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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】医用画像表示システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20220329BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220329BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220329BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G16H30/00
A61B6/00 360Z
A61B6/03 360T
A61B5/055 390
A61B5/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018118372
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019220036
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 央
【審査官】橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/063900(WO,A1)
【文献】特開2017-041774(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078297(WO,A1)
【文献】特開2014-102835(JP,A)
【文献】特開2014-039595(JP,A)
【文献】特開2010-117878(JP,A)
【文献】特開2016-33738(JP,A)
【文献】特開2008-59250(JP,A)
【文献】特開2012-194824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
A61B 6/00-6/14
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を表示部に表示させることが可能なクライアントと、
複数の画像のデータを記憶する画像記憶手段と、
画像の閲覧環境に関する環境情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した環境情報に基づいて、前記クライアントへの画像の転送に関する画像転送条件を決定する転送条件決定手段と、
前記クライアントに表示している画像及び前記転送条件決定手段が決定した画像転送条件に基づいて、前記画像記憶手段が記憶している前記複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を目的画像として選択する画像選択手段と、
前記画像選択手段が選択した前記目的画像を前記クライアントへ転送する画像転送手段と、を備えることを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項2】
前記環境情報には、ユーザー名、前記クライアントに関する情報、前記画像転送手段と前記クライアントとの間の通信速度、前記画像転送手段と前記クライアントとの接続形態、ネットワークの利用状況、表示部の画像の切り替え速度、ユーザーが所属する診療科、前記画像の撮影に用いられたモダリティー、一のファイルに含まれる画像の数、画像の色のうちの少なくともいずれかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示システム。
【請求項3】
前記転送条件決定手段は、複数の前記環境情報と複数の前記画像転送条件との対応関係を示すテーブルを参照し、前記情報取得手段が取得した環境情報に対応するものを前記画像転送条件として決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像表示システム。
【請求項4】
前記複数の画像は、被検者の所定部位を繰り返し撮影して得られる複数のフレームからなる動態画像であり、
前記目的画像は、前記表示部に表示しているフレームの直前又は直後に所定回数撮影して得られた所定枚数のフレームであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【請求項5】
前記複数の画像は、被検者を所定方向と直交するとともに所定間隔を空けて前記所定方向に並ぶ複数の平面で切断した各断面をそれぞれ撮影して得られる複数の断層画像であり、
前記目的画像は、前記表示部に表示している断層画像から所定方向又は所定方向と反対の方向に並ぶ所定数の断面を撮影して得られた所定枚数の断層画像であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【請求項6】
前記クライアントは、ゼロフットプリント端末であり、
前記画像転送手段は、前記画像選択手段が選択した前記目的画像のデータをレンダリングして配信用画像を生成する画像処理手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【請求項7】
前記クライアントは、前記表示部を複数の表示領域に分け、前記複数の表示領域のうち、一の表示領域に前記複数の画像を順次表示するとともに、他の表示領域に前記複数の画像と関連する複数の関連画像を順次表示することが可能であり、
前記画像記憶手段は、前記複数の画像に関連する複数の関連画像のデータを記憶しており、
前記画像転送手段は、前記複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を目的画像として選択するとともに、前記目的画像のそれぞれに対応する前記関連画像を目的関連画像として選択して前記クライアントへ転送することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【請求項8】
前記画像転送手段は、
前記画像を可逆形式又は非可逆形式で圧縮することが可能な画像圧縮手段を備え、
前記クライアントが前記クライアントに表示する画像の切り替え速度が所定速度以上であると判断した場合には、前記画像を非可逆形式で圧縮して前記クライアントへ転送し、
前記クライアントが前記クライアントに表示する画像の切り替え速度が所定速度未満であると判断した場合には、前記画像を、圧縮せずに又は可逆形式で圧縮して前記クライアントへ転送することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【請求項9】
前記画像転送手段は、所定条件が満たされている場合には、一のファイルに含まれるすべての画像を前記クライアントへ転送することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の医用画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)用いて撮影される断層画像や、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる放射線画像撮影装置を用いて撮影される動態画像等の医用画像は、サーバーで保存・管理され、必要に応じてクライアントでダウンロードして閲覧できるようになっているのが一般的である。
また、タブレット等の小型の端末をクライアントとして用い、それを医師に常時携帯させることにより、医師が医療施設の外において緊急の画像診断の依頼を受けることがあった場合に、その場で医用画像の読影を行うといった対応がとれるようになってきている。
【0003】
ところで、意識がない状態で救急搬送されてきた患者等を撮影対象とする場合には、念のため全身の断層画像を撮影することがある。また、肺等の特定部位を複数枚撮影する場合や、肺の動態を観察したい場合には、動態画像の撮影を比較的長時間継続して行うことになる。こうした場面で撮影される医用画像は膨大な枚数となるため、クライアントが接続されるネットワークの状況やユーザーの閲覧の仕方によっては、医用画像のダウンロードに時間を要し、快適な閲覧が困難になる場合がある。これは、回線の混雑が問題となる救急では特に起こりうる問題だが、クラウドでの医用画像参照環境を達成するための状況下でも考えられる。
そこで、例えば特許文献1に記載されたような、ネットワーク回線速度やユーザーの画像めくり速度といったパラメーターに基づいて、オリジナル画像の一部を差分画像に置き換え、転送する画像の容量を最適化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6279401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、アプリケーションのインストールが不要で、医用画像を保存せずにブラウザで閲覧することのできるゼロフットプリント技術や、負荷が高い画像処理をサーバーで施してから画像をクライアントへ配信するサーバーレンダリング技術等を用いることで、処理能力の低い安価な端末をクライアントとして用いても、時間や場所を選ばず安全に医用画像の読影を行うことができる環境が整いつつある。
【0006】
しかし、こうしたゼロフットプリント技術を採用したクライアントは、ブラウザソフトで利用可能なメモリー領域が少ないため、複数の医用画像を順次ダウンロードすると、初期にダウンロードされた医用画像が次々に破棄され、無駄になってしまうことがある。
また、サーバーレンダリング技術を採用した場合、ダウンロードした複数の医用画像を閲覧している途中で閲覧中の医用画像に対する画像処理をサーバーに要求すると、画像処理が施された処理済み医用画像が、閲覧中の医用画像と同じ枚数ダウンロードされ、元の医用画像と置き換えられることとなる。この場合、先にダウンロードしてあった医用画像のうちまだ閲覧していないものは無駄となってしまう。
【0007】
また、クライアントを医療施設の外で用いる場合には、キャリア通信により医用画像の配信を行うことになるが、キャリア通信では、一定期間における通信量が所定値に達すると、データの転送速度が著しく制限される場合がある。このような条件下で上述したような膨大な量の医用画像の配信を行えば、転送速度がたちまち制限されてしまうことになる。
一方、直ちに表示する医用画像のみを一枚ずつダウンロードするようにすれば、上述したような無駄なダウンロードの発生や通信の制限の心配を低減することができるものの、表示画像を切り替える速度(例えばフレーム/秒:fps)が非常に遅くなり、利便性を低下させてしまうことになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、複数の医用画像をダウンロードして順次表示することが可能なクライアントを備えた医用画像表示システムにおいて、表示画像の切り替え速度を下げることなく、閲覧されずに無駄となる医用画像のダウンロード量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る医用画像表示システムは、
複数の画像を表示部に表示させることが可能なクライアントと、
複数の画像のデータを記憶する画像記憶手段と、
画像の閲覧環境に関する環境情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した環境情報に基づいて、前記クライアントへの画像の転送に関する画像転送条件を決定する転送条件決定手段と、
前記クライアントに表示している画像及び前記転送条件決定手段が決定した画像転送条件に基づいて、前記画像記憶手段が記憶している前記複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を目的画像として選択する画像選択手段と、
前記画像選択手段が選択した前記目的画像を前記クライアントへ転送する画像転送手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示画像の切り替え速度を下げることなく、閲覧されずに無駄となる医用画像のダウンロード量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る医用画像表示システムの概略構成を表すブロック図である。
図2図1の医用画像表示システムを構成するサーバーの具体的構成を表すブロック図である。
図3図1の医用画像表示システムを構成するクライアントの具体的構成を表すブロック図である。
図4図2のサーバーの記憶部に記憶されている画像転送条件設定用データの一例である。
図5図3のクライアントが実行する初期画像要求処理の流れを表すフローチャートである。
図6図3のクライアントが実行する表示中画像要求処理の流れを表すフローチャートである。
図7】クライアントの表示画像と転送される目的画像の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、下記実施形態や図示例に限定されるものではない。
【0013】
〔画像表示ステム〕
まず、本実施形態における医用画像表示システム(以下システム100)の構成について説明する。図1は、システム100の概略構成を表すブロック図である。
【0014】
本実施形態のシステム100は、例えば図1に示したように、サーバー1と、クライアント2と、を備えて構成されている。
サーバー1とクライアント2とは、通信ネットワークNを介して互いに接続されている。
【0015】
サーバー1は、図示しないモダリティー(例えば、CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)、FPD(Flat Panel Detector)等)と、直接又は通信ネットワークNを介して接続され、モダリティーで生成された被検者の医用画像を、データの形でモダリティーから取得することが可能となっている。
なお、サーバー1は、単独で用いられるものであってもよいし、他のシステム(例えば医療用画像管理システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等)を構成するものであってもよい。
このサーバー1の詳細については後述する。
【0016】
クライアント2は、ユーザー(例えば医師等)が医用画像を閲覧するためのものである。
クライアント2は、通信ネットワークNを介してサーバー1と通信することが可能となっている。
また、本実施形態におけるクライアント2は、携帯電話回線を用いてサーバー1とデータ等のキャリア通信を行うことが可能となっている。このため、クライアント2は、医療施設内に限られず、例えば在宅療養中の患者宅の他、携帯電話を使用可能なあらゆる所での使用が可能となっている。
【0017】
なお、図1には、クライアント2が一つだけ接続されたシステム100を例示したが、複数のクライアント2がサーバー1と接続されたものであってもよい。
また、本実施形態においては、クライアント2が携帯電話回線を利用可能なものとしたが、この携帯電話回線の利用機能を備えないものとしてもよい。
このクライアント2の詳細についても後述する。
【0018】
〔サーバー〕
次に、サーバー1の詳細について説明する。図2は、サーバー1の具体的構成を表すブロック図である。
【0019】
サーバー1は、例えば図2に示したように、制御部11や通信部12、記憶部13等を備えて構成されており、各部11~13はバス14によって接続されている。
なお、サーバー1は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバーであってもよい。
また、サーバー1に、図示しない表示部や操作部を備えることで、サーバー1の近傍においても医用画像の表示や各種画像処理を行うことが可能な画像処理装置等を構成するようにしてもよい。
【0020】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やRAM等から構成され、サーバー1の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、通信部12を介して受信されるクライアント2からの各種信号に応じて、記憶部13に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0021】
通信部12は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等の通信ネットワークNを介して接続された外部機器(クライアント2等)との間でデータ等の送受信を行う。
また、本実施形態における通信部12は、携帯基地局との間で電波の送受信を行うための図示しないアンテナを備えている。
【0022】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリー等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
本実施形態においては、ウェブブラウザーに各種ウェブ画面を提供するウェブサーバーとしての機能を実現させるためのウェブサーバープログラムや、ウェブサーバー上で動作し、ウェブブラウザーを介してクライアント2のユーザーに医用画像を提供するためのウェブアプリケーションプログラム等が記憶されている。
【0023】
また、本実施形態の記憶部13は、画像転送条件データ領域に、画像転送条件設定用データを記憶している。
本実施形態における画像転送条件設定用データは、複数の環境情報と複数の画像転送条件との対応関係を示すテーブルの形となっている。
この「環境情報」には、ユーザー名、クライアント情報(例えばID番号等)、サーバー1とクライアント2との間の通信速度、サーバー1とクライアント2との接続形態(例えば、有線接続か無線接続か、キャリア接続かwi-fi接続か等)、表示部22の画像の切り替え速度、ユーザーが所属する診療科(救急か否か等)、画像の撮影に用いられたモダリティー、一のファイルに含まれる画像の数、画像の色(カラーかモノクロか等)のうちの少なくともいずれかが含まれる。
その他、更に送信元、送信先の機器の情報を参照してもよい。例えば、送信先の機器の機種スペック(CPU、画面解像度、メモリー)等により画像の転送後の画像表示のための処理も変わってくるからである。
【0024】
また、本実施形態における画像転送条件設定用データは、例えば図4に示したように、ユーザー名、接続形態、撮影に使用したモダリティー、クライアント2の情報、電波強度条件、画像の切り替え速度を環境情報としたものになっている。なお、テーブルに含める環境情報は適宜変更可能である。
また、本実施形態における「画像転送条件」は、画像のプレダウンロード数となっている。なお、データ量や画像の圧縮形式等を画像転送条件としてもよい。
ここで、「プレダウンロード」とは、クライアント2が現在表示している、又は直ちに表示する医用画像の後に切り替え表示されることとなる医用画像をダウンロードすることを指す。
【0025】
また、記憶部13は、本発明における画像記憶手段であり、画像データ領域に、医用画像の画像ファイルを記憶している。
この「画像ファイル」とは、一回の撮影で得られた複数の医用画像の集まりを指す。すなわち、記憶部13は、一のファイルに含まれる複数の画像のデータを記憶していてもよく、また複数の医用画像の集まりがまとめて関連づけられて記憶されていてもよい。
この「複数の画像」には、動態画像と複数の断層画像、その他複数枚撮影した放射線画像等が含まれる。
「動態画像」は、被検者の所定部位を繰り返し撮影して得られる複数のフレームからなる画像である。
「複数の断層画像」は、被検者を所定方向と直交するとともに所定間隔を空けて前記所定方向に並ぶ複数の平面で切断した各断面をそれぞれ撮影して得られるものである。
また、「放射線画像」は、被写体に対して複数回撮影して得られた画像からなる。
なお、これらの画像を組み合わせて送ることも可能である。
【0026】
また、本実施形態における記憶部13は、画像データ領域に、上記複数の画像に関連する複数の関連画像のデータを記憶している。
この「関連画像」とは、例えば、上記画像に所定の画像処理を施した処理済み医用画像、同一の被検者に対し撮影条件を変えて(例えば造影剤を投与する等して)上記画像の撮影と同様の撮影を行って得られた医用画像、同一の被検者に対し別の日に上記画像の撮影と同様の撮影を行って得られた医用画像等を指す。
【0027】
また、本実施形態における記憶部13は、画像データ領域に、画面構成情報を記憶している。
この「画面構成情報」には、表示領域の分割数や、表示領域と表示画像の対応関係等を示す情報を指す。
【0028】
なお、ここでは、一つの記憶部13の中に画像転送条件設定用データ領域と画像データ領域を設ける場合を例に説明したが、画像転送条件設定用データと画像データを二つの独立した記憶部にそれぞれ記憶するようにしてもよい。
【0029】
このように構成されたサーバー1は、制御部11と記憶部13に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理を実行することにより、以下のような機能を有する。
例えば、制御部11は、例えばクライアント2から後述する初期表示画像を要求する旨の画像要求信号を受信したこと等を契機として、記憶部13に記憶されている画像転送条件設定用データを、通信部12を介してクライアント2へ送信する機能を有している。
【0030】
また、制御部11は、クライアント2の表示部22に表示している画像及びクライアント2が決定した画像転送条件に基づいて、記憶部13が記憶している複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を目的画像として選択する機能を有している。
複数の画像が動態画像である場合、目的画像は、クライアント2の表示部22に表示しているフレームの直前と直後の少なくとも一方の期間に所定回数撮影して得られた所定枚数の未表示のフレームとなる。
一方、複数の画像が複数の断層画像である場合、目的画像は、クライアント2の表示部22に表示している断層画像から所定方向又は所定方向と反対の方向の少なくとも一方の方向に並ぶ所定数の断面を撮影して得られた所定枚数の未表示の断層画像となる。
なお、本実施形態においては、記憶部13に上述した関連画像が記憶されている場合、複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を目的画像として選択するとともに、目的画像のそれぞれに対応する(例えば通し番号が同じ、写っている動作の位相が同じ等)関連画像を目的関連画像として選択するようになっている。
制御部11は、このような機能を有することにより、本発明における画像選択手段画像転送手段をなす。
【0031】
また、本実施形態における制御部11は、選択した目的画像や目的関連画像のデータをレンダリングして配信用画像を生成する機能、いわゆるサーバーレンダリング機能を有している。
すなわち、本実施形態の制御部11は、本発明における画像処理手段をなす。
なお、クライアント2に処理性能の高い端末を用いている場合には、クライアント2でレンダリングを行って表示用画像を生成するようにしてもよい(画像処理手段としての機能をクライアント2に持たせてもよい)。
【0032】
また、制御部11は、選択した目的画像や目的関連画像を、通信部12を介してクライアント2へ転送する機能を有している。
本実施形態においては、サーバー1においてレンダリングを行うため、生成した配信用画像をクライアント2へ転送することとなる。
また、本実施形態においては、配信用画像とともに、画面構成情報を転送するようになっている。
制御部11は、このような機能を有することにより、本発明における画像転送手段をなす。
【0033】
また、本実施形態における制御部11は、クライアント2からの画像要求信号に基づいて、画像を可逆形式又は非可逆形式で圧縮する機能を有している。
ここで、「可逆形式」とは、例えばZIPやJPEG2000等、圧縮・展開を経た後のデータが元のデータと完全に一致する圧縮形式を指す。
一方、「非可逆形式」とは、モダリティーで撮影して得られたローデータを、素早く送信、閲覧できるようにするため、データ量の小さい形式に変換する圧縮形式を指す。
制御部11は、このような機能を有することにより、本発明における画像圧縮手段をなす。
【0034】
また、本実施形態における制御部11は、所定条件が満たされている場合には、一のファイルに含まれるすべての画像を前記クライアントへ転送する機能を有している。
この「所定条件」については後述する。
【0035】
〔クライアント〕
次に、クライアント2の詳細について説明する。図3は、クライアント2の具体的構成を表すブロック図である。
【0036】
クライアント2は、例えば図3に示したように、制御部21や表示部22、操作部23、通信部24等を備えて構成されており、各部21~24はバス25により接続されている。
クライアント2は、携帯電話機や、タブレット端末、ノート型PC、ヘッドマウントディスプレイ等、ユーザーが携帯あるいは装着することが可能に構成されたものを用いるのが好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係るクライアント2は、アプリケーションがインストールされておらず、大容量の記憶部を備えていない端末となっている。そして、サーバー1から配信されるアプリケーションに一切のデータ(足跡)を残さないようになっている。すなわち、本実施形態に係るクライアント2は、ゼロフットプリント端末となっている。
【0038】
本実施形態の制御部21は、ゼロフットプリント用のCPUや小容量のメモリー等で構成され、クライアント2の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、操作部23から入力される操作信号に応じて、サーバー1の記憶部13に記憶されているウェブアプリケーションプログラムを読み出して実行することにより、表示部22に各種表示信号を送信する。
【0039】
表示部22は、LCD等のモニターを備えて構成されており、制御部21から入力される表示信号の指示に従って各種画面を表示するようになっている。
すなわち、表示部22は、サーバー1から受信した各種ウェブ画面の表示用データに基づいて、例えば、検査の一覧や、選択された検査に対応する医用画像を表示することが可能となっている。
【0040】
操作部23は、各種キーを備えたキーボードやマウス等のポインティングデバイス、あるいは表示部22に積層されたタッチパネルを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作、あるいはタッチパネルに対するタッチ操作の位置に応じて入力された操作信号を制御部21に出力するようになっている。
【0041】
通信部24は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN、WAN、インターネット等の通信ネットワークNを介して接続された外部機器(サーバー1等)との間でデータ等の送受信を行うようになっている。
また、本実施形態における通信部24は、携帯基地局との間で電波の送受信を行うための図示しないアンテナを備えている。
【0042】
このように構成されたクライアント2の制御部21は、例えば電源がONにされたこと等を契機として表示部22にこれまでに行われた検査の一覧であるリスト画面を表示させるようになっている。
また、制御部21は、リスト画面が表示されている状態で所定の画面切り替え操作がなされたことを契機として表示部22の表示をリスト画面から画像を閲覧するためのビューアー画面に切り替えるようになっている。
逆に、制御部21は、ビューアー画面が表示されている状態で所定の戻り操作がなされたことを契機として表示部22の表示をリスト画面からビューアー画面に切り替える。
【0043】
(1.リスト画面からビューアー画面に切り替えるときの動作)
また、制御部21は、上記所定の画面切り替え操作がなされたことを契機として、初期画像要求処理を実行する。
【0044】
初期画像要求処理では、例えば図5に示したように、まず、ビューアー画面で最初に表示する医用画像である初期表示画像を要求する旨の画像要求信号を、通信部24を介してサーバー1へ送信する(ステップS1)。
なお、本実施形態におけるステップS1では、画像要求信号とともに、画面構成情報を要求する旨の情報要求信号も送信する。
【0045】
初期表示画像を要求した後は、サーバー1から画像転送条件設定用データを、通信部24を介して受信する(ステップS2)。
受信した表示用画像データは、メモリーに一時的に格納する。
【0046】
画像転送条件設定用データを受信した後は、環境情報を取得する(ステップS3)。
ここでは、画像転送条件設定用データに挙げられている環境情報を、測定あるいは信号を解析する等して取得する。
制御部21は、この処理を実行することにより、本発明における情報取得手段をなす。
【0047】
環境情報を取得した後は、画像転送条件設定用データを参照し、当該データに記載されている複数の設定(環境情報の組合せ(ここでは、接続形態、クライアント情報及びモダリティー))の中に取得した各環境情報と全て一致する設定があるか否かを判断する(ステップS4)。
なお、ここでは、参照する環境情報を接続形態、クライアント情報及びモダリティーの三種類としたが、二種類以下、あるいは四種類以上としてもよい。
また、ここでは、全ての環境情報が一致するか否かを判断することとしたが、一致する項目数や一致する割合が所定値以上であるか否かを判断するようにしてもよい。
また、このステップS4において、環境情報を取得する度に学習を行い、その結果を画像転送条件設定用データに反映させるようにしても良い。
【0048】
ステップS3において、画像転送条件設定用データに記載されている複数の設定の中に取得した各環境情報と全て一致する設定がある(ステップS4;Yes)と判断した場合には、環境情報の中に電波強度条件が存在するか否かを判断する(ステップS5)
このステップS5において、電波強度条件が存在しないと判断した場合(ステップS5;No)には、ステップS8へジャンプする。
【0049】
一方、ステップS5において、電波強度条件が存在すると判断した場合(ステップS5;Yes)には、電波強度が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS6)。
このステップS6において、電波強度が所定値以上であると判断した場合(ステップS6;Yes)、又は上記ステップS4において、画像転送条件設定用データに記載されている複数の設定の中に取得した各環境情報と全て一致する設定が存在しないと判断した場合(ステップS4;No)には、表示している初期表示画像と同一ファイルに含まれる医用画像を全て要求する旨の画像要求信号を、通信部24を介してサーバー1へ送信し(ステップS7)、初期画像要求処理を終了する。
なお、ステップS5,S6における電波強度は、転送速度としても差し支えない。
【0050】
一方、ステップS6において、電波強度が所定値以上でない(所定値未満である)と判断した場合(ステップS6;No)には、取得した環境情報に基づいて、クライアントへの画像の転送に関する画像転送条件を決定する(ステップS8)。
本実施形態においては、上記テーブルを参照し、取得した環境情報に対応するプレダウンロード数を画像転送条件として決定する。
すなわち、制御部21は、本発明における転送条件決定手段をなす。
【0051】
画像転送条件が決定された後は、表示している画像と同一ファイルに含まれる画像を画像転送条件で規定された枚数分だけ要求する旨の画像要求信号を、通信部24を介してサーバー1へ送信して(ステップS9)、初期画像要求処理を終了する。
【0052】
なお、本実施形態においては、ステップS4~S6の処理を全て実行する場合について説明したが、環境情報として電波強度のみを取得する場合はステップS4の処理は不要となるし、逆に環境情報として電波強度を取得しない場合にはステップS5,S6の処理は不要となる。
【0053】
(2.表示画像を切り替えたときの動作)
また、制御部21は、ビューアー画面(初期表示画像)が表示されている状態で所定の画像切り替え操作がなされたことを契機として、表示中画像要求処理を実行する。
ここで、「画像切り替え操作」とは、操作部23がタッチパネルの場合には、画面のスワイプ操作や、所定の再生アイコンのタッチ等、操作部23がマウスの場合には、ドラッグ操作やホイールの回転操作等を指し、表示されている医用画像から他の未表示の医用画像へ表示を切り替える(表示画像をめくる)操作をいう。
この表示中画像要求処理は、表示部22にビューアー画面が表示されている間は、画像切り替え操作がなされる度に実行される。
【0054】
表示中画像要求処理では、例えば図6に示したように、まず、画像切り替え操作中に表示すべき医用画像が制御部21のメモリーに格納されているか否かを判断する(ステップS11)。
ステップS11において、表示すべき医用画像がメモリーに格納されていると判断した場合(ステップS11;Yes)は、後述するステップS15へジャンプする。
一方、ステップS11において、表示すべき医用画像がメモリーに格納されていないと判断した場合(ステップS11;No)は、現在、ユーザーが行っている画像切り替えの速度が画像転送条件設定用データに記載された切り替え速度の所定値(所定速度)以上であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0055】
ステップS12において、ユーザーが行っている画像切り替えの速度が画像転送条件設定用データに記載された切り替え速度の所定値以上でない(所定値未満である)と判断した場合(ステップS12;No)は、圧縮していない画像を要求する旨の画像要求信号を、通信部24を介してサーバー1へ送信し(ステップS13)、ステップS15へ進む。なお、このステップS13において、画像を可逆形式で圧縮した画像を要求するようにしてもよい。
一方、ステップS12において、ユーザーが行っている画像切り替えの速度が画像転送条件設定用データに記載された切り替え速度の所定値以上であると判断した場合(ステップS12;Yes)は、非可逆圧縮した画像を要求する旨の画像要求信号を、通信部24を介してサーバー1へ送信して(ステップS14)、ステップS15へ進む。
【0056】
ステップS15では、画像切り替え操作が停止しているか否かを判断する。
このステップS15において、画像切り替え操作が停止していると判断した場合(ステップS15;Yes)は、表示中画像要求処理を終了する。
一方、ステップS15において、画像切り替え操作が停止していないと判断した場合(ステップS15;No)には、上記初期画像要求処理におけるステップS4~S9と同様の処理を実行して、表示中画像要求処理を終了する。
【0057】
また、上述したように構成されたクライアント2は、制御部21とサーバー1の記憶部13に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理を実行することにより、以下のような機能も有する。
例えば、制御部21は、表示部22に直ちに表示する初期表示画像を、通信部24を介してダウンロードする機能を有するとともに、後で切り替え表示するための複数の医用画像を、通信部24を介してプレダウンロードする機能を有している。
なお、本実施形態においては、医用画像とともに画面構成情報も併せてダウンロードするようになっている。
【0058】
また、制御部21は、複数の画像を表示部22に表示させる機能を有している。
具体的には、画像切り替え操作がなされたことに基づいて、それまで表示されていた表示画像からメモリーに格納されている未表示の医用画像の表示に切り替えたり、表示の切り替えを繰り返したりする。
【0059】
また、本実施形態における制御部21は、サーバー1からダウンロードした画面構成情報データに基づいて、表示部22を複数の表示領域に分け、複数の表示領域のうち、一の表示領域に複数の医用画像を表示させるとともに、他の表示領域に複数の医用画像と関連する複数の関連画像を表示させる機能も有している。
また、制御部21は、表示されている医用画像と関連画像の一方の画像に対して画像切り替え操作を行うと、一方の画像の表示を切り替えるとともに、他方の画像もそれに合わせて切り替える機能を有している。
【0060】
このように構成されたシステム100は、クライアント2が上述した初期画像要求処理や表示中画像要求処理を実行すると、サーバー1が画像要求信号に応じた枚数の配信用画像をクライアント2へ転送する。
ビューアー画面に表示されている医用画像I1が一のファイルに含まれる全画像のうちの1枚目である場合、例えば図7(a)に示したように、2枚目から数えてプレダウンロード数分の医用画像I2~In(ここではn=20)をプレダウンロードする。一方、表示されている医用画像が、例えば図7(b)に示したようにn枚目(ただしn≧2)の場合は、前後から数えてプレダウンロード数分を取得する(例えば、初期表示画像が20枚目であった場合、10~19枚目と21~30枚目の画像を取得する)。
【0061】
なお、同一モダリティーで撮影された医用画像であってそれぞれ含まれるファイルが異なるものが存在する場合には、合計がプレダウンロード数になるように分割して取得する。(例えば図7(c)に示したように、同一モダリティーで撮影された画像ファイルが3つあり、プレダウンロード数が20であった場合、例えば20÷3 =6.666…となるため、各ファイルで6枚ずつプレダウンロードする)。
【0062】
以上説明してきたように、本実施形態に係るシステム100によれば、一のファイルに含まれる複数の画像のうちの一部を転送するため、一枚ずつ転送するようにした場合の表示画像の切り替え速度の低下を防ぎつつ、閲覧されずに無駄となる医用画像のダウンロード量を最小限に抑えることができる。
このため、本実施形態のように、ゼロフットプリント技術及びサーバーレンダリング技術を採用したシステムにおいても、クライアント2が転送されてきた画像を破棄してしまったり、サーバー1が画像の閲覧途中で画像処理を行って膨大な量の医用画像を無駄にしたり、無駄な医用画像の転送を行うことにより、通信に制限がかけられてしまったりするのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0063】
100 医用画像表示システム
1 サーバー
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
14 バス
2 クライアント
21 制御部
22 表示部
23 操作部
24 通信部
25 バス
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7