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  • 特許-シフトフォーク、及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】シフトフォーク、及び装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/32 20060101AFI20220329BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20220329BHJP
【FI】
F16H63/32
F16H57/04 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017202110
(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公開番号】P2019074175
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 浩右
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-137911(JP,A)
【文献】実開平1-76619(JP,U)
【文献】実開昭62-44318(JP,U)
【文献】特開2007-146895(JP,A)
【文献】米国特許第6164151(US,A)
【文献】特開平7-145861(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19927321(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/32
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト力を伝達可能に構成された基部と、該基部と一体に略半円形二股状に形成されてスリーブの外周部に係合可能な係合部を有する本体部とを備える、シフトフォークであって、
前記本体部は、前記スリーブを位置付け可能な内側領域を区画形成し、2つの先端部を有し、
前記2つの先端部のうち第1先端部には前記係合部の一部の第1係合凸領域が設けられており、前記2つの先端部のうち第2先端部には前記係合部の一部の第2係合凸領域が設けられており、
前記内側領域に前記スリーブに相当する仮想円筒を定めたとき、該仮想円筒の中心線に沿った方向からの前記シフトフォークの正面視において、
前記第1係合凸領域は、前記中心線を挟んで前記第2係合凸領域に略対向する位置にあり、
前記正面視において、前記基部が鉛直方向下方に位置し、かつ、前記本体部の開部分が前記鉛直方向上方に斜め下方から開くような姿勢に前記シフトフォークがあるとき、
前記第1先端部は、前記第2先端部に比べて、前記鉛直方向下側に位置し、
前記第1先端部は、前記第1係合凸領域よりも先端側に、前記鉛直方向で略上側を向いた第1面を有するように構成され、
前記第2先端部は、前記第2係合凸領域よりも先端側に、前記仮想円筒の略円周方向を向いた第2面を有するように構成されており、
前記係合部は、前記本体部の内周に前記円周方向における前記第1係合凸領域と前記第2係合凸領域との間にわたって延在している、
シフトフォーク。
【請求項2】
前記正面視において前記姿勢にある前記シフトフォークにおいて、
前記仮想円筒の前記中心線を含み前記鉛直方向に伸びる仮想面を定めるとき、
前記第1先端部は、前記仮想面により分けられる2つの領域のうち、第1領域に位置し、
前記第2先端部は、前記2つの領域のうち第2領域に、前記基部と共に位置する、
請求項1に記載のシフトフォーク。
【請求項3】
前記係合部は、合成樹脂製である、請求項1又は2に記載のシフトフォーク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の前記シフトフォークが前記姿勢で前記スリーブの前記外周部に係合している、装置において、
前記スリーブの前記外周部の各位置が、前記第1先端部で前記シフトフォークを離れた後、前記第2先端部で前記シフトフォークと再び接するように、前記スリーブは回転可能である、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、変速切替用などのシフトスリーブをシフト操作するためのシフトフォーク、及びシフトフォークを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の変速機構において、変速切替用のシフトスリーブをシフト操作するために、シフトフォークが用いられている。変速機構において、シフトフォークの係合凸部は、シフトスリーブの外周溝に摺動する。この摺動による各摺動部の摩耗や焼き付きを防止するため、種々の潤滑構造が提案されている。例えば、特許文献1は、シフトスリーブの外周溝に下方から係合するシフトフォークにおいて、その外周溝に遊嵌合する半円弧状の内側リブと外周溝との間に溜まった潤滑油の飛散を防止するべく、油飛散防止用段部(突起)を内側リブの両側面に形成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-118029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、変速機構におけるシフトフォークの取り付け姿勢は変速機構に固有のものであり、種々の姿勢が存在する。シフトフォークには、例えば、シフトロッドを介してシフト力を受けるように構成されたシフトフォークの基部が鉛直方向下方に位置し、略半円形二股状の本体部の開部分が鉛直方向上方に斜め下方から開くような姿勢で用いられるものがある。このような姿勢で用いられるシフトフォークでは、例えば自重により落下する潤滑油を、シフトフォークとシフトスリーブとの摺動部により効果的に導くことは、そのような摺動部での潤滑能を高める上で、有効である。
【0005】
そこで、本開示の技術は、変速機構等の装置において、シフトフォークの基部が鉛直方向下方に位置し、略半円形二股状の本体部の開部分が鉛直方向上方に斜め下方から開くような姿勢でシフトフォークがシフトスリーブの外周部に係合しているとき、それらの摺動部に、より効果的に潤滑油を取り込み可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の技術は、シフト力を伝達可能に構成された基部と、該基部と一体に略半円形二股状に形成されてスリーブの外周部に係合可能な係合部を有する本体部とを備える、シフトフォークであって、前記本体部は、前記スリーブを位置付け可能な内側領域を区画形成し、2つの先端部を有し、前記2つの先端部の各々は、前記係合部に含まれる係合凸部を有し、前記内側領域に前記スリーブに相当する仮想円筒を定めたとき、該仮想円筒の中心線に沿った方向からの前記シフトフォークの正面視において、前記2つの先端部のうちの第1先端部に設けられた第1係合凸部は、前記中心線を挟んで、前記2つの先端部のうちの第2先端部に設けられた第2係合凸部に略対向する位置にあり、前記正面視において、前記基部が鉛直方向下方に位置し、かつ、前記本体部の開部分が鉛直方向上方に斜め下方から開くような姿勢に前記シフトフォークがあるとき、前記第1先端部は、第2先端部に比べて、鉛直方向下側に位置し、前記第1先端部は、前記第1係合凸部よりも先端側に、鉛直方向で略上側を向いた第1面を有するように構成され、前記第2先端部は、前記第2係合凸部よりも先端側に、前記仮想円筒の略円周方向を向いた第2面を有するように構成されている、シフトフォークを提供する。
【0007】
好ましくは、前記正面視において前記姿勢にある前記シフトフォークにおいて、前記仮想円筒の前記中心線を含み鉛直方向に伸びる仮想面を定めるとき、前記第1先端部は、前記仮想面により分けられる2つの領域のうち、第1領域に位置し、前記第2先端部は、前記2つの領域のうち第2領域に、前記基部と共に位置するとよい。
【0008】
前記係合部は、合成樹脂製であり得る。
【0009】
また、本開示の技術は、上記シフトフォークが前記姿勢で前記スリーブの外周部に係合している、装置にも関する。当該装置において、前記スリーブの前記外周部の各位置が、前記第1先端部で前記シフトフォークを離れた後、前記第2先端部で前記シフトフォークと再び接するように、前記スリーブは回転可能であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の上記技術によれば、上記構成を備えるので、変速機構等の装置において、上記姿勢でシフトフォークがスリーブの外周部に係合しているとき、それらの摺動部に、より効果的に潤滑油を取り込むことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一例としての、変速機構におけるシフトフォークの説明図である。
図2】本実施形態に係るシフトフォークの正面図である。
図3図2のシフトフォークの形状を説明するための図である。
図4】他の実施形態に係るシフトフォークの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態に係るシフトフォークを添付図に基づいて説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
図1は、一例としての、変速機構におけるシフトフォークの説明図である。同図に示すように、一般的な常時かみ合い式の車両用変速機100では、メインシャフトMSに各々が所定段を担う複数のメインギヤ102、104が回転可能に取り付けられる。メインギヤ102、104の間には、クラッチハブ(不図示)がメインシャフトに固定して設けられる。クラッチハブの外周側には、シフトスリーブ106がスプラインを介して軸方向スライド可能に取り付けられている。シフトスリーブ106の外周溝106aには、シフトフォーク108が係合される。シフトフォーク108においては、その略半円形二股状の本体部の両先端部(一方の先端部のみ図示)に、外周溝106aの側壁面に摺動可能に当接する係合凸部108aが設けられている。各メインギヤ102、104にドグクラッチ110、112が固設され、クラッチハブとドグクラッチ110、112との間にシンクロナイザリング114、116が設けられる。シンクロナイザリング114、116は、シフトスリーブ106の両側方に隣接される。シフトフォーク108はシフトロッド118に固定されている。シフトロッド18は、変速操作に基づき、軸方向つまり、図1中の矢印M1、M2の両方向に移動され得る。シフトフォーク108は、変速操作に基づきシフトロッド118を介してシフト力を受けると、軸方向に移動される。これに伴いシフトスリーブ106も同方向に移動される。例えば、シフトフォーク108が図1に示す状態から図中矢印M1方向に移動されると、シフトスリーブ106も矢印M1方向に連動し(移動し)、シンクロナイザリングによる同期作用を経た後、シンクロナイザリング114及びドグクラッチ110の外周部に形成されたスプライン120、122に順次噛合する。これによりクラッチハブとドグクラッチ110とが連結状態となり、メインギヤ102が選択されることになる。
【0014】
このようなシフトフォークに対して本実施形態は適用されている。本実施形態に係るシフトフォーク10を図2及び図3に基づいて説明する。シフトフォーク10は、車両用変速機構で用いられるものである。図1に基づいて説明したシフトフォークと同様に、シフトフォーク10は、回転軸であるメインシャフト(不図示)上に設けられたシフトスリーブ(スリーブギア)に対して係合し(噛み合い)、そのメインシャフトの軸方向に沿ったシフトスリーブの移動を拘束し、選択段に対応するメインギヤを選択するべくシフトスリーブを移動させるように用いられる。
【0015】
図2では、紙面に直交方向にメインシャフトが配置されたときの、シフトフォーク10の使用状態での姿勢(当該姿勢については、後の説明参照。)で、シフトフォーク10を表している。つまり、図2中に直交軸XYZを示すが、図2中のX軸は、メインシャフトの軸方向に対応し、図2中のY軸及びZ軸で定まる平面、具体的には紙面は、メインシャフトの軸方向に直交する。
【0016】
シフトフォーク10は、基部12と、本体部14とを備える。図2は、シフトフォーク10の正面図(正面視)であり、基部12と本体部14とは紙面に沿って延在するように配置されている。図2のシフトフォーク10の姿勢は、本実施形態でのシフトフォークの使用状態での姿勢であり、図2中のZ軸は鉛直方向上下に伸び、図2中のX軸及びY軸で定まる平面は水平面を実質的になす。図2では、シフトフォーク10は、メインシャフト(シャフト)の軸方向に直交する平面上において、基部12がシフトフォーク10の中で鉛直方向下方に位置し、本体部14の開部分14aが鉛直方向上方に斜め下方から開くような姿勢にある。なお、図2では、本体部14によって区画形成される、シフトスリーブを位置付け可能な内側領域に、シフトスリーブに相当する仮想円筒Cが定められて、破線で表されている。換言すると、図2は、仮想円筒Cの中心線C´に沿った方向からのシフトフォーク10の正面視である。
【0017】
基部12は、シフト力を伝達可能に構成されている。具体的には、基部12は、シフトロッド(図2では不図示)が固定される箇所であり、シフトロッドが通される孔12aが形成されている。したがって、シフトロッドが取り付けられたとき、基部12には、そのシフトロッドを介してシフト力が伝達可能になる。
【0018】
本体部14は、基部12と一体に形成され、略半円形二股状に形成されている。したがって、本体部14は、シフトスリーブを位置付け可能な前述の内側領域を区画形成し、2つの先端部20、22を有する。2つの先端部のうちの一方の先端部(第1先端部)20は、図2の正面視の上記姿勢において、仮想円筒Cの中心線C´を含み鉛直方向に伸びる仮想面Sを定めるとき、その仮想面Sにより分けられる2つの領域のうち、一方の領域(第1領域)S1に位置する。そして、図2の正面視の上記姿勢において、他方の先端部(第2先端部)22は、その仮想面Sにより分けられる2つの領域のうち、他方の領域(第2領域)S2に基部12と共に位置する。本体部14は、その内側領域を区画形成する内面(内周面)に、内側リブ16と、係合部18とを有する。内側リブ16は、本体部14の内面に沿って略円弧状に延在する。本実施形態のシフトフォーク10では、係合部18は、前述の先端部20、22にのみ形成されていて、ここでは、2つの係合凸部24、26からなる。この係合部18(24、26)は、シフトフォーク10の厚さ方向(X軸方向)において、内側リブ16よりも厚みがあり、かつ、径方向内側(仮想円筒Cの中心線C´側)にわずかに突出している。したがって、シフトフォーク10がシフトスリーブの外周溝に係合するとき(噛み合うとき)、係合部18が、主として、その外周溝の壁面に当接する。
【0019】
係合部18は、合成樹脂製である。より具体的には、シフトフォーク10では、係合部18はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で作製されている。ただし、係合部18は、他の材料から構成されてもよい。そして、係合部18は、本体部14の所定位置の溝(不図示)に嵌め込むようにして本体部14に固定されている。なお、この固定は、嵌合に加えて、接着剤も用いて、強固になされている。なお、係合部つまり係合部材は、種々の接合手段で本体部14に固定されることが可能であるが、当初から本体部に一体として構成されてもよい。なお、本発明は、係合部が合成樹脂以外の材料から作製されることを制限するものではない。
【0020】
ここで、図2において、2つの先端部20、22のうち、鉛直方向下方側にある第1先端部20に設けられた係合凸部24を第1係合凸部と称し、第1先端部20よりも鉛直方向上側にある第2先端部22に設けられた係合凸部26を第2係合凸部と称する。図2において明らかなように、第1係合凸部24は、仮想円筒Cの前述の中心線C´を挟んで、第2係合凸部26に略対向する位置にある。
【0021】
さて、図2に示す上記姿勢でシフトフォーク10がシフトスリーブに係合する変速機では、車両に搭載されているとき、車両前進時に、シフトスリーブは図2中に矢印A1で示すように反時計回り方向に回転する。したがって、この変速機では、シフトスリーブの外周部の各位置は、第1先端部20でシフトフォーク10を離れた後、第2先端部22でシフトフォーク10と再び接するように、シフトスリーブは回転可能である。この変速機でそのようにシフトスリーブが回転している使用状態において、シフトフォーク10の係合凸部24、26とシフトスリーブの外周部の外周溝との摺動部に、より効果的に潤滑油を取り込み可能にするように、以下に説明するようにシフトフォーク10の先端部20、22は形作られている。なお、以下の説明から明らかになるように、第1先端部20は、第2先端部22と異なる形状に形成される。まず、第1先端部20について説明する。
【0022】
第1先端部20は、図2において仮想円筒Cを基準にその下側に位置し、上記変速機において、シフトスリーブに鉛直方向下側から係合する第1係合凸部24を備える。そして、第1先端部20でシフトスリーブの各位置がシフトフォーク10を離れるように、シフトスリーブは回転する。このように、変速機のケース内では、種々の部材などが回転等しているので、潤滑油がケース内面から撥ねたり上方から垂れたりする。そうした潤滑油を効果的に受け止めてシフトスリーブの外周溝とシフトフォークの第1係合凸部24との摺動部に供給するように、第1先端部20は、特にそのうちの第1係合凸部24よりも先端側は形作られている。より詳しくは、第1先端部20の第1係合凸部24よりも先端側は、鉛直方向で略上側を向いた第1面30を有するように構成されている。第1面30は、図2において、本体部14の内面(内周面)から外面に実質的に延在するように形成されている。この第1面30は、上方からの潤滑油の受け皿として機能するように形成されている。ここでは、第1面30は平面として形成されているが、曲面又は凹凸を有していてもよい。そして、第1面30は、図2に示すように、第1面30で受けた潤滑油がシフトスリーブの外周溝とシフトフォークの第1係合凸部24との摺動部に流れることを促すように、外側よりも内側が低くなるように傾いている。この傾きの程度は、任意に定められ得るが、ここでは水平面を基準として約10°である。
【0023】
第2先端部22は、図2において仮想円筒Cを基準にその上側に位置し、上記変速機において、シフトスリーブの外周溝に鉛直方向上側から係合する第2係合凸部26を備える。そして、第2先端部22でシフトスリーブの外周部の各位置がシフトフォークと係合を開始するように、シフトスリーブは回転することができる。それ故、矢印A1方向にシフトスリーブが回転する変速機の作動時、回転するシフトスリーブの外周面に付着等した潤滑油は第2先端部22からシフトスリーブの回転方向に沿って導かれる。また、シフトスリーブの上には、変速機のケース内面側から潤滑油が滴下し得る。こうした潤滑油をシフトスリーブの外周溝とシフトフォークの第2係合凸部26との摺動部に供給するように第2先端部22は、特にそのうちの第2係合凸部26よりも先端側は形作られている。より詳しくは、第2先端部22の第2係合凸部26よりも先端側は、短く、つまり第2係合凸部26よりも先端側に突き出た部分を可能な限り減らすように構成されている。これにより、第2先端部22は、第2係合凸部26よりも先端側に、シフトスリーブ(つまり仮想円筒C)の略円周方向を向いた第2面32を有するように構成されている。第2面32は、図2において、本体部14の内面(内周面)から外面に実質的に延在するように形成されている。ここでは、第2面32は平面として形成されているが、曲面又は凹凸を有していてもよい。そして、第2面32は、図2に示すように、第2面32で受けた潤滑油がシフトスリーブの外周溝とシフトフォークの第2係合凸部26との摺動部に流れることを促すように、外側よりも内側が低くなるように傾いている。
【0024】
ここで、第1面30と第2面32について、図3に基づいて更に説明する。図3は、図2と同じ姿勢のシフトフォーク10を示す。図3では、両先端部20、22が対称形状を有するとした場合のそれらの一例を破線で示している。図3において、第1先端部20の第1面30は、図3の第1先端部20において本体部14の第1係合凸部24の内面を伸ばした線に相当する仮想線L1に対して、角度θを有する。つまり、この角度θ分、第1先端部20は、その先端側を省いた形状を有する。なお、この場合の角度θは約35°であるが、この角度は上記技術思想に基づき任意に定められるとよい。第2先端部22は、図3の第2先端部22において、第2係合凸部26よりも先端側を長さLa分、省いた形状を有する。この長さLaは、係合凸部26との関係で定まるとよく、任意に定めることができる。このように第1先端部20及び第2先端部22はそれぞれ形付けられているので、第2先端部22は、第1先端部20よりも実質的に短く形成されている。
【0025】
以上述べたように、シフトフォーク10は、所定の変速機において、図2に示す上記姿勢で、主として回転方向A1に回転するシフトスリーブに係合した状態で用いられ、第1係合凸部24を備える第1先端部20に上記構成の第1面30を有し、第2係合凸部26を備える第2先端部22に上記構成の第2面32を有する。したがって、シフトフォーク10の、シフトスリーブの外周溝との係合箇所つまり摺動部に、潤滑油をより好適に導く(取り込む)ことが可能になる。
【0026】
以上、シフトフォーク10について説明したが、それに対して種々の変更が可能である。他の実施形態に係るシフトフォーク110を図4に示す。シフトフォーク110は、係合部118が、本体部14の内周の概ね全体にわたって延在する。つまり、シフトフォーク110では、上記実施形態のシフトフォーク10の第1係合凸部24と第2係合凸部26のそれぞれに相当する部分との間も、係合部118の一部として構成している。なお、シフトフォーク110では、係合部118は、係合部18と同様に、(合成樹脂である)PEEKで作製されて本体部14に固定されている。係合部118の材料及び取付(固定)方式に関する変形バリエーションについては、上記実施形態のシフトフォーク10の係合部18と同様である。なお、本発明は、係合部が、1つの(つながった)係合凸部や、2つの係合凸部から構成されることに限定されず、3つ以上の係合凸部から構成されることを許容する。
【0027】
本発明は、トランスミッションに限らず、(シフトフォークを用いる)装置及びそのシフトフォークに広く適用することができる。例えば、本発明に係るシフトフォークは、2軸駆動タイプの差動装置のシンクロ装置に広く適用されてもよい。
【0028】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は種々の変更が可能である。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 シフトフォーク
12 基部
14 本体部
16 内側リブ
18 係合部
20 第1先端部
22 第2先端部
24 第1係合凸部
26 第2係合凸部
30 第1面
32 第2面
図1
図2
図3
図4