(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】建設機械の乗降口開閉装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20220329BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20220329BHJP
G05G 1/00 20080401ALI20220329BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20220329BHJP
G05G 5/06 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
E02F9/16 G
E02F9/24 A
G05G1/00 E
G05G1/04 Z
G05G5/06 C
(21)【出願番号】P 2018146912
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】境谷 正則
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-54434(JP,A)
【文献】特開2005-146639(JP,A)
【文献】特開2010-127054(JP,A)
【文献】特開平6-228987(JP,A)
【文献】特開平4-250230(JP,A)
【文献】特開2008-25141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
E02F 9/24
G05G 1/00
G05G 1/04
G05G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンの乗降口を開閉するための建設機械の乗降口開閉装置であって、
前記キャビンの運転席の側方に配設されたベースと、
ボックス軸を中心として前記ベースに回動可能に支持されたコンソールボックスと、
ゲートバー軸を中心として前記コンソールボックスに回動可能に支持されたゲートバーと、
作業時の下げ位置と、該下げ位置よりも後退して前記キャビンの乗降口を広げる上げ位置との間で、前記コンソールボックスを回動させる開閉レバーと、
前記ゲートバーと前記ベースとに跨がって設けられ、前記コンソールボックスの回動動作に連動して、前記乗降口を遮断する閉じ位置と、該乗降口を開放する開き位置との間で、該ゲートバーを回動させるリンクバーと、
前記開閉レバーの回動動作に連動して、前記コンソールボックスを下げ位置でロックするロック機構とを備えたことを特徴とする建設機械の乗降口開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記開閉レバーは、開閉レバー軸を中心として前記コンソールボックスに回動可能に支持されており、
前記コンソールボックスが上げ位置にあるときに、前記開閉レバーのみを該上げ位置よりも前方に回動するように付勢する付勢バネを備えたことを特徴とする建設機械の乗降口開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ロック機構は、前記ベース側に設けられた係合軸部と、前記コンソールボックス側に設けられ、前記開閉レバーの回動動作に連動して該係合軸部に係脱可能な係合爪部とを有しており、
前記コンソールボックスが下げ位置にあるときに、前記係合爪部を前記係合軸部に係合するように付勢する付勢バネを備えたことを特徴とする建設機械の乗降口開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の乗降口開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャビンの乗降口にゲートバーを配設した建設機械のゲートロック装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、キャビンの乗降口側のコンソールボックスの前部内に、ゲートバーを水平軸回りに回動自在に支持するとともに、コンソールボックスの操作レバーよりも後部に、ゲートバーを動作するためのゲートバー操作レバーを揺動自在に支持し、ゲートバー操作レバーとゲートバーとを連結ロッドで連結した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発明では、キャビン内でのコンソールボックスの位置が固定されていることから、コンソールボックスが邪魔になって乗降口が狭くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、ゲートバーとゲートバー操作レバーとが連結ロッドで連結されているので、作業者がゲートバーを押し下げると、それに伴ってゲートバー操作レバーが回動してしまい、ゲートバーの乗降口の遮断機能が解除されてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗降時のキャビンの乗降口を広くするとともに、閉じ位置にあるゲートバーが意図せずに開いてしまうのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャビンの乗降口を開閉するための建設機械の乗降口開閉装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、前記キャビンの運転席の側方に配設されたベースと、
ボックス軸を中心として前記ベースに回動可能に支持されたコンソールボックスと、
ゲートバー軸を中心として前記コンソールボックスに回動可能に支持されたゲートバーと、
作業時の下げ位置と、該下げ位置よりも後退して前記キャビンの乗降口を広げる上げ位置との間で、前記コンソールボックスを回動させる開閉レバーと、
前記ゲートバーと前記ベースとに跨がって設けられ、前記コンソールボックスの回動動作に連動して、前記乗降口を遮断する閉じ位置と、該乗降口を開放する開き位置との間で、該ゲートバーを回動させるリンクバーと、
前記開閉レバーの回動動作に連動して、前記コンソールボックスを下げ位置でロックするロック機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、コンソールボックスは、開閉レバーによって下げ位置と上げ位置との間で回動するので、乗降時のキャビンの乗降口を広くすることができる。また、コンソールボックスの回動動作に連動して、リンクバーを介して、ゲートバーが閉じ位置と開き位置との間で回動する。そして、開閉レバーの回動動作に連動して、コンソールボックスがロック機構によって下げ位置でロックされる。
【0011】
これにより、作業者がゲートバーを押し下げようとしても、ゲートバーの回動動作がリンクバーで規制されているとともに、コンソールボックスの回動動作がロック機構で規制されているので、意図せずに、ゲートバーが開いたり、コンソールボックスが回動するのを抑えることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記開閉レバーは、開閉レバー軸を中心として前記コンソールボックスに回動可能に支持されており、
前記コンソールボックスが上げ位置にあるときに、前記開閉レバーのみを該上げ位置よりも前方に回動するように付勢する付勢バネを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明では、開閉レバーは、開閉レバー軸を中心に後方に回動させることで、コンソールボックスを上げ位置まで回動させる一方、前方に回動させることで、コンソールボックスを下げ位置まで回動可能となっている。そして、コンソールボックスが上げ位置にあるときには、付勢バネによって開閉レバーのみを上げ位置よりも前方に予め回動させるようにしている。
【0014】
これにより、コンソールボックスを上げ位置に回動させた後、作業者の手元の操作しやすい位置に開閉レバーを戻しておくことで、コンソールボックスを下げ位置に回動させる際の開閉レバーの操作性が向上する。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ロック機構は、前記ベース側に設けられた係合軸部と、前記コンソールボックス側に設けられ、前記開閉レバーの回動動作に連動して該係合軸部に係脱可能な係合爪部とを有しており、
前記コンソールボックスが下げ位置にあるときに、前記係合爪部を前記係合軸部に係合するように付勢する付勢バネを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明では、コンソールボックスが下げ位置にあるときに、付勢バネによって、係合爪部を係合軸部に係合するように付勢している。これにより、係合爪部と係合軸部の係合状態を維持して、コンソールボックスを下げ位置でロックすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乗降時のキャビンの乗降口を広くするとともに、閉じ位置にあるゲートバーが意図せずに開いてしまうのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る建設機械のキャビン周辺の構成を示す側面図である。
【
図2】コンソールボックスが下げ位置で、ゲートバーが閉じ位置にあるときの側面図である。
【
図4】開閉レバーを後方に回動させてロックを解除した状態を示す側面図である。
【
図5】コンソールボックスが上げ位置で、ゲートバーが開き位置にあるときの側面図である。
【
図6】コンソールボックスを上げ位置から下げ位置に回動させる途中の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1に示すように、建設機械10の上部旋回体11には、キャビン12が搭載されている。キャビン12の左側には、作業者がキャビン12内に乗降するための乗降口13が開口している。乗降口13は、ドア14によって開閉される。
図1では、ドア14が開かれて乗降口13が開放された状態を示している。
【0021】
運転席15よりも車両前側には、キャビンフロア16から上方に延びる走行レバー17が設けられている。走行レバー17を前後方向に操作することにより、図示しない下部走行体を前進又は後退させることができる。また、キャビンフロア16における走行レバー17の基端部近傍には、走行ペダル18が設けられている。走行ペダル18を踏み込むことにより、図示しない下部走行体を前進させることができる。
【0022】
キャビン12内には、運転席15の左右両側方にコンソールボックス20が設けられている(
図1では左側のみ図示)。コンソールボックス20には、作業用の操作レバー22が上向きに突出して設けられるとともに、内部にスイッチ類等の電装品(図示省略)が設置される。また、コンソールボックス20には、肘掛台23が設けられている。
【0023】
なお、コンソールボックス20は、実際には、強度部材であるボックス枠と合成樹脂カバーとによって構成され、後述するゲートバー30及び開閉レバー35は、ボックス枠に取付けられるが、ここでは図の複雑化を避けるためにこれらの詳しいボックス構造の図示を省略する。
【0024】
キャビンフロア16上には、ベース25が固定されている。乗降口13に臨む左側のコンソールボックス20は、ボックス軸21を中心として、作業時の下げ位置(
図2参照)と、上げ位置(
図5参照)との間で回動可能なように、ベース25に支持されている。
【0025】
ここで、上げ位置は、下げ位置よりも上昇且つ後退して乗降口13を広げる位置であり、作業者がキャビン12内に乗降する際には、コンソールボックス20が上げ位置にセットされる。
【0026】
また、運転席15の左前方には、乗降口13を遮断機式に開閉する乗降口開閉装置としてのゲートバー30が設けられている。
【0027】
図2に示すように、ゲートバー30は、ゲートバー軸31を中心として、乗降口13を遮断する閉じ位置(
図2参照)と、乗降口13を開放する開き位置(
図5参照)との間で回動可能なように、コンソールボックス20の側面上部に支持されている。
【0028】
開閉レバー35は、開閉レバー軸36を中心として、コンソールボックス20の左側面に回動可能に支持されている。ここで、開閉レバー35を後方に回動させると、図示しないギヤ等によって、コンソールボックス20が連動して後方に回動するようになっている。また、開閉レバー35を前方に回動させると、コンソールボックス20が連動して前方に回動するようになっている。このように、開閉レバー35を操作することで、コンソールボックス20を上げ位置と下げ位置との間で回動させることができる。
【0029】
ゲートバー30とベース25とは、リンクバー40によって回動可能に連結されている。リンクバー40は、上端部が第1リンクピン41を介してゲートバー30にピン連結され、下端部が第2リンクピン42を介してベース25にピン連結されている。
【0030】
そして、コンソールボックス20の回動動作に連動して、リンクバー40を介してゲートバー30が回動するようになっている。具体的に、開閉レバー35を操作して、コンソールボックス20を前方に回動させた場合には、リンクバー40がゲートバー30を前方に押し出すことで、ゲートバー30が閉じ位置まで回動して、乗降口13を遮断するようになっている(
図2参照)。
【0031】
また、開閉レバー35を操作して、コンソールボックス20を後方に回動させた場合には、リンクバー40がゲートバー30を引っ張ることで、ゲートバー30が開き位置まで回動して、乗降口13を開放するようになっている(
図5参照)。
【0032】
コンソールボックス20は、下げ位置にあるときに、ロック機構50によってロックされている。ロック機構50は、ベース25側に設けられた係合軸部51と、コンソールボックス20側に設けられたロックプレート55とを有する。
【0033】
係合軸部51は、ベース25の左側面から外方に延びている。ロックプレート55の前部には、下方に開口した係合爪部56が設けられている。ロックプレート55は、開閉レバー軸36を中心に回動可能に支持されており、開閉レバー35の回動動作に連動して、係合爪部56が係合軸部51に係脱可能となっている。
【0034】
ロックプレート55の後端部には、付勢バネ60の下側フックが引っ掛けられており、ロックプレート55の後端部が持ち上げられるように付勢されている。付勢バネ60の上側フックは、コンソールボックス20の左側面に設けられたストッパ部65に引っ掛けられている。
【0035】
図3にも示すように、ストッパ部65は、左方に向かって開口するように凹状に折り曲げられた板材で形成されている。開閉レバー35は、ストッパ部65の凹部内に配設されている。ストッパ部65の後部は、さらに後方に折り曲げられており、この部分に付勢バネ60の上側フックが引っ掛けられている。
【0036】
そして、
図2に示すように、コンソールボックス20が下げ位置にあるときには、ロックプレート55の後端部が付勢バネ60によって持ち上げられることで、係合爪部56が係合軸部51に係合するように付勢されている。これにより、係合爪部56と係合軸部51の係合状態を維持して、コンソールボックス20を下げ位置でロックすることができる。
【0037】
ベース25には、リミットスイッチ68が設けられている。リミットスイッチ68は、コンソールボックス20が下げ位置にセットされたときに、ロックプレート55に接触して作動することにより、油圧系が動作不能にロック(いわゆる油圧ロック)された状態から作動可能にロック解除されるように構成されている。
【0038】
開閉レバー35には、係合解除板61が設けられている。係合解除板61は、ロックプレート55の後部に上方から当接している。そして、開閉レバー35を後方に回動させると、係合解除板61が付勢バネ60の付勢力に抗してロックプレート55の後部を押し下げる。これにより、ロックプレート55の前端部が持ち上がり、係合爪部56と係合軸部51との係合状態が解除される(
図4参照)。
【0039】
そして、
図5に示すように、開閉レバー35をさらに後方に回動させることで、コンソールボックス20が上げ位置まで回動する。その後、作業者が開閉レバー35を離すと、付勢バネ60の付勢力によって、ロックプレート55の後端部が持ち上がることとなる。
【0040】
このとき、ロックプレート55の後部の上面には、開閉レバー35の係合解除板61が当接しているので、ロックプレート55の後端部が持ち上がる際に、係合解除板61を押し上げて、開閉レバー35のみが前方に回動して、ストッパ部65の前側壁に当接する。
【0041】
このように、コンソールボックス20を上げ位置に回動させた後、作業者の手元の操作しやすい位置に開閉レバー35を戻しておくことで、コンソールボックス20を下げ位置に回動させる際の開閉レバー35の操作性が向上する。
【0042】
図6は、コンソールボックス20を上げ位置から下げ位置まで回動させる途中の状態を示している。開閉レバー35を前方に回動させる途中で、ロックプレート55の前端部が、係合軸部51に当接した状態となる。この状態から、さらに開閉レバー35を前方に回動させると、付勢バネ60の付勢力に抗して、ロックプレート55の前部が徐々に持ち上がりながら、コンソールボックス20が前方に回動することとなる。このように、係合爪部56と係合軸部51は、いわゆるラッチ構造となっている。
【0043】
そして、コンソールボックス20が下げ位置まで回動したときに、ロックプレート55の係合爪部56が係合軸部51に係合して、付勢バネ60によって係合状態が維持される(
図2参照)。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る建設機械10の乗降口開閉装置によれば、コンソールボックス20は、開閉レバー35によって下げ位置と上げ位置との間で回動するので、乗降時のキャビン12の乗降口13を広くすることができる。
【0045】
また、コンソールボックス20の回動動作に連動して、リンクバー40を介して、ゲートバー30が閉じ位置と開き位置との間で回動する。そして、開閉レバー35の回動動作に連動して、コンソールボックス20がロック機構50によって下げ位置でロックされる。
【0046】
これにより、作業者がゲートバー30を押し下げようとしても、ゲートバー30の回動動作がリンクバー40で規制されているとともに、コンソールボックス20の回動動作がロック機構50で規制されているので、意図せずに、ゲートバー30が開いたり、コンソールボックス20が回動するのを抑えることができる。
【0047】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0048】
本実施形態では、コンソールボックス20の回動動作を、リンクバー40によってゲートバー30の開閉動作力に変換して伝えるようにしているが、複数のリンクを組み合わせたリンク機構を用いてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、1つの付勢バネ60を用いて、係合爪部56を係合軸部51に係合するように付勢する一方、コンソールボックス20が上げ位置にあるときに開閉レバー35のみを前方に回動するように付勢するようにしたが、それぞれ別々の付勢バネを用いた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、乗降時のキャビンの乗降口を広くするとともに、閉じ位置にあるゲートバーが意図せずに開いてしまうのを抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0051】
10 建設機械
12 キャビン
13 乗降口
15 運転席
20 コンソールボックス
21 ボックス軸
25 ベース
30 ゲートバー(乗降口開閉装置)
31 ゲートバー軸
35 開閉レバー
36 開閉レバー軸
40 リンクバー
50 ロック機構
51 係合軸部
56 係合爪部
60 付勢バネ