(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両用ルーフメンバの構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B62D25/06 A
(21)【出願番号】P 2018078412
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】樫山 武士
(72)【発明者】
【氏名】小串 俊明
(72)【発明者】
【氏名】岸田 章
(72)【発明者】
【氏名】岩本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】村尾 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】奥原 久生
(72)【発明者】
【氏名】美馬 俊之
(72)【発明者】
【氏名】東山 恭大
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-045032(JP,A)
【文献】特開2016-141289(JP,A)
【文献】特開2005-145168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ルーフパネルの下面側に配置され、車幅方向に延びている車両用ルーフメンバの構造において、
前記ルーフメンバは、高張力鋼板により形成されており、
車幅方向に延び、車両上方を臨む底面部と、
前記底面部の車両上方に配置される共に、前記底面部の車両前後方向の前方側及び後方側の少なくとも一方に配置され、車幅方向に延び、車両上方を臨む上面部と、
前記上面部と前記底面部の車両上下方向間に配置され、車幅方向に延び、車両上面を臨む中面部と、
前記上面部と前記中面部との間を繋いでいる第1の稜線部と、
前記中面部と前記底面部との間を繋いでいる第2の稜線部と、
前記第1の稜線部に対して車幅方向にずれて配置され、前記上面部と前記底面部との間を繋いでいる第3の稜線部と、
を有しており、
前記底面部は、車両上方に突出する凸部を有し、該凸部の前端または後端には、前記第3の稜線部が配置されており、
前記第1の稜線部の車幅方向側部と前記第2の稜線部の車幅方向側部は、前記第3の稜線部に連続していることを特徴とする車両用ルーフメンバの構造。
【請求項2】
車両用ルーフパネルの下面側に配置され、車幅方向に延びている車両用ルーフメンバの構造において、
前記ルーフメンバは、高張力鋼板により形成されており、
車幅方向に延び、車両上方を臨む底面部と、
前記底面部の車両上方に配置される共に、前記底面部の車両前後方向の前方側及び後方側の少なくとも一方に配置され、車幅方向に延び、車両上方を臨む上面部と、
前記上面部と前記底面部の車両上下方向間に配置され、車幅方向に延び、車両上面を臨む中面部と、
前記上面部と前記中面部との間を繋いでいる第1の稜線部と、
前記中面部と前記底面部との間を繋いでいる第2の稜線部と、
前記第1の稜線部に対して車幅方向にずれて配置され、前記上面部と前記底面部との間を繋いでいる第3の稜線部と、
を有しており、
前記第1の稜線部の車幅方向側部と前記第2の稜線部の車幅方向側部は、前記第3の稜線部に連続しており、
前記第2の稜線部の車幅方向側部が、前記第3の稜線部の車幅方向側部に接続される接続部を有し、
前記中面部のうち、前記接続部に近い領域の車両前後方向の幅は、前記接続部から遠い領域の車両前後方向の幅よりも広いことを特徴とす
る車両用ルーフメンバの構造。
【請求項3】
車両用ルーフパネルの下面側に配置され、車幅方向に延びている車両用ルーフメンバの構造において、
前記ルーフメンバは、高張力鋼板により形成されており、
車幅方向に延び、車両上方を臨む底面部と、
前記底面部の車両上方に配置される共に、前記底面部の車両前後方向の前方側及び後方側の少なくとも一方に配置され、車幅方向に延び、車両上方を臨む上面部と、
前記上面部と前記底面部の車両上下方向間に配置され、車幅方向に延び、車両上面を臨む中面部と、
前記上面部と前記中面部との間を繋いでいる第1の稜線部と、
前記中面部と前記底面部との間を繋いでいる第2の稜線部と、
前記第1の稜線部に対して車幅方向にずれて配置され、前記上面部と前記底面部との間を繋いでいる第3の稜線部と、
を有しており、
前記第1の稜線部の車幅方向側部と前記第2の稜線部の車幅方向側部は、前記第3の稜線部に連続しており、
前記第1の稜線部は、前記中面部から前記上面部に向かって凸となる第1の湾曲形状部を有し、前記第2の稜線部は、前記中面部から前記底面部に向かって凸となる第2の湾曲形状部を有しており、
前記第1の湾曲形状部と前記第2の湾曲形状部が同じ形状であることを特徴とす
る車両用ルーフメンバの構造。
【請求項4】
前記上面部は、前記底面部の車両前後方向の前方側及び後方側の両側に設けられ、
両側の前記上面部は、前記ルーフメンバの車両前後方向の中心を通る車幅方向線に対して、線対称に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両用ルーフメンバの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルーフメンバの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ルーフパネルの下方には、例えば特許文献1に開示されているように、サイドルーフレールを架け渡すルーフボウが設けられている。ルーフボウは、車両前後方向に間隔を空けて複数配置され、ルーフパネルを補強している。
【0003】
特許文献1に開示されているルーフボウは、車幅方向の中央部と同じ幅(車両前後方向の幅)で、車幅方向に延びている。ルーフボウは、下方に凸のハット形状の横断面を有し、少なくとも一方のフランジ部には、接着剤を塗布するための凹部が設けられている。当該凹部は、長手方向に沿って延びている細長い形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、車種によっては、フランジ部にワイヤーハーネス用クリップ等の部品を取り付けるための取付孔を設ける場合がある。このためには、フランジ部の短手方向(車両前後方向)の幅を大きくする必要がある。その結果、ルーフボウの重量は増加する。
【0006】
一方で、ルーフボウの張り剛性を保つために、ハット形状の底部は、一定の幅が必要となる。そのため、ルーフボウの短手方向の幅を変えずに、フランジ部の短手方向の幅を広くすると、必然的に凹部の幅は狭くなる。これに伴い、接着剤の塗布量を少なくすると、ルーフパネルとルーフボウの接着強度が低下し、要求される接着強度が得られなくなる可能性がある。
【0007】
仮に、接着剤の塗布量を、凹部の幅を小さくしない場合の塗布量と同じにしても、凹部の幅が短いため接着材が側面部に垂れてしまい、塗布した接着剤の一部は接着に寄与しない。その結果、ルーフパネルとルーフボウの接着強度が低下する。
【0008】
ところで、近年、車体を構成する部材に、引張り強さが980MPa以上のいわゆる超高張力鋼板が用いられてきている。超高張力鋼板は、軟鋼板と比較して降伏応力が高いため、板厚を薄くして重量増加を抑えながら衝突安全性を向上することができる。
【0009】
しかし、その一方で、超高張力鋼板は、プレス成形性が悪いため、例えば、特許文献1に開示されている細長い凹部のような形状を形成することが困難になる場合がある。また、細かい凹みを多数形成すると、超高張力鋼板では、外力による折れを誘発してしまう可能性もある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両用ルーフパネルの下面側に配置されるルーフメンバにおいて、高張力鋼板で容易に成形可能で、且つ接着強度を保持することが可能なルーフメンバの構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用ルーフメンバの構造は、車両用ルーフパネルの下面側に配置され、車幅方向に延びている。当該車両用ルーフメンバの構造において、前記ルーフメンバは、高張力鋼板により形成されており、車幅方向に延び、車両上方を臨む底面部と、前記底面部の車両上方に配置される共に、前記底面部の車両前後方向の前方側及び後方側の少なくとも一方に配置され、車幅方向に延び、車両上方を臨む上面部と、前記上面部と前記底面部の車両上下方向間に配置され、車幅方向に延び、車両上面を臨む中面部と、前記上面部と前記中面部との間を繋いでいる第1の稜線部と、前記中面部と前記底面部との間を繋いでいる第2の稜線部と、前記第1の稜線部に対して車幅方向にずれて配置され、前記上面部と前記底面部との間を繋いでいる第3の稜線部と、を有しており、前記底面部は、車両上方に突出する凸部を有し、該凸部の前端または後端には、前記第3の稜線部が配置されており、前記第1の稜線部の車幅方向側部と前記第2の稜線部の車幅方向側部は、前記第3の稜線部に連続している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用ルーフパネルの下面側に配置されるルーフメンバにおいて、高張力鋼板で容易に成形可能で、且つ接着強度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る車両用ルーフメンバの構造を有する車両上部を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1のセンターメンバを単体で示す斜視図である。
【
図6】
図2のセンターメンバを一方の車幅方向から見た斜視図である。
【
図7】
図2のセンターメンバの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用ルーフメンバの構造の実施形態について、図面(
図1~
図7)を参照して説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車体前後方向における前方を示す。また、実施形態の説明における「前部(端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。
【0015】
本実施形態の車両用ルーフメンバの構造は、
図1に示すように、車体の上部に配置されたルーフパネル1の下面側に配置される複数のルーフメンバ10aを有している。複数のルーフメンバ10aは、車両前後方向に間隔を空けて配置され、各ルーフメンバ10aは、車幅方向に延びている部材である。
【0016】
また、車体上部のルーフ部には、ルーフレール部2が設けられている。ルーフレール部2は、ルーフ部の車幅方向両側に配置され、車両前後方向に延びている。複数のルーフメンバ10aのそれぞれは、車幅方向両側のルーフレール部2を架け渡している。本実施形態では、複数のルーフメンバ10aのうち、車両前後方向の中間部に配置されたセンターメンバ10について説明する。
【0017】
ルーフパネル1は、車幅方向両側のルーフレール部2の間に配置された板状の部材である。センターメンバ10を含む複数のルーフメンバ10aは、ルーフパネル1の下面に接合され、ルーフパネル1を支持し、且つルーフパネルの面剛性を保持している。
【0018】
以下、センターメンバ10について説明する。センターメンバ10は、超高張力鋼板で形成されている。高張力鋼板は、一般構造用鋼材よりも引張強度を向上させた鋼材であり、例えば490MPa以上の引張強度を有している。この例のセンターメンバ10は、例えば980MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板によって形成されている。
【0019】
センターメンバ10は、
図2に示すように、底面部15と、前側上面部11Aと、前側中面部13Aと、後側上面部11Bと、後側中面部13Bとを有している。また、センターメンバ10は、各面部を繋ぐ複数の稜線部を有している。複数の稜線部は、第1の前側稜線部21Aと、第2の前側稜線部22Aと、第3の前側稜線部23Aと、第1の後側稜線部21Bと、第2の後側稜線部22Bと、第3の後側稜線部23Bとを有している。
【0020】
底面部15は、車幅方向に延びる板状で、車両上方を臨む。前側上面部11Aは、車幅方向に延び、車両上方を臨む。当該前側上面部11Aは、底面部15の車両上方に配置される共に、底面部15の車両前後方向の前方側に配置されている。前側中面部13Aは、車幅方向に延び、車両上方を臨む。当該前側中面部13Aは、前側上面部11Aと底面部15の車両上下方向間に配置されている。また、前側上面部11Aの前端には、衝突時に乗員を保護するための前側縦壁17Aが設けられている。該前側縦壁17Aは、前側上面部11Aの前端から車両下方に張り出し、車幅方向に延びている。
【0021】
第1の前側稜線部21Aは、
図2~
図4に示すように、前側上面部11Aと前側中面部13Aとの間を繋いでおり、前側中面部13Aの前端から上方に延びて前側上面部11Aの後端に繋がっている。第1の前側稜線部21Aは、車両前方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0022】
第2の前側稜線部22Aは、前側中面部13Aと底面部15との間を繋いでおり、底面部15の前端から上方に延びて、前側中面部13Aの後端に繋がっている。第2の前側稜線部22Aは、車両前方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0023】
第3の前側稜線部23Aは、
図3及び
図5に示すように、第1の前側稜線部21Aに対して車幅方向にずれて配置され、前側上面部11Aと底面部15との間を繋いている。第3の前側稜線部23Aは、底面部15の前端から上方に延びて、前側上面部11Aの後端に繋がっている。当該第3の前側稜線部23Aは、車両前方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0024】
後側上面部11Bは、車幅方向に延び、車両上方を臨む。当該後側上面部11Bは、底面部15の車両上方に配置される共に、底面部15の車両後方側に配置されている。後側上面部11Bの後端には、車両下方に張り出し、車幅方向に延びる後側縦壁17Bが設けられている。後側中面部13Bは、車幅方向に延び、車両上方を臨む。当該後側中面部13Bは、後側上面部11Bと底面部15の車両上下方向間に配置されている。
【0025】
第1の後側稜線部21Bは、後側上面部11Bと後側中面部13Bとの間を繋いでおり、後側中面部13Bの後端から上方に延びて後側上面部11Bの前端に繋がっている。第1の後側稜線部21Bは、車両後方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0026】
第2の後側稜線部22Bは、後側中面部13Bと底面部15との間を繋いでおり、底面部15の後端から上方に延びて、後側中面部13Bの前端に繋がっている。第2の後側稜線部22Bは、車両後方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0027】
第3の後側稜線部23Bは、第1の後側稜線部21Bに対して車幅方向にずれて配置され、後側上面部11Bと底面部15との間を繋いている。第3の後側稜線部23Bは、底面部15の後端から上方に延びて、後側上面部11Bの前端に繋がっている。当該第3の後側稜線部23Bは、車両後方に向かうに従い上方に傾斜している。
【0028】
底面部15は、
図2及び
図3に示すように、車幅方向に延びる略長方形状であり、凸部15aと、該凸部15aよりも下方に凹む凹部15bとを有しており、凹部15bと凸部15aは、車幅方向に交互に配置されている。凸部15aは車幅方向に延びる略長方形状で、当該凸部15aには、車幅方向に延びる長孔31が形成されている。当該長孔31は、例えば軽量化を目的とするもの、又は電着塗装時に塗装液を排出するための孔である。凹部15bには、例えばルーフライニング(図示せず)等の樹脂部材を取り付けるための取付孔33が設けられている。
【0029】
図3に示す部分では、底面部15の凸部15aの前端には、第3の前側稜線部23Aが配置され、凸部15aの後端には、第3の後側稜線部23Bが配置されている。また、底面部15の凹部15bの前端には、第2の前側稜線部22Aが配置され、凹部15bの後端には、第2の後側稜線部22Bが配置されている。
【0030】
第2の前側稜線部22A及び第3の前側稜線部23Aは、底面部15の前端から上方に傾斜して延びる前壁となる。同様に、第2の後側稜線部22B及び第3の後側稜線部23Bは、底面部15の後端から上方に傾斜して延びる後壁となる。
【0031】
続いて、前側上面部11Aの形状について説明する。
図3及び
図6に示すように、前側上面部11Aは、車両後方に突出して幅広となる複数の幅広部11A1を有している。当該幅広部11A1は、車幅方向に間隔を空けて配置される。すなわち、幅広部11A1の車幅方向両側には、幅広部11A1よりも車両前後方向の幅が狭い幅狭部11A2が設けられている。幅狭部11A2は、車幅方向に隣り合う幅広部11A1の間に配置されており、車幅方向に直線的に延びている。幅狭部11A2と幅広部11A1は、滑らかな湾曲形状で接続されている。
【0032】
また、前側上面部11Aの幅広部11A1には、ワイヤーハーネス用クリップを挿通させるための取付孔35が形成されている。この例の取付孔35は、
図2に示すように、図示しない車両室内から前方を見たときに右側に配置される2つの幅広部11A1に1つずつ形成されている。なお、
図6では、取付孔35の図示は省略している。
【0033】
前側上面部11Aの幅広部11A1の後端には、
図3に示すように、第3の前側稜線部23Aが配置されている。この例では、前側上面部11Aの幅広部11A1の後端は、第3の前側稜線部23Aを介して、底面部15の凸部15aの前端に繋がっている。
【0034】
前側上面部11Aの幅狭部11A2の後端は、第1の前側稜線部21Aを介して、前側中面部13Aの前端に繋がっている。同様に、前側上面部11Aの幅狭部11A2と幅広部11A1とを接続する部分の後端も、第1の前側稜線部21Aを介して、前側中面部13Aの前端に繋がっている。前側中面部13Aの車幅方向側部は、前側上面部11Aの幅広部11A1と幅狭部11A2とを接続する湾曲形状に対応する形状を有している。また、第1の前側稜線部21Aの車幅方向側部も、当該湾曲形状に対応するように形成され、第3の前側稜線部23Aに連続している。
【0035】
前側中面部13Aの前端は、前側上面部11Aの幅狭部11A2の後端の形状に対応して、車幅方向に直線的に延びている。前側中面部13Aの後端は、車幅方向に直線的に延びており、第2の前側稜線部22Aを介して、底面部15の前端に接続されている。
【0036】
第2の前側稜線部22Aは、車幅方向に沿って直線的に延び、第3の前側稜線部23Aに連続している。すなわち、第1の前側稜線部21Aの車幅方向側部と、第2の前側稜線部22Aの車幅方向側部は、第3の前側稜線部23Aに連続している。この例では、第1の前側稜線部21Aと、第3の前側稜線部23Aは、連続する1つの斜壁面を構成し、当該斜壁面には、第2の前側稜線部22Aも連続して接続されている。
【0037】
第1の後側稜線部21Bは、第1の前側稜線部21Aと同様に構成され、第1の前側稜線部21Aに対向している。また、第2の後側稜線部22Bは、第2の前側稜線部22Aと同様に構成され、第2の前側稜線部22Aに対向している。さらに、第3の後側稜線部23Bは、第3の前側稜線部23Aと同様に構成され、第3の前側稜線部23Aに対向している。
【0038】
さらに、第3の後側稜線部23Bは、第3の前側稜線部23Aと同様に、第1の後側稜線部21Bに対して車幅方向にずれて配置され、後側上面部11Bと底面部15との間を繋いでいる。第1の後側稜線部21Bの車幅方向側部と、第2の後側稜線部22Bの車幅方向側部は、第3の後側稜線部23Bに連続している。前側と同様に、第1の後側稜線部21Bと、第3の後側稜線部23Bは、連続する1つの斜壁面を構成し、当該斜壁面には、第2の後側稜線部22Bも連続して接続されている。
【0039】
前側上面部11Aの幅広部11A1は、車両前後方向に所定の幅を有しているため、前側上面部11Aに部品を取付けるための取付孔35を設けることができる。本実施形態では、前側上面部11Aの幅広部11A1に取付孔35を設けているが、後側上面部11Bの幅広部にも取付孔35を設けることができる。
【0040】
また、前側中面部13A及び後側中面部13Bが車両前後方向に所定の幅を有しているために、ルーフパネル1の下面と、前側上面部11A及び後側上面部11Bを接着剤で接着するとき、前側中面部13A及び後側中面部13Bに安定して接着剤を塗付することが可能となり、その結果、接着強度が向上する。
【0041】
さらに、細長い凹部のようなプレス成形が困難な形状を有しないため、高張力鋼板、さらには超高張力鋼板でもプレス形成を容易に行うことができ、且つ外力による折れを抑制可能で、衝突時の変形を抑制する効果が向上する。
【0042】
また、
図7に示すように、前側中面部13Aに、車両前後方向の幅が広い部分と、幅が狭い部分を設けてもよい。センターメンバ10は、第1の前側稜線部21Aの車幅方向側部と第2の前側稜線部22Aの車幅方向側部は、第3の前側稜線部23Aの車幅方向側部に接続される接続部29Aを有している。同様に、第1の後側稜線部21Bの車幅方向側部と第2の後側稜線部22Bの車幅方向側部は、第3の後側稜線部23Bの車幅方向側部に接続される接続部29Bを有している。
【0043】
図7に示す例では、後側中面部13Bのうち、接続部29Bに近い領域の車両前後方向の幅X1は、接続部29Bから遠い領域の車両前後方向の幅X2よりも広い。前側中面部13Aについての説明は省略しているが、前側中面部13Aは、後側中面部13Bと同様に構成されている。
【0044】
幅広となる部分(幅X1の部分)は、幅が狭い部分(幅X2の部分)に比べて、第1の前側稜線部21Aから第2の前側稜線部22Aに向かって膨出している。幅X1が位置する第2の前側稜線部22Aは、車両前方に凸の湾曲形状を有している。幅X2が位置する第2の前側稜線部22Aは、直線的に延びている。なお、
図7の例では、幅X1の部分は、幅X2の部分の車幅方向両側に配置される。すなわち、1つの中面部には、幅が広い部分が2か所設けられている。また、本実施形態では、後側中面部13Bの形状について説明しているが、前側中面部13Aについても同様に構成されている。
【0045】
後側中面部13Bの車両前後方向の幅が狭い部分(幅X2が位置する部分)を設けることにより、センターメンバ10の全体の車両前後方向の幅を広くすることなく、当該狭い部分に対応する底面部15の車両前後方向の幅を広くすることができる。その結果、ルーフメンバ10aの車両前後方向の幅を所定値よりも広くできない場合であっても、例えば底面部15に凹部15bを設け、該凹部15bに取付孔33を設けて、ルーフライニング等の部品を底面部15の裏側(下面側)に取り付けることができる。さらに、この例では、底面部15の凹部15bのレイアウトが容易になる。
【0046】
幅が狭い部分(幅X2が位置する部分)への接着剤の配置は、接着剤の垂れが発生する可能性があるため生産上現実的でない。本実施形態では、接着剤を後側中面部13Bの前後方向の幅が広い部分(幅X1が位置する部分)に接着剤を塗布している。これにより、ルーフパネル1がセンターメンバ10に向かって押し下げられた際に、堅壁となる第1の後側稜線部21Bがあるため、第1の後側稜線部21Bに向かう方向に接着剤が押し潰されることを防止できる。そのため、外力により接着剤が押し潰されても、接着剤が完全に押し潰されることを抑制できる。
【0047】
その結果、接着剤がセンターメンバ10から剥離することを抑制でき、センターメンバ10がルーフパネル1に取付けられた状態における接着強度をより有効に発揮することができる。さらに、上記のように接着強度を有効に発揮できる位置への、接着剤を塗布する位置決めが容易である。
【0048】
また、
図7に示す例では、第1の後側稜線部21Bは、後側中面部13Bから後側上面部11Bに向かって(車両後方に向かって)凸となる第1の湾曲形状部R1を有し、第2の後側稜線部22Bは、後側中面部13Bから底面部15に向かって(車両前方に向かって)凸となる第2の湾曲形状部R2を有している。この例では、第1の湾曲形状部R1と、第2の湾曲形状部R2は、同じ形状である。例えば、第1の湾曲形状部R1と、第2の湾曲形状部R2は、同じ曲率半径を有している。このように構成することにより、センターメンバ10の製造工程のプレス成形時において、捩じりを抑制することができる。超高張力鋼板を用いる場合には、第1の湾曲形状部R1及び第2の湾曲形状部R2の曲率半径は、略30mm以上であることが好ましい。高張力鋼板であれば、当該曲率半径は略20mm以上であればよい。
【0049】
また、本実施形態では、前側上面部11A及び後側上面部11Bは、ルーフメンバ10aの車両前後方向の中心を通る車幅方向線(図示せず)に対して、線対称に配置されている。当該車幅方向線は、
図2の例及び
図7の例においては、底面部15の車両前後方向の中心を通る線である。本実施形態では、前側中面部13Aと後側中面部13Bも当該車幅方向線に対して線対称である。また、第1~第3の前側稜線部21A~23Aと第1~第3の後側稜線部21B~23Bも線対称に配置されている。
【0050】
例えば、超高張力鋼板又は高張力鋼板を使用する場合においては、底面部15の前方側又は後方側に、例えばワイヤーハーネス用クリップの取付孔35を有する上面部11A,11Bを設けると、成形時にスプリングバックによる捻じる可能性がある。これに対して、センターメンバ10の車両前後方向の中心を通る車幅方向線(軸線)に対して前後対称となるように、前側上面部11A及び後側上面部11Bを設けることにより、スプリングバックにより捩れを抑制することができる。なお、取付孔35は、ルーフライニングやアンテナ等を取り付けるために用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、センターメンバ10を超高張力鋼板で形成している。これにより、センターメンバ10の車両前後方向の幅を、略80mm程度にすることができる。高張力鋼板の場合には、250mm程度にすればよい。
【0052】
以上の説明から分かるように、本実施形態の車体後部構造により、ルーフパネル1の下面側に配置されるセンターメンバ10を含むルーフメンバ10aにおいて、超高張力鋼板で容易に成形可能で、且つ接着強度を保持することが可能となる。
【0053】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0054】
本実施形態では、センターメンバ10について説明しているが、これに限らない。センターメンバ10よりも車両前方に配置されたルーフメンバ10aや、車両後方に配置されたルーフメンバ10aに、本実施形態のセンターメンバ10の構造を適用してもよい。また、本実施形態では、底面部15の前後に、上面部11A,11B及び中面部13A、13Bを設けているが、これに限らない。例えば取付孔35等が不要の場合、前側または後側に上面部及び中面部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ルーフパネル
2 ルーフレール部
10 センターメンバ
10a ルーフメンバ
11A 前側上面部
11B 後側上面部
13A 前側中面部
13B 後側中面部
15 底面部
15a 凸部
15b 凹部
17A 前側縦壁
17B 後側縦壁
21A 第1の前側稜線部
21B 第1の後側稜線部
22A 第2の前側稜線部
22B 第2の後側稜線部
23A 第3の前側稜線部
23B 第3の後側稜線部
29A 接続部
29B 接続部
31 長孔
33 取付孔
35 取付孔