(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】光ファイバセンサ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20220329BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20220329BHJP
G01D 21/02 20060101ALI20220329BHJP
G01K 11/3206 20210101ALI20220329BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220329BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
G01D5/353 C
G01D21/02
G01K11/3206
G02B6/02 A
G02B6/02 416
G02B6/44 301A
(21)【出願番号】P 2017240250
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】植田 忠伸
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-085589(JP,A)
【文献】特開2000-329626(JP,A)
【文献】特開2000-221085(JP,A)
【文献】特開2003-014491(JP,A)
【文献】特開2002-098604(JP,A)
【文献】特開2008-224670(JP,A)
【文献】特開2000-111319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0227349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/10-11/30
G01D 5/26- 5/38
G01D 18/00-21/02
G01K 1/00-99/00
G02B 6/00
G02B 6/02- 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに形成された第一ファイバブラッググレーティングと、
光ファイバに形成された第二ファイバブラッググレーティングと、を備え、
前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性とが異なり、かつ、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数とが異なり、
前記第一ファイバブラッググレーティングと前記第二ファイバブラッググレーティングとは、一本の光ファイバに形成されている光ファイバセンサ。
【請求項2】
光ファイバに形成された第一ファイバブラッググレーティングと、
光ファイバに形成された第二ファイバブラッググレーティングと、を備え、
前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性とが異なり、かつ、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数とが異なり、
前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられ、
前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記異特性部材の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記異特性部材の縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された他の異特性部材が一体的に取り付けられている光ファイバセンサ。
【請求項3】
光ファイバに形成された第一ファイバブラッググレーティングと、
光ファイバに形成された第二ファイバブラッググレーティングと、を備え、
前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性とが異なり、かつ、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数とが異なり、
前記光ファイバに張力が付与されている状態で前記光ファイバを保持する保持部材を備える光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられている
請求項1に記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記異特性部材は、金属材料で形成されている
請求項4に記載の光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記異特性部材は、非磁性材料で形成されている請求項4に記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
前記異特性部材、及び前記他の異特性部材は、非磁性材料で形成されている
請求項2に記載の光ファイバセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の光ファイバセンサでは、一対のファイバブラッググレーティングを用いて測定対象部材の歪み、及び温度を求めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光ファイバセンサでは、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分と、他方のファイバブラッググレーティングが形成された部分とが同様の構成とされている。さらに、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分については、変位が拘束されないように測定対象部材に取り付けられている。また、他方のファイバブラッググレーティングが形成された部分については、変位が拘束されるように測定対象部材に取り付けられている。そして、変位が拘束されていない一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分による測定結果によって、変位が拘束されるように測定対象部材に取り付けられている他方のファイバブラッググレーティングが形成された部分による測定結果の温度を補償する。
【0005】
この構成においては、外部温度変化に伴う熱膨張だけを一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分に生じさせるため、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分を測定対象部材から隙間を空けて離間させる必要がある。このため、変位が拘束されるように測定対象部材に取り付けられている他方のファイバブラッググレーティングが形成された部分による測定結果の温度を補償する精度が低下してしまう。
【0006】
本願発明の課題は、一対のファイバブラッググレーティングを用いる構成において、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分を測定対象部材から隙間を空けて離間させる場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る光ファイバセンサは、光ファイバに形成された第一ファイバブラッググレーティングと、光ファイバに形成された第二ファイバブラッググレーティングと、を備え、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性とが異なり、かつ、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数と、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの縦弾性係数とが異なることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、予め、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数と、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数とが夫々取得される。
【0009】
そして、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバ、及び第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバを測定対象部材から隙間を空けて離間させることなく、光ファイバセンサが測定対象部材に取り付けられる。さらに、第一ファイバブラッググレーティングから反射される中心反射波長の変化、及び第二ファイバブラッググレーティングから反射される中心反射波長の変化を測定する。
【0010】
この測定結果と、予め取得した熱膨張特性及び縦弾性係数とによって、測定対象部材の歪みと温度とを導出する。このように、隙間を空けて離間させることなく光ファイバセンサが測定対象部材に取り付けられているため、一対のファイバブラッググレーティングを用いる構成において、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分を測定対象部材から隙間を空けて離間させる場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2態様に係る光ファイバセンサは、第1態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記第一ファイバブラッググレーティングと前記第二ファイバブラッググレーティングとは、一本の光ファイバに形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、第一ファイバブラッググレーティングと第二ファイバブラッググレーティングとは、一本の光ファイバに形成されており、直列に配置されている。このため、第一ファイバブラッググレーティングと第二ファイバブラッググレーティングとが別個の光ファイバに形成されている場合と比して、部品点数を削減することができる。
【0013】
本発明の第3態様に係る光ファイバセンサは、第1又は第2態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられている。これにより、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数と、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数とが異なっている。
【0015】
このように、光ファイバの外周面に異特性部材を一体的に取り付けることで、光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせる。このため、光ファイバの材質を部分的に変えることで光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせる場合と比して、簡易な構成で光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせることができる。
【0016】
本発明の第4態様に係る光ファイバセンサは、第1又は第2態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられ、前記第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、前記異特性部材の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記異特性部材の縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された他の異特性部材が一体的に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、光ファイバのクラッドの熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、前記光ファイバのクラッドの縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された異特性部材が一体的に取り付けられている。さらに、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの外周面には、異特性部材の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数で、かつ、異特性部材の縦弾性係数とは異なる縦弾性係数の材料で形成された他の異特性部材が一体的に取り付けられている。これにより、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数と、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数とが異なっている。
【0018】
このように、光ファイバの外周面に異特性部材、及び他の異特性部材を一体的に取り付けることで、光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせる。このため、光ファイバの材質を部分的に変えることで光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせる場合と比して、簡易な構成で光ファイバの熱膨張特性及び縦弾性係数を異ならせることができる。
【0019】
本発明の第5態様に係る光ファイバセンサは、第3態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記異特性部材は、金属材料で形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、異特性部材は、金属材料で形成されている。このため、異特性部材が樹脂材料で形成される場合と比して、異特性部材が伸縮による光ファイバの伸縮量が増える。
【0021】
これにより、第二ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性を、第一ファイバブラッググレーティングが形成された部分の光ファイバの熱膨張特性に対して大きく異ならせることができる。そうすると、予め取得する熱膨張特性の差違が明確になり、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0022】
本発明の第6態様に係る光ファイバセンサは、第3態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記異特性部材は、非磁性材料で形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、異特性部材は、非磁性部材で形成されている。このため、例えば、磁界による異特性部材の歪みが抑制されることで、異特性部材が磁性部材で形成されている場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0024】
本発明の第7態様に係る光ファイバセンサは、第4態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記異特性部材、及び前記他の異特性部材は、非磁性材料で形成されていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、異特性部材及び他の異特性部材は、非磁性部材で形成されている。このため、例えば、磁界による異特性部材及び他の異特性部材の歪みが抑制されることで、異特性部材及び他の異特性部材が磁性部材で形成されている場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0026】
本発明の第8態様に係る光ファイバセンサは、第1~第7態様の何れか1態様に記載の光ファイバセンサにおいて、前記光ファイバに張力が付与されている状態で前記光ファイバを保持する保持部材を備えることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、保持部材は、光ファイバに張力が付与されている状態で光ファイバを保持している。これにより、測定対象部材の負の歪みについても導出することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、一対のファイバブラッググレーティングを用いる構成において、一方のファイバブラッググレーティングが形成された部分を測定対象部材から隙間を空けて離間させる場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサを示した斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサを示し、光ファイバセンサが測定対象部材に取り付けられた状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサを用いて、測定対象部材の中心反射波長を測定する構成を示した概略構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサを用いて、予め測定された測定値をグラフで示した図面である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサを用いて、予め測定された測定値をグラフで示した図面である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る光ファイバセンサを示した斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る光ファイバセンサを示した斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る光ファイバセンサを示した斜視図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサの変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る光ファイバセンサの一例について
図1~
図5を用いて説明する。
(全体構成)
第1実施形態に係る光ファイバセンサ10は、
図1に示されるように、光ファイバ12と、光ファイバ12に形成された第一ファイバブラッググレーティング14と、光ファイバ12に形成された第二ファイバブラッググレーティング16とを有している。さらに、光ファイバセンサ10は、第二ファイバブラッググレーティング16が形成された部分の光ファイバ12の外周面に一体的に取り付けられた異特性部材20を備えている。
【0031】
光ファイバセンサ10は、第一ファイバブラッググレーティング14、又は第二ファイバブラッググレーティング16によって反射される中心反射波長の変化を測定して、測定対象部材の歪み、温度等を導出するためのセンサである。
【0032】
光ファイバ12は、石英ガラスによって形成されており、外径が100〔μm〕とされている。そして、光ファイバ12は、光伝播用のコア12Aと、このコア12Aを覆い、コア12Aの屈折率よりも小さな屈折率を有するクラッド12Bと、図示せぬバッファコーティングとを有している。本実施形態では、クラッド12Bの熱膨張係数は、0.55×10-6〔/K〕(〔/℃〕)とされている。
【0033】
また、第一ファイバブラッググレーティング14(以下「第一FBG14」)は、光ファイバ12のコア12Aに屈折率変調(回折格子)が生じるようにコア12Aに形成されている。本実施形態では、第一FBG14は、光ファイバ12の長手方向において5〔mm〕に亘って形成されている。
【0034】
さらに、第二ファイバブラッググレーティング16(以下「第二FBG16」)は、光ファイバ12のコア12Aに屈折率変調(回折格子)が生じるようにコア12Aに形成されており、第一FBG14と直列に配置されている。本実施形態では、第二FBG16は、光ファイバ12の長手方向において5〔mm〕に亘って形成されている。
【0035】
異特性部材20は、金属材料であるニッケルで形成されており、厚さ4〔μm〕とされている(図に示す厚さについては誇張して記載している)。本実施形態では、メッキ工法を用いて、異特性部材20が、光ファイバ12の長手方向において第二FBG16が形成された部分を含む光ファイバ12の外周面に一体的に取り付けられている。これにより、異特性部材20は、光ファイバ12が光ファイバ12の長手方向に伸縮すると、光ファイバ12と一体となって光ファイバ12の長手方向に伸縮するようになっている。つまり、「一体的に取り付けられる」とは、光ファイバ12が長手方向に伸縮すると、光ファイバ12と一体となって同じ量だけ、光ファイバ12の長手方向に伸縮するように取り付けられることである。
【0036】
そして、本実施形態では、異特性部材20の熱膨張係数は、クラッド12Bの熱膨張係数と異なり、13.4×10-6〔/K〕(〔/℃〕)とされている。さらに、異特性部材20の縦弾性係数(ヤング率)は、クラッド12Bの縦弾性係数と異なっている。これにより、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性とが異なり、かつ、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数が異なっている。ここで、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数とは、この部分の光ファイバ12の軸方向の歪みと応力の比例定数である。
【0037】
(歪み及び温度の導出)
次に、光ファイバセンサ10を用いて、測定対象部材の歪み、及び温度を導出する方法について説明する。
予め、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12との熱膨張特性及び縦弾性係数について取得する。具体的には、縦弾性係数として、光ファイバ12の歪みと中心反射波長との関係を取得する。また、熱膨張特性として、光ファイバ12の温度と中心反射波長との関係を取得する。なお、熱膨張特性及び縦弾性係数については、例えば、解析又は実測等によって取得することができる。
【0038】
-歪みと中心反射波長との関係-
温度を一定にした状態(例えば、20〔℃〕一定にした状態)で、第一FBG14が形成された部分に荷重を負荷したときのこの部分の光ファイバ12の歪みと、中心反射波長との関係を取得する。同様に、第二FBG16が形成された部分に荷重を負荷したときのこの部分の光ファイバ12の歪みと、中心反射波長との関係を取得する。これにより、
図4に示されるように、横軸が歪み〔με〕で、縦軸が中心反射波長〔nm〕のグラフが、作成される。本実施形態では、
図4に示すグラフ中の線L1が、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の特性であって、線L2が、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の特性である。
【0039】
そして、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12における単位歪み当たりの中心反射波長の変化を、「∂λFBG1/∂ε」とする。さらに、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12における単位歪み当たりの中心反射波長の変化を、「∂λFBG2/∂ε」とする。
【0040】
-温度と中心反射波長との関係-
温度変化の影響による歪みだけが生じるように、初期歪みを0〔με〕とした状態で、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の温度と、中心反射波長との関係を取得する。同様に、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の温度と、中心反射波長との関係を取得する。これにより、
図5に示されるように、横軸が温度〔℃〕で、縦軸が中心反射波長〔nm〕のグラフが、作成される。本実施形態では、
図5に示すグラフ中の線L11が、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の特性であって、線L12が、第二FBG16が形成された部分の光ファイバの特性である。
【0041】
そして、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12における単位温度当たりの中心反射波長の変化を、「∂λFBG1/∂T」とする。さらに、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12における単位温度当たりの中心反射波長の変化を、「∂λFBG2/∂T」とする。
【0042】
-光ファイバセンサ10の取付け-
図2に示されるように、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jの平面J1に接触させて、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付ける。
【0043】
具体的には、光ファイバ12の長手方向において、一対の取付部材30で第一FBG14及び第二FBG16を挟むように、一対の取付部材30を配置する。一対の取付部材30で挟まれた部分の光ファイバ12に予め決められた張力が付与されるように、かつ、一対の取付部材30で挟まれた部分の光ファイバ12が、測定対象部材Jと一体となって伸縮するように、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付ける。そして、第一FBG14が形成された光ファイバ12の部分の少なくとも一部、及び異特性部材20の少なくとも一部が、平面J1と接触するようにする。本実施形態では、第一FBG14が形成された光ファイバ12の部分、及び異特性部材20が、平面J1と接触している。
【0044】
-測定ユニット-
光ファイバセンサ10における第一FBG14の中心反射波長、及び第二FBG16の中心反射波長を測定するための測定ユニット50は、
図3に示されるように、広帯域光源52と、波長計54と、ファイバカプラ56とを備えている。
【0045】
広帯域光源52は、所定間隔毎に波長の異なる赤外線を、ファイバカプラ56を通して、光ファイバセンサ10の一端へ出射するようになっている。本実施形態では、広帯域光源52は、一例として、1000〔nm〕から1800〔nm〕の波長の赤外線を光ファイバセンサ10の一端へ出射するようになっている。
【0046】
波長計54は、第一FBG14又は第二FBG16によって反射され、光ファイバセンサ10の一端から出射した光を、ファイバカプラ56を通して受光するようになっている。
【0047】
ファイバカプラ56は、広帯域光源52から出射した光を光ファイバセンサ10の一端へ導き、光ファイバセンサ10の一端から出射した光を波長計54へ導くようになっている。
【0048】
この構成において、波長計54によって、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付けた初期状態に対する、第一FBG14によって反射された中心反射波長のずれ量〔nm〕と、第二FBG16によって反射された中心反射波長のずれ量〔nm〕とが測定される。
【0049】
-歪み、温度の導出方法-
光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付けた初期状態に対する、第一FBG14によって反射された中心反射波長のずれ量〔nm〕を「ΔλFBG1」とし、第二FBG16によって反射された中心反射波長のずれ量〔nm〕を「ΔλFBG2」とする。さらに、初期状態も対する、測定対象部材Jの歪みの変化量を、「Δε」とし、測定対象部材Jの温度の変化量を、「ΔT」とする。さらに、予め取得した第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性、及び予め取得した第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性から下記式(1)が成り立つ。
【0050】
【0051】
そして、この式(1)を、下記に示すように、式(2)、式(3)と変形し、式(4)を導き出す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
そして、予め取得している∂λFBG1/∂ε、∂λFBG2/∂ε、∂λFBG1/∂T、及び∂λFBG2/∂Tの値、並びに、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付けることで測定されたΔλFBG1、及びΔλFBG2を、式(4)に代入する。これにより、例えば、波長計54が、Δε、ΔTを導出(算出)し、光ファイバセンサ10を測定対象部材Jに取り付けた初期状態での測定対象部材Jの予め取得された歪み、及び予め取得された温度を考慮して、測定対象部材Jの歪み、及び温度を導出する。
【0056】
(まとめ)
以上説明したように、光ファイバセンサ10において、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12、及び第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12に取り付けられている異特性部材20を、測定対象部材Jを構成する平面J1に接触させることができる。このため、測定対象部材Jの温度の変化、及び歪みの変化に起因して生じる中心反射波長のずれ量を測定する測定精度が向上する。そして、前述した式(4)を用いることで、測定対象部材Jの歪、及び温度が導出される。このため、一対のファイバブラッググレーティング(FBG)を用いる構成において、一方のFBGが形成された部分を測定対象部材から隙間を空けて離間させる場合と比して、測定対象部材の歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0057】
また、第一FBG14と第二FBG16とは、一本の光ファイバ12に形成されており、直列に配置されている。このため、第一FBG14と第二FBG16とが別個の光ファイバに形成される場合と比して、部品点数を削減することができる。
【0058】
また、光ファイバ12の外周面に異特性部材20を一体的に取り付けることで、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性とが異なっている。このため、例えば、光ファイバの材質を部分的に変えることで光ファイバの熱膨張特性を異ならせる場合と比して、簡易な構成で光ファイバ12の熱膨張特性を異ならせることができる。
また、光ファイバ12の外周面に異特性部材20を一体的に取り付けることで、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の縦弾性係数が異なっている。このため、例えば、光ファイバの材質を部分的に変えることで縦弾性係数を異ならせる場合と比して、簡易な構成で、縦弾性係数を異ならせることができる。
【0059】
また、異特性部材20は、金属材料であるニッケルで形成されている。このため、異特性部材20が樹脂材料で形成される場合と比して、剛性が高くなる。これにより、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数を、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数に対して大きく異ならせることができる。このため、前述した∂λFBG1/∂εと、∂λFBG2/∂εとの相違、及び∂λFBG1/∂Tと∂λFBG2/∂Tとの相違が明確になり、測定対象部材Jの歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0060】
また、異特性部材20は、金属材料であるニッケルで形成されている。異特性部材20を樹脂材料で形成せて、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数を、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数に対して異ならせる場合と比して、異特性部材20を薄くすることができる。これにより、第二FBG16と測定対象部材Jが近づくことで、さらに、測定対象部材Jの歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0061】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る光ファイバセンサの一例について
図6を用いて説明する。なお、第2実施形態に係る光ファイバセンサについては、第1実施形態に係る光ファイバセンサ10と異なる部分を主に説明する。
【0062】
図6に示す光ファイバセンサ110の異特性部材120は、非磁性部材であるポリイミド樹脂で形成されている。そして、異特性部材120は、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の外周面に、図示せぬ接着剤を用いて一体的に取り付けられている。
【0063】
このように、異特性部材120が非磁性部材であるポリイミド樹脂で形成されていることで、測定対象部材Jの周りに磁界が生じる場合に、磁界による異特性部材120の歪みが抑制される。これにより、異特性部材が磁性部材で形成されている場合と比して、測定対象部材Jの歪みと温度とを導出する精度を向上させることができる。
【0064】
なお、第2実施形態の光ファイバセンサ110の他の作用については、異特性部材が金属材料で形成されることで生じる第1実施形態の光ファイバセンサ10の作用以外の作用と同様である。
【0065】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る光ファイバセンサの一例について
図7を用いて説明する。なお、第3実施形態に係る光ファイバセンサについては、第1実施形態に係る光ファイバセンサ10と異なる部分を主に説明する。
【0066】
第3実施形態に係る光ファイバセンサ210は、
図7に示されるように、光ファイバ12と、第一FBG14と、第二FBG16と、異特性部材20と、光ファイバ12に張力が付与されている状態で光ファイバ12を保持する保持部材220とを備えている。そして、本実施形態では、一例として、金属材料で形成された測定対象部材Jの歪み、及び温度を測定するために、光ファイバセンサ210が用いられる。
【0067】
保持部材220は、光ファイバ12の長手方向(以下「ファイバ長手方向」、図中矢印D1)から第一FBG14及び第二FBG16を挟むように配置された一対の固定部材230を備えている。さらに、保持部材220は、ファイバ長手方向に対して交差する方向(以下「ファイバ交差方向」、図中矢印D2)から第一FBG14及び第二FBG16を挟み、かつ、一対の固定部材230の間に配置された一対の支持部材240を備えている。
【0068】
一対の固定部材230は、測定対象部材Jと同様の金属材料で形成されており、ファイバ交差方向に延びており、長手方向に直交する断面は、ファイバ長手方向に延びた矩形状とされている。そして、固定部材230は、光ファイバ12を挟み込む一方部材230A及び他方部材230Bを備えている。
【0069】
一対の支持部材240は、測定対象部材Jと同様の金属材料で形成されており、前述したように、ファイバ交差方向から第一FBG14及び第二FBG16を挟むように配置されている。また、支持部材240は、ファイバ長手方向に延びており、断面矩形状とされている。そして、一方の支持部材240の一端は、一方の固定部材230の長手方向の一端に固定され、一方の支持部材240の他端は、他方の固定部材230の長手方向の一端に固定されている。さらに、他方の支持部材240の一端は、一方の固定部材230の長手方向の他端に固定され、他方の支持部材240の他端は、他方の固定部材230の長手方向の他端に固定されている。
【0070】
この構成において、保持部材220は、光ファイバ12に張力が付与されている状態で光ファイバ12を保持している。そして、光ファイバセンサ210は、一対の固定部材230を測定対象部材Jと接触させ、測定対象部材Jに取り付けられる。これにより、光ファイバセンサ210は、測定対象部材Jの負の歪みについても検出することができる。
【0071】
なお、第3実施形態の光ファイバセンサ210の他の作用については、第1実施形態の光ファイバセンサ10の作用と同様である。
【0072】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る光ファイバセンサの一例について
図8を用いて説明する。なお、第4実施形態に係る光ファイバセンサについては、第2実施形態に係る光ファイバセンサ110と異なる部分を主に説明する。
【0073】
第4実施形態に係る光ファイバセンサ310は、
図8に示されるように、光ファイバ12と、第一FBG14と、第二FBG16と、異特性部材120と、光ファイバ12に張力が付与されている状態で光ファイバ12を保持する保持部材320とを備えている。そして、本実施形態では、一例として、非磁性部材である樹脂材料で形成された測定対象部材Jの歪み、及び温度を測定するために、光ファイバセンサ310が用いられる。
【0074】
保持部材320は、ファイバ長手方向から第一FBG14及び第二FBG16を挟むように配置された一対の固定部材330を備えている。さらに、保持部材320は、第一FBG14及び第二FBG16が形成されている部分の光ファイバ12を支持される支持プレート340を備えている。
【0075】
一対の固定部材330及び支持プレート340は、測定対象部材Jと同様の樹脂材料で形成されている。そして、一対の固定部材330が、第一FBG14及び第二FBG16が形成されている部分の光ファイバ12を、光ファイバ12に張力が付与された状態で支持プレート340に固定するようになっている。
【0076】
この構成において、光ファイバセンサ310は、支持プレート34を測定対象部材Jに接触させ、測定対象部材Jに取り付けられる。これにより、光ファイバセンサ310は、測定対象部材Jの負の歪みについても検出することができる。
【0077】
なお、第4実施形態の光ファイバセンサ310の他の作用については、第2実施形態の光ファイバセンサ10の作用と同様である。
【0078】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の外周面に異特性部材20が一体的に取り付けられたが、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の外周面に他の異特性部材を一体的に取り付けてもよい。この場合には、他の異特性部材の熱膨張係数及び縦弾性係数を、異特性部材20の熱膨張係数及び縦弾性係数と異ならせる。これにより、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性及び縦弾性係数とを容易に異ならせることができる。この場合に、例えば、異特性部材、及び他の異特性部材を、非磁性材料で形成させることで、磁界による異特性部材及び他の異特性部材の歪みが抑制することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、光ファイバセンサ10、110、210、310を測定対象部材Jに取り付けた状態で、第一FBG14及び第二FBG16が形成されている部分の光ファイバ12が測定対象部材Jから離間する場合は、測定対象部材Jの熱を光ファイバセンサ10、110、210、310に伝達する熱伝達ペーストを、光ファイバセンサ10、110、210、310と測定対象部材Jとの間に配置してもよい。本実施形態の光ファイバセンサ10、110、210、310では、測定対象部材Jとの間に隙間を設ける必要はないからである。
【0080】
また、上記実施形態では、異特性部材を用いることで、第一FBG14が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性と、第二FBG16が形成された部分の光ファイバ12の熱膨張特性とを異ならせたが、光ファイバの断面を部分的に変えたり、光ファイバの部材を部分的に変えること等で熱膨張特性を異ならせてもよい。
【0081】
また、上記第1実施形態では、一本の光ファイバ12に、第一FBG14と第二FBG16とが形成されたが、第一FBG14と第二FBG16とが夫々別個の光ファイバに形成されてもよい(
図9参照)。しかし、この場合には、第一FBG14と第二FBG16とが一本の光ファイバ12に形成されることで奏する作用は奏しない。
【0082】
また、上記第3、4実施形態では、保持部材220、320は、測定対象部材Jが形成される部材と同様の部材で形成されたが、保持部材220、320が、測定対象部材Jとは異なる部材で形成されてよい。この場合には、第1実施形態で説明した、「歪みと中心反射波長との関係」及び「温度と中心反射波長との関係」を改めて取得する必要がある。
【符号の説明】
【0083】
10 光ファイバセンサ
12 光ファイバ
12B クラッド
14 第一ファイバブラッググレーティング(第一FBG)
16 第二ファイバブラッググレーティング(第二FBG)
20 異特性部材
110 光ファイバセンサ
120 異特性部材
210 光ファイバセンサ
220 保持部材
310 光ファイバセンサ
320 保持部材