(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】食品包装フィルム用接着剤組成物及び食品包装フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20220329BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C09J175/06
B65D65/40 D
B32B27/00 D
B32B27/36
B32B27/26
(21)【出願番号】P 2018179944
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安井 文五
(72)【発明者】
【氏名】白石 功貴
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160912(JP,A)
【文献】特開2012-56975(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143446(WO,A1)
【文献】特表2013-540184(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104645(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B65D 65/40
B32B 27/00- 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を含有し、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす食品包装フィルム用接着剤組成物。
(1)ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20~20℃である。
(2)ポリエステルポリオール(A)の水酸基と、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.6~3である。
(3)ポリエステルポリオール(A)1分子中の水酸基の平均官能基数が2.1~2.7である。
(4)ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が4~7である。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20~0℃である、請求項1に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が5~6である、請求項1又は2に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、請求項1~3いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【請求項5】
少なくとも2層のガスバリア層を備えた食品包装フィルムのガスバリア層間の接着に用いる、請求項1~4いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【請求項6】
第1のガスバリア層、第2のガスバリア層、及び
前記第1のガスバリア層と前記第2のガスバリア層とを貼り合わせる接着剤層、を有し、
前記接着剤層が、請求項1~5いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物より得られる塗膜にて形成されてなる食品包装フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装フィルム用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の内容物を包装する軟包装材料は、各種プラスチックフィルム同士の貼り合わせや、プラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔との貼りあわせを、接着剤層を介して製造される積層体が利用されており、接着剤層としては主に水酸基/イソシアネート系の2液硬化型のウレタン系接着剤が用いられている。
また、昨今のフードロスへの対応として、金属蒸着フィルム等のガスバリア性が高い基材同士を貼り合わせることにより、賞味期間や消費期間を従来より長期間化する取り組みがなされている。しかし、金属蒸着フィルム等のガスバリア性が高い基材同士を貼り合わせると、2液硬化型のウレタン系接着剤では、水分とイソシアネートの反応により発生した炭酸ガスが接着剤層内部に残存し、泡状の外観不良が発生するという課題があった。
【0003】
上記課題に対して、例えば特許文献1には、炭酸ガス発泡を抑制するために、特定組成のポリオールを用いて、水酸基数/イソシアネート基数を規定した接着剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2は、同様に水酸基数/イソシアネート基数を規定しており、両文献とも、水酸基数1に対してイソシアネート基数1以下が好ましい範囲としている。
【0005】
特許文献3には、分岐構造を有するポリエステルポリオールと平均官能基数が3のポリイソシアネートとを用いた、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートした場合においても接着性と外観が良好なウレタン系接着剤組成物が記載されている。
【0006】
特許文献4には、ポリエステルポリオール、1分子中に平均4~7個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを所定範囲量含むポリイソシアネートを含む、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートした場合においても外観が良好であり、かつ屋外暴露時における接着力維持に優れたウレタン系接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-280814号公報
【文献】国際公開2016/204065号
【文献】特開2004-285183号公報
【文献】特開2011-001484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1~2の発明は、水酸基数1に対するイソシアネート基数が少ないため、食品包装フィルム用途等の軟包装材料として用いるには、耐熱性や耐水性が劣る。
また、特許文献3の発明は、レトルト処理前後の接着強度は良好であるが、炭酸ガス発泡によるラミネート外観不良を抑制することはできないという問題があった。
さらに、特許文献4で用いたポリエステルポリオールのガラス転移温度は-25℃程度であるため、食品包装フィルム用途等の軟包装材料として用いるには、耐熱性や耐水性が不十分であった。また、安全性や衛生性の観点から、エポキシ樹脂等を食品用途に用いることは好ましくない。
したがって、本発明の目的は、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートする場合において、得られるラミネートフィルム積層体が良好な外観を示し、さらに、ラミネートフィルム間の接着性に優れ、加熱殺菌処理(ボイル、レトルト等)後も接着力を保持できる、食品包装フィルム用接着剤組成物及び、該接着剤組成物を用いた積層材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、下記〔1〕~〔6〕に関する。
【0010】
〔1〕 ポリエステルポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を含有し、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす食品包装フィルム用接着剤組成物。
(1)ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20~20℃である。
(2)ポリエステルポリオール(A)の水酸基と、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.6~3である。
(3)ポリエステルポリオール(A)1分子中の水酸基の平均官能基数が2.1~2.7である。
(4)ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が4~7である。
【0011】
〔2〕 前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20~0℃である、〔1〕に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【0012】
〔3〕 前記ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が5~6である、〔1〕又は〔2〕に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【0013】
〔4〕 前記ポリイソシアネート(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【0014】
〔5〕 少なくとも2層のガスバリア層を備えた食品包装フィルムのガスバリア層間の接着に用いる、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物。
【0015】
〔6〕 第1のガスバリア層、第2のガスバリア層、及び
前記第1のガスバリア層と前記第2のガスバリア層とを貼り合わせる接着剤層、を有し、前記接着剤層が、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の食品包装フィルム用接着剤組成物より得られる塗膜にて形成されてなる食品包装フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートする場合において、得られるラミネートフィルム積層体が良好な外観を示し、さらに、ラミネートフィルム間の接着性に優れ、加熱殺菌処理(ボイル、レトルト等)後も接着力を保持できる、食品包装フィルム用接着剤組成物及び、該接着剤組成物を用いた積層材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の食品包装フィルム用接着剤組成物は、ポリエステルポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を含有し、下記(1)~(4)の全ての条件を満たすことを特徴とする。これら特定のポリエステルポリオール(A)及び特定のポリイソシアネート(B)を所定当量比で用いることで、官能基濃度が高まり、水分とイソシアネートの反応よりも、ポリオールの水酸基とイソシアネートの反応が優先的に進みやすくなり、エポキシ樹脂等の架橋剤を用いることなく、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートした場合においても、ラミネートフィルム間の接着性に優れ、加熱殺菌処理(ボイル、レトルト等)後も接着力が保持されるだけでなく、良好なラミネート外観をも両立可能とする優れた効果を発揮する。
(1)ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20~20℃である。
(2)ポリエステルポリオール(A)の水酸基と、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.6~3である。
(3)ポリエステルポリオール(A)1分子中の水酸基の平均官能基数が2.1~2.7である。
(4)ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が4~7である。
【0018】
<ポリエステルポリオール(A)>
本発明で用いられるポリエステルポリオール(A)は、ガラス転移温度が-20~20℃で、1分子中の水酸基の平均官能基数が2.1~2.7であり、従来公知のポリエステルポリオールから選択することができる。
ポリエステルポリオール(A)は、以下に限定されるものではないが、
例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、を反応させて得られるポリエステルポリオール;
或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;等が挙げられる。上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記ポリエステルポリオールは、さらに酸無水物を反応させてもよいし、ジイソシアネートを反応させてもよい。酸無水物としては、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、エチレングリコールアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0020】
ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度は-20~20℃であり、より好ましくは-20~0℃である。ガラス転移温度は耐熱性に寄与し、加熱殺菌処理後の接着力維持の点で上記範囲であることが必要である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、セイコーインスツル社製示差走査熱量計「DSC-6100」を用いて窒素雰囲気下で測定した数値を用いた。
【0021】
また、ポリエステルポリオール(A)の1分子中の水酸基の平均官能基数は2.1~2.7であり、より好ましくは2.3~2.7である。水酸基の平均官能基数はポリイソシアネート成分との反応による接着剤層の凝集力に大きく影響し、2.1未満であると加熱殺菌処理後の接着力低下を招き、2.7を超えると加熱殺菌処理前の接着力が低下する。
【0022】
また、ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量(Mn)は、接着剤層の耐加熱殺菌処理の点及び塗工性の点から、好ましくは5,000~20,000であり、より好ましくは6,000~12,000である。
なお、本明細書の数平均分子量の値は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用い、溶媒としてテトロヒドロフランを用いて、標準ポリスチレン換算した値を示している。
【0023】
このようなポリエステルポリオールを用いることによって、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートした場合においても、特に、ラミネートフィルム間の初期接着性に優れ、加熱殺菌処理(ボイル、レトルト等)後も接着力が保持されるだけでなく、得られるラミネートフィルム積層体が良好な外観を示す。なお、異なる分子量、組成のポリエステルポリオール同士を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)は、1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が4~7であり、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネート(B)としては、以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートから誘導された化合物である。
例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;
1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;
1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;
トルエンジイソシアネート、ジフェニニルメタンジイソシアネートのような芳香族系ジイソシアネート;
又は、上記ジイソシアネート(以下、イソシアネート単量体ともいう)から誘導された、アロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;等が挙げられる。誘導体として好ましくは、ヌレートタイプ、アダクトタイプの誘導体であり、特に好ましくはアダクトタイプである。
好ましくは、多官能化が容易である脂肪族イソシアネート単量体から誘導されたポリイソシアネートであり、より好ましくは、ラミネート物性のバランスが確保しやすいヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)から誘導されたポリイソシアネートである。
【0025】
ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の数は、1分子中のイソシアネート基の平均官能基数が4~7であり、好ましくは5~7であり、より好ましくは5~6である。上記範囲であることで、特に、ラミネートフィルム間の初期接着性に優れ、加熱殺菌処理(ボイル、レトルト等)後も接着力が保持されるだけでなく、得られるラミネートフィルム積層体が良好な外観を示す。
複数のポリイソシアネート成分を用いる場合、1分子中のイソシアネート基の平均官能基数は、各ポリイソシアネートの平均官能基数とポリイソシアネート全量に対する質量比とから算出することができる。
【0026】
<食品包装フィルム用接着剤組成物>
本発明の食品包装フィルム用接着剤組成物は、前述のとおり、特定のポリエステルポリオール(A)及び特定のポリイソシアネート(B)を含み、ポリエステルポリオール(A)の水酸基と、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.6~3である。当量比(NCO/OH)は、より好ましくは1.8~3であり、特に好ましくは2~3である。
【0027】
接着剤組成物は、特定のポリエステルポリオール(A)以外のポリオールや、その他成分を含有してもよい。その他成分は、主剤即ちポリオール(A)、又は硬化剤即ちポリイソシアネート(B)いずれに配合してもよい。
【0028】
[その他ポリオール]
ポリエステルポリオール(A)以外に含有してもよいポリオール成分としては、特に限定されるものではなく、例えばポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等を単独で使用、又は2種類以上を併用することができる。
【0029】
[その他成分]
(反応促進剤)
接着剤組成物は、反応促進剤を含有してもよく、反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0030】
(シランカップリング剤)
接着剤組成物は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、ポリエステルポリオール(A)の固形分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.2~3質量部である。上記範囲とすることで、金属箔に対する接着強度を向上できる。
【0031】
(リン酸又はリン酸誘導体)
接着剤組成物は、上記同様に、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有してもよい。リン酸又はその誘導体の内、リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上記のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リン酸又はその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リン酸又はその誘導体の含有量は、接着剤の固形分を基準として好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%であり、特に好ましくは0.05~1質量%である。
【0032】
(レベリング剤又は消泡剤)
接着剤組成物は、積層体の外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤又は消泡剤を含有してもよい。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0033】
接着剤組成物は、更に、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。又、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0034】
接着剤組成物は、使用する際に、その粘度が常温~150℃、好ましくは常温~100℃で100~10,000mPa・s、好ましくは100~5,000mPa・sの場合は無溶剤型で用いることができる。上記組成物の粘度が上記範囲より高い場合、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであれば必要に応じていかなるものを使用してもよい。
【0035】
接着剤組成物を使用する具体的な処方の一例としては、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを、ポリエステルポリオール(A)中の水酸基に対して、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基が当量比にして1.6~3倍になるよう配合し、次いで、溶剤型、無溶剤型のラミネーターによって接着剤組成物をフィルム表面に塗布し、溶剤型の場合は溶剤を揮散させた後、無溶剤型ではそのまま接着面を貼り合せ、常温又は加温下に硬化させる。
【0036】
<食品包装フィルム>
本発明の接着剤組成物は、少なくとも2層のガスバリア層を備えた食品包装フィルムのガスバリア層間の接着に用いられるものであり、本発明の食品包装フィルムは、ガスバリア層、接着剤層、ガスバリア層がこの順に積層された包装材料であり、シーラント層を有していてもよい。
即ち、本発明の食品包装フィルムは、第1のガスバリア層と、第2のガスバリア層と、前記第1のガスバリア層と、前記第2のガスバリア層とを貼り合わせる接着剤層と、を有し、前記接着剤層が、本発明の接着剤組成物より得られる塗膜にて形成されてなる包装材料である。
【0037】
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、気体、特に炭酸ガスを遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。詳細には、アルミニウム箔等の軟質金属箔の他、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着等の蒸着層;塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層等を使用することができる。第1のガスバリア層と第2のガスバリア層は、各々独立して選択することができる。
【0038】
蒸着層としては、市販の、蒸着層を有するフィルムを使用することができる。蒸着層を有するフィルムとしては、例えば、大日本印刷社製の「IBシリーズ」、凸版印刷社製の「GL、GXシリーズ」、東レフィルム加工社製の「バリアロックス」「VM-PET」「YM-CPP」「VM-OPP」、三菱樹脂社製の「テックバリア」、東セロ社製の「メタライン」、尾池工業社製の「MOS」「テトライト」「ビーブライト」等が挙げられる。蒸着層の表面上に保護コート層が設けられていてもよい。
【0039】
有機バリア層としては、有機バリア層を有する積層フィルムを使用することができる。当該フィルムとしては、バリア性を有する樹脂を含む塗剤をフィルムにコーティングしたもの、前記樹脂を共押し出し法により積層したものを用いてもよいが、有機バリア層を有する市販のフィルムを使用することが簡便であり好ましい。有機バリア層を有するフィルムとしては、クラレ社製の「クラリスタ」「エバール」、呉羽化学工業社製の「ベセーラ」、三菱樹脂社製の「スーパーニール」、興人社製の「コーバリア」、ユニチカ社製の「セービックス(登録商標)」「エンブロンM」「エンブロンE」「エンブレムDC」「エンブレットDC」「NV」、東セロ社製の「K-OP」「A-OP」、ダイセル社製の「セネシ」等が挙げられる。
【0040】
ガスバリア層としては、アルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が一般に好ましい。ガスバリア層の厚みは特に限定されない。例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0041】
ガスバリア層におけるガスバリア性については、包装する内容物や保存期間等に応じて最適範囲を適宜選択すればよい。酸素透過度としては、100ml/m2・day・MPa(20℃、90%RH)以下が好ましく、20ml/m2・day・MPa以下がより好ましく、10ml/m2・day・MPa以下がさらに好ましく、1ml/m2・day・MPa以下が特に好ましい。
【0042】
[接着剤層]
接着剤層は、本発明の接着剤組成物により得られる塗膜であり、本発明の接着剤組成物を、第1のガスバリア層の少なくとも一方の面に塗布し乾燥した後に、第2のガスバリア層の少なくとも一方の面と貼り合せることで形成することができる。
【0043】
接着剤層の量は任意であるが、接着面の面積に対して、0.001~5g/m2の範囲であることが好ましく、無溶剤型では1~2g/m2、溶剤型では2~5g/m2 の範囲であることが好ましい。
【0044】
シーラント層としては、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なかでもレトルト時の耐熱性の観点からPP系樹脂が好ましく、ヒートシール性の観点からCPPが特に好ましい。シーラント層の厚みは、特に限定されないが、包装材料への加工性やヒートシール性等を考慮して10~60μmの範囲が好ましく、15~40μmの範囲がより好ましい。また、シーラント層に高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラント層に滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
【0045】
本発明において、さらにシーラント層を積層する方法は、特に限定されない。例えば、接着剤層とシーラント樹脂フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント樹脂を溶融させて接着剤層又はガスバリア層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネーション法)等が挙げられる。
【0046】
本発明の食品包装フィルムは、通常、ガスバリア層を外側、シーラント層を内側(内容物側)として包装に供される。また、包装材料としての用途、必要な性能(易引裂性やハンドカット性)、包装材料として要求される剛性や耐久性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)等を考慮した場合、必要に応じてガスバリア層の外側又は内側に他の層を積層することもできる。
【0047】
具体的な積層体構成としては、レトルトパウチ等に好適に用いることが可能な、第1のバリア層/接着層/第2のバリア層/接着層/シーラント層、第1のバリア層/接着層/第2のバリア層/接着層/基材層/接着層/シーラント層、第1のバリア層/接着層/基材層/接着層/第2のバリア層/接着層/シーラント層等が挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコート層等を有していても構わない。
【0048】
基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。なかでも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。紙層としては、天然紙や合成紙等が挙げられる。基材層及び紙層の外表面又は内面側には、必要に応じて印刷層を設けてもよい。
【0049】
本発明の接着剤を使用して得られる軟包装材料は、通常用いられている方法により製造することができる。
例えば、外層側第1のバリア層と第2のバリア層とを本発明の接着剤を用いて積層し、中間積層体を得る。次いで、本発明の接着剤を用いて中間積層体の第2のバリア層面にシーラント層を積層することができる。
あるいは、本発明の接着剤を用いて第2のバリア層とシーラント層とを積層し、中間積層体を得る。次いで、本発明の接着剤を用いて、中間積層体の第2のバリア層と第1のバリア層とを積層することができる。
前者の場合、本発明の接着剤は、第1のバリア層若しくは第2のバリア層いずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温~100℃未満で熟成し、接着剤層を硬化するのが好ましい。100℃以上の熟成ではシーラント層が熱収縮することで成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力が低下したり、熱収縮によるカールで成型生産性が低下する場合がある。本発明では、炭酸ガスの発生を抑える観点から、10~40℃での熟成が好ましい。接着剤総量は、1~15g/m2程度であることが好ましい。
後者の場合も同様に、本発明の接着剤は、第1のバリア層若しくは中間積層体の第2のバリア層面のいずれかに塗布すればよい。
【0050】
接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
接着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えば、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。これらの方法により接着剤組成物をガスバリア層の表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供する。この加熱処理によって乾燥することで、均一な塗膜を形成することができる。即ち接着剤層をガスバリア層表面に密着させて形成することができる。乾燥の際は、溶剤の全てを乾燥させることが、接着性を良好にする観点から好ましい。
【0052】
本発明の接着剤組成物は、従来技術で得られなかったバリア性の高いフィルム同士の貼り合せ後のラミネート外観が優れており、更に、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等を蒸着したプラスチックフィルム、ステンレス鋼、鉄、銅、鉛等の金属に優れた接着強度、耐熱水性を示す。
【実施例】
【0053】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」%は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0054】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0055】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。水酸基価は次式により求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0056】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
セイコーインスツル社製示差走査熱量計「DSC-6100」を用いて窒素雰囲気下で測定を行った。
【0057】
<数平均分子量(Mn)の測定>
昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用い、溶媒としてテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0058】
<水酸基の官能基数(f)の計算>
下記式を用いて水酸基の官能基数(f)を算出した。
式:f=Mn/(56100/OHV)
【0059】
<NCO/OH比の計算>
下記式を用いて、NCO/OH比を算出した。
式:(ポリイソシアネート溶液配合量×ポリイソシアネート溶液のNCO%/42)/(ポリエステルポリオール溶液配合量×不揮発分%×f/Mn)
【0060】
<ポリエステルポリオール(A)の合成>
(合成例1:ポリエステルポリオールA-1)
テレフタル酸147.6g、イソフタル酸147.6g、アジピン酸64.9g、ジエチレングリコール39.2g、1,6-ヘキサンジオール115.9g、エチレングリコール45.9g、ネオペンチルグリコール38.5g、トリメチロールプロパン0.4gを仕込み、200~230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.01gを添加して徐々に減圧し、1.0~2.7hPa、230~250℃で6時間加熱し、グリコール成分の一部を留去し、エステル交換反応を行い、Mnが12,000のポリエステルポリオールを得た。
更に、このポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分60%に調整し、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.1%添加してポリエステルポリオールA-1の溶液を得た。
【0061】
(合成例2~8:ポリエステルポリオールA-2~5、AH-1~3)
表1に示す仕込み組成(g)になるようにカルボン酸成分と水酸基成分とを仕込んだ以外は合成例1と同様にして、不揮発分60%に調整し、ポリステルポリオールA-2~5、AH-1~3の溶液を得た。いずれのポリオールもMnは12,000であった。
【0062】
【0063】
<ポリイソシアネート(B)の調整>
(調整例1:ポリイソシアネート溶液B-1)
イソシアネート基の平均官能基数が5であるイソシアネート基アダクト体(東ソー社製「コロネート2785」ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート)を酢酸エチルにて希釈し、不揮発分70質量%、NCO%が13.5%のポリイソシアネートB-1の溶液を得た。
【0064】
(調整例2:ポリイソシアネート溶液B-2)
イソシアネート基の平均官能基数が6であるイソシアネート基アダクト体(旭化成社製「デュラネートMHG80」ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソフォロンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート)を酢酸エチルにて希釈し、不揮発分70質量%、NCO%が13.3%のポリイソシアネートB-2の溶液を得た。
【0065】
(調整例3:ポリイソシアネート溶液BH-1)
イソシアネート基の平均官能基数が3であるイソシアネート基アダクト体(旭化成社製「デュラネートP301」ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート)を酢酸エチルにて希釈し、不揮発分70質量%、NCO%が11.7%のポリイソシアネートBH-1の溶液を得た。
【0066】
<接着剤組成物の製造>
[実施例1]
ポリオールA-1溶液とポリイソシアネート溶液B-2を、表2に示すNCO/OH比になるように配合し、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分30質量%の接着剤溶液を得た。
【0067】
[実施例2~6、比較例1~7]
表2に示した主剤、硬化剤及びNCO/OH比に変更した以外は、実施例1と同様にして接着剤溶液を得た。
【0068】
<接着剤組成物の評価>
得られた接着剤組成物について、下記の方法で3層積層体を作成した後、得られた各積層体について、接着強度(初期、レトルト殺菌処理試験後)評価、及び炭酸ガス以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0069】
[3層積層体の作成]
第1の透明シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(以下、透明蒸着PET)フィルム(厚さ12μm、表面シリカ蒸着処理面)/第2の透明蒸着PET(厚さ9μm)/未延伸ポリプロピレン(以下、CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)の3層複合積層体を以下に記載の方法で作成した。
すなわち、第1の透明蒸着PETフィルムに印刷層を設けた後、該印刷層上に接着剤溶液を常温にて透明蒸着PETフィルムに塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面を第2の透明蒸着PETフィルム表面と貼り合せ、中間積層体を得た。さらに、その中間積層体の第2の透明蒸着PETフィルム面に同様に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をCPPフィルムと貼り合せ、40℃で4日間保温し、3層積層体を作製した。
【0070】
[炭酸ガス発泡外観評価]
得られた3層積層体について、炭酸ガス発泡の発生度合を目視で確認した。炭酸ガス発泡外観の実用域は、目視で確認できる20μm以上の泡が無いことである。
◎:泡の発生が確認できない(良好)
○:20μm未満の泡のみが発生している(使用可能)
△:20μm以上の泡が一部分に発生している(使用不可)
×:20μm以上の泡が全面に発生している(不良)
【0071】
[接着強度評価:初期、レトルト殺菌処理試験後]
《初期》
得られた3層積層体から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、第2の透明蒸着PETフィルム/CPPフィルム間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。5個の試験片の平均値を初期のラミネート強度とした。ラミネート強度の実用範囲は7N/15mm以上である。
◎:9N/15mm以上(良好)
○:7N/15mm以上、9N/15mm未満(使用可能)
×:7N/15mm未満(使用不可)
【0072】
《レトルト殺菌処理試験後》
得られた3層積層体を使用して、9cm×13cmの大きさのパウチ(CPPフィルム同士が内側に位置する)を作成し、内容物としてケチャップをそれぞれ充填した。得られたパウチを120℃で30分間レトルト殺菌処理した後、内容物を空け、初期と同様にして、第2の透明蒸着PETフィルム/CPPフィルム間の接着強度(N/15mm)を測定し、5個の試験片の平均値を求め、レトルト殺菌処理後のラミネート強度とした。試験後のラミネート強度の実用範囲は5N/15mm以上である。
◎:7N/15mm以上(良好)
○:5N/15mm以上、7N/15mm未満(使用可能)
×:5N/15mm未満(使用不可)
【0073】
【0074】
表2に示すように、本発明の接着剤組成物は、ガスバリア性の高いフィルム同士をラミネートする場合においても、ラミネートフィルム積層体が良好な外観を示し、さらに、ラミネートフィルム間の接着性に優れ、加熱殺菌処理後も接着力を保持できることを示しており、食品包装フィルム用として有用であることを示した。