(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】紙力増強剤及び紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/18 20060101AFI20220329BHJP
D21H 17/28 20060101ALI20220329BHJP
D21H 17/37 20060101ALI20220329BHJP
D21H 17/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
D21H21/18
D21H17/28
D21H17/37
D21H17/08
(21)【出願番号】P 2017189163
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】神原 隆介
(72)【発明者】
【氏名】井岡 浩之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-259590(JP,A)
【文献】特開2016-069788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0149412(US,A1)
【文献】特開昭54-034409(JP,A)
【文献】特開平05-009891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B1/00-37/18
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に(メタ)アクリレート基を有する澱粉(A)と、
(メタ)アクリルアミド(b1)を含むモノマー成分(B1)又はその重合体(B2)のいずれか一方との反応生成物を含
み、
(A)成分が、(メタ)アクリレート基を有する成分(a1)と、原料澱粉との反応生成物であり、
(a1)成分が、不飽和グリシジル及び不飽和イソシアネートからなる群より選ばれる1種である、紙力増強剤。
【請求項2】
(A)成分の原料澱粉が、酵素減成澱粉である請求項1
の紙力増強剤。
【請求項3】
(B1)成分が、(メタ)アクリルアミド(b1)、並びにカチオン性ビニルモノマー(b2)及び/又はアニオン性ビニルモノマー(b3)を含む請求項1
又は2の紙力増強剤。
【請求項4】
更に、架橋性ビニルモノマー(b4)及び/又は連鎖移動剤(b5)を含む請求項
3の紙力増強剤。
【請求項5】
濃度20重量%、温度25℃における粘度が100~30,000mPa・sである請求項1~
4のいずれかの紙力増強剤。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかの紙力増強剤を含む紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙力増強剤及び紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より紙力増強剤としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系重合体や澱粉が主に使用されている。(メタ)アクリルアミド系重合体は、澱粉と比べて高価格であるが、パルプへの定着性が高く少量添加でも優れた紙力効果を示す。一方、澱粉は安価であるが、アクリルアミド系重合体に比べてパルプへの定着性が低いために、高い紙力効果を発揮するためにはパルプスラリー固形分に対する添加量を多くする必要がある。
【0003】
そこで、(メタ)アクリルアミド系重合体と澱粉の各長所を活かすため両者を反応させることにより、比較的安価で高性能な紙力増強剤を提供しようとする検討が種々行われている。
【0004】
例えば、澱粉などの水分散性多糖類を含有する水分散液中でアクリルアミドを主成分とするモノマー混合物を重合して得られる製紙用添加剤(特許文献1、2)や、予め特定の連鎖移動性置換基を側鎖に有するビニルモノマーを構成成分とするアクリルアミド系重合体を製造しておき、これと水分散性多糖類をグラフト重合させて得られるグラフト構造の多糖類-アクリルアミド系重合体が公知である。(特許文献3)。また、本出願人は、連鎖移動性置換基を有する架橋性ビニルモノマーで変性させた澱粉、及びアクリルアミド系重合体(B)を、過酸化物の存在下で反応させて得られる製紙用添加剤(特許文献4)を開示している。
【0005】
しかしながら、これらは価格や性能面である程度の改善は可能であるものの、一層の低価格化や性能の向上を達成せんとする製紙業界の要求を満足できず、比較的安価で高性能である製紙薬品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-60591号公報
【文献】特許第2928785号公報
【文献】特許第3371931号公報
【文献】特開2016-069788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の澱粉-(メタ)アクリルアミド系重合体よりも、安価かつ紙力効果に優れた紙力増強剤及び紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題に着目して鋭意検討した結果、(メタ)アクリレート基を有する成分で変性させた澱粉が効果を奏し、当該変性澱粉を、(メタ)アクリルアミドを含むモノマー成分、又は前記モノマー成分の重合体のいずれか一方と反応させて得られた紙力増強剤が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の紙力増強剤及び紙に関する。
【0009】
1.分子内に(メタ)アクリレート基を有する澱粉(A)と、
(メタ)アクリルアミド(b1)を含むモノマー成分(B1)又はその重合体(B2)のいずれか一方との反応生成物を含む紙力増強剤。
【0010】
2.(A)成分が、(メタ)アクリレート基を有する成分(a1)と、原料澱粉との反応生成物である前項1の紙力増強剤。
【0011】
3.(a1)成分が、不飽和モノカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和グリシジル及び不飽和イソシアネートからなる群より選ばれる1種である、前項1又は2の紙力増強剤。
【0012】
4.(A)成分の原料澱粉が、酵素減成澱粉である前項1~3のいずれかの紙力増強剤。
【0013】
5.(B1)成分が、(メタ)アクリルアミド(b1)、並びにカチオン性ビニルモノマー(b2)及び/又はアニオン性ビニルモノマー(b3)を含む前項1~4のいずれかの紙力増強剤。
【0014】
6.更に、架橋性ビニルモノマー(b4)及び連鎖移動剤(b5)を含む前項5の紙力増強剤。
【0015】
7.濃度20重量%、温度25℃における粘度が100~30,000mPa・sである前項1~6のいずれかの紙力増強剤。
【0016】
8.前項1~7のいずれかの紙力増強剤を含む紙。
【発明の効果】
【0017】
本発明の紙力増強剤によれば、分子内に(メタ)アクリレート基を有する澱粉がアクリルアミドを含むモノマー成分、又はその重合体と効率良く反応し、得られた紙力増強剤が優れた紙力効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の紙力増強剤は、分子内に(メタ)アクリレート基を有する澱粉(A)(以下、(A)成分という)と、(メタ)アクリルアミド(b1)を含むモノマー成分(B1)(以下、(B1)成分という)又はその重合体(B2)(以下、(B2)成分という)のいずれか一方との反応生成物を含むものである。
【0019】
(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリレート基を有する成分(a1)(以下、(a1)成分という)と、原料澱粉との反応生成物が挙げられる。
【0020】
(a1)成分は、得られた(A)成分が、アクリルアミド系重合体へ効率良く導入できることにより、良好な紙力効果を発揮するために使用される。(a1)成分としては、澱粉のヒドロキシ基と反応する官能基(例えば、カルボキシル基、グリシジル基、イソシアネート基等)を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ムコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水クロトン酸、無水イソクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸無水物;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水ムコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジル;イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の不飽和イソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、原料澱粉へ(a1)成分由来の(メタ)アクリレート基が効率良く導入されることにより、(B1)成分又は(B2)成分との反応性にも優れ、結果的に得られた紙力増強剤が優れた紙力効果を発揮する点から、不飽和モノカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和グリシジル及び不飽和イソシアネートからなる群より選ばれる1種が好ましく、無水イタコン酸、無水マレイン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びイソシアネートエチルメタクリレートからなる群より選ばれる1種がより好ましい。
【0021】
原料澱粉としては、特に限定されず、各種公知のものが使用でき、例えば、コーン、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米、サゴヤシ、ワキシーコーン、ハイアミロースから得られる未変性澱粉;カチオン化澱粉、酸化澱粉、リン酸変性澱粉、カルボキシメチル化澱粉、アミン変性澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルバミルエチル化澱粉、シアノエチル化澱粉、ジアルデヒド化澱粉、酢酸変性澱粉、TEMPO酸化澱粉等の変性澱粉等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、市販品を使用しても差支えない。
【0022】
また、原料澱粉として、未変性澱粉又は変性澱粉等を減成処理したもの(以下、減成澱粉という)を使用できる。減成澱粉としては、特に限定されず、例えば、前記原料澱粉に無機過酸化物を作用させて処理した過酸化物減成澱粉;前記原料澱粉を酵素で処理した酵素減成澱粉等が挙げられる。該減成澱粉においては、澱粉及び減成剤からなる水溶液を60~100℃で30~60分加熱撹拌することで製造できる。
【0023】
過酸化物減成澱粉の製造に用いる無機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、次亜塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、過酸化水素等が挙げられる。当該過酸化物は、単独又は2種以上を組み合わせても良い。更に、過酸化水素に、硫酸鉄および硫酸銅のうちの少なくとも1種の水溶性重金属塩を組み合わせても使用できる。これらの中でも過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムのうちのいずれか少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0024】
酵素減成澱粉の製造に用いる酵素としては、例えば、各種細菌、動植物の生産するα-アミラーゼが好ましく使用される。
【0025】
本発明の紙力増強剤においては、(a1)成分との反応時に反応液が過剰に増粘せず、得られる(A)成分も低粘度となりやすい点から、酵素変性澱粉が好ましい。
【0026】
(a1)成分及び原料澱粉の使用量としては、特に限定されないが、原料澱粉/(a1)成分=50/50~99.9/0.1程度、好ましくは92/8~99.5/0.5程度、より好ましくは96/4~99/1程度である。前記の数値範囲とすることで、(B1)成分又は(B2)成分との反応時に増粘が起こり難くなる。
【0027】
(A)成分の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、原料澱粉を溶媒中で分散させた後に、(a1)成分を混合し、温度5~90℃程度(好ましくは5~30℃程度)で5~300分程度(好ましくは15~120分程度)反応させること等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレート基を有する成分は、滴下で添加しても良い。本製造方法により得られた(A)成分は、分子中に(メタ)アクリレート基を有するため、(B1)成分又は(B2)成分との反応に優れ、最終の紙力増強剤も良好な紙力効果を発揮するものとなる。
【0028】
前記溶媒としては、特に限定されず、水(イオン交換水、純水、水道水等)、有機溶媒等を適宜使用できる。有機溶媒としては、原料澱粉を室温又は加温で溶解又は分散しやすいものであれば、特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、N-2-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、本発明においては、無溶媒で粉末状の澱粉に(a1)成分を吹き付けても良いが、前記溶媒を用いる方が好ましく、中でも環境負荷の低減の点から、水が好ましい。また、溶媒の使用量としては、特に限定されず、(a1)成分と原料澱粉との反応性を考慮して、濃度が0.1~50重量%程度に調整することが好ましい。
【0029】
得られた(A)成分の物性としては、特に限定されないが、例えば、濃度15重量%、温度25℃での粘度が、最終の紙力増強剤が優れた紙力効果を発揮する点から、通常50~30,000mPa・s程度であり、好ましくは100~25,000mPa・s程度である。
【0030】
(B1)成分は、(メタ)アクリルアミド(b1)を含むモノマー成分であり、その一例としては、(メタ)アクリルアミド(b1)(以下、(b1)成分という)、カチオン性ビニルモノマー(b2)(以下、(b2)成分という)及びアニオン性ビニルモノマー(b3)(以下、(b3)成分という)を含むものである。
【0031】
(b1)成分としては、アクリルアミド、メタクリルアミドを意味する。
【0032】
(b2)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用することができるが、優れた紙力効果を発揮する点から、3級アミノ基含有ビニルモノマーおよび/または当該ビニルモノマーの4級化塩を含むことが好ましい。3級アミノ基含有ビニルモノマーの具体例としては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、当該ビニルモノマーの4級化塩としては、3級アミノ基含有ビニルモノマーと4級化剤とを反応させてなるもの等が挙げられる。また、4級化塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の有機酸塩であっても良い。前記4級化剤としては、特に限定されず、例えば、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらの(b2)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルクロライド4級化塩が好ましい。
【0033】
(b3)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用できるが、優れた紙力効果を発揮する点から、カルボキシル基を有するビニルモノマーを含むことが好ましい。前記ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの有機系スルホン酸、または前記酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、アクリル酸および/またはイタコン酸が好ましい。
【0034】
(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の含有比率は、特に限定されないが、得られる紙力増強剤のイオン性(カチオン性、アニオン性、両性)と、優れた紙力効果を発揮する点から、(B1)成分中の全モノマー成分を100モル%として、それぞれ以下のように設定される。
【0035】
<カチオン性の場合>
・(b1)成分:通常は70~99.5モル%程度、好ましくは79.5~99モル%程度、より好ましくは83.5~98.5モル%程度
・(b2)成分:通常は0.5~30モル%程度、好ましくは1~20モル%程度、より好ましくは1.5~15モル%程度
【0036】
<アニオン性の場合>
・(b1)成分:通常は75~99.5モル%程度、好ましくは79.5~99モル%程度、より好ましくは83.5~98.5モル%程度
・(b3)成分:通常は0.5~25モル%程度、好ましくは0.8~20モル%程度、より好ましくは1~15モル%程度
【0037】
<両性の場合>
・(b1)成分:通常は45~99モル%程度、好ましくは60~98モル%程度、より好ましくは75~97モル%程度
・(b2)成分:通常は0.5~30モル%程度、好ましくは1~20モル%程度、より好ましくは1.5~15モル%程度
・(b3)成分:通常は0.5~25モル%程度、好ましくは0.8~20モル%程度、より好ましくは1~15モル%程度
【0038】
更に、(B1)成分には、重量平均分子量を調整する目的に、架橋性ビニルモノマー(b4)、連鎖移動剤(b5)を適宜混合しても良い。
【0039】
(b4)成分としては、特に限定されず、例えば、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-アリル(メタ)アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のN-置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド等のN,N置換(メタ)アクリルアミド;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のN,N’-置換(メタ)アクリルアミド;ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート等の芳香族ポリビニル;アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、重量平均分子量が適度に調整され、紙力効果にも優れる点から、N,N-置換(メタ)アクリルアミド、が好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミドがより好ましい。
【0040】
(b4)成分の含有比率は、特に限定されないが、紙力効果の点から、(B1)成分の合計含有比率を100モル%として、通常は0~10モル%程度、好ましくは0.02~5モル%程度、より好ましくは0.1~2モル%程度である。
【0041】
(b5)成分は、架橋反応前のポリマー鎖がより短くなり、低粘度で、より高分子量の共重合体を得ることができる。(b5)成分としては、特に限定されず、例えば、2-メルカプトエタノール、n-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウムやメタリルスルホン酸アンモニウムなどのメタリルスルホン酸塩、エタノール、イソプロピルアルコールやペンタノール等のアリル基を有さないアルコール類、四塩化炭素、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、紙力増強剤の重量平均分子量および粘度を調節する点から、メタリルスルホン酸塩が好ましく、メタリルスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0042】
(b5)成分の含有比率は、紙力効果の点から、(B1)の合計含有比率を100モル%として、通常は0~20モル%程度、好ましくは0.1~10モル%程度、より好ましくは0.2~5モル%程度である。
【0043】
また、(B1)成分には、(b1)成分~(b5)成分以外の成分(b6)(以下、(b6)成分という)を含有しても良い。(b6)成分としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等などのカルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0044】
(b6)成分の含有比率は特に限定されないが、(B1)成分の合計含有比率を100モル%として、通常は5モル%以下、好ましくは1モル%以下である。
【0045】
(B2)成分は、前記(B1)成分の重合体であり、そのイオン性に応じて、非イオン性アクリルアミド系重合体、アニオン性アクリルアミド系重合体、カチオン性アクリルアミド系重合体、両性アクリルアミド系重合体に分類される。また、(B2)成分をなすモノマー成分としては、前述の(b1)~(b6)成分が挙げられ、これらの含有比率も前述の通りで(B2)成分のイオン性に応じて設定するものである。
【0046】
(B2)成分の製造方法としては、特に限定されず、例えば、重合開始剤の存在下、従来公知のモノマー滴下重合法、モノマー溶液を一括して仕込む同時重合法、又はこれらを組み合わせる方法等が挙げられる。製造条件も特に限定されないが、例えば、温度が、通常30~90℃程度、好ましくは70~90℃程度であり、時間が、通常15分~10時間程度、好ましくは30分~5時間程度である。なお、モノマー混合液に用いる溶媒としては、各モノマー成分を溶解又は分散させ、重合反応に悪影響を与えないものであれば、特に限定されないが、通常、水を用いることが好ましい。
【0047】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ系化合物、過酸化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、重合成分(A)の重合反応を充分に進行させる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび/または2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩が好ましい。また、重合開始剤の添加方法についても特に限定されず、一括添加または分割添加または連続滴下などを適宜選択できる。また、重合開始剤の使用量も特に限定されず、全モノマー成分100重量部に対して、通常は0.001~5重量部程度、好ましくは0.01~1重量部程度である。
【0048】
更に任意ではあるが、過酸化物のラジカル発生を容易にする点で、例えば、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、トリエタノールアミンや硫酸第一銅、硫酸鉄等を使用できる。
【0049】
なお、前記製造方法で得られる(B2)成分には、未反応の(b1)~(b6)成分が含まれていても良い。
【0050】
(B2)成分の物性としては、特に限定されないが、例えば、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が、紙力効果の点から、通常50,000~10,000,000程度、好ましくは100,000~8,000,000程度である。また、(B2)成分の形態としては、水溶液であることが望ましい。
【0051】
他に、(B2)成分の粘度としては、濃度20重量%の水溶液(温度25℃)で、通常は50~50,000mPa・s程度であり、好ましくは100~30,000mPa・s程度である。
【0052】
紙力増強剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、(A)成分及び(B1)成分を反応させる工程が挙げられる。
【0053】
当該製造方法における(A)成分及び(B1)[(b1)成分~(b6)成分の合計重量]の使用比率は、特に限定されないが、紙力効果の点から、固形分重量で、(A)/(B1)=5/95~95/5程度が好ましく、10/90~90/10程度がより好ましい。
【0054】
また、製造条件としては、特に限定されないが、(A)成分及び(B1)成分((b1)成分~(b6)成分の混合液)に重合開始剤を添加し、温度50~90℃程度、時間15分~6時間程度で行うことが望ましい。重合開始剤の種類及び使用量は、前述の通りである。なお、製造に際しては、(A)成分へ(B1)成分をそのまま添加しても良いし、滴下で加えても良い。なお、本発明においては、高分子量の反応生成物が得られる点から、(A)成分及び(B1)成分の混合液を溶媒中へ滴下する工程が好ましい。
【0055】
他の紙力増強剤の製造方法としては、(A)成分及び(B2)成分を反応させる工程が挙げられる。
【0056】
当該製造方法における(A)成分および(B2)の使用比率は、特に限定されないが、紙力効果の点から、固形分重量で、(A)/(B2)=5/95~95/5程度が好ましく、10/90~90/10程度がより好ましい。
【0057】
製造条件としては、特に限定されないが、(A)成分及び(B2)成分の混合液に、過酸化物及び/又はアゾ系化合物を添加し、温度50~90℃程度(好ましくは70~90℃程度)、5分~3時間程度(好ましくは15分~2時間程度)で行うことが望ましい。なお、製造に際しては、(A)成分を(B2)成分へ一括又は分割で添加しても良く、更に滴下で加えても良い。
【0058】
過酸化物としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられ、また、アゾ系化合物も特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、これらの使用量も特に限定されず、(A)成分及び(B2)成分の合計100重量部に対して、通常は0.001~5重量部程度、好ましくは0.01~1重量部程度である。更に任意で、例えば、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、トリエタノールアミンや硫酸第一銅、硫酸鉄等を使用しても良い。
【0059】
これらの製造方法で得られる紙力増強剤の濃度は、特に限定されないが、輸送コストの点から、通常は5~50重量%程度、好ましくは10~50重量%程度である。また、その他の物性としては、特に限定されないが、例えば、紙力効果の点から、濃度20重量%の水溶液(温度25℃)における粘度が、通常100~30,000mPa・s程度、好ましくは200~25,000mPa・s程度である。
【0060】
前記紙力増強剤には、本発明の目的・効果を逸脱しない限り、必要に応じて、各種添加剤を配合しても良い。添加剤としては、特に限定されず、例えば、消泡剤、防腐剤、キレート剤、水溶性アルミニウム化合物、ボウ硝、尿素、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
本発明の紙は、前記紙力増強剤を含むものである。その作成方法としては、予め紙力増強剤をイオン交換水等で希釈した後、原料パルプスラリー中に内添する、又は原紙表面に塗工する、更にはこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0062】
内添の場合には、本発明の紙力増強剤をパルプスラリーに添加し抄紙する。紙力増強剤の使用量は特に限定されないが、パルプスラリーの固形分重量に対して、0.01~4重量%程度である。また、パルプスラリーの種類も特に限定されず、LBKP、NBKP等の化学パルプや、GP、TMPなどの機械パルプや古紙パルプ等が挙げられる。また、内添する際には、その他に、硫酸バンドや水酸化アルミニウム等、pH調整剤に硫酸や水酸化ナトリウム等、サイズ剤や湿潤紙力剤、填料として、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン及び炭酸カルシウム等を添加しても良い。
【0063】
表面塗工の場合には、各種公知の手段により原紙表面に塗工する。塗工前の紙力増強剤(塗工液)の粘度としては、通常、濃度5重量%において、50℃で1~50mPa・sである。原紙の種類としては、木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙を用いることができ、塗工手段としては特に限定されず、例えば、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、キャレンダー、ゲートロールコーター、ブレードコーター、2ロールサイズプレスやロッドメタリングなどが挙げられる。また、紙力増強剤の塗工量(固形分)も特に限定されないが、通常、0.001~2g/m2程度、好ましくは0.005~1g/m2程度である。
【0064】
本発明の紙は、様々な製品に供せられ、例えば、コート原紙、新聞用紙、ライナー、中芯、紙管、印刷筆記用紙、フォーム用紙、PPC用紙、インクジェット用紙、感熱紙等として利用できる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、部および%はいずれも重量基準による。なお、便宜上モノマー等については、下記のように略語で示す。
【0066】
AM:アクリルアミド
AA:アクリル酸
IA:イタコン酸
DM:N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート
DML:DMの塩化ベンジル4級化物
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
GMA:グリシジルメタクリレート
GA:グリシジルアクリレート
MAA:無水マレイン酸
IAA:無水イタコン酸
IEMA:イソシアネートエチルメタクリレート
PO:プロピレンオキシド
【0067】
(粘度)
ブルックフィールド型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、25℃に調整したサンプルの粘度を測定した。
(重量平均分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の測定条件で分子量を測定した。
GPC本体:東ソー(株)製
カラム:東ソー(株)製ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本(温度40℃)
溶離液:0.5mol/L酢酸緩衝液(0.5mol/L酢酸(和光純薬工業(株)製)+0.5mol/L酢酸ナトリウム(キシダ化学(株)製)水溶液、pH約4.2)
流速:0.8mL/分
検出器:
ビスコテック社製TDA MODEL301(濃度検出器および90°光散乱検出器および粘度検出器(温度40℃))RALLS法
測定サンプル:サンプル濃度を0.5%に調整した後、カチオン性成分を含む場合はpH10~12になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加し、80℃以上の湯浴に1時間浸した後、硫酸でpH6~8に調整し、溶離液で0.025%に希釈して測定した。
【0068】
合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、固形分濃度88%のコーン澱粉(商品名『コーンスターチ』、王子コーンスターチ(株)製)100.0部、α-アミラーゼ(商品名『クライスターゼL1』、天野エンザイム(株)製)0.03部、およびイオン交換水480部を加えて、75℃に昇温し、40分撹拌後、90℃に昇温して更に10分間撹拌した。30℃へ冷却した後、48%水酸化ナトリウムでpH11になるように調整し、GMA1.0部を添加した。さらに、30℃にて1時間撹拌し、濃度が15%になるようにイオン交換水で希釈して、(A-1)成分を得た。得られた澱粉(A-1)の粘度を表1に示す(以下同様)。
【0069】
合成例2~7、10~13
表1に示す組成にして、合成例1と同様の方法で合成し、(A-2)~(A-7)、(A-10)~(A-13)成分を得た。
【0070】
合成例8
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、固形分濃度88%のコーン澱粉(商品名『コーンスターチ』、王子コーンスターチ(株)製)100.0部、およびイオン交換水480部を加えて、90℃に昇温して更に10分間撹拌した。30℃へ冷却した後、48%水酸化ナトリウムでpH11になるように調整し、GMA1.0部を添加した。さらに、30℃にて1時間撹拌し、濃度が15%になるようにイオン交換水で希釈して、(A-8)成分を得た。
【0071】
合成例9
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、固形分濃度88%のコーン澱粉(商品名『コーンスターチ』、王子コーンスターチ(株)製)100.0部、APS1.0部、およびイオン交換水480部を加えて、90℃に昇温し、40分撹拌した。30℃へ冷却した後、48%水酸化ナトリウムでpH11になるように調整し、GMA1.0部を添加した。さらに、30℃にて1時間撹拌し、濃度が15%になるようにイオン交換水で希釈して、(A-9)成分を得た。
【0072】
比較合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および3つの滴下ロートを備えた反応装置に、固形分濃度88%のコーン澱粉(商品名『コーンスターチ』、王子コーンスターチ(株)製)100部、αアミラーゼ(商品名『クライスターゼL1』、天野エンザイム(株)製)0.03部、およびイオン交換水480部を加えて、75℃に昇温し、40分撹拌後、90℃に昇温して更に10分間撹拌し、濃度が15%になるようにイオン交換水で希釈して、(C-1)成分を得た。
【0073】
比較合成例2
(a1)成分をPOに変える以外は、合成例1と同様に合成し、(C-2)成分を得た。
【0074】
比較合成例3
比較合成例1において、原料澱粉の種類をカチオン化澱粉(商品名『CS-1』、荒川化学工業(株)製)に変えて合成し、(C-3)成分を得た。
【0075】
【表1】
※表中の減成剤および成分(a1)の使用量は、原料澱粉の有姿に対する数値で示す。
【0076】
実施例1-1((A)成分及び(B1)成分の混合液を滴下(以下、製法1という))
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水268.4部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。別途、滴下ロート(1)に50%AM水溶液284.8部、IA10.4部、80%AA9.6部、DM41.8部、60%DML62.8部、SMAS8.8部、DMAA1.32部およびイオン交換水193.1部、先に調製した(A-1)成分416.7部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS0.2部とイオン交換水60部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および(2)より反応装置に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した。75℃へ冷却してAPS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した後、濃度が20%となるようにイオン交換水で希釈し、反応生成物を得た。
【0077】
実施例1-2~1-30、比較例1-1~1-3
表2に示す組成にして、製法1で合成し、反応生成物をそれぞれ得た。
【0078】
実施例2-1((A)成分及び(B2)成分を反応(以下、製法2という))
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水300.0部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。別途、滴下ロート(1)に50%AM水溶液284.8部、IA10.4部、80%AA9.6部、DM41.8部、60%DML62.8部、SMAS8.8部、DMAA1.32部およびイオン交換水193.1部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS0.2部とイオン交換水60部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および(2)より反応装置に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌し、重合体(B2-1)を得た。これに先に調製した(A-1)成分416.7部を添加した後、75℃へ冷却してAPS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した後、濃度が20%となるようにイオン交換水で希釈し、反応生成物を得た。
【0079】
実施例2-2~2-30、比較例2-1~2-3
以下、表2に示す組成にして、製法2でそれぞれ合成し、反応生成物を得た。
【0080】
【0081】
実施例1-31((A)成分中で(B1)成分を重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、先に調製した(A-1)成分416.7部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。別途、滴下ロート(1)に50%AM水溶液284.8部、IA10.4部、80%AA9.6部、DM41.8部、60%DML62.8部、SMAS8.8部、DMAA1.32部およびイオン交換水193.1部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS0.2部とイオン交換水60部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および(2)より反応装置に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した。75℃へ冷却してAPS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した後、濃度が20%となるようにイオン交換水で希釈し、反応生成物を得た。
【0082】
実施例1-32~1-33、比較例1-4
表3に示す組成にして、実施例1-31同様に合成し、反応生成物をそれぞれ得た。
【0083】
【0084】
(性能評価方法1)
段ボール古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F)370mlに調整したパルプに硫酸バンドを1.5%添加して、pH調整のために5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH6.7とした。次に各実施例及び比較例で得られた各反応生成物を紙力増強剤として対パルプ1.0%を添加して、撹拌した後、タッピ・シートマシンにて、坪量180g/m2となるよう抄紙し5kg/cm2で2分間プレス脱水をした。次いで、回転型乾燥機で105℃において3分間乾燥し、温度20℃、湿度65%の条件下にて24時間調湿した。
(比破裂強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8131に準拠して測定し、比破裂強度(kPa・m2/g)で示した。結果を表4及び5に示す。(以下同様)
(比引張強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8113に準拠して測定し、比引張強度(N・m/g)で示した。
(比圧縮強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m2/g)で示した。
【0085】
【0086】
【0087】
[性能評価方法2]
(塗工液の調製)
表6に示す反応生成物を紙力増強剤として、濃度5%になるよう、イオン交換水でそれぞれ希釈し、塗工液をそれぞれ調製した。
【0088】
(塗工紙の作成)
段ボール古紙パルプを抄いて得た原紙(坪量150g/m2)に、50℃に加温した前記塗工液を固形付着量0.50g/m2となるよう、バーコーターで原紙の両面に塗工し、105℃の回転式ドラムドライヤーで1分間乾燥させて塗工紙を得た。なお、塗工液の固形付着量は、塗工前後の板紙の重量より計算した値である。
【0089】
(塗工液の粘度)
B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、50℃に加温した前記塗工液(濃度5.0%)の粘度を測定した。結果を表6に示す(以下同様)。
【0090】
(比圧縮強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m2/g)で示した。
(内部強度)
前記方法で得られた各塗工紙を用い、J.Tappi No.18-2に準拠して、内部強度(N/m)を測定した。
【0091】