(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両の電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20220329BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20220329BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20220329BHJP
F16D 121/16 20120101ALN20220329BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20220329BHJP
【FI】
B60T13/74 E
F16D65/18
F16D7/02 F
F16D121:16
F16D121:24
(21)【出願番号】P 2017217068
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】内田 龍貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007569(JP,A)
【文献】特開2013-024389(JP,A)
【文献】特開2005-351188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
F16D 1/00-9/10
41/00-47/06
49/00-71/04
F16D 121/16
F16D 121/24
F16F 1/00-6/00
F16H 19/00-37/16
49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押し付ける電気モータと、
前記電気モータに通電が行われない場合に、前記電気モータに対して、前記摩擦部材が前記回転部材から離れる方向の戻しトルクを発生する戻し機構と、
を備える車両の電動制動装置であって、
前記戻し機構は、
一方端の部分が、前記電気モータによって駆動される回転シャフトに係止され、前記一方端とは反対側である他
方端から、前記一方端に向けて所定長さに亘る部分
の前記他方端を除く一部が折り曲げられて形成された拘束部を有する渦巻きばねと、
前記渦巻きばねを収納し、前記拘束部と接触する平面状の制止面を有するハウジングと、
を含み、
前記他
方端は、前記制止面を前記回転シャフトの軸線に近付くように延ばした延長面に対して、前記軸線とは反対側に位置する、車両の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、特許文献1に記載されるような、「電動モータの逆回転駆動が不可能となった場合であっても、ピストンを初期位置に復帰させることを目的として、電動モータの出力軸と一体的に回転可能にエネルギ蓄積機構(戻し機構)のケースに支承された回転軸を備え、回転軸の正回転によりエネルギ蓄積機構内部の渦巻きばねを弾性変形させて弾性エネルギを蓄積し、回転軸の逆回転時には、渦巻きばねに蓄積された弾性エネルギを解放して回転軸に対して逆回転の回転トルクを付与するもの」を開発している。この電動制動装置の戻し機構には、渦巻きばね(弾性体)の一端部とハウジングとの間に設けられ、回転軸が第1所定値未満のトルクで正回転されるとき、弾性体のハウジングに対する相対回転を規制し、第1所定値以上のトルクで正回転されるとき、弾性体のハウジングに対する相対回転を許容するトルクリミッタが設けられている。トルクリミッタとして、簡単な構成で、且つ、戻しトルクが大きい値として設定され得るものが望まれている。
【0003】
上記課題を解決するために、出願人は、特許文献2に示すような装置(戻し機構)を開発している。例えば、特許文献2の装置では、「戻し機構は、一方端の部分が、電気モータによって駆動される回転軸に係止される渦巻きばねと、渦巻きばねの半径外側方向に延ばされた制止面が形成されるハウジングとで構成される。渦巻きばねの他方端の部分が、一方端に近い順に、外周面に対して、谷折りされた第1谷折り部、第1屈曲部、及び、山折りされた第2屈曲部が形成され、電気モータが摩擦部材を回転部材に近づける方向である正転方向に回転される場合に、第1屈曲部は、制止面を押圧し、渦巻きばねは、逆転方向の戻しトルクを電気モータに付与する。ハウジングは、制止面と第1屈曲部との接触部を通り、回転軸の軸線を中心とした円弧の接線で形成される接線面に対して、渦巻きばねの半径内側方向に傾いた受圧面を有し、受圧面に、第1屈曲部と第2屈曲部との間の外周面が押し付けられる」ように構成されている。該戻し機構には、更なる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-024389号公報
【文献】特願2016-242964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両の電動制動装置に適用され、渦巻きばねを採用した戻し機構において、トルクリミッタが適切に作動するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の電動制動装置は、車両の車輪(WH)と一体となって回転する回転部材(KT)に摩擦部材(MS)を押し付ける電気モータ(MT)と、前記電気モータ(MT)に通電が行われない場合に、前記電気モータ(MT)に対して、前記摩擦部材(MS)が前記回転部材(KT)から離れる方向の戻しトルク(Tq)を発生する戻し機構(MD)と、を備える。
【0007】
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記戻し機構(MD)は、「一方端(Cz)の部分が、前記電気モータ(MT)によって駆動される回転シャフト(SI、SO)に係止され、前記一方端(Cz)とは反対側である他方端(Ca)から、前記一方端(Cz)に向けて所定長さに亘る部分の前記他方端(Ca)を除く一部が折り曲げられて形成された拘束部(Pk)を有する渦巻きばね(SU)」と、前記渦巻きばね(SU)を収納し、前記拘束部(Pk)と接触する平面状の制止面(Mk)を有するハウジング(HG)と、を含んでいる。そして、前記他方端(Ca)は、前記制止面(Mk)を前記回転シャフト(SI、SO)の軸線(Ji、Jo)に近付くように延ばした延長面(Mz)に対して、前記軸線(Ji、Jo)とは反対側に位置するよう構成されている。
【0008】
渦巻きばねSUは、半径が小さくなるよう曲げられて、ハウジングHGに組み付けられる。このため、拘束部Pkには、渦巻きばねSUの弾性力Fsに加え、渦巻きばねSUの曲げによる力(曲げ力)Fmが作用する。上記構成によれば、曲げ力Fmは、拘束部Pkに対して、半径外側方向Dsに作用するため、トルクリミッタとして、戻し機構MDの適正作動が確保され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る車両の電動制動装置DBの全体構成図である。
【
図2】戻し機構MDを説明するための断面図である。
【
図3】戻し機構MDの作動を説明するための特性図である。
【
図4】戻し機構MDの制止部Aa(特に、制止面Mk)を説明するための断面図である。
【
図5】渦巻きばねSUの拘束部Pkを説明するための概略図である。
【
図6】渦巻きばねSUの外端Caの位置を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明に係る車両の電動制動装置DBの全体構成>
図1の全体構成図を参照して、本発明の実施形態に係る電動制動装置DBについて説明する。以下の説明において、同一の記号が付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一の機能を発揮するものである。従って、重複説明は、省略されることがある。
【0011】
電動制動装置DBを備える車両には、制動操作部材BP、操作量センサBA、駐車ブレーキ用のスイッチSP、車体側コントローラECU、制動アクチュエータBR、及び、通信線SGが備えられる。更に、車両の各車輪WHには、ブレーキキャリパCP、回転部材KT、及び、摩擦部材MSが備えられている。
【0012】
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHに対する制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定され、この回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパCPが配置される。そして、ブレーキキャリパ(単に、「キャリパ」ともいう)CPでは、2つの摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MSが、電気モータMTの動力によって回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体となって回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルクが付与され、結果、制動力が発生される。
【0013】
運転者による制動操作部材BPの操作量Baを検出するよう、操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダの圧力を検出する圧力センサ、制動操作部材BPの操作力を検出する操作力センサ、及び、制動操作部材BPの操作変位を検出する操作変位センサのうちの少なくとも1つが採用される。検出された制動操作量Baは、車体側コントローラECUに入力される。
【0014】
車両のダッシュボードの操作パネルには、駐車ブレーキ用のスイッチ(単に、「駐車スイッチ」ともいう)SPが設けられる。駐車スイッチSPは、オン・オフ型のスイッチであり、駐車ブレーキの要否を指示する。駐車ブレーキが要求されている場合には、駐車スイッチSPの信号(駐車信号)Spとして、オン信号が出力される。一方、駐車ブレーキが必要とされていない場合には、駐車信号Spは、オフ信号にされる。駐車信号Spは、車体側コントローラECUに入力される。
【0015】
車両の車体には、車体側コントローラ(「車体側電子制御ユニット」ともいう)ECUが設けられる。車体側コントローラECUは、目標押圧力演算ブロックFT、及び、駐車押圧力演算ブロックFPを含んで構成される。
【0016】
目標押圧力演算ブロックFTでは、制動操作量Baに基づいて、目標押圧力Ftが演算される。目標押圧力Ftは、摩擦部材MSが回転部材KTを押す力の目標値であり、制動操作量Ba、及び、予め設定された演算マップZftに基づいて演算される。演算特性Zftでは、目標押圧力Ftは、操作量Baが「0」以上、所定値bo未満の範囲では「0」に演算され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baの増加に従って「0」から単調増加するように演算される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。目標押圧力Ftは、通信線SGを介して、車輪側コントローラECWに送信される。
【0017】
駐車押圧力演算ブロックFPでは、駐車信号Spに基づいて、駐車押圧力Fpが演算される。目標押圧力Ftと同様に、駐車押圧力Fpは、摩擦部材MSの回転部材KTに対する押圧力の目標値である。駐車押圧力Fpは、駐車信号Sp、及び、予め設定された時系列の演算マップZfpに基づいて演算される。演算特性Zfpでは、駐車信号Spが、オフ状態からオン状態に遷移した時点が、時間Tにおいて「0」とされる。即ち、「T=0」が起点とされ、時間Tの経過に従って、所定の時間勾配dfにて、駐車押圧力Fpが、「0」から所定値fpまで増加される。ここで、所定値fpは予め設定された定数であり、坂路でも車両の停止状態が維持されるよう、通常の制動操作によって発生される押圧力に比べて極めて大きい値である。演算特性Zfpでは、「Fp=fp」の状態が、所定時間tp(予め設定された所定値)に亘って維持された後、駐車押圧力Fpは「0」に減少される。なお、駐車押圧力Fpが「0」に向けて減少される前に、電気モータMTの回転運動は、ロック機構によって拘束されるため、実際の押圧力Faは、所定値fpに維持される。駐車押圧力Fpは、通信線SGを介して、車輪側コントローラECWに送信される。
【0018】
制動アクチュエータBR(単に、「アクチュエータ」ともいう)について説明する。
アクチュエータBRによって、摩擦部材(ブレーキパッド)MSが、回転部材(ブレーキディスク)KTに押し付けられる。このときに生じる摩擦力によって、アクチュエータBRは、車輪WHに制動トルクを与え、制動力を発生させる。アクチュエータBRとして、所謂、浮動型ディスクブレーキの構成が例示される。制動アクチュエータBRは、キャリパCP、押圧ピストンPN、電気モータMT、回転角センサMA、減速機GS、入力シャフトSI、出力シャフトSO、ねじ部材NJ、押圧力センサFA、車輪側コントローラECW、及び、戻し機構MDにて構成される。
【0019】
キャリパCPは、2つの摩擦部材(ブレーキパッド)MSを介して、(ブレーキディスク)KTを挟み込むように構成される。キャリパCPの内部にて、押圧ピストン(単に、「ピストン」ともいう)PNが、回転部材KTに対して移動(前進、又は、後退)される。ピストンPNの移動によって、摩擦部材MSが回転部材KTに押し付けられて摩擦力が発生する。ピストンPNの移動は、電気モータMTの動力によって行われる。具体的には、電気モータMTの出力軸には、入力シャフトSIが固定され、その回転軸線Jiを中心として、一体となって回転する。つまり、電気モータMTの出力(回転力)が、入力シャフトSIに入力される。
【0020】
入力シャフトSIは、回転軸線Jiの回りに回転する回転軸部材(回転シャフト)である。入力シャフトSIには、小径歯車が固定されている。この小径歯車は、大径歯車と噛み合わされ、減速機GSが構成されている。大径歯車には、出力シャフトSOが固定されている。出力シャフトSOは、その回転軸線Joの回りに回転する回転軸部材(回転シャフト)である。電気モータMTの動力は、入力シャフトSIから、減速機GSを介して、出力シャフトSOに伝達される。出力シャフトSOの回転動力(トルク)は、ねじ部材NJによって、直線動力(回転軸線Joと同軸であるピストンPNの中心軸方向の推力)に変換される。この直線動力(推力)によって、ピストンPNは回転部材KTに対して、前進又は後退するように移動される。ピストンPNの移動によって、摩擦部材MSが、回転部材KTを押す力(押圧力)が調整される。回転部材KTは車輪に固定されているため、摩擦部材MSと回転部材KTとの間に摩擦力が発生し、車輪の制動力が調整される。
【0021】
電気モータMTは、ピストンPNを移動させるための動力源である。例えば、電気モータMTの回転方向において、正転方向Raが、摩擦部材MSが回転部材KTに近付いていく方向に相当する。即ち、正転方向Raは、ピストンPNが前進し、押圧力が増加し、制動トルクが増加する方向に対応する。また、電気モータMTの逆転方向Rbが、摩擦部材MSが回転部材KTから離れていく方向に相当する。即ち、逆転方向Rbは、ピストンPNが後退し、押圧力が減少し、制動トルクが減少する方向に対応する。
【0022】
例えば、電気モータMTとして、ブラシレスモータが採用される。電気モータMTのロータ(回転子)の位置(即ち、回転角)Maを検出するよう、電気モータMTには、回転角センサMAが設けられる。回転角Maに基づいて、ブラシレスモータMTが駆動される。また、ピストンPNが摩擦部材MSを実際に押す力(実押圧力)Faを検出するよう、押圧力センサFAが設けられる。検出された実回転角Ma、実押圧力Faは、車輪側コントローラECWに入力される。
【0023】
車輪側コントローラECWは、電気モータMTを駆動する電気回路である。車輪側コントローラECWによって、目標、駐車押圧力Ft、Fp、実押圧力Fa、及び、回転角Maに基づいて、電気モータMTが駆動され、その出力(回転速度とトルク)が制御される。目標、駐車押圧力Ft、Fpは、通信線SGを介して、車体側コントローラECUから車輪側コントローラECWに送信される。車輪側コントローラECW(「車輪側電子制御ユニット」ともいう)は、キャリパCPの内部に配置(固定)され、マイクロプロセッサMP、及び、駆動回路DRを含んで構成される。
【0024】
マイクロプロセッサMPには、各種の演算処理が含まれる。駆動回路DRには、複数のスイッチング素子で構成されるブリッジ回路が含まれる。コントローラECWのマイクロプロセッサMPでは、電気モータMTを駆動するための各スイッチング素子を制御する駆動信号が演算される。そして、駆動回路DRのブリッジ回路にて、駆動信号に基づいて、各スイッチング素子の通電状態が切り替えられ、電気モータMTの出力が調整される。
【0025】
具体的には、実押圧力Fa(押圧力センサFAの検出値)が、目標、駐車押圧力Ft、Fpに一致するよう、スイッチング素子が制御される。例えば、電気モータMTとして、ブラシレスモータが採用される。ブラシレスモータMTは、回転角Ma(回転角センサMAの検出値)に基づいて駆動される。従って、電気モータMTは、回転角Ma、及び、押圧力Faに基づいて制御される。なお、車体側コントローラECU、及び、車輪側コントローラECW(電気モータMTを含む)への電力は、車両の車体側に設けられた蓄電池、及び、発電機によって、電力線を経由して供給される。
【0026】
戻し機構MDが、入力シャフトSI(「回転シャフト」に相当)に設けられる。戻し機構MDによって、電気モータMTへの通電が停止された場合に、摩擦部材MSと回転部材KTとの押圧接触が解放される(即ち、実際の押圧力Faが「0」に向けて戻される)。具体的には、電気モータMTが正転方向Raに駆動される場合に、戻し機構MDに弾性エネルギが蓄えられる。この弾性エネルギによって、電気モータMTの非通電状態において、電気モータMTが逆転方向Rbに回転される。結果、ピストンPNが後退方向に移動され、摩擦部材MSが回転部材KTから離れる方向に移動される。このため、電気モータMTへの電力供給が行われない場合においても、摩擦部材MSと回転部材KTとの押圧状態が、戻し機構MDによって解除される。
【0027】
<戻し機構MD>
図2の断面図を参照して、戻し機構MDについて説明する。戻し機構MDによって、電気モータMTが逆転方向Rbに回転され、摩擦部材(ブレーキパッド)MSが回転部材(ブレーキディスク)KTから離れるよう、戻しトルクTqが発生される。この戻しトルクTqによって、電気モータMTへの通電が停止された場合に、押圧ピストンPNは、少なくとも初期位置にまでは戻される。ここで、ピストンPNの初期位置は、回転部材KTと摩擦部材MSとの隙間が略「0(ゼロ)」であり、摩擦部材MSが回転部材KTから離れていく際に、それらの押圧状態が初めて解放される位置に相当する。従って、初期位置では、摩擦部材MSの回転部材KTに対する押圧力Faは、「0」である。
【0028】
ピストンPNの初期位置への戻し作動は、フェイルセーフ機能として、電動制動装置DBへの電力供給が停止された場合(電力源の失陥時を含む)であっても必要となる。このため、ピストンPNの初期位置までの復帰は、戻し機構MDの内部に蓄積された弾性エネルギによって、機械的に達成される。更に、ピストンPNの初期位置は、摩擦部材MSの摩耗によって変化する。具体的には、摩擦部材MSの摩耗量が大きくなるに従って、ピストンPNの初期位置は、前進方向(回転部材KTに近付く方向)に、順次移動される。摩擦部材MSの摩耗量に係らず、戻し機構MDの蓄積弾性エネルギが概一定に維持されるよう、戻し機構MDには、摩耗補償機構が必要となる。
【0029】
戻し機構MDは、入力シャフトSI(「回転シャフト」に相当)に設けられる。入力シャフトSIは、電気モータMTの出力軸と一体的に回転するよう、電気モータMTに固定されている。戻し機構MDは、渦巻きばね(弾性体)SU、及び、ハウジングHGにて構成される。渦巻きばねSUは、高弾性の帯状素材が渦巻状に巻かれた機械要素である。渦巻きばねSUでは、巻かれた状態が、元に戻ろうとする力(弾性力)が利用される。渦巻きばねは、「ぜんまいばね」とも称呼される。ハウジングHGは、渦巻きばねSUを収納する部材である。ハウジングHGには、渦巻きばねSUを収納するよう、窪み(凹部)が設けられている。また、該凹部の側面(制止面)Mkにて、渦巻きばねSUの端部が係止されて、渦巻きばねSUが弾性力(ばね力)Fsを発生させる。
【0030】
渦巻きばねSUの内端(「一方端」に相当)Czには、掛止部Pzが形成され、入力シャフトSIに固定される。例えば、渦巻きばねSUの渦巻き形状において、掛止部Pzは、内端Cz(に近い一部分)が、渦巻き形状の内側に丸められるように折り曲げられて形成される。詳細には、掛止部Pzは、一方端Czの部分が、帯状長手方向に直角に、渦巻きばねSUの外周面Msに対して山折りに巻かれて形作られる。入力シャフトSIの外周部には、渦巻きばねSUの掛止部Pzが引っ掛けられるように、半円型断面を有する切り込み部が設けられる。渦巻きばねSUの掛止部Pzは、入力シャフトSIの切り込み部に対して方向性を持って咬み合うことによって固定される。
【0031】
渦巻きばねSUが巻き取られていない状態(即ち、「Tq=0」の場合)では、掛止部Pzは、入力シャフトSIの切り込み部に入り込んでいる(嵌っている)。電気モータMTによって入力シャフトSIが正転方向Raに回転されると、一方端Czの掛止部Pzが、入力シャフトSIの切り込み部に引っ掛けられる。即ち、掛止部Pzは、切り込み部に、単に嵌っていた状態から、切り込み部から力を受けて固定される。このため、入力シャフトSIの回転に伴い、渦巻きばねSUは、順次、巻き取られ、その弾性エネルギは増加される。
【0032】
一方、渦巻きばねSUが全く巻き取られていない状態で、入力シャフトSIが逆転方向Rbに回転される場合には、掛止部Pzは、入力シャフトSIの切り込み部から外れる。このため、入力シャフトSIは、掛止部Pzに対して空回りする。以上の様に、渦巻きばねSUが巻かれていない場合には、掛止部Pzと切り込み部とは、「正転方向Raには係合されるが、逆転方向Rbには係合されない」という、方向性を有する。
【0033】
帯状の渦巻きばねSUの長手方向において、内端Czとは反対側に位置する外端(「他方端」に相当)Caに近接した部分に拘束部Pkが形成される。拘束部Pkは、外端Caに近い部分において、ハウジングHGに対する相対的な動きを拘束するための部位である。拘束部Pkは、渦巻きばねSUの長手方向に対して直角(即ち、入力シャフトSIの回転軸線Jiに対して平行)に、複数回、折り曲げられて形成される。即ち、渦巻きばねSUの渦巻き型円柱形状において、複数の屈曲部の折り線が、該円柱の母線に沿っている。具体的には、内端Czから近い順(外端Caから遠い順)に、外周面Msに対して、夫々、谷折り(「第1屈曲部Cl」という)、山折り(「第2屈曲部Cm」という)、山折り(「第3屈曲部Cn」という)にされることで、拘束部Pkが形作られる。ここで、渦巻きばねSUの断面形状において、折り曲げられた部位を頂点とする三角形Cl-Cm-Cnが、「拘束三角形Tk(立体形状においては、拘束三角柱)」と称呼される。なお、渦巻きばねSUでは、拘束三角形Tkを安定的に形成するため、第3屈曲部Cnよりも外端Caに近い部分が、渦巻きばねSUの外周面Msと、内周面Mu(外周面Msの裏側)とによって挟まれるよう構成されている。ここで、外端Caと第3屈曲部Cnとの間が、「折返し部Po」と称呼される。
【0034】
ハウジングHGは、有底凹部Aa、Ab、Apを有し、渦巻きばねSUを収納する部材である。ここで、凹部Aa、Abは、拘束部Pkを拘束するためのものであり、「制止部」と称呼される。また、凹部Apは、渦巻きばねSUを収納するためのものであり、「収納部」と称呼される。ハウジングHGの底部(特に、収納部Apの底部)には、入力シャフトSIのための貫通孔が設けられている。電気モータMTの出力軸の先端部と係合した入力シャフトSIが、ブッシュに支持されて、収納部Apの底に設けられた貫通孔を貫いている。つまり、入力シャフトSIは、ハウジングHGに対して、回転可能な状態で取り付けられている。凹部Aa、Ab、Apは、閉塞部材によって塞がれて(蓋をされて)、渦巻きばねSUの収納する空間が形成される。
【0035】
ハウジングHGの第1、第2制止部Aa、Abは、収納部Apに対して、入力シャフトSIの回転軸線Jiを中心とした半径外側方向Dsに位置し、収納部Apと連続するように設けられている。渦巻きばねSUは、高弾性素材が渦巻状に巻かれたものであるため、外側に拡がろうとする。従って、拘束部Pk(即ち、拘束三角形Tk)は、通常、第1制止部Aa、又は、第2制止部Abの内部に収まっている(嵌っている)。
【0036】
ハウジングHGの第1、第2制止部Aa、Abの内側には、入力シャフトSIの回転軸線Jiに平行、且つ、軸線Jiから離れる方向(半径外側方向)Dsに延ばされた面(「制止面Mk」という)が形成されている。制止面Mkは、収納部Apの内周面Mp(軸線Jiに平行な円筒面)に連続している。従って、第1、第2制止部Aa、Abと収納部Apとは、1つの空間を形成している。電気モータMTによって入力シャフトSIが正転方向Raに回転されると、拘束部Pkの第2屈曲部Cmは、制止面Mkに押し付けられる。これにより、拘束部Pkは、第1、第2制止部(凹部)Aa、Abに、ただ嵌っていた状態から、制止面Mkから力を受けて固定(係止)される。つまり、外端Ca近傍の部分である拘束部Pk(特に、第2屈曲部Cm)が、制止面Mkに押し付けられて、拘束部Pkの正転方向Raの動きが拘束される。結果、入力シャフトSIの正転方向Raの回転に伴い、渦巻きばねSUは巻き取られ、戻しトルクTqが増加される。
【0037】
渦巻きばねSUが、順次、巻き締められていくと、渦巻きばねSUに蓄積される弾性エネルギは増大し、渦巻きばねSUによって、入力シャフトSIを逆転方向Rbに回転させるよう、弾性力Fs(戻しばね力)が発生される。弾性力Fsによって、入力シャフトSIに対して逆転方向Rbの戻しトルクTqが付与され、電気モータMTに通電されない場合には、摩擦部材MSは回転部材KTから離れる方向(後退方向)に移動される。
【0038】
制止部Aa、Abには、制止面Mkに対して、50~100度の角度をなす受圧面Mjが形成される。拘束部Pk(即ち、拘束三角形Tk)は、第2屈曲部Cm(点P)にて、制止面Mkと接触する。つまり、渦巻きばねSUは、第2屈曲部Cmにおいて、制止面Mkから、弾性力Fsの反力Frを受ける。局所的な力の集中を回避するよう、弾性力Fsは、第2屈曲部Cmと第3屈曲部Cnとの間の外周面Ms(「押圧面Mo」という)が受圧面Mjに接触する力によって支持される。即ち、受圧面Mjに対して、押圧面Moが面接触するため、拘束三角形Tkの形状が維持され得る。
【0039】
入力シャフトSIが、更に、正転方向Raに回転され、渦巻きばねSUが巻き上げられると、内周面Muと外周面Msとの隙間が減少し、徐々に、内周面Muと外周面Msとが密着していく。この巻き締めによって、渦巻きばねSUは、径を小さくしようとする。このため、拘束部Pkは、回転軸線Jiに近付く方向(半径内側方向)Duに引っ張られる。渦巻きばねSUの巻き締め状態が、所定状態に達すると、拘束部Pkが、制止面Mk上を、半径内側方向Duに滑り始め、制止面Mkから外れる。拘束部Pk(特に、第2屈曲部Cm)と制止面Mkとの接触が解除される時点(瞬間)の戻しトルクTqが、「上限トルクq3」と称呼される。戻し機構MDでは、トルクリミッタ機能が、渦巻きばねSUの半径の減少作用を利用して達成される。ここで、「トルクリミッタ」とは、過負荷の状態が生じると接続状態が解除され、トルク伝達が遮断されるものであり、「安全クラッチ」とも称呼される。
【0040】
戻し機構MDは、電気モータMTから、ピストンPNに至る回転シャフトのうちの何れかに設置され得る。例えば、ピストンPN、及び、ねじ部材NJと同軸の出力シャフトSO(回転軸線Jo)に、戻し機構MDが設けられ得る。或いは、入力シャフトSIと出力シャフトSOとの間に中間シャフトが設けられ、該中間シャフトに、戻し機構MDが設けられる。この場合の回転軸線は、中間シャフトの回転軸線である。戻し機構MDが、何れの回転シャフトに設けられても、上記同様の効果を奏する。
【0041】
<戻し機構MDでの回転角とトルクとの関係>
図3の特性図を参照して、戻し機構MDの作動について説明する。この特性図は、電気モータMTの回転角Ma(即ち、入力シャフトSIの回転角)と戻しトルクTqとの関係を表している。なお、戻しトルクTqは、弾性力Fsによって発生されるため、戻しトルクTqは、弾性力Fsに対応する。
【0042】
摩擦部材MSとピストンPNとは、一体となって移動するようには固定されていない。このため、ピストンPNの前進移動においては、ピストンPNは、摩擦部材MSの裏板部を押し、両者は一体となって移動する。一方、ピストンPNの後退移動においては、摩擦部材MSが回転部材KTから力を受ける初期位置までは、両者は一体となって移動する。しかし、ピストンPNが初期位置を超えて戻されると、ピストンPNと摩擦部材MSとは離れる。なお、ピストンPNと摩擦部材MSとが分離された状態では、摩擦部材MSと回転部材KTとが隙間は、回転部材KTの振れ等によって拡げられる。
【0043】
回転角Maが「0」の状態で、ピストンPNは、回転部材KTから最も離れた後端位置にある。「Ma=0」では、渦巻きばねSUは巻き上げられておらず、弾性力Fsは生じていない(即ち、「Tq=0」)。
【0044】
摩擦部材MSが新品であり、全く摩耗していない状態を、実線の特性Zaにて示す。特性Zaにおいて、「Ma=m0、Tq=0」の状態では、掛止部Pzは、入力シャフトSIの切欠き部の中に納まっている。このとき、拘束部Pkは、第1制止部Aa、又は、第2制止部Abの中に納まっている。この状態で、電気モータMTが逆転方向Rbに回転されると、掛止部Pzは切欠き部を外れ、入力シャフトSIは、渦巻きばねSUに対して空転する。掛止部Pzが切欠き部を外れている場合であっても、電気モータMTが正転方向Raに回転されると、掛止部Pzは、直ちに、切欠き部に係止される。また、拘束部Pkが、制止部Aa、Abの外にある場合、渦巻きばねSUは、半径内側方向Duに拡がろうとするため、電気モータMTの正転方向Raの回転によって、拘束部Pkは、制止部Aa、Abに入り込む。
【0045】
掛止部Pz、拘束部Pkが共に拘束された状態で、回転角Maが、正転方向Raに増加されると、渦巻きばねSUは、戻しトルクTq(回転軸線Jiを中心とした逆転方向Rbの回転力)を発生し始める。特性Zaでは、戻しトルクTqは、角度m0にて、「0」から増加を開始する。
【0046】
戻し機構MDでは、少なくともピストンPNを初期位置(摩擦部材MSが回転部材KTを押圧しておらず、押圧力Faが「0」である位置)にまで引き戻すことが必要である。このため、戻し機構MDに誤差が含まれた場合であっても、確実に、ピストンPNの引き戻しが達成され得るよう、初期位置に対応する回転角Maの所定角(初期角)m1にて、所定トルク(初期トルク)q1が発生するよう設定されている(点Aを参照)。換言すれば、ピストンPNの初期位置では、戻し機構MDによって、電気モータMTには、逆転方向Rbの初期トルクq1が作用している。
【0047】
回転角Maが、更に増加され、渦巻きばねSUが、順次、巻き上げられると、これに従って、戻しトルクTqは増加していく。特性Zaは、「Ma=m1」の近傍では、回転角Maが変化しても、戻しトルクTqは僅かにしか変化しないよう、設定されている。このため、摩擦部材MSが摩耗して、ピストンPNの初期位置が変化しても、ピストンPNの初期位置では、戻しトルクTqは略一定である。一方、回転角Maが大の領域では、戻しトルクTqは、回転角Maに対して「下に凸」の特性を有する。従って、僅かな回転角Maの増加に対して、戻しトルクTqは大きく増加する(点B、Cを参照)。
【0048】
摩擦部材MSが新品である場合(即ち、摩耗量が「0」の場合)に、駐車ブレーキによって、駐車押圧力Fpが所定値fpに増加された状態が、点Bに対応する。摩擦部材MSの摩耗量が、順次、増加していくと、「Fp=fp」に対応した作動点は、点Bから、特性Zaに沿って、点Cに向けて変化する。つまり、摩擦部材MSの摩耗量が大である場合には、摩擦部材MSの摩耗量が小である場合に比較して、所定押圧力fpを確保するための回転角Maが増加し、戻しトルクTqが増大する。渦巻きばねSUに蓄積された弾性エネルギを略一定に維持するため、戻し機構MDでは、トルクリミッタが作動する。該作動が、「再係止作動」と称呼される。再係止作動は、駐車ブレーキが作動される場合に実行される。
【0049】
駐車ブレーキの所定押圧力fpに対応した作動点が、点Cに到達すると、再係止作動が生じる。戻しトルクTqが、所定値(上限トルク)q3を超過しようとすると、拘束部Pkと制止面Mkと間に滑りが生じ、拘束部Pkは、制止面Mkによって係止され得なくなる。再係止作動によって、駐車ブレーキ時に生じる戻しトルクTqは減少され、戻しトルクTqは上限トルクq3を超えては発生されない。ここで、上限トルクq3は、渦巻きばねSUの特性(ばね定数等)、形状(長さ、板厚等)、及び、凹部Aa、Ab(特に、制止面Mk)の形状に基づいて、予め設定される。
【0050】
第1制止部Aaの制止面Mkによる拘束部Pkの係止状態が解除された後、拘束部Pkは、再度、第2制止部Abの制止面Mkによって係止される。このとき、特性Zaは、破線で示す特性Zbに変更される。即ち、戻しトルクTqは、「0」にまでは減少されず、点Cの状態から、点Eの状態に遷移される。値q2が、「再係止トルク」と称呼される。再係止作動後の特性Zbでは、戻しトルクTqが「0」から増加を開始する角度が、角度m0から角度m5に変更され、初期位置に対応する初期角が、角度m1から角度m6に変更される。つまり、初期角m6にて、初期トルクq1が発生する。そして、「Fp=fp」に対応した作動点が、点Bから点Eに変更される。更に、摩擦部材MSの摩耗量が増加すると、上記同様の作動が繰り返される。つまり、駐車ブレーキの所定押圧力fpに対応する作動点が、点Eから点Fに向けて増加する。そして、戻しトルクTqが、上限トルクq3に到達すると、再度、再係止作動が生じ、特性Zbが新しい特性に変更される。再係止作動によって、回転角Maと戻しトルクTqの関係が、適宜、更新され、トルクリミッタの機能が達成される。
【0051】
<戻し機構MDの制止部Aa、Ab>
図4の断面図を参照して、戻し機構MDの制止部Aa、Abの詳細について説明する。なお、第1制止部Aa、及び、第2制止部Abは、戻し機構MDの断面において、入力シャフトSIの回転軸線Jiに対して、点対称(軸線Jiを中心に180度回転させたときに一致する図形)である。
【0052】
入力シャフトSIの回転軸線Jiに垂直な断面において、各線について説明する。
拘束部Pkが、制止部Aa内で外側に最も拡がった状態(例えば、掛止部Pzが切欠き部を外れた後に、渦巻きばねSUが巻かれた場合)では、点Pにて、拘束部Pkの第2屈曲部Cmが、制止面Mkに接触する。つまり、点Pは、軸線Jiから最も離れた、制止面Mkと拘束部Pkとの接触点である。軸線Jiと点Pとを結ぶ直線が、「法線Lh」と称呼される。
【0053】
制止部Aa内部の各面について説明する。
制止部Aaの内部の各面は、収納部Ap内部の内周面Mp(回転軸線Jiに平行な円筒面)と連続し、渦巻きばねSUを収納する1つの空間(室)を形成している。軸線Ji、及び、法線Lhを含む平面が、「法線面Mh」と称呼される。法線面Mhは、拘束部Pkと制止面Mkとの接触部(即ち、点Pを通り、軸線Jiに平行な直線)と軸線Jiを含んでいる。
【0054】
渦巻きばねSUは、入力シャフトSIの回転軸線Jiを中心とした円筒渦巻き形状を有している。戻し機構MDに組み付けられた状態において、渦巻きばねSUの長手方向は、回転軸線Jiと垂直(直角)である。渦巻きばねSUの外端(他方端)Caの近傍に拘束部Pkが形成されている。渦巻きばねSUの円型渦巻き形状において、半径外側方向Dsは、回転軸線Jiを中心として、ここから離れる方向である。一方、半径内側方向Duは、回転軸線Ji(中心)に近づく方向である。厳密には、半径方向は、法線Lh上の方向であるが、以下の説明では、半径方向Ds、Duは、回転軸線Jiを基準とした方向を表している。
【0055】
ハウジングHGの凹部の断面において、軸線Jiを中心とした円(二点鎖線で示す)の内側が、収納部Apである。収納部Apは略円筒形状の内壁(円周面)Mpを有する窪みであり、その内部には、渦巻きばねSU(拘束部Pkを除く渦巻きばねSUの円筒渦巻き部)が収納される。制止部Aaは、凹部断面図において、収納部Apの外側(即ち、二点鎖線の円の外側)に位置する窪みである。制止部Aaの内側には、制止面Mk、及び、受圧面Mjが形成され、渦巻きばねSUの拘束部Pk(拘束三角形Tkの部分)が収納される。拘束部Pk(特に、第2屈曲部Cm)が、制止面Mkに突き当たることによって、渦巻きばねSUの正転方向Raの回転が止められ、外端Caの部分が係止される。なお、内周面Mp、制止面Mk、及び、受圧面Mjは、繋がった面であり、これらの面によって、1つの空間が形作られている。
【0056】
制止部Aaの内壁の1つである制止面Mkは、拘束部Pkと制止面Mkとの接触部(点P)から、入力シャフトSIの軸線Jiに近付くように、半径内側方向Duに延ばされている。具体的には、制止面Mkは、軸線Jiに近づくにつれて(即ち、半径内側方向Duに向けて)、法線面Mhに対して、制止面Mk上の最も軸線Jiから離れた部位(点P)を中心にして正転方向Raに僅かに傾いて形成される(断面図では、法線Lhが、点Pを中心とした時計回り方向に傾けられる)。換言すれば、制止面Mkと法線面Mhとは、「拘束部Pkと制止面Mkとの接触可能で、且つ、最も軸線Jiから離れた部位(点P)」にて直線で交差する。そして、点Pから軸線Jiに近付くに従って、制止面Mkと法線面Mhとの距離が増加するように、制止面Mkが形成される。ここで、制止面Mkと法線面Mhとのなす角が、「滑り角β」と称呼される。なお、制止面Mkには、滑り角βが設けられるため、制止面Mkを延長した面Mzは、回転軸線Jiとは交わらない。ここで、面Mzが、「延長面(断面においては、延長線Lz)」と称呼される。
【0057】
入力シャフトSIが、正転方向Raに回転され、渦巻きばねSUが巻き締められると、渦巻きばねSUは、その径を小さくしていく。このため、拘束部Pkは、軸線Jiに向けた方向(半径内側方向Du)に引っ張られる。渦巻きばねSUによる戻しトルクTqが、上限トルクq3に到達すると、拘束部Pkが、制止面Mk上を、半径内側方向Duに滑り始め、瞬時に、制止面Mkから外れる。拘束部Pkの半径内側方向Duの移動は、静止摩擦力によって阻止されている。渦巻きばねSUが、拘束部Pkを半径内側方向Duに引っ張る力が、該静止摩擦力を超えると、直ちに、拘束部Pkは点Pから点Qに向けて移動される。これは、静止摩擦係数(結果、静止摩擦力)が、動摩擦係数(結果、動摩擦力)よりも大きいことに因る。なお、摩擦係数の特性上、制止面Mkは、樹脂材料にて形成されることが好適である。
【0058】
点Qは、拘束部Pkと制止面Mkとの接触点のうちで、最も、回転軸線Jiに近接した点である。第2屈曲部Cmが、点Qを超えると、拘束部Pkは、制止面Mkから外れ、収納部Apの内周面Mp上を滑る。渦巻きばねSUは、半径外側方向Dsに拡がろうとしているため、拘束部Pkは、180度に亘って摺動したのちに、第2制止部Ab内に収まる。そして、再度、拘束部Pk(特に、第2屈曲部Cm)と、第2制止部Abの制止面Mkとが接触し、拘束部Pkが制止面Mkに押圧されて、外端Caの部分が拘束される。拘束部Pkが、第1制止部Aaの制止面Mkから外れ、再度、第2制止部Abの制止面Mkに係止される再係止作動が実行される。再係止作動は、トルクリミッタとして機能し、戻し機構MDに蓄積される最大弾性エネルギが略一定に維持される。
【0059】
戻し機構MDの断面において、第2屈曲部Cmは、点P(軸線Jiから最も離れた接触可能な点)から点Q(軸線Jiに最も近接した接触可能な点)までの制止面Mk上のどこかの位置で係止される。例えば、掛止部Pzが切欠き部を外れた後には、拘束部Pkは最も拡がった状態にされるため、点Pの近傍で、拘束部Pkは制止面Mkに係止される。一方、再係止作動が生じた場合には、それが瞬時に行われるため、点Pと点Qとの中央部付近で、拘束部Pkは制止面Mkに係止される。
【0060】
トルクリミッタ機能が、渦巻きばねSUの巻き締め作用を利用して達成されるため、戻しトルクTqが大とされても、上限トルクq3が好適に設定され得る。更に、制止面Mkには、滑り角β(法線面Mhと延長面Mzとがなす角)が設けられる。滑り角βによって、点Pから回転軸線Jiに近づくにつれて、渦巻きばねSUの弾性エネルギは減少し、ばねとして安定状態に近づく。これにより、接触部Cmの移動(再係止作動)が円滑に行われ得る。
【0061】
<渦巻きばねSUの拘束部Pk>
図5の概略図を参照して、渦巻きばねSUの拘束部Pkの詳細について説明する。拘束部Pkは、渦巻きばねSUに新たな部材が追加されるのではなく、渦巻きばねSUの外端Caの一部分を利用して成形される。リボン状の渦巻きばねSUの長手方向において、外端(他方の端部)Caは、内端(掛止部Pzが形成された一方の端部)Czとは反対側に位置する。渦巻きばねSUでは、拘束部Pkが制止面Mkに当接されることによって、外端Caの部分(特に、接触部Cm)が係止される。なお、渦巻きばねSUは、通常、巻かれた状態にあるが、図では、外端Caの部分を延ばした状態が図示されている。
【0062】
渦巻きばねSUの外端Caから、所定長さに亘る部分(外端Caの近接部)が、渦巻きばねSUの長手方向に対して垂直に、複数回に亘って折り曲げられて、拘束部Pkが形成される。具体的には、リボン状の渦巻きばねSUが、内端Czから近い順に、第1屈曲部Cl、第2屈曲部Cm、第3屈曲部Cnが、折り目が渦巻きばねSUの長手方向に直角(即ち、入力シャフトSIの回転軸線Jiに平行)になるよう、湾曲される。第1屈曲部Clは、外周面Msに対して、谷折りされる(内周面Muに対しては山折りにされ、折り曲げられた先が円筒形の外側を向く)。一方、第2屈曲部Cm、及び、第3屈曲部Cnは、渦巻きばねSUの渦巻き状態で、外周面Msに対して、山折りされる(内周面Muに対しては谷折りにされ、折り曲げられた先が円筒形の内側を向く)。第1、第2、第3屈曲部Cl、Cm、Cnでの曲げ成形によって、拘束部Pkが成形される。戻し機構MDの断面において、3つの角部(屈曲部)Cl、Cm、Cnにて、拘束三角形Tkが形成される。なお、立体形状においては、拘束部Pkは、拘束三角形Tkを回転軸線Jiに垂直な断面形状とする、三角柱形状である。
【0063】
拘束部Pkの形状(即ち、拘束三角形Tkを含む三角柱形状)が確実に維持されるよう、折返し部Poが設けられる。折返し部Poは、第3屈曲部Cnよりも外端Caに近い部分(外端Caを含む)である。折返し部Poは、渦巻きばねSUの内周面Muと外周面Msとによって挟まれる。詳細には、折返し部Poは、渦巻きばねSUが巻かれた状態で、最も外側に位置する渦巻きばねSUの部分の内周面Mu(回転軸線Jiから最も離れた部分の内周面Muであり、図では、真直ぐに延ばされている)と、2番目に外側に位置する渦巻きばねSUの部分の外周面Ms(上記内周面Muに対応する外周面Msであり、図では、半径Rsにて図示されている)とによって挟まれた部分である(
図2を参照)。渦巻きばねSUが巻き締められると、内周面Muと外周面Msとは密着され、内周面Mu、及び、外周面Msによって挟まれた折返し部Poの部分は、堅固に固定される。折返し部Poによって、拘束三角形Tkの形状が確実に維持されるため、拘束部Pkが、弾性力Fsを受け持つ構造部として、適切に機能する。
【0064】
曲げ成形による拘束部Pkの断面形状として、三角形の形状に代えて、多角形のものが採用され得る。例えば、破線で示すような四角形のものが採用され得る。この場合、角部Cn、Cm、Clに加えて、渦巻きばねSUの長手方向に垂直、且つ、外周面Msに対して山折りにされた屈曲部Coが成形される。この場合であっても、渦巻きばねSUの内周面Muと外周面Msとに挟まれた、折返し部Poが形成される。折返し部Poによって、拘束部Pkの多角形形状が頑丈に形成される。
【0065】
図2に示された掛止部Pzに代えて、渦巻きばねSUの内端Szの部分が、屈曲部Cyにて、鋭角に折り曲げられたものが採用され得る。掛止部Pzを係止するよう、入力シャフトSIには、V字型断面を有する切欠き部が形成される。上記同様に、渦巻きばねSUが巻き上げられていない場合には、掛止部Pzは、単に、V字型切欠き部に嵌っている。そして、入力シャフトSIが、正転方向Raに回転されると、掛止部Pzは、切欠き部に係止され、渦巻きばねSUは巻き取られ、戻しトルクTqが増加される。
【0066】
<渦巻きばねSUの外端Caの位置>
図6の断面図を参照して、渦巻きばねSUの外端Caの位置について説明する。拘束部Pkが、制止面Mkの中央部にて係止され、軸線Ji回りに、逆転方向Rbの戻しトルクTqが作用している状態が図示されている。点Pは、第2屈曲部Cmと制止面Mkとが接触可能であり、且つ、軸線Jiから最も離れた、制止面Mk上の部位である。点Qは、第2屈曲部Cmと制止面Mkとが接触可能であり、且つ、軸線Jiに最も近い、制止面Mk上の部位である。拘束部Pk(特に、第2屈曲部Cm)は、点Pから点Qの間で、制止面Mkに当接されている。
【0067】
法線面Mhは、軸線Ji、及び、点Pを含む平面である。制止面Mkは、「点Pを含む軸線Jiに平行な直線」を中心にして、法線面Mhを正転方向Raに、滑り角βだけ、傾けた平面である。延長面Mzは、制止面Mkを、軸線Jiに近付ける方向に延ばした平面である。従って、延長面Mz(即ち、制止面Mk)と制止面Mkとの距離は、軸線Jiに近付くにつれて大きくなる。また、延長面Mzは、軸線Jiを含まない。つまり、軸線Jiは、延長面Mz上には存在せず、延長面Mzと軸線Jiとは、所定距離だけ離れている。
【0068】
渦巻きばねSUが巻き締めら、戻しトルクTqを発生している状態で、渦巻きばねSUの外端Caが、延長面Mzに対して、軸線Jiとは反対側に位置するよう、折返し部Poの寸法(長手方向の長さ)が設定される。例えば、上記の巻き締め状態では、渦巻きばねSUが、ピストンPNの初期位置(実際の押圧力Faが「0」となるピストン位置)に対応する戻しトルクTq(即ち、初期トルクq1)を発生している(
図3を参照)。渦巻きばねSU(特に、折返し部Po)は、その半径が小さくなるよう曲げられて、ハウジングHGに組み付けられる。従って、拘束部Pkには、弾性力Fsに加え、折返し部Poの曲げに起因する力(曲げ力)Fmが作用する。外端Caが、延長面Mzに対して、軸線Jiとは反対側にあるため、折返し部Poの曲げ力Fmは、拘束部Pkに対して、半径外側方向Dsに作用する。渦巻きばねSUの巻き締めによって、拘束部Pkは、半径内側方向Duに移動されようとするが、上記曲げ力Fmが、半径外側方向Dsに作用するため、トルクリミッタとして好適に作動し、再係止作動が適切に行われ得る。
【0069】
外端Caが、垂直面Myに対して、拘束部Pkとは反対側に位置するよう、折返し部Poの寸法(長手方向の長さ)が設定される。ここで、垂直面Myは、延長面Mzに垂直であり、且つ、軸線Jiを含む平面である。外端Caが、垂直面Myに対して、拘束部Pkとは反対側にあるため、折返し部Poが可能な限り長く設定され得る。拘束部Pkは、折返し部Poが外周面Msと内周面Muとに挟まれたときに生じる摩擦力によって保持される。折返し部Poが把持される距離が十分に確保されるため、拘束部Pkが堅固に形成され得る。
【0070】
<作用・効果>
図7の断面図を参照して、本発明に係る電動制動装置DBの作用・効果について説明する。電動制動装置DBには、車両の車輪WHと一体となって回転する回転部材KTに摩擦部材MSを押し付ける電気モータMT、及び、電気モータMTに通電が行われない場合に、電気モータMTに対して、摩擦部材MSが回転部材KTから離れる方向の戻しトルクTqを発生する戻し機構MDが備えられる。戻し機構MDには、渦巻きばねSUと、渦巻きばねSUを収納するハウジングHGが含まれる。渦巻きばねSUは、その一方端Czの部分で、電気モータMTによって駆動される回転シャフトSIに係止される。また、渦巻きばねSUは、一方端Czとは反対側に位置する他方端Caの部分が折り曲げられて形成された拘束部Pkを有する。そして、拘束部Pkは、ハウジングHGの制止面Mkに接触する。
【0071】
図7(a)は、外端Caが、延長面Mzに対して、軸線Jiと同じ側に位置する場合を示す。渦巻きばねSUの折返し部Poは、曲げられて、ハウジングHGに組み付けられる。このため、折返し部Poは、制止面Mkに対する曲げ力Fmを発生する。折返し部Poの曲げ力Fmは、二点鎖線で示す外端Caと第2屈曲部Cmとを結ぶ直線(平面)に対して垂直に作用する。従って、曲げ力Fmの分力Fnは、制止面Mk上において、半径内側方向Duに作用する。この分力Fnのため、渦巻きばねSUの拘束部Pkは、制止面Mkから外れ易くなる。つまり、戻し機構MDは、トルクリミッタとして適正に作動しない場合が生じ得る。
【0072】
これに対し、
図7(b)は、外端Caが、延長面Mzに対して、軸線Jiとは反対側に位置する場合を示す。例えば、回転部材KTに摩擦部材MSを押し付ける力(押圧力)Faが「0(ゼロ)」である場合(即ち、ピストンPNの初期位置であり、「Tq=q1」の状態)に相当する。上記と同様に、折返し部Poの曲げ力Fmは、二点鎖線で示す外端Caと第2屈曲部Cmとを結ぶ直線(平面)に対して垂直に作用する。本発明に係る電動制動装置DBでは、制止面Mkを軸線Jiに近付くように延ばした延長面Mzに対して、他方端Caが軸線Jiとは反対側に位置するよう構成されている。この幾何的関係のため、曲げ力Fmの分力Fnは、制止面Mkで半径外側方向Dsに作用する。つまり、分力Fnによって、拘束部Pkと制止面Mkとの接触は、解除され難くなる。結果、戻し機構MDは、トルクリミッタとして適正に作動し得る。
【0073】
制止面Mkには、拘束部Pkの解除が安定化されるよう、滑り角βが設けられている。滑り角βは、拘束部Pkが解除され易くなるよう作用するため、
図7(a)のように、外端Caが軸線Jiと同じ側にあると、拘束部Pkの係止が十分に成されない場合が生じ得る。しかし、
図7(b)のように、外端Caが軸線Jiとは逆側にあると、折返し部Poの曲げ力Fmによって、拘束部Pkが解除され難くなり、拘束部Pkの係止が確実に達成され得る。更に、外端Caが、垂直面My(延長面Mzに直交し、回転軸線Jiを含む平面)に対して、拘束部Pkとは反対側に位置するように、渦巻きばねSUの寸法が設定され得る。これにより、折返し部Poの長さが十分に長くされるため、拘束部Pkの形成が堅固にされ得る。
【0074】
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態でも、上記同様の効果を奏する。
上記実施形態では、戻し機構MDが、入力シャフトSIに設けられた。しかし、戻し機構MDは、電気モータMTから、ピストンPNに至る回転部材のうちの何れかに設置される。換言すれば、戻し機構MDは、電気モータMTによって回転駆動される回転シャフト(例えば、出力シャフトSO)に設けられる。戻し機構MDが、出力シャフトSOに設けられる場合は、「SI」が「SO」に、「Ji」が「Jo」に、夫々、読み替えられて説明される。
【0075】
上記実施形態では、ハウジングHGには、拘束部Pkを係止する部分として、第1制止部Aa、及び、第2制止部Abの2つの部位が設けられた。しかし、制止部は、1つ以上であればよい。例えば、第2制止部Abが省略された場合、再係止作動において、拘束部Pkが、収納部Apの内周面Mpを360度に亘って滑った後に、第1制止部Aaに再度、係止される。また、ハウジングHGに、3つの制止部が設けられる場合には、拘束部Pkが、収納部Ap内を120度だけ移動した後に、再係止される。即ち、制止部の数が多いほど、より狭い範囲で、再係止作動によってトルク制限が可能となる。上限トルクq3を同一とした場合、制止部の数が多いほど、再係止点(例えば、点E)は、上限トルクの点(例えば、点C)に近づいていく。このため、再係止トルクq2がより大きい値とされ、再係止作動された場合の、上限トルクq3から再係止トルクq2への変化が小さくされる。なお、再係止トルクq2に対応する角度(例えば、角度m2)と、上限トルクq3に対応する角度(例えば、角度m3)との差は、360度を制止部の数によって除算した値に一致する。例えば、2つの制止部にて、ハウジングHGが構成されている場合には、上記の角度差は180度になる。
【0076】
上記実施形態では、制止面Mk、樹脂材料にて形成されることが例示された。しかし、閉塞部材を含むハウジングHG全体が、樹脂材料にて形成され得る。樹脂材料は、適度な摩擦係数を有するため、拘束部Pkと制止面Mkとの接触部(即ち、第2屈曲部Cm)において、スティックスリップが発生し難い。このため、過度の戻しトルクTqの適切な解除が達成され得る。また、アクチュエータBRは、車輪に設けられるため、路面凹凸による振動の影響を受ける。該振動は、回転軸線Ji、Joの方向にも入力されるため、ハウジングHGの底部、及び、閉塞部は、渦巻きばねSUの側面と接触する。ハウジングHGに樹脂材料が採用されることによって、渦巻きばねSU側面との接触に起因するハウジングHGの摩耗が抑制され得る。
【符号の説明】
【0077】
DB…電動制動装置、BP…制動操作部材、MS…摩擦部材、KT…回転部材、MT…電気モータ、PN…押圧ピストン、MD…戻し機構、SU…渦巻きばね、Ca…渦巻きばねの外端、Cz…渦巻きばねの内端、HG…ハウジング、Tq…戻しトルク、Ra…正転方向、Rb…逆転方向、SI…入力シャフト、Ji…入力シャフトの回転軸線、SO…出力シャフト、Jo…出力シャフトの回転軸線、Pz…掛止部、Pk…拘束部、Mk…制止面、Mz…延長面、My…垂直面、Ms…渦巻きばねの外周面、Mu…渦巻きばねの内周面、Cl…第1屈曲部、Cm…第2屈曲部(接触部)、Cl…第3屈曲部、Po…折返し部。