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  • 特許-車両後部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018042602
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019156017
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英也
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-032254(JP,U)
【文献】特開平11-321706(JP,A)
【文献】特開2000-177395(JP,A)
【文献】特開平07-096746(JP,A)
【文献】特開2001-213351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06-25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドアの上方にてルーフパネルを支える車両後部構造において、
前記バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びていて前記ルーフパネルの下側に接合されるルーフバックメンバと、
前記ルーフバックメンバの後側に車幅方向にわたって接合され後方へ突出していて雨水を案内するドリップレールと、
前記ルーフバックメンバおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第1の補強部材とを備え、
前記ルーフバックメンバは、上方が開放された溝型になっていて、
前記第1の補強部材は、前記溝型のルーフバックメンバに閉断面を形成し、
前記ドリップレールは、車幅方向に間隔をおいて隆起している複数のビードを有し、
前記第1の補強部材は、前記ドリップレールのうち前記ビードの間の範囲に接合されていることを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
車両のバックドアの上方にてルーフパネルを支える車両後部構造において、
前記バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びていて前記ルーフパネルの下側に接合されるルーフバックメンバと、
前記ルーフバックメンバの後側に車幅方向にわたって接合され後方へ突出していて雨水を案内するドリップレールと、
前記ルーフバックメンバおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第1の補強部材とを備え、
前記ルーフバックメンバは、上方が開放された溝型になっていて、
前記第1の補強部材は、前記溝型のルーフバックメンバに閉断面を形成し、
前記ドリップレールは、前記ルーフバックメンバよりも車幅方向外側にまで延びていて、
当該車両後部構造はさらに、
前記バックドアの側縁に沿って上方へ延びて前記ルーフバックメンバの車幅方向端部に接合すると共に前記ドリップレールの前縁にも接合するバックピラーと、
前記バックピラーおよび前記ドリップレールの上側に接合される1または複数の第2の補強部材とを備え、
前記バックピラーは、前記溝型のルーフバックメンバに連続して上方が開放された溝型になっていて、
前記第2の補強部材は、前記溝型のバックピラーに閉断面を形成することを特徴とする車両後部構造。
【請求項3】
当該車両後部構造はさらに、隣り合う前記第1の補強部材と前記第2の補強部材とをつなぐ連結部材を備え、
前記連結部材は、前記ルーフバックメンバと前記バックピラーとの境界をまたいでいることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記ドリップレールは、車幅方向に間隔をおいて隆起している複数のビードを有し、
前記第2の補強部材は、前記ドリップレールのうち前記ビードの間の範囲に接合されていることを特徴とする請求項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
車両のバックドアの上方にてルーフパネルを支える車両後部構造において、
前記バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びていて前記ルーフパネルの下側に接合されるルーフバックメンバと、
前記ルーフバックメンバの後側に車幅方向にわたって接合され後方へ突出していて雨水を案内するドリップレールと、
前記ルーフバックメンバおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第1の補強部材とを備え、
前記ルーフバックメンバは、上方が開放された溝型になっていて、
前記第1の補強部材は、前記溝型のルーフバックメンバに閉断面を形成し、
当該車両後部構造はさらに、前記ルーフバックメンバの前側の所定箇所に取り付けられてルームランプを支えるランプ固定ブラケットを備え、
前記第1の補強部材は、前記ランプ固定ブラケットの車幅方向両側に設けられることを特徴とする車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、ドリップレールと呼ばれる雨といが設けられる場合がある。ドリップレールは、ドア用開口の上方などにてルーフパネルの端よりも突出した構造になっていて、雨水がドア用開口へ流れ落ちるのを防いでいる。例えば特許文献1には、ドリップレールに類似した構造物であるドリップチャンネル5が、バックドア用開口の上方に備えられている様子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-30459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のバックドア用開口は、主に、左右のバックピラーの上部を、梁(はり)の役目をするルーフバックメンバでつないだ構造になっている。上述したドリップレールを有する車両の場合、ドリップレールはルーフバックメンバの後側に接合されていることが多い。
【0005】
ここで、車体の組付工程においては、ドリップレールの無い車両の場合、先にルーフバックメンバをルーフパネルの下側に接合させておき、そこへバックピラーを接合させる手順が採られていた。
【0006】
一方、ドリップレールを有する車両の場合、ルーフバックメンバからは車両後方へドリップレールが突出している。そのため、このルーフバックメンバをルーフパネルに接合させてしまうと、ドリップレールが干渉して後のバックピラーの接合作業が困難になってしまう。そのため、ドリップレールを有する車両では、先にルーフバックメンバとバックピラーとを接合させておき、そこへ上からルーフパネルを接合させる手順が採られていた。
【0007】
しかし、上記ドリップレールを有する車両の組付工程において、ルーフパネルを接合させる前は、左右のバックピラーをルーフバックメンバのみでつないだ状態となる。その状態では剛性は保ち難く、ルーフパネルの接合作業も不安定となり、作業の精度や効率に影響が出るおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、車体の組付途中においてもルーフバックメンバの剛性を保ち、さらにはドリップレールの支持剛性も向上可能な車両後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両後部構造の代表的な構成は、車両のバックドアの上方にてルーフパネルを支える車両後部構造において、バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びていてルーフパネルの下側に接合されるルーフバックメンバと、ルーフバックメンバの後側に車幅方向にわたって接合され後方へ突出していて雨水を案内するドリップレールと、ルーフバックメンバおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第1の補強部材とを備え、ルーフバックメンバは、上方が開放された溝型になっていて、第1の補強部材は、溝型のルーフバックメンバに閉断面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車体の組立途中においてもルーフバックメンバの剛性を保ち、さらにはドリップレールの支持剛性も向上可能な車両後部構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る車両後部構造の概要を示す図である。
図2図1(b)の車両後部構造を車両前方の右上方から見た斜視図である。
図3図1(b)の車両後部構造を各方向から示した図である。
図4図3(b)のルーフバックリンフォースのA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両後部構造は、車両のバックドアの上方にてルーフパネルを支える車両後部構造において、バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びていてルーフパネルの下側に接合されるルーフバックメンバと、ルーフバックメンバの後側に車幅方向にわたって接合され後方へ突出していて雨水を案内するドリップレールと、ルーフバックメンバおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第1の補強部材とを備え、ルーフバックメンバは、上方が開放された溝型になっていて、第1の補強部材は、溝型のルーフバックメンバに閉断面を形成することを特徴とする。
【0013】
上記の第1の補強部材によれば、ルーフバックメンバの剛性が向上するため、車体の組付途中においても車体剛性を向上させることができる。したがって、ルーフパネルの組付作業においても車体剛性を確保し、作業の効率と精度とを高めることが可能になる。特に、ルーフバックメンバを全体的に閉断面にするのではなく、第1の補強部材によって部分的にのみ閉断面にすることで、車体の軽量化を図ることも可能になる。
【0014】
また、上記構成であれば、第1の補強部材によってドリップレールの支持剛性も向上するため、ドリップレールによる雨水の排出をより効率よく行うことが可能になる。
【0015】
上記のドリップレールは、車幅方向に間隔をおいて隆起している複数のビードを有し、第1の補強部材は、ドリップレールのうちビードの間の範囲に接合されていてもよい。
【0016】
上記のビードを設けることで、ドリップレールの断面2次モーメントが向上し、ドリップレールの剛性をより高めることが可能になる。また、ビードの間の範囲であれば、第1の補強部材を効率よく接合させることが可能になる。
【0017】
上記のドリップレールは、ルーフバックメンバよりも車幅方向外側にまで延びていて、当該車両後部構造はさらに、バックドアの側縁に沿って上方へ延びてルーフバックメンバの車幅方向端部に接合すると共にドリップレールの前縁にも接合するバックピラーと、バックピラーおよびドリップレールの上側に接合される1または複数の第2の補強部材とを備え、バックピラーは、溝型のルーフバックメンバに連続して上方が開放された溝型になっていて、第2の補強部材は、溝型のバックピラーに閉断面を形成してもよい。
【0018】
上記の第2の補強部材によれば、バックピラーの剛性が向上し、車体の組付途中における車体剛性をさらに向上させることができる。このことも、ルーフパネルの接合時における車体剛性の確保につながる。また、バックピラーを全体的に閉断面にするのではなく、第2の補強部材によって部分的にのみ閉断面にすることで、車体の軽量化を図ることも可能になる。また、第2の補強部材によってもドリップレールの支持剛性は向上するため、ドリップレールによる雨水の排出をより効率よく行うことが可能になる。
【0019】
当該車両後部構造はさらに、隣り合う第1の補強部材と第2の補強部材とをつなぐ連結部材を備え、連結部材は、ルーフバックメンバとバックピラーとの境界をまたいでいるとよい。
【0020】
上記の連結部材によれば、ルーフバックメンバとバックピラーとの接合箇所を効率よく補強することが可能となる。
【0021】
上記のドリップレールは、車幅方向に間隔をおいて隆起している複数のビードを有し、第2の補強部材は、ドリップレールのうちビードの間の範囲に接合されていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、上記のビードを設けることで、ドリップレールの断面2次モーメントが向上し、ドリップレールの剛性をより高めることが可能になる。また、ビードの間の範囲であれば、第2の補強部材を効率よく接合させることが可能になる。
【0023】
当該車両後部構造はさらに、ルーフバックメンバの前側の所定箇所に取り付けられてルームランプを支えるランプ固定ブラケットを備え、ルーフバックリンフォースは、ランプ固定ブラケットの車幅方向両側に設けられてもよい。
【0024】
上記のランプ固定ブラケットの接合によっても、ルーフバックメンバの剛性は向上する。そして、第1の補強部材をランプ固定ブラケットの車幅方向両側に設けることで、ルーフバックメンバの剛性をより効率よく向上させることが可能になる。
【実施例
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0026】
図1は、本発明の実施例に係る車両後部構造100の概要を示す図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0027】
図1(a)は、車両後部構造100を実施した車両のうち、特にルーフパネル102を車両後方から示している。車両後部構造100は主に、バックドア(図示省略)の上方にてルーフパネル102を支える構造として機能している。
【0028】
当該車両後部構造100は、ドリップレール104を備えている。ドリップレール104は、雨どいの役割をする部位であり、例えばバックドア用開口E1の上方にて、ルーフパネル102から流れてきた雨水を車幅方向に案内して乗員が濡れるのを防ぐ。ドリップレール104は、ルーフパネル102の後方だけでなく側方にも設けられていて、ルーフパネル102の後方の領域をドリップレールリア104aと呼び、ルーフパネル102の側方の領域をドリップレールサイド104bと呼んでいる。これらドリップレールリア104aとドリップレールサイド104bは、ルーフパネル102の角部で連続している。
【0029】
図1(b)は、図1(a)のルーフパネル102を省略した図である。車両後部構造100は、左右のバックピラー106、108と、バックピラー106、108をつなぐルーフバックメンバ110を含んでいる。バックドア用開口E1は、これらバックピラー106、108とルーフバックメンバ110によって形成されている。
【0030】
バックピラー106、108は、車体の柱であり、バックドア(図示省略)の側縁に沿って主に上下方向に延びている。ルーフバックメンバ110は、車体の梁(はり)であり、バックドアの上縁に沿って車幅方向に延びている。前述したドリップレールリア104aは、ルーフバックメンバ110の後側に車幅方向にわたって接合され、ルーフバックメンバ110から後方へ突出している。
【0031】
ルーフバックメンバ110は、ルーフパネル102の下側に接合される。当該車両後部構造100では、ルーフバックメンバ110の変形や歪みを抑えて車体剛性を高めるために、計2つのリンフォース112、114を備えている。リンフォース112、114は、車幅方向に設けられていて、ルーフバックメンバ110とバックピラー106、108およびドリップレールリア104aに対して接合されている。
【0032】
図2は、図1(b)の車両後部構造100を車両前方の右上方から見た斜視図である。ルーフバックメンバ110は、上方が開放された溝型になっている。この溝型のルーフバックメンバ110は、車両前側のルーフバックインナ110aと、車両後側のルーフバックアウタ110bの、2つの部材から構成されている。ルーフバックインナ110aは、ルーフバックメンバ110のうち、車両前側の前壁116を形成している。ルーフバックアウタ110bは、ルーフバックメンバ110のうち、車両後側の後壁118を形成している。上記のドリップレールリア104aは、ルーフバックアウタ110bに車幅方向にわたって接合されている。
【0033】
ルーフバックメンバ110は、上側が開放された溝型となっていることで、軽量化が達成されている。溝型のルーフバックメンバ110であっても、ルーフパネル102に接合してしまえば、上方を開放させた分の剛性は補うことができる。しかしながら、ルーフパネル102への接合前においては、上方を開放させたことによる剛性の損失分が組付作業等に影響することも考えられる。そこで、当該車両後部構造100では、リンフォース112、114によって、ルーフバックメンバ110の補強を行っている。
【0034】
リンフォース112、114は左右対称の同じ構造であり、以下では主に車幅方向右側のリンフォース112を例に挙げて説明を行う。リンフォース112は、車幅方向中央側の第1の補強部材であるルーフバックリンフォース112aと、車幅方向外側の第2の補強部材であるピラーリンフォース112bの、計2つの補強部材を車幅方向に延びる連結部材112cでつないで一体化した構成になっている。同様に、リンフォース114は、ルーフバックリンフォース114aとピラーリンフォース114bを連結部材114cで一体化した構成になっている。
【0035】
ルーフバックリンフォース112aは、車両前後方向に帯状に延びた形状になっていて、ルーフバックメンバ110とドリップレールリア104aの上側とに接合され、これら部材を補強する。特に、ルーフバックリンフォース112aは、ルーフバックメンバ110の前壁116の上端と後壁118の上端とをつなぎ、ルーフバックメンバ110の溝が開くような変形や歪みなどを抑えている。
【0036】
再び図1(b)を参照する。ルーフバックメンバ110の車幅方向外側には、後述するバックピラー106のピラー延長領域106bが接合されている。ピラーリンフォース112bは、車両前後方向に帯状に延びた形状になっていて、バックピラー106のピラー延長領域106bおよびドリップレールリア104aの上側に接合され、これらの剛性を補助する。
【0037】
図3は、図1(b)の車両後部構造100を各方向から示した図である。図3(a)は、車両後部構造100を上方から示した図である。2つのリンフォース112、114は車幅方向に複数、特に車両中心線L1に対して車幅方向に対称に設けられている。
【0038】
図3(b)は、車両後部構造100を車両後方から示した図である。上述したように、ルーフバックメンバ110の車幅方向外側には、バックピラー106のピラー延長領域106bが接合されている。詳しくは、バックピラー106はバックドア(図示省略)の側縁に沿って上方へ延び、ルーフバックメンバ110の車幅方向端部に接合される。このとき、バックドアの側縁に沿って延びているのがピラー柱領域106aであり、ピラー柱領域106aからバックドアの上縁に沿って湾曲しながら車内側へ延びている部位がピラー延長領域106bである。
【0039】
ピラー延長領域106bもまた、溝型のルーフバックメンバ110に連続して、上方が開放された溝型になっている。ピラーリンフォース112bは、ピラー延長領域106bの前壁の上端と後壁の上端とをつなぎ、ピラー延長領域106bの開くような変形や歪みなどを抑えている。
【0040】
図3(a)に示したように、ドリップレールリア104aは、ルーフバックメンバ110よりも車幅方向外側にまで延びている。ピラー延長領域106bは、ルーフバックメンバ110に接合すると共にドリップレールリア104aの前縁120にも接合する。そして、リンフォース112は、ルーフバックメンバ110とピラー延長領域106bとの境界である接合箇所113を車幅方向にまたぎつつ、ルーフバックメンバ110およびピラー延長領域106bとドリップレールリア104aとに接合されている。特に、リンフォース112は、連結部材112cが接合箇所113を車幅方向にまたいでいることで、ルーフバックメンバ110とピラー延長領域106bとの接続を効率よく補強することが可能になっている。
【0041】
図4は、図3(b)のルーフバックリンフォース112aのA-A断面図である。ルーフバックリンフォース112aは、溝型のルーフバックメンバ110に閉断面を形成する。このルーフバックリンフォース112aによれば、ルーフバックメンバ110の剛性が向上し、ルーフバックメンバ110のルーフパネル102への接合前、すなわち車体の組付途中においても車体剛性を向上させることができる。したがって、ルーフパネル102の組付作業において、車体剛性を確保し、作業の効率と精度とを高めることが可能になる。特に、ルーフバックメンバ110を全体的に閉断面にするのではなく、ルーフバックリンフォース112aによって部分的にのみ閉断面にすることで、車体の軽量化を図ることも可能になる。
【0042】
上述したように、図3(a)のピラー延長領域106bもまた、ルーフバックメンバ110に連続して上方が開口した溝型の構造になっている。ピラーリンフォース112bは、図4のルーフバックリンフォース112aと同様に、溝型のピラー延長領域に閉断面を形成する。このピラーリンフォース112bによれば、ピラー延長領域106bの剛性が向上し、ピラー延長領域106bのルーフパネル102への接合前、すなわち車体の組付途中においても車体剛性を向上させることができる。この構成によっても、ルーフパネル102の組付作業時における車体剛性の確保につながる。また、ピラー延長領域106bを全体的に閉断面にするのではなく、ピラーリンフォース112bによってピラー延長領域106bを部分的にのみ閉断面にすることで、車体の軽量化を図ることも可能になる。
【0043】
図4に示すように、ルーフバックアウタ110bからは車両後方へドリップレールリア104aが延びていて、ルーフバックリンフォース112aはこのドリップレールリア104aの平面部122にも接合されている。同様に、ピラーリンフォース112bもドリップレールリア104aの平面部122にも接合されている。これら構成によって、ドリップレールリア104aは支持剛性が向上する。したがって、ドリップレールリア104aは、雨水の重量がかかっても姿勢を維持することができ、雨水の排出をより効率よく行うことが可能になっている。
【0044】
再び図2を参照する。ドリップレールリア104aの平面部122には、車幅方向に間隔をおいて隆起している複数のビード124が形成されている。このビード124を設けることで、ドリップレールリア104aの断面2次モーメントは向上し、ドリップレールリア104aの剛性はより高められ、雨水の排水時にも姿勢をより好適に維持することが可能になる。
【0045】
図3に示すように、ルーフバックリンフォース112aおよびピラーリンフォース112bは、ドリップレールリア104aの平面部122のうちビード124の間の範囲に接合されている。ビード124の間の範囲であれば、ルーフバックリンフォース112aおよびピラーリンフォース112bを効率よく接合させることが可能になる。
【0046】
同じく図3に示すように、本実施例では、ルーフバックメンバ110の前側の車幅方向中央には、ランプ固定ブラケット126が取り付けられている。ランプ固定ブラケット126は、ルームランプ(図示省略)を支える部品である。上述したように2つのリンフォース112、114が車両中心線L1に対して車幅方向に対称に設けられていることで、ルーフバックリンフォース112a、114aはランプ固定ブラケット126の車幅方向両側に設けられた構成となっている。
【0047】
上記のランプ固定ブラケット126の接合によっても、ルーフバックメンバ110の剛性は向上する。そして、ルーフバックリンフォース112a、114aをランプ固定ブラケット126の車幅方向両側に設けることで、ランプ固定ブラケット126とルーフバックリンフォース112a、114aとが相乗して働き、ルーフバックメンバ110の剛性をより効率よく向上させることが可能になる。また、ランプ固定ブラケット126のルームランプに対する支持剛性を両脇のルーフバックリンフォース112a、114によって高め、ルームランプの共振を防ぐことも可能になる。
【0048】
以上説明した当該リンフォース112、114を備えた車両後部構造100は、横開きのバックドア(図示省略)を有する車両にてその機能がより好適に発揮される。横開きのバックドアは、バックドア用開口E1の上側(ルーフバックメンバ110側)ではなく横側(バックピラー106、108等のサイドボディ側)にドアヒンジが設けられるため、ルーフバックメンバ110側の構造物が少なく、ルーフバックメンバ110側の剛性が確保し難いためである。しかしながら、上開きのバックドアを有する車両であっても、当該車両後部構造100を実施して車体剛性をさらに向上させることは可能である。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
E1…バックドア用開口、L1…車両中心線、100…車両後部構造、102…ルーフパネル、104…ドリップレール、104a…ドリップレールリア、104b…ドリップレールサイド、106…右側のバックピラー、106a…ピラー柱領域、106b…ピラー延長領域、108…左側のバックピラー、110…ルーフバックメンバ、110a…ルーフバックインナ、110b…ルーフバックアウタ、112…右側のリンフォース、112a…右側のルーフバックリンフォース、112b…右側のピラーリンフォース、112c…右側の連結部材、113…ルーフバックメンバとピラー延長領域との接合箇所、114…左側のリンフォース、114a…左側のルーフバックリンフォース、114b…左側のピラーリンフォース、114c…左側の連結部材、116…ルーフバックメンバの前壁、118…ルーフバックメンバの後壁、120…ドリップレールリアの前縁、122…ドリップレールリアの平面部、124…ビード、126…ランプ固定ブラケット
図1
図2
図3
図4