(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20220329BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20220329BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220329BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/18 H
H01B7/18 D
H01B7/18 Z
B60R16/02 620A
H05K9/00 L
(21)【出願番号】P 2018142517
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】福本 康治
(72)【発明者】
【氏名】井谷 康志
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-044607(JP,A)
【文献】特開2018-041714(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
B60R 16/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が扁平形状に形成された芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する複数の電線と、
前記複数の電線が1本ずつ挿通され、各々が独立して扁平筒状に形成された複数の外装部材と、
前記外装部材の外周面に取り付けられ、前記外装部材を車体に固定するクランプと、
を有し
、
前記絶縁被覆の外周を包囲し、強化繊維にて編成された筒状の保護部材と、
前記保護部材の外周を包囲する筒状の電磁シールド部材と、
前記電磁シールド部材の端部が外周面に接続される導電性の筒状部材と、を有し、
前記保護部材の端部は、前記筒状部材と前記電磁シールド部材との間に挟まれた状態で第1連結部材によって前記筒状部材の外周面に接続されており、
前記電磁シールド部材の端部は、前記保護部材の端部の端面を被覆し、前記筒状部材の外周面に直接接触された状態で第2連結部材によって前記筒状部材の外周面に接続されているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記各電線の外周面と前記各外装部材の内周面との間には、前記各電線の外周を包囲し、空気層よりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導部材が設けられている請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電磁シールド部材は、複数の金属素線が編成された編組部材であり、
前記熱伝導部材は、ゲル状の材料からなり、前記編組部材の網目を充填するように形成されている請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記外装部材は、環状凸部と環状凹部とが長さ方向に交互に連設されたコルゲートチューブであり、
前記熱伝導部材は、前記電線の外周面と前記外装部材の内周面との間の空間を充填するように形成されている請求項2又は請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記クランプの内面には、隣り合う2つの外装部材を互いに離間させるための突起部が形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記複数の外装部材は、前記外装部材の厚手方向に並んで配置されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記各芯線及び前記各外装部材は、横断面形状が長円形に形成されており、
前記複数の外装部材は、前記長円形の円弧部同士が接触するように並んで配置されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記外装部材の内部空間には、前記電線を包囲する、絶縁性の前記保護部材及び前記電磁シールド部材が収容されている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスは、高電圧のバッテリとインバータなどの電気機器間を電気的に接続する電線を備えている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤハーネスにおいては、電線の保護を目的として、複数の電線がコルゲートチューブや金属パイプなどの外装部材によって一括して覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、外装部材内に挿通される電線に流れる電流は大電流化する傾向にあり、電線から発生する熱量も大きくなっている。このため、外装部材及び電線を備えたワイヤハーネスにおける放熱性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、放熱性を向上できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイヤハーネスによれば、横断面形状が扁平形状に形成された芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する複数の電線と、前記複数の電線が1本ずつ挿通され、各々が独立して扁平筒状に形成された複数の外装部材と、前記外装部材の外周面に取り付けられ、前記外装部材を車体に固定するクランプと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のワイヤハーネスによれば、放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態におけるワイヤハーネスの概略構成図。
【
図2】第1実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図3】第1実施形態におけるワイヤハーネスの概略斜視図。
【
図4】第1実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図5】第2実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図6】第2実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図7】第3実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図8】第3実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図9】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図10】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図11】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図12】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図13】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図14】(a)~(c)は、変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図15】第4実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図16】第4実施形態におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図17】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【
図18】変更例におけるワイヤハーネスの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両の前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両の後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両の床下等を通るように配索される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0011】
ワイヤハーネス10は、複数(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、複数の電線20が1本ずつ挿通された複数の外装部材60と、複数(
図1では、2個)のクランプ70とを有している。各電線20は、例えば、車両の前後方向に延びるように長尺状に形成されている。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線20の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続され、各電線20の他端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ12と接続されている。各外装部材60は、例えば、飛翔物や水滴から電線20を保護する。複数の外装部材60は、クランプ70により車両の車体等に固定される。
【0012】
図2に示すように、各電線20は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有している。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線である。
【0013】
各芯線21は、長尺状に形成されている。各芯線21は、例えば、ワイヤハーネス10の配索経路に沿う形状に曲げ加工が可能な可撓性を有している。各芯線21の横断面形状(つまり、芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状)は、例えば、扁平形状に形成されている。本明細書において、「扁平形状」には、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。本明細書における「長方形」は、長辺と短辺を有するものであり、正方形を除いたものである。また、本明細書における「長方形」には、稜部を面取りした形状や、稜部を丸めた形状も含まれる。
【0014】
本実施形態の各芯線21の横断面形状は、長方形に形成されている。各芯線21の横断面形状は、芯線21の長さ方向の全長に亘って同一の長方形に形成されている。芯線21は、上記長方形の長辺を含む一対の長辺面21Aと、上記長方形の短辺を含む一対の側面21Bとを有している。一対の長辺面21A及び一対の側面21Bは平面に形成されている。
【0015】
図3に示すように、各芯線21は、例えば、2次元状又は3次元状に曲げられるように形成されている。各芯線21は、例えば、ワイヤハーネス10の配索経路に応じた所定形状に曲げられて形成されている。本実施形態の各芯線21は、車両前後方向に沿って延びる直線部31と、直線部31の端部に設けられた屈曲部32と、屈曲部32から車両下方側に延出する延出部33と、延出部33の端部に設けられた屈曲部34と、屈曲部34から車両前後方向に沿って延びる直線部35とを有している。本実施形態の各芯線21は、車両前後方向と車両上下方向との2方向に延びるように屈曲されている。
【0016】
屈曲部32,34は、芯線21の長辺面21Aを薄手方向(短辺方向)に曲げるようにして形成されている。屈曲部32,34では、長辺面21Aの厚手方向(長辺方向)の全長に亘って略同一の曲率で曲げられている。換言すると、本実施形態の屈曲部32,34は、長辺面21Aを捻って形成した部分ではない。但し、長辺面21Aを捻って屈曲部32,34を形成するようにしてもよい。
【0017】
各芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合せてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体(単芯線やバスバ等)や内部が中空構造をなす筒状導体(パイプ導体)などを用いることができる。本実施形態の各芯線21は、撚り線によって構成されている。各芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。各芯線21は、例えば、押出成形によって成形されている。例えば、各芯線21は、押出成形によって横断面形状が円形状に成形された撚り線を金型等で圧縮して横断面形状が所望の形状(ここでは、長方形)になるように成形されている。
【0018】
図2に示すように、各絶縁被覆22は、例えば、各芯線21の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。各絶縁被覆22の外周面は、例えば、各芯線21の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の各絶縁被覆22は、内周及び外周の断面形状が長方形である角筒状に形成されている。各絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。各絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0019】
各電線20の外周には、その外周を被覆するように保護部材40が形成されている。各保護部材40は、絶縁性及び耐剪断性に優れた強化繊維が編み込まれて構成されている。各保護部材40は、例えば、芯線21よりも可撓性に優れている。
【0020】
各保護部材40を構成する強化繊維としては、例えば、パラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PEI(ポリエーテルイミド)繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられ、これらの内の1種類又は複数種類を、保護部材40に要求される物性に応じて用いることが好ましい。本実施形態の各保護部材40は、パラ系アラミド繊維の1種類で構成されている。
【0021】
各保護部材40は、筒状をなし、電線20の外周を全周に亘って被覆している。各保護部材40は、例えば、絶縁被覆22の外周面に接触した状態で、その絶縁被覆22の外周面を被覆している。各保護部材40の外周面は、例えば、絶縁被覆22(芯線21)の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の各保護部材40は、内周及び外周の断面形状が長方形である角筒状に形成されている。各保護部材40は、例えば、電線20の長さ方向の略全長に亘って設けられている。
【0022】
各保護部材40の外周には、その外周を被覆するように電磁シールド部材50が形成されている。各電磁シールド部材50は、例えば、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組部材や金属箔を用いることができる。各電磁シールド部材50は、例えば、芯線21よりも可撓性に優れている。
【0023】
各電磁シールド部材50は、筒状をなし、電線20の外周及びその電線20を包囲する保護部材40の外周を全周に亘って包囲している。各電磁シールド部材50は、例えば、保護部材40の外周面に接触した状態で、その保護部材40の外周面を被覆している。各電磁シールド部材50の外周面は、例えば、保護部材40(芯線21)の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の各電磁シールド部材50は、内周及び外周の断面形状が長方形である角筒状に形成されている。各電磁シールド部材50は、例えば、電線20の長さ方向の略全長に亘って設けられている。
【0024】
各外装部材60は、全体として長尺の筒状をなしている。各外装部材60の内部空間60Xには、電線20が1本ずつ収容されている。各外装部材60の内部空間60Xには、電線20を包囲する保護部材40及び電磁シールド部材50が収容されている。
【0025】
各外装部材60は、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、コルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、アルミニウム系や銅系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。
【0026】
図3に示すように、本実施形態の各外装部材60は、環状凹部61と環状凸部62とが長さ方向に沿って交互に連設された蛇腹構造を有するコルゲートチューブである。本実施形態の各外装部材60の材料としては、導電性を有さない樹脂材料が用いられる。この樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。各外装部材60は、芯線21よりも可撓性に優れている。
【0027】
本実施形態の各外装部材60は、扁平筒状をなすコルゲートチューブである。すなわち、外装部材60の内周及び外周の断面形状は、扁平形状に形成されている。各外装部材60の内周面は、例えば、挿通される電線20の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の環状凹部61及び環状凸部62は、内周及び外周の断面形状が長方形の角筒状に形成されている。外装部材60(環状凹部61及び環状凸部62)の外周面は、上記長方形の長辺を含む一対の長辺面60Aと、上記長方形の短辺を含む一対の側面60Bとを有している。長辺面60Aは芯線21の長辺面21Aに対向し、側面60Bは芯線21の側面21Bに対向している。ここで、環状凸部62における内部空間60Xは、環状凹部61における内部空間60Xよりも広くなっている。
【0028】
外装部材60の内部空間60X(具体的には、環状凹部61における内部空間60X)は、例えば、電線20及び保護部材40を包囲した状態の電磁シールド部材50の外形よりも僅かに大きい寸法に設定されている。環状凹部61における内部空間60Xと電磁シールド部材50の外形との寸法差は、電線20、保護部材40及び電磁シールド部材50を外装部材60内に挿通させるために必要なクリアランスや寸法公差などを勘案して設定されている。例えば、電磁シールド部材50の外周面と環状凹部61の内周面とは、対向する面の少なくとも一部が互いに接触している。電磁シールド部材50の外周面と環状凹部61の内周面との接触は、面接触、線接触及び点接触のいずれの形態であってもよい。
【0029】
図2に示すように、複数(ここでは、2つ)の外装部材60は、別々に独立して形成されている。2つの外装部材60は、例えば、形状と大きさが共に同じになるように形成されている。2つの外装部材60は、例えば、芯線21及び外装部材60の長辺方向(厚手方向)に並んで配置されている。すなわち、2つの外装部材60は、互いの側面60Bを向かい合わせた状態で並んで配置されている。2つの外装部材60は、例えば、互いの側面60Bを接触させた状態で並んで配置されている。これにより、2つの外装部材60にそれぞれ挿通された2つの電線20は、それら芯線21の側面21B同士が対向して配置される。本実施形態のワイヤハーネス10では、複数の外装部材60をまとめた(束ねた)ときに断面形状が全体として長方形となるように形成されている。
【0030】
2つの外装部材60は、例えば、車両幅方向(
図1における紙面に直交する方向)に並んで配置されている。すなわち、2つの外装部材60は、外装部材60の長辺方向(厚手方向)が車両幅方向に沿って延びるように配置されている。換言すると、2つの外装部材60は、外装部材60の短辺方向(薄手方向)が車両上下方向(
図1及び
図2における紙面垂直方向)に沿って延びるように配置されている。
【0031】
クランプ70は、例えば、複数の外装部材60をまとめて固定するように設けられている。クランプ70は、複数の外装部材60がまとめられた状態(合体状態)を維持するように、それら複数の外装部材60の外周面に取り付けられている。
【0032】
クランプ70は、複数の外装部材60に外嵌される嵌合部71と、車体に固定される固定部(図示略)とを有している。クランプ70の材料としては、例えば、樹脂材料や金属材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。金属材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0033】
本実施形態の嵌合部71は、略C字状に形成されている。すなわち、嵌合部71は、不連続の環状構造に形成されている。嵌合部71は、互いに対向するように形成された一対のプレート部72,73と、両プレート部72,73の一端部同士を接続する接続部74と、プレート部72,73の他端部にそれぞれ設けられた係止部75,76とを有している。嵌合部71は、例えば、プレート部72,73と接続部74と係止部75,76とが一体に形成された単一部品である。
【0034】
各プレート部72,73は、2つの外装部材60の長辺面60Aに沿った内面を有している。具体的には、各プレート部72,73は、長辺方向に並んで配置された2つの外装部材60の長辺面60Aに沿った内面を有している。
【0035】
接続部74は、プレート部72の端部とプレート部73の端部とを接続するように形成されている。接続部74は、例えば、外装部材60の側面60Bに沿った内面を有している。
【0036】
係止部75,76は、プレート部72,73の接続部74とは反対側の端部にそれぞれ設けられている。すなわち、係止部75,76は、長辺方向において接続部74と対向する位置に設けられている。係止部75は、プレート部72の端部からプレート部73に向かって延びるように形成されている。係止部76は、プレート部73の端部からプレート部72に向かって延びるように形成されている。係止部75の先端部は、係止部76の先端部と離間した位置でその係止部76の先端部と対向するように設けられている。嵌合部71では、係止部75,76の間の空間によって、複数の外装部材60を挿入可能とする挿入部77が形成されている。挿入部77の開口幅は、各外装部材60の側面60Bの短辺方向の長さよりも短く設定されている。また、嵌合部71では、プレート部72,73の内面と接続部74の内面と係止部75,76の内面とによって囲まれた空間によって、複数の外装部材60が収容される収容部78が形成されている。
【0037】
係止部75の外側面は、係止部75の基端部(プレート部72に接続された端部)から先端部(基端部とは反対側の端部)に向かうに連れて、接続部74に近づくように傾斜された傾斜面75Aに形成されている。係止部76の外側面は、係止部76の基端部(プレート部73に接続された端部)から先端部(基端部とは反対側の端部)に向かうに連れて、接続部74に近づくように傾斜された傾斜面76Aに形成されている。すなわち、傾斜面75A,76Aは、収容部78から遠ざかるに連れて挿入部77の開口幅が拡大するように傾斜している。
【0038】
嵌合部71は、挿入部77から複数の外装部材60を収容部78に挿入可能な第1の姿勢と、挿入部77から挿入された複数の外装部材60を収容部78内に支持可能な第2の姿勢との間で変形可能に構成されている。すなわち、嵌合部71は、係止部75と係止部76との間の間隔(つまり、挿入部77の開口幅)が広がるように弾性変形可能である。例えば、電線20等が挿通された外装部材60を挿入部77に挿入すると、係止部75の先端部と係止部76の先端部との間隔が一時的に広がるように弾性変形する。そして、外装部材60が挿入部77を通り抜けて収容部78内に嵌合されると、嵌合部71の環状構造が元の形状に戻るように弾性復帰する、つまり係止部75の先端部と係止部76の先端部との間隔が狭まるように弾性復帰する。すなわち、本実施形態の嵌合部71と2つの外装部材60とは、弾性変形を利用して抜け止めが行われるスナップフィット構造である。なお、収容部78内に複数の外装部材60が収容された状態では、例えば、嵌合部71の内面の少なくとも一部が外装部材60の外周面に接触している。
【0039】
クランプ70は、図示しない固定部によって、車両の車体に固定されている。このクランプ70によって、複数の外装部材60が車両の車体に固定されている。
次に、
図4に従って、保護部材40及び電磁シールド部材50の端部構造について説明する。ここでは、インバータ11側の保護部材40及び電磁シールド部材50の端部構造について説明する。なお、
図4では、外装部材60の図示を省略している。
【0040】
電線20の端部は、インバータ11に接続されたコネクタC1(
図1参照)が有するシールドシェル80に挿通されている。シールドシェル80は、例えば、電線20が1本ずつ挿通される導電性の筒状部材81を有している。筒状部材81(シールドシェル80)は、金属によって構成されている。筒状部材81の材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。筒状部材81は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよい。
【0041】
筒状部材81は、例えば、内周及び外周の断面形状が長方形の角筒状に形成されている。筒状部材81の内部には、電線20、保護部材40及び電磁シールド部材50のうち電線20のみが挿通されている。保護部材40及び電磁シールド部材50の端部は、筒状部材81の外周面に固定されている。保護部材40の端部は、例えば、筒状部材81に対してその全周を包囲するように外挿されている。電磁シールド部材50の端部は、例えば、筒状部材81に外挿された保護部材40に対してその全周を包囲するように外挿されている。電磁シールド部材50は、例えば、保護部材40よりも全長が長く形成されており、保護部材40よりもインバータ11側に延びるように形成されている。電磁シールド部材50のうち保護部材40よりもインバータ11側に延びた部分は、保護部材40の端面を覆うとともに、筒状部材81の外周面に直接接触するように筒状部材81に外挿されている。
【0042】
保護部材40の端部は、筒状部材81と電磁シールド部材50との間に挟まれた状態で、電磁シールド部材50の外周側に設けられたカシメリング85によって筒状部材81の外周面に接続されている。カシメリング85は、筒状部材81の外周面との間に電磁シールド部材50及び保護部材40の端部を挟む態様で筒状部材81に外嵌されている。そして、カシメリング85がカシメ付けられることで、電磁シールド部材50及び保護部材40の端部が筒状部材81の外周面に固着されている。
【0043】
電磁シールド部材50の端部は、保護部材40の端部の端面を被覆し、筒状部材81の外周面に直接接触された状態で、電磁シールド部材50の外周側に設けられたカシメリング86によって筒状部材81の外周面に接続されている。カシメリング86は、筒状部材81の外周面との間に電磁シールド部材50の端部のみを挟む(つまり、保護部材40を挟まない)態様で筒状部材81に外嵌されている。そして、カシメリング86がカシメ付けられることで、電磁シールド部材50の端部が筒状部材81の外周面に対して直接接触した状態で固着されている。これにより、電磁シールド部材50と筒状部材81(シールドシェル80)との電気的導通が安定的に確保される。
【0044】
上記説明では、インバータ11側の保護部材40及び電磁シールド部材50の端部構造について説明したが、高圧バッテリ12側にも同様の端部構造が設けられている。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0045】
(1-1)複数の外装部材60の各々を独立して形成し、それら各外装部材60に1本ずつ電線20を挿通するようにした。これにより、1つの外装部材で複数本の電線20を一括して包囲する場合に比べて、電線20と外装部材60との間の隙間(空気層)を小さく設定することができる。電線20の外周面と外装部材60の内周面との間における空気層、つまり断熱層を減らすことができるため、電線20の外周面と外装部材60の内周面との間の熱抵抗を低くできる。このため、電線20で発生した熱が外装部材60の内部に籠もることが抑制され、電線20で発生した熱を外装部材60の外周面から効率良く大気中に放出することができる。これにより、電線20で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。この結果、電線20の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
(1-2)さらに、1つの外装部材で2本の電線20を一括して包囲する場合に比べて、外装部材60の厚手方向の長さを1/2以下にすることができる。このため、1つの外装部材で2本の電線20を一括して包囲する場合に比べて、外装部材60の屈曲半径を小さくすることができる。これにより、ワイヤハーネス10の曲げ性を向上させることができる。
【0047】
(1-3)各電線20の横断面形状を扁平形状に形成した。この構成によれば、電線20の剛性は、厚手方向においては高く、薄手方向においては比較的低くなる。このため、電線20の厚手方向における剛性を高めつつも、薄手方向への電線20の曲げ加工を容易に行うことができる。また、電線20の薄手方向の寸法を小さく抑えることができるため、ワイヤハーネス10の低背化を実現できる。
【0048】
(1-4)さらに、各外装部材60を扁平筒状に形成した。これにより、各外装部材60の内周面を、各電線20の外周面に沿った形状に形成することができるため、電線20の外周面と外装部材60の内周面との間の隙間(空気層)をより小さく設定することができる。したがって、ワイヤハーネス10の放熱性をより向上させることができる。
【0049】
(1-5)複数の外装部材60の外周面に取り付けられ、複数の外装部材60を車体に固定するクランプ70を設けた。この構成によれば、電線20で発生した熱を、外装部材60及びクランプ70を通じて、表面積の大きい車体に効率良く熱伝達することができる。これにより、電線20で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0050】
(1-6)複数の外装部材60をそれらの厚手方向(長辺方向)に沿って並べて配置した。これにより、複数の外装部材60をそれらの薄手方向に沿って並べて配置する場合に比べて、外装部材60の外周面において外部に露出する表面積を増大させることができる。このため、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0051】
(1-7)電線20の外周面と外装部材60の内周面との間に、電線20を包囲する電磁シールド部材50を設けた。この電磁シールド部材50によって電線20の電磁シールドが可能となるため、電線20としてノンシールド電線を用いることができる。この構成によれば、アース接地する際に、電磁シールド構造を外部に露出させるために絶縁被覆等を剥ぐ工程が必要ない。したがって、電磁シールド部材50を筒状部材81に電気的に接続する(つまり、アース接地する)際の作業性を向上させることができる。
【0052】
(1-8)電線20の外周面と外装部材60の内周面との間に、パラ系アラミド繊維等の強化繊維で編成された耐衝撃性(特に耐剪断性)に優れる保護部材40を設けた。このため、車両衝突時の衝撃によって、仮に外装部材60が破損したとしても、電線20の芯線21同士が直接的に接触、または、車両構成部品等の何らかの導体を介して導通されるといったことが抑制される。また、保護部材40は絶縁性を有するため、電線20の芯線21同士が保護部材40を介して導通してしまうことも抑制される。
【0053】
(1-9)ところで、2種類の筒体(ここでは、保護部材40及び電磁シールド部材50)を互いに重ねた状態で、それら2種類の筒体によって電線20の外周を包囲する場合には、内側に設けられた筒体(ここでは、保護部材40)を電線20に対して安定して固定するのが難しい。また、電磁シールド部材50の内側に絶縁性の保護部材40が配置された場合には、電磁シールド部材50と筒状部材81とを電気的に接続しにくい。
【0054】
これに対し、本実施形態では、保護部材40の端部を、筒状部材81と電磁シールド部材50との間に挟まれた状態でカシメリング85によって筒状部材81の外周面に接続するようにした。また、電磁シールド部材50の端部を、保護部材40の端部の端面を被覆するように形成し、さらに筒状部材81の外周面に直接接触された状態でカシメリング86によって筒状部材81の外周面に接続するようにした。この構成によれば、カシメリング85をカシメ付けることにより、電磁シールド部材50が外周に重なった状態であっても、保護部材40を筒状部材81の外周面に安定して固定することができる。また、電磁シールド部材50の端部を、保護部材40の固定位置とは異なる位置において、筒状部材81との間に絶縁性の保護部材40が介在しない状態で筒状部材81の外周面に固定するようにした。これにより、電磁シールド部材50と電線20(又は筒状部材81)との間に保護部材40が介在する場合であっても、電磁シールド部材50と筒状部材81との電気的導通を安定的に確保することができる。
【0055】
(1-10)クランプ70の嵌合部71をC字状に形成し、先端部が互いに離間した位置で対向して設けられた係止部75,76の間に挿入部77を形成するようにした。また、係止部75,76の外側面を、収容部78から遠ざかるに連れて挿入部77の開口幅が拡大するように傾斜した傾斜面75A,76Aに形成した。この構成によれば、挿入部77を通じて複数の外装部材60を嵌合部71の収容部78内に挿入する際に、外装部材60の端部を係止部75,76の傾斜面75A,76Aに沿って収容部78内に誘導させることができる。これにより、複数の外装部材60にクランプ70を組み付ける際の作業性を向上させることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、
図5及び
図6に従って、ワイヤハーネスの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0057】
図5に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10Aでは、保護部材40及び電磁シールド部材50の配置が
図2に示したワイヤハーネス10とは反対になっている。すなわち、ワイヤハーネス10Aでは、各電線20の外周を被覆するように電磁シールド部材50が形成され、その電磁シールド部材50の外周を被覆するように保護部材40が形成されている。
【0058】
次に、
図6に従って、保護部材40及び電磁シールド部材50の端部構造について説明する。なお、
図6では、外装部材60の図示を省略している。
シールドシェル80の筒状部材81の内部には、電線20、電磁シールド部材50及び保護部材40のうち電線20のみが挿通されている。電磁シールド部材50及び保護部材40の端部は、筒状部材81の外周面に固定されている。電磁シールド部材50の端部は、筒状部材81に対してその全周を包囲するように外挿されている。電磁シールド部材50は、筒状部材81の外周面に直接接触するように筒状部材81に外挿されている。保護部材40は、筒状部材81に外挿された電磁シールド部材50に対してその全周を包囲するように外挿されている。
【0059】
電磁シールド部材50の端部は、筒状部材81と保護部材40との間に挟まれた状態で、保護部材40の外周側に設けられたカシメリング87によって筒状部材81の外周面に固定されている。カシメリング87は、筒状部材81の外周面との間に保護部材40及び電磁シールド部材50の双方の端部を挟む態様で筒状部材81に外嵌されている。そして、カシメリング87がカシメ付けられることで、保護部材40及び電磁シールド部材50の端部が筒状部材81の外周面に固着されている。このとき、電磁シールド部材50の端部が筒状部材81の外周面に直接接触した状態で固着される。これにより、電磁シールド部材50と筒状部材81(シールドシェル80)との電気的導通が安定的に確保される。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)~(1-8),(1-10)の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(2-1)電線20の外側に電磁シールド部材50と保護部材40とを順に配置し、それら電磁シールド部材50及び保護部材40の双方の端部を一箇所でまとめて固定した。この構成によれば、絶縁性の保護部材40よりも内側に電磁シールド部材50を配置できるため、電磁シールド部材50と保護部材40とが重なった状態であっても、電磁シールド部材50を筒状部材81の外周面に直接接触させることができる。これにより、筒状部材81を長さ方向に小型化しつつも、電磁シールド部材50と筒状部材81との電気的導通を安定的に確保することができる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、
図7及び
図8に従って、ワイヤハーネスの第3実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0062】
図7に示すように、ワイヤハーネス10Bは、各電線20の外周面と外装部材60の内周面との間に設けられた熱伝導部材90を有している。熱伝導部材90は、空気層よりも熱伝導率の高い材料から構成されている。熱伝導部材90の材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などの絶縁性樹脂やシリコーンゴムなどに、熱伝導率の高いフィラーを含有した材料を用いることができる。フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタンや酸化マグネシウムなどの無機フィラーを用いることができる。フィラーとしては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co)などの金属材料からなるフィラーや、金属材料の表面を絶縁材料(例えば、樹脂材料)で被覆したフィラーを用いることができる。熱伝導部材90の材料としては、例えば、シート状やゲル状(半固形状)の材料を用いることができる。本実施形態の熱伝導部材90は、ゲル状の材料からなる。
【0063】
図8に示すように、本実施形態の熱伝導部材90は、電線20を包囲する保護部材40及び電磁シールド部材50の外側に設けられている。熱伝導部材90は、例えば、電磁シールド部材50の外周面と外装部材60の内周面との間の空間を充填するように形成されている。具体的には、熱伝導部材90は、電磁シールド部材50の外周面と環状凹部61の内周面との間の空間を充填するとともに、電磁シールド部材50の外周面と環状凸部62の内周面との間の空間を充填するように形成されている。この熱伝導部材90は、環状凸部62における内部空間60Xのうち環状凹部61の内周面から外装部材60の径方向外側に突出した空間も充填するように形成されている。また、熱伝導部材90は、例えば、保護部材40が有する網目及び電磁シールド部材50が有する網目に入り込むように形成されている。例えば、熱伝導部材90は、保護部材40及び電磁シールド部材50が有する網目を充填するように形成されている。換言すると、保護部材40及び電磁シールド部材50は、熱伝導部材90に埋め込まれるように形成されている。これにより、保護部材40と電磁シールド部材50との間の隙間が熱伝導部材90によって充填される。
【0064】
このような熱伝導部材90は、例えば、保護部材40及び電磁シールド部材50によって被覆された電線20を外装部材60の内部空間60Xに挿通した後に、電磁シールド部材50の外周面と外装部材60の内周面との間の空間を充填するようにゲル状の高熱伝導材料を注入することによって形成することができる。また、電線20及び保護部材40を包囲する電磁シールド部材50の外周面にゲル状の熱伝導部材90を形成した後に、その熱伝導部材90を外側から締め付けるように外装部材60を縮径させ、その締め付け力によってゲル状の熱伝導部材90を塑性変形させることで形成することができる。この場合の外装部材60は、例えば、長さ方向に延在する切れ目を有するコルゲートチューブを用いることができる。
【0065】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)~(1-10)の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(3-1)電線20の外周面と外装部材60の内周面との間に、空気層よりも熱伝導率の高い材料からなる熱伝導部材90を設けた。この構成によれば、電線20と外装部材60との間の空気層(つまり、断熱層)を小さく設定できるため、電線20の外周面と外装部材60の内周面との間の熱抵抗を低くできる。これにより、電線20で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネス10Bの放熱性を向上させることができる。
【0066】
(3-2)電磁シールド部材50の外周面と外装部材60の内周面との間の空間を充填するように熱伝導部材90を形成した。この構成によれば、電磁シールド部材50の外周面と外装部材60の内周面との間の空気層(つまり、断熱層)を熱伝導率の高い熱伝導部材90に置き換えることができるため、電線20の外周面と外装部材60の内周面との間の熱抵抗をより低くできる。これにより、ワイヤハーネス10Bの放熱性を向上させることができる。
【0067】
(3-3)保護部材40が有する網目及び電磁シールド部材50が有する網目を充填するように熱伝導部材90を形成した。この構成によれば、熱伝導部材90と保護部材40及び電磁シールド部材50との接触面積を増大させることができる。これにより、熱伝導部材90と保護部材40及び電磁シールド部材50との間の熱抵抗を低くできるため、ワイヤハーネス10Bの放熱性を向上させることができる。
【0068】
(第1~第3実施形態の変更例)
上記第1~第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・上記各実施形態では、複数の電線20の全ての電線20に対して保護部材40を設けるようにしたが、これに限定されない。
例えば
図9に示すように、複数の電線20のうちの一部の電線20に対してのみ保護部材40を設けるようにしてもよい。例えば、電線20は、高圧バッテリ12(
図1参照)のプラス端子に接続されるプラス側の電線20Aと、高圧バッテリ12のマイナス端子に接続されるマイナス側の電線20Bとを有している。これら電線20A,20Bのうちプラス側の電線20Aのみに保護部材40を設け、マイナス側の電線20Bには保護部材40を設けないようにしてもよい。この構成によれば、ワイヤハーネス10の製造コストの上昇を抑えつつも、プラス側の電線20Aとマイナス側の電線20Bとが短絡することを好適に抑制できる。
【0070】
・上記各実施形態のクランプ70の構造は特に限定されない。
・
図10に示すように、複数の外装部材60を互いに離間させた状態で固定するための突起部79を有する構造を採用してもよい。突起部79は、例えば、プレート部72,73の内面から収容部78内に向かって突出するように形成されている。プレート部72に形成された突起部79とプレート部73に形成された突起部79とは、例えば、互いに離間した状態で互いに向かい合うように形成されている。各突起部79は、例えば、外装部材60の長さ方向に沿って延びるように形成されている。各突起部79の側面には、各外装部材60の側面60Bの一部が接触される。この構成によれば、隣り合う外装部材60の側面60Bを互いに離間させることができるため、外装部材60の外周面において外部に露出する表面積を増大させることができる。これにより、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0071】
・
図10に示したクランプ70において、プレート部72,73の一方のみに突起部79を設けるようにしてもよい。
・
図11に示すクランプ100のように、複数の外装部材60の全周を包囲する嵌合部101を有する構造を採用してもよい。嵌合部101は、全体として、まとめられた状態の複数の外装部材60に外嵌可能な大きさの筒状(ここでは、角筒状)をなしている。嵌合部101は、互いに係止可能とされたロック部102と被ロック部103とを有している。クランプ100では、ロック部102と被ロック部103との係止を解除することにより、嵌合部101を開いた状態にすることができる。嵌合部101を開くことにより、嵌合部101の内側に複数の外装部材60を嵌合することができる。また、クランプ100では、嵌合部101を閉じることにより、嵌合部101の内側に複数の外装部材60を保持することができる。クランプ100では、ロック部102と被ロック部103とが係止することにより、嵌合部101が閉じた状態でロックされる。なお、嵌合部101がロックされた状態では、例えば、嵌合部101の内周面の少なくとも一部が、外装部材60の外周面に接触している。
【0072】
・上記各実施形態のクランプ70としては、複数の外装部材60をまとめて車体に固定するクランプを採用したが、これに限定されない。例えば、複数の外装部材60を一つずつ車体に固定するクランプを採用してもよい。
【0073】
・上記各実施形態では、電線20の横断面形状を長方形としたが、これに限定されない。
・例えば
図12に示すように、電線20の芯線21の横断面形状を長円形に形成してもよい。本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる形状である。本変更例における芯線21は、一対の長辺面21Aと、一対の長辺面21Aの間に円弧状に形成された側面21B(円弧部)とを有している。これら一対の長辺面21A及び一対の側面21Bは、芯線21の長さ方向の全長に亘って延在するように形成されている。芯線21の外周を包囲する絶縁被覆22、保護部材40、電磁シールド部材50及び外装部材60は、例えば、芯線21の外周形状に沿った形状に形成されている。本変更例の外装部材60の内周及び外周の断面形状は、長円形に形成されている。外装部材60の外周面は、一対の長辺面60Aと、一対の長辺面60Aの間に円弧状に形成された側面60B(円弧部)とを有している。
【0074】
複数(ここでは、2つ)の外装部材60は、芯線21及び外装部材60の厚手方向に並んで配置されている。2つの外装部材60は、例えば、互いの側面60Bの一部を接触させた状態で配置されている。この構成によれば、外装部材60の外周面において外部に露出する表面積を増大させることができるため、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0075】
・例えば
図13に示すように、電線20の芯線21の横断面形状を、五角形以上の多角形(ここでは、六角形)を有する扁平形状に形成してもよい。芯線21の外周を包囲する絶縁被覆22、保護部材40、電磁シールド部材50及び外装部材60は、例えば、芯線21の外周形状に沿った形状に形成されている。本変更例の外装部材60の内周及び外周の断面形状は、六角形を有する扁平形状に形成されている。複数の外装部材60は、芯線21及び外装部材60の厚手方向に並んで配置されている。
【0076】
・上記各実施形態では、複数の外装部材60を、それらの厚手方向に並んで配置し、その厚手方向が車両幅方向に沿うように並んで配置したが、複数の外装部材60の配置はこれに限定されない。
【0077】
・例えば
図14(a)に示すように、複数の外装部材60を、それらの厚手方向に並んで配置し、その厚手方向が車両上下方向に沿うように並んで配置するようにしてもよい。この場合には、芯線21及び外装部材60の薄手方向が車両幅方向に沿うように延びる。
【0078】
・例えば
図14(b)に示すように、複数の外装部材60を、それらの薄手方向に並んで配置し、その薄手方向が車両幅方向に沿うように並んで配置するようにしてもよい。この場合には、芯線21及び外装部材60の厚手方向が車両上下方向に沿うように延びる。また、2つの外装部材60は、例えば、互いの長辺面60Aを接触させた状態で並んで配置される。
【0079】
・例えば
図14(c)に示すように、複数の外装部材60を、それらの薄手方向に並んで配置し、その薄手方向が車両上下方向に沿うように並んで配置するようにしてもよい。この場合には、芯線21及び外装部材60の厚手方向が車両幅方向に沿うように延びる。また、2つの外装部材60は、例えば、互いの長辺面60Aを接触させた状態で並んで配置される。
【0080】
・上記第3実施形態における熱伝導部材90、保護部材40及び電磁シールド部材50の配置を適宜変更してもよい。例えば、電線20の絶縁被覆22の外周を被覆するように熱伝導部材90を形成し、その熱伝導部材90の外周を被覆するように保護部材40及び電磁シールド部材50を形成するようにしてもよい。
【0081】
・上記第3実施形態における熱伝導部材90は、外装部材60の長さ方向の略全長に亘って設けるようにしてもよい。また、熱伝導部材90を、電線20の長さ方向において部分的に設けるようにしてもよい。
【0082】
・上記第3実施形態の熱伝導部材90を外装部材60の内周面に一体に形成するようにしてもよい。
(第4実施形態)
次に、
図15及び
図16に従って、ワイヤハーネスの第4実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0083】
図15に示すように、ワイヤハーネス10Cは、複数(ここでは、2本)の電線20と、複数の電線20を一括して包囲する外装部材110と、クランプ70とを有している。本実施形態の電線20は、高圧バッテリ12(
図1参照)のプラス端子に接続されるプラス側の電線20Aと、高圧バッテリ12のマイナス端子に接続されるマイナス側の電線20Bとの2本の高圧電線を有している。
【0084】
電線20Aの外周には、その外周を被覆するように保護部材40が形成されている。保護部材40の外周には、その外周を被覆するように電磁シールド部材50が形成されている。
【0085】
電線20Bの外周には、その外周を被覆するように電磁シールド部材50が形成されている。電線20Bに対しては、保護部材40が設けられていない。
外装部材110は、
図3に示した外装部材60と同様に、扁平筒状をなすコルゲートチューブである。外装部材110の内部空間110Xには、複数(ここでは、2つ)の電線20A,20Bが配置されている。2つの電線20A,20Bは、内部空間110Xにおいて、芯線21の厚手方向(長辺方向)に並んで配置されている。すなわち、2つの電線20A,20Bは、例えば、互いの芯線21の側面21Bを向かい合わせた状態で並んで配置されている。例えば、2つの電線20A,20Bは、それら芯線21の側面21Bを被覆する部分の電磁シールド部材50の外周面同士が接触した状態で並んで配置されている。また、2つの電線20A,20Bは、芯線21の薄手方向(短辺方向)が車両上下方向に沿うように配置されている。
【0086】
クランプ70は、外装部材110の外周面に取り付けられている。クランプ70の嵌合部71は、1つの外装部材110に外嵌されている。クランプ70は、図示しない固定部によって、車両の車体に固定されている。このクランプ70によって、外装部材110が車両の車体に固定されている。
【0087】
次に、
図16に従って、保護部材40及び電磁シールド部材50の端部構造について説明する。なお、
図16では、外装部材110の図示を省略している。
電線20A,20Bの端部は、コネクタC1(
図1参照)が有するシールドシェル80に挿通されている。シールドシェル80は、例えば、電線20Aが挿通される筒状部材81と、電線20Bが挿通される導電性の筒状部材82とを有している。筒状部材81,82(シールドシェル80)は、金属によって構成されている。
【0088】
筒状部材81,82は、例えば、内周及び外周の断面形状が長方形の角筒状に形成されている。筒状部材81の内部には、電線20A、保護部材40及び電磁シールド部材50のうち電線20Aのみが挿通されている。保護部材40の端部は、筒状部材81と電磁シールド部材50との間に挟まれた状態でカシメリング85によって筒状部材81の外周面に接続されている。電磁シールド部材50は、例えば、保護部材40よりも全長が長く形成されており、保護部材40の端部の端面を被覆するように形成されている。電磁シールド部材50の端部は、筒状部材81の外周面に直接接触された状態でカシメリング86によって筒状部材81の外周面に接続されている。
【0089】
筒状部材82の内部には、電線20B及び電磁シールド部材50のうち電線20Bのみが挿通されている。電磁シールド部材50の端部は、筒状部材82の外周面に固定されている。電磁シールド部材50の端部は、筒状部材82に対してその全周を包囲するように外挿されている。電磁シールド部材50の端部は、電磁シールド部材50の外周側に設けられたカシメリング88によって筒状部材82の外周面に固定されている。カシメリング88がカシメ付けられることで、電磁シールド部材50の端部が筒状部材82の外周面に対して直接接触した状態で固着されている。これにより、電磁シールド部材50と筒状部材82(シールドシェル80)との電気的導通が安定的に確保される。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態の(1-3)~(1-10)の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
(第4実施形態の変更例)
上記第4実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記第4実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0091】
・
図17に示すように、電磁シールド部材50を、複数の電線20を一括して包囲するように形成してもよい。例えば、電磁シールド部材50は、保護部材40によって被覆された電線20Aと、電線20Bとを一括して被覆するように形成されている。
【0092】
・
図18に示すように、各電線20に対して熱伝導部材90を設けるようにしてもよい。各熱伝導部材90は、例えば、電線20A,20Bの外側を被覆する電磁シールド部材50の外周を被覆するように形成されている。例えば、各熱伝導部材90は、保護部材40が有する網目や電磁シールド部材50が有する網目を充填するように形成されている。また、複数の電線20を一括して覆うように熱伝導部材90を設けるようにしてもよい。
【0093】
・上記第4実施形態の外装部材110の内部空間110X内における電線20A,20Bの配置は特に限定されない。例えば、内部空間110X内において、複数の電線20A,20Bを、芯線21の薄手方向に並んで配置するようにしてもよい。
【0094】
・上記第4実施形態の電線20Aにおいて、保護部材40及び電磁シールド部材50の配置を適宜変更してもよい。例えば、電線20Aの絶縁被覆22の外周を被覆するように電磁シールド部材50を形成し、その電磁シールド部材50の外周を被覆するように保護部材40を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、外装部材110の内部空間110Xにおいて、電線20A及び電磁シールド部材50を包囲する保護部材40の外周面と、電線20Bを包囲する電磁シールド部材50の外周面とが接触する。
【0095】
・上記第4実施形態の電線20Bに対して保護部材40を設けるようにしてもよい。
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0096】
・上記各実施形態では、保護部材40や電磁シールド部材50を筒状部材81,82に固定するための連結部材としてカシメリング85~88を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング85~88の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドや粘着テープ等を連結部材として用いてもよい。
【0097】
・上記各実施形態では、保護部材40の端部を筒状部材81の外周面に固定するようにしたが、固定位置は特に限定されない。例えば、保護部材40の端部を電線20上に固定するようにしてもよい。この場合には、例えば粘着テープ等によって保護部材40の端部を電線20上に固定するようにしてもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、外装部材60,110を固定する固定部材としてクランプ70に具体化したが、これに限定されない。例えば、外装部材60,110を固定する固定部材としては、車両の車体等に固定される固定部材に限定されず、粘着テープや結束バンドなどを用いることができる。
【0099】
・上記各実施形態における外装部材60,110は、長さ方向に延在する切れ目を有していてもよい。
・上記各実施形態における保護部材40を省略してもよい。
【0100】
・上記各実施形態における電磁シールド部材50を省略してもよい。例えば、導電性を有する材料によって外装部材60,110を構成した場合には、その外装部材60,110電磁シールド部材として機能させることができる。
【0101】
・上記各実施形態では、電線20をノンシールド電線に具体化したが、電線20の種類はこれに限定されない。例えば、電線20を、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線に具体化してもよい。
【0102】
・上記各実施形態では、電磁シールド機能を有するワイヤハーネス10に具体化したが、電磁シールド機能を有さないワイヤハーネス10に具体化してもよい。
・上記各実施形態では、ワイヤハーネス10を構成する電線20が2本であったが、これに限定されない。車両の仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、電線20の本数は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、ワイヤハーネス10を構成する電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0103】
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記各実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、電線20によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
10,10A~10C…ワイヤハーネス、20,20A,20B…電線、21…芯線、22…絶縁被覆、40…保護部材、50…電磁シールド部材、60…外装部材、61…環状凹部、62…環状凸部、70,100…クランプ、79…突起部、81,82…筒状部材、85…カシメリング(第1連結部材)、86…カシメリング(第2連結部材)、87…カシメリング(連結部材)、90…熱伝導部材、110…外装部材。