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特許7047556超音波診断装置及び穿刺針のずれ角度算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び穿刺針のずれ角度算出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018075150
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019180810
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】西垣 森緒
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019133(JP,A)
【文献】特開2018-023610(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002417(WO,A1)
【文献】特開2012-139437(JP,A)
【文献】特開2016-047191(JP,A)
【文献】特表2015-519120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短軸方向に複数の領域に配列され当該各領域で長軸方向に配列された複数の振動子を有し、当該短軸方向の複数の領域でそれぞれ独立して超音波の送受信が可能な超音波探触子に、前記各領域の駆動信号を送信する送信部と、
前記超音波探触子から前記各領域の受信信号を受信する受信部と、
前記受信された各領域の受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記生成された各領域の超音波画像データから被検体に刺入された穿刺針の画像を抽出する抽出部と、
前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報を用いて、前記超音波探触子の長軸方向及び短軸方向に直交する上方向から見た当該超音波探触子に対する当該穿刺針のずれ角度を算出するずれ角度算出部と、を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記算出された穿刺針のずれ角度を示すずれ角度表示情報を表示部に表示する第1の表示制御部を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記算出された穿刺針のずれ角度に対応するずれ角度が所定の閾値角度以上であるか否かを判別し、当該所定の閾値角度以上である場合に、当該穿刺針のずれ角度が当該所定の閾値角度以上である旨の警告情報を出力部に出力させる警告部を備える請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記ずれ角度算出部は、前記超音波探触子の上方向から見た当該超音波探触子の長軸方向に対する前記穿刺針のずれ角度を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ずれ角度算出部は、前記超音波探触子を上方向から見た当該超音波探触子の短軸方向に対する前記穿刺針のずれ角度を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記ずれ角度算出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報と、前記穿刺針の刺入基準位置情報とを用いて、平行法により刺入された前記穿刺針のずれ角度を算出する請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ずれ角度算出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の複数の境界位置情報を用いて、交差法により刺入された前記穿刺針のずれ角度を算出する請求項1から3、5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記算出された穿刺針のずれ角度の履歴情報を記憶部に記憶する記憶制御部と、
前記記憶された穿刺針のずれ角度の履歴情報を表示部に表示する第2の表示制御部と、を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記抽出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の表現を当該領域ごとに異にし、
前記表現が異にされた穿刺針の画像を含む前記各領域の超音波画像データを合成して合成画像データを生成する合成部と、
前記生成された合成画像データを表示部に表示する第3の表示制御部と、を備える請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記表現は、表示色、彩度、輝度、点滅の少なくとも1つである請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
超音波診断装置を作動して穿刺針のずれ角度を算出する穿刺針のずれ角度算出方法であって、
送信部が、短軸方向に複数の領域に配列され当該各領域で長軸方向に配列された複数の振動子を有し、当該短軸方向の複数の領域でそれぞれ独立して超音波の送受信が可能な超音波探触子に、前記各領域の駆動信号を送信する送信工程と、
受信部が、前記超音波探触子から前記各領域の受信信号を受信する受信工程と、
画像生成部が、前記受信された各領域の受信信号から超音波画像データを生成する画像生成工程と、
抽出部が、前記生成された各領域の超音波画像データから被検体に刺入された穿刺針の画像を抽出する抽出工程と、
ずれ角度算出部が、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報を用いて、前記超音波探触子の長軸方向及び短軸方向に直交する上方向から見た当該超音波探触子に対する当該穿刺針のずれ角度を算出するずれ角度算出工程と、
を含む穿刺針のずれ角度算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び穿刺針のずれ角度算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検体内部に照射し、その反射された超音波を受信して所定の信号データ処理を行うことにより被検体の内部構造の超音波画像を生成する超音波診断装置が知られている。このような超音波診断装置は、医療目的の検査、治療や建築構造物内部の検査といった種々の用途に広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置は、超音波画像を表示させるだけではなく、被検体内の特定の部位(ターゲット)のサンプルを採取したり、水分などを排出したり、あるいは、特定の部位に薬剤やマーカーなどを注入、留置したりする際に、これらに用いられる穿刺針とターゲットの位置とを視認しながら当該穿刺針をターゲット位置に向けて刺入する場合にも用いられる。このような超音波画像の利用により、被検体内のターゲットに対する処置を迅速、確実かつ容易に行うことができる。
【0004】
超音波診断装置では、超音波探触子において一次元又は二次元マトリクス状に超音波の送受信を行う振動子が配列され、超音波の送受信を行う振動子の位置や方向を所定の配列方向に走査(特に、電子走査)させながら撮像を行うものが多く用いられている。穿刺針は、医師などの操作者の操作により、刺入法に応じて患者の生体などの被検体に刺入されることで、被検体への刺入位置からターゲットへの到達までの間、継続的に撮像可能な範囲に位置する。刺入法は、上記走査方向(ラテラル方向、長軸方向)の走査平面(超音波ビームが出射される平面)に対して平行に、穿刺針を目標部位に向けて刺入させる方法である平行法と、上記走査平面に対して穿刺針を交差させて、目標部位に向けて刺入させる交差法と、がある。穿刺針は、以前は、穿刺ガイドと呼ばれる超音波探触子に固定接続されたアタッチメントに取り付けられて刺入されていたが、現在では、操作者がフリーハンドで穿刺針を刺入することが多くなっている。
【0005】
このため、穿刺針は、被検体の内部状態、構造や穿刺針の先端形状などにより、必ずしも所望の刺入方向に正確に向かわなかったり、穿刺針が湾曲してしまったりする場合がある。その結果、穿刺針の先端がラテラル方向に垂直なエレベーション方向(短軸方向)に撮像可能な範囲から外れて撮像がなされなくなる場合が生じていた。また、穿刺を用いず、単純に断面画像を得る場合であっても、操作者が不慣れな場合には、超音波探触子の姿勢を変更させてエレベーション方向の撮像範囲を微調整する際にも、適切な変更が行えず、所望の画像を得るのに手間を要する場合があった。
【0006】
このため、複数の振動子が短軸方向及び長軸方向に2次元に配列された超音波探触子を有し、短軸方向の全振動子から偏向角度=0の超音波ビームと、短軸方向の端部の振動子から偏向角度がある超音波ビームとの2方向の超音波ビームを送信し、その2方向の超音波ビームにおける短軸方向の偏向角度に対する反射超音波強度の特性を比較し、ピークの差分値分を引き下げた特性の交点を、穿刺針の短軸位置(偏向角度)と特定し、長軸方向に連続する短軸位置の穿刺針を上面から見た平面視画像を生成し表示する超音波診断装置が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、複数の振動子が2次元に配列された2次元アレイプローブ(超音波探触子)を有し、穿刺針を用い、穿刺針に設けられた発信器から3つの位置の振動子への発信信号到達時間、から、穿刺針の3次元的な先端位置を算出する超音波診断装置が知られている(特許文献2参照)。特許文献2の超音波診断装置は、他にも、穿刺針からの反射超音波強度、励振器が取り付けられた穿刺針からのドプラー信号パワー強度、相互相関法を用いた穿刺針の先端の追尾処理により、穿刺針の3次元的な先端位置を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-148407号公報
【文献】特開2000-185041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
穿刺針のずれ角度を算出する場合に、特許文献2の手法は、3次元走査を前提としており、実現のためのコストが高くつく。このため、特許文献1のような方法が考えられているが、反射信号の強度が短軸ビームの指向性のみに依存することが前提である。しかしながら、実際の被検体内では、反射信号強度は、例えば減衰の大きな部位が一部分に存在したりすると誤差が大きくなるという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、超音波探触子に対する穿刺針のずれ角度を定量的に、容易、低コストかつ精度よく算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の超音波診断装置は、
短軸方向に複数の領域に配列され当該各領域で長軸方向に配列された複数の振動子を有し、当該短軸方向の複数の領域でそれぞれ独立して超音波の送受信が可能な超音波探触子に、前記各領域の駆動信号を送信する送信部と、
前記超音波探触子から前記各領域の受信信号を受信する受信部と、
前記受信された各領域の受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記生成された各領域の超音波画像データから被検体に刺入された穿刺針の画像を抽出する抽出部と、
前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報を用いて、前記超音波探触子の長軸方向及び短軸方向に直交する上方向から見た当該超音波探触子に対する当該穿刺針のずれ角度を算出するずれ角度算出部と、を備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記算出された穿刺針のずれ角度を示すずれ角度表示情報を表示部に表示する第1の表示制御部を備える。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、
前記算出された穿刺針のずれ角度が所定の閾値角度以上であるか否かを判別し、当該所定の閾値角度以上である場合に、当該穿刺針のずれ角度が当該所定の閾値角度以上である旨の警告情報を出力部に出力させる警告部を備える。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記ずれ角度算出部は、前記超音波探触子の上方向から見た当該超音波探触子の長軸方向に対する前記穿刺針のずれ角度を算出する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記ずれ角度算出部は、前記超音波探触子を上方向から見た当該超音波探触子の短軸方向に対する前記穿刺針のずれ角度を算出する。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記ずれ角度算出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報と、前記穿刺針の刺入基準位置情報とを用いて、平行法により刺入された前記穿刺針のずれ角度を算出する。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1から3、5のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記ずれ角度算出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の複数の境界位置情報を用いて、交差法により刺入された前記穿刺針のずれ角度を算出する。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記算出された穿刺針のずれ角度の履歴情報を記憶部に記憶する記憶制御部と、
前記記憶された穿刺針のずれ角度の履歴情報を表示部に表示する第2の表示制御部と、を備える。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記抽出部は、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の表現を当該領域ごとに異にし、
前記表現が異にされた穿刺針の画像を含む前記各領域の超音波画像データを合成して合成画像データを生成する合成部と、
前記生成された合成画像データを表示部に表示する第3の表示制御部と、を備える。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の超音波診断装置において、
前記表現は、表示色、彩度、輝度、点滅の少なくとも1つである。
【0021】
請求項11に記載の発明
超音波診断装置を作動して穿刺針のずれ角度を算出する穿刺針のずれ角度算出方法であって、
送信部が、短軸方向に複数の領域に配列され当該各領域で長軸方向に配列された複数の振動子を有し、当該短軸方向の複数の領域でそれぞれ独立して超音波の送受信が可能な超音波探触子に、前記各領域の駆動信号を送信する送信工程と、
受信部が、前記超音波探触子から前記各領域の受信信号を受信する受信工程と、
画像生成部が、前記受信された各領域の受信信号から超音波画像データを生成する画像生成工程と、
抽出部が、前記生成された各領域の超音波画像データから被検体に刺入された穿刺針の画像を抽出する抽出工程と、
ずれ角度算出部が、前記抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報を用いて、前記超音波探触子の長軸方向及び短軸方向に直交する上方向から見た当該超音波探触子に対する当該穿刺針のずれ角度を算出するずれ角度算出工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、超音波探触子に対する穿刺針のずれ角度を定量的に容易かつ精度よく算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態の超音波診断装置の全体図である。
図2】超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】超音波探触子における振動子の配列の一例を示す図である。
図4】(a)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す側面概略図である。(b)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す上面概略図である。
図5】(a)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す側面概略図である。(b)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す上面概略図である。
図6】超音波探触子の短軸方向における概略構成を示す図である。
図7】穿刺針画像表示処理を示すフローチャートである。
図8】(a)は、平行法において穿刺針のずれ角度を示す超音波探触子の上面概略図である。(b)は、平行法における合成超音波画像を示す図である。(c)は、超音波ビームの境界線を示す図である。
図9】(a)は、交差法において穿刺針のずれ角度を示す超音波探触子の上面概略図である。(b)は、交差法における合成超音波画像を示す図である。
図10】(a)は、合成表示画面を示す図である。(b)は、ずれ角度調整後の超音波探触子の上面概略図である。
図11】閾値角度θαを示す超音波探触子の上面概略図である。
図12】(a)は、穿刺針のずれ角度のヒストグラムである。(b)は、ずれ角度の履歴情報画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態及び変形例を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態)
図1図11を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態の超音波診断装置Uの全体の装置構成を説明する。図1は、本実施の形態の超音波診断装置Uの全体図である。図2は、超音波診断装置Uの内部構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、超音波診断装置Uは、超音波診断装置本体1と、ケーブル5を介して超音波診断装置本体1に接続された超音波探触子2と、認識対象物としての処置具である穿刺針3と、を備える。
【0027】
穿刺針3は、ここでは、中空状の長針形状を有し、医師、技師などの操作者によりフリーハンドで定められた角度で被検体に対して刺入される。穿刺針3は、患者などの被検体の採取する部位(ターゲット)又は注入される薬剤などの種別や分量に応じて適宜な太さ、長さや先端形状を有したものに換装されることが可能となっている。なお、超音波診断装置Uにおいて、穿刺針3を穿刺方向に案内するアタッチメントとしての取付部や、超音波探触子2に固定的に設けられて穿刺針3を穿刺方向に案内する案内部が設けられる構成でもよい。
【0028】
超音波診断装置本体1には、操作入力部18と、表示部としての出力表示部19と、が設けられている。また、図2に示すように、超音波診断装置本体1は、これらに加えて、ずれ角度算出部、第1、第2、第3の表示制御部、記憶制御部としての制御部11と、送信部としての送信駆動部12と、受信部としての受信処理部13と、送受信切替部14と、画像生成部15と、抽出部、合成部としての画像処理部16と、を備えている。制御部11は、操作入力部18のキーボードやマウスといった入力デバイスに対する外部からの入力操作に基づき、超音波探触子2に駆動信号を出力して超音波を出力させ、また、超音波探触子2から超音波受信に係る受信信号を取得して各種処理を行い、必要に応じて出力表示部19の表示画面などに結果などを表示させる。
【0029】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部としてのHDD(Hard Disk Drive)及びRAM(Random Access Memory)などを備えている。CPUは、HDDに記憶されている各種プログラムを読み出してRAMにロードし、当該プログラムに従って超音波診断装置Uの各部の動作を統括制御する。HDDは、超音波診断装置Uを動作させる制御プログラム及び各種処理プログラムや、各種設定データなどを記憶する。HDDには、特に、後述する穿刺針画像表示処理を行うための穿刺針画像表示プログラムが記憶されている。これらのプログラムや設定データは、HDDの他、例えば、SSD(Solid State Drive)を含むフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーを用いた補助記憶装置に読み書き更新可能に記憶させることとしてもよい。RAMは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリーであり、CPUに作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
【0030】
送信駆動部12は、制御部11から入力される制御信号に従って超音波探触子2に供給する駆動信号を出力し、超音波探触子2に超音波を発信させる。送信駆動部12は、例えば、クロック発生回路、パルス幅設定部、パルス発生回路及び遅延回路を備える。クロック発生回路は、パルス信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス幅設定部は、パルス発生回路から出力させる送信パルスの波形(形状)、電圧振幅及びパルス幅を設定する。パルス発生回路は、パルス幅設定部の設定に基づいて駆動信号としての送信パルスを生成し、超音波探触子2の個々の振動子210ごとに異なる配線経路に出力する。遅延回路は、クロック発生回路から出力されるクロック信号を計数し、設定された遅延時間が経過すると、パルス幅発生回路に送信パルスを発生させて各配線経路に出力させる。
【0031】
受信処理部13は、制御部11の制御に従って、超音波探触子2から入力された受信信号を取得する回路である。受信処理部13は、例えば、増幅器、A/D(Analog to Digital)変換回路、整相加算回路を備える。増幅器は、超音波探触子2の各振動子210により受信された超音波に応じた受信信号を予め設定された所定の増幅率でそれぞれ増幅する回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号を所定のサンプリング周波数でデジタルデータに変換する回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子210毎に対応した配線経路ごとに遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成する回路である。
【0032】
送受信切替部14は、制御部11の制御に基づいて、振動子210から超音波を出射(送信)する場合に駆動信号を送信駆動部12から振動子210に送信させる一方、振動子210が出射した超音波に係る信号を取得する場合に受信信号を受信処理部13に出力させるための切り替え動作を行う。
【0033】
画像生成部15は、超音波の受信データに基づく診断用画像を生成する。画像生成部15は、受信処理部13から入力される音線データを検波(包絡線検波)して信号を取得し、また、必要に応じて対数増幅、フィルタリング(例えば、低域透過、スムージングなど)や強調処理などを行う。画像生成部15は、診断用画像の一つとして、当該信号強度に応じた輝度信号で信号の送信方向(被検体の深さ方向)と超音波探触子2により送信される超音波の走査方向(ラテラル方向、振動子210の2次元配列の長軸方向)を含む断面内の二次元構造を表す断層画像としてのB(Brightness)モード表示に係る各フレーム画像データを生成する。このとき、画像生成部15は、表示に係るダイナミックレンジの調整やガンマ補正などを行うことができる。この画像生成部15は、これらの画像生成に用いられる専用のCPUやRAMを備える構成とすることができる。又は、画像生成部15では、画像生成に係る専用のハードウェア構成が基板(ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)など)上に形成されて、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)により形成されて備えられていてもよい。あるいは、画像生成部15は、制御部11のCPU及びRAMにより画像生成に係る処理が行われる構成であってもよい。
【0034】
画像処理部16は、記憶部161、穿刺針同定部162などを備える。記憶部161は、画像生成部15で処理されてリアルタイム表示やこれに準じた表示に用いられる診断用画像データ(フレーム画像データ)をフレーム単位で直近の所定フレーム数分記憶する。記憶部161は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリーである。あるいは、この記憶部161は、高速書き換えが可能な各種不揮発性メモリーであってもよい。記憶部161に記憶された診断用画像データは、制御部11の制御に従って読み出され、出力表示部19に送信されたり、図示略の通信部を介して超音波診断装置Uの外部に出力されたりする。このとき、出力表示部19の表示方式がテレビジョン方式の場合には、記憶部161と出力表示部19との間にDSC(Digital Scan Converter)が設けられて、走査フォーマットが変換された後に出力されればよい。
【0035】
穿刺針同定部162は、穿刺針3の位置を同定するための画像データを生成し、当該画像データに適宜な処理を行って穿刺針3の先端部分を含む位置の針部分画像を抽出して同定し、抽出した穿刺針3の針部分画像に色付けを行う。穿刺針同定部162は、画像処理部16のCPU及びRAMを共用で用いてもよいし、各々専用のCPU及びRAMを備えてもよい。あるいは、穿刺針同定部162は、制御部11のCPU及びRAMにより各種処理が行われてもよい。穿刺針同定部162は、同定された穿刺針3の先端位置情報を履歴として記憶保持することができる。
【0036】
穿刺針3の位置の同定方法としては、例えば、特許第6123458号公報に記載のように、複数フレームの超音波画像データからフレーム間の差分や相関をとることで動きの評価を示す動き評価情報を生成し、穿刺針の先端の移動速度を演算し、穿刺針の先端の移動速度と動き評価情報とから穿刺針の先端の位置を検出し、先端を含む穿刺針の位置を同定する方法がある。また、穿刺針3の先端の移動履歴に基づいてその後の先端の位置を推定し、当該推定位置を基準として先端を検出し、先端を含む穿刺針の位置を同定してもよい。また、輪郭検知を行って最初に得られた候補の中から操作者が操作入力部18への入力操作により選択し、当該選択された輪郭と類似する輪郭を上述の推定位置を基準として穿刺針の位置を検出することとしてもよい。
【0037】
操作入力部18は、押しボタンスイッチ、キーボード、マウス若しくはトラックボール又はこれらの組み合わせを備えており、ユーザーの入力操作を操作信号に変換し、超音波診断装置本体1に入力する。
【0038】
出力表示部19は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイといった種々の表示方式のうち、何れかを用いた表示画面とその駆動部を備える。出力表示部19は、CPU15から出力された制御信号や、画像処理部16で生成された画像データに従って表示画面(各表示画素)の駆動信号を生成し、表示画面上に超音波診断に係るメニュー、ステータスや、受信された超音波に基づく計測データの表示を行う。また、出力表示部19は、LED(Light Emitting Diode)ランプなどを別途備えて電源の投入有無などの表示を行う構成であってもよい。
【0039】
これらの操作入力部18や出力表示部19は、超音波診断装置本体1の筐体に一体となって設けられたものであっても良いし、RGBケーブル、USB(Universal Serial Bus)ケーブルやHDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル(登録商標:HDMI)などを介して外部に取り付けられるものであってもよい。また、超音波診断装置本体1に操作入力端子や表示出力端子が設けられていれば、これらの端子に従来の操作用及び表示用の周辺機器を接続して利用するものであってもよい。
【0040】
超音波探触子2は、超音波(ここでは、1~30MHz程度)を発信して生体などの被検体に対して出射するとともに、出射した超音波のうち被検体で反射された反射波(エコー)を受信して電気信号に変換する音響センサーとして機能する。
【0041】
超音波探触子2は、超音波を送受信する複数の振動子210と、振動子210に各々対応する複数のスイッチング素子230と、切替設定部24と、を備えている。なお、ここでは、超音波探触子2を外部(体表面)から被検体内部に超音波を出射してその反射波を受信するものとしているが、超音波探触子2としては、消化管や血管などの内部や、体腔内などに挿入して用いるサイズ、形状のものも含まれる。操作者は、この超音波探触子2における超音波の送受信面、即ち、振動子210から超音波を出射する方向の面を被検体に所定の圧力で接触させて超音波診断装置Uを動作させ、超音波診断を行う。
【0042】
なお、振動子210の振動子の個数は、任意の複数に設計される。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0043】
振動子210は、圧電体とその変形(伸縮)により電荷が現れる両端に設けられた電極とを有する圧電素子を備えた複数の振動子である。
【0044】
複数の振動子210のそれぞれに対して駆動信号としての電圧パルスが供給されることで、当該電圧パルスが供給された振動子の圧電体は、当該圧電体に生じる電界に応じて変形(伸縮)し、超音波が発信される。発信された超音波は、電圧パルスが供給された所定数の振動子列に含まれる振動子210の位置、方向、発信された超音波の集束方向及びタイミングのずれ(遅延)の大きさに応じた位置、方向に出射される。また、振動子210に所定の周波数帯の超音波(被検体での反射波)が入射すると、その音圧により圧電体の厚さが変動(振動)することで当該変動量に応じた電荷が生じ、当該電荷量に応じた電気信号に変換し、受信信号として出力される。
【0045】
切替設定部24は、超音波の送受信を振動子210の2次元配列の短軸方向(エレベーション方向)にわたり行うための振動子210の送受信シーケンスの設定を記憶し、当該設定に応じた各振動子210に対応するスイッチング素子230のオンオフを切替動作させる。振動子210の送受信シーケンス及びスイッチング素子230のオンオフ制御については、後述する。
【0046】
ケーブル5は、その両端にそれぞれ超音波診断装置本体1とのコネクター(図示略)及び超音波探触子2とのコネクター(図示略)を有し、超音波探触子2は、このケーブル5により超音波診断装置本体1に対して着脱可能に構成されている。ケーブル5は、超音波探触子2と一体に形成されていてもよい。
【0047】
ここで、図3図6を参照して、超音波探触子2のより詳細な構成及び動作を説明する。図3は、超音波探触子2における振動子210の配列の一例を示す図である。図4(a)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す側面概略図である。図4(b)は、超音波ガイド下穿刺における平行法を示す上面概略図である。図5(a)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す側面概略図である。図5(b)は、超音波ガイド下穿刺における交差法を示す上面概略図である。図6は、超音波探触子2の短軸方向における概略構成を示す図である。
【0048】
図3に示すように、超音波診断装置Uでは、振動子210は、所定のラテラル方向(走査方向)と、ラテラル方向に直交するエレベーション方向と、で規定される二次元面(平面でなくても良い)内でマトリクス状に配列された複数の振動子ある。通常、ラテラル方向への振動子210の配列数は、エレベーション方向への振動子210の配列数よりも多く、ラテラル方向が長軸方向、エレベーション方向が短軸方向となる。振動子210は、短軸方向に3列(列a,b,c)の振動子群を有し、各列で長軸方向に複数段(段1,2…)の振動子が配列されている。ここで、列aの振動子群を便宜的に振動子VAと表現し、同様に、列b,cの振動子群を便宜的に振動子VB,VCと表現する。また、段x、列yの1つの振動子を、振動子Vxyと表現する。
【0049】
通常のBモード(断層)画像を生成する場合には、列bの振動子VBを用いて長軸方向に駆動する振動子を順次ずらしながら超音波の送受信を行う。
【0050】
ここで、図4(a)~図5(b)を参照して、超音波ガイド下における穿刺針3の穿刺法として、平行法と、交差法と、を説明する。
【0051】
図4(a)に示すように、平行法は、被検体SUの断面(側面)から見て、被検体SUの深さD1にある穿刺による組織取得などのターゲット(目標部位)Tに向かって、超音波探触子2の長軸方向の走査面に平行に穿刺針3を刺入する方法である。図5(a)に示すように、交差法は、被検体SUの断面(側面)から見て、被検体SUのターゲットTに向かって、超音波探触子2の長軸方向の走査面に交差する方向に穿刺針3を刺入する方法である。平行法及び交差法は、用途により使い分けられる。穿刺を行なう部位や、穿刺の目的によりどちらの手法を用いるかが決まることが多いが、医師、技師などの操作者の経験値により選択される場合もある。
【0052】
平行法においては、穿刺針を刺入する場合、超音波探触子2の長軸端から穿刺針3を被検体SUに刺し、振動子VBに対応する1列の長軸の穿刺針3で形成される断層面内を深いところに向かって刺入していることになる。この際に断層面内から穿刺針3が短軸方向に逸れてしまった場合、従来の超音波診断装置では、穿刺針3が描写されなくなってしまう。
【0053】
交差法においては、超音波探触子2の短軸側から穿刺針3を被検体SUに角度φの斜めに刺入して、超音波探触子2の深さD2の直下にあるターゲットTに距離D3離れた位置から刺入する。従来の交差法において、一般の超音波探触子を用いると、体表に刺した穿刺針3は、かなりの深さになっても超音波画像には表示されず、ターゲットTの直近において、初めて超音波画像に穿刺針の像が現れる。このため、刺入した穿刺針3が正しい方向に向かって進んでいるのかを知ることが難しい。
【0054】
本実施の形態では、平行法及び交差法のいずれにおいても、広い領域で穿刺針3を捕捉するため、同一時刻で、振動子VBによる超音波画像のフレームに加えて、振動子VAによる超音波画像のフレームと、振動子VCによる超音波画像のフレームと、を得るものとする。
【0055】
また、図4(b)に示すように、平行法においては、超音波探触子2の長軸端の短軸方向の中心部(中心点)C1から長軸及び深さの方向に穿刺針3を刺入するものとする。通常、超音波探触子2には、短軸方向の中心部C1に目印が形成されており、狙いやすいためである。超音波探触子2を上方向から見て、操作者は、超音波探触子2の中心部C1を通る走査平面に、穿刺針3を刺入する。しかし、穿刺針3が超音波探触子2の中心部C1を通る走査平面の長軸方向の基準線からずれるおそれがあり、このずれ角度をθとする。
【0056】
また、図5(b)に示すように、交差法においては、超音波探触子2の長軸方向のいずれの位置からも穿刺針3を短軸及び深さの方向に刺入できるものとする。超音波探触子2を上方向から見て、操作者は、超音波探触子2の走査平面に直交する面に、穿刺針3を刺入する。しかし、穿刺針3が超音波探触子2の走査平面に直交する面の短軸方向の基準線からずれるおそれがあり、このずれ角度をθとする。
【0057】
図6に示すように、超音波探触子2は、長軸端から見た短軸方向において、音響レンズ220と、振動子VA,VB,VCと、振動子VA,VB,VCにそれぞれ対応するスイッチング素子230のスイッチSWA,SWB,SWCと、を有する。なお、音響レンズ220と振動子VA,VB,VCとの間に配置される音響整合層や、振動子VA,VB,VCの超音波出射方向と逆側に配置されるバッキング材などは、図示を省略しているものとする。
【0058】
音響レンズ220は、振動子VA,VB,VCから出射された超音波ビーム(送信超音波)を集束させる非球面形状のレンズである。音響レンズ220は、振動子VAから出射される超音波ビームBaが通過するレンズ部221Aと、振動子VBから出射される超音波ビームBbが通過するレンズ部221Bと、振動子VCから出射される超音波ビームBcが通過するレンズ部221Cと、を有する。
【0059】
スイッチSWAは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VAの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。スイッチSWBは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VBの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。スイッチSWCは、切替設定部24、ケーブル5を介して、送受信切替部14からの振動子VCの各振動子への駆動信号の入力、受信信号の出力を独立にオンオフ可能なスイッチである。
【0060】
また、本実施の形態において、振動子VA,VB,VCは、超音波ビームBa,Bb,Bcがある程度の深さまでおおよそ重ならず、かつ隙間があかないように、配置されている。
【0061】
振動子VBの短軸幅は、通常の超音波走査に耐えうるだけの幅を持つ。振動子VBを覆う音響レンズ220のレンズ部221Bは、通常の超音波走査に用いることが可能なビーム形成能力を有しているものとする。振動子VA,VCの短軸幅は、振動子VBより狭くともよいが、刺入された穿刺針3の反射波(エコー)が十分得られるだけの幅を持つものとする。なお、振動子VA,VCを覆う音響レンズ220のレンズ部221A,221Cは、レンズ部221Bに比べて曲率半径が大きくなるような非球面形状が望ましいが、斜め平坦の形状を用いることも可能である。また、斜めでなく平坦という形状もまったく不可ではないが、後に述べる振動子VBによる超音波ビームBbとの融合を考えると斜めであるほうが望ましい。レンズ部221Bのレンズ形状も、通常の超音波走査において不都合(たとえばサイドローブが大きくなるなど)が起こらなければ、レンズ部221A,221Cと滑らかに接続できるという利点において、非球面形状であってもよい。
【0062】
穿刺針3の位置を的確に捕捉するためには、振動子VA,VB,VCで送受信される超音波ビームBa,Bb,Bcの占める位置は、排他的であることが望ましい。排他的であることによって穿刺針3からの反射波(エコー)は、振動子VA,VB,VCのいずれか1つからの反射波にしか含まれないため、判別が容易になるためである。
【0063】
しかしながら、超音波ビームの指向性は、なだらかな裾野を持つ形状をしているために、各超音波ビームBa,Bb,Bcは裾野において重なりあうため、完全に排他的にはならない。
【0064】
短軸方向における超音波ビームのピークに関しては振動子VBによる超音波ビームBbのピークを基準とするのが望ましいが、例えば、振動子VBの短軸幅に比較して、振動子VA,VCの短軸幅が狭い場合には、超音波ビームBa,Bcの高さが超音波ビームBbのピークの高さに比較して、低くなることが想定される。この超音波ビームの高さの差異については、予め計算により求めることができ、計算値を用いて補正することが可能である。振動子VA,VCの指向性のピークの高さを、振動子VBの指向性の高さに揃えることとしてもよい。振動子間の感度に差異が大きい場合はこのようにして、針位置の捕捉を正確に行うことができるようになる。また、深さによっても振動子間の感度の差異が発生するので、差異が大きい場合は補正をおこなってもよい。
【0065】
ここで、本実施の形態における音響レンズ220の適切な形状を説明する。まず、振動子VA,VB,VCが、通常の短軸用レンズが単に連接された形状の音響レンズで覆われている構成を考える。この場合には、それぞれの振動子VA,VB,VCからの超音波ビームは、平行な指向性を持つ。しかし、振動子VBの超音波ビームは、振動子VB付近から焦点に向かって超音波ビームが細くなる。つまり、振動子VA及びVCによる超音波ビームは、振動子VBの細くなる超音波ビームの左右を埋める(指向性を持つ)必要がある。振動子VAの超音波ビームと振動子VBの超音波ビームとの指向性に、又は振動子VCの超音波ビームと振動子VBの超音波ビームとの指向性に、隙間(厳密には双方の超音波ビームの感度が低いゾーン)があると、その部分に穿刺針3が位置したときに、捕捉が困難になる。したがって、振動子VAによる超音波ビーム、振動子VCによる超音波ビームが内側に偏向するような音響レンズのレンズ形状であることが望ましい。
【0066】
しかし、振動子VA,VCの超音波ビームが振動子VA,VCに近い、浅い位置で集束すると、交差法の穿刺において、刺入した穿刺針3がなかなか超音波ビームの中に入ってこない、つまり捕捉できない。このことから考えると、振動子VA,VCの超音波ビームは、偏向するが、集束位置が深い位置にある、又は集束しないことが望ましい。
【0067】
振動子VAによる超音波ビーム、振動子VCによる超音波ビームが内側に偏向するようなレンズ形状の音響レンズを用いた場合には、深さが深くなるにつれ、振動子VA,VCによる超音波ビームは、振動子VBによる中央の超音波ビームと重なってしまい、穿刺針3位置の判別ができなくなる。したがって、偏向角度はあまり大きすぎないようにし、臨床上問題がない深さまで、針位置の判別ができるよう、各振動子VA,VB,VCによる超音波ビームが分離することが望ましい。
【0068】
どの深さまで分離されるのかは、診断部位にもよるが、例えば超音波探触子2として高周波リニアプローブを用いる場合においては、25~30[mm]までは分離可能であることが望ましい。上記のような条件に合う音響レンズの形状としては、図6に示すような非球面形状の音響レンズ220のレンズ形状が挙げられる。音響レンズ220においては、振動子VBに対応するレンズ部221Bで曲率がきつく(曲率半径が小さく)、振動子VA及びVCに対応するレンズ部221A,221Cでは、曲率が緩い(曲率半径が大きい)形状となっている。
【0069】
平行法において、図6に示すように、音響レンズ220を用いるが、スイッチSWBをオンにし、スイッチSWA,SWCをオフにした場合には、振動子VBを用いて超音波の送受信を行うが、この場合に動作については、上述したように、従来の超音波診断装置の超音波の送受信と変わらない。
【0070】
仮にスイッチSWAをオンにし、スイッチSWB,SWCをオフにした場合には、振動子VAにより超音波の送受信が行われるが、振動子VAに対応するレンズ部221Aが略斜めの非球面形状であるために、超音波の送受信ビームは、振動子中心側に偏向し、かつ送受信ビームと中心線の交点は、振動子VBに対応するレンズ部221Bの集束点に比較して遠い位置になる。レンズ部221A,221Cに曲率を設ける場合は、この交点付近で集束するような曲率にすることが望ましい。音響レンズ220、振動子VA,VB,VCにより形成した各超音波の送受信ビームは、所望の深さまで、それぞれが重複することなく、また、隙間(センシング上の死角)があくこともない。本実施の形態では、平行法において、振動子VBを用いた断層画像のほか、振動子VA,VCのそれぞれを用いた断層画像を形成するため、振動子VBによる断層画像面から逸れた穿刺針を捕捉することが可能である。
【0071】
また、交差法について、図5(a)に示すように、本実施の形態の超音波探触子2においては、被検体SU内のターゲットTは、振動子VBによる断層画像内にある。一方で刺入されてきた穿刺針3は、振動子VA(又は振動子VC)による断層画像において、通常の超音波探触子を用いた場合に比較してかなり早くに捕捉可能である。このように、本実施の形態の交差法を行った場合、ターゲットTより、かなり手前から穿刺針3の位置の確認ができ、穿刺作業を容易にすることができる。
【0072】
ここで、図3を参照して、本実施の形態の振動子210の送受信シーケンスを説明する。上述したように、音響レンズ220、振動子VA,VB,VC、スイッチSWA,SWB,SWCを用いる構成において、振動子VBで形成された超音波ビームBbから逸脱した穿刺針3の反射波(エコー)を得るために、振動子VA,VBを用いて超音波の送受信を行うが、この場合の走査(超音波送受信)は、例えば、振動子V1a,V1b,V1c,V2a,V2b,V2c,V3a,V3b,V3c…の順に行うことができる。このような走査シーケンスが、切替設定部24に記憶されている。
【0073】
しかし、この場合、送受信回数が3倍となるため、Bモード断層画像表示のフレームレートは3分の1に低下してしまう。そこで穿刺針3の捕捉のための振動子VA,VCの走査を間引いて、例えば、振動子V1a,V1b,V1c,V2b,V3a,V3b,V3c,V4b,V5a,V5b,V5c…の順に行い、フレームレートの低下をおさえることも可能である。なお、上記の説明は、簡略化のため長軸方向に1つの振動子を走査に用いる場合を説明したが、実際には長軸方向の送受信ビーム形成のために複数の振動子を用いる。また、この他に、すでに公知である長軸方向の並列受信などを用いてフレームレートを上げるなどの方法を適用することも可能である。
【0074】
つぎに、図7図11を参照して、超音波診断装置Uの動作を説明する。図7は、穿刺針画像表示処理を示すフローチャートである。図8(a)は、平行法において穿刺針3のずれ角度θを示す超音波探触子2の上面概略図である。図8(b)は、平行法における合成超音波画像31を示す図である。図8(c)は、超音波ビームBa,Bb,Bcの境界線L1,L2を示す図である。図9(a)は、交差法において穿刺針3のずれ角度θを示す超音波探触子2の上面概略図である。図9(b)は、交差法における合成超音波画像32を示す図である。図10(a)は、合成表示画面50を示す図である。図10(b)は、ずれ角度調整後の超音波探触子2の上面概略図である。図11は、閾値角度θαを示す超音波探触子2の上面概略図である。
【0075】
図7を参照して、超音波診断装置Uで実行される穿刺針画像表示処理を説明する。穿刺針画像表示処理は、医師、技師などの操作者が被検体SUの組織取得などを行う対象としてのターゲットTに穿刺針3を刺入する穿刺作業を行う場合に、被検体内の穿刺針3のBモード断層画像をライブ表示して穿刺作業を補助する処理である。
【0076】
予め、例えば、超音波診断装置Uが設けられた診察室で医師、技師などの操作者が待機し、被検体SUとしての患者が当該診察室に入室してベッドに横になり、穿刺針3を用いた穿刺作業の準備ができているものとする。そして、超音波診断装置Uにおいて、操作入力部18を介して、操作者から穿刺針画像表示処理におけるフレームレートなどの各種設定情報入力及び穿刺針画像表示処理の実行指示を受け付けたことをトリガーとして、制御部11は、ROMに記憶された穿刺針画像表示プログラムに従い、穿刺針画像表示処理を実行する。
【0077】
まず、制御部11は、操作入力部18を介して、操作者から穿刺法(平行法又は交差法)の入力を受け付ける(ステップS10)。
【0078】
そして、制御部11は、送信駆動部12に駆動信号を生成開始させ、送受信切替部14を介して、切替設定部24に記憶された送受信シーケンスに応じたスイッチング素子230のスイッチングにより、当該駆動信号を振動子VA,VB,VCの各振動子に入力して送信超音波を出射し、反射超音波(エコー)を受信させ、送受信切替部14を介して、受信処理部13に受信信号を取得させる(ステップS11)。ステップS11で得られる受信信号は、各振動子VA,VB,VCに対応する同一時刻のフレームごとの受信信号が送受信シーケンスに応じた順に取得されていく。
【0079】
そして、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VAに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS12)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS12で生成された振動子VAに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を抽出する(針部分画像以外の部分を捨てる)(ステップS13)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS13で生成された画像データの針部分画像に振動子VAを示す赤色を着色する(ステップS14)。
【0080】
また、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VCに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS15)。ステップS15で生成されるBモード画像データは、ステップS12で生成されたBモード画像データと同時刻のフレームとなる。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS15で生成された振動子VCに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を抽出する(ステップS16)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS16で生成された画像データの針部分画像に振動子VCを示す緑色を着色する(ステップS17)。
【0081】
また、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で受信処理部13から入力された振動子VBに対応する受信信号から1フレームのBモード画像データを生成させる(ステップS18)。ステップS18で生成されるBモード画像データは、ステップS12,S15で生成されたBモード画像データと同時刻のフレームとなる。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS18で生成された振動子VBに対応するBモード画像データから穿刺針3の針部分画像を抽出する(ステップS19)。そして、制御部11は、穿刺針同定部162により、ステップS19で生成された画像データの針部分画像に振動子VBを示す青色を着色する(ステップS20)。
【0082】
ステップS14,S17,S20では、振動子VA,VB,VCのどれで得られた針部分画像かを、表現の種類としての表示色を異にしている。ステップS14,S17,S20での表示色の組合せは、一例であり、これに限定されるものではなく、例えば、緑-青-紫というようなグラデーションを用いてもよい。さらに、各針部分画像の別々に識別可能な表現の種類を他の種類に変えることとしてもよい。例えば、各針部分画像の別々に識別可能な表現として、彩度、輝度を異にする構成でもよく、点滅の有無や間隔などを異にする構成でもよく、複数種類の表現を組合せる構成でもよい。
【0083】
ステップS11,S12,S15,S18では、最初に入力された各種設定情報に対応した処理が実行される。また、穿刺針画像表示処理の実行中に、操作入力部18を介して操作者から適宜各種設定情報が変更入力される構成としてもよい。また、操作入力部18を介して操作者から、ステップS14,S17,S20における針部分画像の表現(表示色)が各種設定情報として入力される構成としてもよい。
【0084】
また、ステップS18の実行後、制御部11は、画像生成部15により、ステップS11で生成された1フレームの通常のBモード画像データを取得する(ステップS21)。そして、制御部11は、画像処理部16により、ステップS14で生成された赤の針部分画像と、ステップS17で生成された緑の針部分画像と、ステップS20で生成された青の針部分画像と、ステップS21で取得された1フレームのBモード画像データと、を合成し、1フレームの合成超音波画像データを生成する(ステップS22)。
【0085】
そして、制御部11は、ステップS22で生成された合成超音波画像データ又はステップS14,S17,S20で生成された各画像データから、ステップS10で入力された穿刺法に対応して穿刺針3のずれ角度θを算出する(ステップS23)。後述するように、各色の針部分画像の境界面の境界位置を算出できれば、ずれ角度θを求めることができる。ステップS22で生成された合成超音波画像データには、全色の針部分画像があり、各色の針部分画像の境界位置を取得できる。また、ステップS14,S17,S20で生成された合成前の各色の針部分画像を含む各画像データからも、各色の針部分画像の境界位置を取得できる。このため、ステップS14,S17,S20で生成された各画像データからずれ角度θを算出する場合には、ステップS23をステップS22の直前に移動させる構成としてもよい。
【0086】
図8(a)~図8(c)を参照して、平行法に対応する穿刺針3のずれ角度θの算出方法を説明する。図8(a)に示すように、平行法での超音波探触子2において、長軸端の短軸方向の中心部C1に穿刺針3が刺入されたものとする。ここでは、超音波探触子2の長軸方向にx軸をとり、短軸方向にy軸をとり、x軸及びy軸に垂直な深さ方向にz軸をとる。
【0087】
中心部C1を通るx軸方向の基準線L0と、穿刺針3との間のずれ角度θは、中心部C1から穿刺針3上の任意の点P0までのx軸方向の長さXと、中心部C1からのy軸方向の長さYと、を用いて算出できる。
【0088】
一例として、ステップS22で生成された平行法での合成超音波画像データが、図8(b)に示す合成超音波画像31を表す場合において、平行法に対応する穿刺針3のずれ角度θの算出方法を説明する。合成超音波画像31は、中心部C1から刺入された穿刺針3の針画像41を有する。針画像41は、青色の針部分画像41bと、緑色の針部分画像41gと、を有する。図8(b)の合成超音波画像31では、青色を「格子模様」で表現し、緑色を「ハッチング」で表現し、図9(b)でも同様であるものとする。青色の針部分画像41bと、緑色の針部分画像41gとの境界の点を、境界点P10(X10,Z10)とする。
【0089】
ここで、境界点P10(X10,Z10)に対応するYの値(=Y10とする)を求めるために、図8(c)に示す色の識別の境界線L1,L2を用いる。境界線L1は、簡易的に、y=az-bで表され、振動子VAによる赤色に対応する超音波ビームと、振動子VBによる青色に対応する超音波ビームと、の境界面上の直線とする。境界線L2は、簡易的に、y=-az+bで表され、振動子VBによる青色に対応する超音波ビームと、振動子VCによる緑色に対応する超音波ビームと、の境界面上の直線とする。このとき、短軸方向の中心部C1を原点としている。
【0090】
なお、この場合、傾きaは、一般的に音響レンズの曲率などに影響する。切片bは、短軸方向の振動子の分割の幅及び色の識別の境界面の位置などに依存する。よって、傾きa、切片bは、事前に計測したり、または理論的に計算することにより値が設定されているものとする。また、境界線L1,L2は、ここでは簡易的に直線の式で示したが、深度に応じて変化するなど、より複雑な式としてもよい。
【0091】
制御部11は、例えば、合成超音波画像31の青と緑との境界の境界点P10のX10,Z10を青と緑との境界線L2(y=-az+b)に代入して、yの値(Y10)を算出し、X10,Y10を用いて、次式(1)により、穿刺針3のずれ角度θを算出する。
θ=tan-1(Y10/X10) …(1)
【0092】
図9(a)、図9(b)を参照して、交差法に対応する穿刺針3のずれ角度θの算出方法を説明する。図9(a)に示すように、交差法での超音波探触子2において、長軸方向の任意の位置から穿刺針3が刺入されたものとする。図8(a)と同様に、x軸、y軸及びz軸をとる。
【0093】
y軸方向の基準線L3と、穿刺針3との間のずれ角度θは、超音波画像における穿刺針3の針画像の色の識別の2つの境界点を用いて算出できる。ただし、交差法における穿刺針3のずれ角度θは、超音波画像における穿刺針3の針部分画像が赤色、青色、緑色の3色からなる(穿刺針3が赤-青の境界面と、青-緑の境界面とを通る)ことを前提とする。
【0094】
また、一例として、ステップS22で生成された交差法での合成超音波画像データが、図9(b)に示す合成超音波画像32を表す場合において、交差法に対応する穿刺針3のずれ角度θの算出方法を説明する。合成超音波画像32は、刺入された穿刺針3の針画像42を有する。針画像42は、赤色の針部分画像42rと、青色の針部分画像42bと、緑色の針部分画像42gと、を有する。図9(b)の合成超音波画像32では、赤色を「網掛け(ドット)模様」で表現した。赤色の針部分画像42rと、青色の針部分画像42bとの境界の点を、境界点P1(X1,Z1)とする。青色の針部分画像42bと、緑色の針部分画像42gとの境界の点を、境界点P2(X2,Z2)とする。
【0095】
ここで、境界点P1(X1,Z1)に対応するYの値(=Y1とする)と、境界点P2(X2,Z2)に対応するYの値(=Y2とする)とを求めるために、図8(c)に示す色の識別の境界線L1,L2を用いる。ここでは、例えば、平行法と同様に、短軸方向の中心部C1に対応する点を原点としている。境界線L1,L2は、ここでも簡易的に直線の式で示したが、深度に応じて変化するなど、より複雑な式としてもよい。
【0096】
そして、例えば、制御部11は、合成超音波画像32の針画像42の赤と青との境界の境界点P1のX1,Z1を赤と青との境界線L1(y=az-b)に代入して、yの値(=Y1)を算出し、針画像42の青と緑との境界点P2のX2,Z2を青と緑との境界線L2(y=-az+b)に代入して、yの値(=Y2)を算出し、X1,Y1,X2,Y2を用いて、次式(2)により、穿刺針3のずれ角度θを算出する。
θ=tan-1(|X1-X2|/|Y1-Y2|) …(2)
【0097】
なお、ステップS23では、ステップS10で入力された穿刺法(平行法、交差法)に対応する穿刺針3のずれ角度θの算出方法により、穿刺針3のずれ角度θを算出する構成としたが、これに限定されるものではない。ステップS23において、制御部11は、ステップS22で生成された合成超音波画像データ又はステップS14,S17,S20で生成された各画像データから、穿刺法を自動的に判別し、判別した穿刺法に対応するずれ角度θの算出方法により、穿刺針3のずれ角度θを算出する構成としてもよい。穿刺法を自動的に判別する構成では、ステップS10が省略されてもよい。
【0098】
穿刺法を自動的に判別する第1の判別方法としては、制御部11が、穿刺針3の刺入とともに時間的に一番初めに針部分画像が含まれるフレームとしてのステップS22で生成された合成超音波画像データ又はステップS14,S17,S20で生成された各画像データの当該針部分画像の色情報に応じて、穿刺法を判別する方法である。より具体的には、制御部11が、時間的に一番初めに得られた針部分画像の色情報が青色である場合に、穿刺針3が中心部C1を刺入されているので、平行法と判別し、当該色情報が赤色又は緑色である場合に、穿刺針3が超音波探触子2の短軸端側から刺入されているので、交差法と判別する。時間的に一番初めに得られた針部分画像の色情報は、例えば、制御部11のRAM又は記憶部161に格納され、以後のフレームにおける穿刺法の判別でも用いられる。例えば、図8(b)の合成超音波画像31のケースでは、時間的に一番初めに針部分画像41bが現れるので平行法と判別され、図9(b)の合成超音波画像32のケースでは。時間的に一番初めに赤色の針部分画像42rが現れるので交差法と判別される。
【0099】
また、穿刺法を自動的に判別する第2の判別方法としては、制御部11が、ステップS22で生成された合成超音波画像データ又はステップS14,S17,S20で生成された各画像データから、超音波画像の左端部又は右端部から直線状の針部分画像が伸びている場合に、平行法と判別し、超音波画像の左端部又は右端部から直線状の針部分画像が伸びておらず当該針部分画像が超音波画像の中央部に位置している場合に、交差法と判別する。例えば、図8(b)の合成超音波画像31では、合成超音波画像31の右端部から直線状の針画像41が伸びているので平行法と判別され、図9(b)の合成超音波画像32では、合成超音波画像32の左端部又は右端部から直線状の針画像42が伸びておらず針部分画像42が合成超音波画像32の中央部に位置しているので交差法と判別される。
【0100】
図7に戻り、ステップS23の実行後、制御部11は、ステップS23で算出されたずれ角度θを示すずれ角度画像データを生成する(ステップS24)。ここで、図10(a)を参照して、ステップS24で生成されるずれ角度画像データの一例を説明する。ずれ角度画像データは、例えば、後述する合成表示画面50のうちのずれ角度画像60を有する。
【0101】
ずれ角度画像60は、超音波探触子画像61と、穿刺針画像62と、ずれ角度63と、を含む。超音波探触子画像61は、超音波探触子2を上方向(ケーブル5側)から見た概略平面図である。穿刺針画像62は、超音波探触子画像61に対応する上方向から見た穿刺針3の刺入方向(及び刺入位置)を示す針画像である。穿刺針画像62は、一例として、平行法における穿刺針画像としている。
【0102】
ずれ角度63は、ステップS24で算出されたずれ角度θの数値と、ずれ角度θを0にするための回転矢印と、を含む画像であり、超音波探触子画像61の基準線(図示略、平行法では長軸端の短軸方向の中心部を通り、短軸方向に平行な線)からの穿刺針画像62のずれ角度を示す。
【0103】
図7に戻り、ステップS24の実行後、制御部11は、ステップS22で生成された1フレームの合成超音波画像データと、ステップS24で生成されたずれ角度画像データと、を合成して、合成表示画面データを生成し、生成した合成表示画面データを出力表示部19に表示する(ステップS25)。ステップS25では、例えば、図10(a)に示す合成表示画面50を表示させる合成表示画面データが生成される。合成表示画面50は、ステップS22で生成された最大3色の針画像を含む合成超音波画像データの合成超音波画像33と、ステップS24で生成されたずれ角度画像データのずれ角度画像60と、を有する。
【0104】
表示されたずれ角度画像60を参照した操作者は、図10(b)に示すように、穿刺針3を固定したまま、ずれ角度θを0°にするように、超音波探触子2を上方向から見て回転矢印の方向に回転してずらすことができる。ただし、表示された角度画像60を参照した操作者は、超音波探触子2を上方向から見て固定したまま、ずれ角度θを0°にするように、穿刺針3を刺し直すこともできる。
【0105】
図7に戻り、ステップS24の実行後、制御部11は、ステップS23で算出した基準線に対する穿刺針3のずれ角度θが、予め設定された平行法又は交差法の閾値角度θα未満であるか否かを判別する(ステップS26)。閾値角度θαは、穿刺針3のずれ角度θが、警告が必要なほど大きいか否かを判別するための閾値の角度であり、平行法、交差法で別々に用意されているものとする。
【0106】
図11に示すように、平行法において、超音波探触子2を上方向から見た場合に、穿刺針3に対応するずれ角度θが、閾値角度θα未満であるか否かが判別される。閾値角度θαは、例えば、制御部11のHDDなどの不揮発性メモリーに記憶され、読み出されて使用されるものとする。不揮発性メモリーに記憶された閾値角度θαは、操作入力部18を介する操作者の入力に応じて適宜変更される構成としてもよい。
【0107】
ずれ角度θが閾値角度θα以上である場合(ステップS26;YES)、制御部11は、穿刺針3のずれ角度θが閾値角度θα以上である旨を警告するアラーム情報を生成して出力表示部19に表示する(ステップS27)。ステップS27の実行後、又はずれ角度θが閾値角度θα未満である場合(ステップS26;YES)、制御部11は、操作入力部18を介する操作者からの穿刺針画像表示処理の終了指示の入力有無により、穿刺針画像表示処理を終了するか否かを判別する(ステップS28)。終了しない場合(ステップS28;NO)、ステップS11に移行される。終了する場合(ステップS28;YES)、穿刺針画像表示処理が終了する。
【0108】
以上、本実施の形態によれば、超音波診断装置Uは、短軸方向に複数の領域(振動子VA,VB,VC)に配列され各領域で長軸方向に配列された複数の振動子を有し、当該短軸方向の複数の領域でそれぞれ独立して超音波の送受信が可能な超音波探触子2に、各領域の駆動信号を送信する送信駆動部12と、超音波探触子2から各領域の受信信号を受信する受信処理部と、を備える。また、超音波診断装置Uは、受信された各領域の受信信号から超音波画像データを生成する画像生成部15と、生成された各領域の超音波画像データから被検体に刺入された穿刺針の画像を抽出する画像処理部16と、抽出された各領域の穿刺針の画像の境界位置情報を用いて、超音波探触子2に対する穿刺針3のずれ角度θを算出する制御部11と、を備える。
【0109】
このため、超音波探触子2に対する穿刺針のずれ角度を定量的に、容易、低コストかつ精度よく算出できる。
【0110】
また、制御部11は、算出された穿刺針3のずれ角度θを示すずれ角度画像データを出力表示部19に表示する。このため、操作者が、ずれ角度画像データにより、穿刺針3のずれ角度θを目視により確認でき、超音波探触子2を移動して超音波探触子2の向きを穿刺針3に合わせることができ、又は穿刺針3を刺し直して穿刺針3の向きを超音波探触子2に合わせることができる。
【0111】
また、制御部11は、算出された穿刺針3のずれ角度θが所定の閾値角度θα以上であるか否かを判別し、閾値角度θα以上である場合に、穿刺針3のずれ角度θが閾値角度θα以上である旨の警告情報を出力表示部19に出力させる。このため、穿刺針3のずれ角度θが閾値角度θα以上であり大きい場合に、その旨を操作者に警告でき、対処させることができる。
【0112】
また、制御部11は、超音波探触子2を上方向から見た超音波探触子2の長軸方向(走査平面)に対する穿刺針3のずれ角度θを算出する。このため、平行法において、操作者が穿刺針3のずれ角度θを容易に把握できる。
【0113】
また、制御部11は、超音波探触子2を上方向から見た超音波探触子2の短軸方向(走査平面に直交する面)に対する前記穿刺針のずれ角度を算出する。このため、交差法において、操作者が穿刺針3のずれ角度θを容易に把握できる。
【0114】
また、制御部11は、抽出された各領域の穿刺針3の画像の1つの境界位置情報と、穿刺針3の刺入基準位置情報(超音波探触子2の長軸端の短軸方向の中心部C1)とを用いて、平行法により刺入された穿刺針3のずれ角度θを算出する。このため、平行法における穿刺針3のずれ角度θを容易かつ精度よく算出できる。
【0115】
また、制御部11は、抽出された各領域の穿刺針3の画像の複数の境界位置情報を用いて、交差法により刺入された穿刺針のずれ角度を算出する。このため、交差法における穿刺針3のずれ角度θを容易かつ精度よく算出できる。
【0116】
また、画像処理部16は、抽出された各領域の穿刺針3の画像の表現としての表示色を当該領域ごとに異にし、表示色が異にされた針部分画像を含む各領域の超音波画像データを合成して合成超音波画像データを生成する。制御部11は、生成された合成超音波画像データを出力表示部19に表示する。このため、操作者は、穿刺針3の画像を領域ごとに目視により識別でき、穿刺針3の短軸方向の位置を容易に判別できる。
【0117】
(変形例)
図12を参照して、上記実施の形態の変形例を説明する。図12(a)は、穿刺針3のずれ角度θのヒストグラムである。図12(b)は、ずれ角度の履歴情報画像70を示す図である。
【0118】
本変形例では、装置構成として、上記実施の形態と同様に、超音波診断装置Uを用いる。ただし、制御部11のHDDなどの不揮発性メモリーには、上記実施の形態の穿刺針画像表示プログラムに代えて、本変形例の穿刺針画像表示プログラムが記憶されているものとする。
【0119】
つぎに、超音波診断装置Uの動作を説明する。制御部11は、上記実施の形態と同様に、不揮発性メモリーに記憶された本変形例の穿刺針画像表示プログラムに従い、本変形例の穿刺針画像表示処理を実行する。本変形例の穿刺針画像表示処理は、上記実施の形態の穿刺針画像表示処理とほぼ同様の処理であり、異なる部分を主として説明する。
【0120】
本変形例の穿刺針画像表示処理の実行開始後、まず、制御部11は、操作入力部18を介して操作者から操作者の識別情報の入力を受け付ける。そして、ステップS10~S23が実行される。ステップS23の実行後、例えば、穿刺針画像表示処理の1回の実行中における初回の穿刺針3のずれ角度θの算出時のみに、制御部11は、穿刺法と穿刺針3のずれ角度θとを、最初に入力された識別情報に対応付けて制御部11の不揮発性メモリーに、穿刺針3のずれ角度の履歴情報として記憶する。そして、ステップS24~S28が実行される。本変形例の穿刺針画像表示処理が実行される回数が多いほど、操作者別の穿刺針3のずれ角度の履歴情報が制御部11の不揮発性メモリーにより多く記憶される。
【0121】
そして、制御部11は、操作入力部18を介して操作者からずれ角度の履歴情報の表示対象の操作者の識別情報及びずれ角度の履歴情報表示指示が入力されたことをトリガーとして、入力された操作者の識別情報に対応するずれ角度の履歴情報を制御部11の不揮発性メモリーから読み出し、読み出したずれ角度の履歴情報の表示情報を生成して出力表示部19に表示する。
【0122】
ずれ角度の履歴情報の表示情報は、例えば、図12(a)に示すように、横軸に穿刺針3のずれ角度θをとり、縦軸に頻度をとったヒストグラムとすることができる。また、ヒストグラムではなく、穿刺針3のずれ角度θ毎の頻度の数値を、ずれ角度の履歴情報の表示情報として表示してもよい。
【0123】
また、ずれ角度の履歴情報の表示情報は、例えば、図12(b)に示すように、ずれ角度の履歴情報画像70としてもよい。ずれ角度の履歴情報画像70は、平行法におけるずれ角度の履歴情報画像であり、超音波探触子画像71と、穿刺針画像72と、を含む。超音波探触子画像71は、超音波探触子2を上方向(ケーブル5側)から見た概略平面図である。穿刺針画像72は、超音波探触子画像71を上方向から見た穿刺針3の蓄積されたずれ角度θに対応する刺入方向を示す複数の矢印線画像である。穿刺針画像72の刺入位置は、超音波探触子画像71の長軸端の短軸方向の中心部としている。
【0124】
以上、本変形例によれば、制御部11は、算出された穿刺針3のずれ角度θの履歴情報を制御部11の不揮発性メモリーに記憶する。制御部11は、記憶された穿刺針のずれ角度の履歴情報をヒストグラム、履歴情報画像70などとして出力表示部19に表示する。このため、操作者は、穿刺針3のずれ角度の履歴情報を目視により確認でき、穿刺針の刺入の癖及び傾向を認識でき、穿刺針3の刺入の技能を向上できる。
【0125】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波診断装置及び穿刺針のずれ角度算出方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0126】
例えば、上記実施の形態では、超音波診断装置Uが、超音波画像データとしてBモード画像データを生成・表示する構成としたが、これに限定されるものではない。超音波診断装置Uが、超音波画像データとして他のモードの断層画像データを生成・表示する構成としてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では、短軸方向に3列の長軸方向の複数の振動子が配列された超音波探触子2を説明したが、これに限定されるものではない。短軸方向に5列、7列…など、短軸方向の分割数(振動子数)をもっと多くしたり、複数の振動子を同時に使用するなどを行ない、排他的な領域の数を増やすことも考えられる。
【0128】
また、上記実施の形態及び変形例では、短軸方向の独立した各振動子で画像化した認識対象物としての穿刺針3の各部分画像の表現としての表示色を互いに異にする構成としたが、これに限定されるものではない。短軸方向の独立した各振動子で画像化した穿刺針3の各部分画像の表現として、彩度、輝度、点滅など、他の表現を互いに異にする構成としてもよい。
【0129】
また、以上の実施の形態における超音波診断装置Uを構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0130】
U 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
11 制御部
12 送信駆動部
13 受信処理部
14 送受信切替部
15 画像生成部
16 画像処理部
161 記憶部
162 穿刺針同定部
18 操作入力部
19 出力表示部
2 超音波探触子
210,VA,VB,VC,V1a… 振動子
220 音響レンズ
221A,221B,221C レンズ部
230 スイッチング素子
SWA,SWB,SWC スイッチ
24 切替設定部
3 穿刺針
5 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12