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  • 特許-車両下部構造 図1
  • 特許-車両下部構造 図2
  • 特許-車両下部構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/035 20060101AFI20220329BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220329BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220329BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220329BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B60K15/035 C
B60K13/04 A
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
B60K15/063 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018034508
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147517
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 航介
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-029159(JP,A)
【文献】特開2016-203736(JP,A)
【文献】特開2016-199198(JP,A)
【文献】特開2014-208518(JP,A)
【文献】特開2003-237390(JP,A)
【文献】特開2004-027934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0247592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/035
B60K 13/04
B60K 1/04
B62D 25/20
B60K 15/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルと、
前記フロアパネルの前方に設置されるパワーユニットと、
前記フロアパネルの下側に設置される燃料タンクと、
前記フロアパネルのうち前記燃料タンクよりも前方の領域の上側に設置される二次電池と、
前記二次電池の下方に前記フロアパネルを隔てて設置されて前記燃料タンクおよびパワーユニットに配管で繋がれるキャニスタとを備え
前記フロアパネルは、車幅方向中央に形成され上方へ膨出し前後方向に延びているセンタートンネルを有し、
当該車両下部構造はさらに、前記センタートンネルを通る排気管を備え、
前記キャニスタは、前記フロアパネルの下側のうち前記燃料タンクよりも前記パワーユニット寄りに設置されることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記キャニスタは、前記フロアパネルの側縁よりも前記センタートンネル寄りに設置されることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記排気管は、前後方向の途中箇所に消音室を有していて、
前記キャニスタは、前記消音室の側方に設置されることを特徴とする請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
当該車両下部構造はさらに、前記キャニスタの下方にて前記フロアパネルを覆うアンダカバーを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項5】
車両のフロアパネルと、
前記フロアパネルの前方に設置されるパワーユニットと、
前記フロアパネルの下側に設置される燃料タンクと、
前記フロアパネルのうち前記燃料タンクよりも前方の領域の上側に設置される二次電池と、
前記二次電池の下方に前記フロアパネルを隔てて設置されて前記燃料タンクおよびパワーユニットに配管で繋がれるキャニスタとを備え、
前記キャニスタは、前記フロアパネルの下側のうち前記燃料タンクよりも前記パワーユニット寄りに設置されることを特徴とする車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に対して、衝突時の安全性能に関する要求が増々高くなっている。例えば、前面衝突の対策として、車両前部のパワーユニットルームにクラッシャブルゾーンと呼ばれる部位を設け、このクラッシャブルゾーンを積極的に変形させることで後方の客室の変形を抑える技術が開発されている。
【0003】
上記のクラッシャブルゾーンの採用によって、特に寸法の小さな車両では、パワーユニットルーム内における部品の配置スペースが減りつつある。そのため、従来はパワーユニットルームに配置されていた部品であっても、現在では他の場所へ移動して配置される場合が増えてきている。
【0004】
従来のパワーユニットルームに設けられていた部品の1つに、キャニスタがある。キャニスタは、燃料タンク等で発生する有害な燃料蒸発ガスを捕集する機器であって、主に円筒状や矩形状の容器に活性炭等の吸着材を内蔵した構造になっている。キャニスタは、燃料タンクおよびパワーユニットに配管で繋がれていて、燃料蒸発ガスをいったん吸着し、その燃料蒸発ガスをパワーユニットに引き込ませて燃料とともに燃焼させている。
【0005】
キャニスタにおける燃料蒸発ガスの脱離性能は、キャニスタの温度が高いときのほうが向上する。そのため、車両によって、キャニスタの温度を維持する工夫が施されている。例えば、特許文献1では、シートの後方に設けられた二次電池に対し、その近傍であってフロアパネルの下側にキャニスタを配置して、キャニスタを二次電池の熱で温める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5056957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようにキャニスタをフロアパネルの下側に設置する構成であれば、キャニスタをパワーユニットルームから問題なく移動させることが可能である。しかしながら、特許文献1では、キャニスタは車両の後方にて燃料タンクと共に設置されていて、車両前方のパワーユニットから離れた位置となる。キャニスタがパワーユニットから離れると、キャニスタとパワーユニットを繋ぐ配管が長くなって圧力損失が大きくなるため、キャニスタの性能に影響が出るおそれがあり、例えばキャニスタを大型化するなどの対応が必要になる場合がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、キャニスタをパワーユニットルーム以外の場所に設置しつつその性能維持が可能な車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の代表的な構成は、車両のフロアパネルと、フロアパネルの前方に設置されるパワーユニットと、フロアパネルの下側に設置される燃料タンクと、フロアパネルのうち燃料タンクよりも前方の領域の上側に設置される二次電池と、二次電池の下方にフロアパネルを隔てて設置されて燃料タンクおよびパワーユニットに配管で繋がれるキャニスタとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャニスタをパワーユニットルーム以外の場所に設置しつつその性能維持が可能な車両下部構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例にかかる車両下部構造の概要を示す図である。
図2図1の車両下部構造の概略的なA-A断面図である。
図3図1の車両下部構造からアンダカバーを省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両下部構造は、車両のフロアパネルと、フロアパネルの前方に設置されるパワーユニットと、フロアパネルの下側に設置される燃料タンクと、フロアパネルのうち燃料タンクよりも前方の領域の上側に設置される二次電池と、二次電池の下方にフロアパネルを隔てて設置されて燃料タンクおよびパワーユニットに配管で繋がれるキャニスタとを備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、二次電池の放射熱によってキャニスタを温めることができ、キャニスタの脱離性能を向上させることが可能になる。また、キャニスタを、従来のパワーユニットルームではなく、フロアパネルのうち燃料タンクより前方の領域、例えば客室の下方に配置することで、パワーユニットルーム内の空間に余裕を生じさせつつ、キャニスタをパワーユニットから遠ざけすぎないよう配慮している。この構成によって、キャニスタからパワーユニットへガスを引き込むときの圧力損失を抑え、キャニスタの性能維持を図ることができる。
【0014】
上記のフロアパネルは、車幅方向中央に形成され上方へ膨出し前後方向に延びているセンタートンネルを有し、当該車両下部構造はさらに、センタートンネルを通る排気管を備え、キャニスタは、フロアパネルの側縁よりもセンタートンネル寄りに設置されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、排気管の放射熱も利用してキャニスタを温めることができ、キャニスタの脱離性能をさらに向上させることが可能になる。
【0016】
上記の排気管は、前後方向の途中箇所に消音室を有していて、キャニスタは、消音室の側方に設置されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、排気管のうち特に消音室からの放射熱を利用して、キャニスタを効率よく温めることが可能になる。
【0018】
当該車両下部構造はさらに、キャニスタの下方にてフロアパネルを覆うアンダカバーを備えてもよい。
【0019】
上記のアンダカバーを備えることで、キャニスタを走行風から保護し、キャニスタの温度低下、ひいては脱離性能の低下を防ぐことが可能になる。また、走行中のキャニスタへの飛び石の衝突(チッピング)を防ぐことも可能になる。
【0020】
上記のキャニスタは、フロアパネルの下側のうち燃料タンクよりもパワーユニット寄りに設置されてもよい。
【0021】
上記構成によれば、キャニスタからパワーユニットへガスを引き込むときの圧力損失をより低減し、キャニスタの性能維持を図ることが可能になる。
【実施例
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施例にかかる車両下部構造100の概要を示す図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0024】
車両下部構造100は、車両の床を構成するフロアパネルとして、客室を形成する領域にメインフロアパネル102aを備え、その後方の客室の後側から荷室にかけての範囲を形成する領域にリアフロアパネル102bを備えている。パワーユニット104は、エンジンや電気モータなどの動力を発生させる装置であって、メインフロアパネル102aの前方に設置されている。パワーユニット104で使用する燃料は、リアフロアパネル102bの下側に設置された燃料タンク106に貯留されている。また、メインフロアパネル102aの下方は、空気の整流および小石等からの保護を行うアンダカバー108で覆われている。
【0025】
図2は、図1の車両下部構造100の概略的なA-A断面図である。図2に示すように、メインフロアパネル102aの上側には二次電池110が設置されている。二次電池110は、例えば電装品に電気を供給する蓄電池として実施される。
【0026】
キャニスタ112は、燃料タンク106等で発生する燃料蒸発ガスを、大気中に放出しないよう吸着し、パワーユニット104に引き込ませる機器である。キャニスタ112は、容器の内部に活性炭等の吸着材を充填させた構造になっていて、配管(図示省略)で燃料タンク106およびパワーユニット104と繋がれる。
【0027】
当該車両下部構造100では、キャニスタ112を、二次電池110の下方にメインフロアパネル102aを隔てて設置している。キャニスタ112の吸着材からの燃料蒸発ガスの脱離性能は、温度が影響する。本実施例の構成によれば、キャニスタ112が、二次電池110に対してメインフロアパネル102aを隔てて隣接して設けられているため、二次電池110からの放射熱によってキャニスタ112を温めることができ、キャニスタ112の脱離性能を向上させることが可能になる。
【0028】
本実施例では、キャニスタ112を、従来のパワーユニットルームではなく、客室の下方に配置することで、パワーユニットルーム内の空間に余裕を生じさせつつ、キャニスタ112をパワーユニット104から遠ざけすぎないよう配慮している。これによって、キャニスタ112からパワーユニット104にガスを引き込むときの圧力損失を抑え、キャニスタ112の性能維持を図ることが可能になっている。また、本実施例であれば、パワーユニットルーム等の車両のレイアウトの自由度を向上させることができ、例えばクラッシャブルゾーンの拡大を図ることも可能になる。
【0029】
上述したように、メインフロアパネル102aの下方にはアンダカバー108が設けられていて、キャニスタ112は下方をアンダカバー108によって覆われている。この構成であれば、アンダカバー108によってキャニスタ112を走行風から保護し、キャニスタ112の温度低下、ひいては脱離性能の低下を防ぐことができる。また、アンダカバー108を利用することによって、専用のカバー等を設けずとも、走行中のキャニスタ112への飛び石の衝突(チッピング)を防ぐことができる。
【0030】
図3は、図1の車両下部構造100からアンダカバー108を省略した図である。メインフロアパネル102aの車幅方向中央には、センタートンネル114が設けられている。センタートンネル114は、上方へ膨出したトンネル状の部位であり、車両の前後方向に延びて形成されている。センタートンネル114の内側には、パワーユニット104から延びる排気管116が通っている。排気管116は、前後方向の途中箇所に、ガスを排出する際の音を低減する消音室118を有している。
【0031】
本実施例では、キャニスタ112は、車幅方向において、メインフロアパネル102aの側縁のサイドシル120よりもセンタートンネル114寄りに設置されている。特にキャニスタ112は、消音室118の側方に位置するよう設置されている。この構成によれば、排気管116の放射熱、特に消音室118からの放射熱を利用してキャニスタ112を効率よく温めることができ、キャニスタ112の脱離性能をさらに向上させることができる。また、キャニスタ112を車幅方向中央寄りに配置することで、側面衝突等の衝撃からキャニスタ112を保護することが可能になる。
【0032】
また、キャニスタ112は、車両前後方向において、後方の燃料タンク106よりも、前方のパワーユニット104寄りに設置されている。キャニスタ112をパワーユニット104寄りに配置することで、キャニスタ112からパワーユニット104へガスを引き込むときの圧力損失を低減し、キャニスタ112の性能維持を図ることが可能になる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…車両下部構造、102a…メインフロアパネル、102b…リアフロアパネル、104…パワーユニット、106…燃料タンク、108…アンダカバー、110…二次電池、112…キャニスタ、114…センタートンネル、116…排気管、118…消音室、120…サイドシル
図1
図2
図3