルムである場合、基材フィルム5に対して樹脂層(バインダー樹脂層2及び第2の樹脂層4)の総厚Ltが相対的に薄くなると、樹脂のはみ出しそのものが抑制され、樹脂のはみ出しの影響を低減させる効果が期待できる。また、基材フィルム5を薄くすると、フィラー含有フィルムのフィルム厚が薄くなる。そのため、巻装体にした場合には、巻装体の直径が公知の異方性導電フィルムと同じであったとしても、公知の異方性導電フィルムよりフィルム長を長くすることが可能になる。これは、異方性導電フィルムに限定されるものではない。
【0075】
<樹脂層の総厚>
本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層の総厚Ltがフィラー1の平均粒子径Dの下限は好ましくは0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、上限は好ましくは2倍以下、1.6倍以下、1.3倍以下である。樹脂層の総厚Ltがフィラー1の平均粒子径Dの1倍未満の場合には、フィラー1が樹脂層を貫通している場合がある。ここで、樹脂層の総厚Ltとは、図1B図2及び図3に示したように、フィラー含有フィルム10A、10B、10Cが樹脂層としてバインダー樹脂層2のみを有する場合、バインダー樹脂層2の厚さをいう。また、図4又は図5に示したように必要に応じて第2の樹脂層4を積層した場合、樹脂層の総厚Ltは、バインダー樹脂層2と第2の樹脂層4の合計の厚さをいう。一方、図6に示したように剥離フィルムとして基材フィルム5が設けられている場合、樹脂層の総厚Ltに基材フィルム5の厚みは含まれない。基材フィルム5が機能性フィルムとして設けられている場合も同様である。
【0076】
フィラー1が球体であるとすると、フィラー含有フィルムの樹脂層の総厚Ltとフィラー1との平均粒子径Dとの関係を上述のように規定した場合に、フィラー含有フィルムにおけるフィラーの含有量は、好ましくは1.2vol%以上45vol%以下である。一方、フィラー含有フィルムの面視野におけるフィラーの面積占有率は、好ましくは0.1%以上35%以下である。
【0077】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
本発明のフィラー含有フィルムがフィラー分散層3の単層から形成されている場合の本発明のフィラー含有フィルムは、例えば、バインダー樹脂層2の表面にフィラー1を所定の配列で保持させ、そのフィラー1を平板又はローラーでバインダー樹脂層2に押し込むこにより製造することができる。
【0078】
ここで、バインダー樹脂層2におけるフィラー1の埋込量は、フィラー1の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができ、また、凹み2b、2cの有無、形状及び深さは、押し込み時のバインダー樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整することができる。
【0079】
また、バインダー樹脂層2にフィラー1を保持させる手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、転写型を使用してバインダー樹脂層2にフィラー1を保持させる。転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料の転写型材料に対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。なお、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0080】
フィラー含有フィルムの使用時の経済性の点から、フィラー含有フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこでフィラー含有フィルムの長さは、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上である。一方、フィラー含有フィルムを過度に長くすると、フィラー含有フィルムを被着体に接着するときに使用する装置として従前の装置を使用することができなくなり、取り扱い性も劣る。そこで、フィラー含有フィルムは長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。フィラー含有フィルムのこのような長尺体は、巻き芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。また、フィルム幅は、特に制限はないが、巻き取りや引き出しの作業性の点から下限に関しては0.3mm以上とすることが好ましく、0.5mmがより好ましく、0.6mm以上が更により好ましい。また、上限に関しては600mm以下とすることができるが、樹脂量の絶対値が増えすぎると長尺にした場合のはみ出し量の増加が懸念されることから、70mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が更により好ましい。
【0081】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に使用することができ、フィラー含有フィルムを貼り合わせることができれば物品に特に制限はない。フィラー含有フィルムの用途に応じた種々の物品に圧着により、好ましくは熱圧着により貼着することができる。この貼り合わせ時には光照射を利用してもよく、熱と光を併用してもよい。例えば、フィラー含有フィルムの樹脂層が、該フィラー含有フィルムを貼り合わせる物品に対して十分な粘着性を有する場合、フィラー含有フィルムの樹脂層を物品に軽く押し付けることによりフィラー含有フィルムが一つの物品の表面に貼着したフィルム貼着体を得ることができる。この場合に、物品の表面は平面に限られず、凹凸があってもよく、全体として屈曲していてもよい。物品がフィルム状又は平板状である場合には、圧着ローラーを用いてフィラー含有フィルムをそれらの物品に貼り合わせてもよい。これにより、フィラー含有フィルムのフィラーと物品を直接的に接合させることもできる。フィラー含有フィルムと基材フィルム(機能性フィルム)が一体となっている場合に、このように貼り合せるだけでその機能性を付与することができる。例えば、電極パターンが設けられた基材フィルム(機能性フィルム)の面に、フィラーを導電粒子としたフィラー含有フィルムを設け、これに異なる電極パターンを設けた機能性フィルムを接合することで導通路を形成することができる。
【0082】
また、対向する2つの物品の間にフィラー含有フィルムを介在させ、熱圧着ローラーや圧着ツールで対向する2つの物品を接合し、その物品間でフィラーが挟持されるようにしてもよい。また、フィラーと物品とを直接接触させないようにしてフィラー含有フィルムを物品で挟み込むようにしてもよい。
【0083】
特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、熱圧着ツールを用いて、該異方性導電フィルムを介してICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。
【0084】
したがって、本発明は、本発明のフィラー含有フィルムで種々の物品同士(例えば、第1物品と第2物品と)を圧着により貼着した接続構造体、その製造方法を包含する。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、その異方性導電フィルムを用いて電子部品同士(第1電子部品と第2電子部品)を異方性導電接続する接続構造体の製造方法や、それにより得られた接続構造体、即ち、本発明の異方性導電フィルムにより電子部品同士が異方性導電接続されている接続構造体も包含する。
【0085】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムをその導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の不本意な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りすることもできる。
【0086】
また、異方性導電フィルムが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品に仮貼りして使用することもできる。
【実施例
【0087】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムについて、実施例により具体的に説明する。
実施例1~4、比較例1~4
(1)異方性導電フィルムの製造
表1に示した配合で、導電粒子分散層を形成する絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物を調製した。絶縁性樹脂層の最低溶融粘度は3000Pa・s以上であった。この樹脂組成物をバーコータ-でフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示すフィルム厚の絶縁性樹脂層を形成した。
【0088】
【表1】
【0089】
一方、表2に示す平均粒子径の導電粒子2が平面視で6方格子配列又は正方格子配列(フィルム長手方向となす配列軸の角度が30°)となり、表2に示す個数密度となるように金型を作製した。この金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、凹部が6方格子又は正方格子の配列パターンの樹脂型を形成した。
【0090】
この樹脂型の凹部に導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂層を剥離し、絶縁性樹脂層上の導電粒子を(押圧条件:60~70℃、0.5MPa)で該絶縁性樹脂層内に押し込み、導電粒子分散層を形成した(実施例1~4)。なお、表2に示す平均粒子径の導電粒子としては、実施例1および2では平均粒子径3μmの導電粒子(AUL703、積水化学工業(株))を使用し、実施例3および4では平均粒子径20μmの導電粒子(Au/Niメッキ、日本化学工業(株))を使用した。
【0091】
比較例1~4では表1に示した絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物に導電粒子を混合し、導電粒子が単層でランダムに分散した絶縁性樹脂層(個数密度60000個/mm2)を形成した。
【0092】
(2)評価
(1)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムについて、以下のようにして(a)粒子間距離の一致性、(b)はみ出し試験、(c)COG向け接続試験、(d)FOG向け接続試験を次のように行い評価した。結果を表2に示す。
【0093】
(a)粒子間距離の一致性
金属顕微鏡による面視野で撮った画像を用いて、異方性導電フィルムの一端と他端のそれぞれにおいて、格子状に配列しているフィラーの格子間距離の最短部分の距離を100箇所測定し、一端における最小フィラー間距離Lpと他端における最小フィラー間距離Lqを求め、比Lq/Lpを求めた。また、前述の比(Lmax/Lmin)を求めるために、1箇所あたり200μm×200μmの観察領域を、フィルムの長手方向で意図的にずらして任意に20箇所を抜き取り、トータルの観察領域とし、各観察領域でにおける比(Lmax/Lmin)の平均を求めた。そして、比Lq/Lpが1.2以下であり、かつ比(Lmax/Lmin)が1以上1.2以下の範囲である場合をOK、これを満たさない場合をNGとした。
【0094】
(b)はみ出し試験
表1に示す幅と長さの異方性導電フィルムを巻き芯(直径85mm)に10gのテンションを掛けて、PETフィルムの内周側に異方性導電フィルムが来るように巻き回して巻装体を製造した。図7に示すように、巻き芯12と異方性導電フィルム10との繋ぎ目13と、巻き芯の中心120を結ぶ直線と、巻装体11におけるフィルムの引き出し位置14と巻き芯の中心120を結ぶ直線とがなす角度αを90°として巻き芯12が回転しないように固定し、フィルムの引き出し位置14に200gの荷重をかけ、40℃で6時間静置し、その後、デジタルマイクロスコープ(50~200倍)を用いて巻装体11の側面の外観を観察し、樹脂のはみ出しを次の基準で評価した。観察箇所は3箇所で、巻き芯のリードと基材フィルムを連結している箇所を含めた。
【0095】
樹脂のはみ出しの評価基準
異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層がPETフィルムを挟み込み、1層上段の絶縁性樹脂層と繋がった場合を「1.0層はみ出し」とし、2層上段の接着フィルムと繋がった場合を「2.0層はみ出し」とし、はみ出し層数を絶縁性樹脂層のPETフィルムの挟み込み具合により小数点第1位まで求め、次の基準で評価した。
OK:全ての観察箇所で3.0層以下
NG:1箇所でも3.0層より大きいものがあった場合
【0096】
(c)COG向け接続試験
(c1)初期導通試験
実施例1、2及び比較例1、2の異方性導電フィルムを接続に十分な面積で截断して用いて、以下に示す評価用ICとガラス基板とを180℃、60MPa、5秒で異方性導電フィルムを介して加熱加圧し、評価用接続物を得た。このとき、押圧治具に必要な推力は125Nであった。
【0097】
評価用IC:
外形 長手:20mm、短手:フィルム幅の90%
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離10μm、バンプ高さ3μm バンプ個数820個
【0098】
ガラス基板:
ガラス材質 コーニング社製1737F
30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線(配線パターンはICのバンプ仕様に対応)
【0099】
得られた評価用接続物の初期導通抵抗を4端子法で測定し、以下の基準で評価した。
OK:2Ω未満
NG:2Ω以上
【0100】
(c2)信頼性試験
(c1)で得られた評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間き、その後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定し、次の基準で評価した。
OK:5Ω未満
NG:5Ω以上
【0101】
(c3)ショート率
次のショート率の評価用ICを使用して上述と同様の評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測し、評価用ICの端子数に対する計測したショート数の割合としてショート率を求め、次の基準で評価した。
【0102】
ショート率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group):
外形 15×13mm
厚み0.5mm
バンプ仕様 サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ3μm
【0103】
ショート率評価基準:
OK:50ppm未満
NG:50ppm以上
【0104】
(d)FOG向け接続試験
(d1)初期導通試験
実施例3、4及び比較例3、4の異方性導電フィルムを接続に十分な面積で截断して用いて、以下に示す評価用FPCとガラス基板とをツール幅1.5mm、200℃、5MPa、5秒で異方性導電フィルムを介して加熱加圧し、評価用接続物を得た。得られた評価用接続物の初期導通抵抗を測定し、次の基準で評価した。
【0105】
評価用FPC:
端子ピッチ 100μm
端子幅:端子間スペース=1:1
ポリイミドフィルム厚/銅箔厚(PI/Cu)=38/20、Sn plating
【0106】
ガラス基板:
電極 ITO coating
厚み 0.7mm
【0107】
得られた評価用接続物の導通抵抗を4端子法で測定し、以下の基準で評価した。
OK:2Ω未満
NG:2Ω以上
【0108】
(d2)信頼性試験
(d1)で得られた評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間き、その後の導通抵抗を、(d1)初期導通試験と同様に測定し、次の基準で評価した。
OK:5Ω未満
NG:5Ω以上
【0109】
(d3)ショート率
(d1)初期導通試験の評価用FPCと同じFPCをノンアルカリガラス基板(厚み0.7mm)に加熱加圧(200℃、5MPa、5秒)し、得られた評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート発生率を求め、次の基準で評価した。
【0110】
ショート率評価基準:
OK:200ppm未満
NG:200ppm以上
【0111】
(d4)接着強度
(d1)で得た接続用評価物の評価用FPCに対し、測定箇所が幅1cmになるように切込みを入れた後に、剥離速度50mm/minで90度剥離試験を行い、引き剥がすのに要した力を測定し、次の基準で評価した。
OK:接着強度が10N/cm以上
NG:接着強度が10N/cm未満
【0112】
【表2】
【0113】
表2から、フィルム厚みが粒子径の1.3倍で、導電粒子が6方格子に整列している実施例1、2の異方性導電フィルムや、正方格子に整列している実施例3、4の異方性導電フィルムでは、巻装体に製造したときに樹脂のはみ出しが起こらず、COG向けの接続試験もFOG向けの接続試験も良好な結果が得られた。これに対し、フィルム厚みが粒子径の6倍で、導電粒子がランダムに分散している比較例1も、フィルム厚みは粒子径の1.3倍だが導電粒子がランダムに分散している比較例2、3、4も、巻装体に製造したときに樹脂のはみ出しが生じる場合があり、ショート率が劣ることがわかる。また、COG向け接続試験では、比較例1からフィルム厚と粒子径の比が大きいと初期導通抵抗や導通信頼性が劣ることがわかる。なお、比較例1~4においてもはみ出し試験の条件を、一般的な実使用と同程度の荷重50g、23℃、3時間静置にした場合には、はみ出し評価はOKであった。なお、得られた接続体の端子高さの合計は、評価用ICチップのバンプ高さ、もしくは評価用FPCのCu配線の高さ(銅箔厚)と同じであった。
【0114】
また、FOG向け接続試験の接着強度に関し、実施例3、4ではOKの評価を得たが、実施例1、2の(c1)の接続用評価物も実使用に支障を来さない接着強度を有していた。
【0115】
実施例1~4では、粒子間距離の均一性が優れているが、比較例1~4ではこれが劣ることから、比較例1~4でははみ出し試験の評価結果が劣ると考えられる。
【0116】
実施例5、6
実施例3および4について、平均粒子径を10μm(Au/Niメッキ、日本化学工業(株))、バインダー樹脂層の厚みを20μmとし、導電粒子間距離を調整して粒子個数密度を1100個/mm2にした以外は実施例1、2と同様にして、評価を行った。その結果全ての評価項目で実施例3、4と略同様の結果が得られた。
【0117】
比較例5、6
実施例1においてバインダー樹脂層の層厚を比較例1と同じ18μmとした異方性導電フィルム(比較例5)、及び実施例3においてバインダー樹脂層の層厚を50μmとした異方性導電フィルム(比較例6)を作製し、それらのはみ出し試験を行った。その結果、樹脂のはみ出しの評価は、いずれも実施例1、3の方が優れていた。
【符号の説明】
【0118】
1 フィラー又は導電粒子
2 バインダー樹脂層又は絶縁性樹脂層
3 フィラー分散層又は導電粒子分散層
4 第2の樹脂層
5 基材フィルム
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F フィラー含有フィルム又は異方性導電フィルム
11 巻装体
12 巻き芯
120 巻き芯の中心
13 巻き芯と異方性導電フィルムとの繋ぎ目
14 フィルムの引き出し位置
20 端子
A 格子軸
D フィラーの平均粒子径
La バインダー樹脂層の層厚
Lb フィラーの最深部の距離
Lc フィラーの露出部分の径
Ld 第2の樹脂層の層厚
Le 基材フィルムの厚さ
Lf 起伏の最大深さ
Lg フィラーの露出部分の周りの傾斜の最大径
Lh フィラーの露出部分の周りの傾斜の最大深さ
Lt 樹脂層の総厚
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7